特許第6511105号(P6511105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6511105切割方法、その切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置及びウェハー製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511105
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】切割方法、その切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置及びウェハー製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20190425BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190425BHJP
   B24B 1/04 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B24B27/06 H
   H01L21/304 611W
   H01L21/304 611Z
   B24B1/04 B
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-166567(P2017-166567)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-43341(P2018-43341A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】105129735
(32)【優先日】2016年9月13日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514213682
【氏名又は名称】友達晶材股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AUO Crystal Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 農晏
(72)【発明者】
【氏名】▲チャン▼ 志鴻
(72)【発明者】
【氏名】陳 政羨
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−194706(JP,A)
【文献】 特開平03−111104(JP,A)
【文献】 特開平09−097773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 1/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容する収容空間があるように構成されている貯液槽と、前記貯液槽の前記収容空間内に設置されていて、超音波振動を発する超音波発振機と、引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備える上、前記複数の切割ワイヤは、ダイヤモンドの砥粒を含有し、且つ、水平面にて並列方向に沿って並列して所定の方向に延伸するように配列されており、前記超音波発振機は、前記並列方向に沿って、前記貯液槽に設置されている複数の超音波振動子を備えている超音波ワイヤ切割装置を用意し、超音波振動を伝導できる伝導用液体を、液面が前記貯液槽内において所定の高さに達するように前記貯液槽に注入し、前記複数の切割ワイヤとして、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものを使用し、且つ、前記複数の切割ワイヤを、上方からくる被切割物が切割され始める時点から、下方へ進む先頭が前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、前記切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記液面より上方に所定の距離の位置に設置する準備工程と、
前記超音波ワイヤ切割装置を作動させ、そして、被切割物を前記切割ワイヤの上方から前記切割ワイヤに切割されるように下方へ移動させ、前記下方移動により前記スリットを形成しながら被切割物の当該スリットの開口が形成された先頭を前記伝導用液体に進入させ、被切割物の前記下方移動中に、被切割物の前記スリットの開口が形成された先頭が前記伝導用液体に接触し始めた時点から前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導して、前記切割ワイヤで前記被切割物を超音波切割するウェット切割段階を行う切割工程と、を含み、
前記切割工程において、超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導することにより、自身の長手方向に往復動する切割ワイヤ4が、更に該長手方向と異なる方向で振動し一定の時間内に被切割物700と接触する面積が増えて、切割力が向上する上に、前記振動により伝導用液体200内に微細な泡が発生し且つ破裂するキャビテーションで、スリット400内及び切割ワイヤ4上の切り屑及び切割された被切割物700に付着する切り屑を除去することを特徴とする切割方法。
【請求項2】
前記準備工程において、前記距離を200mm以内に設定して前記切割ワイヤを設置することを特徴とする請求項1に記載の切割方法。
【請求項3】
前記準備工程において、前記切割ワイヤとして直径が40μm〜150μmの範囲内にあるものを使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切割方法。
【請求項4】
