(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511797
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】回転子および永久磁石電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20190425BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
H02K1/27 501C
H02K21/14 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-259179(P2014-259179)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-119808(P2016-119808A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】武田 浩志
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−209163(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102012219349(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の永久磁石と、前記永久磁石の中心軸に沿って配置されたシャフトと、前記永久磁石と前記シャフトの間に配置され夫々を連結する連結部品とを有する回転子であって、
前記永久磁石は内周壁に前記内周壁から前記シャフトに向かって突出する複数の突起部を有し、
前記連結部品は前記複数の突起部をそれぞれ保持する複数の保持穴と、前記複数の保持穴のうち一部または全部の前記保持穴と前記シャフトの間に前記シャフトに沿って貫通する貫通孔とを有し、前記貫通孔は前記保持穴と連通していることを特徴とする回転子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転子と、前記回転子の外周面に所定の間隔をもって対向するように配置される固定子とを備えたことを特徴とする永久磁石電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子およびこの回転子を用いた永久磁石電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石電動機には、回転磁界を発生する固定子の内部に、永久磁石を備える回転子を回転可能に配置したインナーロータ型の電動機があり、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0003】
このような永久磁石電動機は、円筒形状の永久磁石と、永久磁石の中心軸に沿って配置されたシャフトと、永久磁石とシャフトの間に配置された連結部品を有する回転子を備えている。例えば、永久磁石は、磁石粉末を樹脂で固めたプラスチックマグネットであり、連結部品は、永久磁石をシャフトに連結するとともにそれぞれの間に伝わる振動を抑制する樹脂材である。この回転子は、連結部品には、軸方向の端部から軸方向に突出する複数の突起部を有し、複数の突起部を永久磁石に設けられた孔(開口部)に挿入し熱融着しているだけであるため、永久磁石と連結部品の結合が弱く、永久磁石と連結部品との空転を招くおそれがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この空転を防止する対策としては、例えば、永久磁石には、内周壁に内周壁からシャフトに向かって突出する複数の突起部を設け、連結部品には、外周壁に外周壁からシャフトに向かって凹み複数の突起部をそれぞれ嵌合する複数の凹部を設けると良い。しかしながら、連結部品に凹部を設け永久磁石に突起部を設けると、連結部品の量が減って永久磁石の突起部がシャフトに近くなるため、永久磁石の突起部とシャフトの間の機械的な結合が強くなり、例えば、永久磁石(回転子)の振動がシャフトに伝わり易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3895095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、永久磁石と連結部品の結合を強化して空転を防止しつつ、永久磁石とシャフトとの間で振動が伝わり難くすることができる回転子および永久磁石電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の回転子は、円筒形状の永久磁石と、永久磁石の中心軸に沿って配置されたシャフトと、永久磁石とシャフトの間に配置され夫々を連結する連結部品とを有するものであって、永久磁石は内周壁に内周壁からシャフトに向かって突出する複数の突起部を有し、連結部品は複数の突起部をそれぞれ保持する複数の保持穴と、複数の保持穴のうち一部または全部の保持穴とシャフトの間にシャフトに沿って貫通する貫通孔とを有
