特許第6511929号(P6511929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511929
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】遠方監視システム及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20190425BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20190425BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20190425BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   H04Q9/00 311J
   G05B23/02 302Z
   H02J13/00 301A
   H02J1/00 307F
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-82957(P2015-82957)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-208067(P2016-208067A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】越谷 涼
(72)【発明者】
【氏名】小野 一史
【審査官】 塩澤 如正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−033674(JP,A)
【文献】 特開2015−037015(JP,A)
【文献】 特開2012−029020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
G05B 23/02
H02J 1/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象から監視情報を取得する端末装置と、該端末装置の監視情報を通信回線を介して受信する監視装置と、を備える遠方監視システムであって、
前記端末装置は、
前記監視対象から取得した入力信号に基づいて前記監視対象の監視制御を行う処理部と、
前記処理部の機能毎に割り当てられた複数の電源と環境発電技術により発電して少なくとも前記複数の電源のいずれか1つに電力を供給する発電装置とを備え、前記処理部が実行する機能に応じて前記電源の開閉動作を行う電源回路と、
前記端末装置の監視情報を前記監視装置に送信する通信部と、を備え、
前記処理部は、前記監視対象の監視制御を行う稼働状態と消費電力を抑えた待機状態とを切り替えて前記監視対象の監視制御を行うものであり、前記入力信号に基づいた起動に加え、少なくとも定期起動用回路による定期的な起動または前記監視装置からの起動信号に基づいた起動の複数の起動条件で、前記待機状態から前記稼働状態に切り替えて前記監視対象の監視制御を行い、
前記処理部は、前記起動条件の起動要因を分析し、前記電源回路に前記起動要因に応じた処理を行う機能に対応づけられた電源を投入させ、前記起動要因に応じた処理を実行する、ことを特徴とする遠方監視システム。
【請求項2】
前記入力信号は、アナログ入力信号であり、
前記端末装置は、前記アナログ入力信号の変化量が予め定められたしきい値を超えた場合に、前記処理部を前記待機状態から前記稼働状態に遷移させるアナログ入力回路を備え、
前記処理部は、前記待機状態において、前記アナログ入力信号の変化量が前記しきい値を超えた場合に、割り込み処理により前記待機状態から前記稼働状態への切り替えを行い、前記アナログ入力信号による割り込み要因に応じたイベント処理を行い、前記イベント処理終了後、再度前記処理部を前記稼働状態から前記待機状態に遷移させる、ことを特徴とする請求項1に記載の遠方監視システム。
【請求項3】
前記アナログ入力信号の変化量が前記しきい値を超えた状態から前記しきい値を下回った場合に、前記処理部で割り込み処理を行い、前記アナログ入力信号の変化量が前記しきい値を超えた時間を把握する、ことを特徴とする請求項2に記載の遠方監視システム。
【請求項4】
前記入力信号は、ディジタル入力信号であり、
前記端末装置は、前記ディジタル入力信号の状態変化に応じて、前記処理部を前記待機状態から前記稼働状態に遷移させるディジタル入力回路を備え、
