特許第6511577号(P6511577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人国立高等専門学校機構の特許一覧 ▶ フドー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000002
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000003
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000004
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000005
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000006
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000007
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000008
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000009
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000010
  • 特許6511577-成形装置および成形方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6511577
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】成形装置および成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20190425BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20190425BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20190425BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20190425BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190425BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190425BHJP
【FI】
   B29C64/30
   B29C64/118
   B29C64/35
   B29C70/20
   B33Y30/00
   B33Y10/00
【請求項の数】22
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-154946(P2018-154946)
(22)【出願日】2018年8月21日
【審査請求日】2018年11月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【弁護士】
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正雄
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 伸樹
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121796(WO,A1)
【文献】 特表2016−518267(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0322383(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0015656(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/008789(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106915075(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第107825710(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106827499(CN,A)
【文献】 特開2018−075825(JP,A)
【文献】 特開2018−187909(JP,A)
【文献】 特開2017−100304(JP,A)
【文献】 特表2016−501136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル部と、前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と、前記ノズル部を加熱する加熱装置とを具備した成形装置であって、
前記成形材料は繊維含有樹脂であり、
前記ノズル部はノズル口と前記ノズル口に連通する孔とを具備してなり
前記ノズル部の前記孔の内径は前記案内部材の外径よりも大きく構成されてなり、
前記案内部材の先端側は前記ノズル口に向けて配置されると共に、前記案内部材と前記ノズル部との間には隙間が設けられてなり、
前記案内部材を通過中の前記成形材料は、前記加熱装置による前記ノズル部の加熱時においても、熔融防止される
成形装置。
【請求項2】
ノズル部と、前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と、前記ノズル部を加熱する加熱装置とを具備した成形装置であって、
前記成形材料は繊維含有樹脂であり、
前記ノズル部はノズル口と前記ノズル口に連通する孔とを具備してなり、
前記ノズル部の前記孔の内径は前記案内部材の外径よりも大きく構成されてなり、
前記案内部材の先端側は前記ノズル部の前記孔内に配置されると共に、前記案内部材と前記ノズル部との間には隙間が設けられてなり、
前記案内部材を通過中の前記成形材料は、前記加熱装置による前記ノズル部の加熱時においても、熔融防止される
成形装置。
【請求項3】
前記案内部材は管状部材である
請求項1又は請求項2の成形装置。
【請求項4】
ノズル部と、前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と、前記ノズル部を加熱する加熱装置とを具備した成形装置であって、
