特許第6511148号(P6511148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511148
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】制御システム、作業機械、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20190425BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20190425BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20190425BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20190425BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F15B11/02 M
   F15B11/16 B
   E02F9/20 Z
   E02F9/20 M
   F02D45/00 345Z
   F02D29/04 G
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-541725(P2017-541725)
(86)(22)【出願日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2017027340
(87)【国際公開番号】WO2017188460
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神保 志文
(72)【発明者】
【氏名】北村 顕一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 善広
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−041093(JP,U)
【文献】 特開昭55−116932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00 − 11/22
F15B 11/22
F15B 21/14
E02F 3/42 − 3/43
E02F 3/84 − 3/85
E02F 9/20 − 9/22
F02D 29/00 − 29/06
F02D 43/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとを接続する流路に設けられ、前記流路が開けられ、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとが接続される合流状態と前記流路が閉じられ、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとが分離される分流状態とを切り換え可能な開閉装置と、
前記分流状態において前記第1油圧ポンプから吐出された作動油が供給される第1油圧アクチュエータと、
前記分流状態において前記第2油圧ポンプから吐出された作動油が供給される第2油圧アクチュエータと、
前記エンジンの出力が制限されるか否かを判定する判定部と、
前記エンジンの出力が制限されると前記判定部が判定したとき、前記合流状態になるように前記開閉装置を制御する合分流制御部と、
を備える制御システム。
【請求項2】
前記エンジンの排ガスを処理する排ガス処理装置を備え、
前記判定部は、前記排ガス処理装置が異常状態であると判定したとき、前記エンジンの出力が制限されると判定する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記エンジンの状態を検出するための排ガスセンサを備え、
前記判定部は、前記排ガスセンサが異常状態であると判定したとき、前記エンジンの出力が制限されると判定する、
請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1油圧アクチュエータ及び前記第2油圧アクチュエータのそれぞれを駆動するために操作される操作装置の操作量に基づいて、前記第1油圧アクチュエータ及び前記第2油圧アクチュエータのそれぞれに供給される前記作動油の配分流量を算出する配分流量算出部と、
前記配分流量に基づいて、前記分流状態にすることを決定する決定部と、を備え、
前記合分流制御部は、前記分流状態にすることを前記決定部が決定しても、前記エンジンの出力が制限されると前記判定部が判定したとき、前記合流状態になるように前記開閉装置を制御する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記エンジンに対する燃料噴射量を制御して前記エンジンの出力を制限するエンジン制御部を備える、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御システムを備える作業機械。
【請求項7】
前記第1油圧アクチュエータに駆動される第1作業機要素及び前記第2油圧アクチュエータに駆動される第2作業機要素を含む作業機を備え、
前記第1作業機要素は、バケット及び前記バケットに連結されるアームを含み、
前記第2作業機要素は、前記アームに連結されるブームを含み、
前記第1油圧アクチュエータは、前記バケットを駆動させるバケットシリンダ及び前記アームを駆動させるアームシリンダを含み、
前記第2油圧アクチュエータは、前記ブームを駆動させるブームシリンダを含む、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプを駆動するエンジンの出力が制限されることを示す制限信号を取得したとき、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとを接続する流路が開けられ、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとが接続される合流状態と前記流路が閉じられ、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとが分離される分流状態とを切り換え可能な開閉装置に、前記合流状態になるように指令信号を出力することと、
前記合流状態において、前記第1油圧ポンプから吐出された作動油及び前記第2油圧ポンプから吐出された作動油を、第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータのそれぞれに供給することと、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム、作業機械、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機を有する作業機械の一種として油圧ショベルが知られている。油圧ショベルの作業機は、油圧シリンダによって駆動される。油圧シリンダは、油圧ポンプから吐出された作動油によって作動する。特許文献1には、第1油圧ポンプから吐出された作動油と第2油圧ポンプから吐出された作動油とが合流する合流状態と合流しない分流状態とを切り換える合分流弁を有する油圧制御装置が記載されている。分流状態においては、第1油圧ポンプから吐出された作動油により第1油圧アクチュエータが作動し、第2油圧ポンプから吐出された作動油により第2油圧アクチュエータが作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/047709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプはそれぞれ、エンジンによって駆動される。エンジンの出力が低下すると、第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプのそれぞれから吐出される作動油の流量が減少する。エンジンの出力が低下したとき、分流状態が維持されると、第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量が減少する。その結果、作業機の作動速度が低下して、作業機械の作業性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、エンジンの出力が低下したとき、作業機の作動速度の低下を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、エンジンと、前記エンジンによって駆動される第1油圧ポンプ及び第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプと前記第2油圧ポンプとを接続する流路に設けられ、前記流路が開けられる合流状態と前記流路が閉じられる分流状態とを切り換え可能な開閉装置と、前記分流状態において前記第1油圧ポンプから吐出された作動油が供給される第1油圧アクチュエータと、前記分流状態において前記第2油圧ポンプから吐出された作動油が供給される第2油圧アクチュエータと、前記エンジンの出力が制限されるか否かを判定する判定部と、前記エンジンの出力が制限されると前記判定部が判定したとき、前記合流状態になるように前記開閉装置を制御する合分流制御部と、を備える制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、エンジンの出力が低下したとき、作業機の作動速度の低下を抑制することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る作業機械の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る制御システムの一例を模式的に示す図である。
図3図3は、本実施形態に係るエンジン及び排ガス処理装置の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る油圧システムの一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図6図6は、本実施形態に係るエンジンのトルク線図の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る作業機械の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業機械]
図1は、本実施形態に係る作業機械1の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、作業機械1がハイブリッド方式の油圧ショベルであることとする。以下の説明においては、作業機械1を適宜、油圧ショベル1、と称する。
【0011】
図1に示すように、油圧ショベル1は、作業機10と、作業機10を支持する上部旋回体2と、上部旋回体2を支持する下部走行体3と、エンジン4と、エンジン4によって駆動される発電電動機27と、エンジン4によって駆動される油圧ポンプ30と、作業機10を作動させる油圧シリンダ20と、上部旋回体2を旋回させる電動モータ25と、下部走行体3を走行させる油圧モータ24と、作業機10を操作するための操作装置5と、制御装置100と、エンジン4の排ガスを処理する排ガス処理装置200とを備える。
【0012】
エンジン4は、油圧ショベル1の動力源である内燃機関である。エンジン4は、発電電動機27及び油圧ポンプ30と連結される出力シャフト4Sを有する。エンジン4は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン4は、上部旋回体2の機械室7に収容される。
【0013】
発電電動機27は、エンジン4の出力シャフト4Sと連結され、エンジン4の作動により発電する。発電電動機27は、例えばスイッチドリラクタンスモータである。なお、発電電動機27は、PM(Permanent Magnet)モータでもよい。
【0014】