上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容収容空間があるように構成されている貯液槽と、
前記貯液槽に設置されていて、超音波振動を発する超音波発振機と、
引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備えており、
前記複数の切割ワイヤは、いずれも、ダイヤモンドの砥粒を含有し、且つ、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものであって、前記貯液槽に前記伝導用液体が注入されて、切割作業中に上方からくる被切割物が切割され始める時点から下方へ進む先頭がすでに前記貯液槽に収容されている前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記伝導用液体の前記液面より上方に所定の距離の位置に設置されていると共に、水平面にて並列方向に沿って並列して所定の方向に延伸するように配列されており、
前記超音波発振機は、前記並列方向に沿って、前記貯液槽に設置されている複数の超音波振動子を備えており、
前記ドライ切割段階で前記スリットが形成された被切割物の当該スリットの開口が前記伝導用液体に接触し始めた時点から、前記伝導用液体が前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導するように構成されていることを特徴とする超音波ワイヤ切割装置。
【請求項5】
前記複数の切割ワイヤは、いずれも、直径が40μm〜150μmの範囲内にあるものであることを特徴とする請求項4に記載の超音波ワイヤ切割装置。
【請求項6】
前記切割ワイヤは、前記距離が200mm以内になるように設置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の超音波ワイヤ切割装置。
【請求項7】
上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容する収容空間があるように構成されている貯液槽と、前記貯液槽の前記収容空間内に設置されていて、超音波振動を発する超音波発振機と、引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備える上、前記複数の切割ワイヤは、ダイヤモンドの砥粒を含有し、且つ、水平面にて並列方向に沿って並列して所定の方向に延伸するように配列されており、前記超音波発振機は、前記並列方向に沿って、前記貯液槽に設置されている複数の超音波振動子を備えている超音波ワイヤ切割装置を用意し、超音波振動を伝導できる伝導用液体を、液面が前記貯液槽内において所定の高さに達するように前記貯液槽に注入し、前記複数の切割ワイヤとして、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものを使用し、且つ、前記複数の切割ワイヤを、上方からくる被切割物が切割され始める時点から、下方へ進む先頭が前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、前記切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記液面より上方に所定の距離の位置に設置する準備工程と、
前記超音波ワイヤ切割装置を作動させ、そして、ウェハーの原料となる結晶シリコンインゴットを前記切割ワイヤの上方から前記切割ワイヤに切割されるように下方へ移動させ、前記下方移動により前記スリットを形成しながら結晶シリコンインゴットの当該スリットの開口が形成された先頭を前記伝導用液体に進入させ、結晶シリコンインゴットの前記下方移動中に、結晶シリコンインゴットの前記スリットの開口が形成された先頭が前記伝導用液体に接触し始めた時点から前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記結晶シリコンインゴットに伝導して、前記切割ワイヤで前記結晶シリコンインゴットを超音波切割するウェット切割段階を行って、複数のウェハーを得る切割工程と
前記ウェハーをエッチングするエッチング工程と、を備えることを特徴とするウェハー製造方法。
【請求項8】
被切割物を切割するための複数の切割ワイヤを有する超音波ワイヤ切割装置であって、
上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容収容空間があるように構成されている貯液槽と、前記貯液槽の前記収容空間内に設置されている超音波発振機と、を備えており、
前記複数の切割ワイヤは、いずれも、ダイヤモンドの砥粒を含有し、且つ、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる、直径を有するものであって、前記貯液槽に前記伝導用液体が注入されて、切割作業中に上方からくる被切割物が切割され始める時点から下方へ進む先頭がすでに前記貯液槽に収容されている前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記伝導用液体の前記液面より上方に所定の距離の位置で引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断して互いに平行し、且つ、該横断している切割ワイヤの長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるようにて設置されていると共に、水平面にて並列方向に沿って並列して所定の方向に延伸するように配列されており、
前記超音波発振機は、前記並列方向に沿って、前記貯液槽に設置されている複数の超音波振動子を備えており、