前記成形材料は繊維含有樹脂であり、
前記ノズル部はノズル口と前記ノズル口に連通する孔とを具備してなり
前記案内部材は管状部材であり、
前記ノズル部の前記孔の内径は前記管状部材の外径よりも大きく構成されてなり、
前記管状部材の先端側は前記ノズル口に向けて配置されると共に、前記管状部材と前記ノズル部との間には隙間が設けられてなり、
前記管状部材の孔内を通過中の前記成形材料は、前記加熱装置による前記ノズル部の加熱時においても、熔融防止される
成形装置。
【請求項5】
ノズル部と、前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と、前記ノズル部を加熱する加熱装置とを具備した成形装置であって、
前記成形材料は繊維含有樹脂であり、
前記ノズル部はノズル口と前記ノズル口に連通する孔とを具備してなり、
前記案内部材は管状部材であり、
前記管状部材の先端側が、前記ノズル口に向けて、前記孔内に配置されてなり、
前記管状部材の孔内を通過中の前記成形材料の熔融を防止する防止機構が構成されてなる
成形装置。
【請求項6】
前記防止機構は温度上昇防止機構であり、
前記加熱装置からの熱が、前記温度上昇防止機構によって、前記案内部材に伝わり難くなる
請求項5の成形装置。
【請求項7】
前記温度上昇防止機構は断熱機構である
請求項6の成形装置。
【請求項8】
前記断熱機構は、前記加熱装置と前記案内部材との間に設けられた断熱材である
請求項7の成形装置。
【請求項9】
前記断熱材が、気体、液体、及び固体の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである
請求項8の成形装置。
【請求項10】
前記気体が空気、窒素、及び二酸化炭素の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである
請求項9の成形装置。
【請求項11】
前記液体が水または水溶液である
請求項9の成形装置。
【請求項12】
前記固体が非金属材である
請求項9の成形装置。
【請求項13】
前記防止機構は冷却機構である
請求項5の成形装置。
【請求項14】
前記冷却機構は熱伝導率10W/m・k以上の案内部材である
請求項13の成形装置。
【請求項15】
前記冷却機構は送風機構である
請求項13の成形装置。
【請求項16】
前記冷却機構は冷却水供給機構である
請求項13の成形装置。
【請求項17】
前記断熱機構は、前記ノズル部の孔内壁と前記管状部材外壁との間に設けられた隙間である
請求項7〜請求項12いずれかの成形装置。
【請求項18】
前記隙間は、ノズル口の最大内径寸法の3〜500%である
請求項1,2,3,4,17いずれかの成形装置。
【請求項19】
前記防止機構は放熱機構である
請求項5の成形装置。
【請求項20】
前記成形材料が導電性繊維含有樹脂である
請求項1〜請求項19いずれかの成形装置。
【請求項21】
前記ノズル部のノズル口をクリーニングするクリーニング機構を具備する
請求項1〜請求項20いずれかの成形装置。
【請求項22】
請求項1〜請求項20いずれかの成形装置による成形方法であって、
加熱装置の熱で、ノズル部通過後の成形材料が熔融するよう、かつ、案内部材通過中の成形材料が熔融しないよう制御される
成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製成形品の材料として複合材料が知られている。例えば、繊維強化樹脂(FRP(Fiber Reinforced Plastics):無機繊維強化プラスチック(例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、その他のセラミック繊維強化プラスチック)、金属繊維強化プラスチック、有機繊維強化プラスチック(例えば、アラミド繊維強化プラスチック、天然繊維(例えば、セルロース繊維)強化プラスチック)や、導電性繊維(炭素繊維とか金属繊維など)含有樹脂がある。樹脂は、例えば熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。
【0003】
各種の材料を用いた押出成形、射出成形などの成形技術も周知である。近年では付加製造技術(Additive manufacturing:3Dプリンター(3D printer)造形技術)が提案されている。この技術は、“平成25年度 特許出願技術動向調査報告書(概要) 3Dプリンター”において、次のように説明されている。3Dプリンター(付加製造技術)は、材料を付着することによって、物体を、三次元形状の数値表現から、作成するプロセスを指す。多くの場合、層の上に層を積むことによって、実現される。3Dプリンターの表現が、紙に出力される二次元の対比から、使用されている。ASTM F2792−12a(Standard Terminology for Additive Manufacturing Technologies)においては、付加製造技術(Additive manufacturing)の用語が用いられている。例えば、MarkForged社からは、CFRP用の3Dプリンターが提案されている。繊維を含む材料形態になることで、従来の自由造形という概念から自由繊維配向という考え方への広がりをみせた。この為、前記航空宇宙産業や自動車産業にあっても、付加製造技術によって、CFRP製品の開発が試みられている。機械部品産業にあっても、付加製造技術によって、CFRP製品の開発が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−78205
【特許文献2】特開2016−172317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形装置(3Dプリンター)が図9に示される。この図9はノズル部近傍の部分の概略図である。同図中、100はCFRPである。このCFRP100は線材(紐状あるいはワイヤ状の材)である。101はエクストルーダ、102は切断装置、103は案内部材(ガイドチューブ)、104は射出ノズル部、105はヒーターである。射出ノズル部104は金属製である。金属製射出ノズル部104はノズル口104Aを有する。ヒーター105は金属製射出ノズル部104に内蔵されている。勿論、内蔵タイプでなくても良い。ヒーター105の熱は、金属製射出ノズル部104を効率良く伝わる。この結果、ノズル口104A位置のCFRP100は熔融する。そして、ステージ106に供給されて固着する。このようにして、CFRP製の配線が形成される。
