(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を遊技機の一例としてのスロットマシンに適用した場合の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、前面が開口したスロットマシンの筺体1と、該筺体1の一側縁に開閉可能に枢支されたスロットマシンのフロント扉2とを示している。そして、筺体1とフロント扉2のそれぞれの一側縁の上下にヒンジ機構3、3が設けられ、これらヒンジ機構3,3によって筐体1に対しフロント扉2が開閉可能に枢着されることになる。また、筺体1の上側縁には、横長の凸条5が固着されており、フロント扉2を閉じたときに、該凸条5がフロント扉2の上縁部の内面に形成された凹溝6に遊嵌し密閉されることになる。なお、図示はしないが、筺体1内には、電源装置、遊技メダル貯留ケース、回転ドラム等のスロットマシン用機器が配設されることになる。また、フロント扉2には、コイン投入口、操作ボタン、スピーカ、液晶表示装置等が組み付けられることになる。さらに、筺体1の他側縁(開放側縁)とフロント扉2の他側縁(開放側縁)には、フロント扉2を閉止状態に保持し得るように施錠装置が設けられることになる。
【0009】
前記ヒンジ機構3は、
図2乃至
図6に示されているように、筺体1の開口縁に固着される筐体用取着プレート7に形成されている筐体1側のヒンジ機構と、フロント扉2の一側縁に固着される扉用取着プレート8に形成されているフロント扉2側のヒンジ機構とによって構成されている。
【0010】
前記筐体用取着プレート7は、
図3に示されているように板金からなる縦長の部材で、長手方向の長さは略筐体1の上端から下端に至る長さに設定されている。この筐体用取着プレート7は、筐体1の開口縁の内面に沿うように配置される取付板部7aと、該取付板部7aの一端を直角に折曲すると共にその一端をさらに直角に屈曲させた遮蔽板部7bとによって形成されている。また、取付板部7aには、その上下方向に適宜間隔をもって取付孔9,9・・・が4箇所開設されており、該取付孔9,9・・・にビス10を螺着することで筐体用取着プレート7が筐体1に装着されている。さらに、遮蔽板部7bの上下部のそれぞれには、筐体1側のヒンジ機構の後述する押圧部15,15が設けられ、該押圧部15,15の下方に軸受部16,16が設けられている。
【0011】
前記扉用取着プレート8は、板金からなる縦長の部材で、長手方向の長さは略フロント扉2の上端から下端に至る長さに設定されている。この扉用取着プレート8は、フロント扉2の一側縁裏面に沿うように配置される取付板部8aと、該取付板部8aの両側を直角に折曲した側板部8b,8cとによって断面コ字形に形成されている。また、取付板部8aには、その上下方向に適宜間隔をもって取付孔11,11・・・が4箇所開設されており、該取付孔11,11・・・にビスを螺着することで筐体用取着プレート7がフロント扉2に装着されている。さらに、取付板部8aの上下部のそれぞれには、筐体1側に設けられた押圧部15の回動が規制されないようにするための矩形状の開口部13,13が開設されており、該開口部13、13の下方にフロント扉2側のヒンジ機構が設けられている。
【0012】
前記フロント扉2側のヒンジ機構は、扉用取着プレート8の取付板部8aの上下の2箇所に設けられており、棒状支軸20,20と、該棒状支軸20,20が摺動可能に挿入される筒状ホルダー21,21と、該棒状支軸20,20を付勢する弾性部材としての圧縮ばね22,22とによって概略構成されている。
【0013】
前記棒状支軸20は、
図4及び5に示すように、軸ピン25と、該軸ピン25の根元部分に設けられる係合部材26とからなっている。このうち、軸ピン25は、金属によって成形された所定長さを有する丸棒状の部材で、その中間部よりもやや下側に鍔部25aが形成されている。また、軸ピン25の鍔部25aより下側は下に向かって先細となる突起形状となっている。さらに、軸ピン25の上端(根元部分)の内方には螺子孔25bが形成されている。一方、係合部材26は、軸ピン25の根元部分に合致する筒部26aと、該筒部26aの側方に突出する縦長矩形状の係合片26bと、該係合片26bの下側から前方へ突出するように形成された指掛部26cとからなっており、これらは合成樹脂により一体成形されている。
