(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下枠と縦枠とを枠組みしてなる枠と、縦枠に沿って摺動する障子とを備え、縦枠は、金属製の外周側部材と、外周側部材の内周側に設けた樹脂製の内周側部材と、内周側部材の室内側に設けた樹脂製の室内側部材とからなり、内周側部材及び室内側部材は、上端部が直線的に切断してあり、室内側部材は、内周側部材の上端を越えて上枠まで延びており、内周側部材よりも上方の外周側部材の内周側にバランサーの収納スペースを形成してあることを特徴とする建具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜6は、本発明の建具の一実施形態を示している。この建具は、住宅の窓開口部に設置される上げ下げ窓であって、
図1〜4に示すように、躯体開口部に固定される枠1と、枠1内の室外側の上側に配置した外障子4と、枠1内の室内側の下側に配置した内障子2と、枠1に設置した左右のバランサー3,3とを備える。外障子4は、枠1に固定した固定障子となっている。内障子2は、縦枠5,5に沿って上下に摺動する可動障子となっている。内障子2は、
図4に示すように、バランサー3,3からのびるワイヤー6,6で吊られており、軽い力で上下摺動できると共に、任意の高さ位置で停止できるようになっている。また内障子2は、上部の左右両側に縦枠5,5と係合するラッチ7,7を有し、ラッチ7,7を解除することで、
図6に示すように室内側に倒すことができ、これにより内障子2の掃除が楽に行えるようになっている。内障子2の側部と縦枠5,5とはアーム8,8で連結してあり、アーム8,8により内障子2の倒れ角度を規制している。
【0014】
枠1は、上枠9と下枠10と左右の縦枠5,5を枠組みして構成される。上枠9は、
図1に示すように、外周側部材11と内周側部材12の2部材で構成してある。外周側部材11は、アルミニウム合金の押出形材で形成してある。内周側部材12は、合成樹脂の押出形材よりなり、外障子4の上框13の室内側に配置され、上枠9の室内側から見える部分を被っている。内周側部材12は、室外側と室内側の2箇所に係止部14a,14bを有し、その係止部14a,14bを外周側部材11に係止して取付けられている。内周側部材12は、室内側に額縁15にネジ止めされるアングル部16を有し、アングル部16の室外側に底壁17がアングル部16と面一に形成されおり、また底壁17は外周側部材11の室外側端部に形成された垂下片18の下端と略同じ高さ位置にある。底壁17の室外側端部には、柔軟なヒレ片19が室外側に突出して形成され、ヒレ片19の先端部が外障子4の上框13の室内側に当接している。内周側部材12は、内部が複数の中空部20a,20b,20c,20dに仕切られており、これにより断熱性を高めている。内周側部材12は、バランサー3,3を上枠9内にのみ込ませるため、
図9(a)に示すように、左右両端部にアングル部16を残すようにしてL字形に切り欠き21が設けてある。
【0015】
上枠9の内周側部材12は、
図22に示すように、アングル部16を別体で形成することもできる。この場合、内周側部材12の左右の側縁12aをまっすぐに切断するだけで、バランサー3の上部をのみ込ませるための孔を形成でき、
図9(a)に示すようなL字形の切り欠き21が不要となるので、加工コストを抑えられる。また、アングル部16を額縁15に取付けたまま内周側部材12を取外すことができるので、メンテナンス性が向上する。
【0016】
下枠10は、
図1に示すように、アルミ形材よりなる下枠本体94と、下枠本体94の室内側端部に取付けた樹脂製のアングル部95とで構成してある。内障子2よりも室外側の下枠上面10aは、フラットで室外側に向かうにつれて下向きに傾斜している。
【0017】
縦枠5は、
図2に示すように、外周側部材22と、外周側部材22の内周側に設けた内周側部材23と、内周側部材23の室内側に設けた室内側部材39とを有している。外周側部材22はアルミニウム合金の押出形材よりなり、内周側部材23と室内側部材39は合成樹脂の押出形材よりなる。