油圧ポンプ30は、エンジン4の出力シャフト4Sと連結され、エンジン4の作動により作動油を吐出する。本実施形態において、油圧ポンプ30は、出力シャフト4Sと連結され、エンジン4によって駆動される第1油圧ポンプ31と、出力シャフト4Sと連結され、エンジン4によって駆動される第2油圧ポンプ32とを含む。油圧ポンプ30は、上部旋回体2の機械室7に収容される。
【0015】
作業機10は、上部旋回体2に支持される。作業機10は、相対移動可能な複数の作業機要素を含む。作業機1の作業機要素は、バケット11と、バケット11に連結されるアーム12と、アーム12に連結されるブーム13とを含む。バケット11は、回転可能にアーム12の先端部に連結される。アーム12は、回転可能にブーム13の先端部に連結される。ブーム13は、回転可能に上部旋回体2に連結される。
【0016】
油圧シリンダ20は、油圧ポンプ30から供給される作動油によって作動する。油圧シリンダ20は、作業機10を作動させるための動力を発生する油圧アクチュエータである。作業機10は、油圧シリンダ20が発生する動力により作動可能である。油圧シリンダ20は、バケット11を作動させるバケットシリンダ21と、アーム12を作動させるアームシリンダ22と、ブーム13を作動させるブームシリンダ23とを含む。
【0017】
電動モータ25は、発電電動機27から供給される電力によって作動する。電動モータ25は、上部旋回体2を旋回させるための動力を発生する電動アクチュエータである。上部旋回体2は、電動モータ25が発生する動力により旋回軸RXを中心に旋回可能である。
【0018】
油圧モータ24は、油圧ポンプ30から供給される作動油によって作動する。油圧モータ24は、下部走行体3を走行させるための動力を発生する油圧アクチュエータである。下部走行体3の履帯3Cは、油圧モータ24が発生する動力により回転可能である。
【0019】
上部旋回体2は、燃料を収容する燃料タンク8と、作動油を収容する作動油タンク9とを有する。燃料タンク8に収容されている燃料がエンジン4に供給される。作動油タンク9に収容されている作動油が油圧ポンプ30を介して油圧シリンダ20及び油圧モータ24に供給される。
【0020】
操作装置5は、運転室6に配置される。操作装置5は、油圧シリンダ20及び油圧モータ24のそれぞれを駆動するために操作される。操作装置5は、油圧ショベル1の運転者に操作される操作部材を含む。操作部材は、操作レバー又はジョイスティックを含む。操作装置5が操作されることにより、作業機10が作動する。
【0021】
[制御システム]
図2は、本実施形態に係る制御システム1000の一例を模式的に示す図である。制御システム1000は、油圧ショベル1に搭載され、油圧ショベル1を制御する。制御システム1000は、制御装置100と、油圧システム1000Aと、電動システム1000Bとを含む。
【0022】
油圧システム1000Aは、油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30から吐出された作動油が流れる油圧回路40と、油圧回路40を介して油圧ポンプ30から供給された作動油により作動する油圧シリンダ20と、油圧回路40を介して油圧ポンプ30から供給された作動油により作動する油圧モータ24とを有する。
【0023】
エンジン4の出力シャフト4Sは、油圧ポンプ30と連結される。エンジン4が駆動することにより、油圧ポンプ30が作動する。油圧シリンダ20及び油圧モータ24は、油圧ポンプ30から吐出された作動油に基づいて作動する。エンジン4の回転数[rpm]を検出するエンジン回転数センサ4Rがエンジン4に設けられる。
【0024】
油圧ポンプ30は、可変容量型油圧ポンプである。本実施形態において、油圧ポンプ30は、斜板式油圧ポンプである。油圧ポンプ30の斜板30Aは、サーボ機構30Bによって駆動される。サーボ機構30Bにより斜板30Aの角度が調整されることによって、油圧ポンプ30の容量[cc/rev]が調整される。油圧ポンプ30の容量とは、油圧ポンプ30と連結されたエンジン4の出力シャフト4Sが1回転したときに油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出量[cc/rev]をいう。
【0025】
本実施形態において、油圧ポンプ30の斜板30Aは、第1油圧ポンプ31の斜板31Aと、第2油圧ポンプ32の斜板32Aとを含む。サーボ機構30Bは、第1油圧ポンプ31の斜板31Aの角度を調整するサーボ機構31Bと、第2油圧ポンプ32の斜板32Aの角度を調整するサーボ機構32Bとを含む。
【0026】
電動システム1000Bは、発電電動機27と、蓄電器14と、変圧器14Cと、第1インバータ15Gと、第2インバータ15Rと、発電電動機27から供給された電力により作動する電動モータ25とを有する。
【0027】
エンジン4の出力シャフト4Sは、発電電動機27と連結される。エンジン4が駆動することにより、発電電動機27が作動する。エンジン4が駆動すると、発電電動機27のロータが回転する。発電電動機27のロータが回転することにより、発電電動機27が発電する。なお、発電電動機27は、PTO(Power Take Off)のような動力伝達機構を介してエンジン4の出力シャフト4Sと連結されてもよい。
【0028】
電動モータ25は、発電電動機27から出力された電力に基づいて作動する。電動モータ25は、上部旋回体2を旋回させる動力を発生する。電動モータ25に回転センサ16が設けられる。回転センサ16は、例えばレゾルバ又はロータリーエンコーダを含む。回転センサ16は、電動モータ25の回転角度又は回転速度を検出する。
【0029】
運転室6には、運転者によって操作される操作装置5、スロットルダイヤル33、及び作業モード選択器34が設けられる。
【0030】
操作装置5は、下部走行体3を操作する操作部材、上部旋回体2を操作する操作部材、及び作業機10を操作する操作部材を含む。下部走行体3を走行させる油圧モータ24は、操作装置5の操作に基づいて作動する。上部旋回体2を旋回させる電動モータ25は、操作装置5の操作に基づいて作動する。作業機10を作動させる油圧シリンダ20は、操作装置5の操作に基づいて作動する。
【0031】
本実施形態において、操作装置5は、運転席6Sに着座した運転者の右側に配置される右操作レバー5Rと、左側に配置される左操作レバー5Lとを含む。
【0032】
また、操作装置5は、走行レバー(不図示)を有する。走行レバーが操作されることにより、走行モータ24が駆動される。
【0033】
制御システム1000は、操作装置5の操作量を検出する操作量センサ90を有する。操作量センサ90は、バケット11を作動させるバケットシリンダ21を駆動するために操作された操作装置5の操作量を検出するバケット操作量センサ91と、アーム12を作動させるアームシリンダ22を駆動するために操作された操作装置5の操作量を検出するアーム操作量センサ92と、ブーム13を作動させるブームシリンダ23を駆動するために操作された操作装置5の操作量を検出するブーム操作量センサ93とを含む。
【0034】
スロットルダイヤル33は、エンジン4に噴射される燃料噴射量を設定するための操作部材である。スロットルダイヤル33により、エンジン4の上限回転数Nmax[rpm]が設定される。
【0035】
作業モード選択器34は、エンジン4の出力特性を設定するための操作部材である。作業モード選択器34により、エンジン4の最高出力[kW]が設定される。
【0036】
制御装置100は、コンピュータシステムを含む。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを含む記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御装置100は、油圧システム1000A及び電動システム1000Bを制御する指令信号を出力する。本実施形態において、制御装置100は、油圧システム1000Aを制御するポンプコントローラ100Aと、電動システム1000Bを制御するハイブリッドコントローラ100Bと、エンジン4を制御するエンジンコントローラ100Cとを含む。
【0037】
ポンプコントローラ100Aは、ハイブリッドコントローラ100Bから送信された指令信号、エンジンコントローラ100Cから送信された指令信号、及び操作量センサ90から送信された検出信号の少なくとも一つに基づいて、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32を制御する指令信号を出力する。
【0038】
本実施形態において、ポンプコントローラ100Aは、油圧ポンプ30の容量[cc/rev]を調整するための指令信号を出力する。ポンプコントローラ100Aは、サーボ機構30Bに指令信号を出力して、油圧ポンプ30の斜板30Aの角度を制御することにより、油圧ポンプ30の容量[cc/rev]を調整する。油圧ポンプ30は、斜板30Aの角度を検出する斜板角センサ30Sを有する。傾斜角センサ30Sは、斜板31Aの角度を検出する傾斜角センサ31Sと、斜板32Aの角度を検出する傾斜角センサ32Sとを含む。斜板角センサ30Sの検出信号は、ポンプコントローラ100Aに出力される。ポンプコントローラ100Aは、斜板角センサ30Sの検出信号に基づいて、サーボ機構30Bに指令信号を出力して、斜板30Aの角度を制御する。
【0039】
油圧ポンプ30は、エンジン4によって駆動される。エンジン4の回転数[rpm]が高くなり油圧ポンプ30と連結されているエンジン4の出力シャフト4Sの単位時間当たりの回転数が高くなることにより、油圧ポンプ30から吐出される単位時間当たりの作動油の吐出流量Q[l/min]が増大する。エンジン4の回転数[rpm]が低くなり油圧ポンプ30と連結されているエンジン4の出力シャフト4Sの単位時間当たりの回転数が低くなることにより、油圧ポンプ30から吐出される単位時間当たりの作動油の吐出流量Q[l/min]が減少する。
【0040】
油圧ポンプ30が最大容量[cc/rev]に調整された状態でエンジン4が最高回転数[rpm]で駆動されたとき、油圧ポンプ30は、最大吐出流量Qmax[l/min]で作動油を吐出する。
【0041】
本実施形態において、ポンプコントローラ100Aは、第1油圧ポンプ31の容量[cc/rev]及び第2油圧ポンプ32の容量[cc/rev]のそれぞれを調整するための指令信号を出力する。
【0042】
ポンプコントローラ100Aは、斜板角センサ31Sの検出信号に基づいてサーボ機構31Bに指令信号を出力して、第1油圧ポンプ31の斜板31Aの角度を制御することにより、第1油圧ポンプ31の容量[cc/rev]を調整する。ポンプコントローラ100Aは、斜板角センサ32Sの検出信号に基づいてサーボ機構32Bに指令信号を出力して、第2油圧ポンプ32の斜板32Aの角度を制御することにより、第2油圧ポンプ32の容量[cc/rev]を調整する。
【0043】
油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出流量Q[l/min]は、第1油圧ポンプ31から吐出される作動油の吐出流量Q1[l/min]と、第2油圧ポンプ32から吐出される作動油の吐出流量Q2[l/min]とを含む。エンジン4の回転数が高くなり第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32と連結されているエンジン4の出力シャフト4Sの単位時間当たりの回転数が高くなることにより、第1油圧ポンプ31の吐出流量Q1[l/min]及び第2油圧ポンプ32の吐出流量Q2[l/min]が増大する。エンジン4の回転数が低くなり第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32と連結されているエンジン4の出力シャフト4Sの単位時間当たりの回転数が低くなることにより、第1油圧ポンプ31の吐出流量Q1[l/min]及び第2油圧ポンプ32の吐出流量Q2[l/min]が減少する。