【0014】
前記筒状ホルダー21は、矩形状の取付基板21aと、該取付基板21aの一側端から取付基板21aの中央部へ周回するように形成された円筒状の摺動筒部21bとからなっており、これらは合成樹脂により一体成形されている。また、取付基板21aの摺動筒部21bが設けられていない部位には、上下に2つの取付孔21c,21cが穿設されている。さらに、摺動筒部21bが取付基板21aの中央部と接する部位は下端部のみが残され、その上方には細長矩形状に切り欠かれた縦長溝21dが形成されている。この縦長溝21dの内法は、棒状支軸20の係合片26bの厚みよりやや幅広になっており、詳細は後述するが、縦長溝21dを係合片26bが自在に摺動し得るようになっている。また、摺動筒部21bの上端部であって縦長溝21dと隣接する部位には下方に切り欠いた係合部21eが形成されており、この係合部21eは、縦長溝21dから離れる方向に向かって深くなるような段差状になっている。
【0015】
前記棒状支軸20と前記筒状ホルダー21とを組み立てるにあたっては、まず、軸ピン25の根元側から圧縮バネ22を装着する。次に、軸ピン25の根元部分を筒状ホルダー21の摺動筒部21bの下側から挿通し、軸ピン25の根元部分が摺動筒部21bの上端部に来るように圧縮ばね22の付勢に抗して軸ピン25を下から押し上げる。そして、軸ピン25の根元部分に係合部材26の筒部26aの下端部を合致させた後、筒部26の上方から螺子27を挿入しねじ止めする。これにより、
図4に示すように、棒状支軸20と筒状ホルダー21とが組み立てられた状態になる。そして、筒状ホルダー21の取付基板21aを扉用取着プレート8の取付板部8aの上下の所定箇所に宛がい、筒状ホルダー21の取付基板21aの2つの取付孔21c,21cに螺子を挿入して扉用取着プレート8の取付板部8aに螺着する。
【0016】
さらに、
図7及び
図8に示されているように扉用取着プレート8の取付板部8aであって棒状支軸20の下側には、前方へ突出する軸受板28が設けられている。この軸受板28には、図示は省略するが棒状支軸20の軸ピン25の先端が挿入可能な貫通孔が穿設されており、軸ピン25が筐体用取着プレート7の軸受部16に確実に嵌るようにガイドする役割を果たしている。
【0017】
なお、前記した棒状支軸20は、筒状ホルダー21を進退動自在に摺動するようになっている。すなわち、常態において、棒状支軸20の圧縮ばね22は、軸ピン25の鍔部25aと筒状ホルダー21の摺動筒部21bの間に位置して軸ピン25の先端部を下方へと付勢している。この時、棒状支軸20の係合片26bを筒状ホルダー21の縦長溝21dに位置させると、
図4及び
図6に示されているように、係合片26bは圧縮ばね22の付勢により縦長溝21dの下方へと移動し、同時に軸ピン25も下方へと移動する。他方、係合片26bを圧縮ばね22の付勢に抗して上方に移動させ、且つ係合片26bを筒状ホルダー21の摺動筒部21b側へ回転させると、係合片26bが摺動筒部21bの係合部21eに係合して
図7に示されているように軸ピン25が上方に移動した状態が維持されることになる。この点については、後述する動作説明においてさらに詳述する。
【0018】
前記筐体1側のヒンジ機構は、筐体用取着プレート7の遮蔽板部7bの上下の2箇所に設けられており、押圧部15,15と、軸受部16,16とによって概略構成されている。このうち、押圧部15は、筐体用取着プレート7の遮蔽板部7bの一側縁から扉用取着プレート8側へ所定幅をもって突出させ、これをさらに2箇所で直角に折曲して形成されている。そして、この押圧部15の先端部は、扉用取着プレート8に設けられた棒状支軸20の係合片26bが筒状ホルダー21の係合部21eに係合している状態において、該係合片26bと対向位置するようになっている。他方、軸受部16は、筐体用取着プレート7の遮蔽板部7bの一側縁を扉用取着プレート8の内方にまで延設し、その先端を円弧状に湾曲させて筒状に形成されている。そして、この軸受部16は、扉用取着プレート8に設けられた軸受板28の下側に位置するようになっている。