外周側部材22は、室外側に見付壁24を有し、見付壁24は縦枠5の中で最も内周側に張り出しており、外障子4は左右けんどんなしで室内側からまっすぐ縦枠5,5間に建て込み、外障子4の室外側面の外周部に設けたタイト材25を見付壁24先端部の室内側に当接している。このように、外障子4を左右けんどんなしで室内側からまっすぐ建て込めるようにしたことで、従来、外障子4を縦枠5,5間に左右けんどんで建て込む際に必要であった振込のスペースが不要になるため、縦枠5の見付寸法を小さくでき、その結果として採光面積・開口面積が左右方向に大きくなっている。見付壁24の室内側には、矩形の中空部26が設けてある。
【0018】
縦枠5の内周側部材23は、
図2に示すように、外周側部材22の中空部26の室内側に内周側から係合させて取付けてある。内周側部材23は、
図1,9に示すように、バランサー3より下方に設けてある。内周側部材23の上端部は、
図7,9に示すように、水平に直線的に切断してあり、内周側部材23の上端と上枠9の下面間にバランサー3の取付けスペース27を確保している。内周側部材23の下端部も、
図25に示すように、水平に直線的に切断してあり、切断した小口が下枠上面10aと隙間を空けて対向している。このように内周側部材23の上下端部を直線的に切断したことで、加工コストを抑えられると共に、後述するように、内周側部材23に複数の中空部32a,32b,32c,32dを見込み方向と内外周方向に積層して形成することが可能となり、断熱性能を向上させられる。
内周側部材23は、
図2に示すように、室内側に外周側に凹んだ凹部28が形成されている。凹部28の底部は、内障子2を吊るワイヤー6の挿通部29となっている。ワイヤー挿通部29の内周側の室外側と室内側の壁には、内向き突部30a,30bがそれぞれ設けてあり、
図3に示すように、内障子2の下部に外周側に突設したロッド棒31が内向き突部30a,30b間に案内されている。ロッド棒31には、ワイヤー6の下端部が係止している。凹部28の室外側は、複数の中空部32a,32b,32c,32dに仕切られている。
図2に示すように、室外側の内向き突部30aの内周側には鉤型の係止片33が形成してあり、係止片33のさらに内周側には室内側が開口した室外ガイド溝34aを有している。係止片33と室内側の内向き突部間30b間には、樹脂製の目板35が取付けてある。目板35は、
図6に示すように、バランサー3の下から内障子2の上框36と重合する高さ位置にわたって設けてあり、ワイヤー挿通部29は目板35に隠れて見えなくしてある。なお目板35は、
図18に示すように、室外側端部に形成した係止部37を縦枠5の係止片33に係止し、その係止部37を支点として外周側に回転させることで、室内側端部に形成した係止片38が縦枠5の内向き突部30bに弾発的に係止して取付けられる。目板35を取外す際は、
図6に示すように、内障子2を内倒しした状態で、目板35の下端に指を差し入れて内周側に引っ張ればよい。
【0019】
外障子4の下面と下枠上面10aとの間には、
図1,3に示すように、内周側部材23のさらに内周側に縦枠補助材96が取付けてあり、縦枠補助材96で外障子4を支えている。縦枠補助材96の下端部と下枠上面10a間の隙間には、
図3,24に示すように、樹脂製の端部キャップ97が取付けてあり、この端部キャップ97により縦枠補助材96及び内周側部材23の下端部と下枠上面10a間の隙間を隠している。
【0020】
図2,3に示すように、内周側部材23の室内側には、室内側部材39が取付けてある。室内側部材39は、外周側部材22と内周側部材23とに形成された係止溝40a,40bに内周側から係止片41a,41bをそれぞれ係止して取付けられる。室内側部材39は、合成樹脂の押出形材よりなり、額縁15にネジ止めされる見込部42と、内周側部材23の室内側壁に沿って内周側にのびる見付部43を一体に有している。見付部43は中空状に形成してある。室内側部材39は、
図1,9に示すように、上下端が水平に直線的に切断してあり、切断した小口が上下枠10,11のアングル部16,95に当接している。上下枠10,11のアングル部16,95には、室内側部材39の見付部43の室内側に重なる突条98を有している。これにより、室内側部材39の長さが多少短かったり、熱により収縮したとしても、室内側部材39の上下端部と上下枠10,11のアングル部16.95との間に隙間が開かず、意匠性が良い。
