(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<シリコン含有膜形成用組成物>
当該シリコン含有膜形成用組成物は、ポリシロキサン化合物(A)及び溶媒を含有する。当該シリコン含有膜形成用組成物は、ポリシロキサン化合物(A)を含有するためレジスト膜との密着性に優れる膜を形成できる。その結果、形成されるパターンのパターン倒れ及びレジストの裾引きを低減することができる。また、当該シリコン含有膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸発生体等の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0013】
<ポリシロキサン化合物(A)>
ポリシロキサン化合物(A)は、特定シロキサン構造のうち、(Q2)で表される構造、(Q3)で表される構造及び(Q4)で表される構造を有する。また、
29Si−NMRで求められるシグナルのうち、特定シロキサン構造中のそれぞれのケイ素原子が与えるシグナルの積分値をq1からq4とした場合、下記式(I)で計算されるqの値が0.25以下であり、重量平均分子量が4,000以下である。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
【0014】
当該シリコン含有膜形成用組成物は、ポリシロキサン化合物(A)が上記構造を有し、さらに上記qの値が0.25以下であり、かつ重量平均分子量が4,000以下であることで、高い保存安定性を有し、パターン倒れ及びパターンの裾引きを抑制することができ、かつ硬化前の溶媒耐性に優れる。
【0015】
上記qの値は、通常0.01以上である。qの値の上限としては、上述のように0.25であり、0.2が好ましく、0.15がより好ましい。qの値が上記上限より小さいことで、保存安定性がより向上し、パターン倒れ及びパターンの裾引きをより抑制することができ、かつ硬化前の溶媒耐性により優れる。
【0016】
上記式(Q1)〜(Q4)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。但し、Rはケイ素原子を含まないものとする。*は、ケイ素原子に結合する部位を示す。Rが有機基の場合、Rはケイ素原子に隣接する酸素原子に、炭素原子で結合する。上記Rで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、後述するXとして例示する有機基と同様の基等が挙げられる。特定シロキサン構造は、酸素原子における*で示す結合部位が、ポリシロキサン(A)中の他のケイ素原子と結合する。この他のケイ素原子は、特定シロキサン構造が有するものであってもよい。この場合、隣接する特定シロキサン構造同士が酸素原子を共有する。
【0017】
当該シリコン含有膜形成用組成物が、上記構成を有することで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち、構造(Q1)及び構造(Q2)の含有割合が小さいことで、ポリシロキサン化合物(A)の構造が高い規則性を有し、極性基の配列性及び密度が向上すると考えられる。また、ポリシロキサン化合物(A)の重量平均分子量が上記上限以下であることで、ポリシロキサン化合物(A)を含有する当該シリコン含有膜形成用組成物中において上記特定シロキサン構造がより均一に分布し、上記規則性がより向上すると考えられる。これによりポリシロキサン化合物(A)が有するシロキサン構造とレジスト膜中のカルボキシ基等とが相互作用し、ポリシロキサン化合物(A)を含有するシリコン含有膜とレジスト膜との密着性が向上する。この結果、パターン倒れ及び裾引きが抑制される。また、上記特定シロキサン構造の均一な分布に起因し、当該シリコン含有膜形成用組成物の安定性が向上し、その結果当該シリコン含有膜形成用組成物の硬化前の溶媒耐性及び保存安定性が向上すると考えられる。ここで「シロキサン構造」とは、−Si−O−を含む構造をいう。
【0018】
また、下記式(II)で表されるq’の値の下限としては、0.2が好ましく、0.25がより好ましい。一方、上記q’の値の上限としては、0.7が好ましく、0.6がより好ましい。なお、下記式(II)中、q1〜q4は、上記式(I)と同義である。
q’=(q4)/(q1+q2+q3+q4) (II)
【0019】
このように、特定シロキサン構造の和に対する、構造(Q4)の割合が上記範囲であることで、上述のポリシロキサン化合物(A)の規則性がより向上し、その結果パターン倒れ及び裾引きがより抑制される。
【0020】
なお、本明細書において、
29Si−NMRによって求められるシグナルの積分値は、例えばブルカー・バイオスピン社の核磁気共鳴装置を使用して測定した値である。
【0021】
ポリシロキサン化合物(A)が有する全ケイ素原子に対する上記特定シロキサン構造中のケイ素原子の割合の下限としては、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。上記特定シロキサン構造中のケイ素原子の割合を上記下限以上とすることで、ポリシロキサン化合物(A)の構造の規則性がより向上し、パターン倒れ及び裾引きがより抑制される。
【0022】
[ポリシロキサン化合物の合成方法]
ポリシロキサン化合物(A)の合成方法としては、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう)を酸を用いて縮合する方法が好ましい。この酸により、化合物(I)中のZ
+が水素原子に置換され、シラノール化することにより縮合反応が起こる。
【0024】
上記式(1)中、Xは、−O
−Z
+又は炭素数1〜20の1価の有機基である。Z
+は、1価のカチオンである。
【0025】
上記Xで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間にヘテロ原子含有基を含む基、これらの基の水素原子の一部又は全部を置換基で置換した基等が挙げられる。
【0026】
上記鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0027】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0028】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0029】
上記ヘテロ原子含有基とは、構造中に2価以上のヘテロ原子を有する基をいう。上記ヘテロ原子含有基はヘテロ原子を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。
【0030】
上記ヘテロ原子含有基が有する2価以上のへテロ原子としては、2価以上の原子価を有するヘテロ原子であれば特に限定されず、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子等が挙げられる。
【0031】
上記ヘテロ原子含有基としては、例えば
−SO−、−SO
2−、−SO
2O−、−SO
3−等のヘテロ原子のみからなる基;
−CO−、−COO−、−COS−、−CONH−、−OCOO−、−OCOS−、−OCONH−、−SCONH−、−SCSNH−、−SCSS−等の炭素原子とヘテロ原子とを組み合わせた基などが挙げられる。
【0032】
上記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0033】
上記Z
+で表される1価のカチオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属のイオン;アンモニウムイオン、スルホニウムイオン等のオニウムイオンなどが挙げられる。これらの中で、オニウムイオンが好ましく、アンモニウムイオンがより好ましく、4級のアンモニウムイオンがさらに好ましい。
【0034】
上記Xとしては、−O
−Z
+、アルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロ原子含有脂環式炭化水素基が好ましく、−O
−Z
+、メチル基、フェニル基、アルキルフェニル基、及び環状の酸無水物構造を含む基がより好ましく、−O
−Z
+及びフェニル基がさらに好ましい。
【0035】
上記酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、シュウ酸、マレイン酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらの中で、有機酸が好ましく、カルボン酸がより好ましく、シュウ酸及びマレイン酸がさらに好ましい。
【0036】
