特許第6511822号(P6511822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511822
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ラッチ装置及び電気錠システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/06 20060101AFI20190425BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20190425BHJP
   E05B 63/20 20060101ALI20190425BHJP
   E05B 63/16 20060101ALI20190425BHJP
   E05B 15/10 20060101ALI20190425BHJP
   E05B 1/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   E05B65/06 D
   E05B47/00 G
   E05B63/20
   E05B63/16
   E05B15/10 C
   E05B1/00 311H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-7797(P2015-7797)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132911(P2016-132911A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】原 和基
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−233706(JP,A)
【文献】 特開2010−007236(JP,A)
【文献】 特開平04−231565(JP,A)
【文献】 特開2005−048418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/06
E05B 15/10
E05B 59/00
E05B 63/14
E05B 63/16
E05B 63/18
E05B 63/20
E05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の手前側の面に設けられ、操作される第1取手と、
前記扉の奥側の面に設けられ、前記第1取手とは独立して操作され、前記第1取手の動きに連動しない第2取手と、
前記第1取手に対する操作と連動して前記扉の内部に向かって後退し、前記第2取手に対する操作とは連動しない第1ラッチボルトと、
前記第2取手に対する操作と連動して前記扉の内部に向かって後退し、前記第1取手に対する操作とは連動しない第2ラッチボルトと、
を備え、
前記第1ラッチボルトは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の一方の面が傾斜し、
前記第2ラッチボルトは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の他方の面が傾斜し、
前記第1ラッチボルト及び前記第2ラッチボルトは、同じ高さで前後に隣り合って並んで配置され且つ前記扉が閉じている状態において同一の受け穴の内部に位置するラッチ装置。
【請求項2】
前記第1ラッチボルトは、先端部の奥側の面が傾斜し、
前記第2ラッチボルトは、先端部の手前側の面が傾斜した請求項1に記載のラッチ装置。
【請求項3】
前記第1ラッチボルト及び前記第2ラッチボルトは、一旦前記扉の内部に向かって後退した場合は、前記扉が開いている間は後退した状態を維持し、前記扉が閉じた際に前記扉の外部に向かって進出する請求項1又は2に記載のラッチ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のラッチ装置と、
解錠操作を受け付ける施解錠操作装置と、
前記施解錠操作装置からの信号に基づいて前記第1取手及び前記第2取手の少なくとも一方を操作可能な状態とする制御装置と、
を備えた電気錠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ装置及び電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉が知られている。また、ロック装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−45257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通行者は、上記のような扉を手前及び奥のいずれの方向にも開くことができる。このため、当該扉の反対側に居る他の通行者は、当該扉が開く方向を予期できない。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされた。その目的は、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を通行者から見て一定の方向にのみ開かせるラッチ装置及び電気錠システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るラッチ装置は、扉の手前側の面に設けられ、操作される第1取手と、扉の奥側の面に設けられ、第1取手とは独立して操作され、第1取手の動きに連動しない第2取手と、第1取手に対する操作と連動して扉の内部に向かって後退し、第2取手に対する操作とは連動しない第1ラッチボルトと、第2取手に対する操作と連動して扉の内部に向かって後退し、第1取手に対する操作とは連動しない第2ラッチボルトと、を備え、第1ラッチボルトは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の一方の面が傾斜し、第2ラッチボルトは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の他方の面が傾斜し、第1ラッチボルト及び第2ラッチボルトは、同じ高さで前後に隣り合って並んで配置され且つ扉が閉じている状態において同一の受け穴の内部に位置するものである。
