特許第6511290号(P6511290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511290
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】回転霧化型静電塗装機及びベルカップ
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/04 20060101AFI20190425BHJP
   B05B 3/10 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B05B5/04 A
   B05B3/10 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-35164(P2015-35164)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-155089(P2016-155089A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591274059
【氏名又は名称】ランズバーグ・インダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100085707
【弁理士】
【氏名又は名称】神津 堯子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勇
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
(72)【発明者】
【氏名】中石 達也
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−294647(JP,A)
【文献】 特開2006−181556(JP,A)
【文献】 特開2009−45518(JP,A)
【文献】 特開平8−99053(JP,A)
【文献】 特開2008−136965(JP,A)
【文献】 特開昭54−72245(JP,A)
【文献】 特開2014−205093(JP,A)
【文献】 特開平3−80957(JP,A)
【文献】 実開昭60−179353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転霧化頭を備えた回転霧化型静電塗装機であって、
前記回転霧化頭が、
該回転霧化頭が回転することにより塗料が広がる内面と、
外周面と、
該外周面と前記内面とが合流する外周縁とを有し、
前記内面と前記外周面との少なくとも一方の面に、前記回転霧化頭が回転することにより発生する気流を増速する複数のディンプルを更に有することを特徴とする回転霧化型静電塗装機。
【請求項2】
回転霧化型静電塗装機に適用される回転霧化頭が、
該回転霧化頭が回転することにより塗料が広がる内面と、
外周面と、
該外周面と前記内面とが合流する外周縁とを有し、
前記内面と前記外周面との少なくとも一方の面に、前記回転霧化頭が回転することにより発生する気流を増速する複数のディンプルを更に有することを特徴とする回転霧化頭。
【請求項3】
前記複数のディンプルが前記内面に形成されている、請求項2に記載の回転霧化頭。
【請求項4】
前記複数のディンプルが前記外周面に形成されている、請求項2に記載の回転霧化頭。
【請求項5】
前記複数のディンプルが前記内面及び前記外周面に形成されている、請求項2に記載の回転霧化頭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転霧化型静電塗装機及びそのベルカップに関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装機は、一般塗装に加えて自動車ボディの塗装にも適用されている。自動車ボディの塗装は、自動車の意匠性及び商品性に直結するため高い品質が求められる。この要請に応じるために塗料粒子の直径を小さくする努力つまり塗料粒子を微粒化する努力が日々行われている。
【0003】
自動車業界で最も多く採用されているのが、「ベルカップ」と呼ばれるカップ状の回転霧化頭を備えた回転霧化型静電塗装機である(例えば特許文献1)。以下、回転霧化頭を「ベルカップ」と呼ぶ。回転霧化型静電塗装機において微粒化に関する基本的な考え方が既に確立している。その考え方は次の式1に基づいている。
【式1】
【0004】
3=A×(Qμ/ρN22)
【0005】
ここに、
P:塗料粒子の直径(mm)
A:係数
Q:塗料の供給量つまりベルカップに供給する塗料の量(cc/min)
μ:塗料の粘度(Cp)
ρ:塗料の比重
N:ベルカップの回転数(rpm)
r:ベルカップの半径
【0006】
次に、塗料粒子の体積Vは次の式2によって表すことができる。
【式2】
【0007】
V=(4/3)×π×(P/2)3=(1/6)πP3