上記酸の使用量としては、縮合反応の促進の観点から、化合物(1)1モルに対して、0.2モル以下が好ましく、0.00001モル以上0.1モル以下がより好ましい。
【0037】
上記縮合反応に使用することができる反応溶媒としては、特に限定されるものではないが、通常、後述する当該シリコン含有膜形成用組成物の調製に用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。これらの中で、メタノール、ブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3−メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0038】
上記化合物(I)と上記酸との反応温度の下限としては、0℃が好ましい。一方、上記反応温度の上限としては、15℃が好ましく、10℃がより好ましい。上記化合物(I)と上記酸との反応時間の下限としては、15分が好ましく、30分がより好ましい。一方、上記反応時間の上限としては、24時間が好ましく、12時間がより好ましい。反応温度及び反応時間を上記範囲とすることで、縮合反応を効率的に行うことができる。
【0039】
(化合物(I)の合成方法)
化合物(I)の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば4官能の加水分解性シラン化合物を、高濃度の塩基と反応させることにより加水分解縮合させる方法を挙げることができる。
【0040】
上記4官能の加水分解性シラン化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;テトラフェノキシシラン等のテトラアリールシラン類などが挙げられる。これらの中で、テトラアルコキシシラン類が好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0041】
上記塩基としては、例えばアンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩;ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等のアルコキシドなどが挙げられる。これらの中で、4級のアンモニウム塩が好ましく、水酸化テトラヒドロメチルアンモニウムがより好ましい。
【0042】
上記塩基の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、上記4官能の加水分解性シラン化合物1モルに対して、2モル以下が好ましく、0.8モル以上1.2モル以下がより好ましい。
【0043】
上記加水分解縮合に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。シラン化合物の加水分解性基の合計量1モルに対する水の使用量の下限としては、0.1モルが好ましく、0.3モルがより好ましく、0.5モルがさらに好ましい。一方、上記水の使用量の上限としては、3モルが好ましく、2モルがより好ましく、1.5モルがさらに好ましい。水の使用量を上記範囲とすることで、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
【0044】
上記加水分解縮合に使用することができる反応溶媒としては、特に限定されるものではないが、通常、後述する当該シリコン含有膜形成用組成物の調製に用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。これらの中で、メタノール、ブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3−メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0045】
上記加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜に設定される。反応温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記反応温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。反応時間の下限としては、30分が好ましく、1時間がより好ましい。一方、上記反応時間の上限としては、24時間が好ましく、12時間がより好ましい。反応温度及び反応時間を上記範囲とすることで、加水分解縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解縮合においては、反応系内に4官能の加水分解性シラン化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、又は4官能の加水分解性シラン化合物、水及び触媒を数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解縮合反応の後には、エバポレーションにかけることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することができる。
【0046】
また、上記縮合反応及び加水分解縮合の際、3官能の加水分解性シラン化合物を添加してもよい。このように、3官能の加水分解性シラン化合物を添加することで、ポリシロキサン化合物(A)を含有するシリコン含有膜の光学特性及びエッチング耐性を制御でき、その結果、形成されるレジストパターンの解像度等が向上する。
【0047】
上記3官能の加水分解性シラン化合物としては、例えば芳香環含有トリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、アルケニルトリアルコキシシラン、エポキシ基含有シラン、酸無水物基含有シラン等が挙げられる。
【0048】
上記芳香環含有トリアルコキシシランとしては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン、4−エチルフェニルトリメトキシシラン、4−メトキシフェニルトリメトキシシラン、4−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、4−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、3−エチルフェニルトリメトキシシラン、3−メトキシフェニルトリメトキシシラン、3−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、3−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、3−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2−メチルフェニルトリメトキシシラン、2−エチルフェニルトリメトキシシラン、2−メトキシフェニルトリメトキシシラン、2−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、2−アミノフェニルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2,4,6−トリメチルフェニルトリメトキシシラン、4−メチルベンジルトリメトキシシラン、4−エチルベンジルトリメトキシシラン、4−メトキシベンジルトリメトキシシラン、4−フェノキシベンジルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、4−アミノベンジルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノベンジルトリメトキシシラン、4−アセチルアミノベンジルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
