(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)が、α,β−不飽和二重結合基及びポリ オルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)と、α,β−不飽和二重結合基及び水酸基 を有する単量体(b)と、α,β−不飽和二重結合基を有する単量体(c)(ただし、 単量体(a)および単量体(b)である場合を除く。)とを反応させてなり、樹脂(A )と樹脂(B)の合計に対して単量体(a)が1.5〜5重量%である請求項1記載の コート剤組成物。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の包装用として多用されているPTP包装体は、内容物を格納するための底材と、内容物を格納した底材を密封するための蓋材の二つの部分からなる。前記底材は、ポケットを成形したプラスチックシートの加工成形体によって構成される。前記蓋材は、金属箔、特にアルミ箔の片面もしくは両面に文字やデザインなどの印刷層を設け、更にその上のそれぞれの面に、コート剤層と、ヒートシール剤層を設けて構成される。
【0003】
底材を形成するプラスチックシートとしては加工性に優れるため、塩化ビニル樹脂シートやポリプロピレンシート等が使用されている。一方、蓋材の基材としては、蓋材を破裂させて内容物を取り出すという、PTP包装体の使用方法から、主として金属箔、特にアルミ箔が通常使用されている。
【0004】
包装作業における内容物の充填、ヒートシール操作は、前記の底材となるポケットを設けた塩化ビニル樹脂シートやポリプロピレンシートの加工成形体に内容物を格納した後、その開口面側に前記のアルミ箔の蓋材を、そのヒートシール剤層が接触するように積層し蓋材のコート剤層を設けた面からヒートシール用ロールにより加熱及び加圧して、プラスチック容器の非ポケット部分に熱融着させることによって遂行される。
【0005】
ヒートシール用ロールの表面は、通常、碁盤目状のエンボス加工が施されており、加熱加圧条件は積層材料の種類によって異なるが、ロール温度、ロール圧力はそれぞれ、120〜280℃、0.1〜0.6MPaの間に設定されていることが多い。
【0006】
前記蓋材のコート剤は、通常、エポキシ−アミノ樹脂や硝化綿−アミノ樹脂等の熱硬化性樹脂を樹脂組成分中に使用している。又、ヒートシール剤は、通常、熱可塑性樹脂からなり、加工成形体(プラスチック容器)の材質により、それぞれ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン等の樹脂を主成分とする樹脂組成物が使用されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コート剤組成物の樹脂分としてエポキシ−アミノ樹脂や硝化綿−アミノ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いると、ヒートシール時のアルミ箔そのもの及び文字やデザインなどの印刷層の耐熱性は良好であるが、コート剤の塗工作業中や包装作業中、又、ヒートシール後のPTP包装体での保管環境下で容易にホルムアルデヒドを放出する。
【0009】
塗工作業中や包装作業中においては、作業者に対する健康面での影響を与え、又、ヒートシール後のPTP包装体状態での保管環境下においては、格納されている医薬品等の種類によっては薬効品質そのものが低下するという欠点がある。
【0010】
しかしながら、コート剤組成物の樹脂分として、エポキシ−アミノ樹脂や硝化綿−アミノ樹脂等の熱硬化性樹脂を使用しない場合には、ヒートシール時の加熱温度に耐えるだけの耐熱性が得られず、アルミ箔のピンホール、熱膨張皺、コート剤層及び印刷層の変色及び脱落等、様々な不具合が発生する。ホルムアルデヒドを容易に放出しない、かつ、ヒートシール時の加熱に耐えるだけの耐熱性を有するPTP包装体用のコート剤組成物に関する技術開発が要望されている。
【0011】
本発明はホルムアルデヒドを放出せず、かつ、十分な耐熱性を有するPTP包装体用のコート剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、これらの課題を受けて、鋭意検討した結果、水酸基含有アクリル系樹脂(A)と水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)とブロック化したポリイソシアネート化合物(C)とを含むコート剤組成物がPTP包装体への利用に優れていることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、コート剤層、アルミ箔およびヒートシール層の順の積層構成を有するPTP包装用蓋材用のコート剤組成物であって、
前記コート剤組成物が、水酸基含有アクリル系樹脂(A)(ただし、下記樹脂(B)である場合を除く。)と、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)と、ブロック化したポリイソシアネート化合物(C)とを含むことを特徴とするPTP包装用蓋材用のコート剤組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)が、α,β−不飽和二重結合基及びポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)と、α,β−不飽和二重結合基及び水酸基を有する単量体(b)と、α,β−不飽和二重結合基を有する単量体(c)(ただし、単量体(a)および単量体(b)である場合を除く。)とを反応させてなり、樹脂(A)と樹脂(B)の合計に対して単量体(a)が1.5〜5重量%である上記コート剤組成物に関する。
