(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511346
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ハロゲン化環式化合物の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/06 20060101AFI20190425BHJP
C07C 49/175 20060101ALI20190425BHJP
C07D 231/12 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
C07D239/06
C07C49/175 Z
C07D231/12
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-125708(P2015-125708)
(22)【出願日】2015年6月23日
(62)【分割の表示】特願2011-529509(P2011-529509)の分割
【原出願日】2009年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-227339(P2015-227339A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2015年6月29日
【審判番号】不服2017-17394(P2017-17394/J1)
【審判請求日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】08165547.4
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ブラウン
【合議体】
【審判長】
佐々木 秀次
【審判官】
齊藤 真由美
【審判官】
冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第0163280(EP,A1)
【文献】
特開平9−132554(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/058201(WO,A2)
【文献】
英国特許出願公開第2305174(GB,A)
【文献】
国際公開第2008/098239(WO,A2)
【文献】
国際公開第2007/088876(WO,A1)
【文献】
特表平6−505489(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0522392(EP,A1)
【文献】
特表2002−501516(JP,A)
【文献】
特表2011−526899(JP,A)
【文献】
Synthesis,2000年,No.5,p.738−742
【文献】
SYNTHESIS,1991年,No.6,p.483−486
【文献】
Chemische Berichte,1982年,Vol.115,p.2766−2782
【文献】
European Journal of Organic Chemistry,2002年,p.2913−2920
【文献】
Tetrahedron Letters,1998年,Vol.39,p.7965−7966
【文献】
European Journal of Organic Chemistry,2004年,p.3714−3718
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/00, 239/00, 231/00
REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R
1は、ハロゲン化C1〜C3アルキル基であり、かつ、少なくとも1個のフッ素原子を含有する)
の環式化合物を製造する方法であって、
(a)式R
1−C(O)−X(X=フッ素、塩素または臭素であり、R
1は上記で示される意味を有する)の酸ハロゲン化物を式(II)CH
2=CH−OR
2(II)(R
2はC1〜C4アルキル基である)のビニルエーテルに付加して、
塩基の非存在下で付加生成物を生成する工程と、
(b)前記付加生成物を式(III)Y−A−Z(III)(式中、ZおよびYは、−
NH2であり、Aは、−C(=O)
−または−C(=S)
−である)の化合物と反応させる工程であって、工程(b)に供給される前記付加生成物が、工程(a)からの粗生成物である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
R1が、CF3、CF2HおよびCF2Clから選択されるハロゲン化C1〜C3アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加生成物が、式(IV):
【化2】
(式中、R
1は、CF
3、CF
2HおよびCF
2Clから選択されるハロゲン化C1〜C3アルキル基であり、
Xは、ClまたはBrであり、
R
2は、C1〜C4アルキル基である)
の化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記付加生成物が、式(V):
【化3】
(式中、R
2は、C1〜C4アルキル基である)
の化合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記付加生成物が、式(VI):
【化4】
(式中、R
1は、CF
3、CF
2HおよびCF
2Clから選択されるハロゲン化C1〜C3アルキル基であり、
