(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
旋回台を搭載した作業車においては、旋回台上に搭載される油圧機器、空圧機器、暖房機器などのそれぞれに走行車両に設置している油圧源、空圧源、温水源から作動油、空気、温水などの作動媒体を供給する必要があるが、それらの作動媒体は、旋回台が車両フレーム上で旋回する関係上、スイベルジョイントを介して各種機器に供給されるようになっている。
【0003】
特許文献1のスイベルジョイントは、作動油と温水と空気を給排する異種流体用であり、
図8に示すように、内筒121と中筒131と外筒141を同心に嵌挿させた構造としている。
外筒141と中筒131における高さ方向で上約2/3の上方部分は、作動油流路に割り当てられており、外筒141の内周面に形成した複数の内環状溝148と、中筒131の壁体中に縦方向に穿孔された複数本の中筒側通路132とから主に構成されている。
【0004】
また、外筒141と中筒131における高さ方向における下約1/3の下方部分は、温水流路に割り当てられており、外筒141の内周面に形成された内環状溝149と中筒131の壁体中に縦方向に穿孔された複数本の中筒側通路133とから主に構成されている。
そして、中筒131の下方部分と内筒121とは空気流路に割り当てられていて、内筒121の外周面に形成された複数の外環状溝129と、中筒131の壁体中に軸線方向に穿孔させた複数の中筒側通路134とから主に構成されている。
【0005】
各環状溝の148,149,129の上下隣には環状パッキン146,147,127が嵌められている。
【0006】
上記従来技術では、中筒131には内周面および外周面ともに環状溝を加工していないことが特徴であり、それにより中筒131の加工を容易にしている。
また、中筒131および外筒141における下方約1/3の温水流路部分は、その上方の作動油流路部分と比べ外径が小さくなっているが、これは中筒131を外筒141内に組込む際の組込み性を良くするためである。
【0007】
しかるに、上記従来技術には、つぎのような問題がある。
(1)外筒141における温水流路の内環状溝149には温水が給排されるが、水は潤滑性が乏しいため中筒131の摩耗が早く進み、交換頻度が高くなる。しかるに、中筒131は高さ寸法が外筒141と同じ位の大きな部材であり、壁体内に多数の通路を穿設加工する必要のある加工の難しい部材であるため、交換コストが高くなり、またその交換作業にも手間がかかるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、摩耗時の交換コストを低く抑制できるスイベルジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明のスイベルジョイントは、複数種流体を旋回台の上下間で給排するためのスイベルジョイントであって、上下方向に延びる中心軸まわりで同心に嵌挿された外筒と中間筒と内筒とを備えており、前記外筒および前記内筒は回転不能に固定されており、前記中間筒は前記外筒および前記内筒に対し回転自在であり、前記外筒と前記中間筒との間には作動油流路が設けられており、該作動油流路は、前記外筒の内周面に形成された複数本の内環状溝により構成されており、前記内筒の下方部分と前記中間筒との間には温水流路が設けられており、該温水流路は、前記中間筒の内周面に形成された内環状溝より構成されており、前記内筒の上方部分と前記中間筒との間には他の異種流体流路が設けられており、該他の異種流体流路は、前記内筒の外表面に形成された外環状溝により構成されていることを特徴とする。
第2発明のスイベルジョイントは、第1発明において、前記内筒における上下方向の途中において、外周面に段差が形成され、前記中間筒における上下方向の途中において、内周面に段差が形成されており、前記温水流路を構成する内環状溝と環状パッキンは、前記内筒における前記段差より下方の内筒径大部に対面する前記中間筒における前記段差より下方の中間筒径大部の内周面に設けられており、前記他の異種流体流路を構成する外環状溝と環状パッキンは、前記中間筒における前記段差より上方の中間筒径小部に対面する前記内筒における前記段差より上方の内筒径小部の外周面に設けられていることを特徴とする。
第3発明のスイベルジョイントは、第1または第2発明において、前記温水流路の前記内環状溝および、前記他の異種流体流路の前記外環状溝は、いずれも複数本形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、温水は潤滑性に乏しいことから温水流路の内環状溝の相手摺動面が摩耗しやすいとしても、摩耗により交換する場合に最も小さい部材である内筒を交換すればよいので、交換費用が抑制される。また、内筒の上方部分に位置する他の異種流体流路の外環状溝は内筒の外面加工で行えるので、加工が容易であり生産性を高くでき、しかも加工精度も向上するので流体漏れなどの不都合が生じにくい。