前記処理部は、前記待機状態において、前記ディジタル入力信号の状態変化に応じて、割り込み処理により前記待機状態から前記稼働状態への切り替えを行い、前記ディジタル入力信号による割り込み要因に応じたイベント処理を行い、前記イベント処理終了後、再度前記処理部を前記稼働状態から前記待機状態に遷移させる、ことを特徴とする請求項1に記載の遠方監視システム。
【請求項5】
前記ディジタル入力信号の状態変化が、前記稼働状態に切り替わる前の状態に復帰した場合に、前記処理部で割り込み処理を行い、前記ディジタル入力信号の状態変化により前記待機状態から前記稼働状態に切り替わった時間を把握する、ことを特徴とする請求項4に記載の遠方監視システム。
【請求項6】
前記端末装置は、前記端末装置の監視情報を時系列化して記録する記録部を有し、
前記端末装置は、前記記録部に記録されたデータを、予め定められたタイミングで前記監視装置に送信することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の遠方監視システム。
【請求項7】
監視対象から取得した入力信号に基づいて前記監視対象の監視制御を行う処理部と、
前記処理部の機能毎に割り当てられた複数の電源と環境発電技術により発電して少なくとも前記複数の電源のいずれか1つに電力を供給する発電装置とを備え、前記処理部が実行する機能に応じて前記電源の開閉動作を行う電源回路と、
前記監視対象の監視情報を通信回線を介して上位の監視装置に送信する通信部と、を備え、
前記処理部は、前記監視対象の監視制御を行う稼働状態と消費電力を抑えた待機状態とを切り替えて前記監視対象の監視制御を行うものであり、前記入力信号に基づいた起動に加え、少なくとも定期起動用回路による定期的な起動または前記監視装置からの起動信号に基づいた起動の複数の起動条件で、前記待機状態から前記稼働状態に切り替えて前記監視対象の監視制御を行い、
前記処理部は、前記起動条件の起動要因を分析し、前記電源回路に前記起動要因に応じた処理を行う機能に対応づけられた電源を投入させ、前記起動要因に応じた処理を実行する、ことを特徴とする端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠方監視システム及び遠方監視システムの端末装置に関する。特に、端末装置の省電力制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠方監視システムは、一般に、親局装置(サーバ)に多数の子局装置(端末装置)が専用回線または公衆回線でネットワーク接続され、一定周期または変化発生時に監視データの送受信を行い、監視対象機器等の状態を監視するようにしている(例えば、特許文献1,2)。なお、遠方監視制御システムの場合には監視データの他に制御データの送受信を行い、監視対象機器等の制御が行われる。
【0003】
近年、端末装置のマイクロコンピュータ、無線、及びセンサ等の省電力化が進むとともに、室内光、熱、振動等のエネルギーから電力を得るエネルギーハーベスティング技術(環境発電技術)が進歩しており、端末装置におけるエネルギーハーベスティング技術の適用が注目されている(例えば、特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−362510号公報
【特許文献2】特開2005−073131号公報
【特許文献3】特開2014−007486号公報
【特許文献4】特開2012−029020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エネルギーハーベスティング技術により得られる電力は微弱であるため、エネルギーハーベスティング技術による発電量が十分でない場合は通信を行うことが出来ず、決まった時間に確実に通信を行うことが困難となるおそれがある。
【0006】
また、別途制御電源を設けると、端末装置を敷設するために電源工事を伴うこととなり、端末装置の敷設に費用や労力がかかることとなる。
【0007】
このような理由から、エネルギーハーベスティング技術により得られる微弱な電力により端末装置を動作させるために、端末装置のさらなる省電力化が求められている。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、端末装置の省電力化に貢献する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の遠方監視システムは、監視対象から監視情報を取得する端末装置と、該端末装置の監視情報を通信回線を介して受信する監視装置と、を有する遠方監視システムであって、前記端末装置は、前記監視対象から取得した入力信号に基づいて監視対象の監視制御を行う処理部と、環境発電技術により発電する発電装置と、前記端末装置の監視情報を前記監視装置に送信する通信部と、を有し、前記処理部は、予め定められた周期で、前記入力信号に基づいて前記監視対象の監視制御を行う稼働状態と、消費電力を抑えた待機状態と、を切り替えて前記監視対象の監視制御を行い、前記待機状態において、前記入力信号を受信し、受信した入力信号に基づいて、前記待機状態から前記稼働状態への切り替えを行うことを特徴としている。