図2,3に示すように、見付部43の内周側端部には、室外側が開口した室内ガイド溝34bを有している。室内ガイド溝34bは、内周側部材23に形成された室外ガイド溝34aと対向して設けてあり、
図3に示すように、室外ガイド溝34aと室内ガイド溝34bとで挟持する形で、内障子2の内倒し角度を規制するアーム8が連結されたスライダー44が上下方向に摺動可能に案内してある。また、室内ガイド溝34bの内周側端部45は、
図2に示すように、内障子2の上部に取付けられたラッチ7の爪46の摺動部になっている。
図9に示すように、内周側部材23はバランサーの下で切断されている一方で、室内側部材39は上枠9の下面までのびている。縦枠5の内周側部材23と室内側部材39は、取外し可能となっている。
【0021】
以上に述べたように本建具の縦枠5は、金属製の外周側部材22と、外周側部材22の内周側に設けた樹脂製の内周側部材23と、内周側部材23の室内側に設けた樹脂製の室内側部材39とからなり、内周側部材23は、少なくとも上端部が直線的に切断してあり、室内側部材39は、上下端が直線的に切断してあるので、縦枠5の樹脂製部材(内周側部材23及び室内側部材39)の加工が容易である。
さらに本建具は、縦枠5の室内側部材39が内周側部材23の上端を越えて上枠9まで延びており、内周側部材23よりも上方の外周側部材22の内周側にバランサー3の収納スペースを形成したので、内周側部材23の上端部を直線的に切断するだけで、バランサー3の収納スペースを容易に形成できる。
さらに本建具は、縦枠5の内周側部材23の下端部も直線的に切断したので、内周側部材23の加工が一層容易であり、切断した小口が下枠上面10aと隙間を空けて対向しており、下枠上面10aが室外側に向かって下り勾配の傾斜面になっているので、下枠上面10aの排水性に優れる。しかも、内周側部材23の下端部と下枠上面10a間の隙間は、端部キャップ97により塞いであるので、意匠性や水密性が良い。
また本建具は、縦枠5の室内側部材39は見付部43と見込部42を有し、上下端が直線的に切断してあり、上下枠9,10は、室内側のアングル部16,95に内周側に突出する突条98を有し、突条98が、室内側部材39の見付部43の室内側に重なっているので、室内側部材39の加工が容易であり、且つ室内側部材39の上下端と上下枠9,10のアングル部16,95との間に隙間が開かず、意匠性が良い。
本建具は、縦枠5の内周側部材23の上下端部を直線的に切断したことにより、
図2,3に示すように、内周側部材23に複数の中空部32a,32b,32c,32dを見込み方向と内外周方向に積層して形成することが可能となり、断熱性能を向上させられる。さらに縦枠5の室内側部材39の上下端部も直線的に切断し、室内側部材39にも中空部を設けたので、より一層断熱性能を向上させられる。
内周側部材23の上下端部及び室内側部材39の上下端部を、それぞれ水平に直線的に切断したので、内周側部材23及び室内側部材39の加工がより一層容易である。
【0022】
このように、縦枠5を外周側部材22と内周側部材23と室内側部材39とに分割して形成することで、内周側部材23の上部を直線的に切断するだけで、縦枠5の上部内周側面にバランサー3の取付けスペース27を容易に確保することができる。内周側部材23の室内側に外周側に凹んだ凹部28を形成し、凹部28の底部側から入口側にかけてワイヤー挿通部29、内障子2の下部(ロッド棒31)のガイド部(内向き突部30a,30b)、アームスライダー44のガイド部(ガイド溝34a,34b)、内障子2の上部(ラッチ7)のガイド部(室内側部材39の内周側端部45)を順に形成することで、縦枠5の見付寸法をコンパクトに抑えつつ高機能のガイド部を構成できる。室内側部材39を内周側部材23と別体で形成し、室内側部材39を上枠11までのばし、室内側部材39の内周側端部45を内障子2上部(ラッチ7)のガイド部としたことで、室内側部材39でバランサー3を隠蔽することができ、また、内障子2上部をバランサー3の下端を超えて上までスムーズにガイドできる。内周側部材23と室内側部材39を樹脂製とし、さらにこれらに中空部32a,32b,32c,32dを設けることで、高い断熱性能が得られる。さらに、内周側部材23の凹部28に樹脂製の目板35を取付けてワイヤー挿通部29を隠したことで、断熱性能がさらに向上すると共に、意匠性が向上する。目板35、内周側部材23、室内側部材39は、取外し可能なので、メンテナンス性が良い。