【0007】
本発明に係る電気錠システムは、上記ラッチ装置と、解錠操作を受け付ける施解錠操作装置と、施解錠操作装置からの信号に基づいて第1取手及び第2取手の少なくとも一方を操作可能な状態とする制御装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るラッチ装置において、第1ラッチボルトは、先端部の手前側又は奥側の一方の面が傾斜し、第2ラッチボルトは、先端部の手前側又は奥側の他方の面が傾斜している。このため、本発明によれば、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を通行者から見て一定の方向にのみ開かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置の第1の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置の第1の水平断面図である。
図3】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置の第2の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置の第2の水平断面図である。
図5】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置が設けられた扉の平面図である。
図6】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置の第3の水平断面図である。
図7】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置を備えた電気錠システムを示す第1の概略図である。
図8】本発明の実施の形態1におけるラッチ装置を備えた電気錠システムを示す第2の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるラッチ装置の第1の斜視図である。ラッチ装置は、例えば、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉1に設けられる。図1は、扉1が閉じている時のラッチ装置の状態を示している。
【0012】
図1に示すように、ラッチ装置は、ケース2、第1取手3a及び第2取手3bを備えている。ケース2は、扉1の内部に組み込まれている。ケース2は、扉1の木口側の端部にフロント4を有している。フロント4は、扉1の外部に露出している。第1取手3a及び第2取手3bは、例えば、ノブ又はレバーハンドル等である。第1取手3aは、前後方向において、扉1の手前側の面に設けられている。第2取手3bは、前後方向において、扉1の奥側の面に設けられている。第1取手3a及び第2取手3bは、ケース2内部に設けられた図示しない駆動機構に接続されている。第1取手3a及び第2取手3bは、例えば、通行者によって操作される。第1取手3a及び第2取手3bに対する操作は、例えば、一定の角度範囲での回転操作等である。第2取手3bは、第1取手3aとは独立して操作される。つまり、第2取手3bは、上記の駆動機構において第1取手3aと連動していない。
【0013】
図1に示すように、ラッチ装置は、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bを備えている。第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、同じ高さに配置されている。第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、前後に並んで配置されている。第1ラッチボルト5aは、第2ラッチボルト5bよりも手前に配置されている。第2ラッチボルト5bは、第1ラッチボルト5aよりも奥に配置されている。図1に示す状態において、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、フロント4に形成された穴を介して、ケース2の外部に突出している。
【0014】
図2は、実施の形態1におけるラッチ装置の第1の水平断面図である。図2は、扉1が閉じている時のラッチ装置を上から見た断面を示している。
【0015】
図2に示すように、第1ラッチボルト5aは、上下方向から見て先細り形状となるように、第1傾斜面6aを備えている。第2ラッチボルト5bは、上下方向から見て先細り形状となるように、第2傾斜面6bを備えている。図2に示す状態において、第1ラッチボルト5aのうち第1傾斜面6aを含む一部は、フロント4からケース2の外部に突出している。図2に示す状態において、第2ラッチボルト5bのうち第2傾斜面6bを含む一部は、フロント4からケース2の外部に突出している。図2に示す状態において、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bのうち、ケース2の外部に突出した部分は、受け穴7の内部に位置している。受け穴7は、例えば、扉1の枠に取り付けられた受け具に形成されている。
【0016】