【0015】
本発明者等は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の水酸基価が、10〜60mgKOH/gであることを特徴とする上記コート剤組成物に関する。
【0016】
本発明者等は、ブロック化したポリイソシアネート化合物(C)のブロック化剤の解離温度が、90℃以下であることを特徴とする上記コート剤組成物に関する。
【0017】
本発明者等は、上記コート剤組成物をアルミ箔上に塗工し、熱硬化してなるPTP包装用蓋材に関する。
【0018】
本発明者等は、さらに、コート剤層の反対側のアルミ箔面に、ヒートシール層を有する上記蓋材に関する。
【0019】
本発明者等は、上記蓋材で、透明プラスチック底材をヒートシールしてなるPTP包装体に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコート剤組成物のPTP包装体への利用において、コート剤の塗工作業中や包装作業中、又、ヒートシール後のPTP包装体での保管環境下でホルムアルデヒドが放出されない。そのため作業者や使用者にホルムアルデヒドの健康に関する弊害を及ぼさない。また、包装しようとする内容物に対しても、ホルムアルデヒドの影響を及ぼさない。しかもヒートシール時の加熱温度に耐え、アルミニウム箔などの基材のピンホール、熱膨張皺、コート剤層及び印刷層の変色及び脱落等、様々な不具合の発生がない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のコート剤組成物、及び該コート剤組成物のPTP包装体への利用について説明する。先ず、コート剤組成物について述べる。コート剤組成物は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)と水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)とブロック化したポリイソシアネート化合物(C)とを含むことを特徴とする。ただし、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)は水酸基含有アクリル系樹脂(A)に含まれない。
【0022】
本発明を構成する水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)は、α,β−不飽和二重結合基とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)と、α,β−不飽和二重結合基と水酸基を有する単量体(b)と、α,β−不飽和二重結合基を有する単量体(c)(ただし、単量体(a)および(b)である場合は除く)とを反応させてなる。
【0023】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、α,β−不飽和二重結合基と水酸基を有する単量体(b)と、α,β−不飽和二重結合基を有する単量体(c)(ただし、単量体(a)および(b)である場合は除く)とを反応させてなる。
【0024】
α,β−不飽和二重結合基とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)は、一般式アで表される。
【0025】
【化1】
R
1:CH
2=CH-COO-(CH
2)
m-、CH
2=C(CH
3)-COO-(CH
2)
m-CH
2=CH-(CH
2)
m-、またはCH
2=C(CH
3)-(CH
2)
m -(mは0〜10の整数)
R
2:水素、メチル基、またはR
1と同じ官能基
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8:アルキル基、フェニル基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる。
【0026】
具体的には、例えば東芝シリコーン(株)製のTSL9705などの片末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン化合物、チッソ(株)製のサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725などの片末端(メタ)アクリロキシ基含有ポリオルガノシ
ロキサン化合物等が挙げられる。α,β−不飽和二重結合基とポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体(a)は、ヒートシール時の加熱に耐えるだけの耐熱性を付与する為に不可欠のものであり、要求性能に応じてこれらの内から1種類、あるいは2種類以上を混合して使用でき、樹脂(B)に対して、1〜80重量%の共重合比率で用いられるが、ハロゲン原子を含まない溶剤への溶解性などを十分得るためには60重量%以下の共重合比率にすることが望ましい。
【0027】
α,β−不飽和二重結合基と水酸基を有する単量体(b)は、塗工後に架橋させるために用いられる。α,β−不飽和二重結合基と水酸基を有する単量体(b)の例としては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0028】
