特許第6511070号(P6511070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511070
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】原子力技術設備
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/07 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   G21C19/07 200
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-557227(P2016-557227)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公表番号】特表2017-508163(P2017-508163A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015055532
(87)【国際公開番号】WO2015140154
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】102014205085.5
(32)【優先日】2014年3月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518150493
【氏名又は名称】フラマトム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】フックス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】オルノート、レオ
(72)【発明者】
【氏名】レック、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ロイター、マティアス
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0023461(US,A1)
【文献】 特開2014−137239(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2430999(GB,A)
【文献】 米国特許第3800857(US,A)
【文献】 特開昭53−56497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/00−19/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液で満たされており、複数の燃料集合体(98)を収容するための複数の縦穴(104)を有する燃料集合体ラック(92)が内部に配置されている燃料集合体プール(115)を備えた原子力技術設備であって、前記複数の縦穴(104)に収容された複数の燃料集合体(98)が前記燃料集合体プール(115)内の冷却液と直接に接触しており、熱交換器として作用し、冷却回路(120)に接続され、且つ、冷媒が貫流可能な、少なくとも1つの冷却要素(2)が前記冷却液の中に浸漬されている原子力技術設備において、前記冷却要素(2)が前記複数の縦穴(104)の1つの中に1つの燃料集合体(98)の替わりに配置されていることを特徴とする原子力技術設備。
【請求項2】
前記冷却要素(2)が前記燃料集合体ラック(92)内の前記複数の縦穴(104)の1つの中に挿入すべく形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の原子力技術設備。
【請求項3】
前記冷却要素(2)が少なくともその断面に関し、前記燃料集合体ラック(92)内に挿入すべく計画された前記燃料集合体(98)の寸法を有することを特徴とする、請求項2に記載の原子力技術設備
【請求項4】
前記冷却要素(2)が前記燃料集合体ラック(92)内に吊り下げるための吊り下げ式冷却要素として形成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の原子力技術設備
【請求項5】
前記冷却要素(2)が前記冷却回路(120)内を循環する冷媒を導いて通すための少なくとも1つの冷媒チャネル(20、56)を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の原子力技術設備
【請求項6】
前記冷却要素(2)が前記燃料集合体プール(115)内に存在している冷却液を導いて通すための少なくとも1つのチャネル又は中間空間(130)を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の原子力技術設備
【請求項7】