第2発明によれば、内筒と中間筒には上下方向の途中に段差があるので、内筒を中間筒内に組み付けるとき、温水流路のパッキン内面と他の異種流体流路のパッキン外面が接触することなく組付けがが可能になる。このため、挿入作業が容易となり、パッキンの損傷が生じにくい。
第3発明によれば、温水流路の内環状溝も他の異種流体流路の外環状溝も複数本づつあるので、温水も空気も数系統づつ給排することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(基本構成)
まず、
図1に基づき、スイベルジョイントAの基本構造を説明する。
スイベルジョイントAの基本的構成部材は、外筒1と中間筒2と内筒3とからなり、これらは上下方向に延びる中心軸Oまわりで同心に嵌挿されている。最内側に内筒3が位置し、最外側に外筒1が位置し、内筒3と外筒1の間に中間筒2が位置している。中心軸Oは図示しない旋回台の旋回中心と一致している。
【0014】
上下方向の長さは、中間筒2が最も長く、外筒1は中間筒2の4/5〜3/4程度であり、内筒3の長さは中間筒の1/2程度である。
本発明では、内筒3はできるだけ上下寸法が短い方が交換コストが安くなるので好ましいが、上記寸法比に限られることなく、種々の寸法の実施形態を採用できる。
【0015】
外筒1、中間筒2、内筒3の下端は、ほぼ同じ高さに揃えられており、外筒1の底端と内筒3の底端は、連結部材11で結合され、かつ外筒1と内筒3は走行車体に対し回り止め(図示せず)を用いて回転不能に連結されている。したがって、外筒1と内筒3は回転しない。
中間筒2の上端部は取付板12を介して図示しない旋回台に取付けられている。このため、旋回台が旋回すると中間筒2が外筒1および内筒3に対して摺動して自転する。
【0016】
図5〜
図7に示すように、スイベルジョイントには、作動油と温水と空気の各給排路が形成されている。
(作動油流路)
外筒1の側壁には、8カ所の下部配管接続孔P
bが形成され、中間筒2の上端部における側壁には、8カ所の上部配管接続孔P
uが形成されている。
これらの下部配管接続孔P
bと上部配管接続孔P
uとは、
図4に示す中間筒2内に穿孔された8本の縦孔P
vでそれぞれ個別に連通されている。
これら下部配管接続孔P
bと上部配管接続孔P
uと縦孔P
vとでつながる油路が作動油流路4の基本構成部となっている。
なお、外筒1内周面に形成される摺動流路部は後述する。
【0017】
(温水流路)
図5〜
図7に示すように、内筒3の底端には、温水用の2カ所の下部配管接続孔W
bが形成されている。また、中間筒2の上端部における側壁には2カ所の上部配管接続孔W
uが形成されている。
これらの下部配管接続孔W
bと上部配管接続孔W
uとは、
図3および
図4に示す中間筒2内と内筒3内に形成された縦孔W
vで、個別に連通されている。
これら下部配管接続孔W
bと上部配管接続孔W
uと縦孔W
vとでつながる流路が温水流路5の基本構成部となっている。
なお、中間筒2内周面に形成される摺動流路部は後述する。
【0018】
(他の異種流体流路)
本実施形態では他の異種流体流路は空気流路6として割り当てられている。
図5〜
図7に示すように、内筒3の底端には、空気用の3カ所の下部配管接続孔A
bが形成されている。また、中間筒2の上端部における側壁には3カ所の上部配管接続孔A
uが形成されている。
これら下部配管接続孔A
bと上部配管接続孔A
uとは、
図3および
図4に示す中間筒2内と内筒3内に形成された縦孔A
vで、個別に連通されている。
これら下部配管接続孔A
bと上部配管接続孔A
uと縦孔A
vとでつながる流路が空気流路6の基本構成部となっている。
なお、内筒3外周面に形成される摺動流路部は後述する。
【0019】
上記の基本構造に基づき、本実施形態のスイベルジョイントAでは、走行車体上の各供給源から下部配管接続孔P
b,W
b,A
bに送られた作動油、温水、空気は上部配管接続孔P
u,W
u,A
uから取り出され、旋回台上の油圧機器、暖房機器、空圧機器に供給あるいは排出される。
【0020】
(特徴部分)
つぎに、
図1および
図2に基づき、本発明の特徴部分を説明する。
外筒1の内周面における上下方向全域と中間筒2の外表面における上下方向全域は、段差のない等径構造である。
これに対し、中間筒2の内周面と内筒3の外表面とは上下方向の途中に段差があって、その上側と下側とは径が異なる異径構造である。
【0021】
内筒3の段差B
3は、内筒3の上下寸法の約1/2の位置にあって、段差B
3から下の部分は内筒3の外径が大きくなっている。段差B
3から下の部分を内筒径大部3Aといい、上の部分を内筒径小部3Bという。
中間筒2の段差B
2は、内筒3の段差B
3に対応する位置にあり、段差B