【0023】
バランサー3は、
図7,9に示すように、縦枠5の上部内周側面に取付けてあり、より詳細には、縦枠5の内周側部材23の上端と上枠9との間で、縦枠5の外周側部材22内の室外側の見付壁24と室内側の見付部43の間のスペース27に配置し、外周側部材22の内周側面に取付けてある。バランサー3は、
図8,9に示すように、縦枠5の室内側の見付部43の内周側縁より外周側に略収まっており、すなわち縦枠5の室内側の見付寸法内に略収まっており、室内側から見るとバランサー3は室内側部材39の見付部43に隠れて見えない。厳密に言えば、バランサー3の上部に設けられる主軸56の先端部やラチェット58及びクリック59等の部品が室内側部材39の見付部43より内周側に少し出っ張るが、この部分は後述するバランサーカバー61のストッパー69にてカバーされて隠れる。またバランサー3は、縦枠5の室外側の見付寸法(室外側の見付壁24の見付寸法)内には、全体が完全に収まっている。またバランサー3は、
図9に示すように、上枠9の内周側部材12の端部に形成した切り欠き21より、上枠9内に15mm程度のみ込ませてあり、のみ込ませた分だけバランサー3の下端位置が高くなっている。
【0024】
バランサー3は、
図7,10,11に示すように、外周側に合成樹脂で形成されたベース部材47が配置され、ベース部材47にゼンマイバネ48を収容した香箱49とワイヤー6を巻き取るドラム50とを、それぞれの軸を左右方向に向けて上下に並べて軸支し、香箱49とドラム50を被うようにベース部材47に内周側から金属製のプレート51を取付けている。香箱49とドラム50の外径は、略同じになっている。香箱49の外周側には香箱歯車52が、ドラム50の外周側にはドラム歯車53がそれぞれ設けてあり、香箱歯車52とドラム歯車53に噛み合うように連係歯車54がベース部材47に取付けてあり、ゼンマイバネ48に蓄勢された回転トルクが連係歯車54を介してドラム50に伝達されている。このように香箱歯車52とドラム歯車53の間に連係歯車54を噛ませることで、香箱歯車52とドラム歯車53を香箱49とドラム50の外周からはみ出さないように小さくでき、ベース部材47の見込み方向寸法を香箱49とドラム50の外径ぎりぎりまで小さくできる。逆に言えば、縦枠5の見込み寸法に対して香箱49とドラム50の径をできるだけ大きくすることができ、これにより大荷重にも対応可能なバランサー3となっている。3つの歯車52,53,54は、鉛直線上に一直線に配置され、且つ3つの歯車52,53,54のピッチ円直径を同じにしてある。これにより、各歯車52,53,54が負担するトルクを均一化でき、スムーズな回転を確保すると共に、歯車52,53,54の耐久性を向上できる。
ドラム50は、内周側に向かうにつれて径が小さくなっており、径を小さくすることでできたスペース95(
図12参照)を利用して、後述する内障子2のラッチ7の爪46が通過できる溝部55を設けている。歯車52,53,54とドラム50は、樹脂製である。
ベース部材47は、底板部89にドラム50の軸90と連係歯車54の軸91が一体成形してある。またベース部材47は、
図11に示すように、金属製の香箱49のケース92の周囲を被うように側壁93が設けてある。
【0025】
プレート51の上部には、金属製の主軸56が香箱49の軸57と係合して設けてあり、主軸56にはラチェット58が設けられ、ラチェット58と噛み合うようにプレート51上にクリック59が設けてある。主軸56にマイナスドライバーを係合させて時計回りに回転させると、ゼンマイバネ48が巻かれてトルクが増大し、クリック58を動かしてラチェット58との噛み合いを解除すると、ゼンマイバネ48が戻ってトルクが減少する。さらにプレート51上には、主軸56と連係して動くカウンタ60を備えており、カウンタ60を目安にして主軸56の締め込み・戻し操作を行って、トルクが内障子2の重量と釣り合うように調整する。主軸56とクリック59の操作部、及びカウンタ60は、
図1に示すように、外障子4よりも室内側に設けてあるので、後述するバランサーカバー61を外すだけで、外障子4を枠1に固定したままで室内側からバランサー3の調整が容易に行える。
【0026】
プレート51には、
図10に示すように、四角い孔62のあいた係止片63が上方に突出して設けてあり、