【0008】
式2に式1を代入すると次の式3になる。
【式3】
【0009】
V=(π/6)×A×Q×μ×(1/ρN22)
【0010】
式3において、{(π/6)×A}は常数である。{(π/6)×A}を「B」に置換すると、式3は次の式4で表すことができる。
【式4】
【0011】
V=(B×Q×μ)/(ρN22)
【0012】
式4によれば次のことが分かる。すなわち、塗料粒子の体積Vはベルカップの回転数Nの二乗に反比例する。塗料粒子の体積Vは、また、ベルカップの半径rの二乗に反比例する。換言すれば、式4は、塗料粒子の体積Vを小さくすることに関して、ベルカップの回転数Nを高くするのが有効であることを教えている。また、式4は、塗料粒子の体積Vを小さくすることに関して、ベルカップの半径rを大きくするのが有効であることを教えている。
【0013】
式1及び式4の教示に従って、従来から、微粒化度を高めるための手法つまり塗料粒子を小さくする手法として、ベルカップの回転数を高くする及び/又はベルカップの半径を大きくする手法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012−115736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
回転するベルカップから飛び出す塗料粒子には遠心力が作用する。ベルカップの回転数が高くなると、塗料粒子に作用する遠心力が大きくなる。また、相対的に小さな半径のベルカップとの対比で、同じ回転数の場合において、半径の大きいベルカップの方がその周速度が大きい。したがって大きなベルカップを採用すると、ベルカップから飛び出す塗料粒子に大きな遠心力が作用する。
【0016】
上述したように、塗料粒子を小さくするには、ベルカップの回転数を高く設定するのが効果的である。また、塗料粒子を小さくするには、大きなベルカップを採用するのが効果的である。しかし、このことに伴って塗料粒子に作用する遠心力が大きくなるのは上述した通りである。
【0017】
特許文献1はシェーピングエアを開示している。このシェーピングエアは2つの機能を有している。一つは、ベルカップから外方に飛び出す塗料粒子をワークの方向に差し向ける「偏向機能」である。他の一つは、塗料粒子がワークの方向に向けて飛行するのをアシストする「飛行アシスト機能」である。
【0018】
自動車ボディの塗装に適用される回転霧化型静電塗装機はシェーピングエアを採用している。そして、塗装品質の要求が高度化するほど、つまり塗料粒子の微粒化を追求するほど、塗料粒子に作用する遠心力が大きくなる。これに対応し且つ所望の塗装パターンを形成するために、強いシェーピングエアが必要となる。このことは、シェーピングエアの使用量が増大することを意味している。
【0019】
本発明の目的は、シェーピングエアの使用量を低減することのできる回転霧化型静電塗装機及びベルカップを提供することにある。
【0020】
本発明の更なる目的は、シェーピングエアの上記飛行アシスト機能に対する依存を低減できる回転霧化型静電塗装機及びベルカップを提供することにある。
【0021】
本発明の更なる目的は、シェーピングエアの上記偏向機能に対する依存を低減できる回転霧化型静電塗装機及びベルカップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本件発明者らは、ベルカップが回転することに伴って発生する気流に着目し、この気流を分析することで本発明を案出するに至ったものである。図1は従来のベルカップの部分断面図である。図1の参照符号1はベルカップである。ベルカップ1は軸線Axを中心にして一方向に回転する。ベルカップ1は内面2と外周面4とを備えている。
【0023】
ベルカップ1に供給された塗料は内面2に沿って広がる。そして、塗料は、内面2と外周面4とが合流する外周縁6から径方向外方に飛散する。図1の参照符号10で示す矢印は、ベルカップ1の回転に伴って発生する気流を示す。また、参照符号θは、気流10の方向を表す角度を示す。この角度θは、ベルカップ1の外周縁6が作る平面12に対する気流10の角度を意味する。
【0024】
ベルカップ1が回転することにより塗料粒子には遠心力が作用する。この遠心力によって、塗料粒子はベルカップ外周縁6から径方向外方に飛散する。そして、塗料粒子は気流10に乗って径方向外方に飛行する。本件発明者らはベルカップ1が生成する気流10の方向つまり角度θに着目した。この角度θが大きいと、角度θが小さいときに比べて、気流10は被塗物(以下、「ワーク」という。)にアクセスする方向の流れであると言うことができる。
【0025】
次に、本件発明者らは、ベルカップ内面2が生成する第1の気流20及びベルカップ外周面4が生成する第2の気流30に着目した。ベルカップ1の回転に伴って内面2には、図2に示す第1の気流20が生成される。
【0026】