R
2は、C1〜C4アルキル基である)
の化合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加生成物が、式(VII):
【化5】
(式中、R
2は、C1〜C4アルキル基である)
の化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で生成されたHXが、工程(b)に供給される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Aが、−C(=O)−である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の前記反応が、範囲−15℃〜+80℃の温度で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固液分離または蒸留によって、工程(b)の反応媒体から式(I)の前記化合物を単離することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化環式化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化環式化合物は、例えば種々の除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、農薬等を製造するための中間体として有用である。(特許文献1)には、4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オンをヒドラジンジヒドロクロリドと反応させることによる3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール(TFPZO)の合成が記載されている。(非特許文献1)には、2,2,2−トリフルオロジアゾエタンからの3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾールの合成が記載されている。TFPZO化合物は、化学合成において中間体として使用される。(特許文献2)には、TFAHとEVEとの反応生成物からの2−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルピリミジン(TFPMO)の製造が開示されている。TFPMO化合物は、農薬としてピリミジニルホスフェートを製造するために、化学合成において中間体として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0128702A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A−163280号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Atherton and Fields,J.Chem.Soc.(C),1968,p.1507−1513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハロゲン化環式化合物、特にハロゲン化窒素含有複素環を製造する効率的な方法であって、高い収率および生成物純度を可能にし、容易に入手可能な出発原料から開始される方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、式(I):
【化1】
(式中、R
1は、ハロゲン化アルキル基であり、
ZおよびYは独立して、炭素またはヘテロ原子を表し、
Aは、環において0、1、2または3個の原子を含む、ZとYの間の結合基である)
の環式化合物を製造する方法であって、
(a)式R
1−C(O)−X(X=フッ素、塩素または臭素であり、R
1は上記で示される意味を有する)の酸ハロゲン化物を式(II)CH
2=CH−OR
2(II)(R
2はアルキル基、アラルキル基またはアリール基である)のビニルエーテルに付加して、付加生成物を生成する工程と、(b)前記付加生成物を式(III)Y−A−Z(III)(Z、YおよびAは上記で定義されるとおりである)の化合物と反応させる工程と、を含む方法に関する。
【0007】
驚くべきことに、上記で指定されるビニルエーテルと酸ハロゲン化物、特に酸塩化物との付加生成物は、上記で詳述される環式化合物を製造するための出発原料として特に適していることが分かった。酸ハロゲン化物とビニルエーテルから出発する全収率は高い。更なる反応の前に、付加生成物の精製は不必要である。特にハロゲン化水素が存在する場合に、付加生成物は、式(III)の化合物との反応において反応速度を増加し、特に窒素含有複素環が生成される場合、生成された環式化合物を反応混合物から容易に分離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の方法において、R1は、好ましくは少なくとも1個、さらに好ましくは2個のフッ素原子を含有する。好ましい一態様において、R1はパーフルオロアルキル基である。R1はしばしば、C1〜C3ハロゲン化アルキル基、好ましくは特に今まで上述されるC1〜C3フッ化アルキル基である。R1はさらに好ましくは、特にCF
3、CF
2HおよびCF
2Clから選択されるC1フッ化アルキル基である。CF
3基が、さらに特に好ましい。
【0009】
他の態様において、R1は、好ましくは少なくとも1個、さらに好ましくは2個のフッ素原子および少なくとも1個の他のハロゲン原子を含有する。R1はさらに好ましくは、特にCF
2BrおよびCF