【0006】
ところが、前記の装置は次の問題を持っていることが判って来た。すなわち、前記線材100の供給(走行(引っ張り出し:送り出し))動作がスムーズでなかった。
【0007】
本発明者は前記問題点の原因を究明して行った。その結果、前記線材100の樹脂が案内部材103中で熔融し、これが案内部材103の孔内壁面に付着堆積しているからによる事が判った。
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、成形動作がスムーズに行われ、不良品が発生し難い成形技術を提供することである。
【0009】
前記知見に基づいて本発明が達成されるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
ノズル部と、前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と、加熱装置とを具備した成形装置であって、
前記案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する防止機構が構成されてなる
成形装置を提案する。
【0011】
本発明は、前記成形装置であって、前記防止機構は、好ましくは、温度上昇防止機構であり、前記加熱装置からの熱が、前記温度上昇防止機構によって、前記案内部材に伝わり難くなる成形装置を提案する。
【0012】
本発明は、前記成形装置であって、前記温度上昇防止機構は、好ましくは、前記案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する案内部材の冷却機構を具備する成形装置を提案する。
【0013】
本発明は、前記成形装置であって、前記冷却機構は熱伝導率10W/m・k以上の案内部材を具備する成形装置を提案する。
【0014】
本発明は、前記成形装置であって、前記案内部材には、冷却フィンあるいは冷却水供給機構が設けられた冷却機構を具備する成形装置を提案する。
【0015】
本発明は、前記成形装置であって、前記温度上昇防止機構は、好ましくは、前記案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する案内部材の断熱機構を具備する成形装置を提案する。
【0016】
本発明は、前記成形装置であって、前記断熱機構は、好ましくは、前記加熱装置と前記案内部材との間に設けられた断熱部材である成形装置を提案する。
【0017】
本発明は、前記成形装置であって、前記断熱部材が、例えば気体、液体、固体の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである成形装置を提案する。
【0018】
本発明は、前記成形装置であって、前記気体が、例えば空気、窒素、及び二酸化炭素の群の中から選ばれる一種または二種以上である成形装置を提案する。
【0019】
本発明は、前記成形装置であって、前記液体が、例えば水または水溶液である成形装置を提案する。
【0020】
本発明は、前記成形装置であって、前記固体が、例えば非金属材である成形装置を提案する。
【0021】
本発明は、前記成形装置であって、前記断熱機構は、好ましくは、前記加熱装置と前記案内部材との間に設けられた隙間である成形装置を提案する。
【0022】
本発明は、前記成形装置であって、前記隙間が、好ましくは、ノズル口の最大内径寸法の3〜500%である成形装置を提案する。
【0023】
本発明は、前記成形装置であって、前記防止機構は、好ましくは、冷却機構である成形装置を提案する。
【0024】
本発明は、前記成形装置であって、前記冷却機構は、好ましくは、送風機構である成形装置を提案する。
【0025】
本発明は、前記成形装置であって、前記冷却機構は、好ましくは、冷却水供給機構である成形装置を提案する。
【0026】
本発明は、前記成形装置であって、前記防止機構は、好ましくは、放熱機構である成形装置を提案する。
【0027】
本発明は、前記成形装置であって、前記成形材料が繊維含有樹脂である成形装置を提案する。
【0028】
本発明は、前記成形装置であって、前記成形材料が導電性繊維含有樹脂である成形装置を提案する。
【0029】
本発明は、前記成形装置であって、好ましくは、前記ノズル部のノズル口をクリーニングするクリーニング機構を具備する成形装置を提案する。
【0030】
本発明は、
ノズル部と前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と加熱装置とを具備した成形装置による成形方法であって、
前記加熱装置の熱で、前記ノズル部通過の前記成形材料が熔融するよう、かつ、前記案内部材通過中の成形材料が熔融しないよう制御される
成型方法を提案する。
【0031】
本発明は、
前記成形装置による成形方法であって、
加熱装置の熱で、ノズル部通過の成形材料が熔融するよう、かつ、案内部材通過中の成形材料が熔融しないよう制御される
成型方法を提案する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、成形動作がスムーズに行われ、不良品が発生し難い。
【0033】
例えば、導電材含有樹脂製の線材を用いて配線を形成した場合、前記配線の寸法にバラツキが少ない。従って、場所の相違による電気抵抗のバラツキが少なく、高品質な配線が形成される。
【0034】
本発明は簡単に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図2】本発明の第2実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図3】本発明の第3実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図4】本発明の第4実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図5】本発明の第5実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図6】本発明の第6実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図7】本発明の第7実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図8】本発明の第8実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図
図9】本発明外の成形装置のノズル部近傍の概略図