それにより、被切割物の前記スリットの開口がなった先頭が前記伝導用液体に接触し始めると、前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導して、前記切割ワイヤで前記被切割物を超音波切割することができることを特徴とする超音波ワイヤ切割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波を利用する切割方法、その切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置及びウェハー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、超音波を利用する切割方法及びその切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置が記載されている。特許文献1に記載されている超音波ワイヤ切割装置1は、図1に示されるように、上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体(砂の懸濁液)11を収容する貯液槽12と、貯液槽12内に設置されている超音波振動子13と、引っ張られていて貯液槽12の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤ15と、該複数の切割ワイヤ15をその長手方向に往復動させることができるように複数の切割ワイヤ15が設置されていて、貯液槽12の反対両側に設置されている2つのロール14と、を備える。
【0003】
特許文献1に記載されている切割方法において、ウェハーの原料となる結晶シリコンインゴット100を被切割物とし、図2に示されるように、ロール14を回転することにより、切割ワイヤ15を長手方向に往復動させ、そして、結晶シリコンインゴット100を切割ワイヤ15の上方から切割ワイヤ15に切割されるように下方へ移動させて、切割ワイヤ15を伝導用液体11に浸入するように押圧して下方へ変形させることにより、切割ワイヤ15が伝導用液体11に浸入すると共に超音波発振子13から発する超音波振動が伝導用液体11を介して切割ワイヤ15及び結晶シリコンインゴット100に伝導して、切割ワイヤ15で結晶シリコンインゴット100を超音波切割する状態で結晶シリコンインゴット100を切割する。
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている切割方法は、被切割物と切割ワイヤ15とを伝導用液体11に浸入させた状態で切割するので、切割ワイヤ15の切割エネルギーが伝導用液体11の抵抗により多く耗損され、且つ、切割ワイヤ15が断裂しやすくなり、切割位置からズレやすくなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第103085179A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点に鑑みて、本発明は、伝導用液体の抵抗による耗損を減少でき、切割ワイヤが断裂しまたは切割位置からズレにくい切割方法、その切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置及びウェハー製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、上方に開口を有する貯液槽と、前記貯液槽に設置されている超音波発振機と、引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備える超音波ワイヤ切割装置を用意し、超音波振動を伝導できる伝導用液体を、液面が前記貯液槽内において所定の高さに達するように前記貯液槽に注入し、前記複数の切割ワイヤとして、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものを使用し、且つ、前記複数の切割ワイヤを、上方からくる被切割物が切割され始める時点から、下方へ進む先頭が前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、前記切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記液面より上方に所定の距離の位置に設置する準備工程と、前記超音波ワイヤ切割装置を作動させ、そして、被切割物を前記切割ワイヤの上方から前記切割ワイヤに切割されるように下方へ移動させ、前記下方移動により前記スリットを形成しながら被切割物の当該スリットの開口がなった先頭を前記伝導用液体に進入させ、被切割物の前記下方移動中に、被切割物の前記スリットの開口がなった先頭が前記伝導用液体に接触し始めた時点から前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導して、前記切割ワイヤで前記被切割物を超音波切割するウェット切割段階を行う切割工程と、を含むことを特徴とする切割方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容できるように構成されている貯液槽と、前記貯液槽に設置されている超音波発振機と、引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備えており、前記複数の切割ワイヤは、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものであって、前記貯液槽に前記伝導用液体が注入されて、切割作業中に上方からくる被切割物が切割され始める時点から下方へ進む先頭がすでに前記貯液槽に収容されている前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記伝導用液体の前記液面より上方に所定の距離の位置に設置されていることを特徴とする超音波ワイヤ切割装