し、貫通孔は保持穴と連通していることを特徴とする。
また、本発明の永久磁石電動機は、この回転子と、回転子の外周面に所定の間隔をもって対向するように配置される固定子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転子および永久磁石電動機によれば、永久磁石の突起部を連結部品の保持穴で保持することにより、永久磁石と連結部品の結合を強化して空転を防止することができ、かつ、連結部品の保持穴とシャフトの間に貫通孔を有することにより、突起部とシャフトの間の機械的な結合が緩和されるので、永久磁石とシャフトとの間で振動が伝わり難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本発明の回転子の他の実施形態を示し、
図1のA−A断面に相当する断面図である。
【
図5】本発明の回転子の他の実施形態を示し、
図2のB−B断面に相当する断面図である。
【
図6】本発明の回転子を用いた永久磁石電動機を示す断面図である。
【
図7】本発明の回転子を用いた永久磁石電動機を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至
図7は、本実施形態における回転子とこの回転子を用いた永久磁石電動機を説明する図である。永久磁石電動機は、回転磁界を発生する固定子内に、永久磁石を備える回転子を回転可能に配置したインナーロータ型電動機であり、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータとして用いられる。
【0011】
回転子1は、
図1乃至
図3に示すように、円筒形状の永久磁石2と、永久磁石2の中心軸に沿って配置されたシャフト3と、永久磁石2とシャフト3の間に配置された円柱形状の連結部品4を備えている。永久磁石2は、磁石粉末を樹脂で固めることで形成された、いわゆるプラスチックマグネットである。永久磁石2は、内周壁23に内周壁23からシャフト3に向かって突出する4つの突起部21を備えている。4つの突起部21は、角柱形状に形成され、内周壁23の軸方向の長さL2の中間の位置で、周方向に等間隔に配置されている。このように構成された永久磁石2は、連結部品4によって4つの突起部21が覆われるとともに連結部品4の外周壁46に固定されている。
【0012】
連結部品4は、永久磁石2とシャフト3を連結するとともに、永久磁石2とシャフト3の間に伝わる振動を抑制するための部品であり、永久磁石2よりも剛性の低いPBT(ポリブチレンテレフタラート)やPET(ポリエチレンテレフタラート)などの樹脂で形成されている。連結部品4は外周壁46と内周部42を備えている。外周壁46には外周壁46からシャフト3に向かって凹み永久磁石2の4つの突起部21をそれぞれ保持する4つの保持穴41が設けられ、内周部42はシャフト3の周囲に固定されている。4つの保持穴41は、突起部21の角柱形状に一致させた形状とし、外周壁46の軸方向の長さL1の中間の位置に配置されている。
【0013】
さらに、連結部品4は、4つの保持穴41の全部の保持穴41とシャフト3の間にシャフト3の軸方向に沿って貫通する4つの貫通孔43を備えている。貫通孔43は、角孔形状に形成され、突起部21と内周部42(シャフト3)の間の機械的な結合を緩和し、永久磁石2とシャフト3の間に伝わる振動を抑制するために形成されている。この貫通孔43は、シャフト3の中心軸O(永久磁石2の中心軸)と、保持穴41の周方向に延びる壁411の周方向の中間点aとを結ぶ線分o−a上に、貫通孔43の周方向に延びる壁431の周方向の中間点bが一致する位置に形成されている。さらに、連結部品4は、その上端面44と下端面45が永久磁石2よりも軸方向に低い位置にあり、連結部品4の軸方向の長さL1は、保持穴41より上下方向に対称に、永久磁石2の軸方向の長さL2よりも短く形成され、回転子1全体の強度を確保することができる長さに適宜設定される。
【0014】