図10】本発明の第1〜8実施形態のノズル部のノズル口をクリーニングするクリーニング機構の概略図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態が説明される。
【0037】
第1の本発明は成形装置である。前記成形装置はノズル部を具備する。このノズル部は、例えば金属製である。非金属製であっても良い。前記成形装置は案内部材を具備する。前記案内部材の一部(例えば、先端側)は前記ノズル部内に配置されている。例えば、前記案内部材の先端側が前記ノズル部のノズル口に向けて配置されている。前記案内部材によって、成形材料が前記ノズル部に案内される。前記ノズル部のノズル口から出た成形材料が目標物(ターゲット)に供給される。前記成形材料はライン(線)状である。ライン状とは長さを持っていると言う意味である。粒状ではない事を意味する。前記成形材料は、例えば導電性樹脂である。非導電性樹脂であっても良い。導電性か非導電性かは、成形対象が何かによって決まる。配線を形成する場合は、前記成形材料は、当然、導電性である。配線を形成しない場合は、前記成形材料は、導電性でなくても良い。勿論、導電性のものであっても良い。前記成形装置は加熱装置(加熱手段)を具備する。前記加熱装置と前記ノズル部とは一体に構成されていても良い。例えば、前記ノズル部が加熱装置(ヒーター)を内蔵したタイプでも良い。前記ノズル部が金属製であった場合、ヒーターが前記ノズル部に内蔵されていると、前記ヒーターの熱が前記ノズル部のノズル口まで効率よく伝達される。この結果、ノズル口を出た成形材料は加熱・熔融する。この熔融した成形材料が目標物(基体:ターゲット)に当接すると冷却され、前記目標物に固着する。前記成形装置は防止機構を具備する。前記防止機構は、前記案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する。すなわち、前記案内部材通過中の成形材料が熔融すると、前記案内部材の内壁面に成形材料が熔着する場合も有る。そうすると、成形材料がスムーズに走行しなくなる。成形材料熔着箇所では、案内部材の孔の内径が小さくなる。そうすると、成形材料の供給量も少なくなる。配線を成形する場合にあっては、配線の幅(厚さ)が小さくなり、電気抵抗が大きくなる。
【0038】
前記防止機構は、例えば温度上昇防止機構である。前記加熱装置からの熱が、前記温度上昇防止機構によって、前記案内部材に伝わり難くなる。
【0039】
前記防止機構(前記温度上昇防止機構)は、前記案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する案内部材の冷却機構である。例えば、前記冷却機構は熱伝導率10W/m・k以上の案内部材を具備する成形装置である。例えば、前記案内部材には、送風機構あるいは冷却水供給機構が設けられた冷却機構である。熱伝導率10W/m・k以上の案内部材を具備し、且つ案内部材には、送風機構あるいは冷却水供給機構が設けられることで、案内部材の温度上昇防止効果を高めることができる。案内部材には、熱伝導度の高いものが選ばれる。例えば、プラスチック、金属などが挙げられる。
【0040】
前記防止機構(前記温度上昇防止機構)は、例えば断熱機構である。例えば、前記加熱装置と前記案内部材との間に設けられた断熱部材である。前記断熱部材は、気体、液体、固体の群の中から選ばれる一種または二種以上のものである。前記気体は如何なるものでも良い。すなわち、気体の熱伝導度は金属の熱伝導度に比べて遥かに小さい。例えば、空気、窒素、二酸化炭素である。コスト的には空気が選ばれる。前記加熱装置と前記案内部材との間に気体が存在していると、前記加熱装置からの熱は前記案内部材に伝わり難い。従って、前記案内部材は高い温度(前記案内部材を通過する成形材料が熔融するような温度)にはならない。前記液体も如何なるものでも良い。液体の熱伝導度は金属の熱伝導度に比べて遥かに小さい。例えば、取扱性やコスト面から、水または水溶液が選ばれる。前記固体は非金属材である。熱伝導度が小さな金属がある。例えば、Ag,Cuに比べて、洋銀、マンガニン、ウッド合金は、その熱伝導度は小さい。しかし、これ等の金属は特殊な金属であり、コスト面から採用の可能性は小さい。非金属材は、金属材に比べて、一般的に、熱伝導度が小さい。前記熱伝導度が小さな非金属材としては、例えば金属酸化物(例えば、FeO,Fe,MgO等。勿論、これ等に限られない。)が挙げられる。アスベスト、パラフィン、雲母、アスファルト、セメント、コンクリート、煉瓦、粘土、ガラス、コルク、ゴム、フェルト、絹、フランネル、木材、プラスチック(発泡プラスチックも含まれる。)等も挙げられる。すなわち、前記液体や固体が前記加熱装置と前記案内部材との間に存在していても、前記加熱装置からの熱は前記案内部材に伝わり難い。例えば、金属製ノズル部の一部(所望箇所:前記案内部材と前記加熱装置(ヒーター)との間に位置する箇所)に前記固体や液体を存在させておけば、前記加熱装置からの熱は前記案内部材に伝わり難い。とは言うものの、実施容易性やコストの点から、最も好ましいのは、前記加熱装置と前記案内部材との間に隙間を設けておく事であろう。この隙間には、当然、空気が存在している。この隙間(空気)の存在により、前記加熱装置からの熱は前記案内部材に伝わり難い。前記隙間が小さ過ぎると、熱が前記案内部材に伝わり易い。従って、前記隙間は、好ましくは、ノズル口の最大内径寸法の3%以上である。もっと好ましくは、15%以上である。更に好ましくは、30%以上である。前記隙間が大きいと、装置が大型化する。従って、前記隙間は、好ましくは、500%以下である。もっと好ましくは、200%以下である。更に好ましくは、100%以下である。前記隙間の値(寸法)は最短距離を意味する。この最短距離aが図1,7に図示される。
【0041】
前記防止機構として冷却機構が考えられた。例えば、送風機構である。前記送風機構からの風が前記案内部材に吹き付けられる。その結果、前記案内部材の温度が高くならない。前記案内部材の温度は、例えば室温程度(例えば、50℃以下)に維持される。前記送風機構が設けられた場合は、前記隙間が存在するであろう。この場合、前記隙間は前記寸法より小さくても済むであろう。前記送風機構の代わりに冷却水供給機構でも良い。例えば、前記案内部材の周囲にパイプを配置しておき、水を前記パイプ内に供給する。このようにしても、前記案内部材の温度が高くならない。すなわち、前記案内部材通過中の成形材料の熔融が防止される。
【0042】