【0010】
また、上記目的を達成する本発明の端末装置は、監視対象の監視制御を行う処理部と、環境発電技術により発電する発電装置と、前記監視対象の監視情報を通信回線を介して上位の監視装置に送信する通信部と、を有し、前記処理部は、予め定められた周期で、前記監視対象から取得した入力信号に基づいて前記監視対象の監視制御を行う稼働状態と、消費電力を抑えた待機状態と、を切り替えて前記監視対象の監視制御を行い、前記待機状態において、前記入力信号を受信し、受信した入力信号に基づいて、前記待機状態から前記稼働状態への切り替えを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上の発明によれば、端末装置の消費電力が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る遠方監視システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る端末装置のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る端末装置の概略を説明するブロック図である。
図4】(a)AI信号に基づくスリープ状態解除の処理手順を示すフローチャート、(b)割り込み発生時の処理手順を示すフローチャートである。
図5】電源回路のブロック図である。
図6】端末装置の動作時に流れる電流値の一例を示す図である。
図7】回路構成を説明する説明図である。
図8】端末装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る遠方監視システム及び端末装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)AI信号またはDI信号に基づくスリープ状態から稼働状態への遷移
(1)基本構成
図1は、本発明の実施形態に係る遠方監視システム1の基本構成を示す図である。このシステムの基本構成は、既に提案(例えば、特開2006−033441号)しているもので、端末装置(ワイヤレステメトリング装置)2は、監視対象3からの入力信号に基づいて監視対象3の監視を行うCPU(マイクロコンピュータ)4と、CPU4で加工された情報を上位の監視サーバ5に送信する通信部6と、を備える。
(2)具体的な構成
図2に示すように、端末装置2は、制御回路基板2aと、電源IO回路基板2bと、を有する。制御回路基板2aは、CPU4、通信部6等を実装し、電源IO回路基板2bは、ディジタル入力(DI)回路7a,7b、ディジタル出力(DO)回路7c、アナログ入力(AI)回路8及びエネルギーハーベスティング電源回路9等を実装する。
【0015】
CPU4は、監視対象3からの入力データ(例えば、風力発電装置に設けられた加速度センサや管渠内の水位を計測する水位計等の各種センサからの入力データ等)に基づいて、監視対象3の監視や監視情報の収集を行う。CPU4は、監視対象3からの入力データに基づく監視制御を行う稼働状態と、消費電力を抑えて待機するスリープ状態と、を切り替えて監視制御を行う。したがって、CPU4は、様々なスリープ状態からの起動条件を有することとなる。例えば、スリープ状態からの起動条件として、ディジタル入力回路7aやアナログ入力回路8からの入力信号に基づいた起動、内蔵の定期起動用回路10による定期的な起動及び監視サーバ5からの起動信号に応じた起動等の起動条件を有する。
【0016】
通信部6は、計測・監視した結果を上位のシステムに伝送する。通信部6は、携帯電話網の通信回線(例えば、3G/LTE通信回線)にて、これら情報を伝達する。なお、端末装置2は、通信部6の他に、Bluetooth(登録商標)通信部11、USB通信部12、特定小電力無線通信部13等の他の通信部を有する。
【0017】
Bluetooth(登録商標)通信部11は、端末装置2に近接した装置との情報伝達手段であり、現場でのPC・タブレットとの無線通信を可能とする。Bluetooth(登録商標)では、端末装置2に近接して配置された装置にペアリングを実施して情報が伝達される。