なお、本実施形態による回転子1では、突起部21は角柱形状に限らず、円柱形状など他の形状に形成してもよく、保持穴41もこの形状に合わせた形状にする。また、突起部21と保持穴41と貫通孔43の数や大きさは、後述する永久磁石電動機Mに負荷として送風ファン(図示省略)を接続した場合、永久磁石電動機Mと負荷との間の振動抑制効果が得られるようにする必要がある。具体的には、突起部21と保持穴41と貫通孔43の数や大きさは、電磁力やコギングトルクに起因する永久磁石2の振動がシャフト3を通じて送風ファンに伝わり難くしつつ、永久磁石2と連結部品4との空転に対する強度を確保することができるように、振動抑制と強度のバランスを考慮して適宜設定される。例えば、突起部21と保持穴41と貫通孔43の数は4つに限らず、6つの突起部21と保持穴41と貫通孔43を周方向に等間隔に配置してもよい。また、貫通孔43は、全部の保持穴41とシャフト3の間に配置しなくてもよく、例えば、周方向に対称になっていれば、6つの保持穴41とシャフト3の間に1つ置きに配置してもよい。さらに、貫通孔43は、突起部21と内周部42の間の機械的な結合を緩和することができれば、
図4および
図5に示すように、突起部21の先端面が内周部42に向かって露出するように保持穴41と連通してもよい。なお、突起部21と保持穴41と貫通孔43の数や大きさは、前述の永久磁石2から送風ファンへの振動抑制を考慮した設定に限らず、送風ファンから永久磁石2への振動抑制を考慮した設定にしてもよい。
【0015】
以上のように構成された回転子1は、連結部品4の貫通孔43を形成可能な上下一対の金型内に、予め成形した永久磁石2とシャフト3を配置した後、永久磁石2とシャフト3の間に連結部品4となる樹脂を注入し、永久磁石2とシャフト3を樹脂で一体成形することにより成形される。このとき、連結部品4の保持穴41と内周部42と貫通孔43が形成される。そして、永久磁石2は回転子1が形成された後に着磁される。
【0016】
永久磁石電動機Mは、
図6および
図7に示すように、上述の回転子1と固定子5とを備えている。固定子5は、固定子鉄心51とインシュレータ52と固定子巻線53とを備えている。固定子鉄心51は、薄い鋼板を複数積層して円筒状に形成され、環状のバックヨーク部511とバックヨーク部511から内径側に延びる複数のティース部512とを備えている。この固定子鉄心51には、インシュレータ52を一体形成し、インシュレータ52を介してティース部512に固定子巻線53が巻回されている。
【0017】
このように構成された固定子5は、固定子巻線53が巻回された固定子鉄心51をティース部512の先端面5121(固定子鉄心51の内周面)を除いてモールド樹脂でモールド成形して円筒状の外郭54を形成し、ティース部512の先端面5121が回転子1の外周面(永久磁石2の外周面22)に所定の間隔(いわゆるエアギャップ)をもって対向するように配置されている。永久磁石電動機Mは、例えば、回転子1のシャフト3に送風ファン(図示省略)が連結されて空気調和機に搭載されている。
【0018】
以上説明してきた実施形態による回転子1とこの回転子1を用いた永久磁石電動機Mによれば、永久磁石2は、内周壁23に内周壁23からシャフト3に向かって突出する複数の突起部21を有し、連結部品4は、複数の突起部21をそれぞれ保持する複数の保持穴41と、複数の保持穴41のうち一部または全部の保持穴41とシャフト3の間にシャフト3に沿って貫通する貫通孔43とを有する。このため、永久磁石2の突起部21を連結部品4の保持穴41で保持することにより、永久磁石2と連結部品4の結合を強化して空転を防止することができる。また、連結部品4には、保持穴41とシャフト3の間に貫通孔43を有することにより、永久磁石2の突起部21とシャフト3の間の機械的な結合が緩和されるので、背景技術の欄に示すように、連結部品4の量が減って永久磁石2の突起部21がシャフト3に近くても、連結部品4の剛性が低くなり、永久磁石2とシャフト3(送風ファン)との間で振動が伝わり難くすることができる。
【0019】
また、貫通孔43は、保持穴41と連通していることにより、突起部21の先端面が連結部品4に接触しないため、永久磁石2の突起部21とシャフト3の間の機械的な結合が更に緩和される。さらに、連結部品4は、永久磁石2よりも軸方向に短く形成していることにより、永久磁石2と送風ファンとの間で軸方向の振動が更に伝わり難くすることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 回転子
2 永久磁石
21 突起部
22 外周面
23 内周壁
3 シャフト
4 連結部品
41 保持穴
411 壁
42 内周部
43 貫通孔
431 壁
44 上端面
45 下端面
46 外周壁
5 固定子
51 固定子鉄心
511 バックヨーク部
512 ティース部
5121 先端面
52 インシュレータ
53 固定子巻線
54 外郭
M 永久磁石電動機
L1 連結部品4の軸方向の長さ
L2 永久磁石2の軸方向の長さ
a、b 中間点
o 中心軸