(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷熱取出部は、前記膨張機から供給された常温以下の冷気と冷媒とで熱交換し、冷媒を常温以下まで冷却して冷却冷媒を得る第2熱交換器を備える、請求項1又は請求項2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
前記第1熱交換器は、熱交換により回収した圧縮熱を暖熱として取り出す暖熱取出部として機能する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再生可能エネルギーにより発電した電力の出力先としては、商用系統に電力として出力して売電する場合もあるが、商用系統に戻すことなく発電所内又は近接する需要家で消費することも考えられる。このような需要家の一例として、コンピュータの冷却に膨大な冷房が求められるデータセンタや、製造工程における制約から一定温度に調整しておくことが求められる精密機械工場及び半導体工場がある。
【0006】
なお、大電力を使用する需要家では、その使用電力の変動に応じて、使用電力が少ない際に蓄電し、使用電力が増加した場合に放電して最大使用電力量を抑えるという節電手法に対するニーズもある。
【0007】
本発明は、再生可能エネルギーのような不規則に変動する発電出力を平滑化すると共に、このような変動する入力電力によっても効率的に冷熱利用できる圧縮空気貯蔵発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、不規則に変動する入力電力により駆動される電動機と、
前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機と機械的に接続された発電機と、
前記圧縮機から供給される圧縮空気と熱媒とで熱交換して圧縮空気を常温近傍まで冷却する第1熱交換器と、
作動流体である空気を常温以下の冷気として取り出す冷熱取出部と
を備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
ここで、前記冷熱取出部は、前記膨張機の排気口を含んでいてもよい。
【0009】
この構成によれば、蓄圧部により圧縮空気としてエネルギーを貯蔵することで、再生可能エネルギーのような不規則に変動する発電出力を平滑化することができる。また、冷熱取出部により常温以下の冷気を取り出す(冷熱を作り出す)ことで再生可能エネルギーのような不規則に変動する電力によっても効率的に冷熱利用できる。特に、商用電力を直接使用して冷熱を作り出す場合に比べて大幅に熱効率を向上できる。また、発電に伴う膨張による吸熱を利用することで空気を効率的に冷却できるため、冷熱取出部として膨張機を有効利用できる。ここで、第1熱交換器において圧縮空気は常温近傍まで冷却されるが、「常温近傍」とは、圧縮空気が蓄圧部に貯蔵されている間に外気に放熱して、圧縮空気の保有するエネルギーを大幅に損失しない程度の温度をいう。
【0010】
前記冷熱取出部は、前記膨張機から供給された常温以下の冷気と冷媒(例えば水)とで熱交換し、冷媒を常温以下まで冷却して冷却冷媒(例えば冷水)を得る第2熱交換器を備えてもよい。
【0011】
第2熱交換器を設けることで、冷却冷媒を取出して冷房に利用することができる。また、冷気と冷媒との熱交換量を調整して冷却冷媒の温度を一定温度に調整できる。
【0012】
前記第1熱交換器は、熱交換により回収した圧縮熱を暖熱として取り出す暖熱取出部として機能してもよい。
【0013】
前記第1熱交換器が暖熱取出部として機能することで、冷熱に加えて暖熱も取り出すことができ、さらに熱効率を向上できる。また、暖熱を取り出すための新たな設備を追加する必要がない。
【0014】
前記暖熱取出部に冷凍機が流体的に接続されていてもよい。
【0015】
冷凍機により、暖熱を冷熱に変換して取り出すことができるため、圧縮空気貯蔵発電全体としてより多くの冷熱を取り出すことができる。これにより、前記冷熱取出部からの冷熱に加えて冷凍機からの冷熱も利用することができるため、データセンタや大型のコンピュータ等の大量の冷熱が必要な需要家に対してより多くの冷熱を供給できる。
【0016】
前記冷熱取出部により冷熱を取り出す効率を向上させた冷熱取出モードと、前記発電機により発電する効率を向上させた発電モードとを切り替えるモード切替機構をさらに備えていてもよい。