単量体(b)は要求性能に応じてこれらの内から1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)中で用いるものと、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)中で用いるものとは、必ずしも、同一である必要はない。
【0029】
本発明で用いられる単量体(a)、(b)以外のα,β−不飽和二重結合基を有する単量体(c)は、硬度、強靭性、耐擦傷性、光沢向上等の様々な塗膜物性付与のために用いられる。この単量体として(i)(メタ)アクリル酸誘導体(但し、水酸基、ポリオルガノシロキサン鎖を有する単量体を除く)、(ii)芳香族ビニル単量体、(iii)オレフィン系炭化水素単量体、(iv)ビニルエステル単量体、(v)ビニルハライド単量体、(vi)ビニルエーテル単量体等があげられる。
【0030】
(i)(メタ)アクリル酸誘導体の例として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ii)芳香族ビニル単量体の例として、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。
(iii)オレフィン系炭化水素単量体の例として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4−ペンタジエン等が挙げられる。
(iv)ビニルエステル単量体の例として、酢酸ビニル等が挙げられる。
(v)ビニルハライド単量体の例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
(vi)ビニルエーテル単量体の例として、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。
これらは、2種以上用いても良い。単量体(c)は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)および水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)中で、0〜90重量%で用いられる。90重量%より大きい場合は、基材との十分な密着性が得られない。また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)と水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)との相溶性が低下し、均一かつ良好な塗膜が得られない。
【0031】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)および水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得られる。用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶媒は2種以上の混合物でもよい。合成時の単量体の仕込み濃度は、0〜80重量%が好ましい。
【0032】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、50〜140℃、好ましくは70〜140℃である。得られる重合体の好ましい平均重量分子量は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)共に、2,000〜100,000である。
【0033】
単量体(a)はポリオルガノシロキサン鎖を有しているため、単量体(a)等を共重合した樹脂(B)は塗工膜の表面に偏析し易く、耐熱性にも寄与する。また、逆にポリシロキサン鎖が塗工膜中に必要以上存在すれば、その一部はアルミ箔側にも存在することになり、アルミ箔、或いは印刷インキ層と塗工膜の密着性が低下し易くなる。塗膜の耐熱性および密着性を十分に得るためには、単量体(a)は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)と水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)の合計に対して固形分比で1.5〜5重量%であることが特に望ましい。1.5重量%より小さい場合は耐熱性が、5%重量より大きい場合は密着性が、それぞれ十分でない場合がある。
【0034】
また、水酸基含有アクリル系樹脂(A)の水酸基価は10〜60mgKOH/gであることが望ましい。10mgKOH/gより小さい場合は充分な架橋反応が進まない可能性があり、60mgKOH/gより大きい場合は充分なコート剤の安定性を確保できない可能性がある。
【0035】
水酸基価は以下の方法により求めた。試料40gに無水酢酸とピリジンを容量比(無水酢酸/ピリジン)が1/9で混合したアセチル化剤25ccを加え、100℃で1時間反応した後にn−ブタノ−ル10ccを加え、N/2水酸化カリウムのアルコ−ル溶液で滴定し、水酸基価を求めた。
【0036】
本発明に使用するブロック化したポリイソシアネート化合物(C)は、イソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック化剤)と反応させて常温で不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。このため、硬化剤のイソシアネート基をブロック化することにより、活性水素基を有する主剤とあらかじめ配合しておくことが可能となる。