第1の気流20は、ベルカップ外周縁6から径方向外方且つワーク側に向かい、そして、ベルカップ回転軸線Axに接近する方向に向かい、そして、ベルカップ内面2を臨む第1空間22を通ってベルカップ内面2に戻る。
【0027】
第2の気流30は、ベルカップ外周縁6から径方向外方に向かい、そして、ワークから遠ざかる方向に向かい、そして、ベルカップ外周面4を臨む第2空間32を通ってベルカップ外周面4に戻る。
【0028】
図1に矢印で示す気流10は、上述した第1の気流20と第2の気流30とが合流した気流であるということができる。以下、図1に示す気流10を「合成気流」と呼ぶ。本件発明者らは、ベルカップ内面2と外周面4が生成する第1、第2の気流20、30に着目した。合成気流10(図1)が第1、第2の気流20、30によって生成されるのは上述した通りである。そして、合成気流10の方向も第1、第2の気流20、30によって規定される。
【0029】
一つの例として、ベルカップ内面2が生成する第1の気流20の流速を高めれば、合成気流10の流速を高めることができる。したがって、増速した合成気流10によって、塗料粒子の飛行速度を高めることができる。
【0030】
同じことが第2の気流30についても言える。ベルカップ外周面4が生成する第2の気流30の流速を高めれば、合成気流10の流速を高めることができる。したがって、増速した合成気流10によって、塗料粒子の飛行速度を高めることができる。
【0031】
勿論、第1、第2の気流20、30の流速を共に高めれば、合成気流10の流速を一層高めることができる。したがって、増速した合成気流10によって、塗料粒子の飛行速度を高めることができる。
【0032】
また、増速した第1の気流20によって、ベルカップ内面2を臨む第1空間22の空気を第1の気流20が巻き込む量が増大する。この現象は、合成気流10の方向をワーク側に接近させることを意味する。図1を参照して換言すれば、合成気流10の方向を規定する角度θを大きくするのに、第1の気流20の流速を高めるのが効果的である。
【0033】
前記技術的課題は、本発明の一つの観点によれば、
回転霧化頭を備えた回転霧化型静電塗装機であって、
前記回転霧化頭が、
該回転霧化頭が回転することにより塗料が広がる内面と、
外周面と、
該外周面と前記内面とが合流する外周縁とを有し、
前記内面と前記外周面との少なくとも一方の面に、前記回転霧化頭が回転することにより発生する気流を増速する複数のディンプルを更に有することを特徴とする回転霧化型静電塗装機を提供することにより達成される。
【0034】
前記技術的課題は、本発明の他の観点によれば、
回転霧化型静電塗装機に適用される回転霧化頭が、
該回転霧化頭が回転することにより塗料が広がる内面と、
外周面と、
該外周面と前記内面とが合流する外周縁とを有し、
前記内面と前記外周面との少なくとも一方の面に、前記回転霧化頭が回転することにより発生する気流を増速する複数のディンプルを更に有することを特徴とする回転霧化頭を提供することにより達成される。
【0035】
図3は本発明に従う回転霧化頭つまりベルカップ100の典型例の作用説明図である。図3は、本発明に従う回転霧化頭の一例としてのベルカップ100を示す。図3に示すベルカップ100は、その内面102にディンプル(後に、参照符号150を付して説明する)が形成されている。ベルカップ内面102がディンプルを備えることで第1の気流20の速度を高めることができる。図3において、ディンプルを備えたベルカップ内面102が生成する第1の気流20の速度が、ディンプル無しの従来のベルカップ1(図1図2)に比べて速くなる状態を太い実線で図示してある。
【0036】
図3に図示の参照符号104はベルカップ100の外周面を示し、106はベルカップ外周縁を示す。なお、図3に図示のベルカップ100の外周面104にはディンプルが形成されていない。勿論、ベルカップ外周面104にディンプルを形成してもよい。
【0037】
第1の気流20と第2の気流30によって、従来と同様に、合成気流110が生成される。第1の気流20がディンプルによって増速される。増速した第1の気流20によって合成気流110の速度も高められる。したがって、この合成気流110に乗って飛行する塗料粒子の速度を高めることができる。このことは、前述したシェーピングエアの「飛行アシスト機能」に対する依存度合いを低減できることを意味する。つまりシェーピングエアの使用量を低減できることを意味する。
【0038】
図3において、合成気流110の方向を角度θで示す。この角度θは、ディンプル無しの従来のベルカップ1の合成気流10(図1)の角度θに比べて大きい。すなわち、ディンプルによって増速された第1の気流20によって合成気流110の方向をワーク側に引き寄せることができる。
【0039】