【0017】
モード切替機構を設けることで、必要に応じてモードを切り替えることができ、熱効率の向上と充放電効率の向上の両立を図ることができる。
【0018】
前記蓄圧部の許容蓄圧値よりも高い許容蓄圧値を有する高圧蓄圧部と、
前記圧縮機により圧縮された圧縮空気よりも高圧に空気を圧縮して前記高圧蓄圧部に供給する高圧圧縮機と
をさらに備えてもよい。
【0019】
高圧蓄圧部と高圧圧縮機を設けることで、商用電力系統の停電等の非常時に長時間にわたって緊急電源と冷房を供給できる。これは、データセンタや大型のコンピュータ等の停電時においても非常用電力が必要で、かつ大量の冷熱が必要な需要家に対して特に有効である。
【0020】
本発明の第2の態様は、不規則に変動する入力電力により空気を圧縮し、
前記圧縮の工程で昇温した圧縮空気を常温近傍まで冷却し、
前記常温近傍まで冷却された圧縮空気を貯蔵し、
貯蔵した圧縮空気を膨張させることにより発電に利用すると同時に常温以下まで冷却して冷気として取り出す、圧縮空気貯蔵発電方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蓄圧部により圧縮空気としてエネルギーを貯蔵することで再生可能エネルギーによる発電出力のように不規則に変動する入力電力を平滑化すると共に、冷熱取出部により常温以下の冷気を取り出すことで、不規則に変動する入力電力によっても効率的に冷熱利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置2の概略構成図を示している。このCAES発電装置2は、再生可能エネルギーを利用して発電する場合の電力系統4への出力変動を平滑化するとともに、電力系統4における電力需要の変動に合わせた電力を出力する。
【0025】
図1を参照して、本実施形態のCAES発電装置2の構成を説明する。
【0026】
CAES発電装置2は、再生可能エネルギーを利用する発電装置6の出力変動を平滑化する。CAES発電装置2は、少なくともモータ(電動機)8a、圧縮機10、蓄圧タンク(蓄圧部)12、膨張機14、発電機16、及び第1熱交換器18aを備える。
【0027】
図1に係る実施形態では、発電装置6として、風力発電や太陽光発電等の再生可能エネルギーを利用したものを用いているが、発生する電力が不規則に変動するものであれば、再生可能エネルギーによるものでなくてもよい。例えば、工場等に設置された大電力を使用する機器(例えば、大型コンピュータや電気炉など)によって変動させられる電力であってもよい。
【0028】
再生可能エネルギーを利用する発電装置6により発電された不規則に変動する電力は、モータ8aに供給される。以降、発電装置6からモータ8aに供給される電力を入力電力という。モータ8aは、入力電力により駆動される。モータ8aは、圧縮機10に機械的に接続されている。
【0029】
圧縮機10は、モータ8aで駆動される。圧縮機10の吐出口10bは、空気配管20aを通じて蓄圧タンク12と流体的に接続されている。圧縮機10は、モータ8aにより駆動されると、吸気口10aより空気を吸気し、圧縮して吐出口10bより吐出し、空気配管20aを通じて蓄圧タンク12に圧縮空気を圧送する。空気配管20aには、第1熱交換器18aが設けられている。
【0030】
蓄圧タンク12は、空気配管20bを通じて膨張機14と流体的に接続されている。蓄圧タンク12は、圧送された圧縮空気を蓄える。即ち、蓄圧タンク12には圧縮空気の形式でエネルギーを蓄積できる。蓄圧タンク12で蓄えられた圧縮空気は、空気配管20bを通じて膨張機14に供給される。空気配管20bにはバルブ22が設けられており、バルブ22を開閉することで膨張機14への圧縮空気の供給を許容又は遮断できる。
【0031】
膨張機14は、発電機16と機械的に接続されている。給気口14aから圧縮空気を給気された膨張機14は、給気された圧縮空気により作動し、発電機16を駆動する。すなわち、蓄圧タンク12に貯蔵していた圧縮空気を膨張させて発電に利用している。膨張された空気は、膨張時の吸熱により常温以下まで冷却され、排気口14bから空気配管20d内に排気される。すなわち、貯蔵していた圧縮空気を膨張させることにより常温以下まで冷却して冷気として取り出している。従って、本実施形態では、膨張機14が本発明の冷熱取出部13に含まれ、空気配管20dを通じて作動流体である空気を冷気として取り出すことができる。空気配管20dには第2熱交換器18bが設けられており、常温以下まで冷却された冷気は空気配管20dを通じて第2熱交換器18bに供給される。