【0018】
USB通信部12は、メンテナンスポートと直接接続され、有線でデータが入出力される。USB通信部12は、外部インタフェースのシリアルポートを介してコンピュータ等による設定を可能にするものであり、例えば、USB通信部12を介して予め設定された設定ファイルを端末装置2に読み込ませて端末装置2の設定が行われる。
【0019】
特定小電力無線通信部13は、端末装置2間等の無線によるネットワークを構築する。例えば、上位の端末装置2と下位の端末装置2との間で、特定小電力無線等を使用してローカルな無線通信を構築することで、上位の端末装置2が情報を伝達及び中継する機能を有することとなる。このように、複数の端末装置2間を中継して通信を行うことで、伝送距離を稼ぎ、通信障害発生時に別ルート経由で情報を伝達することができる。また、末端側の端末装置2の情報を上位の端末装置2に集約して上位システムに転送することで、上位の端末装置2を携帯電話網の通信回線のアクセスポイントやルータの役割として機能させることができる。
【0020】
エネルギーハーベスティング電源回路9は、例えば、熱(温度差)発電装置9A、振動発電装置9B、光発電装置9C(室内光、太陽光発電装置)等のエネルギーハーベスティング技術(環境発電技術)を用いた発電装置が接続される回路である。実施形態に係る端末装置2では、エネルギーハーベスティング電源回路9として、熱発電回路9a、振動発電回路9b、光発電回路9cを備えた形態を例示して説明するが、エネルギーハーベスティング電源回路9には、端末装置2の設置環境に応じたエネルギーハーベスティング電源が設けられることとなる。
【0021】
熱発電回路9aは、ペルチェ素子等の温度差により出力電圧が生じる熱発電装置9Aが接続される。熱発電装置9Aは、発熱部やフィン等による廃熱を効率よく利用することができる。
【0022】
振動発電回路9bは、振動発電素子(例えば、MFC(MACRO FIBER COMPOSITE)や、ピエゾ素子、エレクトレッド電極等の圧電素子)の振動で発電する振動発電装置9Bが接続される。振動発電素子は、数Hzから数百kHzの振動環境において、共振により発電し、交流電力を出力する。振動発電装置9Bの例としてMFCの場合、無負荷時の出力電圧〜360Vp−p、出力電流〜0.5mA、出力電力〜10mW程度の電力エネルギーが得られる。
【0023】
光発電回路9cは、照明光発電装置や太陽光発電装置等の光発電装置9Cが接続される。照明光発電装置としては、例えば、集積型アモルファスシリコン太陽電池や色素増感型光発電装置等があり、室内照度が50〜5,000ルクスの場合、無負荷時の電圧〜約7V、出力電流〜数mA、出力電力〜数百mW程度の電力エネルギーが得られる。また、太陽光発電装置としては、太陽光パネルや太陽光発電モジュール等があり、屋外照度が50,000〜100,000ルクスの場合、無負荷時の出力電圧〜数十V、出力電流〜数百mA、出力電力〜数百mW程度の電力エネルギーが得られる。
【0024】
なお、エネルギーハーベスティング電源により得られる電力は微弱であるため、電源IO回路基板2bには、外部電源回路14や充放電回路15が設けられる。外部電源回路14には、リチウムイオン電池等の一次電池が接続される。また、充放電回路15には、エネルギーハーベスティング電源からの電力により充電される二次電池(リチウムイオン電池、キャパシタ、鉛蓄電池等)が接続される。
(3)端末装置2の間欠動作
図3を参照して、端末装置2の動作について、詳細に説明する。
【0025】
端末装置2は、電源回路(例えば、エネルギーハーベスティング電源回路9)から供給される電源を元にCPU4が動作し、また、分割した機能単位毎に電源を開閉できる機構をもった電源回路9を有する。また、端末装置2は、定期起動用回路10に加えて、ディジタル入力回路7aまたはアナログ入力回路8からの入力信号に応じてスリープ状態から起動する機能を有する。
【0026】
つまり、CPU4には、CPU4がスリープ状態のときに、アナログ入力回路8からAI信号が入力可能となっており、CPU4は、入力信号に応じてスリープ状態から稼働状態へ遷移する。また、CPU4には、CPU4がスリープ状態のときに、ディジタル入力回路7aからDI信号が入力可能となっており、CPU4は、入力信号に応じてスリープ状態から稼働状態へ遷移する。
【0027】
