(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511719
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】真空断熱材の外装材およびそれを用いた断熱容器
(51)【国際特許分類】
F16L 59/06 20060101AFI20190425BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20190425BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20190425BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20190425BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20190425BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20190425BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
F16L59/06
F25D23/06 V
B32B27/32
B32B27/00 H
B32B15/09 A
B65D65/40 A
B65D81/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-30441(P2014-30441)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155715(P2015-155715A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋子
(72)【発明者】
【氏名】小河原 賢次
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−047211(JP,A)
【文献】
特開2013−103343(JP,A)
【文献】
特開2006−084077(JP,A)
【文献】
特開平08−108506(JP,A)
【文献】
特開2006−017209(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/161303(WO,A1)
【文献】
特開2015−003427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/06−59/065
B32B 15/09
B32B 27/00
B32B 27/32
B65D 65/40
B65D 81/38
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から順に、少なくとも基材層、バリヤ層、シーラント層からなる真空断熱材の外装材において、
前記基材層が延伸ポリプロピレンフィルムと延伸ナイロンフィルムとを最外層が延伸ポリプロピレンフィルムとなるよう配したものであり、
前記バリヤ層がアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムとアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムとを蒸着面が対向するよう配したものであることを特徴とする真空断熱材の外装材。
【請求項2】
シーラント層に密度が0.935g/cm3以下の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材の外装材。
【請求項3】
請求項1または2の外装材による真空断熱材を用いたことを特徴とする断熱容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材の外装材およびそれを用いた断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、芯材を外装材で包み、芯材の周囲を真空状態にし、気体による熱伝導率を限りなくゼロに近づけることにより、断熱性能を高めた断熱材である。
【0003】
外装材は内部の真空度を保つため、ガスバリヤ性が要求される。
しかしながら従来の真空断熱材は、ガスバリヤ性フィルムとしてアルミ箔を使用しているため、真空断熱材の外装材を伝わる熱伝導、いわゆるヒートブリッジ現象によって真空断熱材の断熱効果が小さくなる。
そこでヒートブリッジ現象を解決するために、ガスバリヤ性フィルムを金属箔ではなく、蒸着膜を有するガスバリヤ性フィルムに変更した真空断熱材の外装材が報告されている。例えば、特許文献1によれば、実施の形態1としてナイロンフィルム、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム2枚、低密度ポリエチレンを順に積層した外装材が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の外装材では、冷却ボックス等に真空断熱材を適用するにあたり、輸送時の振動などによる衝撃によって表面にピンホールが発生しやすく、真空による断熱機能が損なわれる場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術による真空断熱材の問題点を解決しようとするものであり、耐突き刺し性に優れる真空断熱材の外装材を提供することにより上記問題点を解決し、振動などによる衝撃によるピンホールが発生しにくい真空断熱材の外装材およびそれを用いた断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、外側から順に、少なくとも基材層、バリヤ層、シーラント層からなる真空断熱材の外装材において、
前記基材層が延伸ポリプロピレンフィルムと延伸ナイロンフィルムとを最外層
が延伸ポリプロピレンフィルム
となるよう配
したものであり、
前記バリヤ層がアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムとアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムとを蒸着面が対向するよう配したものであることを特徴とする真空断熱材の外装材である。
【0010】
また、請求項
2に記載の発明は、シーラント層に密度が0.935g/cm
3以下の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いたことを特徴とする請求項
1に記載の真空断熱材の外装材である。
【0011】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項1
または2の外装材による真空断熱材を用いたことを特徴とする断熱容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空断熱材の外装材は、耐突き刺し性に優れた構成にすることにより、ピンホールの発生を抑制することが可能であるため、長期間に渡って使用しても高い真空状態を損なうことなく断熱性能を維持することが可能となる。
