(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は基板上に外付けフィルムを貼付した一例であり、基板と空気層の界面での光の全反射を抑制し、光取出し効率を向上させることが可能となる。しかしながら、光を取出す際に光散乱性のフィルム表面と、アルミや銀等の陰極部での再帰反射を利用し、光を外部に取出すために、光散乱性のフィルムによる外部取出し効率が上昇する半面、再帰反射の際の透明陽極部及び発光素子部、陰極での光の吸収があり、光がロスするという問題がある。また、先にも述べた通り、外部取出し効率は有機層と基板の屈折率差を考慮しておらず、その点において外部取出し効率は十分とは言えない。
【0005】
特許文献2は有機層と基板の屈折率差を緩和するために、母型を使用し凹凸を設ける方法である。しかしながら、特許文献1と同様に、再帰反射の際の透明陽極部及び発光素子部、陰極での光の吸収があり、光がロスするという問題がある。また、このように有機層にまで凹凸形状が及ぶと、陽極陰極間のリークあるいはショートが発生することが多くなり、生産性の無いものとなってしまう欠点がある。
【0006】
ディスプレイや照明用途での有機EL素子は、発光した光を外部に放出する必要があるため電極を透明にする必要がある。この透明電極は一般的にITO等を用いることが多く、抵抗値が通常のAlやAgと比較して高いことが一般的である。抵抗値が高いため、発光面積が大きくなると外部から供給した電力が電圧降下してしまう。それにより、発光面内で電力供給部の近辺は明るく、電力供給部から遠くなるにつれて暗くなるといった輝度ムラが発生するという課題がある。この場合、課題の回避策として、Al等の抵抗値の低い補助電極を用いることが一般的であるが、補助電極を用いた場合、その部分が発光しないか、発光しても隠蔽されてしまうため、発光面積が減るという問題がある。
【0007】
一般的に、有機EL素子は、透光性基板及び高屈折率層を有するEL素子用前面板と、陽極及び陰極を有する発光部とを積層して構成される。前述の有機EL素子に関する問題は、EL素子用前面板についても同様に生じている。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、効率良く光を取出すとともに低抵抗化した(抵抗値を低くした)EL素子用前面板、及びこのEL素子用前面板を備える照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のEL素子用前面板は、透光性基板と、前記透光性基板の一方の面に全面にわたり積層された高屈折率層と、導電性及び光反射性を有し、前記高屈折率層の前記透光性基板とは反対側の反対面の一部に沿って積層され
、前記高屈折率層側の表面の算術平均粗さが500μmより大きい電気伝導光反射層と、を備えることを特徴としている。
【0010】
また、上記のEL素子用前面板において、前記高屈折率層に、光散乱性を有する微粒子が含まれ
、前記高屈折率層への前記微粒子の添加量は40w%以下であることがより好ましい。
また、上記のEL素子用前面板において、前記透光性基板の前記高屈折率層とは反対側の面に微細凹凸形状を設け、
前記微細凹凸形状は、外径が0.1μm〜500μm程度のマイクロレンズ形状であることがより好ましい。
また、
前記透光性基板の厚さは、0.3mm〜3mmであり、前記高屈折率層の厚さは、0.5μm〜100μmであることがより好ましい。
【0011】
また、本発明の照明装置は、上記に記載のEL素子用前面板と、前記高屈折率層の前記反対面であって前記電気伝導光反射層が積層されていない部分、及び前記電気伝導光反射層の前記高屈折率層とは反対側に積層された透明陽極部と、前記透明陽極部の前記電気伝導光反射層とは反対側に積層された発光素子部と、前記発光素子部の前記透明陽極部とは反対側に積層された陰極部と、を備え、前記電気伝導光反射層が前記透明陽極部の少なくとも一部と同じ層に位置する。
【0012】
また、上記の照明装置において、前記透明陽極部と前記発光素子部との間であって、前記電気伝導光反射層と前記透光性基板の厚さ方向に重なる範囲に、電気絶縁層を備えることがより好ましい。
また、本発明の他の照明装置は、上記に記載のEL素子用前面板と、前記高屈折率層の前記反対面であって前記電気伝導光反射層が積層されていない部分、及び前記電気伝導光反射層の前記高屈折率層とは反対側に積層された透明陰極部と、前記透明陰極部の前記電気伝導光反射層とは反対側に積層された発光素子部と、前記発光素子部の前記透明陰極部とは反対側に積層された陽極部と、を備え
、前記電気伝導光反射層が前記透明陰極部の少なくとも一部と同じ層に位置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のEL素子用前面板及び照明装置によれば効率良く光を取出すとともに低抵抗化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る照明装置が有機EL素子である場合の一実施形態を、