【0032】
また、蓄圧タンク12により圧縮空気としてエネルギーを貯蔵することで再生可能エネルギーによる発電出力を平滑化し、冷熱取出部13(膨張機14)により常温以下の冷気を取り出すことで再生可能エネルギーによって効率的に冷房を行うことができる。特に、商用電力を直接使用して冷熱を作り出す場合に比べて大幅に熱効率を向上できる。また、発電に伴う膨張による吸熱を利用することで空気を効率的に冷却できるため、本実施形態では冷熱取出部13として膨張機14を有効利用している。
【0033】
発電機16は電力系統4に電気的に接続されており、発電機16で発電した電力(以降、発電電力という)は電力系統4又はモータ8aに供給される(
図1の一点鎖線参照)。発電電力の供給先は、スイッチ30を切りかえることで変更できる。スイッチ30の切り替えは、電力系統4から要求される需要電力に応じて切り替えられてもよい。
【0034】
第1熱交換器18aでは、圧縮機10と蓄圧タンク12とを流体的に接続する空気配管20a内の圧縮空気と、熱媒配管34a内の熱媒とで熱交換し、圧縮機10で発生した圧縮熱を熱媒に回収している。即ち、第1熱交換器18aでは、圧縮空気の温度は低下し、熱媒の温度は上昇する。特に、後述する熱エネルギー損失防止及び冷熱回収のため、圧縮空気の温度は常温近傍まで低下される。ここで、「常温近傍」とは、圧縮空気が蓄圧タンク12に貯蔵されている間に外気に放熱して圧縮空気の保有するエネルギーを大幅には損失しない程度の温度をいう。ここでいう「常温近傍」の温度とは、蓄圧タンク12の設置場所の温度(本実施形態においては外気温度)によって変動するが、10〜50℃程度の温度が適切である。ここで温度上昇した熱媒は、第3熱交換器18cに供給され、熱交換に使用される。また、第1熱交換器18aは、クーリングタワー等の単なる冷却機構であってもよい。
【0035】
第1熱交換器18aを設けることで、蓄圧タンク12における放熱によるエネルギー損失を防止できる。第1熱交換器18aを設けない場合、圧縮熱によって温度上昇した圧縮空気が蓄圧タンク12に供給される。この場合、温度上昇した圧縮空気は、蓄圧タンク12に蓄えられている間に外気へ放熱し、熱エネルギーを損失する。これを防止するため、第1熱交換器18aを設置して、蓄圧タンク12に供給される圧縮空気の温度を常温近傍まで低下させている。
【0036】
冷熱を取り出すことに関して、第1熱交換器18aにより圧縮空気の温度を常温近傍まで低下させることで、膨張機14に供給される空気の温度も常温近傍まで低下する。従って、常温近傍の空気が膨張機14で膨張され、膨張吸熱により常温近傍からさらに温度低下するため、排気される空気の温度を常温以下にできる。このため、常温以下の冷気として冷熱を回収できる。
【0037】
第2熱交換器18bでは、膨張機14から空気配管20dを通じて排気された常温以下の空気と、冷水配管40を通じて水供給部19から供給される水とで熱交換し、水を常温以下まで冷却して冷水(冷却冷媒)として取り出す。取り出された冷水は、冷房等に使用される。従って、第2熱交換器18bは、本発明の冷熱取出部13に含まれる。冷房の需要先は、例えば、コンピュータの冷却に膨大な冷房が求められるデータセンタや、製造工程における制約から一定温度に調整しておくことが求められる精密機械工場及び半導体工場等がある。また、第2熱交換器18bで熱交換して温度上昇した空気配管20d内の空気も依然冷房に使用できる程度の低温を保っている場合は、上記の冷房の需要先等に供給され、冷房に利用されてもよい。
【0038】
第2熱交換器18bを設けることで、冷水を取出して冷房に利用することができる。また、冷気と水との熱交換量を調整して冷水の温度を一定温度に調整できる。
【0039】
さらに、膨張機14から空気配管20dを通じて排気された常温以下の空気、又は、第2熱交換器18bで冷却された冷水は、第1熱交換器18aに供給され、圧縮空気の冷却に使用されてもよい。
【0040】
冷熱取出部13としての膨張機14又は第2熱交換器18bから第1熱交換器18aに対して冷熱を供給することで、システム外から圧縮空気を冷却するための冷熱を供給する必要がない。また、簡単な構成で取り出した冷熱を有効利用できる。
【0041】