2Clから選択されるフッ化C1アルキル基である。
【0010】
本発明による方法において、Xはしばしば、ClおよびBrから選択され、さらに好ましくはClである。
【0011】
特に、その内容が本出願に参照により組み込まれる米国特許第5,569,782号明細書に記載のように、本発明で使用される酸ハロゲン化物は、例えば、ハロゲン化前駆物質アルカンの光酸化によって得られる。特に、本発明において特に好ましい出発原料であるトリフルオロアセチルクロリドは、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン(HCFC−123)の光酸化によって得られる。
【0012】
本発明による方法において、R
2はしばしば、C1〜C4アルキル基、好ましくはメチル、エチル、イソプロピルまたはn−ブチル基から選択され、さらに好ましくはエチル基である。
【0013】
したがって、最も好ましい態様において、酸ハロゲン化物はトリフルオロアセチルクロリドであり、ビニルエーテルはエチルビニルエーテルまたはメチルビニルエーテル、さらに好ましくはエチルビニルエーテルである。
【0014】
本発明による方法において、ZおよびYは独立して、酸素、硫黄、窒素および炭素から選択される。本発明による方法は、ZとYのうちの少なくとも1つが窒素である場合に特に有利な手法と言える。
【0015】
化合物Z−A−Yにおいて、ZおよびYが工程(b)の反応においてそれらが反応することが可能となる形態となることが適切であることを理解されたい。例えば、適切には、Zおよび/またはYは、−NH2、−NHR3(式中、R3は、アルキルアリールまたはアラルキル残基、好ましくはC1〜C6アルキル、またはそのハロゲン化水素塩である)、−OH、−SHおよび供与体炭素原子、例えばケトもしくはエステル基などのカルボニル官能基に対してα位のCH2基から選択される。
【0016】
本発明による方法において、Aは、ZとYの間の結合基である。かかる結合基は単に共有結合であることができ、その場合にはAが0個の原子を含有する。結合基Aは、1、2または3個の原子も含有し、この1、2または3個の原子は、Aが化合物(I)の構造の一部を形成する場合には、環の一部を形成し(環状原子)、Aが化合物(III)の構造の一部を形成する場合には、カテナリー(catenary)である(すなわち、ZとYを連結する鎖中に存在する)。好ましくは、Aは、1または2個のカテナリー/環状原子、特に任意に置換されている炭素原子を含む。後者の場合には、Aは適切には、−CH2−、−C(=O)−、−CH2−CH2およびCH2−C(=O)−および−C(=S)−から選択される。
【0017】
式(III)の化合物の特定の実施例は、ヒドラジンまたはその含水化合物または塩酸塩、尿素、チオ尿素、マロン酸モノアミド(例えば、マロン酸モノアミドのメチルまたはエチルエステル)、およびマロモノニトリル(2−シアノ−酢酸アルキルエステル、例えばメチルまたはエチルエステル)から選択される。
【0018】
本発明の教示から、当業者が、目的の環式化合物およびそれぞれの基の既知の反応性および原子価を考慮して、式(I)および(III)の様々な基R1、Z、YおよびAの適切な組み合わせを選択することが可能であることは理解されよう。
【0019】
本発明の方法は、さらに具体的に式
【化2】
(式中、Aは、1個のカテナリー/環状原子、特に任意に置換されている炭素原子を含む)
のうちの1つに相当する、本発明の式(I)の化合物の製造に適切に用いられる。後者の場合、Aは適切には、−CH2−、−C(=O)−、−CH2−CH2およびCH2−C(=O)−および−C(=S)−から選択され、R3はHまたはC1〜C6アルキルである。
【0020】
本発明の方法において、工程(b)の反応は一般に、範囲−15℃〜+80℃、好ましくは範囲0℃〜+20℃の温度で行われる。
【0021】
本発明の方法において、工程(b)の反応は、非ヒンダードアミンの存在下で行うことができる。非ヒンダードアミンとは、非立体障害性(non−sterically hindering)基に結合したアミン官能基を含有する化学化合物を意味する。非立体障害性(non−sterically hindering)基の一般的な例は、メチル、エチル、プロピルおよびn−ブチルなどの短鎖直鎖状脂肪族基である。非ヒンダードアミンの一般的な例は、例えばメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンおよびトリ−n−ブチルアミンである。
【0022】
トリエチルアミンが最も好ましい非ヒンダードアミンである。
【0023】
本発明の方法において、非ヒンダードアミンと式(III)の化合物のモル比は、有利には0.5:1〜1.7:1、好ましくは0.6:1〜1.5:1、さらに好ましくは0.8:1〜1.2:1である。最も好ましくは、モル比は約1である。
【0024】
本発明の方法において、工程(b)の反応は任意に、添加剤の存在下で行われる。かかる添加剤は一般に、反応媒体の極性を高める。適切には、イオン性液体が添加剤として使用される。添加剤の一般的な例は、例えば1,3−ジアルキルイミダゾリウムまたは1,3−ジアルキルピリジニウム塩、特に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(EMIMOtf)である。例えば4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)およびジアザビシクロノナン(DBN)自体またはその塩の形態、例えばトリフルオロ酢酸塩などのアミンも、添加剤として適切に使用することができる。