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の照明装置1は、透光性基板11と、透光性基板11の一方の面11aに積層された高屈折率層12と、高屈折率層12の透光性基板11とは反対側の反対面12aの一部に積層された電気伝導光反射層13と、高屈折率層12の反対面12aであって電気伝導光反射層13が積層されていない部分に積層された透明陽極部14と、透明陽極部14の電気伝導光反射層13とは反対側に積層された発光素子部15と、発光素子部15の透明陽極部14とは反対側に積層された陰極部16とを備えている。
なお、透光性基板11、高屈折率層12及び電気伝導光反射層13で、本発明のEL素子用前面板1Aを構成する。
【0016】
透光性基板11は、ガラスあるいはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のプラスチック材質でシート状に形成されている。透光性基板11の厚さは、例えば0.3〜3mm程度である。一般的に、透光性基板11が薄ければ曲げることが可能となり、フレキシブル用途に用いられる。また、透光性基板11が厚い場合には、剛性が必要とされる用途に用いることが可能となる。
【0017】
高屈折率層12は、例えばアクリル樹脂やウレタン樹脂、それ以外にはシルセスキオキサン等の有機物質と無機物質とのハイブリッド材料を用いることができる。
高屈折率層12の厚さは、0.5μm(マイクロメートル)〜100μmの範囲であることが好ましい。高屈折率層12の中に後述する光散乱性を有する微粒子を入れた場合に、この微粒子の粒径を高屈折率層12の厚さよりも小さくする必要がある。高屈折率層12の厚さが0.5μmよりも薄いと、微粒子の粒径が小さすぎて光の散乱性が弱まり、散乱材として機能しないため、好ましくない。
また、高屈折率層12の厚さが100μmを超える場合には、高屈折率層12の材料に含まれる水分量が大きすぎて発光素子部15にダメージを与えたり、後述する光散乱性を有する微粒子を入れた場合の表面粗さが大きくなりリークの原因となる。さらに、高屈折率層12が散乱層として厚すぎるため、光の透過性が弱くなり好ましくない。
高屈折率層12は、発光素子部15と同等の屈折率かあるいはそれ以上の屈折率とすることが好ましい。高屈折率層12の屈折率は、1.7以上であることが望ましい。
高屈折率層12は、透光性基板11の一方の面11aに全面にわたり積層されている。
【0018】
電気伝導光反射層13は、Al(アルミニウム)やAg(銀)等で形成され、電気を効率良く伝導させる導電性、及び光を反射させる光反射性を有する層である。電気伝導光反射層13は、高屈折率層12に蒸着でつけることもでき、その場合、厚さが数10nm(ナノメートル)以上あれば光を反射させることが可能となる。電気伝導光反射層13は、側面視で(透光性基板11の厚さ方向Dに直交する方向に見たときに)矩形状に形成されている。
透明陽極部14は、電気伝導光反射層13の高屈折率層12とは反対側、及び、前述の高屈折率層12の反対面12aにおける電気伝導光反射層13が積層されていない部分に積層されている。透明陽極部14は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)等の透明な材料で形成することができる。
【0019】
なお、厚さ方向Dに平行に見たときに、電気伝導光反射層13が積層された範囲が後述する光L2を反射する導電反射部R1となり、電気伝導光反射層13が積層されていない範囲が開口部R2となる。
図2に示すように、各開口部R2は矩形状に形成され、複数の開口部R2は格子状に配列されている。電気伝導光反射層13の各開口部R2をこのように構成することで、開口部R2の1つ1つを目立たなくし、複数の開口部R2全体で面発光しているのと同等に見せることができる。
透明陽極部14は、高屈折率層12の反対面12a側に全面にわたり積層されている。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すように透明陽極部14と発光素子部15との間に電気絶縁層17が積層されている。電気絶縁層17は、透明陽極部14の発光素子部15側の面の一部に、電気伝導光反射層13と厚さ方向Dに重なる範囲に少なくとも形成されている。言い換えれば、電気絶縁層17は、導電反射部R1と厚さ方向Dに重なる範囲に少なくとも形成されている。
電気絶縁層17は光を伝導させない遮光性の層であり、アクリル樹脂やウレタン樹脂等の多くのプラスチック材料、無機材料で形成することができる。電気を伝導させない(絶縁性を有する)ために、電気絶縁層17の厚さは、1nm〜数100μm程度が好ましい。電気絶縁層17は、側面視で矩形状に形成されている。