前記冷却要素(2)が液状の冷媒を凝縮液溜め(50)に供給するための少なくとも1つの凝縮液チャネル(20)を有し、さらに前記冷却要素(2)が内部で蒸発する冷媒を蒸気溜め(62)に案内するための少なくとも1つの蒸発器チャネル(56)を含み、前記冷却要素(2)がさらに前記冷却回路(120)に接続するための1本の往き配管(32)及び1本の戻り配管(68)を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の原子力技術設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の燃料集合体を収容するための燃料集合体ラックが内部に配置されている燃料集合体プール内の冷却液を冷却するための冷却要素に関し、この冷却要素は熱伝達体(熱交換器)を含み、この熱交換器は冷却回路に接続すべく形成されている。本発明はさらに、燃料集合体プール内の冷却液を冷却するためのシステム、燃料集合体プール並びに原子力技術設備に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料集合体プールの冷却のために、今日では技術的に異なる主に2つの解決法が使用されている。第1の解決法ではプール水の直接的な冷却が行われる。このために、この水はポンプによりプールから取り出され、外部の冷却ユニットで冷却され、それからプールへ戻される。この場合、冷却回路に漏れが生じると、プール水位が下がるおそれがある。
【0003】
よく使用されている第2の解決法は吊り下げ式冷却器の使用に基づく。この場合、プール水は中間冷却回路により冷却される。このシステムでは、上述した方法とは異なり、プール漏れの危険がない。というのは、1つにはプール貫通部が不要であり、2つにはプール水がプール内に留まっているからである。しかし、この種のシステムは、複数の熱伝達面が必要なので、貯蔵プール内に大きな設置空間を要する。
【0004】
特許文献1から、原子力技術設備の燃料集合体用の受動型1相式冷却回路を備えた中間貯蔵システムが知られている。湿式貯蔵プールの内部空間はこの湿式貯蔵プール内に吊り下げられた熱交換器により冷却される。
【0005】
特許文献2は原子炉の燃料集合体用の貯蔵プールを開示しており、この場合にはプール水中に複数の熱交換器が浸漬されており、この場合、これらの熱交換器は固定的な結合なしにプール壁に掛けられている。
【0006】
特許文献3は燃料集合体用の貯蔵プールについて述べており、この場合には2相式冷却回路を有する複数の熱交換器がプールの縁に取り付けられており、冷媒は熱交換器内で相転移を行う。
【0007】
「ポスト福島原発事故」の対策において必要となった、主に前述の第2案に基づく、冗長度を有し且つ多様なプール冷却の追加装備は、しばしば、既設プール内において必要となる設置スペースが小さすぎるので、必要な数量の吊り下げ式冷却器を収容することができないという問題に直面している。この場合、唯一の打開策は、しばしば、高コストで且つ認可を得るのに煩雑な燃料集合体用貯蔵場所を新設計することとなる。さらに吊り下げ式冷却器の地震技術的に安全な取付は解決が困難である。というのは、既設のプール構造を溶接または穴あけで加工することは好ましくないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10217969A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2944962A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0051484A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、既設の燃料集合体プール内に省スペースで組み込むことができる冷却要素を提供することにある。さらに、燃料集合体プール内の冷却液を冷却するための相応のシステム、燃料集合体プール及び原子力技術設備が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
冷却要素に関する上記課題は、この冷却要素が燃料集合体ラック内で燃料集合体用の1つの未実装区画/位置に配置される、及び/又は、固定されることができるように、この冷却要素が寸法決めされ、構成されていることによって解決される。
【0011】
本発明の好適な形態は従属請求項の対象である。
【0012】
本発明は、原子力技術設備に対する今日の安全性要求によって、信頼性があり、モジュール式に設置可能で、冗長性を有し又は補完的に利用可能な冷却システムへの要求が急激に高まっている、という考えに基づく。既知の解決法は一般的に構造的に複雑であり、さらに場合によっては、新設計の安全性に関し不確実性が生じ、その結果として新たな認可も不確実となる。
【0013】
そこで、これらの理由から、実施に際して冷却プールないし冷却システムの変更が不要であるか、あるいは、わずかな変更で済むような技術的解決法が望まれている。
【0014】