第1傾斜面6aは、図2に示す状態において、第1ラッチボルト5aのフロント4付近から先端にかけて形成されている。第1ラッチボルト5aは、その先端に近付くにつれて、手前に向かって前後方向における厚さが薄くなるように形成されている。第1傾斜面6aは、扉1の前後方向において、第1ラッチボルト5aの先端に近付くにつれてフロント4の中心から遠ざかる。つまり、第1傾斜面6aは、第1ラッチボルト5aの奥側に形成されている。なお、第1ラッチボルト5aの手前側には、傾斜面が形成されていない。
【0017】
第2傾斜面6bは、図2に示す状態において、第2ラッチボルト5bのフロント4付近から先端にかけて形成されている。第2ラッチボルト5bは、その先端に近付くにつれて、奥に向かって前後方向における厚さが薄くなるように形成されている。第2傾斜面6bは、扉1の前後方向において、第2ラッチボルト5bの先端に近付くにつれてフロント4の中心から遠ざかる。つまり、第2傾斜面6bは、第2ラッチボルト5bの手前側に形成されている。なお、第2ラッチボルト5bの奥側には、傾斜面が形成されていない。
【0018】
図2に示す状態では、第1ラッチボルト5aの手前側の面と受け穴7の手前側の縁部とが干渉するため、ラッチ装置は手前に向かって移動できない。また、図2に示す状態では、第2ラッチボルト5bの奥側の面と受け穴7の奥側の縁部とが干渉するため、ラッチ装置は奥に向かって移動できない。つまり、図2に示す状態では、扉1は、手前及び奥のいずれにも開かない。
【0019】
第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、ケース2の内部及び外部に向かって移動可能に形成されている。第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、上記の駆動機構に接続されている。第1ラッチボルト5aは、第1取手3aに対する操作と連動して移動する。第2ラッチボルト5bは、第2取手3bに対する操作に連動して移動する。つまり、第2ラッチボルト5bは、上記の駆動機構において第1ラッチボルト5aと連動していない。また、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、上記の駆動機構を介さずに直接力を加えられた場合にも移動可能に形成されている。
【0020】
図3は、実施の形態1におけるラッチ装置の第2の斜視図である。図3は、一例として、扉1が閉じている時に第1取手3aが回転操作された場合のラッチ装置の状態を示している。図3に示すように、第1取手3aが回転操作されると、第1ラッチボルト5aは、ケース2の内部に移動する。つまり、第1ラッチボルト5aは、第1取手3aに対する操作と連動して扉1の内部に向かって後退する。
【0021】
図4は、実施の形態1におけるラッチ装置の第2の水平断面図である。図4は、図3に示す状態のラッチ装置を上から見た断面を示している。
【0022】
図4に示す状態において、第2ラッチボルト5bの奥側の面は、受け穴7の奥側の縁部と干渉する。このため、図4に示す状態では、ラッチ装置は奥に向かって移動できない。一方、図4に示す状態において、第1ラッチボルト5aは、扉1の内部に後退した状態となっている。つまり、第1ラッチボルト5aの手前側の面は、受け穴7の手前側の縁部と干渉しない。図4に示す状態から扉1が手前に引かれた場合、第2傾斜面6bが受け穴7の手前側の縁部に接触する。このとき、第2ラッチボルト5bは、第2傾斜面6bが受け穴7の手前側の縁部から受ける力によって、ケース2の内部に押し込まれる。このため、図4に示す状態では、ラッチ装置は手前に向かって移動できる。つまり、図4に示す状態では、扉1は、手前にのみ開くことが可能である。
【0023】
なお、図3に示す例とは逆に、扉1が閉じている時に第2取手3bが回転操作された場合、第2ラッチボルト5bがケース2の内部に移動する。つまり、第2ラッチボルト5bは、第2取手3bに対する操作と連動して扉1の内部に向かって後退する。この状態では、扉1は、奥にのみ開くことが可能である。
【0024】
図5は、実施の形態1におけるラッチ装置が設けられた扉の平面図である。図5において、扉1が構造上開くことが可能な範囲は、破線で示されている。図5において、閉じている状態の扉1は、実線で示されている。つまり、図1から図4に示す状態の扉1は、実線で図5に示されている。図5において、手前に開いている状態の扉1は、一点鎖線で示されている。つまり、図4に示す状態から手前に引かれた場合の扉1は、一点鎖線で図5に示されている。
【0025】
図6は、実施の形態1におけるラッチ装置の第3の水平断面図である。図4に示す状態から扉1が手前に開かれた場合のラッチ装置を上から見た断面を示している。つまり、図6は、一点鎖線で図5に示されている状態におけるラッチ装置を上から見た断面を示している。
【0026】
図6に示すように、第1ラッチボルト5aは、第1取手3aに対する回転操作と連動して扉1の内部に後退した状態を維持している。また、図6に示すように、第2ラッチボルト5bは、扉1が手前に開かれる際に第2傾斜面6bが受け穴7の手前側の縁部から受けた力によりケース2の内部に押し込まれた状態を維持している。このように、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、一旦扉1の内部に向かって後退した場合、扉1が開いている間は後退した状態を維持する。つまり、上記の駆動機構は、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bをケース2の内部に留める機能を有している。
【0027】