本実施形態においては、冷媒として水を用いたが、水に不凍液等を加えた混合物であってもよいし、代替フロンなどの冷媒を用いてもよい。
【0042】
暖熱を取り出すことに関して、第1熱交換器18aが暖熱取出部17として機能することで、冷熱に加えて暖熱も取り出すことができ、さらに熱効率を向上できる。また、暖熱を取り出すための新たな設備を追加する必要もなく、低コストかつ簡単な構成で暖熱を取り出すことができる。
【0043】
蓄熱タンク32aは、熱媒配管34aを通じて、それぞれ第1熱交換器18a及び第3熱交換器18cに流体的に接続されている。蓄熱タンク32aは内部の熱媒が温度変化しないように断熱されており、熱媒配管34a内には熱媒が流れている。熱媒の種類は限定されておらず、例えば水、油などであってもよい。熱媒配管34aには、ポンプ36aが設けられている。ポンプ36aは、熱媒配管34aを通じて蓄熱タンク32aと第1熱交換器18aと第3熱交換器18cとの間で熱媒を循環させている。
【0044】
第3熱交換器18cでは、第1熱交換器18aで温度上昇した熱媒と温水配管42cを通じて水供給部19から供給された水とで熱交換して水を暖房として利用できる所定の温度まで上昇させている。ここで作られた温水は暖房に使用される。従って、第3熱交換器18cは、本発明の暖熱取出部17に含まれる。これに対して第3熱交換器18cで温度低下した熱媒は、熱媒配管34aを通じて蓄熱タンク32aに供給され蓄えられる。熱媒は、蓄熱タンク32aから第1熱交換器18aに供給され、循環している。また、第3熱交換器18cで温度上昇させるのは水だけでなく、油などの他の熱媒であってもよい。また、第3熱交換器18cは必ずしも設ける必要はなく、第3熱交換器18cを省略し、第1熱交換器18aで温度上昇した熱媒を暖房に使用してもよい。
【0045】
第3熱交換器18cには冷凍機38が流体的に接続されている。第3熱交換器18cから冷凍機38に暖熱の一部が供給され、冷熱に変換して冷房に使用される。従って、冷凍機38は、本発明の冷熱取出部13に含まれる。本実施形態では第3熱交換器18cから冷凍機38に暖熱を供給しているが、第1熱交換器18aと冷凍機38を流体的に接続し、第1熱交換器18aから冷凍機38に暖熱を供給してもよい。また、図示しない弁などを設け、必要に応じて暖熱を冷凍機38に供給し、冷房と暖房を切り替えてもよい。冷凍機38により、暖熱を冷熱に変換して取り出すことができるため、例えば、データセンタや大型のコンピュータ等の大量の冷熱が必要な需要家に対してより多くの冷熱を供給できる。本実施形態の冷凍機としては、吸収式冷凍機、吸着式冷凍機などの暖熱を冷熱に変換する各種冷凍機を使用することができる。
【0046】
また、本実施形態では、モータ8a及び発電機16における電気ロスやメカロスのような圧縮熱に対しては比較的小さな熱も回収するために、第4熱交換器18d及び第5熱交換器18eが設けられている。第4熱交換器18d及び第5熱交換器18eでは、温水配管42a,42bを通じて水供給部19から供給される水と、モータ8a及び発電機16から熱回収して温度上昇した熱媒とで熱交換して、水を所定の温度まで上昇させて温水として取り出している。従って、第4熱交換器18d及び第5熱交換器18eは、本発明の暖熱取出部17に含まれる。取り出された温水は、温浴施設、温水プール、農業施設、及び暖房等に利用できる。熱媒配管34b,34c内の熱媒はポンプ36b,36cによりそれぞれ循環している。
【0047】
また、本実施形態のCAES発電装置2は、圧縮機10よりも空気を高圧に圧縮する高圧圧縮機28と、蓄圧タンク12の許容蓄圧値よりも高圧の許容蓄圧値を有する高圧蓄圧タンク(高圧蓄圧部)24とを備える。
【0048】
高圧圧縮機28には、圧縮機10と同様にモータ8bが機械的に接続されている。高圧圧縮機28は、モータ8bに駆動されて、吸気口28aより吸気し、圧縮機10よりも高圧に空気を圧縮して、吐出口28bから高圧蓄圧タンク24に圧縮空気を供給する。従って、高圧蓄圧タンク24内の圧力は、通常、蓄圧タンク12内の圧力よりも高い。蓄圧タンク12と高圧蓄圧タンク24の圧力(蓄圧値)の例として、蓄圧タンク12を0.98MPa未満とし、高圧蓄圧タンク24を4.5MPa程度とすることが考えられる。
【0049】