【0044】
油圧ポンプ30の最大吐出流量Qmax[l/min]は、第1油圧ポンプ31の最大吐出流量Q1max[l/min]と、第2油圧ポンプ32の最大吐出流量Q2max[l/min]とを含む。第1油圧ポンプ31が最大容量[cc/rev]に調整された状態でエンジン4が最高回転数で駆動されたとき、第1油圧ポンプ31は、最大吐出流量Q1maxで作動油を吐出する。同様に、第2油圧ポンプ32が最大容量[cc/rev]に調整された状態でエンジン4が最高回転数で駆動されたとき、第2油圧ポンプ32は、最大吐出流量Q2maxで作動油を吐出する。本実施形態において、最大吐出流量Q1maxと最大吐出流量Q2maxとは等しい。
【0045】
ハイブリッドコントローラ100Bは、回転センサ16の検出信号に基づいて、電動モータ25を制御する。電動モータ25は、発電電動機27又は蓄電器14から供給された電力に基づいて作動する。本実施形態において、ハイブリッドコントローラ100Bは、変圧器14Cと第1インバータ15G及び第2インバータ15Rとの間における電力授受の制御と、変圧器14Cと蓄電器14との間における電力授受の制御とを実施する。
【0046】
また、ハイブリッドコントローラ100Bは、発電電動機27、電動モータ25、蓄電器14、第1インバータ15G、及び第2インバータ15Rのそれぞれに設けられた温度センサの検出信号に基づいて、発電電動機27、電動モータ25、蓄電器14、第1インバータ15G、及び第2インバータ15Rのそれぞれの温度を調整する。また、ハイブリッドコントローラ100Bは、蓄電器14の充放電制御、発電電動機27の発電制御、及び発電電動機27によるエンジン4のアシスト制御を行う。
【0047】
エンジンコントローラ100Cは、スロットルダイヤル33の設定値に基づいて指令信号を生成して、エンジン4に設けられているコモンレール制御部29に出力する。コモンレール制御部29は、エンジンコントローラ100Cから送信された指令信号に基づいて、エンジン4に対する燃料噴射量を調整する。
【0048】
[エンジン及び排ガス処理装置]
図3は、本実施形態に係るエンジン4及び排ガス処理装置200の一例を模式的に示す図である。排ガス処理装置200は、エンジン4の排ガスを処理する。本実施形態において、排ガス処理装置200は、選択触媒と還元剤とを利用して排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して浄化する尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを含む。
【0049】
エンジン4は、燃料噴射装置17を有する。燃料噴射装置17は、エンジン4の燃焼室に燃料を噴射する。本実施形態において、燃料噴射装置17は、蓄圧室17Aとインジェクタ17Bとを含むコモンレール方式である。燃料噴射装置17は、コモンレール制御部29を介して制御装置50に制御される。
【0050】
エンジン4は、吸気管18及び排気管19のそれぞれと接続される。吸気管18の入口は、空気中の異物を回収するエアクリーナ35と接続される。吸気管18の出口は、エンジン4の吸気口と接続される。排ガス処理装置200は、排気管19を介して、エンジン4の排気口と接続される。
【0051】
排ガス処理装置200は、エンジン4から排出された排ガスを浄化する。排ガス処理装置200は、排ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を低減させる。排ガス処理装置20は、排気管19と接続され、排ガスに含まれる微粒子を回収するフィルタユニット201と、管路202を介してフィルタユニット201と接続され、排ガスに含まれるNOxを還元する還元触媒203と、還元剤Rを供給する還元剤供給装置204とを有する。
【0052】
フィルタユニット201は、微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)を含み、排ガスに含まれる微粒子を回収する。
【0053】
還元触媒203は、還元剤供給装置204から供給された還元剤Rによって排ガスに含まれるNOxを還元する。還元触媒203は、還元剤RによってNOxを窒素と水とに変換する。還元触媒203として、例えばバナジウム系触媒又はゼオライト系触媒が用いられる。
【0054】
還元剤供給装置204は、管路202に還元剤Rを供給する。還元剤Rは尿素(尿素水)である。還元剤供給装置204は、還元剤Rを収容する還元剤タンク205と、還元剤タンク205に接続される供給管206と、供給管206に設けられる供給ポンプ207と、供給管207に接続される噴射ノズル208とを有する。供給ポンプ207は、還元剤タンク205に収容されている還元剤Rを噴射ノズル208に圧送する。噴射ノズル208は、還元剤タンク205から供給された還元剤Rを管路202の内部に噴射する。
【0055】
還元剤供給装置204による還元剤Rの供給量(噴射量)は、制御装置100に制御される。管路202の内部に供給された還元剤Rは、排ガスの熱によって分解され、アンモニアに変化する。換言触媒203において、NOxとアンモニアとが触媒反応を起こして、窒素と水とに変換される。
【0056】
本実施形態において、還元剤供給装置204の還元剤タンク205には、還元剤Rの量(水位)を検出する還元剤センサ209が設けられる。
【0057】
また、本実施形態において、制御システム1000は、エンジン4の状態を検出するための排ガスセンサ300を備える。排ガスセンサ300は、エンジン4からの排ガスの状態を検出することによって、エンジン4の状態を検出する。排ガスの状態は、排ガスに含まれるNOxの濃度、排ガスの圧力、排ガスの温度、及び排ガスの流量の少なくとも一つを含む。還元剤供給装置204は、排ガスセンサ300の検出信号に基づいて、還元触媒203に供給する還元剤Rの供給量を調整する。
【0058】
本実施形態において、排ガスセンサ300は、排ガスに含まれるNOxの濃度を検出するNOxセンサ301と、排ガスの圧力を検出する圧力センサ302及び圧力センサ304と、排ガスの温度を検出する温度センサ303とを含む。
【0059】
NOxセンサ301は、排気管19において排ガスのNOxの濃度を検出する。圧力センサ302は、管路202において排ガスの圧力を検出する。温度センサ303は、管路202において排ガスの温度を検出する。圧力センサ304は、還元触媒203を通過した排ガスの圧力を検出する。
【0060】
また、排ガスセンサ300は、吸気管18を介してエンジン4に吸入される空気の流量を検出する吸気流量センサ305を含む。エンジン4に吸入される空気の流量に基づいて、排ガスの流量が決定される。吸気流量センサ305は、排ガス流量センサとして機能する。
【0061】
NOxセンサ301の検出信号、圧力センサ302の検出信号、温度センサ303の検出信号、圧力センサ304の検出信号、及び吸気流量センサ305の検出信号は、制御装置100に出力される。
【0062】
制御装置100は、少なくともNOxセンサ301の検出信号及び圧力センサ302の検出信号に基づいて、還元触媒203に供給する還元剤Rの供給量を制御する。例えば、制御装置100は、圧力センサ302の検出信号に基づいて、管路202から還元触媒203に供給される排ガスの流量を算出する。制御装置100は、管路202における排ガスの流量とNOxセンサ301で検出された排ガスのNOxの濃度とに基づいて、管路202におけるNOxの流量を算出する。制御装置100は、管路202におけるNOxの流量に基づいて、還元触媒203に供給する還元剤Rの供給量を決定する。
【0063】
なお、制御装置100は、吸気流量センサ305の検出信号と、燃料噴射装置17からエンジン4に供給される燃料噴射量とに基づいて、管路202における排ガスの流量を算出してもよい。
【0064】
なお、制御装置100は、NOxセンサ301の検出信号と、圧力センサ302の検出信号と、温度センサ303の検出信号と、圧力センサ304の検出信号とに基づいて、還元触媒203に供給する還元剤Rの供給量を制御してもよい。
【0065】
また、排ガスセンサ300は、大気圧センサ306と、外気温度センサ307と、冷却液温度センサ308とを含む。大気圧センサ306は、エンジン4及び排ガス処理装置200が使用される環境圧力である大気圧を検出する。エンジン4及び排ガス処理装置200が使用される環境温度である外気温度を検出する。冷却液温度センサ308は、エンジン4を冷却する冷却液の温度を検出する。
【0066】
NOxセンサ301は、エンジン4が始動しNOxセンサ301が起動した時点からNOxを検出可能な状態になるまである程度の時間を要する。NOxセンサ301は、構造上、センシング部を高温度に保つ必要がある。そのため、エンジン4が始動してからNOxセンサ301がNOxの濃度を検出可能な状態になるまで時間を要する。NOxセンサ301を用いてNOxの濃度を検出できない期間においては、制御装置100は、例えばエンジン回転数センサ4Rの検出信号と、大気圧センサ306の検出信号と、外気温度センサ307の検出信号と、冷却液温度センサ308の検出信号とに基づいて、NOxの濃度を推測し、推測されたNOxの濃度に基づいて、還元剤供給装置204から還元触媒203に供給される還元剤Rの供給量を制御する。
【0067】
[油圧システム]
図4は、本実施形態に係る油圧システム1000Aの一例を示す図である。油圧システム1000Aは、作動油を吐出する油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30から吐出された作動油が流れる油圧回路40と、油圧回路40を介して油圧ポンプ30から吐出された作動油が供給される油圧シリンダ20と、油圧シリンダ20に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qaを調整する主操作弁60と、圧力補償弁70とを備える。
【0068】
油圧ポンプ30は、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを含む。油圧シリンダ20は、バケットシリンダ21とアームシリンダ22とブームシリンダ23とを含む。
【0069】
主操作弁60は、油圧ポンプ30からバケットシリンダ21に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qabkを調整する第1主操作弁61と、油圧ポンプ30からアームシリンダ22に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qaarを調整する第2主操作弁62と、油圧ポンプ30からブームシリンダ23に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qabmを調整する第3主操作弁63とを含む。主操作弁60は、スライドスプール方式の方向制御弁である。
【0070】
圧力補償弁70は、圧力補償弁71と、圧力補償弁72と、圧力補償弁73と、圧力補償弁74と、圧力補償弁75と、圧力補償弁76とを含む。
【0071】
また、油圧システム1000Aは、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを接続する合流流路55に設けられ、合流流路55が開けられる合流状態と合流流路55が閉じられる分流状態とを切り換え可能な開閉装置である第1合分流弁67を備える。
【0072】
油圧回路40は、第1油圧ポンプ31と接続される第1油圧ポンプ流路41と、第2油圧ポンプ32と接続される第2油圧ポンプ流路42とを有する。
【0073】
油圧回路40は、第1油圧ポンプ流路41と接続される第1供給流路43及び第2供給流路44と、第2油圧ポンプ流路42と接続される第3供給流路45及び第4供給流路46とを有する。
【0074】
第1油圧ポンプ流路41は、第1分岐部Br1において、第1供給流路43と第2供給流路44とに分岐される。第2油圧ポンプ流路42は、第4分岐部Br4において、第3供給流路45と第4供給流路46とに分岐される。