CPU4は起動したとき、更にアナログ入力回路8でアナログ値をA/D変換し計測値としたり、DIの状態を監視したりできるものとする。また、電源回路9に対して、必要な機能部位の電源を投入することで、例えば、設定スイッチ20の情報、機能選択スイッチ(例えば、ロータリースイッチ18)の情報をロジック回路17を経由して、読み出して、起動後の機能を選択することが可能である。また、その結果は、表示部19に表示をする。必要に応じて通信部6を経て監視サーバ5に情報を送信することが可能である。監視サーバ5からの指令によっては、ディジタル出力回路7cを介した出力を外部に出力することも可能である。
【0028】
(3.1)AI信号によるスリープ状態から稼働状態への遷移
アナログ入力回路8では、予めしきい値が設定されており、設定されたしきい値を超える入力量が発生した時、CPU4は、割り込みをかけ、スリープ状態から稼働状態に遷移する。具体的に説明すると、外部のアナログ入力変化量を、CPU4のアナログ入力部のコンパレータによる比較割込回路に接続することで、アナログ量の変化が予め設定したしきい値を超えた場合に、CPU4をスリープ状態から起動状態に遷移させることができる。
【0029】
図4(a)及び(b)を参照して、スリープ状態から稼働状態への遷移手順について説明する。
【0030】
まず、図4(a)に示すように、CPU4は、一部のハードウェアだけが動作する低消費電力モード(スリープ状態)を有しており、通常はスリープ状態で待機することで無駄な消費電流を抑制している(ステップs1)。
【0031】
アナログ入力回路8からCPU4へ入力されるAI信号が、予め設定されたしきい値を超えた場合、CPU4は、割り込み処理を行う(ステップs2)。
【0032】
割り込み処理では、図4(b)に示すように、割り込み要因を分析し(ステップs3)、割り込み要因に応じたイベント処理を行う(ステップs4)。そして、イベント処理が終了した後に、再度CPU4を、稼働状態からスリープ状態に遷移させる(ステップs5)。
【0033】
(3.2)DI信号によるスリープ状態から稼働状態への遷移
端末装置2は、ディジタル入力回路7aを備え、ディジタル入力回路7aは、外部の接点信号、外部の電圧レベル、外部の電流による信号を絶縁して処理する絶縁素子を設けたディジタル入力部を有する。
【0034】
ディジタル入力回路7aでは、外部の信号の状態変化、例えば、論理「0」から論理「1」つまり外部の信号の「OFF」から「ON」等の状態変化に応じてその信号をCPU4の割込起動要因となる回路に接続することで、CPU4をスリープ状態から、割り込みで、起動状態に遷移させる。起動されたCPU4は、DI信号の論理を再度検定し、状変処理(状態変化に応じた監視制御処理)を行う。
【0035】
(3.3)他の信号によるスリープ状態から稼働状態への遷移
端末装置2は、さらに、定期起動用回路10や上位の監視サーバ5からの入力信号に応じてスリープ状態から稼働状態への遷移を行う機能を有する。これらの機能については、特許文献4(特開2012−029020号公報)に詳述されている。
【0036】
CPU4は、定期起動用回路10と接続され、予め設定された期間毎にスリープ状態から稼働状態へと遷移させられる。例えば、定期起動用回路10は、RTC(リアルタイムクロック)と言われる一般的な時計ICで構成され、CPU4で現在時刻の設定、任意の設定により指定した時刻に信号を出すことができる。この信号により端末装置2は、CPU4、通信部6またはセンサ16等に分割された電源を入れて所定の動作を実行させることができる。起動したCPU4は、このときの起動要因レジスタで確認することで、起動要因を分析し、その起動要因に応じた処理をする。このときの処理は、定期的な監視動作の実行になり、収集した監視データが監視サーバ5に送信される。この処理後、CPU4は、再び省電力モード(待機モード)に遷移することとなる。なお、内蔵されたタイマーのカウンタではなく、外部に設けられたカレンダーIC(RTC)のアラーム設定機能により、CPU4が稼働状態に遷移して所定の動作を行うこともできる。
【0037】
同様に、監視サーバ5からの通信部6への発呼による起動は、通信部6の待機モード回路で構成され、監視サーバ5から発呼できる、または、メール接続処理により、通信部6の待機モード回路から発呼されたことで、動作電源の起動信号を出すことができる。この信号により端末装置2では、CPU4、通信部6またはセンサ16等に分割された機能に対応する電源を入れ所定の動作を実行させることができる。起動したCPU4は、このときの起動要因レジスタを確認することで、起動要因を分析し、その起動要因に応じた処理をする。このときの処理は、緊急で監視データを必要とする場合など、非定期的な監視動作の実行になり、収集した監視データは監視サーバ5にイベント発生(警報)として送信される。