高圧蓄圧タンク24は、蓄圧タンク12及び膨張機14と空気配管20cを通じて流体的に接続されている。具体的には、空気配管20cの一端は高圧蓄圧タンク24に流体的に接続され、他端は空気配管20bに流体的に接続されている。空気配管20cには流量調整バルブ26が設けられており、流量調整バルブ26の開度を調整することで蓄圧タンク12及び膨張機14に供給する空気の流量を調整できる。膨張機14に減圧した高圧空気を供給することで発電をおこない、蓄圧タンク12に減圧した高圧空気を供給することで減少した蓄圧タンク12に貯蔵された圧縮空気量を補うことができる。
【0050】
高圧蓄圧タンク24と高圧圧縮機28を設けることで、停電等の非常時に長時間にわたって緊急電源と冷房を供給できる。具体的には、通常時流量調整バルブ26が閉じられており、高圧蓄圧タンク24の内圧が高く保たれている。停電等が起きて多くの発電量が必要な場合や、長時間発電して蓄圧タンク12の内圧が低下した場合に、流量調整バルブ26を開き、高圧蓄圧タンク24から膨張機14に多くの圧縮空気を供給する。これにより、膨張機14によって駆動される発電機16の発電量の低下を防止でき、同時に冷熱を取り出すこともできる。これは、データセンタや大型のコンピュータ等の大量の冷熱が必要な需要家に対して特に有効である。
【0051】
なお、本実施形態の圧縮機10及び膨張機14は、その種類は限定されず、スクリュ式、スクロール式、ターボ式、及びレシプロ式などであってもよい。ただし、不規則に変動する入力電力に応答性高くリニアに追従するにはスクリュ式が望ましい。また、圧縮機10及び膨張機14の数は共に1台であるが、台数は特に限定されず、2台以上の複数台であってもよい。また、高圧圧縮機28の種類も限定されていないが、高圧に圧縮して保持しておくにはレシプロ式が望ましい。
【0052】
図2は、本実施形態と異なり、冷熱を取り出すよりも発電効率を重視した場合のCAES発電装置2の概略構成図である。
図2に示す比較例では、
図1の第1実施形態から第2熱交換器18bが省略され、第6熱交換器18fが設けられている。また、第6熱交換器18fを設けたことに伴い、熱媒を温度別に貯蔵するために2つの蓄熱タンク32a,32bが設けられている。これら以外の構成は
図1と実質的に同様であり、同様の構成要素には同様の符号を付して説明を省略する。
【0053】
第6熱交換器18fでは、蓄圧タンク12から膨張機14へと延びる空気配管20b内の圧縮空気と、循環する熱媒配管34d内の熱媒とで熱交換し、膨張機14による膨張の前に圧縮空気の温度を上昇させている。即ち、第6熱交換器18fでは、圧縮空気の温度は上昇し、熱媒の温度は低下する。第6熱交換器18fで温度低下した熱媒は、蓄熱タンク32aに供給され蓄えられる。蓄熱タンク32aに蓄えられた熱媒は、熱媒配管34dを通じて第1熱交換器18aに供給される。第1熱交換器18aで温度上昇した熱媒は、蓄熱タンク32bに供給され蓄えられる。蓄熱タンク32bに蓄えられた熱媒は、熱媒配管34dを通じて第6熱交換器18fに供給される。熱媒配管34dには、熱媒を流動させるためのポンプ36dが設けられており、ポンプ36dにより熱媒は循環されている。このように圧縮空気の膨張前に圧縮空気の温度を上昇させることで、膨張効率を向上させ、発電効率を向上させることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図3に示す第2実施形態のCAES発電装置2は、
図1の第1実施形態と
図2の比較例を合わせた構成を有している。具体的には、
図1に示す第1実施形態の膨張機14による冷熱を取り出す効率を向上させた冷熱取出モードと、
図2に示す比較例の発電機16による発電効率を向上させた発電モードとを両方実行可能とし、2つのモードを切り替えるモード切替機構44を有している。
【0055】
モード切替機構44は、三方弁46,48を含んでいる。三方弁46,48は、熱媒配管34eに設けられている。一方の三方弁46は、第1熱交換器18aに接続された第1ポート46aと、第3熱交換器18cに接続された第2ポート46bと、蓄熱タンク32bに接続された第3ポート46cとを有する。他方の三方弁48は、蓄熱タンク32aに接続された第1ポート48aと、第3熱交換器18cに接続された第2ポート48bと、第6熱交換器18fに接続された第3ポート48cとを有する。従って、三方弁46,48の各ポート46a〜46c,48a〜48cを開閉することで、これらの構成要素間の熱媒の流れを許容又は遮断し、必要なモードに切り替えることができる。
【0056】