上記アルキルトリアルコキシシランとしては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、メチルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メチルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、エチルビストリス(トリメチルシロキシ)シラン、エチルジクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリクロロシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリクロロシラン、2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−メチルプロピルトリエトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−n−プロポキシシラン、2−メチルプロピルトリ−iso−プロポキシシラン、2−メチルプロピルトリ−n−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−t−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリフェノキシシラン、1−メチルプロピルトリメトキシシラン、1−メチルプロピルトリエトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−n−プロポキシシラン、1−メチルプロピルトリ−iso−プロポキシシラン、1−メチルプロピルトリ−n−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−t−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリクロロシラン、t−ブチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0050】
上記アルケニルトリアルコキシシランとしては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリ−t−ブトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン等が挙げられる。
【0051】
上記エポキシ基含有シランとしては、例えばオキセタニルトリメトキシシラン、オキシラニルトリメトキシシラン、オキシラニルメチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
上記酸無水物基含有シランとしては、例えば2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]無水コハク酸、2−(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、3−(トリメトキシシリル)プロピル無水マレイン酸、2−(トリメトキシシリル)エチル無水グルタル酸等が挙げられる。
【0053】
3官能の加水分解性シラン化合物としては、芳香環含有トリアルコキシシラン、及びアルキルトリアルコキシシラン酸無水物基含有シランが好ましく、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及び2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]無水コハク酸がより好ましい。
【0054】
4官能の加水分解性シラン化合物100質量部に対する3官能の加水分解性シラン化合物の添加量の下限としては、1質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。一方、上記添加量の上限としては、15質量部が好ましく、12質量部がより好ましい。3官能の加水分解性シラン化合物の添加量を上記範囲とすることで、シリコン含有膜の光学性能等をより確実に制御できる。
【0055】
また、ポリシロキサン化合物(A)の合成において使用する加水分解性シラン化合物全体に対する4官能の加水分解性シラン化合物の割合の下限としては、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。4官能の加水分解性シラン化合物の割合を上記下限以上とすることで、ポリシロキサン化合物(A)の構造の規則性がより向上し、パターン倒れ及び裾引きがより抑制され、硬化前の溶媒耐性及び保存安定性がより向上する。
【0056】
ポリシロキサン化合物(A)の合成方法は、上記4官能の加水分解性シラン化合物がテトラメトキシシランであり、上記3官能の加水分解性シラン化合物がフェニルトリメトキシシランである場合、下記スキームにより表すことができる。
【0058】
上記スキーム中、Z
+は1価のカチオンである。
【0059】
上記テトラメトキシシランと、塩基に由来し上記Z
+で表される1価のカチオンとを溶媒中で反応させることにより、化合物(1)が得られる。この反応液に酸及びフェニルトリメトキシシランを添加することで、酸に由来するH
+により、化合物(1)のZ
+が水素原子と置換しシラノール化する。これにより、シラノール化された化合物(1)同士が縮合する。同時に、フェニルトリメトキシシランが加水分解縮合により置換し、上記式(2)で表される重合体が得られる。
【0060】
また、上記スキームでは、フェニルトリメトキシシランを化合物(1)の生成後に添加するが、テトラメトキシシランに添加してもよい。この場合、化合物(1)の生成と同時に、化合物(1)のXで表される基がフェニル基で置換された化合物(以下、「化合物(1’)ともいう」)が生成される。その後、化合物(1)及び化合物(1’)が酸により縮合し、上記式(2)で表される重合体が得られる。
【0061】
ポリシロキサン化合物(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、800が好ましく、1,000がより好ましく、1,200がさらに好ましい。一方、上記Mwの上限としては、4,000であり、3,500が好ましく、3,200がより好ましい。上記Mwが上記下限未満の場合、ポリシロキサン化合物(A)を含有するシリコン含有膜の強度が低下するおそれがある。逆に、上記Mwが上記上限を超えると当該シリコン含有膜形成用組成物中における上記特定シロキサン構造の分布の均一性が向上し難くなるおそれがある。
【0062】
なお、本明細書におけるMwは、GPCカラム(例えば東ソー社の「G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本」)を使用し、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した値である。
【0063】
当該シリコン含有膜形成用組成物におけるポリシロキサン化合物(A)の含有量としては、全固形分に対して、通常、80質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。ポリシロキサン化合物(A)の含有量が上記下限未満の場合、形成されるシリコン含有膜の硬度が低下する場合がある。なお、本明細書において「固形分」とは、試料を175℃のホットプレートで1時間乾燥して揮発物質を除いた残分をいう。
【0064】
[溶媒]
溶媒は、ポリシロキサン化合物(A)及び任意成分を溶解又は分散することができる限り、特に限定されず用いることができる。溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。
【0065】
上記アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、プロパノール、メチルイソブチルカルビノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数3〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノエチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0066】
上記エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジ脂肪族エーテル系溶媒;
アニソール、ジフェニルエーテル等の含芳香環エーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0067】
上記ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトフェノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のジケトン系溶媒等が挙げられる。
【0068】
上記アミド系溶媒としては、例えば
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒;
N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の環状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0069】
上記エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n−ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0070】