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上方に開口を有する貯液槽と、前記貯液槽に設置されている超音波発振機と、引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断し、且つ、長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤと、を備える超音波ワイヤ切割装置を用意し、超音波振動を伝導できる伝導用液体を、液面が前記貯液槽内において所定の高さに達するように前記貯液槽に注入し、前記複数の切割ワイヤとして、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有するものを使用し、且つ、前記複数の切割ワイヤを、上方からくる被切割物が切割され始める時点から下方へ進む先頭が前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記液面より上方に所定の距離の位置に設定する準備工程と、前記超音波ワイヤ切割装置を作動させ、そして、ウェハーの原料となる結晶シリコンインゴットを前記切割ワイヤの上方から前記切割ワイヤに切割されるように下方へ移動させ、前記下方移動により前記スリットを形成しながら結晶シリコンインゴットの当該スリットの開口がなった先頭を前記伝導用液体に進入させ、結晶シリコンインゴットの前記下方移動中に、結晶シリコンインゴットの前記スリットの開口がなった先頭が前記伝導用液体に接触し始めた時点から前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記結晶シリコンインゴットに伝導して、前記切割ワイヤで前記結晶シリコンインゴットを超音波切割するウェット切割段階を行って、複数のウェハーを得る切割工程と前記ウェハーをエッチングするエッチング工程と、を含むことを特徴とするウェハー製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、被切割物を切割するための複数の切割ワイヤを有する超音波ワイヤ切割装置であって、上方に開口を有しながら超音波振動を伝導できる伝導用液体を収容できるように構成されている貯液槽と、前記貯液槽に設置されている超音波発振機と、を備えており、前記複数の切割ワイヤは、いずれも、上方からくる被切割物に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる、直径を有するものであって、前記貯液槽に前記伝導用液体が注入されて、切割作業中に上方からくる被切割物が切割され始める時点から下方へ進む先頭がすでに前記貯液槽に収容されている前記伝導用液体の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、切割ワイヤが上方からくる被切割物の押圧による下方への変形で前記伝導用液体と接触しないように、前記伝導用液体の前記液面より上方に所定の距離の位置で引っ張られていて前記貯液槽の前記開口の上方を横断して互いに平行、且つ、該横断している切割ワイヤの長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるようにて設置されており、それにより、被切割物の前記スリットの開口がなった先頭が前記伝導用液体に接触し始めると、前記伝導用液体は前記スリットによる前記毛細管現象で、前記スリット内に吸い上げられ、前記スリット内にある前記切割ワイヤを濡らすと共に、前記超音波発振機から発する超音波振動が前記伝導用液体を介して前記切割ワイヤ及び前記被切割物に伝導して、前記切割ワイヤで前記被切割物を超音波切割することができることを特徴とする超音波ワイヤ切割装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、本発明の切割方法は、先ず超音波振動を伝導できる伝導用液体を、液面が貯液槽内において所定の高さに達するように貯液槽に注入し、そして、毛細管現象が生ずる幅のスリットを被切割物に形成できる直径を有する切割ワイヤを使用し、且つ、切割ワイヤを被切割物の押圧による下方への変形で伝導用液体と接触しないように伝導用液体の液面より上方に所定の距離の位置に設置するので、被切割物のスリットの開口が形成された先頭が伝導用液体に接触し始めた時点から伝導用液体はスリットによる毛細管現象で、スリット内に吸い上げられ、スリット内にある切割ワイヤを濡らし、切割ワイヤが伝導用液体に浸入せず超音波切割ができる。従って、従来の切割方法または超音波ワイヤ切割装置よりも伝導用液体の抵抗による耗損を減少でき、切割ワイヤが断裂しまたは切割位置からズレにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】特許文献1の超音波ワイヤ切割装置を示す断面図である。
図2】上記の超音波ワイヤ切割装置で結晶シリコンインゴットを切割することを示す断面図である。
図3】本発明の切割方法のプロセスを示す図である。
図4】本発明の超音波ワイヤ切割装置の第1の実施形態を示す部分断面図である。
図5図4におけるV-V線に沿った部分断面図である。
図6】本発明の超音波ワイヤ切割装置の第2の実施形態を示す断面図である。
図7】上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する前の状態を示す部分断面図である。
図8】上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する途中の状態を示す部分断面図である。
図9】上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する過程を示す部分断面図である。
図10】比較例の表面Rsの光学顕微鏡による画像である。