これまで他のコンポーネントを配置するために利用された既存の構造空間ないしスペースが複数の冷却要素を収容するために利用されることによって、プール水の冷却のためのこの種の技術的解決法を実現することができることが今や明らかになった。さらに、このために特に燃料集合体ラック内の複数の未実装のスロットないし縦穴が適していることが明らかになった。このためには、冷却要素がこれに対応して寸法決めされなければならない。すなわち、直径ないし断面に関し、及び、場合によってはその長さに関して、所定の寸法に適合されなければならない。このために、これらの冷却要素が確実に挿入でき、且つ、再び取り出すことができ、並びに、安定に配置されるように、これらの冷却要素は構成されなければならない。各冷却要素は場合によっては燃料集合体より長くすることもでき、その場所を占めるに際して、例えば、それに付設されている燃料集合体ラックのケース又は縦穴から上方へ突き出てもよい。上端部に、プール水を導く一種の漏斗すなわち一種の流入口を取り付けることもできる。
【0015】
好適には、各冷却要素は原理的に1つの燃料集合体の典型的な寸法を有する。典型的な寸法に対する概略の標準値という意味で、これに関して単に例として述べると、加圧水型原子炉の典型的な燃料集合体は15×15本の燃料棒を含有し、長さは約4500mmで、辺の長さが約250mmの正方形断面を有する。EPRタイプの加圧水型原子炉の燃料集合体は例えば18×18本の燃料棒を含有し、これに応じてより大きい辺の長さを有する。沸騰水型原子炉の燃料集合体は例えば8×8本の燃料棒を含有し、これに応じてより小さい辺の長さを有する。しかし、例えば六角形断面を有する燃料集合体、又は、さらに他の形状の燃料集合体もある。さらに、冷却要素も、燃料集合体ケースとも称される燃料集合体ラックが特にこの利用のために作られた特殊寸法を有する場合には、典型的な寸法とは異なることが可能である。
【0016】
好適にはこの冷却要素は燃料集合体ラック内に吊り下げるための吊り下げ式冷却要素として形成されている。好適にはこの冷却要素は組み立て後に、燃料集合体用の複数の未実装区画/位置の1つに配置されている。代案として、この冷却要素は燃料集合体ケースと並んで、ないし、燃料集合体ラックの外壁の外側に配置されている。この場合、燃料集合体の縦穴は冷却要素を固定する保持具を収容するのに役立つ。この代案では、冷却要素の空間的な寸法は縦穴の大きさによる制限を受けない。
【0017】
1つの可能な実施形態において、この熱交換器は、付属する冷却回路内を案内される冷媒を通して導くための冷媒チャネルを有し、冷却要素は冷却回路に接続、あるいは、組込むための少なくとも1つの冷媒入口接続部及び少なくとも1つの冷媒出口接続部を含む。この種の冷却要素は特に1相式の冷却回路に適し、この場合には冷媒が熱交換器内で熱を吸収するが、その凝縮状態は変化しない。
【0018】
しかし、好適な1実施形態では、この冷却要素が2相式の冷却回路に組み込むために構成されており、この場合には、冷媒を凝縮液溜めに供給するための少なくとも1つの凝縮液チャネルが設けられており、この熱交換器は蒸発した冷媒を蒸気溜めに導くための少なくとも1つの蒸発器チャネルを含み、この冷却要素はさらに冷却回路に接続するための1本の往き配管及び1本の戻り配管を含む。循環する冷媒の凝縮状態が蒸発器において液体から気体に変えられ、その後、燃料集合体プールの外部に設けられている凝縮器において再び元に戻される、2相式の冷却回路ないし熱伝達回路は1相式の冷却回路に比べて一般的により高い熱伝達率を可能とする。
【0019】
構造面に関しては、各冷却要素/クーラーは好適に、この冷却回路内を循環する冷媒用の多数のパイプ状の冷媒チャネルを有し、これらの冷媒チャネルは組み込み位置において好適には縦穴の縦方向に対して平行に燃料集合体ラック内に配設されている。好適には、これら複数の冷媒チャネルの内の比較的少数が下部の凝縮液溜めへ向けての凝縮液供給のために使用され(下降流)、比較的多数が凝縮液の蒸発のために、ないし、その結果得られた蒸気と液体の混合体を上部の蒸気溜めに導くために使用される(上昇流)。このクーラーは複数のパイプに替えて、又はこれに加えて、貫流される複数のプレートを有することもできる。これらのパイプ又はプレートの間をプール水が、好適には上から下へ、相応の複数の中空空間又はチャネルを通って流れ、この時にプール水は好適には沸騰に至らされる冷却回路内の冷媒に熱を与えることによって冷却される。蒸気溜めないし凝縮液溜めは、流路として並列に接続されている複数のパイプを互いに結合する一方で、他方では、適切な複数の開口部又はこれと同等部によって、プール水が蒸気溜めないし凝縮液溜めを通って貫流することが保証されなければならない。
【0020】
冷却要素の断面積のどの割合が冷却回路の冷媒を導くパイプ/プレートのために使用されるか、どの割合がプール水の下降流のために使用されるか、という設計は、個々のケースにおいて与えられた熱力学的な周囲条件に基づいて行われる。
【0021】
場合によっては、例えば、複数のパイプないし接続管を適切に相互接続して得られる1つの共通の蒸気溜めによって、多数のこのような冷却要素を機能的に統合することもできる