上記炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン系溶媒などが挙げられる。
【0071】
溶媒としては、これらの中で、アルコール系溶媒、及びエステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒、及び多価アルコールモノアルキルエーテルアセテート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。溶媒は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0072】
当該シリコン含有膜形成用組成物は水を含有してもよい。水を含有するとポリシロキサン化合物(A)が水和されるため、保存安定性が向上する。また、水を含有するとレジスト下層膜の成膜時の硬化が促進され、緻密な膜を得ることができる。当該シリコン含有膜形成用組成物が水を含有する場合、水の含有率の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。一方、上記含有率の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。水の含有量が上記上限を超えると、当該シリコン含有膜形成用組成物の保存安定性が低下し、また塗布膜の均一性が低下する場合がある。
【0073】
[任意成分]
当該シリコン含有膜形成用化合物が含有できる任意成分としては、例えば酸発生剤、窒素含有化合物、β−ジケトン、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、界面活性剤、塩基発生体等が挙げられる。
【0074】
(酸発生剤)
上記酸発生剤は、露光又は加熱により酸を発生する成分である。当該シリコン含有膜形成用樹脂組成物は、この酸発生剤を含有することにより、常温を含む比較的低温でポリシロキサン化合物(A)等の分子鎖間で有効に架橋反応を生起させることが可能となる。
【0075】
露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、例えば特開2004−168748号公報における段落[0077]〜[0081]に記載の酸発生剤等が挙げられる。
【0076】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、上述の光酸発生剤として例示されているオニウム塩系酸発生剤以外にも、例えば2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等が挙げられる。
【0077】
酸発生剤としては、オニウム塩系酸発生剤が好ましく、スルホニウム塩系酸発生剤、及びヨードニウム塩系酸発生剤がより好ましく、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(アダマンタン−1−イル)−1,1−ジフルオロエタン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウムアダマンタン−1−イルオキシカルボニル−1,1−ジフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノルボルナンスルトン−2−イルオキシカルボニル−1,1−ジフルオロメタンスルホネート、及びジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネートがさらに好ましい。
【0078】
ポリシロキサン化合物(A)100質量部に対する酸発生剤の含有量の上限としては、20質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0079】
(窒素含有化合物)
窒素含有化合物は、塩基性アミノ基を有する化合物、又は酸の作用により塩基性アミノ基となる基を有する化合物である。窒素含有化合物は、シリコン含有膜形成用組成物から得られるシリコン含有膜のアッシング耐性等の特性を向上させる効果を有する。この効果は、窒素含有化合物がシリコン含有膜に存在することにより、シリコン含有膜中の架橋反応が促進されるためと考えられる。
【0080】
窒素含有化合物としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0081】
上記アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0082】
上記アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、N−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0083】
上記ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0084】
上記含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0085】
窒素含有化合物としては、これらの中で、アミド基含有化合物が好ましく、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、及びN−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物がより好ましい。
【0086】
パターン形状を良好にする観点から、ポリシロキサン化合物(A)100質量部に対する窒素含有化合物の含有量の上限としては、通常、30質量部であり、10質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。窒素含有化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0087】
<シリコン含有膜形成用組成物の調製方法>
当該シリコン含有膜形成用組成物は、例えばポリシロキサン化合物(A)に任意成分を任意で混合し、溶媒に溶解または分散して得られる。当該シリコン含有膜形成用組成物の固形分濃度の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。一方、上記固形分濃度の上限としては、20質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。
【0088】
当該シリコン含有膜形成用組成物は、上述のように、パターン倒れ及びレジストの裾引きを抑制することができるので、レジスト下層膜形成用として以下に示すパターン形成方法等に好適に用いることができる。
【0089】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、当該シリコン含有膜形成用組成物を用い、被加工基板の一方の面側にシリコン含有膜を形成する工程(以下、「シリコン含有膜形成工程」ともいう)、レジスト組成物を用い、上記シリコン含有膜上にレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、フォトマスクを介する光の照射により上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、露光されたレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程(以下、「現像工程」ともいう)、及び上記レジストパターンをマスクとし、上記シリコン含有膜及び上記被加工基板を順次ドライエッチングする工程(以下、「ドライエッチング工程」ともいう)を有する。以下、各工程について説明する。
【0090】
[シリコン含有膜形成工程]
シリコン含有膜形成工程では、当該シリコン含有膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、その後加熱することでポリシロキサンが架橋しシリコン含有膜を形成する。
【0091】
上記被加工基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。
【0092】
当該シリコン含有膜形成用組成物の塗布方法としては、例えば回転塗布、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。また、形成されるシリコン含有膜の膜厚としては、通常0.01μm以上1μm以下であり、0.01μm以上0.5μm以下が好ましい。
【0093】
当該シリコン含有膜形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの温度としては、当該シリコン含有膜形成用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃以上200℃以下である。また、PBの時間としては、通常5秒以上600秒以下である。