【0038】
以上のような、本実施形態の端末装置2及び遠方監視システム1によれば、AI信号またはDI信号の条件により、CPU4をスリープ状態(非稼働状態)から稼働状態に遷移させることで、AI信号またはDI信号の条件監視を常時行っていることと同様の機能を省電力で実現することができる。
【0039】
つまり、AI信号による、または、DI信号による監視対象のセンサ信号による割り込み処理でCPU4をスリープ状態から稼働状態に遷移させることで、非稼働時(スリープ時)であっても、センサ信号の状態変化を検知し、この状態変化が特定の条件を満たした場合に、CPU4の指令により監視制御(例えば、データ収集等)を開始することができる。
【0040】
なお、AI信号が入力される場合、AI信号がしきい値を超えたとき割り込みがかかるだけでなく、AI信号がしきい値を超えた状態からしきい値を下回ったときにも割り込みがかかる条件とすることで、AI信号がしきい値を超えた分の時間を把握することができる。同様に、DI信号が入力される場合、状態変化を示す信号が入ったら割り込みがかかるだけでなく、元の状態に復帰したことを示す信号が入力されたときにも割り込みがかかる方式とすることで、DI信号がオンした時間分を把握することができる。
【0041】
また、端末装置2を間欠動作させることで、端末装置2の低消費電力化を図ることができる。特に、この間欠動作の周期を、端末装置2の稼働状態とスリープ状態の消費電力の合計が、エネルギーハーベスティング電源により得られる電力量内で動作可能となるサイクル周期以内に設定することで、電源レスで監視対象3の遠隔モニタリングを行うことができる。この場合、間欠動作の周期は、端末装置2に設けられたエネルギーハーベスティング電源の出力と端末装置2の消費電力によって定められることとなる。例えば、室内光発電モジュールは、2,000ルクスの明るさの室内で発電し、負荷(動作時20mA、スリープ時0.1mA)を10秒動作させた場合、3.5分間隔の間欠動作が可能となる。
【0042】
(実施形態2)エネルギーハーベスティング電源回路
本実施形態では、図2に示した端末装置2のエネルギーハーベスティング電源回路9について説明する。端末装置2は、リチウム電池等の一次電池による駆動電源の他に、自然界に存在するエネルギーを収穫して電力を得るエネルギーハーベスティング電源を備える。エネルギーハーベスティング電源の電力は、非常に微弱なエネルギーであり、端末装置2の設置環境によって収穫できるエネルギーが異なるので、複数のエネルギーハーベスティング電源を備えていることが好ましい。
【0043】
エネルギーハーベスティング電源は、キャパシタや二次電池に蓄電して、必要時に間欠的に端末装置2を稼働させる。エネルギーハーベスティング電源の発電量が、端末装置2のスリープ時の消費電力を上回っていれば、スリープ時にエネルギーハーベスティング電源からの電力を蓄電することができる。
【0044】
図5に示すように、エネルギーハーベスティング電源回路9の入力側には、例えば、一次電池、USB電源(5V)、外部電源(5V/3.6V)が接続される。また、エネルギーハーベスティング電源回路9の入力側には、エネルギーハーベスティング電源として、例えば、温度差発電素子(熱発電装置9A)、振動発電素子(振動発電装置9B)、光発電素子(光発電装置9C)等が接続される。
【0045】
エネルギーハーベスティング電源回路9の入力側に接続された電源に対応する電源回路毎に短絡片により開閉可能な接続部J11〜J61が設けられ、適用する電源に対応する電源回路を短絡片で選択して使用する。各電源のラインには、保護用にショットキーダイオード等の電圧降下の少ないダイオード回路が設けられる。
【0046】
具体例を挙げて説明すると、熱発電装置9Aを使用するときは接続部J41、振動発電装置9Bを使用するときは接続部J51、室内光、太陽光などによる光発電装置9Cを使用する時は、接続部J51,J61に短絡片が設けられる。複数のエネルギーハーベスティング電源を使用する場合は、複数の短絡片が実装されることとなる。また、エネルギーハーベスティング電源からの電力は、接続部J22を経由して、例えば、電源A、電源B、電源C等に供給される。電源Dは、電源Bの電源を更に分割して使用する場合、FETスイッチで電源を分割してもよい。例えば、電源Bは低消費電力動作を制御するCPU4の電源となるもので、常時3.3Vを3.3VA電源として供給するものである。