2から下の部分を中間筒径大部2Aといい、上の部分を中間筒径小部2Bという。なお、「径大」および「径小」の名称は、中心軸Oからの半径を基準にして命名しているので、中間筒2については、肉薄部が中間筒径大部2Aとなり、肉厚部が中間筒径小部2Bとなる。
【0022】
(作動油流路の摺動流路部)
作動油流路の摺動流路部は、外筒1における内周面の上下方向全域と中間筒2における外周面の上下方向全域との間に設けられている。
中間筒2の外周面は基本的に平坦であり、凹部が形成されたとしても、ごく浅いものである。
一方、外筒1の内周面には、複数本の環状溝が形成される。この環状溝は内周面に設けられることから内環状溝と称され、文字通り外筒1の内周面の全周に沿って形成されている。
図示の実施形態では8本の内環状溝G1〜G8が形成されており、各内環状溝G1〜G8は、上下方向に間隔をあけて形成されている。
【0023】
そして、各内環状溝G1〜G8は、既述した下部配管接続孔P
bと個別に連通している。また、中間筒2内の縦孔P
vとも個別に連通している。このため、中間筒2が回転しても、下部配管接続孔P
bと上部配管接続孔P
uとの間で、作動油を給排することができる。
【0024】
さらに、各段内環状溝G1〜G8の間と、それらの上下外側には、環状のパッキン溝が形成されており、そのなかに環状パッキンpが装入されている。かかるシール構造により、各段内環状溝G1〜G8同士の間で液漏れが生ずることはない。
本実施形態において、内環状溝G1〜G8は8本であるが、7本以下であっても、9本以上であっても、本発明に含まれる。
【0025】
前記内環状溝G1〜G8は鋳造の外筒1の内面加工によって形成するが、外筒1は直径の大きい部材であり、しかも小径部分は存在しないので内面加工は困難ではない。このため、生産性も低下しないし、加工精度も高く維持できる。
【0026】
(温水流路の摺動流路部)
温水流路の摺動流路部は、内筒3の下方部分である内筒径大部3Aと中間筒2の下方部分である中間筒径大部2Aとの間に形成されている。
内筒径大部3Aの外周面は基本的に平坦であり、凹部が形成されたとしても、ごく浅いものである。
一方、中間筒径大部2Aの内周面には、複数本の内環状溝G11,G12が形成されている。また、2本の環状溝G11,G12の上下の外側と中間位には、環状のパッキン溝が形成され、環状パッキンpが装入されている。
【0027】
本実施形態において、内環状溝G11,G12は2本であるが、1本であってもよく、3本以上であってもよい。設けた内環状溝の数だけの温水系統を給排することができる。
【0028】
そして、各内環状溝G11,G12は既述した内筒3に設けた下部配管接続孔W
bと個別に連通しており、中間筒2内の縦孔W
vとも個別に連通している。このため、中間筒2が回転しても、下部配管接続孔W
bと上部配管接続孔W
uとの間で、温水を給排することができる。
【0029】
(空気流路の摺動流路部)
空気流路の摺動流路部は、内筒3の上方部分である内筒径小部3Bと中間筒2の中間部分である中間筒径小部2Bとの間に形成されている。
中間筒径小部2Bの内周面は基本的に平坦であり、凹部が形成されたとしても、ごく浅いものである。
一方、内筒径小部3Bの外周面には、複数本の外環状溝G21,G22,G23が形成されている。また、3本の環状溝G21,G22,G23の間と上下の外側には、環状のパッキン溝が形成され、環状パッキンpが装入されている。
【0030】
本実施形態において、内環状溝G21,G22,G23は3本であるが、2本以下であってもよく、4本以上であってもよい。設けた内環状溝の数に対応した空気系統を給排することができる。
【0031】
そして、各内環状溝G21,G22,G23は既述した内筒3に設けた下部配管接続孔A
bと個別に連通しており、中間筒2内の縦孔A
vとも個別に連通している。このため、中間筒2が回転しても、下部配管接続孔A
bと上部配管接続孔A
uとの間で、空気を給排することができる。
【0032】
上記のように構成された本実施形態のスイベルジョイントAには、つぎの利点がある。
(1)温水は潤滑性に乏しいことから温水流路5の内環状溝G11,G12に隣接するパッキンpの相手摺動面、つまり内筒3の外周面が摩耗しやすいのであるが、摩耗により交換する場合に最も小さい部材である内筒3を交換すればよいので、交換費用が抑制される。
(2)空気流路6の外環状溝G21〜G23は、内筒3の外周面に形成されるので加工が容易である。
(3)内筒3と中間筒2には上下方向の途中に段差B2,B3があるので、中間筒2内に内筒3を組み付けるとき、温水流路5のパッキンpの内面と空気流路6のパッキンpの外面が接触することなく組み付けが可能になる。このため、挿入作業が容易となり、パッキンの変形等の不都合も生じにくい。
【0033】
(他の実施形態)
上記実施形態では他の異種流体流路に空気流6を割り当てたが、任意の種々の流体を給排する流路として割り当てることができ、給排する流体にはとくに制限がない。たとえば、燃料油などの給排流路としても使える。