(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスキング工程は、前記板金製の内筒分割体と前記鋳造製の内筒分割体との接続箇所を塞ぐ第1マスキング治具と、前記外筒と前記内筒との間の開口部を塞ぐ第2マスキング治具とを使用して行う、請求項1又は2に記載のタービンハウジングの製造方法。
前記第1マスキング治具又は前記第2マスキング治具の少なくとも一方を、前記切削工程の後に溶解して外部に排出する工程を含む、請求項3に記載のタービンハウジングの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
本発明の一実施形態のタービンハウジング10を
図1〜
図13に基づいて説明する。
【0011】
図1〜
図4に示すタービンハウジング10は、車両のターボチャージャ(ターボ過給機)のハウジングとして用いられる。タービンハウジング10は、鋳物製のセンターフランジ11と、排気ガスBの入口12aを構成する鋳物製で排気入口側のフランジ12と、排気ガスBの出口13aを構成する排気出口側(排気流れ下流側)のフランジ13との間に備えられた渦状(渦巻き状)の排気ガス流路Kを構成するスクロール部としての内筒20と、この内筒20の排気出口側の箇所(円筒状部23d)に接続された排気管30と、これら内筒20及び排気管30を所定の隙間Gを空けて覆う外筒40とからなる二重殻(二重管)構造となっている。タービンハウジング10は、排気入口側のフランジ12の入口12aから入った排気ガスBを、内筒20の旋回中心部(中心部)Oに配設されたタービンホイール14を経由して鋳物製で排気出口側のフランジ13の出口13aから排出する。
【0012】
図1に示すように、センターフランジ11には、コンプレッサ15が接続されている。また、排気ガスBを放出する排気出口側のフランジ13には、排気ガスBの有害な汚染物質を取り除く触媒コンバータ(排気ガス浄化装置)16が連結フランジ17と連結管18を介して接続されている。即ち、タービンハウジング10は、吸気側のコンプレッサ15と触媒コンバータ16との間に介在されている。
【0013】
図2及び
図4に示すように、内筒(スクロール部)20がハウジング内部の排気ガスBの渦巻き状の排気ガス流路Kを実質的に区画形成している。また、外筒40は内筒20及び排気管30を所定の隙間Gを空けて完全に覆い、内筒20及び排気管30を密封して保護すると同時に断熱し、かつ、タービンハウジング10としての剛性を高める役割を担う外殻構造体をなしている。
【0014】
図4に示すように、内筒20は、タービンホイール14のタービン軸(駆動軸)14aの軸方向Lに直交する方向で2分割形成された板金製で薄板状のスクロール部材から成る第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22と、タービンホイール14に相対向する部位(排気ガスBの排気出口側の領域)に位置する板金製よりも耐熱性の高い材料として鋳造により形成された鋳物製のスクロール板材から成る第3内筒分割体23とから構成されている。
【0015】
図2及び
図4に示すように、第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22は、板金をプレス加工することにより所定の湾曲筒形状に成形されている。このプレス成形された2つの板金製の第1内筒分割体21の後周縁側の端部21bと第2内筒分割体22の前周縁側の端部22aとを溶接により接合して固定してある。即ち、第1内筒分割体21の後周縁側の端部21b及び第2内筒分割体22の前周縁側の端部22aは、外側に垂直に長さが異なるように折り曲げ形成されており、この長短の端部21b,22a同士は溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。
【0016】
また、
図2及び
図4に示すように、第3内筒分割体23は、鋳物部品にて所定の湾曲筒形状に成形されていて、
図4に示すように、板金製の第2内筒分割体22の後周縁側の端部22bと鋳物製の第3内筒分割体23の後外周縁側の段差凹状の端部23bとを排気ガス流路Kの流路面kの反対側の面からの溶接(溶接部分を符号Eで示す)により接合して固定してある。これにより、内筒20の排気ガスBの排気出口側の領域としてのタービンホイール14に相対向する部位は、鋳物製のスクロール部材から成る鋳物製の第3内筒分割体23によって形成されている。また、内筒20の残りの部位は、板金製のスクロール板材から成る板金製の第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22から形成されていて、その内部に渦巻き状の排気ガス流路Kが形成されている。