図7に示すように、上枠9の外周側部材11の左右両端部の下面には、係止片63を引っ掛けるためのブラケット64が取付けてある。ブラケット64は、金属の板をプレス加工して形成したものであり、
図12(a)に示すように、係止片63を下方より差し入れ可能な抜き孔65と、抜き孔65の左右両側から内側に向けて突設され、係止片63の孔62に挿入可能な爪片66,66を備え、左右のバランサー3,3に兼用のものとなっている。
バランサー3は、
図13(a)に示すように、上部を外周側に傾けた状態で上枠9内に差し入れ、係止片63を上枠9のブラケット64に下方より引っ掛ける。すると、
図13(b)に示すように、バランサー3のベース部材47が縦枠5の外周側部材22の内周側面に当接し垂直な姿勢となり、ベース部材47の下部一箇所を縦枠5の外周側部材22に内周側からネジ67で固定してある。このネジ67は、縦枠5の躯体固定片68(
図2参照)よりも室内側にあるので、ネジ67の先端側が外部に露出しない。
【0027】
図1,7,9に示すように、バランサー3の内周側には樹脂製のバランサーカバー61が取付けられ、バランサーカバー61により金属製のプレート51の内観露出面を被っている。バランサーカバー61は、下端よりドラム50より高い中間の位置まで縦枠5の内周側部材23の内周側面と略面一状に設けられ、その室内側の部分に内障子2のラッチ7の爪46が通過できる溝部55が、縦枠5のガイド部(凹部28)と連続するように上下方向に沿って設けてある。溝部55は、
図1に示すように、バランサー3の下端から香箱49の下端より高い位置にわたって設けてある。これにより本建具は、
図5に示すように、内障子2をその上端をドラム50の下端より上まで、実施形態のものはさらに香箱49の下端より上まで摺動させることができ、これにより開口面積が上下方向に大きくなっている。
バランサーカバー61は、
図5,7に示すように、縦枠5の内周側に突出する形で内障子2のストッパー69が一体に設けてあり、このストッパー69の下面に内障子2の上端が当接することで、内障子2の上限が規定されている。バランサー3は、プレート51の内周側にラチェット58とクリック59及びカウンタ60が設けてあるが、ストッパー69はこれらの部品を覆うように設けてある。
【0028】
バランサーカバー61は、
図7,8,12に示すように、下端部に縦枠5の内周側部材23に挿入・係止される係止片70a,70b,70cを複数有しており、上部には室外側に外障子4の縦框71に係止する爪片72aを、室内側に縦枠5の室内側部材39に係止する爪片72bをそれぞれ有している。バランサーカバー61は、
図14に示すように、斜めにした状態で下端部に形成した係止片70a,70b,70cを縦枠5の内周側部材23に挿入・係止した後、上部を外周側に押して垂直に起こすと、
図8(a)に示すように、上部の爪片72a,72bが外障子4の縦框71と縦枠5間に挟持して保持される。バランサーカバー61の上端は、
図9(c)に示すように、上枠9の内周側部材12の下面に当接する。バランサーカバー61の下端部には、
図7,8に示すように、縦枠5の目板35と係合して目板35が下がるのを防ぐ目板下がり防止部73を有している。バランサーカバー61は、ストッパー69の上部室内側面に形成した切り欠き74(
図9(c)参照)にマイナスドライバー等の工具を差し入れることで、容易に取り外すことができる。
【0029】
内障子2のラッチ7は、
図15〜17に示すように、縦框75の上端部に固定されるベース部76と、ベース部76に内外周方向に摺動可能に保持されたラッチ本体77と、ラッチ本体77を外周側に付勢するバネ78と、ベース部76上面に設けた操作部材79とを有している。ラッチ本体77は、外周側面の下部室内側に爪46をベース部76から突出して有しており、爪46は縦枠5の凹部28の入口側に係合している。操作部材79はラッチ本体77と係合しており、操作部材77を内周側に動かすと、ラッチ本体77の爪46がベース部76に没入し、内障子2を室内側に倒せるようになる。
ラッチ本体77の爪46は、内障子2の上端から所定の寸法A(
図15参照)だけ下がった位置に設けてあり、その寸法Aは、バランサーカバー61のストッパー69の下面と溝部55の上端との間の寸法B(