前記防止機構として放熱機構が考えられた。前記案内部材に放熱板が設けられていると、前記案内部材が一時的に加熱されても、前記案内部材の温度は直ちに低下する。この結果、前記案内部材通過中の成形材料は熔融しなくなる。
【0043】
前記成形装置は、好ましくは、前記ノズル部のノズル口をクリーニングするクリーニング機構を具備する。
【0044】
前記成形材料は樹脂である。樹脂は如何なる樹脂でも良い。熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂が用いられる。どちらか一方が用いられるのみでも良い。併用されても良い。樹脂は、一種類であっても、二種類以上であっても良い。前記成形材料は線状である。線状は繊維(糸、又はフィラメント)状であっても良い。繊維状の場合は、例えば、所謂、混繊糸(例えば、WO2016/167136A1参照)が挙げられる。混繊糸の場合、WO2016/167136A1に開示の技術を採用できる。前記樹脂は官能基(反応性基:極性基)を持つものが好ましい。官能基(反応性基:極性基)を持たない樹脂を用いることも出来る。
【0045】
熱硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂のみからなる場合と、熱硬化性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱硬化性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱硬化性樹脂のみからなる場合、熱硬化性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱硬化性樹脂が主成分とは、熱硬化性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
【0046】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが例示される。
【0047】
熱可塑性樹脂には、熱可塑性樹脂のみからなる場合と、熱可塑性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱可塑性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱可塑性樹脂のみからなる場合、熱可塑性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱可塑性樹脂が主成分とは、熱可塑性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂などが例示される。
【0049】
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが例示される。
【0050】
前記ポリスチレン樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などが例示される。
【0051】
前記ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)などが例示される。前記ポリアミド系樹脂の一つであるナイロン(以下「PA」と略記することがある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタム、ポリε−カプロラクタムとも称される)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミドXD10(ポリキシリレンセバカミド)等が例示される。
【0052】
前記ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等が例示される。
【0053】
前記(メタ)アクリル樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレートが例示される。
【0054】
前記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば変性ポリフェニレンエーテル等が例示される。
【0055】
前記熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが例示される。
【0056】
前記ポリスルホン樹脂としては、例えば変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが例示される。
【0057】
前記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えばポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂などが例示される。
【0058】
前記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等などが例示される。
【0059】
繊維含有樹脂(繊維強化樹脂)における繊維としては、無機繊維が挙げられる。有機繊維であっても良い。両者の併用であっても良い。前記繊維の繊維長は、30mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが特に好ましい。本発明で使用する連続強化繊維の平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、0.05〜20000mの範囲のものが好ましかった。より好ましくは100〜10000mであった。更に好ましくは1000〜7000mであった。本発明における繊維の長さは、特に述べない限り、重量平均繊維長である。前記繊維の平均繊維径は、好ましくは、3μm以上であった。より好ましくは4μm以上であった。更に好ましくは5μm以上であった。好ましくは50μm以下であった。より好ましくは20μm以下であった。更に好ましくは12μm以下であった。前記平均繊維径は、単糸の直径である。
【0060】
前記無機繊維の例として、例えば炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。これ等に限られない。