【0075】
油圧回路40は、第1供給流路43と接続される第1分岐流路47及び第2分岐流路48と、第2供給流路44と接続される第3分岐流路49及び第4分岐流路50とを有する。第1供給流路43は、第2分岐部Br2において、第1分岐流路47と第2分岐流路48とに分岐される。第2供給流路44は、第3分岐部Br3において、第3分岐流路49と第4分岐流路50とに分岐される。
【0076】
油圧回路40は、第3供給流路45と接続される第5分岐流路51と、第4供給流路46と接続される第6分岐流路52とを有する。
【0077】
第1主操作弁61は、第1分岐流路47及び第3分岐流路49と接続される。第2主操作弁62は、第2分岐流路48及び第4分岐流路50と接続される。第3主操作弁63は、第5分岐流路51及び第6分岐流路52と接続される。
【0078】
油圧回路40は、第1主操作弁61とバケットシリンダ21のキャップ側空間21Cとを接続する第1バケット流路21Aと、第1主操作弁61とバケットシリンダ21のロッド側空間21Lとを接続する第2バケット流路21Bとを有する。
【0079】
油圧回路40は、第2主操作弁62とアームシリンダ22のロッド側空間22Lとを接続する第1アーム流路22Aと、第2主操作弁62とアームシリンダ22のキャップ側空間22Cとを接続する第2アーム流路22Bとを有する。
【0080】
油圧回路40は、第3主操作弁63とブームシリンダ23のキャップ側空間23Cとを接続する第1ブーム流路23Aと、第3主操作弁63とブームシリンダ23のロッド側空間23Lとを接続する第2ブーム流路23Bとを有する。
【0081】
油圧シリンダ20のキャップ側空間とは、シリンダヘッドカバーとピストンとの間の空間である。油圧シリンダ20のロッド側空間とは、ピストンロッドが配置される空間である。
【0082】
バケットシリンダ21のキャップ側空間21Cに作動油が供給され、バケットシリンダ21が伸長することにより、バケット11は掘削動作する。バケットシリンダ21のロッド側空間21Lに作動油が供給され、バケットシリンダ21が縮退することにより、バケット11はダンプ動作する。
【0083】
アームシリンダ22のキャップ側空間22Cに作動油が供給され、アームシリンダ22が伸長することにより、アーム12は掘削動作する。アームシリンダ22のロッド側空間22Lに作動油が供給され、アームシリンダ22が縮退することにより、アーム12はダンプ動作する。
【0084】
ブームシリンダ23のキャップ側空間23Cに作動油が供給され、ブームシリンダ23が伸長することにより、ブーム13は上げ動作する。ブームシリンダ23のロッド側空間23Lに作動油が供給され、ブームシリンダ23が縮退することにより、ブーム13は下げ動作する。
【0085】
第1主操作弁61は、バケットシリンダ21に作動油を供給し、バケットシリンダ21から排出された作動油を回収する。第1主操作弁61のスプールは、バケットシリンダ21に対する作動油の供給を停止してバケットシリンダ21を停止させる停止位置PT0と、キャップ側空間21Cに作動油が供給されるように第1分岐流路47と第1バケット流路21Aとを接続してバケットシリンダ21を伸長させる第1位置PT1と、ロッド側空間21Lに作動油が供給されるように第3分岐流路49と第2バケット流路21Bとを接続してバケットシリンダ21を縮退させる第2位置PT2とを移動可能である。バケットシリンダ21が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第1主操作弁61が操作される。
【0086】
第2主操作弁62は、アームシリンダ22に作動油を供給し、アームシリンダ22から排出された作動油を回収する。第2主操作弁62は、第1主操作弁61と同等の構造である。第2主操作弁62のスプールは、アームシリンダ22に対する作動油の供給を停止してアームシリンダ22を停止させる停止位置と、キャップ側空間22Cに作動油が供給されるように第4分岐流路50と第2アーム流路22Bとを接続してアームシリンダ22を伸長させる第2位置と、ロッド側空間22Lに作動油が供給されるように第2分岐流路48と第1アーム流路22Aとを接続してアームシリンダ22を縮退させる第1位置とを移動可能である。アームシリンダ22が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第2主操作弁62が操作される。
【0087】
第3主操作弁63は、ブームシリンダ23に作動油を供給し、ブームシリンダ23から排出された作動油を回収する。第3主操作弁63は、第1主操作弁61と同等の構造である。第3主操作弁63のスプールは、ブームシリンダ23に対する作動油の供給を停止してブームシリンダ23を停止させる停止位置と、キャップ側空間23Cに作動油が供給されるように第5分岐流路51と第1ブーム流路23Aとを接続してブームシリンダ23を伸長させる第1位置と、ロッド側空間23Lに作動油が供給されるように第6分岐流路52と第2ブーム流路23Bとを接続してブームシリンダ23を縮退させる第2位置とを移動可能である。ブームシリンダ23が停止状態、伸長状態、及び縮退状態の少なくとも一つになるように、第3主操作弁63が操作される。
【0088】
第1主操作弁61は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによって、操作装置5の操作量に基づいて決定されるパイロット圧が第1主操作弁61に作用する。第1主操作弁61にパイロット圧が作用することにより、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qabkが決定される。バケットシリンダ21のロッドは、供給される作動油の方向に対応する移動方向に移動し、供給される作動油の配分流量Qabkに対応するシリンダ速度で作動する。バケットシリンダ21が作動することにより、バケットシリンダ21の移動方向及びシリンダ速度に基づいてバケット11が作動する。
【0089】
同様に、第2主操作弁62は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによって、操作装置5の操作量に基づいて決定されるパイロット圧が第2主操作弁62に作用する。第2主操作弁62にパイロット圧が作用することにより、第2主操作弁62からアームシリンダ22に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qaarが決定される。アームシリンダ22のロッドは、供給される作動油の方向に対応する移動方向に移動し、供給される作動油の配分流量Qaarに対応するシリンダ速度で作動する。アームシリンダ22が作動することにより、アームシリンダ22の移動方向及びシリンダ速度に基づいてアーム12が作動する。
【0090】
同様に、第3主操作弁63は、操作装置5によって操作される。操作装置5が操作されることによって、操作装置5の操作量に基づいて決定されるパイロット圧が第3主操作弁63に作用する。第3主操作弁63にパイロット圧が作用することにより、第3主操作弁63からブームシリンダ23に供給される作動油の方向及び作動油の配分流量Qabmが決定される。ブームシリンダ23のロッドは、供給される作動油の方向に対応する移動方向に移動し、供給される作動油の配分流量Qabmに対応するシリンダ速度で作動する。ブームシリンダ23が作動することにより、ブームシリンダ23の移動方向及びシリンダ速度に基づいてブーム13が作動する。
【0091】
バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23のそれぞれから排出された作動油は、排出流路53を介して作動油タンク9に回収される。
【0092】
第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とは、合流流路55によって接続される。合流流路55は、第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを接続する流路である。合流流路55は、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とを介して第1油圧ポンプ31と第2油圧ポンプ32とを接続する。
【0093】
第1合分流弁67は、合流流路55を開閉する開閉装置である。第1合分流弁67は、合流流路55を開閉することにより、合流流路55が開けられる合流状態と合流流路55が閉じられる分流状態とを切り換える。本実施形態において、第1合分流弁67は、切換弁である。なお、合流流路55を開閉可能であれば、合流流路55を開閉する開閉装置は、切換弁でなくてもよい。
【0094】
第1合分流弁67のスプールは、合流流路55を開けて第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とを接続する合流位置と、合流流路55を閉じて第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とを分離する分流位置とを移動可能である。制御装置100は、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とが合流状態及び分流状態のいずれか一方になるように、第1合分流弁67を制御する。
【0095】
合流状態とは、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とを接続する合流流路55が第1合分流弁67において開けられることにより、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とが合流流路55を介して接続され、第1油圧ポンプ流路41から吐出された作動油と第2油圧ポンプ流路42から吐出された作動油とが第1合分流弁67において合流する状態をいう。合流状態においては、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32の両方から吐出された作動油が、バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23のそれぞれに供給される。
【0096】
分流状態とは、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とを接続する合流流路55が第1合分流弁67によって閉じられることにより、第1油圧ポンプ流路41と第2油圧ポンプ流路42とが分離され、第1油圧ポンプ流路41から吐出された作動油と第2油圧ポンプ流路42から吐出された作動油とが分離された状態をいう。分流状態においては、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油がバケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給され、第2油圧ポンプ32から吐出された作動油がブームシリンダ23に供給される。
【0097】
すなわち、本実施形態においては、分流状態において第1油圧ポンプ31から吐出された作動油が供給される第1油圧アクチュエータは、バケット11を駆動させるバケットシリンダ21及びアーム12を駆動させるアームシリンダ22である。分流状態において第2油圧ポンプ32から吐出された作動油が供給される第2油圧アクチュエータは、ブーム13を駆動させるブームシリンダ23である。分流状態においては、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油は、ブームシリンダ23には供給されない。分流状態においては、第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22には供給されない。
【0098】