前述したように、シェーピングエアは、ベルカップから外方に飛び出す塗料粒子をワークの方向に差し向ける「偏向機能」を有する。この偏向機能によって塗装パターンの大きさが規定される。図3の例によれば、ディンプルによる第1の気流20の増速効果によって、上述したように、合成気流110の方向をワーク側に引き寄せることができる。この引き寄せ効果によって、シェーピングエアによる偏向機能に対する依存を低減することができる。換言すれば、径方向外方に飛行する塗料粒子の方向をワークに向けて偏向するのに必要とされるシェーピングエアの依存度合いを低減することができる。このことは、シェーピングエアの使用量を低減できることを意味する。
【0040】
上記の説明から理解できるように、本発明は、シェーピングエアへの依存度を低減する一つの手法を提案するものである。最も典型的な例で説明すれば、シェーピングエアで所望の塗装パターンを形成するというのが従来の基本的な考え方であった。本発明は、所望の塗装パターンを形成する手法はシェーピングエアに限られないことを提案している。すなわち、所望の塗装パターンを形成するのに、シェーピングエアに加えて、回転するベルカップが生成する気流の速度を高める手法が存在することを本発明は提案するものである。
【0041】
ベルカップが生成する気流の速度を高める具体的な手法として、本発明は3つの手法を提案する。第1の手法が、ベルカップの内面に複数のディンプルを配置することである。第2の手法が、ベルカップの外周面に複数のディンプルを配置することである。第3の手法が、ベルカップの内面及び外周面に複数のディンプルを配置することである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】従来のベルカップの部分断面図であり、回転するベルカップが生成する気流を説明するための図である。
図2】ベルカップ内面が生成する第1の気流及びベルカップ外周面が生成する第2の気流を説明するための図である。
図3】一例としてベルカップ内面にディンプルを備えた本発明に従うベルカップの作用説明図である。
図4】第1実施例のベルカップの概略側面図である。
図5】第1実施例のベルカップの正面図であり、ベルカップ内面を示す。
図6】第1実施例のベルカップの内面に配置したディンプルを説明するための断面図である。
図7】第2実施例のベルカップの概略側面図である。
図8】第2実施例のベルカップの側面図である。
図9】第2実施例のベルカップが生成する気流の速度が増速していることを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0043】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0044】
第1実施例(図4図6
図4は、自動車ボディの塗装に適用可能な回転霧化型静電塗装機に組み付けられる第1実施例のベルカップ200を示す。図4に図示の第1実施例のベルカップ200に含まれる要素において、図3を参照して説明した本発明に従うベルカップ100に含まれる要素と同じ要素には同じ参照符号を付すことにより、その詳しい説明を省略する。
【0045】
ベルカップ200の内面102つまり図4に参照符号Ar(in)で指し示す領域に、図5に図示のように、複数の第1ディンプル150が形成されている。なお、第1実施例のベルカップ200の外周面104はディンプル無しである。図4から最もよく分かるように、ベルカップ内面102には、その中心部分に液体塗料が供給される。ベルカップ内面102において、塗料が遠心力によって広がる領域が内周部分102aと外周部分102bの2つの面で構成されている。内周部分102aは、外周部分102bに比べて傾斜角度が小さい。
【0046】
図示のベルカップ200の直径は77mmである。ベルカップ内面102の内周部分102a、外周部分102bは、相対的に傾斜角度が異なる面で構成され、外周部分102bの傾斜角度が内周部分102aに比べて大きい。
【0047】
第1ディンプル150は内周部分102a及び外周部分102bに配置されている。これら内周部分102a及び外周部分102bに配置された第1ディンプル150は共通であるが、内周部分102aと外周部分102bとで異なる大きさの第1ディンプル150を配置してもよい。また、内周部分102a及び/又は外周部分102bにおいて、部分的に異なる大きさの第1ディンプル150を配置してもよい。
【0048】
内周部分102aには120個の第1ディンプル150が配置されている。外周部分102bには90個の第1ディンプル150が配置されている。内周部分102a及び外周部分102bにおける第1ディンプル150の配置について説明すると、ベルカップ200と同軸の直径の異なる複数の円周上に第1ディンプル150が等間隔に配置されている。また、隣接する円周上に配置された第1ディンプル150は千鳥状に配置されている。
【0049】
内周部分102a及び外周部分102bにおいて、最内周に位置する第1円周上に配置された複数の第1ディンプル150に対して、次の第2円周上の第1ディンプル150は互い違いに配置されている。換言すれば、最内周の第1円周上の複数の第1ディンプル150のうち互いに隣接する2つの第1ディンプル150、150の中間に、次の第2円周上の第1ディンプル150が配置されている。この関係は、次の第3以降の円周上の第1ディンプル150も同じである。