【0094】
当該シリコン含有膜形成用組成物塗布後における加熱温度の下限としては、特に限定されないが、100℃が好ましく、120℃がより好ましく、150℃がさらに好ましく、200℃が特に好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、450℃が好ましく、400℃がより好ましく、300℃がさらに好ましく、240℃が特に好ましい。上記加熱時間の下限としては、10秒が好ましく、15秒がより好ましく、20秒がさらに好ましく、40秒が特に好ましい。一方、上記加熱時間の上限としては、1時間が好ましく、10分がより好ましく、150秒がさらに好ましく、80秒が特に好ましい。シリコン含有膜を形成する際の加熱温度及び時間を上記範囲とすることで、簡便かつ確実に上記シリコン含有膜を形成することができる。また、上記加熱時の雰囲気としては特に限定されず、空気雰囲気下でも、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0095】
また、上記シリコン含有膜形成工程の前に、被加工基板上に有機膜であるレジスト下層膜を形成し、上記シリコン含有膜形成工程においてシリコン含有膜を上記レジスト下層膜上に形成することもできる。多層レジストプロセスにおいて、被加工基板とシリコン含有膜との間に有機膜であるレジスト下層膜を設けることで、本発明の効果をより発揮させることができる。このレジスト下層膜は、通常、有機下層膜形成用組成物を塗布、乾燥させて形成することができる。
【0096】
さらに、被加工基板上に有機系の反射防止膜を形成し、その上にシリコン含有膜等を形成することもできる。この有機系の反射防止膜としては、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に記載されているものを採用できる。
【0097】
[レジスト膜形成工程]
レジスト膜形成工程では、シリコン含有膜形成工程で形成したレジスト下層膜上に、感放射線性樹脂組成物を塗布し、レジスト膜を形成する。
【0098】
(感放射線性樹脂組成物)
感放射線性樹脂組成物は、酸解離性基を有するベース重合体、酸発生体及び溶媒を含有する。また、感放射線性樹脂組成物は酸拡散制御剤等のその他の成分を含有してもよい。
【0099】
上記ベース重合体は、酸解離性基を有する。酸解離性基とは、酸発生体等から発生する酸により解離する基である。酸解離性基が解離することにより、ベース重合体上にカルボキシ基等の極性基が生じ、露光部及び未露光部の現像液への溶解性の違いが生じる。
【0100】
上記酸解離性基を有するベース重合体としては、通常、感放射線性樹脂組成物が含有する重合体を用いることができ、1−アルキル−1−シクロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造を有する重合体、2−シクロアルキルプロパン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造を有する重合体、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造を有する重合体、及び2−(アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イル(メタ)アクリレートに由来する構造を有する重合体が好ましい。
【0101】
また、上記ベース重合体は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造等の構造を有していてもよい。これらの構造を有することで、レジスト膜の現像液への溶解性をさらに向上させることができる。
【0102】
上記感放射線性樹脂組成物の全固形分中のベース重合体の含有量の下限としては、70質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。
【0103】
上記酸発生体の含有形態としては、低分子化合物の形態、重合体の一部に上記低分子化合物が組み込まれた形態、及びこれらの両方の形態が挙げられる。上記低分子化合物としては、例えば上記シリコン含有膜形成用組成物において例示した酸発生剤と同様の化合物が挙げられる。これらの中で、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩、及びテトラヒドロチオフェニウム塩がより好ましい。
【0104】
酸発生体が上記低分子化合物の場合、上記感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性を確保する観点から、ベース重合体100質量部に対する酸発生体の含有量の下限としては、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、3質量部が特に好ましい。一方、上記含有量の上限としては、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、15質量部が特に好ましい。酸発生体の含有量を上記範囲とすることで、上記感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上する。酸発生体は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0105】
上記溶媒としては、例えば当該シリコン含有膜形成用組成物において例示した溶媒と同様のものが挙げられる。これらの中で、エステル系溶媒、及びケトン系溶媒が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びシクロヘキサノンがより好ましい。上記溶媒は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0106】
上記酸拡散制御剤としては、例えば当該シリコン含有膜形成用組成物において例示した上記窒素含有化合物と同様のもの、及び光崩壊性塩基等が挙げられる。
【0107】
光崩壊性塩基とは露光により弱酸を発生する化合物であり、未露光部ではアニオンによる酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。一方、露光部においては酸を発生してアニオンが消滅するため、酸捕捉機能がなくなる。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、酸解離性基の解離反応のコントラストが向上する。上記光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。このオニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0108】
酸拡散制御剤としては、光崩壊性塩基が好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレート、及びトリフェニルスルホニウムカンファースルホナートがより好ましい。
【0109】
酸拡散制御体が酸拡散制御剤の場合、ベース重合体100質量部に対する酸拡散制御剤の含有量の下限としては、0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、10質量部が好ましく、7質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。酸拡散制御剤の含有量が上記上限を超えると、得られる感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。酸拡散抑制剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0110】
上記感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば上記シリコン含有膜形成工程におけるものと同様のものを用いることができる。また、形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm以上1μm以下であり、0.01μm以上0.5μm以下が好ましい。
【0111】
また、上記感放射線性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの温度及び時間としては、上記シリコン含有膜におけるPBと同様のものとすることができる。
【0112】