合流状態においては、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32のそれぞれから吐出された作動油は、第1油圧ポンプ流路41、第2油圧ポンプ流路42、第1主操作弁61、第2主操作弁62、及び第3主操作弁63のそれぞれを通過した後、バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23のそれぞれに供給される。
【0099】
分流状態においては、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油は、第1油圧ポンプ流路41、第1主操作弁61、及び第2主操作弁62のそれぞれを通過した後、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給される。また、分流状態においては、第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、第2油圧ポンプ流路42、及び第3主操作弁63を通過した後、ブームシリンダ23に供給される。
【0100】
油圧システム1000Aは、第1主操作弁61と第2主操作弁62との間に設けられたシャトル弁701と、第2合分流弁68と第3主操作弁63との間に設けられたシャトル弁702とを有する。また、油圧システム1000Aは、シャトル弁701及びシャトル弁702と接続される第2合分流弁68を有する。
【0101】
第2合分流弁68は、シャトル弁701及びシャトル弁702により、バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23のそれぞれに供給される作動油を減圧したロードセンシング圧(LS圧)の最大圧力を選択する。ロードセンシング圧とは、圧力補償に用いられるパイロット圧である。
【0102】
第2合分流弁68が合流状態のときは、バケットシリンダ21からブームシリンダ23のうちの最大LS圧が選択され、バケットシリンダ21からブームシリンダ23それぞれの圧力補償弁70と第1油圧ポンプ31のサーボ機構31B及び第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bに供給される。
【0103】
第2合分流弁68が分流状態のときは、バケットシリンダ21とアームシリンダ22との最大LS圧がバケットシリンダ21とアームシリンダ22の圧力補償弁70と第1油圧ポンプ31のサーボ機構31Bに供給され、ブームシリンダ23のLS圧がブームシリンダ23の圧力補償弁70と第2油圧ポンプ32のサーボ機構32Bに供給される。
【0104】
シャトル弁701及びシャトル弁702は、第1主操作弁61、第2主操作弁62、及び第3主操作弁63から出力されたパイロット圧のうち、最大値を示すパイロット圧を選択する。選択されたパイロット圧は、圧力補償弁70と、油圧ポンプ30(31,32)のサーボ機構(31B,32B)に供給される。
【0105】
<圧力センサ>
油圧システム1000Aは、油圧シリンダ20の作動油の圧力PLを検出する負荷圧力センサ80を有する。油圧シリンダ20の作動油の圧力PLは、油圧シリンダ20に供給される作動油の負荷圧力である。負荷圧力センサ80の検出信号は、制御装置100に出力される。
【0106】
本実施形態において、負荷圧力センサ80は、バケットシリンダ21の作動油の圧力PLbkを検出するバケット負荷圧力センサ81と、アームシリンダ22の作動油の圧力PLarを検出するアーム負荷圧力センサ82と、ブームシリンダ23の作動油の圧力PLbmを検出するブーム負荷圧力センサ83とを含む。
【0107】
バケット負荷圧力センサ81は、第1バケット流路21Aに設けられ、バケットシリンダ21のキャップ側空間21Cの作動油の圧力PLbkcを検出するバケット負荷圧力センサ81Cと、第2バケット流路21Bに設けられ、バケットシリンダ21のロッド側空間21Lの作動油の圧力PLbklを検出するバケット負荷圧力センサ81Lとを含む。
【0108】
アーム負荷圧力センサ82は、第2アーム流路22Bに設けられ、アームシリンダ22のキャップ側空間22Cの作動油の圧力PLarcを検出するアーム負荷圧力センサ82Cと、第1アーム流路22Aに設けられ、アームシリンダ22のロッド側空間22Lの作動油の圧力PLarlを検出するアーム負荷圧力センサ82Lとを含む。
【0109】
ブーム負荷圧力センサ83は、第1ブーム流路23Aに設けられ、ブームシリンダ23のキャップ側空間23Cの作動油の圧力PLbmcを検出するブーム負荷圧力センサ83Cと、第2ブーム流路23Bに設けられ、ブームシリンダ23のロッド側空間23Lの作動油の圧力PLbmlを検出するブーム負荷圧力センサ83Lとを含む。
【0110】
また、油圧システム1000Aは、油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出圧力Pを検出する吐出圧力センサ800を有する。吐出圧力センサ800の検出信号は、制御装置100に出力される。
【0111】
吐出圧力センサ800は、第1油圧ポンプ31と第1油圧ポンプ流路41との間に設けられ、第1油圧ポンプ31から吐出される作動油の吐出圧力P1を検出する吐出圧力センサ801と、第2油圧ポンプ32と第2油圧ポンプ流路42との間に設けられ、第2油圧ポンプ32から吐出される作動油の吐出圧力P2を検出する吐出圧力センサ802とを含む。
【0112】
<圧力補償弁>
圧力補償弁70は、連通と絞りと遮断とを選択するための選択ポートを有する。圧力補償弁70は、自己圧で遮断と、絞りと、連通との切り替えを可能とする、絞り弁を含む。圧力補償弁70は、各油圧シリンダ20の負荷圧が異なっていても、各主操作弁60のメータリング開口面積の比率に応じて流量分配を補償することを目的としている。圧力補償弁70がない場合、低負荷側の油圧シリンダ20にほとんどの作動油が流れてしまう。圧力補償弁70は、低負荷圧の油圧シリンダ20の主操作弁60の出口圧力が、最大負荷圧の油圧シリンダ20の主操作弁60の出口圧力と同等になるように、低負荷圧の油圧シリンダ20に圧力損失を作用させることで、各主操作弁60の出口圧力が同一となるため、流量分配の機能を実現する。
【0113】
圧力補償弁70は、第1主操作弁61に接続される圧力補償弁71及び圧力補償弁72と、第2主操作弁62に接続される圧力補償弁73及び圧力補償弁74と、第3主操作弁63に接続される圧力補償弁75及び圧力補償弁76とを含む。
【0114】
圧力補償弁71は、キャップ側空間21Cに作動油が供給されるように第1分岐流路47と第1バケット流路21Aとが接続された状態において第1主操作弁61の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。圧力補償弁72は、ロッド側空間21Lに作動油が供給されるように第3分岐流路49と第2バケット流路21Bとが接続された状態において第1主操作弁61の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。
【0115】
圧力補償弁73は、ロッド側空間22Lに作動油が供給されるように第2分岐流路48と第1アーム流路22Aとが接続された状態において第2主操作弁62の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。圧力補償弁74は、キャップ側空間22Cに作動油が供給されるように第4分岐流路50と第2アーム流路22Bとが接続された状態において第2主操作弁62の前後差圧(メータリング差圧)を補償する。
【0116】
なお、主操作弁60の前後差圧(メータリング差圧)とは、主操作弁60の油圧ポンプ30側に対応する入口ポートの圧力と、油圧シリンダ20側に対応する出口ポートの圧力との差をいい、流量を計測(metering)するための差圧である。
【0117】
圧力補償弁70により、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22の一方の油圧シリンダ20に軽負荷が作用し、他方の油圧シリンダ20に高負荷が作用した場合においても、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22のそれぞれに、操作装置5の操作量に応じた流量で作動油を分配することができる。
【0118】
圧力補償弁70は、複数の油圧シリンダ20の負荷によらず、操作に基づく流量を供給可能にする。例えば、バケットシリンダ21に高負荷が作用し、アームシリンダ22に軽負荷が作用する場合、軽負荷側に配置された圧力補償弁70(73,74)は、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に作動油が供給され発生するメータリング差圧ΔP1に関わらず、第2主操作弁62からアームシリンダ22に作動油が供給されるとき、第2主操作弁62の操作量に基づく流量が供給されるように、軽負荷側であるアームシリンダ22側のメータリング差圧ΔP2がバケットシリンダ21側のメータリング差圧ΔP1とほぼ同一の圧力となるように補償する。
【0119】
アームシリンダ22に高負荷が作用し、バケットシリンダ21に軽負荷が作用する場合、軽負荷側に配置された圧力補償弁70(71,72)は、第2主操作弁62からアームシリンダ22に作動油が供給され発生するメータリング差圧ΔP2に関わらず、第1主操作弁61からバケットシリンダ21に作動油が供給されるとき、第1主操作弁61の操作量に基づく流量が供給されるように、軽負荷側のメータリング差圧ΔP1を補償する。
【0120】
<アンロード弁>
油圧回路40は、アンロード弁69を有する。油圧回路40においては、油圧シリンダ20を駆動しないときにおいても、油圧ポンプ30からは最小容量に相当する流量の作動油が吐出される。油圧シリンダ20を駆動しないときにおいて油圧ポンプ30から吐出された作動油は、アンロード弁69を介して排出(アンロード)される。
【0121】
[制御装置]
図5は、本実施形態に係る制御装置100の一例を示す機能ブロック図である。制御装置100は、コンピュータシステムを含む。制御装置100は、演算処理装置101と、記憶装置102と、入出力インターフェース装置103とを有する。
【0122】
制御装置100は、第1合分流弁67及び第2合分流弁68と接続され、第1合分流弁67及び第2合分流弁68に指令信号を出力する。
【0123】
また、制御装置100は、燃料噴射装置17(コモンレール制御部29)と接続され、燃料噴射装置17に指令信号を出力する。
【0124】
また、制御装置100は、油圧シリンダ20の圧力PLを検出する負荷圧力センサ80、油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出圧力Pを検出する吐出圧力センサ800、操作装置5の操作量Sを検出する操作量センサ90、エンジン回転数センサ4R、還元剤センサ209、及び排ガスセンサ300のそれぞれと接続される。
【0125】
本実施形態において、操作量センサ90(91,92,93)は、圧力センサである。バケットシリンダ21を駆動するために操作装置5が操作されたとき、その操作装置5の操作量Sbkに基づいて、第1主操作弁61に作用するパイロット圧が変化する。また、アームシリンダ22を駆動するために操作装置5が操作されたとき、その操作装置5の操作量Sarに基づいて、第2主操作弁62に作用するパイロット圧が変化する。また、ブームシリンダ23を駆動するために操作装置5が操作されたとき、その操作装置5の操作量Sbmに基づいて、第3主操作弁63に作用するパイロット圧が変化する。バケット操作量センサ91は、バケットシリンダ21を駆動するために操作装置5が操作されたときに第1主操作弁61に作用するパイロット圧を検出する。アーム操作量センサ92は、アームシリンダ22を駆動するために操作装置5が操作されたときに第2主操作弁62に作用するパイロット圧を検出する。ブーム操作量センサ93は、ブームシリンダ23を駆動するために操作装置5が操作されたときに第3主操作弁63に作用するパイロット圧を検出する。
【0126】