【0025】
本発明の目的で、「イオン性液体」という用語は、ただ1種類の塩(1つのカチオン種および1つのアニオン種)からなる均一組成物を意味するか、またはカチオンの2つ以上の種および/またはアニオンの2つ以上の種を含有する不均一組成物を意味する。
【0026】
本発明の方法において、工程(b)の反応は、有機溶媒、特に極性有機溶媒中で行われる。メタノールまたはエタノールなどのアルコールが、工程(b)の反応に良い結果をもたらす。
【0028】
本発明の方法は適切には、固液分離、例えば濾過によって、または蒸留によって、工程(b)の反応媒体から式(I)の化合物を単離する工程をさらに含む。
【0029】
本発明の方法の第1の実施形態において、その付加生成物は、式(IV):
【化3】
(式中、X、R
1およびR
2は上記で定義されるとおりである)
の化合物を含む。
【0030】
この第1の実施形態の好ましい態様において、付加生成物は、式(V):
【化4】
(式中、R
2は上記で定義されるとおりである)
の化合物を含む。
【0031】
式(IV)および(V)の化合物は、環式化合物を形成するために、特に本発明の方法に従って、出発原料として有利に使用することができる。その結果、本発明は、環式化合物を形成するための付加反応における試薬としての式(IV)または(V)の化合物の使用にも関する。
【0032】
付加生成物が式(IV)または(V)の化合物を含む場合、その含有率は一般に、付加生成物の全重量に対して少なくとも0.1重量%である。この含有率はしばしば、少なくとも0.5%である。一部の実施形態において、この含有率は10重量%を超えない。
【0033】
付加生成物はまた、式(IV)または(V)の化合物から必須になり得る。この場合、その含有率は一般に、付加生成物の全重量に対して90〜99.9重量%、しばしば95〜99.0重量%である。
【0034】
本発明の方法の第2の実施形態において、付加生成物は、式(VI):
【化5】
(式中、R
1およびR
2は上記で定義されるとおりである)
の化合物を含む。
【0035】
第2の実施形態の好ましい態様において、付加生成物は、式(VII):
【化6】
(式中、R
2は上記で定義されるとおりである)
の化合物を含む。
【0036】
式(VI)および(VII)の化合物は好ましくは、(a)上述のように酸ハロゲン化物をビニルエーテルに付加して、式(IV)または(V)の化合物を含む反応生成物を得る工程と、(b)ハロゲン化水素を除去して、式(VI)または(VII)の化合物をそれぞれ生成する工程と、を含む方法によって得られる。かかる反応は、米国特許第5,708,174号明細書に記載のような塩基の存在下にて、または好ましくは、米国特許第7,405,328号明細書に記載のような塩基の存在下にて行われ、前記の2つの米国特許の内容全体は、参照により本出願に組み込まれる。
【0037】
付加生成物が式(VI)または(VII)の化合物を含む場合、その含有率は一般に、付加生成物の全重量に対して少なくとも0.1重量%である。この含有率はしばしば、少なくとも0.5%である。一部の実施形態において、この含有率は10重量%を超えない。
【0038】
付加生成物はまた、式(VI)または(VII)の化合物から必須になり得る。この場合、その含有率は一般に、付加生成物の全重量に対して90〜99.9重量%、しばしば95〜99.0重量%である。
【0039】
本発明の方法において、付加生成物はそれぞれ、式(IV)と(VI)の化合物の混合物または式(V)と(VII)の化合物の混合物である。この場合には、一方の化合物(IV)および(V)と、もう一方の化合物(VI)および(VII)とのモル比は一般に、0.01〜100、好ましくは0.1〜10である。
【0040】
特に、本発明の方法における付加反応が塩基の非存在下で行われる場合、付加反応(a)からの粗生成物を反応(b)に提供することが可能である。上述の付加生成物に加えて、かかる粗生成物は注目すべきことには、ハロゲン化水素、特に塩化水素を含有し得る。
【0041】
本発明の方法の特定の一実施形態において、HX、特にHClが工程(b)に供給される。特に、工程(a)で生成されるかかるHX、特にHClが適切には、工程(b)に供給される。
【0042】
特にこの実施形態において、かつさらに詳しくは、さらにZまたはYのうちの少なくとも1つが窒素である場合、HX、特にHClを添加することによって、工程(b)の反応媒体から複素環を沈殿させ、かつ例えば濾過によってそれを単離することが可能であることが見出された。HXの付加は、例えば反応中またはワークアップ中に行うことができる。
【0043】
本発明は、式(I):
【化7】
(式中、R
1は、ハロゲン化アルキル基であり、
ZおよびYは独立して、炭素またはヘテロ原子を表し、
Aは、環において0、1、2または3個の原子を含む、ZとYの間の結合基である)の環式化合物を合成する方法であって、
式R
1−C(O)−X(X=フッ素、塩素または臭素であり、R
1は上記で示される意味を有する)の酸ハロゲン化物を式(II)CH
2=CH−OR
2(II)(R
2は、アルキル基、アラルキル基またはアリール基である)のビニルエーテルに付加することによって得られる付加生成物を、ハロゲン化水素、特に塩化水素の存在下にて、式(III)Y−A−Z(III)(Z、YおよびAは上記で定義されるとおりである)の化合物と反応させる、方法にも関する。
【0044】