図11】比較例の表面Psの光学顕微鏡による画像である。
図12】実施例の表面Rsの光学顕微鏡による画像である。
図13】実施例の表面Psの光学顕微鏡による画像である。
図14】比較例の表面Rsがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。
図15】比較例の表面Psがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。
図16】実施例の表面Rsがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。
図17】実施例の表面Psがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の切割方法、その切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置の各実施形態及びウェハー製造方法について詳しく説明する。
【0014】
図3は本発明の切割方法のプロセスを示す図である。図4は本発明の超音波ワイヤ切割装置の第1の実施形態を示す部分断面図である。図5図4におけるV-V線に沿った部分断面図である。
【0015】
本発明の切割方法は、図3に示されるように、準備工程101と切割工程102を順に行なう。
【0016】
準備工程101において、先ず、図4及び図5に示されるように、上方に開口211を有する貯液槽20と、貯液槽20に設置されていて、超音波振動を発する超音波発振機3と、貯液槽20の相対する両側のそれぞれに設置されている2つ切割駆動装置5と、引っ張られていて貯液槽20の開口211の上方を横断し、且つ、2つの切割駆動装置5の作動により長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように2つ切割駆動装置5を渡るように設置されている複数の切割ワイヤ4と、を備える超音波ワイヤ切割装置2を用意する。また、複数の切割ワイヤ4において貯液槽20の開口211の上方を横断する部分は、互いに平行するので、切割ワイヤネットと称することもできる。
【0017】
そして、超音波振動を伝導できる伝導用液体200を、液面201が貯液槽20内において所定の高さに達するように貯液槽20に注入する。
【0018】
図5及び図7に示されるように、複数の切割ワイヤ4として、いずれも、上方からくる被切割物700に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリット400を被切割物700に形成できる直径Rを有するものを使用し、且つ、複数の切割ワイヤ4を、上方からくる被切割物700が切割され始める時点から下方へ進む先頭が伝導用液体200の液面201に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に切割ワイヤが上方からくる被切割物700の押圧による下方への変形で伝導用液体200と接触しないように、液面201より上方に所定の距離Hの位置に設置する。
【0019】
スリット400の前記幅は、切割の際に、スリット400内にある切割ワイヤ4を濡らすように伝導用液体200を吸い上げできる毛細管現象を生じるように形成される。
【0020】
図7は上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する前の状態を示す部分断面図である。図8は上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する途中の状態を示す部分断面図である。図9は上記第1の実施形態の超音波ワイヤ切割装置で被切割物を切割する過程を示す部分断面図である。
【0021】
切割工程102において、先ず、図7及び図9に示されるように、超音波ワイヤ切割装置2を作動させる。そして、被切割物700を切割ワイヤ4の上方から切割ワイヤ4に切割されるように下方へ移動させ、図8及び図9に示されるように、該下方移動によりスリット400を形成しながら被切割物700の当該スリット400の開口が形成された先頭を伝導用液体200に進入させる。
【0022】
そうすると、被切割物700の前記下方移動中に、被切割物700のスリット400の開口が形成された先頭が伝導用液体200に接触し始めた時点から伝導用液体200はスリット400による前記毛細管現象で、スリット400内に吸い上げられ、スリット400内にある切割ワイヤ4を濡らすと共に、超音波発振機3から発する超音波振動が伝導用液体200を介して切割ワイヤ4及び被切割物700に伝導して、切割ワイヤ4で被切割物700を超音波切割するウェット切割段階を行う。
【0023】
図9に示されるように、この実施形態において、被切割物700を切割ワイヤ4の上方から切割ワイヤ4に切割されるように下方へ移動させて被切割物700が切割ワイヤ4に接触すると、切割ワイヤ4が被切割物700の押圧によって一部が下方への変形し、伝導用液体200の液面201に接近すると共に、被切割物700に毛細管現象が生ずる幅のスリット400を切り出す。当該下方への変形は、受けた押圧力により変形の程度に差が生じる。
【0024】
そして、被切割物700のスリット400の開口が形成された先頭が伝導用液体200に接触すると、伝導用液体200は前記毛細管現象で、スリット400内に吸い上げられ、超音波発振機3から発する超音波振動が切割ワイヤ4及び被切割物700に伝導されて、切割ワイヤ4で被切割物700を超音波切割する。切割完了後、切割ワイヤ4は元の位置に戻る。なお、切割工程102において、切割ワイヤ4は、両側が伝導用液体200の液面201より上方に所定の距離Hの位置に保持されると共に、伝導用液体200の液面201に接触しない。
【0025】