演算処理装置101は、配分流量算出部112と、決定部114と、判定部116と、合分流制御部118と、排ガス処理制御部120と、エンジン制御部122とを有する。
【0127】
<配分流量算出部>
配分流量算出部112は、複数の油圧シリンダ20のそれぞれの作動油の圧力PLと、複数の油圧シリンダ20のそれぞれを駆動するために操作される操作装置5の操作量Sとに基づいて、複数の油圧シリンダ20のそれぞれに供給される作動油の配分流量Qaを算出する。本実施形態において、配分流量算出部112は、油圧シリンダ20の作動油の圧力PLと、操作装置5の操作量Sと、油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出圧力Pとに基づいて、配分流量Qaを算出する。
【0128】
油圧シリンダ20の作動油の圧力PLは、負荷圧力センサ80によって検出される。配分流量算出部112は、バケット負荷圧力センサ81からバケットシリンダ21の作動油の圧力PLbkを取得し、アーム負荷圧力センサ82からアームシリンダ22の作動油の圧力PLarを取得し、ブーム負荷圧力センサ83からブームシリンダ23の作動油の圧力PLbmを取得する。
【0129】
操作装置5の操作量Sは、操作量センサ90によって検出される。配分流量算出部112は、バケット操作量センサ91からバケットシリンダ21を駆動するために操作される操作装置5の操作量Sbkを取得し、アーム操作量センサ92からアームシリンダ22を駆動するために操作される操作装置5の操作量Sarを取得し、ブーム操作量センサ93からブームシリンダ23を駆動するために操作される操作装置5の操作量Sbmを取得する。
【0130】
油圧ポンプ30の作動油の吐出圧力Pは、吐出圧力センサ800によって検出される。配分流量算出部112は、吐出圧力センサ801から第1油圧ポンプ31の作動油の吐出圧力P1を取得し、吐出圧力センサ802から第2油圧ポンプ32の作動油の吐出圧力P2を取得する。
【0131】
配分流量算出部112は、複数の油圧シリンダ20(21,22,23)のそれぞれの作動油の圧力PL(PLbk,PLar,PLbm)と、複数の油圧シリンダ20(21,22,23)のそれぞれを駆動するために操作される操作装置5の操作量S(Sbk,Sar,Sbm)とに基づいて、複数の油圧シリンダ20(21,22,23)のそれぞれに供給される作動油の配分流量Qa(Qabk,Qaar,Qabm)を算出する。
【0132】
配分流量算出部112は、(1)式に基づいて配分流量Qaを算出する。
【0133】
Qa=Qd×√{(P−PL)/ΔPC}・・・(1)
【0134】
(1)式において、Qdは、油圧シリンダ20の作動油の要求流量である。Pは、油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出圧力である。PLは、油圧シリンダ20の作動油の負荷圧力である。ΔPCは、主操作弁60の入口側と出口側との設定差圧である。本実施形態において、主操作弁60の入口側と出口側との差圧が設定差圧ΔPCに設定される。設定差圧ΔPCは、第1主操作弁61、第2主操作弁62、及び第3主操作弁63のそれぞれについて予め設定され、記憶装置102に記憶されている。
【0135】
バケットシリンダ21の配分流量Qabk、アームシリンダ22の配分流量Qaar、及びブームシリンダ23の配分流量Qabmのそれぞれは、(2)式、(3)式、及び(4)式に基づいて算出される。
【0136】
Qabk=Qdbk×√{(P−PLbk)/ΔPC}・・・(2)
Qaar=Qdar×√{(P−PLar)/ΔPC}・・・(3)
Qabm=Qdbm×√{(P−PLbm)/ΔPC}・・・(4)
【0137】
(2)式において、Qdbkは、バケットシリンダ21の作動油の要求流量である。PLbkは、バケットシリンダ21の作動油の圧力である。(3)式において、Qdarは、アームシリンダ22の作動油の要求流量である。PLarは、アームシリンダ22の作動油の圧力である。(4)式において、Qdbmは、ブームシリンダ23の作動油の要求流量である。PLbmは、ブームシリンダ23の作動油の負荷圧力である。本実施形態において、第1主操作弁61の入口側と出口側との設定差圧ΔPCと、第2主操作弁62の入口側と出口側との設定差圧ΔPCと、第3主操作弁63の入口側と出口側との設定差圧ΔPCとは、同じ値である。
【0138】
要求流量Qd(Qdbk,Qdar,Qdbm)は、操作装置5の操作量S(Sbk,Sar,Sbm)に基づいて算出される。本実施形態において、要求流量Qd(Qdbk,Qdar,Qdbm)は、操作量センサ90(91,92,93)で検出されたパイロット圧に基づいて算出される。操作装置5の操作量S(Sbk,Sar,Sbm)と操作量センサ90(91,92,93)で検出されたパイロット圧とは1対1で対応する。配分流量算出部112は、操作量センサ90によって検出されたパイロット圧を主操作弁60のスプールストロークに変換し、スプールストロークに基づいて要求流量Qdを算出する。パイロット圧と主操作弁60のスプールストロークとの関係を示す第1相関データ、及び主操作弁60のスプールストロークと要求流量Qdとの関係を示す第2相関データは、既知データであり、記憶装置102に記憶されている。パイロット圧と主操作弁60のスプールストロークとの関係を示す第1相関データ、及び主操作弁60のスプールストロークと要求流量Qdとの関係を示す第2相関データのそれぞれは、変換テーブルデータを含む。
【0139】
配分流量算出部112は、第1主操作弁61に作用するパイロット圧を検出したバケット操作量センサ91の検出信号を取得する。配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第1相関データを使って、第1主操作弁61に作用するパイロット圧を第1主操作弁61のスプールストロークに変換する。これにより、バケット操作量センサ91の検出信号と記憶装置102に記憶されている第1相関データとに基づいて、第1主操作弁61のスプールストロークが算出される。また、配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第2相関データを使って、算出された第1主操作弁61のスプールストロークをバケットシリンダ21の要求流量Qdbkに変換する。これにより、配分流量算出部112は、バケットシリンダ21の要求流量Qdbkを算出することができる。
【0140】
配分流量算出部112は、第2主操作弁62に作用するパイロット圧を検出したアーム操作量センサ92の検出信号を取得する。配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第1相関データを使って、第2主操作弁62に作用するパイロット圧を第2主操作弁62のスプールストロークに変換する。これにより、アーム操作量センサ92の検出信号と記憶装置102に記憶されている第1相関データとに基づいて、第2主操作弁62のスプールストロークが算出される。また、配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第2相関データを使って、算出された第2主操作弁62のスプールストロークをアームシリンダ22の要求流量Qdarに変換する。これにより、配分流量算出部112は、アームシリンダ22の要求流量Qdarを算出することができる。
【0141】
配分流量算出部112は、第3主操作弁63に作用するパイロット圧を検出したブーム操作量センサ93の検出信号を取得する。配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第1相関データを使って、第3主操作弁63に作用するパイロット圧を第3主操作弁63のスプールストロークに変換する。これにより、ブーム操作量センサ93の検出信号と記憶装置102に記憶されている第1相関データとに基づいて、第3主操作弁63のスプールストロークが算出される。また、配分流量算出部112は、記憶装置102に記憶されている第2相関データを使って、算出された第3主操作弁63のスプールストロークをブームシリンダ23の要求流量Qdbmに変換する。これにより、配分流量算出部112は、ブームシリンダ23の要求流量Qdbmを算出することができる。
【0142】
なお、上述のように、バケット負荷圧力センサ81は、バケット負荷圧力センサ81Cとバケット負荷圧力センサ81Lとを含み、バケットシリンダ21の作動油の圧力PLbkは、バケットシリンダ21のキャップ側空間21Cの作動油の圧力PLbkcと、バケットシリンダ21のロッド側空間21Lの作動油の圧力PLbklとを含む。(2)式を用いて配分流量Qabkを算出するとき、配分流量算出部112は、第1主操作弁61のスプールの移動方向に基づいて、圧力PLbkc及び圧力PLbklのいずれか一方を選択する。例えば、第1主操作弁61のスプールが第1方向に移動する場合、配分流量算出部112は、バケット負荷圧力センサ81Cで検出された圧力PLbkcを用いて、(2)式に基づいて配分流量Qabkを算出する。第1主操作弁61のスプールが第1方向とは反対方向である第2方向に移動する場合、配分流量算出部112は、バケット負荷圧力センサ81Lで検出された圧力PLbklを用いて、(2)式に基づいて配分流量Qabkを算出する。
【0143】
同様に、アーム負荷圧力センサ82は、アーム負荷圧力センサ82Cとアーム負荷圧力センサ82Lとを含み、アームシリンダ22の作動油の圧力PLarは、アームシリンダ22のキャップ側空間22Cの作動油の圧力PLarcと、アームシリンダ22のロッド側空間22Lの作動油の圧力PLarlとを含む。(3)式を用いて配分流量Qaarを算出するとき、配分流量算出部112は、第2主操作弁62のスプールの移動方向に基づいて、圧力PLarc及び圧力PLarlのいずれか一方を選択する。例えば、第2主操作弁62のスプールが第1方向に移動する場合、配分流量算出部112は、アーム負荷圧力センサ82Cで検出された圧力PLarcを用いて、(3)式に基づいて配分流量Qaarを算出する。第2主操作弁62のスプールが第1方向とは反対方向である第2方向に移動する場合、配分流量算出部112は、アーム負荷圧力センサ82Lで検出された圧力PLarlを用いて、(3)式に基づいて配分流量Qaarを算出する。
【0144】
同様に、ブーム負荷圧力センサ83は、ブーム負荷圧力センサ83Cとブーム負荷圧力センサ83Lとを含み、ブームシリンダ23の作動油の圧力PLbmは、ブームシリンダ23のキャップ側空間23Cの作動油の圧力PLbmcと、ブームシリンダ23のロッド側空間23Lの作動油の圧力PLbmlとを含む。(4)式を用いて配分流量Qabmを算出するとき、配分流量算出部112は、第3主操作弁63のスプールの移動方向に基づいて、圧力PLbmc及び圧力PLbmlのいずれか一方を選択する。例えば、第3主操作弁63のスプールが第1方向に移動する場合、配分流量算出部112は、ブーム負荷圧力センサ83Cで検出された圧力PLbmcを用いて、(4)式に基づいて配分流量Qabmを算出する。第3主操作弁63のスプールが第1方向とは反対方向である第2方向に移動する場合、配分流量算出部112は、ブーム負荷圧力センサ83Lで検出された圧力PLbmlを用いて、(4)式に基づいて配分流量Qabmを算出する。
【0145】
本実施形態においては、油圧ポンプ30から吐出される作動油の吐出圧力Pは、吐出圧力センサ800によって検出される。なお、(1)式から(4)式において、油圧ポンプ30が吐出される作動油の吐出圧力Pが未知である場合、配分流量算出部112は、(5)式が収束するように繰り返し数値計算を実施して、配分流量Qabk,Qaar,Qabmを算出してもよい。
【0146】
Qlp=Qabk+Qaar+Qabm・・・(5)
【0147】
(5)式において、Qlpは、ポンプ制限流量である。ポンプ制限流量Qlpは、油圧ポンプ30の最大吐出流量Qmax、第1油圧ポンプ31の目標出力に基づいて決定される第1油圧ポンプ31の目標吐出流量Qt1、及び第2油圧ポンプ32の目標出力に基づいて決定される第2油圧ポンプ32の目標吐出流量Qt2のうち最も小さい値である。