【0017】
さらに、
図2及び
図4に示すように、鋳物製の第3内筒分割体23の正面23aは、平坦部になっていて、その下側(排気入口側のフランジ12)の面積が上側(排気入口側のフランジ12の反対側)の面積よりも広く形成されている。即ち、
図4に示すように、鋳物製の第3内筒分割体23の排気入口側のフランジ12寄りの部位は、その反対側の部位よりも厚肉に形成されている。これにより、鋳物製の第3内筒分割体23によって内筒20の排気ガス流路Kの流路面kの一部が形成されている。
【0018】
さらに、鋳物製の第3内筒分割体23の排気入口側には段差円環状の凹部23cが形成されていると共に、第3内筒分割体23の排気出口側には円筒状部(筒状部)23dが一体突出形成されている。この段差円環状の凹部23cには、タービンホイール14を保護する円環リング状の補強部材(図示省略)を嵌め込んである。
【0019】
また、
図4に示すように、円筒状部23dの内壁は出口側に行くに従って拡がる円錐状の斜面23eに形成されていて、この円筒状部23dの内壁の斜面23eに排気管30の前側の端部31を嵌め込んで両者が溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。尚、円筒状部23dの外周面に凹溝部を円環状に形成し、この円環状の凹溝部にシールリングを嵌合すると共に、円筒状部23dの外周面にシールリングを介して排気管30の前側の端部31側をスライド自在に取り付けてもよい。その場合、排気管30が円筒状部23dの外側に配置され、切り子等が円筒状部23dの内部に入り難くなる。
【0020】
図1〜
図4に示すように、外筒40は、タービンホイール14のタービン軸14aの軸方向L(車両走行時の振動方向)に沿って2分割形成された第1外筒分割体41と第2外筒分割体42との2枚の板金製の薄板部材によって構成されている。この第1外筒分割体41及び第2外筒分割体42は、板金をプレス加工することにより所定の湾曲形状に成形されている。このプレス成形された2枚の板金製の第1外筒分割体41と板金製の第2外筒分割体42とを溶接により接合することにより、内筒20及び排気管30が所定の隙間Gを空けて完全に覆われるようになっている。
【0021】
即ち、
図1、
図3、
図4に示すように、板金製の第1外筒分割体41の段差状に延びた他端部41b及び板金製の第2外筒分割体42の段差状に延びた一端部42aは、第1外筒分割体41の他端部41bを下にして重ね合わせて、タービンホイール14のタービン軸14aの軸方向(軸直線方向)Lに沿った溶接(溶接部分を符号Eで示す)により互いに固定されている。これにより、車両が走行中において、タービン軸14aの軸方向Lで伸縮するため、軸方向Lに沿って溶接することによって、溶接目の破裂が防止されようになっている。
【0022】
図2及び
図4に示すように、センターフランジ11の内周面11bには、内筒20の板金製の第1内筒分割体21の前周縁側の端部21aが溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。また、センターフランジ11の外周面11cには、外筒40を構成する板金製の第1外筒分割体41及び板金製の第2外筒分割体42の前周縁側の各端部41c,42cが溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。尚、センターフランジ11には、ボルト取付用のネジ孔11dが等間隔に複数形成されている。
【0023】
図4に示すように、排気入口側のフランジ12は、略円環状に形成されており、その開口部12aが排気ガスBの入口になっている。そして、排気入口側のフランジ12の外周面12bの上側には、段差環状の凹部12cが内側に形成されていると共に、排気入口側のフランジ12の内周面12dの中途部には段付き部12eを内側に突出するように一体形成してある。この段付き部12e上に沿って内筒20の板金製の第1内筒分割体21の下端部21c側及び板金製の第2内筒分割体22の下端部22c側が半円弧湾曲状にそれぞれ形成されていると共に、該段付き部12eとの間に開口部(隙間)25を有して伸縮自在に遊嵌されている。即ち、内筒20と排気入口側のフランジ12との間の隙間25において、内筒20が排気入口側のフランジ12に対してスライド可能となっている。
【0024】
また、
図2〜
図4に示すように、排気入口側のフランジ12の凹部12cに沿って外筒40を構成する板金製の第1外筒分割体41及び板金製の第2外筒分割体42の下端部41e,42e側が半円弧湾曲状にそれぞれ形成されていると共に、該凹部12c内に嵌め合わされた状態で外周面12bの上側に溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。尚、排気入口側のフランジ12には、図示しないボルト取付用のネジ孔が等間隔に複数形成されている。