【0061】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが例示される。これ等の中から一種または二種以上が適宜用いられる。用いられる炭素繊維は、好ましくは、引張弾性率が100GPa〜1000GPaのものであった。炭素繊維の形態は、特に限定されない。炭素繊維の形態は、連続繊維でも、不連続繊維でもよい。連続繊維としては、例えば炭素繊維を一方向に配置したもの(一方向材)が挙げられる。不連続繊維を用いる場合としては、樹脂中に、例えば炭素繊維が特定の方向に配向するように配置された材料、面内方向にランダムに分散して配置された材料などが挙げられる。炭素繊維は、単糸状のもの、繊維束状のもの、両者の混在物でも良い。炭素繊維は、一般的に、数千〜数万本のフィラメントが集合した繊維束状となっている。炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合に、炭素繊維束をこのまま使用すると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品を得ることが困難になる場合がある。従って、炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合は、炭素繊維束を拡幅したり、又は開繊したりして使用するのが好ましい。
【0062】
前記金属繊維の例として、例えばAl繊維、Au繊維、Ag繊維、Fe繊維、ステンレス繊維などが挙げられる。
【0063】
有機繊維の例として、例えばアラミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維(Zylon(東洋紡社製))などが挙げられる。
【0064】
前記繊維は処理剤で処理されていても良い。前記処理剤としては集束剤が挙げられる。表面処理剤が挙げられる。例えば、特許第4894982号公報に開示の処理剤が挙げられる。前記繊維表面の処理剤と前記樹脂の官能基(反応性基:極性基)とが反応した場合、好都合である。
【0065】
前記処理剤は、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。一種であっても、二種以上が用いられても良い。
【0066】
前記エポキシ樹脂としては、グリシジル化合物(例えば、エポキシアルカン、アルカンジエポキシド、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのポリマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのポリマー、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等)、グリシジルエステル化合物(例えば、安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等)、グリシジルアミン化合物(例えば、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
【0067】
前記ウレタン樹脂としては、例えばポリオール、油脂と多価アルコールとをウムエステル化したポリオール、及びポリイソシアネートとOH基を持つ化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂が挙げられる。
【0068】
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート(例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,8−ジイソシアネートメチルカプロエート等)、脂環族ジイソソシアネート(例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート等)、芳香族ジイソシアネート(例えば、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフテンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソサネート、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等)、ハロゲン化ジイソシアネート(例えば、塩素化ジイソシアネート類、臭素化ジイソシアネート)が挙げられる。前記ポリイソシアネートは、一種でも、二種以上でも良い。
【0069】
前記ポリオールとしては、通常ウレタン樹脂の製造に使用されるポリオールが挙げられる。例えば、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール、フランジメタノール等が挙げられる。前記ポリオールは、一種でも、二種以上でも良い。
【0070】
前記シランカップリング剤としては、例えばトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤は、一種でも、二種以上でも良い。
【0071】
前記水不溶性ポリアミド樹脂は、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加した場合、99質量%以上が溶解しないものである。前記水不溶性ポリアミド樹脂が用いられる場合、水(又は有機溶媒)に、粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂を分散(又は懸濁)させて用いることが好ましかった。このような粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂の分散物(又は懸濁液)に混繊維束を浸漬して用い、乾燥させて混繊糸とすることが出来る。
【0072】
水不溶性ポリアミド樹脂しては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(好ましくは、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド)等が挙げられる。或いは、前記の共重合体が挙げられる。前記ポリアミド樹脂の粉体が、界面活性剤(例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、又はこれらの混合物)によって、乳化分散されたものでも良い。水不溶性ポリアミド樹脂(水不溶性ナイロンエマルジョン)の市販品として、例えばセポルジョンPA(住友精化製)、Michem Emulsion(Michaelman製)が挙げられる。
【0073】