【0037】
イソシアネート基をブロック化するブロック化剤としては、アルコール類、フェノール類、ラクタム類、オキシム類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、フタルイミド類、イミダゾール類、塩化水素、シアン化水素または亜硫酸水素ナトリウムなどが知られている。この内でも、置換フェノール類、オキシム類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、フタルイミド類、イミダゾール類、塩化水素、シアン化水素または亜硫酸水素ナトリウムによりイソシアネート基がブロック化されたブロックイソシアネート化合物は、比較的低温で解離してイソシアネート基を再生する。
【0038】
本発明のブロック化したポリイソシアネート化合物(C)は、好ましくは脂肪族イソシアネート系であり、より好ましくはHDI系である。脂肪族イソシアネート系の使用は、芳香族イソシアネート系の使用と比較してコート剤組成物塗膜が黄変しにくいという特徴がある。また、ブロック化剤は、コート剤塗工後乾燥工程において充分な硬化反応が進むよう比較的低温で解離するアセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類などの活性メチレン系が好ましく、ブロック化剤の解離温度は90℃以下であることが好ましい。
【0039】
ブロック化したポリイソシアネート化合物(C)の解離温度は、加熱硬化塗膜のゲル分率が90重量%以上となる温度を測定することにより求めた。ゲル分率は、水酸基価100mgKOH/gの水酸基含有アクリル系樹脂とブロック化したポリイソシアネート化合物(C)をイソシアネート当量が1.0となるように配合し、その塗膜を電気オーブン中で30分加熱硬化させ、得られた塗膜を20℃アセトン中に24時間浸漬した後の不溶分より求めた。
【0040】
水酸基含有アクリル系樹脂(A)および水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)のOH基は、ブロック化したポリイソシアネート化合物(C)の解離後、NCO基と架橋反応を行なう。ブロック化したポリイソシアネート化合物(C)の添加量は、当量で0.6〜1.4が好ましい。
【0041】
本発明においては、塗膜性能向上の目的で水酸基含有アクリル系樹脂(A)と水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)とブロック化したポリイソシアネート化合物(C)と以外に他の樹脂を併用することができる。他の樹脂としては硝化綿、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0042】
また、必要に応じて、微粉ケイ素、ゼオライト等のブロッキング防止剤、ジメチルポリシロキサン、ワックス等のスリップ剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シリカ粉末等の艶消し材等、ホルムアルデヒドを含まない添加剤を含めることができる。
【0043】
本発明のコート剤組成物は、成形された透明プラスチックシートの底材及びアルミ箔の蓋材からなるPTP包装において、アルミ箔の、透明プラスチックシートの底材とヒートシール層を介して接する面とは反対となる面に塗工され、PTP包装用コート剤塗工物となる。
【0044】
基材となるアルミ箔には、公知のアルミ基材を用いることができ、特に限定されるものではないが、厚み5μm〜50μm、アルミニウム純度98.0〜99.9重量%のアルミ基材を好ましく用いることができる。JISH4160では、1000系(1N30、1070等)、3000系、8000系(8021、8079等)等のアルミ基材を用いることができ、調質(質別)も硬質材(H材(JISH0001))、半硬質材、軟質材(O材(JISH0001))のいずれも使用可能である。特に、PTP包装に用いられる場合には硬質材が好ましい。なお、通常の上記アルミ基材は、一方の面が艶面、他方の面が艶ケシ面(単にケシ面ともいう。)と呼ばれ、両面の光沢が異なるが、本発明では艶面あるいはケシ面のどちらにコート剤層を設けてもよい。また、アルミ基材とコート剤層の間に文字やデザインなどの印刷層を設けてもよい。
【0045】
コート剤層は単位面積当たり0.5g/m
2〜3.0g/m
2が好ましく、さらに好ましくは1.0〜2.0g/m
2である。コート剤層は印刷、塗工により形成される。印刷、塗工方法は公知の方法、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等による印刷、グラビアロールコーター、カーテンフローコーター等による塗工、塗布が挙げられる。
【0046】
コート剤層を形成したPTP包装用コート剤塗工物は、反対面にヒートシール剤を塗工しヒートシール層を形成することでアルミ箔の蓋材となり、コート剤層を設けた面からヒートシール用ロールにより加熱及び加圧して、透明プラスチックシートの底材と熱融着させることによってヒートシールされたPTP包装体となる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定され
るものではない。本発明において、「部」、「%」は、特に断らない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