図7参照)と略同じか、それ以上としてある。これにより内障子2をその上端がストッパー69に当接する限界まで上げたときでも、ラッチ本体77の爪46が溝部55の上端まで届かず、内障子2をストッパー69に当接する限界まで支障なく上げることができる。また、ラッチ5の爪46を室内寄りに配置したことで、内障子2を上げたときに爪46がバランサー3のドラム50と干渉するのを避けることができる。
【0030】
内障子2の上框36は、
図1に示すように、室外側に配置された金属製形材80と、室内側に配置された樹脂製形材81とを組み合わせて構成してあり、上框36の室内外方向の中央より室内側は樹脂製形材81の中空部82a,82b,82cで構成してある。
ラッチ本体77は、
図16に示すように、爪46をベース部76に没入させたときに上框36内に挿入される後端部83を有しており、この後端部83は爪46よりも室外側に設けてあり、したがってラッチ本体77は平面視で略クランク状となっている。そして後端部83は、爪46をベース部76に没入したときには、樹脂製形材81の最も室外側の中空部82aよりも室外側に挿入される。そのため、ラッチ7を取付けるために樹脂製形材81の中空部82a,82b,82cを切欠く必要がないので、加工が容易であると共に、樹脂製形材81の中空部82a,82b,82cにより高い断熱性能が得られる。
なお、内障子2の上框36以外の框(下框84、縦框75)も、上框36と同様に金属製形材80と樹脂製形材81とを組み合わせて構成してある。外障子4の各框も、金属製形材80と樹脂製形材81とを組み合わせて構成してある。
【0031】
以上に述べたように本建具は、内障子2を吊るバランサー3を縦枠5の上部内周側面に取付けたことで、上枠9の見付寸法を小さくすることができ、バランサー3は内障子2を吊るワイヤー6を巻き取るドラム50を有し、内障子2は、上端がドラム50の下端より上にくる高さまでガイドされていることで、内障子2をその上端を少なくともドラム50の下端より高い位置まで摺動できる(実施形態のものは、さらに香箱49の下端より高い位置まで摺動できる)ため、開口面積を大きくできる。バランサー(バランサーカバー61)は、下端より上下方向の中間部にわたって内障子2のラッチ7の爪46が通過できる溝部55を有しているので、ラッチ7の爪46がバランサー3に衝突して内障子2の可動範囲が規制されることがない。さらにバランサー(バランサーカバー61)は、ドラム50より高い位置に内障子2のストッパー69を有するので、ストッパー69を別途設置する必要がないので、部品コストや組み立てコストを低減することができ、しかもバランサー3の大きさによらず広い開口面積を確保できる。
【0032】
本建具は、バランサー3のベース部材47を樹脂製とし、樹脂製のベース部材47と金属製のプレート51とでドラム50と香箱49を保持しており、その樹脂製のベース部材47を縦枠5内周側面に当接させたことで、縦枠5からバランサー3に冷気が伝わるのを防止できるので、断熱性能が向上する。ベース部材47自体を樹脂製としたことで、バランサー3と縦枠5との間に樹脂製のスペーサー等の断熱材を介在させる必要がないので、部品点数を削減できる上、バランサー3の取付けが簡単になり、しかもバランサー3の厚みを薄くできる。また、ドラム50等の軸90等をベース部材47に一体成形できるので、これによってもバランサー3の厚みを薄くできる。またバランサー3は、ベース部材47やドラム50等の主要な部品が樹脂製であり、香箱49の金属製のケース92の周囲はベース部材76の側壁93で覆われているので、単に枠への取付面だけに樹脂製のスペーサー等を介在させて断熱した場合よりも断熱性が高い。さらに、バランサー3の金属製のプレート51の内観露出面を樹脂製のバランサーカバー61で被ってあることで、該プレート51から室内に冷気が放射されるのを抑えることができるので、断熱性能がさらに向上する。内周側に金属製のプレート51を配置したことで、必要な強度を担保することができ、またプレート51上にラチェット58やクリック59等の荷重のかかる部品を配置することができる。
【0033】