電気絶縁層17が積層されている場合には、電気絶縁層17を障壁としてインクジェット印刷法により発光素子部15を形成することで、発光素子部15を形成する材料の無駄を抑えて照明装置1を製造することができる。
【0021】
発光素子部15には、電極から注入された電荷を移動させ、正孔と電子が再結合する材料を用いることが好ましい。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)や、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)3(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)等を用いることができる。発光素子部15の厚さは構成によって異なるが、数100nm以下であることが好ましい。
発光素子部15は、透明陽極部14の電気伝導光反射層13とは反対側に全面にわたり積層されている。
【0022】
陰極部16は、電気伝導光反射層13と同様にAlやAg等で形成され、導電性及び光反射性を有する層である。陰極部16の厚さは、数nm〜500nmであることが好ましい。
陰極部16は、発光素子部15の電気絶縁層17とは反対側に全面にわたり積層されている。
【0023】
このように構成された本照明装置1の電気伝導光反射層13は、蒸着やエッチングなどの公知の手法により所定のパターン形状に形成することができる。
透光性基板11、高屈折率層12、電気伝導光反射層13、透明陽極部14等は、従来の有機EL素子と同様に公知のロールtoロール方式にて製造することができる。
【0024】
このように構成され製造される本照明装置1では、
図3に示すように、通常、発光素子部15で発した光L1は、透光性基板11から外部へ放射される際に、透光性基板11と空気Aとの屈折率の差により、界面で全反射を起こして光L2のように反射される。このままでは、外部に光L2が出られず、光のロスが発生する。
しかし、本照明装置1では、反射された光L2は電気伝導光反射層13の高屈折率層12側の表面13aに当たって反射されて光L3となる。反射されることにより、光L3の向きが光L1の向きに対して変化して、元々全反射しロスするはずであった光L2を透光性基板11より外部へ取出すことが可能となる。
光L1の向きに対して光L3の向きを変えるために、電気伝導光反射層13の表面13aは、平坦ではなくある程度粗いことが好ましい。表面13aの算術平均粗さ(Ra)は、例えば100μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0025】
電気伝導光反射層13の表面13aがさらに粗い(算術平均粗さが大きい)場合には、
図4に示すように、光L2が電気伝導光反射層13の表面13aで散乱して散乱光L4となる。この場合、高屈折率層12に微粒子を添加し散乱効果を持たせることと同等の性能を与えることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のEL素子用前面板1A及び照明装置1によれば、電気伝導光反射層13を備えているため、発光素子部15で発した光が透光性基板11と空気Aとの界面で反射されても、その光を電気伝導光反射層13で再び反射することができる。これにより、照明装置1の光取出し効率を向上させ、効率良く光を取出すことができる。
電気伝導光反射層13は高屈折率層12の反対面12aに沿って配置されているため、電気伝導光反射層13自体は光っていないにもかかわらず、照明装置1を透光性基板11側から見た際に、あたかも電気伝導光反射層13が光っているように見せることができる。
照明装置1は、もともと電気伝導光反射層13によって、透光性基板11と空気Aとの界面での全反射が少ない構造となっている。しかし、全反射して素子側(発光素子部15側)へ戻る光についても、照明装置1の陰極部16側で反射させるのではなく、電気伝導光反射層13にてなるべく反射させる構造となっているため、全反射によって戻った光が発光素子部15を通過して吸収される確率が低い。
【0027】
透明陽極部14を薄膜化すると、透明陽極部14の抵抗値が上昇するために、発光面の面内における発光分布が悪化する原因となる。透明陽極部14の抵抗値を下げるためは透明陽極部14を厚くするのが一番簡単な方法であるが、光の透過率が下がる(透明陽極部14を光が透過しにくくなる)ため、トレードオフの関係となる。
また、透明陽極部14の低抵抗化のために、200℃程度もしくはそれ以上でのアニールによって、透明陽極部14を結晶化して抵抗を下げる方法が一般的に用いられる。その場合、加熱対象の基板がその温度に耐えられる必要があり、基板の材料に有機材料が用いられている場合には、高温のため材料が劣化する可能性がある。