第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、扉1が閉じた際に、扉1の外部に向かって進出する。つまり、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、扉1が閉じた際に、図1及び図2に示すように受け穴7の内部に入る。例えば、扉1の状態が図5において実線で示す状態から一点鎖線で示す状態へ変化した際に、ラッチ装置は、図6に示す状態から図2に示す状態へ復帰する。つまり、上記の駆動機構は、扉1が閉じた際に、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bをケース2の内部に留める機能を解除する。
【0028】
図7は、実施の形態1におけるラッチ装置を備えた電気錠システムを示す第1の概略図である。図7は、手前から見た扉1の正面図を用いて電気錠システムの構成を示している。図8は、実施の形態1におけるラッチ装置を備えた電気錠システムを示す第2の概略図である。図8は、扉1の平面図を用いて電気錠システムの構成を示している。
【0029】
電気錠システムは、扉1に設けられたラッチ装置、施解錠操作装置8及び制御装置9を備えている。電気錠システムは、施解錠操作装置8として、例えば、第1施解錠操作装置8a及び第2施解錠操作装置8bを備えている。第1施解錠操作装置8aは、例えば、扉1付近の壁又は扉1自体の手前側の面等に設けられている。第2施解錠操作装置8bは、例えば、扉1付近の壁又は扉1自体の奥側の面等に設けられている。施解錠操作装置8は、例えば、ICカードリーダ、ICタグリーダ、指紋センサ、テンキー、押しボタン又はタッチパネル等である。制御装置9は、例えば、扉1又は壁の内部等に設けられている。また、制御装置9は、施解錠操作装置8に内蔵されていてもよい。
【0030】
施解錠操作装置8は、通行者等による解錠操作を受け付ける。解錠操作は、例えば、通行者がICカード又はICタグ等の識別体から施解錠操作装置8に情報を読み取らせることである。また、解錠操作は、例えば、通行者が施解錠操作装置8を用いて暗証番号又はパスワード等の情報を入力することである。施解錠操作装置8は、解錠操作を受け付けることで取得した情報を示す信号を制御装置9に送信する。
【0031】
電気錠システムにおいて、第1取手3a及び第2取手3bは、解錠操作が行われていない場合は、操作不可能である。解錠操作が行われていない場合、第1取手3a及び第2取手3bは、例えば、回転できない。
【0032】
制御装置9は、照合用の情報を予め記憶している。制御装置9は、施解錠操作装置8から送信された信号が示す情報を照合用の情報と照合する。制御装置9は、照合の結果に基づいて、第1取手3a及び第2取手3bを制御する。
【0033】
制御装置9は、第1施解錠操作装置8aから送信された信号が示す情報が照合用の情報に含まれていた場合、第1取手3aを操作可能な状態とする。制御装置9は、第2施解錠操作装置8bから送信された信号が示す情報が照合用の情報に含まれていた場合、第2取手3bを操作可能な状態とする。なお、制御装置9は、第1施解錠操作装置8aから送信された信号が示す情報に基づいて第2取手3bを操作可能な状態とすることはない。また、制御装置9は、第2施解錠操作装置8bから送信された信号が示す情報に基づいて第1取手3aを操作可能な状態とすることはない。つまり、制御装置9は、扉1の手前及び奥のうち解錠操作が行われた側から扉1を開ける動作が行えるように、第1取手3a及び第2取手3bを制御する。
【0034】
実施の形態1において、第1ラッチボルト5aは、第1取手3aに対する操作と連動して扉1の内部に向かって後退する。第1ラッチボルト5aは、手前側又は奥側の一方にのみ第1傾斜面6aが形成されたものである。つまり、第1ラッチボルト5aは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の一方の面のみが傾斜し、他方の面が傾斜していない。第1ラッチボルト5aは、先端部が受け穴7の内部に位置している場合に、先端部の上記他方の面が受け穴7の上記他方の縁部と干渉する。第2ラッチボルト5bは、第2取手3bに対する操作と連動して扉1の内部に向かって後退する。第2ラッチボルト5bは、手前側又は奥側の他方にのみ第2傾斜面6bが形成されたものである。つまり、第2ラッチボルト5bは、上下方向から見て先細り形状となるように、先端部の手前側又は奥側の他方の面のみが傾斜し、先端部の手前側又は奥側の一方の面が傾斜していない。第2ラッチボルト5bは、先端部が受け穴7の内部に位置している場合に、先端部の上記一方の面が受け穴7の上記一方の縁部と干渉する。このため、通行者によって第1取手3aが操作された場合、扉1は、前後方向における上記一方にのみ開くことが可能となる。また、通行者によって第2取手3bが操作された場合、扉1は、前後方向における上記他方にのみ開くことが可能となる。つまり、本発明によれば、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を通行者から見て一定の方向にのみ開かせることができる。その結果、例えば、扉の反対側に居る他の通行者は、扉が開く方向を予期することができる。
【0035】
実施の形態1において、第1ラッチボルト5aの第1傾斜面6aは、奥側に形成されている。つまり、第1ラッチボルト5aは、先端部の奥側の面が傾斜している。第2ラッチボルト5bの第2傾斜面6bは、手前側に形成されている。つまり、第2ラッチボルト5bは、先端部の手前側の面が傾斜している。このため、通行者によって第1取手3aが操作された場合、扉1は手前にのみ開くことが可能となる。また、通行者によって第2取手3bが操作された場合、扉1は奥にのみ開くことが可能となる。つまり、本発明によれば、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を必ず通行者に引いて開けさせることができる。これにより、例えば、押して開けた際に扉が他の通行者等に衝突することを防止できる。その結果、例えば、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を開けようとする通行者の安全性を向上させることができる。