冷熱取出モードでは、一方の三方弁46は、第1ポート46a及び第2ポート46bを開き、第3ポート46cを閉じる。他方の三方弁48は、第1ポート48a及び第2ポート48bを開き、第3ポート48cを閉じる。従って、熱媒配管34e内の熱媒は、蓄熱タンク32a、第1熱交換器18a、三方弁46、第3熱交換器18c、三方弁48、及び蓄熱タンク32aの順に流れ、ポンプ36eにより循環している。
【0057】
発電モードでは、一方の三方弁46は、第1ポート46a及び第3ポート46cを開き、第2ポート46bを閉じる。他方の三方弁48は、第1ポート48a及び第3ポート48cを開き、第2ポート48bを閉じる。従って、熱媒配管34e内の熱媒は、蓄熱タンク32a、第1熱交換器18a、三方弁46、蓄熱タンク32b、第6熱交換器18f、三方弁48、及び蓄熱タンク32aの順に流れ、ポンプ36eにより循環している。
【0058】
モード切替機構44を設けることで、必要に応じてモードを切り替えることができ、熱効率と充放電効率の両立を図ることができる。すなわち、休日や祝日等の工場が止まって冷熱を必要としない場合は、商用系統への売電を優先して発電モードで運転し、工場が稼働中で冷熱を必要としている場合には、冷熱取出モードで運転すればよい。
【0059】
図4は、入力電力に対する発電モード及び冷熱取出モードのエネルギー効率を示したものである。入力電力に対して、発電モードと冷熱取出モードの発電効率(実線斜線部)を比較すると、発電モードの方が発電効率は高い。冷熱取出モードでは、第1熱交換器18aで回収した熱を暖房として使用して熱効率を向上させているのに対して(破線斜線部)、発電モードでは第1熱交換器18aで回収した熱を使用して第6熱交換器18fで膨張前の空気を加熱して発電効率を向上させているためである。また、モータ8a及び発電機16から第4熱交換器18d及び第5熱交換器18eを介して暖熱を温水として取り出しているのは両モード共通であるが(M,G部分)、冷熱取出モードではさらに冷熱を取り出して冷房に使用している(C1,C2部分)。ここでC1部分は第2熱交換器18bでの熱交換後に冷水配管40を通じて冷水として取り出した冷熱であり、C2部分は第2熱交換器18bでの熱交換後も依然常温以下である空気配管20dを通じて冷気として取り出した冷熱である。総合的なエネルギー効率は、冷熱取出モードの方が発電モードよりも高くなっている。グラフでは、入力電力よりも冷熱取出モードのエネルギー効率が高くなっており、エネルギー効率が100%を超えているが、これは周囲の空気からエネルギーを得て冷熱及び暖熱を回収して利用できるためである。冷熱と暖熱の取出比率によって、全体のエネルギー効率は異なるが、一例として180%(COP(Coefficient Of Performance)=1.8)程度の効率が期待できる。
【0060】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態のCAES発電装置2の概略構成図を示している。本実施形態のCAES発電装置2は、冷熱取出部14に関する構成以外は
図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0061】
本実施形態のCAES発電装置2は、
図1の第1実施形態のCAES発電装置2から第2熱交換部18b及び冷水配管40が省略されている。従って、膨張機14の排気口14bから空気配管20dを通じて供給された冷気は、そのまま冷房に使用してもよい。
【0062】
このように、第2熱交換器18b等を介して冷水を作ることなく冷気を直接冷房に使用してもよい。この場合、冷水を作るための第2熱交換器18bや冷水配管20d(
図1参照)等の設備が不要となり、簡単な構成で冷熱を取り出して利用できる。ただし、冷気が著しく低温になる場合や、冷気量が変動すると困る場合には、冷熱用の蓄熱槽を設けて、必要な温度と量を供給するようにするのが望ましい。
【0063】
ここで記載した各実施形態において、再生可能エネルギーによる発電の対象は、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力又は潮力、流水又は潮汐等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充され、かつ不規則に変動するエネルギーを利用したもの全てを対象とすることが可能である。また、工場内の他の大電力を消費する機器によって電力が変動するものであってもよい。