【0019】
次に、上記のように構成されているフロント扉支持構造において、フロント扉2を筐体1に組付ける方法について
図6乃至
図8を参照しながら説明する。フロント扉2が筐体1に組付けられていない時は、
図6に示されているように棒状支軸20は基本的に下方に移動している。すなわち、棒状支軸20は、圧縮ばね22の付勢力により下方へ進出し、その先端部が軸受板28の貫通孔に挿通された状態になっている。そこで、まず、棒状支軸20の指掛部26cに指を掛けて係合片26bを上方へ押し上げると共に、押し上げた係合片26bを回動させて筒状ホルダー21の係合部21eに係合させておく(
図7)。次いで、フロント扉2を持ち上げて、
図8(a)に示されているように、筐体用取着プレート7の押圧部15と扉用取着プレート8の係合片26bが対向位置するようにし、
図8(b)に示されているようにフロント扉2を押圧部15側へ押し込むようにする。これにより、係合片26bは、
図8(c)に示されているように筒状ホルダー21の縦長溝21dに合致し、圧縮ばね22の付勢力によって下方へと押下げられ、同時に軸ピン25の先端部が軸受板28の貫通孔を経て筐体用取着プレート7の軸受部16に嵌ることになる。この結果、フロント扉2は、筐体1に対して開閉可能に枢着されることになる。
【0020】
一方、フロント扉2を筺体1から離脱させる場合、まず、フロント扉2を開放した状態にする。そして、棒状支軸20の指掛部26cに指を掛けて係合片26bを上方へ押し上げると共に、押し上げた係合片26bを回動させて筒状ホルダー21の係合部21eに係合させる。これにより、軸ピン25が筐体用取着プレート7の軸受部16から退出するため、フロント扉2と筐体1との枢着状態も解除され、フロント扉2は筐体1から簡単に離脱することになる。
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、筐体側に設けられた押圧部にフロント扉側に設けられた係合片を押し当てるのみでワンタッチ的にフロント扉を筐体に組み付けることができ、ひいては組み付け作業の簡易化、効率化を図ることができる。
【0022】
ちなみに、前記実施形態では、フロント扉側に棒状支軸、筒状ホルダー等を設け、筐体側に軸受部、押圧部を設けた例を示したがこれを逆にすることも可能である。すなわち、筐体側に棒状支軸、筒状ホルダー等を設け、フロント扉側に軸受部、押圧部を設けても本発明の目的を達成することができる。この場合、フロント扉の押圧部を筐体の係合片に当接させて押圧することで、フロント扉を筐体に組み付けることになる。
【0023】
また、前記実施形態では、棒状支軸の下方に軸受部が位置し、棒状支軸の軸ピンが下向きに移動して軸受部に嵌まる例を示したが、これを逆にすることも可能である。すなわち、棒状支軸の上方に軸受部を位置させ、棒状支軸の軸ピンが上向きに移動して軸受部に嵌まるようにしてもよい。
【0024】
さらに、前記実施形態では、ヒンジ機構を上下の2箇所に設けた例を示したが、2箇所以上設けても本発明の目的を達成することはできる。また、1箇所のみに設けてもよい。例えば、下側のヒンジは、従来から使用されているもの、具体的には、フロント扉又は筐体の一方に上向きに突出する支軸を設けると共に、他方に軸受を設け、フロント扉を筐体に組み付けるにあたり、下側のヒンジを枢着させた後、上方に設けられた本発明に係るヒンジ機構で枢着させるようにしてもよい。この場合、少なくともフロント扉又は筐体のいずれか一方に設けられた下部支軸と上部支軸とを、他方に設けられた下側の軸受孔と上側の軸受孔とに同時に差し込む必要がなくなり、作業者が重いフロント扉を両手で支えながら互いの支軸と軸受孔とを合致させる必要がなくなるという利点がある。