またそれを用いることにより、振動などによる衝撃によるピンホールが発生しにくい断熱容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による真空断熱材の一実施形態の部分断面図である。
【
図2】本発明による真空断熱材の外装材の一実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、
図1および
図2を参照しながら説明を加える。
【0015】
図1は本発明に係る真空断熱材の一実施形態の部分断面図である。
真空断熱材(1)は、芯材(3)を外装材(2)で包み込んで構成されており、2枚の外装材(2)はシール部(4)で接着され、内部は芯材のほかは真空である。
【0016】
図2は本発明による真空断熱材の外装材の一実施形態の部分断面図である。
【0017】
[基材層]
基材層(20)は延伸ポリプロピレンフィルム(10)を用いる。延伸ポリプロピレンフィルム(10)と延伸ナイロンフィルム(11)の2層で構成されるとなおよい。延伸ナイロンフィルムを用いると、真空断熱材の外装材の強靭さが向上する。
【0018】
[バリヤ層]
バリヤ層(21)はアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(12)とアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(13)の2層で構成される。金属箔ではなく、蒸着膜を有するガスバリヤ性フィルムを用いることで、ヒートブリッジ現象が解決できる。蒸着面における蒸着物の隙間や欠陥を補完するために、ガスバリヤ性フィルムの蒸着面が対向するように積層することが望ましいとされている。厚みはそれぞれ9〜25mmが好ましい。
【0019】
[シーラント層]
シーラント層(22)は密度が0.935g/cm
3以下の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムで構成される。厚みは30〜80mmが好ましい。
密度が0.94g/cm
3と高ければ耐屈曲性が悪くなり、好ましくない。
【0020】
本発明の真空断熱材の外装材を構成する各層は接着剤層(15)を介して貼り合わせられており、接着剤にはたとえば2液硬化型ウレタン系接着剤を用いることができる。
積層方法にはドライ・ラミネーションによる方法あるいは押出ラミネーションによる方法などが採用できる。
なお得られた外装材(2)は基材層(20)の側が外側(16)になるようにして用いる。
【実施例】
【0021】
以下本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明の真空断熱材の外装材の耐突き刺し性の評価は次のようにして行った。
【0022】
(突刺し強さ試験)
試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状が半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。
試験片の数は5個とし、その平均値を求めた。
突刺しは基材層側からとシーラント層側の両方向から行い、それぞれの最大応力を測定した。
【0023】
(実施例1)
基材層として厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルムと厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム、バリヤ層として厚さ12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムと厚さ15μmのアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムをこの順にウレタン系接着剤を用いて積層、接着した。
次いで、シーラント層である厚さ50μm、密度0.923g/cm
3の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムと、上記積層体のアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム面とを貼り合わせて、基材層、バリヤ層、シーラント層からなる真空断熱材の外装材を得た。
【0024】
(比較例1)
基材層に延伸ポリプロピレンフィルムを用いない他は実施例1と同様にして外装材を製造した。
【0025】
(比較例2)
比較例1のアルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムに代えて、厚さ7μmのアルミニウム箔を用いた他は比較例1と同様にして外装材を製造した。
【0026】
(比較例3)
比較例2の、密度が0.923g/cm
3の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムに代えて、密度が0.94g/cm
3の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いた他は比較例2と同様にして外装材を製造した。
【0027】
(評価)
上記実施例および比較例で得られた真空断熱材の外装材について、耐突き刺し性を評価した。
なお、基材層側から突き刺した強度を「表→裏」、シーラント層側から突き刺した強度を「裏→表」と表記した。
【0028】
これらの評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
表1に示すように、本発明にかかる実施例1の真空断熱材の外装材の耐突き刺し性は比較例1、2、3の真空断熱材の外装材よりも良好であった。これは最外層に配した延伸ポリプロピレンフィルムの効果によるものである。
【0030】
以上のように本発明によって、耐突き刺し性に優れる真空断熱材の外装材を提供することが可能である。
また本発明による外装材を用いた真空断熱材を用いることにより、振動などによる衝撃に
よるピンホールが発生しにくい断熱容器を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
さらに本発明の真空断熱材の外装材は、建装材など外部から突き刺しの恐れがあり、保冷や保温を必要とするクーラーボックスのほかあらゆる機器や設備に適用することが可能である。その結果、大幅な省エネルギー化や省スペース化にも貢献できる。
【符号の説明】
【0032】
1・・・真空断熱材
2・・・外装材
3・・・芯材
4・・・シール部
10…延伸ポリプロピレンフィルム
11…延伸ナイロンフィルム
12…アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム
13…アルミ蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム
15…接着剤層
16・・・外側