【0025】
さらに、
図3及び
図4に示すように、排気出口側のフランジ13は、略四角板状に形成されており、その中央の円形の開口部13aが排気ガスBの出口になっている。そして、排気出口側のフランジ13の内周面13bには、外筒40を構成する板金製の第1外筒分割体41及び板金製の第2外筒分割体42の後周縁側の各端部41d,42d、及び排気管30の後側の端部32が溶接(溶接部分を符号Eで示す)により固定されている。尚、排気出口側のフランジ13には、角部にボルト取付用のネジ孔13dがそれぞれ形成されている。
【0026】
第1外筒分割体41及び第2外筒分割体42によって構成された外筒40は、センターフランジ11と全周に亘って溶接され、排気入口側のフランジ12と全周に亘って溶接され、排気出口側のフランジ13と全周に亘って溶接されている。尚、外筒40は、内筒20を密封するように各フランジに溶接されていればよく、各フランジとの溶接個所はそれらの外周又は内周から適宜選択することができる。
【0027】
タービンハウジング10を組み立てる際には、板金製の内筒分割体(第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22)と鋳造製の内筒分割体(第3内筒分割体23)とを接続して、渦巻き状の排気ガス流路Kを形成する内筒20を組み立てる(内筒組立工程)。また、タービンホイール14の駆動軸14aを収容するセンターフランジ11に対して、板金製の内筒分割体(第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22)を接続する(センターフランジ接続工程)。また、板金製の内筒分割体が第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22により構成される場合、少なくとも、第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22に内筒20の外側へ向かう突き合わせ部を設けて、この突き合わせ部を溶接する(溶接工程)。さらに、内筒20を覆う外筒40を、センターフランジ11に接続する(外筒接続工程)。
【0028】
以上のようにして、組み立て(内筒組立工程、センターフランジ接続工程、溶接工程及び外筒接続工程)が完了したタービンハウジング10は、その後の製造過程にて、
図8〜
図11に示す4個のマスキング治具51〜54を用いて、各部品の切削加工(
図4及び
図7中に、切削箇所を太線及び符号Fで示す。)及び洗浄の作業が施されて製品として完成する。尚、第3内筒分割体23の正面23aにおいては、タービンホイール14に対向する面の一部のみを切削してもよく、全面を切削してもよい。尚、機械加工(切削工程)の際には、センターフランジ11を上又は横に向けてタービンハウジング10を載置した状態で加工を行うようにするとよい。その場合、切り子等がタービンハウジング10の内部に入り難くなる。
【0029】
内筒組立工程よりも後で、且つ、切削加工を行う切削工程よりも前に、板金製の内筒分割体(第2内筒分割体22)と鋳造製の内筒分割体(第3内筒分割体23)との接続箇所、又は、外筒40において排気入口側のフランジ12に接続された箇所と内筒20との間の開口部、の少なくとも一方を塞ぐ(マスキング工程)。また、マスキング工程においては、少なくとも、第1内筒分割体21及び第2内筒分割体22の突き合わせ部の内側を塞ぐ。切削工程においては、少なくとも、鋳造製の内筒分割体(第3内筒分割体23)において、タービンホイール14と対向する内壁面(正面23a)を切削する。また、切削工程においては、センターフランジ11の内周面を基準にして、タービンホイール14と対向する内壁面(正面23a)を切削することが好ましい。この切削工程は、タービンハウジング10の製造工程における全ての溶接工程よりも後に実施する。そして、切削工程よりも後に、タービンハウジング10に洗浄の作業が施される(洗浄工程)。
【0030】
図8に示すマスキング治具51は、ゴム製であり、断面L字状で円環状の治具本体51aと、この治具本体51aの外周部より突設した突出部51bとで、タービンハウジング10の渦巻き状の排気ガス流路Kを構成するスクロール部としての内筒20に沿うように形成されている。そして、
図6及び
図7に示すように、このゴム製のマスキング治具51は、内筒20を構成する板金製の第1内筒分割体21と第2内筒分割体22との突き合わせ部、及び第2内筒分割体22と鋳物製の第3内筒分割体23との突き合わせ部等の繋ぎ目部分に後述するシリコン樹脂製のマスキング治具52を介して装着されることで、上記繋ぎ目部分の隙間をゴムの潰れによる反発力で確実に覆ってシールするようになっている。