【0022】
様々な実施形態において、この冷却要素を冷却システムに接続する配管は剛性を有するように又は可撓性を有するように施工することができる。これらの配管はいずれの場合にも耐圧性を有するように形成されなければならない。
【0023】
システムに関する課題は、燃料集合体ラック、及び、その中に挿入可能なないし挿入された少なくとも1つの前述した方式の冷却要素により解決される。
【0024】
燃料集合体プールに関する課題は、該燃料集合体プールが冷却液、特に水(プール水)で満たされており、且つ、その中に上述のシステムが配置されていることにより解決される。この燃料集合体プールは好適には燃料集合体用の貯蔵プールであり、特に、湿式貯蔵プール、使用済み燃料プール、中間貯蔵プール又は最終貯蔵プールである。
【0025】
原子力技術設備に関する課題は、この種の燃料集合体プールにより解決される。この原子力技術設備は好適にはさらに、各冷却要素と接続するための少なくとも1つの再冷却器を備えた循環方式の冷却システムを含む。この冷却システムは必要に応じて、能動型又は受動型の構成とすることができる。
【0026】
本発明の利点は特に、複数の前記冷却要素を用いて燃料集合体貯蔵プールの比較的簡単で、且つ、安定した冷却が得られることにある。これにより、プール冷却システムの複雑でない変更ないし補完が可能となる。モジュール式の構成により、冗長性並びに多様性を備えた冷却オプションを有する様々な問題解決アプローチが可能である。さらに、原子炉全負荷時の臨時冷却が可能となる。将来は場合によってはこれまでとは異なる原子炉燃焼度(Abbraende)が実用化されるので、このような冷却システムは非常に柔軟に使用することができよう。放射能減衰プロセスによる熱負荷の低減に対してより効果的に対応することもできる。
【0027】
本発明の1実施例が図を基に詳細に説明される。ここでは極めて模式化して示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】好適な1実施例による冷却要素の斜視図。
図2】燃料集合体プール内の冷却液を冷却するためのシステムの上面図で、このシステムは複数の燃料集合体が内部に配置された1つの燃料集合体ラック、及び、その内部に配置された図1による冷却要素2個を含む。
図3図2による冷却システムを備えた燃料集合体プールの上面図。
図4図3による燃料集合体プール及び付属する冷却システムを備えた原子力発電所の断面図。全ての図において同一部分には同一符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示された冷却要素2は1つの冷却要素本体8を含み、この冷却要素本体は冷却要素2の縦方向に延びている複数の凝縮液チャネル20と蒸発器チャネル56とを有し、これらの凝縮液チャネル20と蒸発器チャネル56とは平行に配設されたパイプとして形成されている。多数のパイプの替わりに、好ましくはこれに相当する大きな断面を有する単一のパイプを使用することもできる(又は、複数のプレートも)。冷却要素の頭部26に接続された少なくとも1本の往き配管32を介して、冷却要素2は冷却回路の凝縮器(ここには示されていない)と結合されている、ないし、接続されている。
【0030】
凝縮液、すなわち、液状の冷媒が往き配管32を介して冷却要素2に向けて矢印34で示された往き方向に供給され、この凝縮液は、作用する重力加速度すなわち地表面での重力を示す重力ベクトル38に沿って複数の凝縮液チャネル20の中を、冷却要素2の脚部44に配置された凝縮液溜め50に向けて流れ下る。そこから、凝縮液溜め50における予熱されていても未だ液状の流体、すなわち、冷媒は、冷却要素2内に配置された複数のパイプ状の蒸発器チャネル56を通って重力ベクトル38とは逆方向に、頭部26に配置された蒸気溜め62に向けて上昇する。これにより、これらの蒸発器チャネル56は冷媒蒸発器として作用する熱交換器ないし熱伝達体64を形成する。
【0031】
冷媒が上昇し蒸発する間の蒸発プロセスにより、プール水から熱エネルギが吸収され、これによってプール水は冷却される。これにより2相式の冷却システムが実現され、この際、冷却回路内を循環する冷媒は冷却要素2を貫流する間にその相状態を液体から気体に変える。
【0032】
蒸気は蒸気溜め62から、好適には上昇管の形態の少なくとも1本の戻り配管を介して、冷媒の再冷却のために設けられた凝縮器(図1には示されていない)に矢印70で示された戻り方向で供給され、そこで凝縮する。好適には下降管の形態の往き配管32を介して、この凝縮液はあらためて冷却要素2に供給され、これによりこの回路が完成する。冷却回路内部の質量流は能動的な機械的方法(ポンプなど)又は受動的な方法(自然対流ないし自由対流の原理による)で実現することができる。
【0033】