【0036】
実施の形態1において、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、一旦扉1の内部に向かって後退した場合は、扉1が開いている間は後退した状態を維持する。これにより、扉1が閉じなくなることを防止できる。また、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、扉1が閉じた際に扉1の外部に向かって進出する。これにより、通行者が扉1の開く方向を予期できなくなることを防止できる。
【0037】
実施の形態1において、施解錠操作装置8は、通行者等による解錠操作を受け付ける。制御装置9は、施解錠操作装置8からの信号に基づいて、ラッチ装置の第1取手3a及び第2取手3bの少なくとも一方を操作可能な状態とする。その結果、手前及び奥の双方に開く構造に形成された扉を通行者から見て一定の方向にのみ開かせる電気錠システムを実現できる。
【0038】
本発明において、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、同じ高さで前後に並んで配置されている。第1ラッチボルト5aは、第2ラッチボルト5bよりも手前に配置されている。第2ラッチボルト5bは、第1ラッチボルト5aよりも奥に配置されている。つまり、第1ラッチボルト5aは、第2取手3bよりも第1取手3aに近く配置されている。また、第2ラッチボルト5bは、第1取手3aよりも第2取手3bに近く配置されている。このため、より簡単な構成で、第1ラッチボルト5aが第1取手3aと連動し且つ第2ラッチボルト5bが第2取手3bと連動する駆動機構を実現できる。
【0039】
本発明において、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、同じ高さで前後に並んで配置されていなくともよい。例えば、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、上下に並んで配置されてもよい。また、第1ラッチボルト5aは、第2ラッチボルト5bよりも手前に配置されていなくともよい。例えば、第2ラッチボルト5bの方が第1ラッチボルト5aよりも手前に配置されてもよい。これらの場合であっても、第1ラッチボルト5aが第1取手3aと連動し且つ第2ラッチボルト5bが第2取手3bと連動しているならば、必ず通行者に扉1を引いて開けさせることができる。
【0040】
本発明において、第1ラッチボルト5aを第2取手3bと連動させ且つ第2ラッチボルト5bを第1取手3aと連動させることも可能である。この場合であっても、扉1を通行者から見て一定の方向にのみ開かせることができる。ただし、この場合、通行者は扉1を必ず押して開けることになる。
【0041】
本発明における電気錠システムは、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bが施解錠操作装置8と連動するように構成してもよい。例えば、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、解錠操作が行われていない状態では移動不可能であり、解錠操作により第1取手3a及び第2取手3bの少なくとも一方が操作可能となった状態では移動可能となるものでもよい。つまり、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bは、解錠操作の実施前は直接力を加えても移動させることができず、解錠操作の実施後は直接力を加えれば移動させることができるように形成されてもよい。この場合であっても、扉1を通行者から見て一定の方向にのみ開かせることができる。
【0042】
本発明における電気錠システムは、第1ラッチボルト5a及び第2ラッチボルト5bが施解錠操作装置8と連動するように構成してもよい。例えば、第1施解錠操作装置8aに対して解錠操作が行われた場合に第1ラッチボルト5aが扉1の内部に向かって後退し、第2施解錠操作装置8bに対して解錠操作が行われた場合に第2ラッチボルト5bが扉1の内部に向かって後退することとしてもよい。この場合、第1取手3a及び第2取手3bは、駆動機構と接続されている必要はない。この場合であっても、扉1を通行者から見て一定の方向にのみ開かせることができる。
【0043】
本発明における電気錠システムは、施解錠操作装置8として、第1施解錠操作装置8a又は第2施解錠操作装置8bの一方のみを備えることとしてもよい。例えば、入室時には制御装置9による照合が必要であり且つ退出は無条件で許可される部屋の内側には、施解錠操作装置8が設けられていなくともよい。この場合、第1取手3a及び第2取手3bのうち当該部屋の内側に位置するものは、常に操作可能な状態であればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 扉
2 ケース
3a 第1取手
3b 第2取手
4 フロント
5a 第1ラッチボルト
5b 第2ラッチボルト
6a 第1傾斜面
6b 第2傾斜面
7 受け穴
8 施解錠操作装置
8a 第1施解錠操作装置
8b 第2施解錠操作装置
9 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8