【0031】
図9に示すマスキング治具52は、シリコン樹脂製であり、小径半湾曲状の先端部52aから大径半湾曲状の基端部52bを渦巻き状の排気ガス流路Kを構成するスクロール部としての内筒20に沿うように略C字形状に形成されている。そして、
図6及び
図7に示すように、このシリコン樹脂製のマスキング治具52は、内筒20を構成する板金製の第1内筒分割体21と第2内筒分割体22との繋ぎ目部分、及び第2内筒分割体22と鋳物製の第3内筒分割体23の繋ぎ目部分に直接装着されて、ゴム製のマスキング治具51が外的要因にて変形した場合でも製品内部への異物の侵入を防ぐようになっている。
【0032】
図10に示すマスキング治具53は、硬質の合成樹脂製でリング(円筒)状に形成されている。
図7に示すように、マスキング治具53は、ゴム製のマスキング治具51の断面L字状で円環状の治具本体51a内に嵌め込まれて、ゴム製のマスキング治具51の断面L字状で円環状の治具本体51aの外周の薄肉部が外的要因により変形するのを防ぐものである。つまり、この硬質で合成樹脂製のマスキング治具53は、製品とゴム製のマスキング治具51の密着性及び剛性を向上させ、クーラントによるゴム製のマスキング治具51の変形を防ぐ補強材としての機能を有するものである。
【0033】
図11に示すマスキング治具54は、ゴム製であり、略板状の治具本体54aの外周側の厚肉部54bに、排気入口側のフランジ12の開口部12aの内周面12dに突設した段付き部12eを挟み込む環凹状の溝部54cを形成してある。マスキング治具54は、排気入口側のフランジ12の開口部12aの段付き部12eと、内筒20の板金製の第1内筒分割体21の下端部21c及び板金製の第2内筒分割体22の下端部22c内とに装着されて、板金製の第1、第2内筒分割体21,22の各下端部21c,22cと排気入口側のフランジ12の開口部12aの段付き部12eとの間の開口部(隙間)25を確実に覆ってシールするようになっている。
【0034】
次に、4個のマスキング治具51〜54を用いて、組み立て完了後のタービンハウジング10の製造工程(機械加工と洗浄)を
図13に示すフローチャートに沿って説明する。
【0035】
まず、
図6及び
図12に示すように、内筒20を構成する板金製の第1内筒分割体21と第2内筒分割体22との突き合わせ部、及び第2内筒分割体22と鋳物製の第3内筒分割体23との突き合わせ部等の繋ぎ目部分に、シリコン樹脂製のマスキング治具52、ゴム製のマスキング治具51、合成樹脂製のマスキング治具53との順にそれぞれ装着して(ステップS1)、上記繋ぎ目部分の隙間を覆ってシールする。また、
図7に示すように、板金製の第1、第2内筒分割体21,22の各下端部21c,22cと排気入口側のフランジ12の開口部12aの段付き部12eとの間に、ゴム製のマスキング治具54を装着して、それらの開口部25を覆ってシールする。
【0036】
次に、4個のマスキング治具51〜54の装着状態を確認し(ステップS2)、4個のマスキング治具51〜54が適正な位置に装着されていない場合には、装着をやり直す。
【0037】
次に、4個のマスキング治具51〜54が適正な位置に装着されている場合には、マシニングセンタ及び旋盤等により、内筒20等の切削加工を行う(ステップS3)。この切削加工の際に、バリが発生した場合にはバリ取りも行う。
【0038】
次に、洗浄機により、タービンハウジング10の内部の洗浄を行う(ステップS4)。
【0039】
そして、タービンハウジング10の内部の洗浄が終わったら、4個のマスキング治具51〜54を取り外す(ステップS5)。この取り外しにより夾雑物残量規格をクリアした製品が完成する。
【0040】
次に、一度使用した4個のマスキング治具51〜54に傷があるかどうか確認し(ステップS6)、傷が無い場合には、後続(次)のタービンハウジング10の機械加工及び洗浄用として使用する。傷が有るマスキング治具51〜54は廃却し、新しいマスキング治具51〜54を後続のタービンハウジング10の機械加工及び洗浄用として使用する。
【0041】
このように、タービンハウジング10の内筒20及び排気入口側のフランジ12の開口部12aの形状に合わせて製作した4個のマスキング治具51〜54を用い、この4個のマスキング治具51〜54を内筒20及び排気入口側のフランジ12の開口部12aに装着してから内筒20等の切削加工とバリ取り加工及び洗浄を行い、この機械加工と洗浄の後に4個のマスキング治具51〜54を取り外す。このようにすることにより、組み立て完了後のタービンハウジング10の機械加工時に、内筒20と外筒40の二重殻内又は隙間に切削で生じる切り屑及びバリ等の夾雑物が侵入することを簡単かつ確実に阻止することができる。これにより、夾雑物の侵入の無い状態で洗浄することができ、厳しい夾雑物残量規格をクリアした製品を簡単、確実かつ安価に生産することができる。