【0148】
なお、本実施形態においては、操作装置5はパイロット圧方式の操作レバーを含み、操作量センサ90(91,92,93)として圧力センサが用いられる。操作装置5が電気方式の操作レバーを含んでもよい。操作装置5が電気方式の操作レバーを含む場合、操作量センサ(91,92,93)として操作レバーのストロークを示すレバーストロークを検出可能なストローセンサが用いられる。配分流量算出部112は、操作量センサ90によって検出されたレバーストロークを主操作弁60のスプールストロークに変換し、スプールストロークに基づいて要求流量Qdを算出することができる。配分流量算出部112は、予め定められている変換テーブルを用いて、レバーストロークをスプールストロークに変換することができる。
【0149】
<決定部>
決定部114は、配分流量算出部201で算出された配分流量Qaに基づいて、合流状態にすること又は分流状態にすることを決定する。本実施形態において、決定部114は、配分流量算出部112で算出された配分流量Qaと閾値Qsとの比較結果に基づいて、合流状態にすること又は分流状態にすることを決定する。
【0150】
閾値Qsは、油圧シリンダ20の配分流量Qaについての閾値である。配分流量算出部112で算出された配分流量Qaが閾値Qs以下のとき、決定部114は、分流状態にすることを決定する。配分流量算出部112で算出された配分流量Qaが閾値Qsよりも多いとき、決定部112は、合流状態にすることを決定する。
【0151】
本実施形態において、閾値Qsは、第1油圧ポンプ31及び第2油圧ポンプ32のそれぞれが吐出可能な作動油の最大吐出流量Qmaxである。すなわち、本実施形態において、決定部114は、配分流量Qaと最大吐出流量Qmaxとの比較結果に基づいて、合流状態にすること又は分流状態にすることを決定する。配分流量Qaが最吐出流量Qmax以下のとき、決定部114は、分流状態にすることを決定する。配分流量Qaが最大吐出流量Qmaxよりも多いとき、決定部114は、合流状態にすることを決定する。
【0152】
本実施形態においては、バケットシリンダ21に供給される作動油の配分流量Qabkとアームシリンダ22に供給される作動油の配分流量Qaarとの和が第1油圧ポンプ31の最大吐出流量Q1max以下、且つブームシリンダ23に供給される作動油の配分流量Qabmが第2油圧ポンプ32の最大吐出流量Q2max以下であるとき、決定部114は、分流状態にすることを決定する。バケットシリンダ21に供給される作動油の配分流量Qabkとアームシリンダ22に供給される作動油の配分流量Qaarとの和が第1油圧ポンプ31の最大吐出流量Q1maxよりも多いとき、又はブームシリンダ23に供給される作動油の配分流量Qabmが第2油圧ポンプ32の最大吐出流量Q2maxよりも多いとき、決定部114は、合流状態にすることを決定する。
【0153】
以下の説明においては、配分流量算出部112で算出された配分流量Qaが閾値Qs以下であり、決定部114が分流状態にすることを決定できる条件が成立したことを適宜、分流条件成立、と称する。
【0154】
<判定部>
判定部116は、エンジン4の出力が制限されるか否かを判定する。判定部116は、排ガス処理装置200が異常状態であると判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。また、判定部116は、排ガスセンサ300が異常状態であると判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。判定部116は、エンジン4の保護ができなくなったとき、例えば排ガスセンサ300の一部である外気温度センサ307、冷却液温度センサ308、及び図示しないエンジン油圧センサの少なくとも一つが異常状態であると判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。
【0155】
排ガス処理装置200が異常状態であるとは、排ガス処理装置200による排ガスの処理能力(浄化能力)が低下する又は低下する可能性がある事象が生じた状態をいう。例えば、還元剤タンク205に収容されている還元剤Rの量が使用により、又は漏れ等により許容値よりも減少する事象が生じたとき、排ガス処理装置200による排ガスの処理能力(浄化能力)が低下する又は低下する可能性がある。還元剤タンク205に収容されている還元剤Rの量は、還元剤センサ209によって検出される。判定部116は、還元剤センサ209の検出信号に基づいて、還元剤タンク205に収容されている還元剤Rの量が許容値よりも減少していると判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。
【0156】
排ガスセンサ300が異常状態であるとは、排ガスセンサ300による排ガスの状態の検出精度が低下する事象又は排ガスの状態の検出ができない事象が生じた状態という。例えば、NOxセンサ301が故障した場合、NOxセンサ301が故障したことを示す異常信号が判定部116に送信される。判定部116は、取得した異常信号に基づいて、NOxセンサ301がNOxの濃度の検出をできないと判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。また、吸気流量センサ305が故障したり、大気圧センサ306が故障したり場合においても、異常信号が判定部116に送信される。判定部116は、取得した異常信号に基づいて、吸気流量センサ305の検出信号に基づいてNOxの流量を算出できないと判定したとき、又は大気圧センサ306の検出信号に基づいてNOxの流量を推測できないと判定したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。
【0157】
<合分流制御部>
合分流制御部118は、決定部114の決定結果及び判定部116の判定結果に基づいて、第1合分流弁67を制御する指令信号を出力する。合分流制御部118は、エンジン4の出力が制限されていると判定部116が判定したとき、合流状態になるように、第1合分流弁67を制御する指令信号を第1合分流弁67に出力する。
【0158】
本実施形態において、合分流制御部118は、分流状態にすることを決定部114が決定しても、エンジン4の出力が制限されると判定部116が判定したとき、合流状態になるように、第1合分流弁67を制御する指令信号を第1合分流弁67に出力する。
【0159】
合分流制御部118は、エンジン4の出力が制限されていないと判定部116が判定したとき、決定部114の決定結果に基づいて、合流状態及び分流状態のいずれか一方になるように、第1合分流弁67を制御する指令信号を第1合分流弁67に出力する。
【0160】
<排ガス処理制御部>
排ガス処理制御部120は、排ガス処理装置200を制御する指令信号を出力する。排ガス処理制御部120は、排ガスセンサ300の検出信号を取得し、排ガスセンサ300の検出信号に基づいて、還元触媒203に供給する還元剤Rの供給量を決定する。排ガス処理制御部120は、決定した供給量で還元剤Rが供給されるように、例えば供給ポンプ207を制御する指令信号を出力する。
【0161】
<エンジン制御部>
エンジン制御部122は、エンジン4の出力を制御する。エンジン制御部122は、燃料噴射装置17に指令信号を出力してエンジン4に対する燃料噴射量を制御することによって、エンジン4の出力を制御する。
【0162】
本実施形態において、エンジン制御部122は、排ガス処理装置200が異常状態であるとき、エンジン4に対する燃料噴射量を制御して、エンジン4の出力を制限する。また、エンジン制御部122は、排ガスセンサ300が異常状態であるとき、エンジン4に対する燃料噴射量を制御して、エンジン4の出力を制限する。エンジン制御部122は、燃料噴射装置17から噴射される燃料噴射量を減少させることによって、エンジン4の出力を低減させる。また、エンジン制御部122は、排ガスが正常状態に制御されないとき、エンジン4の出力を制限する。また、エンジン制御部122は、エンジン4の保護ができなくなったとき、例えば排ガスセンサ300の一部である外気温度センサ307、冷却液温度センサ308、及び図示しないエンジン油圧センサの少なくとも一つが異常状態であるとき、エンジン4の出力を制限する。
【0163】
上述のように、排ガス処理装置200が異常状態であるとは、排ガス処理装置200による排ガスの処理能力(浄化能力)が低下する又は低下する可能性がある事象が生じた状態をいう。排ガス処理装置200が異常状態であるにもかかわらず、エンジン4を高出力で作動させてしまうと、エンジン4から排出された多量の排ガスを十分に浄化することができない。その結果、十分に浄化されていない多量の排ガスが大気空間に放出されてしまう。そのため、排ガス処理装置200が異常状態であると判定したとき、エンジン制御部122は、エンジン4に対する燃料噴射量を減少させて、エンジン4の出力を制限する。例えば、エンジン制御部122は、還元剤センサ209の検出信号に基づいて、還元剤タンク205に収容されている還元剤Rの量が許容値よりも減少していると判定したとき、エンジン4の出力を低減させる。これにより、エンジン4から排出される排ガスが少量となり、十分に浄化されていない多量の排ガスが大気空間に放出されてしまうことが抑制される。
【0164】
上述のように、排ガスセンサ300が異常状態であるとは、排ガスセンサ300による排ガスの状態の検出精度が低下する事象又は排ガスの状態の検出ができない事象が生じた状態をいう。排ガスセンサ300が異常状態であると、排ガス処理制御部120は、排ガスセンサ300の検出信号に基づいて、還元触媒203に供給する適正な還元剤Rの供給量を決定することが困難となる。例えば、供給される還元剤Rが過多であると、排ガスとともにアンモニアが大気空間に放出されてしまう可能性が高くなる。一方、供給される還元剤Rが過少であると、NOxが十分に低減されず、大気空間に放出されてしまう可能性が高くなる。そのため、排ガスセンサ300が異常状態であると判定したとき、エンジン制御部122は、エンジン4に対する燃料噴射量を減少させて、エンジン4の出力を制限する。例えば、エンジン制御部122は、NOxセンサ301が故障したことを示す異常信号を取得したとき、エンジン4の出力を低減させる。排ガス処理制御部120は、出力が低減されたエンジン4からの排ガスに含まれるNOxの流量を推測して、アンモニアが放出されず、且つ、排ガスに含まれるNOxが低減されるように、還元剤Rの供給量を決定することができる。
【0165】
図6は、本実施形態に係るエンジン4のトルク線図の一例を示す図である。エンジン4の上限トルク特性が、図6に示す最大出力トルク線Laによって規定される。エンジン4のドループ特性が、図6に示すエンジンドループ線Lbによって規定される。エンジン目標出力が、図6に示す等出力線Lcによって規定される。
【0166】
エンジン制御部122は、上限トルク特性、ドループ特性、及びエンジン目標出力に基づいて、エンジン4を制御する。エンジン制御部122は、エンジン4の回転数及びトルクが、最大出力トルク線La、エンジンドループ線Lb、及び等出力線Lcを超えないように、エンジン4を制御する。
【0167】
すなわち、エンジン制御部122は、エンジン4の回転数及びトルクが、最大出力トルク線Laとエンジンドループ線Lbと等出力線Lcとによって規定されるエンジン出力トルク線Ltを超えないように、エンジン4に対する燃料噴射量を制御する指令信号を出力する。
【0168】
エンジン4の出力が制限されないとき、エンジン制御部122は、エンジン4の出力を、等出力線Lc1で示す目標出力に設定する。エンジン4の出力が制限されないとき、エンジン制御部122は、エンジン4の回転数及びトルクが、等出力線Lc1を超えないように、エンジン4に対する燃料噴射量を調整する。
【0169】