前記水溶性ポリアミド樹脂は、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加した場合、99質量%以上が水に溶解するものである。水溶性ポリアミド樹脂としては、アクリル酸グラフト化N−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂、アミド基を付与したN−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂などの変性ポリアミドが挙げられる。水溶性ポリアミド樹脂の市販品として、例えばAQ−ナイロン(東レ製)、トレジン(ナガセケムテックス製)が挙げられる。
【0074】
前記処理剤の量は、好ましくは、強化繊維(例えば、炭素繊維など)の0.001〜1.5質量%であった。より好ましくは、0.1〜1.2質量%であった。更に好ましくは、0.5〜1.1質量%であった。このような範囲とすることにより、強化繊維の分散度が向上した。
【0075】
処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、処理剤溶液中に前記繊維が浸漬される。これにより、繊維表面に処理剤が付着する。繊維表面に処理剤をエアブローする手法も採用できる。既に表面処理剤(又は処理剤)で処理されている繊維が用いられても良い。表面処理剤(又は処理剤)が付着している市販の繊維を洗浄し、再度、表面処理剤(又は処理剤)を付着させるようにしても良い。
【0076】
長さ30mmを超える繊維の割合は、好ましくは、30体積%以上であった。より好ましくは40体積%以上であった。更に好ましくは45体積%以上であった。或いは、好ましくは30質量%以上であった。より好ましくは42質量%以上であった。更に好ましくは55質量%以上であった。上限値に格別な制約はない。一つの基準として、例えば70体積%が挙げられる。好ましくは、60体積%が挙げられる。或いは、好ましくは、80質量%が挙げられる。
【0077】
前記混繊糸に用いられる好ましい樹脂として熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリエーテルイミド等が挙げられる。ポリアミド樹脂は好ましい樹脂であった。
【0078】
前記熱可塑性樹脂組成物は、エラストマー成分を含んでいても良い。エラストマー成分としては、例えばポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等が挙げられる。好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。ラジカル開始剤の存在下(又は非存在下)で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。これらのエラストマーは、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与する為である。前記エラストマーか用いられる場合、エラストマー成分の配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の5〜25質量%であった。
【0079】
本発明の目的・効果を損なわない範囲で、前記熱可塑性樹脂組成物には、各種の添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等)を加えることが出来る。詳細は、特許第4894982号公報の記載を参酌できる(本願明細書に組み込まれる)。前記熱可塑性樹脂組成物は、フィラーを含んでいても良い。但し、好ましくは、フィラーを含まない。具体的には、熱可塑性樹脂組成物中のフィラーの含有量は、好ましくは、3質量%以下であった。
【0080】
前記樹脂と前記繊維との配合割合は、目的とする製品によって、変動する。一義的には決められ難い。しかし、好ましくは、(前記繊維)/(前記樹脂)が1/99〜90/10(質量比)であった。より好ましくは10/90以上であった。より好ましくは80/20以下であった。
【0081】
第2の本発明は成形方法である。前記成形方法は、ノズル部と前記ノズル部に成形材料を案内する案内部材と加熱装置とを具備した成形装置による成形方法である。例えば、前記成形装置による成形方法である。前記成形方法にあっては、前記加熱装置の熱で、前記ノズル部通過の前記成形材料が熔融するよう加熱(制御)される。例えば、前記ノズル部のノズル口を通過中(特に、通過後)の前記成形材料が熔融するよう加熱(制御)される。かつ、前記加熱装置の熱で、前記案内部材通過中の成形材料が熔融しないよう制御される。
【0082】
以下、本発明が具体的に説明される。下記実施例は本発明の一実施例に過ぎない。本発明は下記実施例に限定されない。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
【0083】
図1は本発明の第1実施形態の成形装置(3Dプリンター)のノズル部近傍の概略図である。
【0084】
図1中、1はCFRPである。このCFRP1は線材である。2はエクストルーダ、3は切断装置、4は案内部材(ガイドチューブ:ガイドパイプ)、5は射出ノズル部、6はヒーターである。射出ノズル部5は金属製である。金属製射出ノズル部5はノズル口5Aを有する。ヒーター6は金属製射出ノズル部5に内蔵されている。勿論、内蔵タイプでなくても良い。ヒーター6の熱は、金属製射出ノズル部5を効率良く伝わる。この結果、ノズル口5A位置のCFRP1は熔融する。そして、ステージ(基体)7に供給されて固着する。このようにして、CFRP製の配線8が形成される。
【0085】
図9の成形装置にあっては、案内部材103と金属製射出ノズル部104とが密着している。すなわち、金属製射出ノズル部104における案内部材103挿入孔の内壁面と案内部材103の外壁面との間に隙間がない。従って、案内部材103自体がヒーター105によって加熱されていた。勿論、ノズル口104Aの箇所も加熱されていた。
【0086】
これに対して、第1実施形態の成形装置(図1の装置)では、案内部材4と金属製射出ノズル部5との間に隙間9が設けられている。両者は密着していない。この隙間9には、当然、空気が存在している。従って、ヒーター6の熱(ヒーター6の発熱温度は、例えば100〜400℃)が金属製射出ノズル部5の表面まで伝わって来ても、前記隙間(空気層)9の存在によって、前記熱は遮断される。すなわち、案内部材4を通過中のCFRP1の樹脂が、ヒーター6の熱によって、熔融することはない。ヒーター6の熱によって、案内部材4を通過中のCFRP1が加熱されることが有っても、その加熱温度は高くない。案内部材4を通過中のCFRP1が熔融しないから、案内部材4の内壁面(孔の内壁面)4AにCFRP1が固着することもない。つまり、案内部材4の孔が詰まることはない。CFRP1は案内部材4の孔内をスムーズに動く。成形動作がスムーズに行われる。不良品が発生し難い。ヒーター6の熱は金属製射出ノズル部5の表面まで効率良く伝わるから、ノズル口5Aに接しているCFRP1は熔融する。