これに対して、本照明装置1の構成では、光の反射材料として使用している電気伝導光反射層13が透明陽極部14の低抵抗化にも寄与しているため、透明陽極部14を高温でアニールする必要はなくなる。よって、透明陽極部14には、ITO等の一般的な材料や、PEdot等の導電性高分子のような比較的高抵抗の材料も使用可能となる。
【0028】
このように、電気伝導光反射層13は光の反射だけでなく、透明陽極部14の抵抗値を下げる役割もしており、電気伝導光反射層13があることによって透明陽極部14の厚さを極力薄くし、光の吸収を減らすことが可能となる。
透明陽極部14の低抵抗化のために、例えば特開2003−316291号公報に記載されているように補助配線を設ける方法もある。しかしながら、一般的な構成だと、補助配線を設けた箇所は発光しないため、照明装置の発光面内に発光部と非発光部ができることとなり、製品のデザインを損ねる原因となる。
【0029】
電気伝導光反射層13のある部位の透明陽極部14に密着するように、すなわち、厚さ方向Dに見たときに電気伝導光反射層13に重なるように透明陽極部14を介して電気絶縁層17が配置されている。これにより、電気伝導光反射層13でのロスとなる発光が無くなり、発光素子部15のパターニングの必要が無く、製造工程を簡単化することができる。
高屈折率層12の屈折率が1.7以上であることで、光取出し効率を高めることができる。
高屈折率層12を発光素子部15側へ向けている、すなわち、高屈折率層12を透光性基板11よりも発光素子部15側に設けている。これにより、透光性基板11の表面(高屈折率層12とは反対側の面)を平坦にすることができ、この表面の清掃を簡単に行うことができるとともに、照明装置1のデザイン性を向上させることができる。
【0030】
また、透光性基板11、高屈折率層12、電気伝導光反射層13、透明陽極部14等は、前述のようにロールtoロール方式にて製造することが可能であるため、有機材料の製膜についても同様にロールtoロール方式で作製することが可能となる。したがって、従来のガラス基板へ素子構造部を作製し、光散乱性のフィルムをプラスチック基材上に成型し、その後粘着材等を介してガラス基板上へ光散乱性のフィルムをプ密着させるといった製造工程と比較して、工程を簡単化し、製造のリードタイムを上げ、コストダウンに有利となる可能性がある。
【0031】
厚さ方向Dに見たときの発光素子部15の全体の面積に対する発光面積の割合を開口率とする。この場合、開口率が大きいと面内輝度は大きくなるものの、発光効率は低下し、逆に開口率が小さいと発光効率は高まるものの、面内輝度は低下する。よって、面内輝度と発光効率のどちらを重視するかで、開口率を決める必要がある。
開口率を小さくした場合、電気伝導光反射層13の割合が必然的に増えることになるが、これにより、発光素子部15で発生した熱を伝達し、照明装置1全体としての温度上昇を緩和する効果がある。これにより、発光素子部15の寿命を高める(長くする)ことが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、高屈折率層12が、光散乱性を有する微粒子(不図示)を含んで(内包して)いてもよい。このように構成することによって、外部から(透光性基板11側から)見た際に、電気伝導光反射層13をより遮蔽する効果があり、さらに透光性基板11から光を取出す効果も向上する。前述の微粒子には、TiO
2、SiO
2、Al
2O
3、ZrO、CaCO
3、BaSO
4、Mg
3Si
4O
10(OH)
2等を用いることができ、微粒子の粒径も数十nmから数百μm等、さまざまな粒径のものとすることができる。なお、微粒子の材質、粒径はこれに限るものではない。
この場合の、高屈折率層12への微粒子の添加量は40w%以下であることが好ましい。添加量が40w%を超えると、微粒子が凝集し、好ましくない。
高屈折率層12に微粒子を入れない場合には、前述のように電気伝導光反射層13と高屈折率層12との界面に凹凸を形成することにより散乱効果を持たせる方法がある。
高屈折率層12が微粒子を含むことで、高屈折率層12内で光が散乱して光が均一化する。これにより、面光源としての光ムラを低減させ、かつ光の角度分布を均一化することができる。
【0033】
透光性基板11の高屈折率層12とは反対側の面に、図示しない微細凹凸形状を設けてもよい。微細凹凸形状としては、外径が0.1μm〜500μm程度のマイクロレンズ形状(例えば、半球状や楕円球状)のものや、四角錐形状、微細な粒子を散りばめた形状のもの等がある。いずれの形状の微細凹凸形状も、光の散乱する向きを変え、照明装置1中で発光した光を透光性基板11より外側に取出すことを目的とする。
透光性基板11に微細凹凸形状を設けることで、光の射出角度及び光取出し効率のコントロールをすることができる。
【0034】