排ガス処理装置200及び排ガスセンサ300の少なくとも一方が異常状態となり、エンジン4の出力を制限する必要が生じたとき、エンジン制御部122は、エンジン4の出力を、等出力線Lc2で示す目標出力に設定する。等出力線Lc2で示すエンジン4の出力は、等出力線Lc1で示すエンジン4の出力よりも小さい。エンジン4の出力を制限するとき、エンジン制御部122は、エンジン4の回転数及びトルクが、等出力線Lc2を超えないように、エンジン4に対する燃料噴射量を調整する。
【0170】
[制御方法]
図7は、本実施形態に係る油圧ショベル1の制御方法の一例を示すフローチャートである。配分流量算出部112は、配分流量Qa(Qabk,Qaar,Qabm)を算出する(ステップSP10)。
【0171】
決定部114は、配分流量算出部112で算出された配分流量Qaと閾値Qsとを比較して、分流状態にすることを決定できる分流条件が成立したか否かを判定する(ステップSP20)。
【0172】
ステップSP20において、分流条件が成立していないと判定されたとき(ステップSP20:No)、決定部114は、合流状態にすることを決定する。合分流制御部118は、合流状態になるように、第1合分流弁67に指令信号を出力する。これにより、油圧システム1000Aは、合流状態で作動する(ステップSP40)。
【0173】
なお、ステップSP20において、分流条件が成立しているか否かの判定時において、油圧システム1000Aが合流状態で作動しているとき、合分流制御部118は、合流状態が維持されるように、第1合分流弁67を制御する。分流条件が成立しているか否かの判定時において、油圧システム1000Aが分流状態で作動しているとき、合分流弁制御部118は、分流状態から合流状態に切り換わるように、第1合分流弁67を制御する。
【0174】
ステップSP20において、分流条件が成立していると判定されたとき(ステップSP20:Yes)、決定部114は、分流状態にすることを決定する。判定部116は、エンジン4の出力が制限されているか否かを判定する(ステップSP30)。
【0175】
例えば、還元剤タンク205に収容されている還元剤Rの量が許容値よりも少ない場合、排ガス処理装置200が異常状態であることを示す異常信号が判定部116に送信される。また、排ガスセンサ300が異常状態であるとき、排ガスセンサ300が異常状態であることを示す異常信号が判定部116に送信される。これら異常信号は、エンジン4の出力が制限されることを示す制限信号である。判定部116は、制限信号を取得したとき、エンジン4の出力が制限されると判定する。
【0176】
ステップSP30において、エンジン4の出力が制限されていないと判定されたとき(ステップSP30:No)、合分流制御部118は、分流状態になるように、第1合分流弁67に指令信号を出力する。これにより、油圧システム1000Aは、分流状態で作動する(ステップSP50)。
【0177】
ステップSP30において、エンジン4の出力が制限されていると判定されたとき(ステップSP30:Yes)、合分流制御部118は、合流状態になるように、第1合分流弁67に指令信号を出力する。これにより、油圧システム1000Aは、合流状態で作動する(ステップSP40)。
【0178】
なお、油圧システム1000Aが合流状態で作動しているときであってエンジン4の出力が制限されていると判定されたとき、合分流制御部118は、合流状態が維持されるように、第1合分流弁67を制御する。油圧システム1000Aが分流状態で作動しているときに、ステップSP30においてエンジン4の出力が制限されていると判定されたとき、合分流制御部118は、分流状態から合流状態に切り換わるように、第1合分流弁67を制御する。
【0179】
油圧システム1000Aが合流状態で作動するとき(ステップSP40)、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油及び第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23のそれぞれに供給される。
【0180】
油圧システム1000Aが分流状態で作動するとき(ステップSP50)、第1油圧ポンプ31から吐出された作動油は、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22に供給され、第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、ブームシリンダ23に供給される。
【0181】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、合流状態と分流状態とを切り換え可能な制御システム1000において、エンジン4の出力(回転数)が制限されるとき、油圧システム1000Aは合流状態になる。エンジン4の出力が低下したとき、油圧システム1000Aが分流状態になると、例えばバケットシリンダ21及びアームシリンダ22のそれぞれに供給される作動油の流量が減少する。その結果、バケット21の作動速度又はアーム22の作動速度が低下して、油圧ショベル1の作業性が低下する可能性がある。本実施形態においては、エンジン4の出力が制限されるとき、油圧システム1000Aが分流状態になることが制限され、合流状態になるので、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22のそれぞれに供給される作動油の流量が減少することが抑制される。そのため、油圧ショベル1の作業性の低下が抑制される。
【0182】
また、エンジン4の出力(回転数)が低下しているときに油圧システム1000Aが分流状態になっても、分流条件が不成立となり、分流状態から合流状態に戻り易くなる。分流状態から合流状態に戻るときに、第1油圧ポンプ31から吐出作動油の圧力と第2油圧ポンプ32から吐出作動油の圧力との差が大きいと、ショックが発生する可能性がある。本実施形態においては、エンジン4の出力が低下するときには、油圧システム1000Aが合流状態になるので、ショックの発生が抑制される。
【0183】
また、本実施形態においては、排ガス処理装置200が異常状態であるときに、エンジン4の出力が制限されると判定される。排ガス処理装置200が異常状態であるときに、エンジン4の出力が制限されることにより、多量のNOxが大気空間に放出されることが抑制される。
【0184】
また、本実施形態においては、排ガスセンサ300が異常状態であるときに、エンジン4の出力が制限される。排ガスセンサ300が異常状態であるときに、エンジン4の出力が制限されることにより、アンモニア又はNOxが待機空間に放出されることが抑制される。
【0185】
また、本実施形態においては、分流条件が成立しても、エンジン4の出力が制限されると判定されたとき、油圧システム1000Aは合流状態になる。そのため、バケットシリンダ21及びアームシリンダ22のそれぞれに供給される作動油の流量が減少することが抑制され、油圧ショベル1の作業性の低下が抑制される。
【0186】
また、本実施形態においては、エンジン4に対する燃料噴射量が低減されることによって、エンジン4の出力が制限される。これにより、発生するNOxの量が低減される。
【0187】
なお、上述の実施形態においては、第1合分流弁67を作動させるか否かを決定するときに用いられる閾値Qsは、最大吐出流量Qmaxであるとした。閾値Qsは、最大吐出流量Qmaxよりも小さい値でもよい。
【0188】
なお、上述の実施形態においては、作業機械1は、ハイブリッド方式の油圧ショベル1であることとした。作業機械1は、ハイブリッド方式の油圧ショベル1でなくてもよい。上述の実施形態においては、上部旋回体2は電動モータ25によって旋回していたが、油圧モータによって旋回するようにしてもよい。油圧モータは、第1油圧アクチュエータ又は第2油圧アクチュエータのいずれかに旋回モータを含めて、配分流量とポンプ出力を算出してもよい。
【0189】
なお、上述の実施形態においては、制御システム1000が油圧ショベル1に適用されることとした。制御システム1000が適用される作業機械は、油圧ショベル1に限定されず、油圧ショベル以外の油圧駆動の作業機械に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0190】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…上部旋回体、3…下部走行体、3C…履帯、4…エンジン、4R…エンジン回転数センサ、4S…出力シャフト、5…操作装置、5L…左操作レバー、5R…右操作レバー、6…運転室、6S…運転席、7…機械室、8…燃料タンク、9…作動油タンク、10…作業機、11…バケット、12…アーム、13…ブーム、14…蓄電器、14C…変圧器、15G…第1インバータ、15R…第2インバータ、16…回転センサ、17…燃料噴射装置、17A…蓄圧室、17B…インジェクタ、18…吸気管、19…排気管、20…油圧シリンダ、21…バケットシリンダ、21A…第1バケット流路、21B…第2バケット流路、21C…キャップ側空間、21L…ロッド側空間、22…アームシリンダ、22A…第1アーム流路、22B…第2アーム流路、22C…キャップ側空間、22L…ロッド側空間、23…ブームシリンダ、23A…第1ブーム流路、23B…第2ブーム流路、23C…キャップ側空間、23L…ロッド側空間、24…油圧モータ、25…電動モータ、27…発電電動機、29…コモンレール制御部、30…油圧ポンプ、30A…斜板、30S…斜板角センサ、31…第1油圧ポンプ、31A…斜板、31B…サーボ機構、31S…傾斜角センサ、32…第2油圧ポンプ、32A…斜板、32B…サーボ機構、32S…傾斜角センサ、33…スロットルダイヤル、34…作業モード選択器、35…エアクリーナ、40…油圧回路、41…第1油圧ポンプ流路、42…第2油圧ポンプ流路、43…第1供給流路、44…第2供給流路、45…第3供給流路、46…第4供給流路、47…第1分岐流路、48…第2分岐流路、49…第3分岐流路、50…第4分岐流路、51…第5分岐流路、52…第6分岐流路、53…排出流路、55…合流流路、60…主操作弁、61…第1主操作弁、62…第2主操作弁、63…第3主操作弁、67…第1合分流弁(開閉装置)、68…第2合分流弁、69…アンロード弁、70…圧力補償弁、71,72,73,74,75,76…圧力補償弁、80…負荷圧力センサ、81…バケット負荷圧力センサ、81C,81L…バケット負荷圧力センサ、82…アーム負荷圧力センサ、82C,82L…アーム負荷圧力センサ、83…ブーム負荷圧力センサ、83C,83L…ブーム圧力センサ、90…操作量センサ、91…バケット操作量センサ、92…アーム操作量センサ、93…ブーム操作量センサ、100…制御装置、100A…ポンプコントローラ、100B…ハイブリッドコントローラ、100C…エンジンコントローラ、101…演算処理装置、102…記憶装置、103…入出力インターフェース装置、112…配分流量算出部、114…決定部、116…判定部、118…合分流制御部、120…排ガス処理制御部、122…エンジン制御部、200…排ガス処理装置、201…フィルタユニット、202…管路、203…還元触媒、204…還元剤供給装置、205…還元剤タンク、206…供給管、207…供給ポンプ、208…噴射ノズル、209…還元剤センサ、300…排ガスセンサ、301…NOxセンサ、302…圧力センサ、303…温度センサ、304…圧力センサ、305…吸気流量センサ、306…大気圧センサ、307…外気温度センサ、308…冷却液温度センサ、701…シャトル弁、702…シャトル弁、800…吐出圧力センサ、801…吐出圧力センサ、802…吐出圧力センサ、1000…制御システム、1000A…油圧システム、1000B…電動システム、Br1…第1分岐部、Br2…第2分岐部、Br3…第3分岐部、Br4…第4分岐部、R…還元剤、RX…旋回軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7