【0087】
前記第1実施形態の成形装置(図1の装置)にあっては、案内部材4の内径(孔径)が1.0mm、外径が1.4mmである。ノズル口5A箇所と案内部材4先端個所との間の距離(最短距離)aは0.2mm、金属製射出ノズル部5における案内部材4挿入孔の内壁面と案内部材4の外壁面との間の距離bは0.3mmである。ノズル口5Aの内径cは2.5mmである。
【0088】
図2は本発明の第2実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、案内部材4に金属製板(放熱板:放熱フィン)10が設けられた。放熱フィンは、機械加工性と熱伝導性の観点から、アルミニウムが好ましい。
本実施形態にあっては、第1実施形態の成形装置の案内部材4に金属製板(放熱板:放熱フィン)10が設けられたに過ぎないから、その他の詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0089】
図3は本発明の第3実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、案内部材4にヒーター(予備加熱装置)11が設けられた。このヒーター11は、案内部材4を通過中のCFRP1を、例えば{(ヒーター6の発熱温度−プリント環境温度)×(3〜50)%+プリント環境温度(ヒーター6の発熱温度が100℃、プリント環境温度が20℃の場合、22.4〜60℃、ヒーター6の発熱温度が400℃、プリント環境温度が20℃の場合、31.4〜210℃))程度に加熱するに過ぎない。案内部材4を通過中のCFRP1が熔融するよりも低い温度に加熱するに過ぎない。従って、案内部材4を通過中のCFRP1が熔融することはない。
本実施形態にあっては、第2実施形態の成形装置の案内部材4にヒーター11が設けられたに過ぎないから、その他の詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0090】
図4は本発明の第4実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、ノズル口5Aが丸味を帯びた形状である。こうすることによって、CFRP1の繊維折れが起き難くなった。
その他の構成は、第3実施形態の成形装置と同様であるから、詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0091】
図5は本発明の第5実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、案内部材4とヒーター6との間に断熱材(非金属材)12が設けられた。断熱材12は、射出ノズル部5の案内部材4挿入孔内壁面に貼り付けられている。これによって、ヒーター6の熱が案内部材4に伝わり難くなる。断熱材12は、案内部材4の外壁面に貼り付けられたものでも良い。断熱材12は案内部材挿入孔に配置されたのみでも良い。
その他の構成は、第1実施形態の成形装置と同様であるから、詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0092】
図6は本発明の第6実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、送風機構(図示せず)が設けられたに過ぎない。前記送風機構から送風された風(冷却風:矢印で図示)によって、案内部材4の温度上昇が抑制(防止)される。すなわち、案内部材4の温度は高くならない。従って、案内部材4を通過中のCFRP1が熔融することはない。
その他の構成は、第2実施形態の成形装置と同様であるから、詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0093】
図7は本発明の第7実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
本実施形態にあっては、第1実施形態の成形装置において、案内部材4がノズル口5A近傍箇所まで延びた例である。尚、ノズル口5A箇所と案内部材4外壁面との間の距離(最短距離)aは0.1mm、ノズル口5Aの内径cは2.5mmである。
その他の構成は、第1実施形態の成形装置と同様であるから、詳細な説明は省略される。同一部分には同一符号が付されている。
【0094】
図8は本発明の第8実施形態の成形装置のノズル部近傍の概略図である。
前記実施形態にあっては、案内部材4やノズル口5Aがステージ(基体)7に対して垂直方向に在った。これに対して、本実施形態にあっては、案内部材4やノズル口5Aがステージ(基体)7に対して傾いているに過ぎないので、詳細な説明は省略される。尚、同一部分には同一符号が付されている。
【0095】
図10は本発明の第1〜8実施形態の成形装置のノズル部のノズル口をクリーニングするクリーニング機構の概略図である。
前記実施形態の装置が長時間に亘って連続操業されたとする。ノズル部5でCFRP1が熔融する為、熔融した樹脂や繊維がノズル部5のノズル口5Aに付着堆積する場合が有る。このような時、研磨機構(研磨装置)20をノズル口5Aに移動させる。ノズル口5Aに対向位置した研磨装置20がノズル口5Aをクリーニングする。このクリーニング作業に際して、案内部材4と射出ノズル部5との間に空隙が存在していると、クリーニング作業が容易に行える。又、綺麗にクリーニングが行われる。第6実施形態の如く、送風が行われていると、クリーニングが綺麗に行われる。
【符号の説明】
【0096】
1 CFRP
2 エクストルーダ
3 切断装置
4 案内部材
5 金属製射出ノズル部
5A ノズル口
6 ヒーター(加熱装置)
8 配線
9 隙間(空気層:断熱層)
10 金属製板(放熱板:放熱フィン)
11 ヒーター(予備加熱装置)
12 断熱材

【要約】      (修正有)
【課題】成形動作がスムーズに行われ、不良品が発生し難い成形装置及び成形方法の提供。
【解決手段】ノズル部5と、ノズル部に成形材料を案内する案内部材4と、加熱装置6とを具備した成形装置であって、案内部材通過中の成形材料の熔融を防止する防止機構を具備する。防止機構は温度上昇防止機構であり、加熱装置からの熱が、温度上昇防止機構によって、案内部材に伝わり難くなる成形装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10