本建具は、バランサー3が縦枠5の上部内周側面に取付けてあり、バランサー3は縦枠5の見付寸法内に収まっており、且つ上部を上枠9内にのみ込ませてあることで、開口面積を上下方向、左右方向共に大きくできる。本建具は、上枠9の下面にブラケット64を有し、バランサー3はブラケット64に引っ掛けるための引掛け部(係止片63)を有することで、バランサー3を上枠9にのみ込ませて取付けるのが容易である。バランサー3の引掛け部(係止片63)は、金属製のプレート51に設けてあることで、バランサー3にかかる荷重を上枠9に伝えられるので、バランサー3を1本のネジ67だけで安定して枠1に取付けできる。縦枠5が外周側部(外周側部材22)と内周側部(内周側部材23)とからなり、内周側部(内周側部材23)はバランサー3より下方に設けてあり、内障子2のガイド部(凹部28)と内障子2を吊る吊部材(ワイヤー6)の挿通部29を有することで、バランサー3を取付けるために縦枠5に複雑な加工をする必要がなく、製造コストを低減できる。さらに、内周側部(内周側部材23)は樹脂製であり、吊部材の挿通部29が樹脂製の目板35で塞いであることで、断熱性及び意匠性が向上する。
【0034】
本建具は、バランサー3のドラム50の軸90が左右方向を向いているので、バランサー3を縦枠5内に収めることができ、またバランサー3を上枠9内に収める必要がないため上枠9の見付寸法を小さくできることから、開口面積(上下方向)を大きくできる。縦枠5の内周側部材23の上端と上枠9間にバランサーカバー61が取付けてあるので、意匠性がよい。バランサーカバー61は、室内側から簡単に取り外すことができ、バランサーカバー61を取外すことでバランサー3の調整やメンテナンスが容易に行える。
【0035】
図19は、上枠9に取付けられるブラケット64とバランサーカバー61の他の実施形態を示している。ブラケット64は、左右勝手違いのものとしてあり、バランサー3を引っ掛けるための爪片66とは別に垂下片85を有し、バランサーカバー61の上部のストッパー69を垂下片85に内周側から係合するとともに、内障子2の全開時にストッパー69が受ける上向きの衝撃を、垂下片85の下端で受け止め可能としている。
本実施形態によれば、バランサーカバー61を取り付ける際、傾斜させた状態でバランサーカバー61の下端を縦枠5の内周側部材23の上端に載置させた後、バランサーカバー61を起立させてバランサーカバー61の上端近傍をブラケット64の垂下片85に係合させるだけでバランサーカバー61の装着ができ、バランサーカバー61の取り付けを容易に行うことができる。
そしてブラケット64の垂下片85を利用して、内障子2開放時にストッパー69が受けた衝撃を垂下片85に受けさせるとともに、垂下片85から上枠9で確実に受け止めることができる。また、バランサーカバー61の下端に設けた突起部86を、縦枠5の載置部に嵌合させていることから、バランサーカバー61は上下でそれぞれ係合状態となり、安定した固定が可能となる。
【0036】
バランサー3は、これまでに説明したようなドラム式のものの他、スパイラルバランサー87を用いることもできる。
図20,21は、スパイラルバランサー87を用いた場合の建具の実施形態を示している。
建具自体の構成はこれまでに説明したものと同様であり、スパイラルバランサー87は縦に細長い円柱状となっており、
図21に示すように、縦枠5の内周側部材23の凹部28の底部(スパイラルバランサー挿通部88)に配置されている。スパイラルバランサー87は、
図20に示すように、上部が上枠9内にのみ込ませてある。このようにスパイラルバランサー87の上部を上枠9にのみ込ませることで、のみ込ませた分だけ内障子2をより上まで上げられるようになり、開口面積が増大する。
上枠9の内周側部材12は、
図23に示すように、スパイラルバランサー87を上枠9内にのみ込ませるために、左右の側縁よりU字形の切り欠き94が設けてある。このように切り欠き94が設けてあることで、スパイラルバランサー87を縦枠5に取付けたままの状態で上枠9の内周側部材12を取外すことができ、メンテナンス性が良い。
【0037】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。枠や障子の形態は、適宜変更することができる。縦枠の外周側部材、内周側部材及び室内側部材の断面形状は、適宜変更することができる。内周側部材は、上端部のみが直線的に切断されたものであってもよい。バランサーの具体的な構造や取付き状態は問わない。本発明は、上げ下げ窓の他、上げ下げ窓付きの戸等に適用することもできる。