さらに、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、保護膜を上記形成したレジスト膜上に設けることもできる。この保護膜としては、例えば特開平5−188598号公報等に記載されているものが挙げられる。加えて、レジスト膜からの酸発生体等の流出を防止するため、例えば特開2005−352384号公報等に記載されている液浸用保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0113】
[露光工程]
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜を露光する。この露光としては、例えば、所望の領域にアイソラインパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、アイソトレンチパターンを形成できる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。複数回露光する場合、例えば所望の領域にラインアンドスペースパターンマスクを介して第1の縮小投影露光を行い、続けて第1の露光を行った露光部に対してラインが交差するように第2の縮小投影露光を行う。第1の露光部と第2の露光部とは直交することが好ましい。直交することにより、露光部で囲まれた未露光部において真円状のコンタクトホールパターンが形成しやすくなる。
【0114】
露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤は、ウェハ上のレジスト層を溶解させず、かつレンズの下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては蒸留水が好ましい。
【0115】
露光に使用される放射線としては、上記感放射線性樹脂組成物が含有する酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば紫外線、遠紫外線、可視光線、EUV、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中で、遠紫外線、EUV、電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV、及び電子線がより好ましい。露光量等の露光条件は、上記感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。当該パターン形成方法においては露光工程を複数回有してもよく、この場合、複数回の露光は同じ光源を用いても異なる光源を用いてもよい。
【0116】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、上記感放射線性樹脂組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEB温度としては、通常、30℃以上200℃以下であり、50℃以上170℃以下が好ましく、70℃以上120℃以下がより好ましい。PEB時間としては、通常、5秒以上600秒以下であり、10秒以上300秒以下が好ましい。
【0117】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像し、乾燥処理等を行う。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。
【0118】
アルカリ現像の場合、上記現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中でも、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0119】
また、有機溶媒現像の場合、上記現像に用いる現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の当該シリコン含有膜形成用組成物の溶媒として列挙した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n−ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2−ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。
【0120】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0121】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0122】
上記現像後に、形成されたレジストパターンをリンス液を用いて洗浄することが好ましい。リンス液としては、アルカリ現像の場合は水が好ましく、純水がより好ましい。有機溶媒現像の場合は、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭素数6〜8の1価のアルコール系溶媒がより好ましく、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、メチルイソブチルカルビノールがさらに好ましい。
【0123】
洗浄処理の方法としては、例えば一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0124】
[ドライエッチング工程]
ドライエッチング工程では、現像工程後のレジストパターンをマスクとし、上記シリコン含有膜をドライエッチングしてシリコン含有パターンを形成する。その後、このシリコン含有パターンをマスクとし、上記被加工基板をドライエッチングして被加工基板にパターンを形成する。
【0125】
このドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、エッチングされるシリコン含有膜の元素組成等により適宜選択することができ、例えばCHF
3、CF
4、C
2F
6、C
3F
8、SF
6等のフッ素系ガス、Cl
2、BCl
3等の塩素系ガス、O
2、O
3、H
2O等の酸素系ガス、H
2、NH
3、CO、CO
2等のガス、He、N
2、Ar等の不活性ガス等が挙げられる。これらのガスは1種又は2種以上を用いることができる。
【0126】
シリコン含有膜のエッチングに用いるエッチングガスとしては、フッ素系ガスが好ましく、フッ素系ガスに酸素系ガス及び不活性ガスを混合したものがより好ましい。被加工基板のエッチングに用いるエッチングガスとしては、酸素系ガスが好ましく、酸素系ガスに不活性ガスを混合したものがより好ましい。
【0127】
また、上記レジスト下層膜を形成する場合、ドライエッチング工程では、シリコン含有パターンをマスクとしてレジスト下層膜をエッチングし、続いて被加工基板をエッチングする。このレジスト下層膜のエッチングに用いるエッチングガスとしては、酸素系ガスが好ましく、酸素系ガスに不活性ガスを混合したものがより好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定的に解釈されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0129】
[Mw及びMn測定]
ポリシロキサン化合物のMw及びMnは、下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
カラム:東ソー社の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0130】
[
29Si−NMR分析]
実施例1〜6及び比較例1で得られた各樹脂溶液2.4g及びトリス(2,4−ペンタンジオナト)クロム(III)を重ベンゼン1.0gに溶解させたものをサンプルとし、核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン社)を用い上記サンプルの
29Si−NMR測定を行った。この
29Si−NMR測定により得られた各スペクトルのケミカルシフトの違いに基づき、ポリシロキサン化合物の有するケイ素原子が与えるシグナルの積分値の総和に対する、特定シロキサン構造に含まれるケイ素原子が与えるシグナルの積分値の割合Q(%)を求めた。また、下記式(III)〜(VI)で表される、S1〜S4の値を求めた。
S1=(q1/q1+q2+q3+q4)×100 (III)
S2=(q2/q1+q2+q3+q4)×100 (IV)
S3=(q3/q1+q2+q3+q4)×100 (V)
S4=(q4/q1+q2+q3+q4)×100 (VI)
(上記式(III)〜(VI)中、q1〜q4は、上記式(I)と同義である。)
【0131】
<ポリシロキサン化合物の合成>
下記方法に従いポリシロキサン化合物をそれぞれ合成した。ポリシロキサン化合物の合成に用いた化合物を以下に示す。
【0132】
[加水分解性シラン化合物]
M−1:テトラメトキシシラン(下記式M−1で示す化合物)