【0048】
(合成例1 樹脂(A1))
2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.5g、メチルメタクリレート60g、ブチルメタクリレート30.5g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行った。その後、固形分が30%となるようにMEKを添加して、水酸基価40mgKOH/gの水酸基含有アクリル系樹脂(A1)溶液を得た。
【0049】
(合成例2〜5 樹脂(A2)〜(A5))
合成例2〜合成例5は、表1の配合に変更した以外は、合成例1と同じ方法で合成し、水酸基含有アクリル系樹脂(A2)〜(A5)溶液を得た。得られた樹脂(A2)〜(A5)の固形分および水酸基価を表1に示す。
【0050】
(合成例6 樹脂(B))
片末端メタクリロキシ基含有ポリシロキサン化合物(チッソ(株)製「サイラプレーンFM−0721」)45g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10g、メチルメタクリレート45g、メチルエチルケトン(MEK)200gを冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル1.6gを加えて2時間重合反応を行い、さらにアゾビスイソブチロニトリル0.4gを加えて2時間重合を行った。その後、固形分が30%となるようにMEKを添加して、水酸基価42mgKOH/gの水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)溶液を得た。
尚、合成に用いた単量体の略号は下記の通りである。
2HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
FM−0721:サイラプレーンFM−0721
【0051】
(実施例1)
固形分換算で水酸基含有アクリル系樹脂(A1)20g、水酸基含有シリコン変性アクリル系樹脂(B)1gとなるようにそれぞれの樹脂溶液を混合し、これにブロック化したポリイソシアネート化合物(C1)(旭化成ケミカルズ(株)製「デュラネートMFK−60B」、ブロック化剤解離温度:90℃)をイソシアネート当量が1.0となるような重量加え、更にMEKを加えて固形分20%のコート剤を得た。これらのコート剤をバーコーターにて厚さ20μmの硬質アルミニウム箔の艶面に乾燥塗布量が約1.5g/m
2となるように塗工し、180℃の電気オーブン中で10秒加熱硬化させコート剤塗工物を得た。
【0052】
(実施例2〜10、比較例1〜3)
実施例2〜10、比較例1〜3は、表2の配合に変更した以外は、実施例1と同じ方法でコート剤を作成し、コート剤塗工物を得た。
本明細書において、実施例8のコート剤およびコート剤塗工物は参考例である。
尚、実施例、比較例に使用したブロック化したポリイソシアネート化合物(C)を下記に記す。
(C1):旭化成ケミカルズ(株)社製 デュラネートMFK−60B、解離温度90℃
(C2):旭化成ケミカルズ(株)社製 デュラネートSBN−70D、解離温度110℃
(C3):旭化成ケミカルズ(株)社製 デュラネートE402−B80B、解離温度130℃
【0053】
【表1】
【0054】
コート剤およびコート剤塗工物について、コート剤安定性、接着性、耐熱性の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、評価方法と評価基準は下記の通りである。
【0055】
【表2】
【0056】
<コート剤安定性>
仕上がり時コート剤の粘度と40℃の電気オーブン内で3日間保管後の粘度を測定し、増粘の程度によりコート剤安定性を評価した。粘度は離合社製のザーンカップNo.3で測定した。
◎:粘度増加5秒未満
○:粘度増加5秒以上10秒未満
△:粘度増加10秒以上20秒未満
×:粘度増加20秒以上
実用レベルは○以上である。
【0057】
<接着性>
コート剤塗工物の塗工面にセロハンテープを貼り付け、指で5回圧着した後、テープを剥離した。テープを貼り付けた面積と、コート剤塗工膜がアルミ箔から剥離した面積との比較から、アルミ箔に対する接着性を評価した。
◎:塗工膜が全く剥離しなかった
○:塗工膜がアルミ箔から剥離した面積がテープ接着面積の20%未満
△:塗工膜がアルミ箔から剥離した面積がテープ接着面積の20%以上50%未満
×:塗工膜がアルミ箔から剥離した面積がテープ接着面積の50%を以上
実用レベルは○以上である。
【0058】
<耐熱性>
コート剤塗工物と同じ大きさに切ったアルミ箔艶面とコート剤塗工物塗工面とを重ね合わせ、ヒートシール試験機を用いて300℃の温度、2kg/cm
2の圧力で1秒間アルミ箔を押圧し、アルミ箔とコート剤塗工物塗工面とを剥離した。押圧した面積と、剥離後のコート剤塗工膜のアルミ箔への転移面積との比較から、耐熱性を評価した。
◎:塗工膜のアルミ箔への転移が全く無い
○:塗工膜のアルミ箔への転移面積が押圧した面積の20%未満
△:塗工膜のアルミ箔への転移面積が押圧した面積の20%以上50%未満
×:塗工膜のアルミ箔への転移面積が押圧した面積の50%以上
実用レベルは○以上である。
【0059】
実施例の結果から、本発明は、ホルムアルデヒドを放出せず、かつ、十分な耐熱性を有するPTP包装体用のコート剤組成物を得られることが分かった。一方、比較例は、耐熱性が不十分であった。