【0050】
図6を参照して、各第1ディンプル150は、ゴルフボールと同様に球面状の凹所150aで構成されている。実施例で採用した第1ディンプル150は、その円形の開口150bの直径Diaは3.53mmであり、凹所150aの最深部の深さDepは0.34mmである。
【0051】
第1実施例のベルカップ200の変形例として、ベルカップ外周面104に上記第1ディンプル150と同様のディンプルを配置し、上記内面102の第1ディンプル150を省いてもよい。
【0052】
第2実施例(図7図8
図7は第2実施例のベルカップ300を示す。なお、第2実施例のベルカップ300は、上記第1実施例のベルカップ200の変形例でもある。すなわち、第2実施例のベルカップ300は、その内面102に図5に図示の第1ディンプル150を有する。
【0053】
ベルカップ300は、切頭円錐状の傾斜面で構成された外周面104の全域に配置されたディンプル160を有する。外周面104に配置されたディンプル160を「第2ディンプル」と呼ぶと、第2ディンプル160は、上述した第1ディンプル150と同じである。
【0054】
第2ディンプル160は、図7に参照符号Ar(out)で示すように、切頭円錐状の傾斜面で構成された外周面104の全域に配置されているが、外周面104を、その小径側と、大径側つまり外周縁106側との2つの領域に区画し、そのいずれか一方の区画に第2ディンプル160を配置するようにしてもよい。
【0055】
第2ディンプル160は、図8から分かるように、円周方向に横一列に等間隔に配置されている。そして、この列が小径側端と大径側端つまり外周縁106との間に複数配置されている。第2ディンプル160は、第1ディンプル150(図5)と同様に、千鳥状に配置されている。
【0056】
ベルカップ外周面104に第2ディンプル160を配置することにより第2の気流30(図3)を増速することができる。この第2の気流30の速度が高くなることで、合成気流110の速度が高くなる。また、第2実施例のベルカップ300は、その内面102にも第1ディンプル150が形成されている。ベルカップ内面102が生成する第1の気流20の速度が高くなることで、合成気流110の速度が高くなる。
【0057】
したがって、合成気流110の速度は、増速した第1の気流20及び増速した第2の気流30によって一層増速される。これによりシェーピングエアの前述した「飛行アシスト機能」に対する依存度合いを一層低減することができる。これによりシェーピングエアの使用量を一層低減することができる。
【0058】
合成気流110の方向は、第1の気流20と第2の気流30とによって規定される。合成気流110の方向をワーク側に引き寄せるのであれば、第1の気流20の増速効果を第2の気流30の増速効果よりも大きくなるように第1、第2ディンプル150、160の数や配置を設定すればよい。
【0059】
図9は、第1、第2のディンプル150、160を備えた第2実施例のベルカップ300を装着した静電塗装機の作用効果を説明するための図である。比較例として、ディンプル無しのベルカップを装着した静電塗装機を用意した。ディンプル無しのベルカップの外形輪郭は、第2実施例のベルカップ300の外形輪郭と同じである。
【0060】
図9の実線は、第2実施例のベルカップ300を装着した静電塗装機に関するものである。図9の破線は、ディンプル無しのベルカップを装着した比較例の静電塗装機に関するものである。
【0061】
回転霧化型静電塗装機のベルカップによって生成される塗料粒子は、回転するベルカップが生成する気流に乗って飛行する。ベルカップから離れた塗料粒子は、ベルカップの径方向外方に進んだ後、放物線を描いてワークに接近する方向に向かう。塗料粒子の移動軌跡をベルカップの回転軸線Axからの距離に置き換えて、塗料粒子の速度変化を示したのが図9である。換言すれば、図9は、ベルカップが生成する気流の速度変化を示す。図9の横軸は、ベルカップの回転軸線Axからの距離を示し、縦軸は気流の速度を示す。
【0062】
例えば、ベルカップの回転軸線Axから42mm離れた地点では、実施例では約21m/secであるのに対して比較例では11m/secである。つまり、実施例は比較例に対して約1.9倍の速度を実現していることが分かる。第1、第2のディンプル150、160による増速効果は、ベルカップの回転軸線Axから可成り離れた60mmの地点でも維持されている。
【符号の説明】
【0063】
102 ベルカップの内面
104 ベルカップの外周面
106 外周縁
150 第1ディンプル
160 第2ディンプル
200 第1実施例のベルカップ
300 第2実施例のベルカップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9