【0042】
また、タービンハウジング10の内部に装着してシールする箇所の形状に合わせた4個のマスキング治具51〜54を用いるため、複雑なシール範囲に対して簡単かつ確実に4個のマスキング治具51〜54を装着することができる。
【0043】
また、4個のマスキング治具51〜54は使い捨てではなく、複数回の繰り返し使用が可能なため、その分、コストの低減が図られる。
【0044】
さらに、マシニングセンタ及び旋盤等による機械加工又は洗浄中でもマスキング治具51〜54が外れることはなく、確実な装着が可能である。
【0045】
第3内筒分割体と第2内筒分割体とは、精密鋳造法によって一体的に接続してもよい。この場合においても、第1内筒分割体と第2内筒分割体とが溶接され、当該第1内筒分割体がセンターフランジに溶接されるため、これら部品の寸法誤差の累積又は溶接による位置ずれが生じる可能性がある。このため、タービンホイールとのチップクリアランスの精度を保つために、切削工程を設けることは有効である。
【0046】
尚、前記実施形態によれば、4個のマスキング治具を使用したが、マスキング治具は4個に限らず、少なくとも2個、或いは、4個以上のマスキング治具を使用しても良い。それらの材質もゴム、合成樹脂、シリコン樹脂に限られるものではない。
【0047】
尚、マスキング治具は切削工程の後に溶解してタービンハウジングの外部に排出するようにしてもよい。マスキング治具を再利用しない場合には、加熱及び溶解によりタービンハウジングの内部から簡単且つ確実に除去することができる。
【0048】
さらに、
図14及び
図15に示すように、液体から固体になる凝固性を有するワックス材(充填材)Wをマスキング治具として用いるようにしてもよい。
【0049】
即ち、
図14に示すように、タービンハウジング10を横に倒して、排気入口側のフランジ12の開口部12aを板状の閉塞用プレート50等で外側から閉塞した状態で、1回目の液体状のワックス材Wを充填することにより、内筒20を構成する板金製の第1内筒分割体21と第2内筒分割体22及び鋳物製の第3内筒分割体23の突き合わせ部等の繋ぎ目部分の隙間を覆って固化したワックス材W1でマスキングし、また、
図15に示すように、タービンハウジング10を起こして、2回目の液体状のワックス材Wを充填することにより、板金製の第1及び第2内筒分割体21,22の各下端部21c,22cと吸気入口側のフランジ12の開口部12aの段付き部12eとの間の開口部(隙間)25を覆って固化したワックス材W2でマスキングしてから少なくとも内筒20の切削加工とバリ取り加工及び洗浄の各作業が行われるようになっている。
【0050】
より具体的には、
図14に示すように、組み立て完了後のタービンハウジング10を横に倒して、排気入口側のフランジ12の開口部12aを板状の閉塞用プレート50等で外側から閉塞した状態で、1回目の液体状のワックス材Wを充填する。これにより、内筒20を構成する板金製の第1内筒分割体21と第2内筒分割体22及び鋳物製の第3内筒分割体23の突き合わせ部等の繋ぎ目部分の隙間が固化したワックス材W1で覆われてマスキングされる。
【0051】
次に、
図15に示すように、タービンハウジング10を起こしてその姿勢を変換し、2回目の液体状のワックス材Wを充填する。これにより、板金製の第1及び第2内筒分割体21,22の各下端部21c,22cと吸気入口側のフランジ12の開口部12aの段付き部12eとの間の開口部25が固化したワックス材W2で覆われてマスキングされる。
【0052】
以上要するに、前記実施形態によれば、タービンハウジングを複数の部材により構成する場合においても、機械加工時の切り子等が入り込むことを抑制するタービンハウジングの製造方法を提供することができる。
内筒組立工程においては、板金製の内筒分割体(21,22)と鋳造製の内筒分割体(23)とを接続して、渦巻き状の排気ガス流路(K)を形成する内筒(20)を組み立てる。センターフランジ接続工程においては、タービンホイール(14)の駆動軸(14a)を収容するセンターフランジ(11)に対して、板金製の内筒分割体(21,22)を接続する。外筒接続工程においては、内筒(20)への排気入口となる排気入口側のフランジ(12)、及び、センターフランジ(11)に、内筒(20)を覆う外筒(40)を接続する。マスキング工程においては、板金製の内筒分割体(21,22)と鋳造製の内筒分割体(23)との接続箇所、又は、外筒(40)と内筒(20)との間の開口部、の少なくとも一方を塞ぐ。切削工程においては、マスキング工程の後に、鋳造製の内筒分割体(23)において、タービンホイール(14)と対向する内壁面を切削する。