M−2:フェニルトリメトキシシラン(下記式M−2で示す化合物)
M−3:4−メチルフェニルトリメトキシシラン(下記式M−3で示す化合物)
M−4:メチルトリメトキシシラン(下記式M−4で示す化合物)
M−5:2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]無水コハク酸(下記式M−5で示す化合物)
【0133】
【化4】
【0134】
[触媒]
S−1:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
S−2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
S−3:シュウ酸2水和物
【0135】
[実施例1]
[ポリシロキサン化合物(A−1)の合成]
触媒(S−1)12.86gを水38.57gに加熱溶解させ水溶液を調製した。次いで、この水溶液51.42g及びメタノール13.46gをフラスコに投入し、このフラスコに冷却管と化合物(M−1)30.67g及び化合物(M−2)4.44gを入れた滴下ロートとをセットした。その後、フラスコをオイルバスにて40℃に加熱し、滴下ロートから化合物(M−1)及び化合物(M−2)をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを10℃以下に冷却した。ここに、無水マレイン酸16.60gを水60.96gに溶解させマレイン酸水溶液77.56gを別途調製し、10℃以下に冷却した。次いで、このマレイン酸水溶液に上記反応溶液を滴下して10℃以下で30分間攪拌した。攪拌後の反応溶液に1−ブチルアルコール177.56gを添加し分液ロートへ移し、水355.11gを添加して水洗を3回行った。水洗後の反応溶液をフラスコへ移し、このフラスコにプロピレングリコール−1−エチルエーテル177.56gをさらに投入した。その後、上記フラスコをエバポレーターにセットし、1−ブタノールを除去して樹脂溶液71.02gを得た。この樹脂溶液中における固形分をポリシロキサン化合物(A−1)とする。得られた樹脂溶液中の固形分の含有割合は15.0質量%であった。また、ポリシロキサン化合物(A−1)の重量平均分子量(Mw)は3,100であり、Qの値は86%であり、S1〜S4の値は、それぞれ0%、13%、60%及び27%であった。また、下記式(I)で表されるqの値は0.13であり、下記式(II)で表されるq’の値は0.27であった。
q=(q1+q2)/(q1+q2+q3+q4) (I)
q’=(q4)/(q1+q2+q3+q4) (II)
【0136】
[実施例2]
[ポリシロキサン化合物(A−2)の合成]
触媒(S−1)12.86gを水38.57gに加熱溶解させ水溶液を調製した。次いで、この水溶液51.42g及びメタノール13.46gをフラスコに投入し、このフラスコに冷却管と化合物(M−1)30.67gを入れた滴下ロートとをセットした。その後、フラスコをオイルバスにて40℃に加熱し、滴下ロートから化合物(M−1)をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。その後、化合物(M−2)4.44gを入れた滴下ロートをフラスコにセットし、化合物(M−2)をゆっくり滴下し、60℃で2時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを10℃以下に冷却した。ここに、無水マレイン酸16.60gを水60.96gに溶解させマレイン酸水溶液77.56gを別途調製し、10℃以下に冷却した。次いで、このマレイン酸水溶液に上記反応溶液を滴下して10℃以下で30分間攪拌した。攪拌後の反応溶液に1−ブチルアルコール177.56gを添加し分液ロートへ移し、水355.11gを添加して水洗を3回行った。水洗後の反応溶液をフラスコへ移し、このフラスコにプロピレングリコール−1−エチルエーテル177.56gをさらに投入した。その後、上記フラスコをエバポレーターにセットし、1−ブタノールを除去して樹脂溶液71.02gを得た。この樹脂溶液中における固形分をポリシロキサン化合物(A−2)とする。得られた樹脂溶液中の固形分の含有割合は14.0質量%であった。また、ポリシロキサン化合物(M−2)の重量平均分子量(Mw)は2,700であり、Qの値は84%であり、S1〜S4の値は、それぞれ1%、10%、66%及び23%であった。また、上記式(I)で表されるqの値は0.11であり、上記式(II)で表されるq’の値は0.23であった。
【0137】
[実施例3〜11]
[ポリシロキサン化合物(A−3)〜(A−11)の合成]
下記表1に示す種類及び使用量の各化合物及び触媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリシロキサン化合物(A−3)〜(A−11)を合成した。各実施例において得られた樹脂溶液における固形分の含有割合並びにポリシロキサン化合物のMw、Qの値、S1〜S4の値、qの値及びq’の値を表1及び表2に併せて示す。
【0138】
[比較例1]
[ポリシロキサン化合物(CA−1)の合成]
触媒(S−3)1.28gを水12.85gに加熱溶解させ触媒水溶液を調製した。次いで、化合物(M−1)25.05g、化合物(M−2)3.63g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル57.19gをフラスコに投入し、このフラスコに冷却管と触媒水溶液を入れた滴下ロートとをセットした。その後、フラスコをオイルバスにて60℃に加熱し、滴下ロートから触媒水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを冷却してからエバポレーターにセットし、反応により生成したメタノールを除去して樹脂溶液97.3gを得た。この樹脂溶液中における固形分をポリシロキサン化合物(CA−1)とする。得られた樹脂溶液中の固形分の含有割合は18.0質量%であった。また、得られたポリシロキサン化合物(CA−1)の重量平均分子量(Mw)は2,000であり、Qの値は90%であり、S1〜S4の値は、それぞれ3%、25%、54%及び18%であった。また、上記式(I)で表されるqの値は0.28であり、上記式(II)で表されるq’の値は0.18であった。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
<シリコン含有膜形成用組成物の調製>
シリコン含有膜形成用組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0142】
[酸発生剤]
B−1:下記式(B−1)で示す化合物
B−2:下記式(B−2)で示す化合物
B−3:下記式(B−3)で示す化合物
【0143】
【化5】
【0144】
[溶媒]
C−1:プロピレングリコールモノエチルエーテル
C−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0145】
[実施例12]
ポリシロキサン化合物としての(A−1)1.93質量部、酸発生剤としての(B−1)0.06質量部、並びに溶媒としての(C−1)93.11質量部及び(C−2)4.90質量部を混合し、この混合液を0.2μmメンブレンフィルターでろ過してシリコン含有膜形成用組成物(L−1)を得た。
【0146】
[実施例13〜31及び比較例2〜4]
下記表3に示す種類及び使用量の各化合物を用いた以外は、実施例12と同様にしてシリコン含有膜形成用組成物(L−2)〜(L−20)及び(CL−1)〜(CL−3)を調製した。
【0147】
【表3】
【0148】
<評価用基板の製造>
[感放射線性樹脂組成物(J−1)の調製]
重合体(R−1)及び(R−2)の合成に用いた各単量体を以下に示す。
【0149】
【化6】
【0150】
(重合体(R−1)の合成)
化合物(r−1)4.0g(10mol%)、化合物(r−2)14.8g(40mol%)、(r−3)5.1g(10mol%)、及び化合物(r−5)19.5g(40mol%)を、2−ブタノン60gに溶解し、さらにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.7gを投入した単量体溶液を準備した。一方で、30gの2−ブタノンを投入した200mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、600gのメタノールへ投入して、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を150gのメタノールにて2度スラリー状で洗浄した後、再度ろ別し、50℃にて17時間乾燥して白色粉末の共重合体を得た。得られた共重合体のMwは12,000、Mw/Mnは1.5、収率は50%であった。また、