また、この実施形態において、切割ワイヤ4として、表面にダイヤモンドの砥粒を有するダイヤモンドワイヤを使用するので、数回の切割作業を行うと、切割ワイヤ4における表面のダイヤモンドの砥粒が摩耗または脱落して、切割力が落ちる。その際、切割力を維持するため、被切割物700が切割ワイヤ4に対する押圧が強くなるので、切割ワイヤ4は伝導用液体200の液面201に接触するように変形する恐れがある。
【0026】
超音波発振機3から発する超音波振動が伝導用液体200を介して切割ワイヤ4及び被切割物700に伝導すると、自身の長手方向に往復動する切割ワイヤ4が、更に該長手方向と異なる方向で振動するので、一定の時間内に被切割物700と接触する面積が増えて、切割力が向上することができる。
【0027】
また、超音波発振機3から発する超音波振動により、伝導用液体200内に微細な泡が発生し且つ破裂するキャビテーション(cavitation effect)生じ、このキャビテーションは、スリット400内及び切割ワイヤ4上の切り屑を除去する効果があり、切割した後、切割された被切割物700を取り上げる際にも、切割された被切割物700に付着する切り屑などの汚れを洗浄する効果がある。
【0028】
この実施形態において、切割ワイヤ4を切割ワイヤ4を直径Rが40μm〜150μmの範囲内にあるものを使用する。
【0029】
伝導用液体200としては、特に制限が無く、当業者が一般に超音波切割に使用する液体を用いることができ。例えば、水、オイル、アルコール類、高密度混合液などの液体を使用することができる。被切割物700としては、結晶体、金属、合金、セラミックなどの固い物体が挙げられる。
【0030】
液面201より上方の距離Hは、過大に設定されると、切割ワイヤ4に伝導された超音波のエネルギーが大きく減衰されるので、距離Hを被切割物700の厚さ以下になるように設定することが好ましく、例えば8インチウエハーの原料となる結晶シリコンインゴットの厚さ(直径)が200mmの場合、液面201より上方の距離Hを、200mm以内に設定して切割ワイヤ4を設置し、20mm〜160mmの範囲内に設定して切割ワイヤ4を設置することが好ましく、10mm〜60mmの範囲内に設定して切割ワイヤ4を設置することがより好ましい。
【0031】
上記の方法によれば、切割ワイヤ4は、スリットによる毛細管現象で、スリット内に吸い上げられる伝導用液体200で濡らされるので、切割ワイヤ4が伝導用液体200に浸入せずに超音波切割を行うことができる。従って、従来の切割方法よりも伝導用液体200の抵抗による耗損を減少でき、切割ワイヤ4が断裂しまたは切割位置からズレにくくなる。
【0032】
本発明のウェハー製造方法は、上記の切割方法を使用して結晶シリコンインゴットを切割して複数のウェハーを得た後、更に該ウェハーをエッチングするエッチング工程を備える製造方法である。
【0033】
前記エッチング工程は、公知のエッチング方法及びエッチング液で、該ウェハーの表面をエッチングすることにより、該ウェハーの表面を粗面化する工程である。
【0034】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明のウェハー製造方法の効果を説明する。
【0035】
実施例は、本発明のウェハー製造方法により製造されたウェハーである。比較例は、超音波発振機3を使用せずに切割したウェハーである。
【0036】
実施例及び比較例のウェハーは、切割ワイヤ4の往復動により、結晶シリコンインゴットを切割して得るもので、切割ワイヤ4がウェハーの表面になる結晶シリコンインゴットのスリット400の両側面、即ち図8の側面A及び側面Bで示す面に接触する頻度が一定ではない。従って、側面A及び側面Bには、接触頻度が高く、切割より生じる縞模様が多い表面(Rich−side、以下「表面Rs」に略称する)と、接触頻度が低く、切割より生じる縞模様が少ない表面(Poor−side、以下「表面Ps」に略称する)とを有する。即ち、側面Aには、表面Rs及び表面Psを有し、側面Bには、表面Rs及び表面Psを有する。
【0037】
次に、光学顕微鏡で実施例及び比較例の一部の表面を分析する。
【0038】
図10は比較例の表面Rsの光学顕微鏡による画像である。図11は比較例の表面Psの光学顕微鏡による画像である。図12は実施例の表面Rsの光学顕微鏡による画像である。図13は実施例の表面Psの光学顕微鏡による画像である。
【0039】
図10図13に示されるように、実施例のウェハーの表面Rs及び表面Psは、脆性(もろさ)構造が比較例のウェハーの表面Rs及び表面Psより多く、且つより均一に分布している。
【0040】
そして、同じ表面にエッチングした後、光学顕微鏡でエッチングされた実施例及び比較例の一部の表面を分析する。
【0041】
図14は比較例の表面Rsがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。図15は比較例の表面Psがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。図16は実施例の表面Rsがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。図17は実施例の表面Psがエッチングされた後の光学顕微鏡による画像である。
【0042】
図14図17に示されるように、エッチングされた実施例のウェハーの表面Rs及び表面Psは、脆性構造が多いので、スエード(suede)構造がエッチングされた比較例のウェハーの表面Rs及び表面Psより均一に形成されて、他のデバイスに適用されると、より優れた効果を有する。
【0043】
なお、本発明の切割方法により、切割された表面の反射率が33%以下になるので、多結晶シリコンを切割して太陽電池に適用すると、高反射率により太陽電池が短絡して出力電流が低下することを減少でき、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【0044】