低消費電力動作のために一部の3.3V電源を停止できるように設計して、電源Dとして、3.3Vを分割して3.3VB電源として分割供給しても良い。従って、これら電源A、電源C、電源Dの開閉は、電源制御信号L10、L11、L13等によりCPU4によって制御される。電源Bの3.3VAは最小動作となるCPU4のスリープ時でも微弱な電力を常時使用するため、切断するための制御信号は存在しない。なお、接続部J11〜J61の開閉を、スイッチ回路等で行うことも可能である。また、電源A、電源B、電源C及び電源Dに供給する電源回路の組み合わせである接続部J11〜J61の電源開閉動作は、短絡片でなく電子スイッチを設けて、CPU4からの制御信号で行ってもよい。
【0047】
一次電池、USB電源(5V)、外部電源(5V/3.6V)等の電源は、二次電池の急速充放電工程、端末装置2の稼働前の試験工程、製造工程におけるプログラミング工程(デバック工程)、または、プログラミングによる各種パラメータの設定工程、さらには、それ以前の開発工程における電源として用いられる。一次電池を使用する場合は、接続部J11,J12を使用する。その際、二次電池の充電工程以外では充電回路は使用しないので、接続部J71を開とする。また、二次電池を使用する場合は、外部二次電池は不使用とし、接続部J23を閉じることで、オンボードの二次電池を使用することができ、接続部23を開とすることで、外部二次電池を使用することができる。また、USB電源の選択は接続部J21で行われ、外部の電源は接続部J31により選択される。
【0048】
本実施形態によれば、エネルギーハーベスティング電源、一次電池及び二次電池等の電源を組み合わせることで、エネルギーハーベスティング電源によって収穫できる電力で端末装置2を駆動し、余剰の電力を二次電池に蓄電して端末装置2を動作させることができる。すなわち、電源工事が不要で、自立的に端末装置2を動作させることができる。また、エネルギーハーベスティング電源で得られた電力を有効活用することで、長期において電池交換が不要な端末装置2とすることができる。
【0049】
(実施形態3)機能単位毎の回路の消費電力制御
本実施形態では、図2に示した端末装置2における、機能単位毎に回路の消費電力制御を行う機能について説明する。
【0050】
端末装置2のCPU4は、内蔵の定期起動用回路10または、CPU4内蔵のカウンタの設定された周期毎(または、AI信号やDI信号に基づいて)に割込起動により、起動し、分割した機能の電源を入れて、所定の処理を行う。
【0051】
例えば、CPU4の機能、3つの通信部の機能、DI・DO機能、スイッチ、LED機能を実現するロジック回路17と言うように、機能単位で分割し、分割した機能毎に動作条件を設定する。例えば、ICに備えられたスリープ機能がある場合は、それぞれの通信機能をスリープ状態にすることが可能である。また、スリープ機能がない回路(例えば、ロジック回路17等)においては、その電源を部分的に切れるようなスイッチング回路を介して電源供給を行う構成とすることで、当該回路の低消費電力化を図る。
【0052】
図5に示すように、電源回路は、複数の電源A、電源B、電源C及び電源Dを有しており、各機能に対応する電源が接続されることとなる。よって、電源A、電源Cまたは電源Dを部分的に切ることで、使用していない機能に電力を供給する電源を元から遮断することができる。
【0053】
例えば、図6に示すように、端末装置2は、機能毎に電源管理を行うので、所定の機能(ここでは、CPU4及びBluetooth(登録商標)通信部11の機能)毎に電源管理を行い、エネルギーハーベスティング電源からの電力を効率的に利用する。
【0054】
具体的に説明すると、スリープ状態、例えば1mAからCPU4が起動して、35mAで端末装置2を動作させる。そして、送信を行う際には、Bleutooth(登録商標)通信部11を動作させることで、送信電力等により消費電流が70mAとなる。送信処理が終了し、受信モードになると、再び、消費電力は35mAとなっている。更に処理が完了してスリープモードに移行することで1mAの状態に戻す。
【0055】
本実施形態によれば、動作する機能毎に消費電力を管理することで、端末装置2をより省電力化することができる。本実施形態は、エネルギーハーベスティング電源の電力で、スリープ状態の端末装置2の電力を賄える程度の遠方監視システム1に適する。
【0056】
(実施形態4)通信欠落時対策のデータ保存機能
本実施形態では、図2に示した端末装置2における、データ通信障害時等にデータの喪失を防ぐ機能について説明する。