13C−NMR分析の結果、化合物(r−1)に由来する構造単位:化合物(r−2)に由来する構造単位:化合物(r−3)に由来する構造単位:化合物(r−5)に由来する構造単位の含有比率(mol%)は、11:38:10:41であった。この共重合体を重合体(R−1)とする。なお、
13C−NMR分析は、日本電子社製JNM−ECX400を使用し、測定溶媒として重クロロホルムを使用して行った。重合体における各構造単位の含有率は、
13C−NMRで得られたスペクトルにおける各構造単位に対応するピークの面積比から算出した。
【0151】
(重合体(R−2)の合成)
化合物(r−4)60.7g(60mol%)、化合物(r−6)33.1g(25mol%)、化合物(r−7)18.8g(15mol%)を、2−ブタノン100gに溶解して溶解溶液を得た。得られた溶解溶液にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3.7gを投入して単量体溶液を準備した。次に、2−ブタノン100gを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした。窒素パージ後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて上記三口フラスコ内に3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間行って重合溶液を得た。重合終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却し、800gのメタノール/水=19/1に投入して白色物質を析出させた。上澄み溶液を除去した後、800gのメタノール/水=19/1で洗浄した。その後、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルで溶媒置換し、重合体(R−2)の溶液を得た(収率66%)。この共重合体は、分子量(Mw)が6,700、Mw/Mnが1.6、13C−NMR分析の結果、化合物(r−4)に由来する構造単位:化合物(r−6)に由来する構造単位化:化合物(r−7)に由来する構造単位の含有比率(mol%)は、62:23:15であった。
【0152】
感放射線性樹脂組成物(J−1)の調製に用いた各成分を以下に示す。
【0153】
(酸発生剤)
b−1:下記式(b−1)で示す化合物
【0154】
【化7】
【0155】
(酸拡散制御剤)
(d−1):下記式(d−1)で示す化合物
【0156】
【化8】
【0157】
(溶媒)
(e−1):酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
(e−2):シクロヘキサノン
(e−3):γ−ブチロラクトン
【0158】
重合体(R−1)100質量部、重合体(R−2)3質量部、酸発生剤(b−1)10質量部、酸拡散制御剤(d−1)1.4質量部、並びに溶媒(e−1)2,185質量部、溶媒(e−2)935質量部、及び溶媒(e−3)30質量部を混合し、この混合液を0.2μmメンブレンフィルターでろ過することで感放射線性樹脂組成物(J−1)を調製した。
【0159】
[シリコン含有膜の形成]
12インチシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して反射防止膜形成材料(JSR株式会社の「HM8006」)を塗布し、250℃で60秒加熱して膜厚100nmの反射防止膜を形成した。この反射防止膜の表面に、上記スピンコーターを用いて各シリコン含有膜形成用組成物を塗布し、ホットプレートを用いて220℃で1分間加熱した後23℃で60秒間冷却し膜厚30nmのシリコン含有膜を形成した。このシリコン含有膜の膜厚の測定には膜厚測定装置(J.A.Woollam社の「M−2000D」)を用いた。
【0160】
[レジストパターンの形成]
上記シリコン含有膜の表面に、上記スピンコーターを用いて上記感放射線性樹脂組成物(J−1)を塗布し、90℃で60秒加熱した後、23℃で30秒冷却して膜厚100nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜をArF液浸露光装置(NIKON社の「S610C」)を使用し、NA:1.30、Dipoleの光学条件にて、40nmライン/80nmピッチ形成用のマスクサイズのマスクを介して露光した。露光後、レジスト塗布現像装置(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK Lithius Pro−i」)を用い100℃で60秒PEBを行い、23℃で30秒冷却した。その後、酢酸ブチルを用い、23℃で30秒間パドル現像を行い、次いで、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)を用いて10秒間リンスした。リンス後、2000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmライン/80nmピッチのレジストパターンを形成した。
【0161】
<評価>
上記形成したレジストパターンについて下記方法に従って測定することにより、各シリコン含有膜形成用組成物のパターン倒れ耐性及びパターン形状について評価した。なお、レジストパターンの測長及び観察には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG−4000」)を用いた。
【0162】
[パターン倒れ耐性]
上記レジストパターンの形成において、ラインの線幅が38nm、隣り合うライン間の距離(スペース)が40nmであるパターンを形成する露光量を最適露光量とした。この最適露光量を基準とし、段階的に露光量を減少させ順次露光を行い、得られる線幅を測定した。露光量の減少に伴いパターンの線幅も小さくなり、線幅が一定値より小さくなった時点でレジストパターンの倒壊が観察される。そこで、レジストパターンの倒壊が確認されない最小の露光量に対応する線幅を最小倒壊前寸法(nm)と定義してパターン倒れ耐性の指標とした。パターン倒れ耐性は、最小倒壊前寸法が32nm以下の場合は「A」と、32nmを超え38nm以下の場合は「B」と、38nmを超える場合は「C」と評価した。上記評価中、A及びBを合格とする。この評価結果を表4に示す。
【0163】
[パターン形状]
パターン形状は、レジストパターンに裾引きがない場合を「A」と、パターン倒れ又は裾引きがある場合を「C」と評価した。上記評価中、Aを合格とする。この評価結果を表4に示す。
【0164】
[未硬化膜の溶媒耐性]
また、12インチシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して上記実施例及び比較例で調製したそれぞれのシリコン含有膜形成用組成物を塗布し、室温で30分静置した。次いで、塗布したシリコン含有膜形成用組成物の表面にシンナー(東京応化工業社の「OK73シンナー」)を塗布し30秒間静置した後、シンナーを除去した。シンナー塗布前と塗布後のシリコン含有膜形成用組成物の厚みを高速分光エリプソメーター(J.A.Woollam社の「M−2000」)を用いて測定し、塗布前厚み(T
0)と塗布後厚み(T)との差(T
0−T)を求め、塗布前厚みに対する上記差の割合((T
0−T)/T
0)を未硬化膜の溶媒耐性の指標とした。上記割合が80%を超える場合を「A」、60%を超え80%以下である場合を「B」、60%以下である場合を「C」と評価した。上記評価中、A及びBを合格とする。
【0165】
[保存安定性]
さらに、上記実施例及び比較例で調製したシリコン含有膜形成組成物を40℃で1週間加熱した。加熱前と加熱後のシリコン含有膜形成組成物の重量平均分子量をそれぞれ測定し、加熱後分子量(Mw
h)と初期分子量(Mw
0)との差(Mw
h−Mw
0)を求め、初期分子量に対する上記差の割合((Mw
h−Mw
0)/Mw
0)を保存安定性の指標とした。上記割合が20%以下である場合を「A」、20%を超え30%以下である場合を「B」、30%を超える場合を「C」と評価した。上記評価中、A及びBを合格とする。
【0166】
【表4】
【0167】
表4に示すように、実施例のシリコン含有膜形成用組成物を用いたシリコン含有膜では、パターン倒れ耐性に優れ、パターンの裾引きも軽減されていた。一方、比較例のシリコン含有膜では、いずれもパターン倒れ耐性に劣り、パターンの裾引きが生じ易い傾向がある。
【0168】
さらに、実施例のシリコン含有膜形成用組成物は、未硬化の状態における溶媒耐性及び保存安定性に優れていた。一方、比較例のシリコン含有膜形成用組成物は、未硬化の状態における溶媒耐性に劣り、保存安定性にも劣っていた。