上述した冷却により、プール側で密度勾配が生じるので、プール水の重力ベクトル38方向の流れが誘導される。下降流はいわゆる対流の役割の一部であり;他の役割部分は隣接する燃料集合体98においてこれに対応する上昇流により実現される。プール水は、冷却要素2の頭部26において複数の蒸発器チャネル56の間に配置されて縦方向に延びている中間空間130に流入し、このことが矢印74で示されている。プール水は次に冷却要素2を通って重力ベクトル38の方向に流れ、この時にその熱を複数の蒸発器チャネル56の中を上昇している冷媒に与える。プール水は冷却要素2の脚端部44から再び流出し、このことが矢印80で示されている。
【0034】
冷却要素2が燃料集合体ラック92から若干上方へ突き出ていると、プール水は蒸気溜め62の相応の開口部を通って流れる必要はなく、横方向に流れることができる。
【0035】
冷却要素2はその空間的な寸法ないしディメンジョンに関し、次のように構成されている。すなわち、この冷却要素2は図2において重力ベクトル38の方向から、すなわち、ほぼ上方から示された燃料集合体貯蔵ラック、または、略記して燃料集合体ラック92の中に挿入する、ないし、組み込むことができるように構成されている。このために、冷却要素2は吊り下げ式クーラーとして形成されている。燃料集合体ラック92の中に吊り下げるために、冷却要素2は適切な形状、及び、場合により適切な複数の突起又は保持コンポーネントを有する。しかし、冷却要素2は燃料集合体ラック92の床に据えることもできる。
【0036】
図2では複数の燃料集合体98が挿入された燃料集合体ラック92が上方からの上面図で示されている。この燃料集合体ラック92は断面が、すなわち上面図で見て、2次元の格子に形成されている。燃料集合体ラック92の中に多数の燃料集合体98が挿入されている。この燃料集合体ラック92はここでは1つの未実装区画106を有する。
【0037】
燃料集合体ラック92はこの実施例では燃料集合体98用の25個の組み込み若しくは挿入区画、又は、縦穴(スロット)104を有する。これらの挿入区画の内の2つに、燃料集合体98の替わりに冷却要素2が挿入されている。極端な場合には、全ての挿入区画を冷却要素2で占めることができる。
【0038】
この場合、冷却要素2の縦方向14の長さIは燃料集合体98の長さとほぼ同じである。しかし、この長さIは幾分大きく選ぶことができ、その結果、各冷却要素2は燃料集合体ラック92から上方へ突きだし、プール水は横方向にも流入することができる(前述を参照)。各冷却要素2はこの実施例では全長にわたってほぼ一定の正方形の断面を有する。各冷却要素2の幅bは、冷却要素2を収容するために設けられている縦穴104の内法とほぼ同じである。これらの寸法決めにより、各冷却要素2は燃料集合体98と同様な方法で縦穴104に差し込むことができる。
【0039】
詳細には説明しない代案において、冷却要素2は燃料集合体ラック92の外側に配置することができ、この場合、固定は燃料集合体ラック92で行われ、すなわち、好適には、空の縦穴104に係合してその中に固定されている保持具を用いて固定される。
【0040】
燃料集合体ラック92と、その中に又はその外面に配置された複数の冷却要素2とが、燃料集合体プール内の冷却液を冷却するためのシステム110を形成する。
【0041】
図3は、例えば外部の貯蔵場所(中間貯蔵)における燃料集合体プール115の模式図であり、そのプール内に燃料集合体ラック92が配置されており、この燃料集合体ラックは少なくとも元々燃料集合体98用に設けられた幾つかの位置に複数の冷却要素2を収容している。これらの冷却要素2はそれぞれ単独で、又は、幾つかのグループにまとめられて複数の冷却回路120に接続されている。これらの冷却回路120は(相応のポンプ134により)能動的にも、又は、受動的にも駆動することができる。冷却要素2で加熱された冷媒を再冷却するために、これに対応する複数の再冷却器136が、燃料集合体プール115を取り囲んでいる建屋の内部または外部に配置されており、適切なヒートシンクと熱的に結合されている。好適に使用される2相式の冷却回路120では、冷却要素2はこの回路内を案内される冷媒の蒸発器として、再冷却器136は凝縮器として機能する。
【0042】
このことは図4に例示された原子力発電所についても同様に適用される。この発電所は原子炉建屋内に、原子炉圧力容器138を備えた原子炉ピットと並んで設置されている燃料集合体プール115(使用済み燃料プール)を有している。
【符号の説明】
【0043】
2 冷却要素
8 冷却要素本体
14 縦方向
20 凝縮液チャネル
26 頭部
32 往き配管
34 矢印
38 重力ベクトル
44 脚部
50 凝縮液溜め
56 蒸発器チャネル
62 蒸気溜め
64 熱交換器(熱伝達体)
68 戻り配管
70 矢印
74 矢印
80 矢印
92 燃料集合体ラック
98 燃料集合体
104 縦穴
106 未実装区画
110 システム
115 燃料集合体プール
120 冷却回路
130 中間空間
134 ポンプ
136 再冷却器
138 原子炉圧力容器
I 長さ
b 幅
図1
図2
図3
図4