本発明による製造方法の枠組みに上述される定義および選択は、合成方法に等しく当てはまる。
【0045】
以下の実施例は、その範囲を限定することなく、さらに詳細に本発明を説明することが意図される。
【実施例】
【0046】
実施例1
6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンの製造
トリフルオロアセチルクロリドをエチルビニルエーテルに付加することによって製造された、等モル量の4−エトキシ−1,1,1−トリフルオロ−3−ブテン−2−オン(ETFBO)を、機械攪拌機、還流冷却器および滴下漏斗を備えた三つ口フラスコにおけるメタノール2.2L中の尿素8.74モルの溶液に、N
2雰囲気下にて約3時間にわたって、一滴ずつ添加した。反応混合物の温度を15℃未満に維持した。15分後、濃HCl溶液(32%)1.35Lを得られた冷却懸濁液に添加し、透明な溶液が得られた。その溶液をゆっくりと60℃に加熱し、2時間攪拌した後、懸濁液が形成した。60℃で一晩攪拌し、続いて0〜5℃で1時間攪拌した後、沈殿物を濾過除去した。pHが中性になるまで、残留物を水で洗浄し、続いてヘキサン(約500ml)で洗浄した。減圧下にて2Lフラスコ中で回転蒸発器にて一晩乾燥させた後、6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンが無色の結晶として得られた。収量は1.2kgであった(理論収量85%)。
【0047】
実施例2
3−(トリフルオロメチル)1H−ピラゾールの製造
トリフルオロアセチルクロリドをエチルビニルエーテルに付加することによって製造された、等モル量のETFBOを、機械攪拌機、還流冷却器および滴下漏斗を備えた三つ口フラスコにおけるメタノール2.2L中のヒドラジン塩酸塩4.4モルの溶液に、N
2雰囲気下にて約4時間にわたって、一滴ずつ添加した。反応混合物の温度を15℃未満に維持した。12時間還流した後、反応バッチを2Lフラスコにおいて濾過し、真空下で濃縮した(同一バッチが同一条件下で製造され、どちらの粗生成物の収率も約95%であった)。続いて、27ミリバールでショートパス真空蒸留によって、合わせた粗生成物を精製した。収量は1105gであり、理論収量92%に相当する。
【0048】
実施例3
CETFBOからの6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンの製造
CETFBOの合成:約−30℃で約2時間冷却された三つ口フラスコ中で、トリフルオロアセチルクロリド4.0モルを濃縮した。−30℃で約2.5時間冷却された液体トリフルオロアセチルクロリドに、エチルビニルエーテル4.0モルを一滴ずつ添加した。HClを除去することなく、CETFBOが定量的に得られた。
【0049】
6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンの合成:三つ口フラスコにおけるメタノール25mL中の尿素0.1モルの攪拌溶液に、CETFBOの0.12モル冷却溶液を一滴ずつ添加し、その温度を5℃未満に維持した。溶液を室温で攪拌した。次いで、得られた茶色の溶液を70℃で4.5時間加熱した。氷浴で溶液を冷却すると、6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンが淡いベージュ色の結晶として得られ、それを濾過除去し、水で洗浄した。減圧下にて回転蒸発器で乾燥させた後、6−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2(1H)−オンが収率82%で得られた。
【0050】
実施例4
3−ピリジンカルボン酸,1,2−ジヒドロ−2−オキソ−6−(トリフルオロメチル)−メチルエステル(MTFPMOC)の製造
約20分間にわたって激しく攪拌しながら、メチルマロンアミド(MMA)420ミリモルを氷冷トリエチルアミン(420ミリモル)に添加した。次いで、エチルビニルエーテルにTFACを付加することによって製造されたETFBOを、氷冷下にて約30分間にわたって一滴ずつ添加し、反応混合物の温度を10℃未満に維持した。次いで、反応混合物をさらに室温で20時間攪拌した。pHが3になるまで、その溶液に濃HCl溶液(2N)を添加した。溶液を酢酸エチルで抽出した後、有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。回転蒸発器で揮発性化合物を除去した後、粗生成物が収率86%で得られた。メタノール/水から結晶化した後、MTFPMOCが純度>98%(GC)で得られた。
【0051】
実施例5
3−ピリジンカルボン酸,1,2−ジヒドロ−2−オキソ−6−(トリフルオロメチル)−エチルエステル(ETFPMOC)の製造
約20分間にわたって激しく攪拌しながら、エチルマロンアミド(EMA)420ミリモルを氷冷トリエチルアミン(420ミリモル)に添加した。次いで、エチルビニルエーテルにTFACを付加することによって製造されたETFBOを、氷冷下にて約30分間にわたって一滴ずつ添加し、反応混合物の温度を10℃未満に維持した。次いで、反応混合物をさらに室温で20時間攪拌した。pHが3になるまで、その溶液に濃HCl溶液(2N)を添加した。溶液を酢酸エチルで抽出した後、有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。回転蒸発器で揮発性化合物を除去した後、粗生成物が収率86%で得られた。メタノール/水から結晶化した後、ETFPMOCが純度>98%(GC)で得られた。