本発明の超音波ワイヤ切割装置は、上記本発明の切割方法に使用する超音波ワイヤ切割装置であって、以下、本発明の超音波ワイヤ切割装置の各実施形態について詳しく説明する。
【0045】
<第1の実施形態>
本発明の超音波ワイヤ切割装置2は、図4及び図5に示されるように、上方に開口211を有し、且つ超音波振動を伝導できる伝導用液体200を収容できるように構成されている貯液槽20と、貯液槽20に設置されている超音波発振機3と、貯液槽20の相対する両側のそれぞれに設置されている2つ切割駆動装置5と、引っ張られていて貯液槽20の開口211の上方を横断し、且つ、2つ切割駆動装置5の作動により長手方向に往復動し、摩擦により切割作業を行うことができるように設置されている複数の切割ワイヤ4と、を備えている。
【0046】
複数の切割ワイヤ4は、いずれも、図7図9に示されるように、上方からくる被切割物700に対して下から切割作業を行って、毛細管現象が生ずる幅のスリット400を被切割物700に形成できる直径Rを有するものであって、貯液槽20に伝導用液体200が注入されて、作業中に上方からくる被切割物700が切割され始める時点から、下方へ進む先頭がすでに貯液槽20に収容されている伝導用液体200の液面に接触した時点までの暫時のドライ切割段階に、切割ワイヤ4が上方からくる被切割物700の押圧による下方への変形で伝導用液体200と接触しないように、伝導用液体200の液面201より上方に所定の距離Hの位置に設置されている。
【0047】
複数の切割ワイヤ4は、いずれも、直径Rが300μm以下にあるものが好ましく、40μm〜150μmの範囲内にあるものがより好ましく、液面201より上方の距離Hが200mm以内になるように設置されていて、水平面にて並列方向Yに沿って所定の方向に延伸するように配列されている。
【0048】
この実施形態において、貯液槽20の開口211の上方にある複数の切割ワイヤ4は、表面にダイヤモンドの砥粒を有するダイヤモンドワイヤである。
【0049】
2つの切割駆動装置5は、複数の切割ワイヤ4を長手方向に往復動させて、摩擦により切割作業を行うことができる構成があれば、特に制限しない。
【0050】
例えば、回転駆動手段により回転駆動される2つのメインロールを有し、複数の切割ワイヤ4が該2つのメインロールに巻掛けるように設置されて、該メインロールの回転により複数の切割ワイヤ4が自身の長手方向に往復動することができるように構成することができ、或いは、回転駆動手段により回転駆動され、互いに平行に設置されている2つの駆動ロールと、該2つの駆動ロールのそれぞれの回転に連動されて回転できると共に該2つの駆動ロールの間に、該2つの駆動ロールと平行に設置されている2つの補助ロールと、を有し、複数の切割ワイヤ4が該2つの駆動ロール及び該2つの補助ロールに巻掛けるように設置されて、該回転駆動により往復動することができるように構成することもできる。駆動ロールの直径が補助ロールの直径より大きい場合、補助ロールの上端縁を駆動ロールの上端縁より高く設定する。なお、補助ロールに自己作動機能を有することもできる。
【0051】
この実施形態において、超音波発振機3は、図4に示されるように、貯液槽20の伝導用液体200を収容する収容空間21内において、底部の中央位置に設置されている。
【0052】
伝導用液体200の液面201の高度を調整するために、貯液槽20には、液進入口及び液排出口を開けることもできる。
【0053】
この構成によれば、切割ワイヤ4は、図9に示されるように、被切割物700を切割すると、スリット400による毛細管現象で、スリット内に吸い上げられる伝導用液体200で濡れるので、超音波発振機3から発する超音波振動が伝導用液体200を介してスリット内の切割ワイヤ4及び被切割物700に伝導し、切割ワイヤ4が伝導用液体200に浸入せず超音波切割ができる。従って、従来の切割方法より伝導用液体200の抵抗による耗損を減少でき、切割ワイヤ4が断裂しにくくなりまたは切割位置からズレにくくなる。
【0054】
<第2の実施形態>
本発明の超音波ワイヤ切割装置の第2の実施形態は、上記第1の実施形態と多くの構成が共通するので、ここでは詳しい説明を省略し、その相違点のみを説明する。
【0055】
図6は本発明の超音波ワイヤ切割装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【0056】
この実施形態において、図6に示されるように、超音波発振機3は、複数の切割ワイヤ4の並列方向Yに沿って、貯液槽20の複数の切割ワイヤ4の延伸方向の両端側に設置されている複数の超音波振動子31を備えている。
【0057】
なお、出力が異なる複数の超音波発振機3または複数の超音波振動子31を設置することができ、周波数が異なる複数の超音波発振機3または複数の超音波振動子31を設置することもできる。出力または周波数が異なる複数の超音波発振機3または複数の超音波振動子31を設置することにより、大きさが異なる切り屑を更に効率的に除去することができて、洗浄効果が向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の切割方法及び超音波ワイヤ切割装置は、一般の切割作業に使用することができ、更に切割してウェハーを製造することにさらに好適である。
【符号の説明】
【0059】
101 準備工程
102 切割工程
20 貯液槽
21 収容空間
211 開口
200 伝導用液体
201 液面
3 超音波発振機
31 超音波振動子
4 切割ワイヤ
400 スリット
5 切割駆動装置
700 被切割物
A、B 側面
R 直径
H 距離
Rs 表面
Ps 表面
Y 並列方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17