【0057】
図7に示すように、CPU4は、flashメモリ、SRAMメモリ、不揮発性メモリ等のデータ保持部を有する。例えば、図2に示すようにCPU4内部にflashメモリ、SRAMメモリが内蔵されており、監視結果を記憶する領域を大容量の不揮発性メモリ領域に格納する場合は、CPU4外部にログ用メモリとして用意する。
【0058】
不揮発性メモリは、監視結果データや端末装置2が収集したデータ等を時系列化して保存する。保存されたデータは、所定のタイミングで通信部6から上位のネットワークに送信される。
【0059】
本実施形態では、不揮発性メモリに上位のネットワークに送信するデータを保存することで、一時的な通信障害時等におけるデータの喪失が防止される。
【0060】
(実施形態5)監視部と拡張部との2機能構成
図7に示すように、端末装置2は、CPU4、通信部6並びに図示省略の定期起動用回路10及びロジック回路17等を実装した制御回路基板2aと、ディジタル入力回路7a,7b、ディジタル出力回路7c、アナログ入力回路8及びエネルギーハーベスティング電源回路9等を実装した電源IO回路基板2bとの2枚構成とする。すなわち、制御回路基板2aにCPU4、通信機能等の基本部分を構成し、電源IO回路基板2bにI/O、電源など、用途により可変なものをまとめることで将来への対応時により少ない投資でバリエーションを追加可能とする。
【0061】
本実施形態によれば、CPU4や通信部6等は標準化が図れ、監視対象3に応じてIO部の変更、エネルギーハーベスティング電源に応じた電源拡張性を電源IO回路基板2bの変更で対応可能となる。
【0062】
(実施形態6)LED表示と選択スイッチと実行スイッチによる機能
図8に示すように、端末装置2は、ロータリースイッチ18と、「電源」、「警報」、「通信」、「故障」の4つのLED表示部19を備える。
【0063】
ロータリースイッチ18は、例えば、「0」〜「F」のように16のコードを選択できるものであり、それぞれのコードに対応した機能が割り当てられる。具体的には、異常コード表示モード、電波強度表示モード、テストモード、システムリセットモード、ブートモード等の機能が割り当てられる。なお、各機能及び各機能の表示例等は、特許文献4(特開2012−029020号公報)に記載されている。
【0064】
LED表示部19は、端末装置2が実行した機能の結果を表示する。実行結果は、LED表示部19の表示の組合せにより表示される。端末装置2は、間欠動作を基本にしているので、端末装置2がスリープ状態の時に設定スイッチ20が押されると、CPU4は稼働状態(起動状態)に遷移することとなる。そして、起動状態になってから、設定スイッチ20が押された条件で、ロータリースイッチ18により選択された情報が読み込まれ、コードに対応した機能が実行される。
【0065】
本実施形態によれば、ロータリースイッチ18とLED表示部19の少ない組合せにより、より多くの情報が表示可能となり、保守性が確保される。
【0066】
以上、本発明の遠方監視システム及び端末装置について、具体的な実施形態を示して詳細に説明したが、本発明の遠方監視システム及び端末装置は、実施形態に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において設計変更が可能であり、設計変更された形態も本発明の技術範囲に属する。
【0067】
例えば、各実施形態に係る端末装置の機能を、単独若しくは組み合わせて端末装置に適用することで、各実施形態の効果をそれぞれ得ることができる。
【0068】
特に、本発明の省電力技術とエネルギーハーベスティング技術とを適用して、エネルギーハーベスティング技術により収穫される電力を端末装置の消費電力以上の電力とすることで、端末装置においてエネルギーの自給自足が可能となる。つまり、電源工事が不要で、自立的に端末装置を動作させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…遠方監視システム
2…端末装置
3…監視対象
4…CPU(処理部)
5…監視サーバ(監視装置)
6…通信部
7a,7b…ディジタル入力回路、7c…ディジタル出力回路
8…アナログ入力回路
9…エネルギーハーベスティング電源回路
9A…熱発電装置、9B…振動発電装置、9C…光発電装置
9a…熱発電回路、9b…振動発電回路、9c…光発電回路
10…定期起動用回路
16…センサ
17…ロジック回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8