透光性基板11に、光散乱性を有する微粒子が含まれるように構成してもよい。この微粒子としては、高屈折率層12に用いられる微粒子と同様に構成されたものを用いることができる。
透光性基板11が微粒子を含むことで、光の配光特性を制御することができる。
【0035】
本実施形態では、電気伝導光反射層13及び電気絶縁層17は、側面視で矩形状に形成されているとした。しかし、
図5に示すように、電気伝導光反射層13及び電気絶縁層17は、透光性基板11に向かうにしたがって幅が狭くなるテーパー状に形成されてもよい。
各開口部R2の形状、及び複数の開口部R2の配置は、以下のように変形させてもよい。例えば、
図6に示す例では、各開口部R2は矩形状に形成され、複数の開口部R2はハニカム状(千鳥状)に配置されている。電気伝導光反射層13の各開口部R2をこのように構成することで、隣合う開口部R2同士の間隔を等間隔にできるため、光取出し効率を向上させることができる。
また、
図7に示す例では、各開口部R2は円形状に形成され、複数の開口部R2はハニカム状に配置されている。電気伝導光反射層13の各開口部R2をこのように構成することで、隣合う開口部R2同士の間隔をより等間隔にできるため、光取出し効率をさらに向上させることができる。
【0036】
図8に示す照明装置2のように、照明装置1の各構成に加えて、透光性基板11の表面に、半円柱状のレンズ21をアライメントして配置してもよい。このように構成することで、光の利用効率を高めることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除なども含まれる。
例えば、照明装置1が電気絶縁層17を備えるとしたが、照明装置1に電気絶縁層17は備えられなくてもよい。このように構成されていても、透明陽極部14と陰極部16との間に電圧を印可することで発光素子部15で発光することができるからである。
【0038】
また、前記実施形態では、
図9に示す照明装置3のように、照明装置1の各構成に対して、発光素子部15を厚さ方向Dに挟む陽極と陰極とが反対となるように構成してもよい。具体的には、照明装置3は、照明装置1の透明陽極部14、陰極部16に代えて透明陰極部26、陽極部27を備えている。
透明陰極部26は、前記実施形態の透明陽極部14と同様に、高屈折率層12の反対面12aであって電気伝導光反射層13が積層されていない部分、及び電気伝導光反射層13の高屈折率層12とは反対側に積層されている。透明陰極部26は透明陽極部14と同じ透明な材料で形成することができる。
この例では、発光素子部15は透明陰極部26の電気伝導光反射層13とは反対側に積層されている。
陽極部27は、発光素子部15の透明陰極部26とは反対側に積層されている。陽極部27は陰極部16と同じ材料で形成することができる。
このように構成された照明装置3によっても、前記実施形態の照明装置1と同様の効果を奏することができる。
【0039】
(実施例)
以下では、本発明の実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
照明装置の発光層のピッチ(
図1における、発光素子部15の隣り合う発光部15a間のピッチ。
図1では発光部15aは1つのみ示している)を200μm、高屈折率層の厚さを10μmとした。透明陽極部にはITOを使用し、公知のスパッタリングを用いて150nmの厚さに製膜した。高屈折率層は、厚さ188μmのPETフィルム上に作製し、透湿性対策のためにPETフィルムの高屈折率層とは反対側をガラス面へ透明粘着フィルムにて貼り合せた。
【0041】
図10に示すように、本実施例ではガラス基板32及びPETフィルム33で透光性基板31を構成した。高屈折率層の屈折率を1.7とし、電気伝導光反射層の厚さを3μmとした。高屈折率層へは光散乱性を有する微粒子として、SiO
2で形成され粒径が2.0μmのものを20w%添加した。
電気伝導光反射層としてアルミニウムを使用し、高屈折率層に蒸着した。
素子構造は、透明陽極部であるITO上に、α−npdを70nm、Alq3を60nm、陰極部であるAlを100nm形成した。単純にガラス上に作製したリファレンス(比較例)と比較し、約1.9倍の効率向上を確認した。
【0042】
(実施例2)
透明陽極部であるITO上にα−npdを70nm、Alq3を60nm、陰極部であるAlを100nm形成した。透光性基板の屈折率を1.5〜2.0まで振った際の透光性基板内に入ってくる光の光束をシミュレーションし、グラフにしたものを
図11示す。
グラフは、透光性基板の屈折率が1.5の時を基準とし、透光性基板の屈折率を変えた際の光束の増加率を示している。屈折率が1.7になった際、屈折率が1.6の場合と比較して光束が極端に上昇していることがわかる。このことから、透光性基板内から取出される光束の量は、透光性基板の屈折率が1.7以上が良いことがわかる。