特許第6511949号(P6511949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6511949-化粧シート及び化粧板 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511949
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20190425BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B27/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-97595(P2015-97595)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-210141(P2016-210141A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 知弘
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086682(JP,A)
【文献】 特開2010−047016(JP,A)
【文献】 特開2008−101453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 5/00
B32B 1/00 − 43/00
C09J 1/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性接着剤及びポリウレタン系ホットメルト接着剤のいずれかからなる接着剤層が設けられた基材の表面に貼り合わせる化粧シートにおいて、接着面となるポリオレフィン系シートの裏面にプライマー層が設けられており、
前記プライマー層は、粒径2μmのシリカ1.5質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系且つ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂により形成されていることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記接着剤層は、前記水性接着剤からなり、
前記水性接着剤は、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体を含んでいる請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
水性接着剤からなる接着剤層が設けられた基材の表面に貼り合わせる化粧シートにおいて、接着面となるポリオレフィン系シートの裏面に、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネートウレタン系樹脂のいずれかからなるプライマー層が設けられており、
前記水性接着剤は、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体を含んでいることを特徴とする化粧シート。
【請求項4】
前記プライマー層は、粒径2μmのシリカ3.8質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤10質量部を含有したアクリルウレタン系樹脂により形成されている請求項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記プライマー層は、主剤100質量部に対して硬化剤4質量部を含有したポリカーボネートウレタン系樹脂により形成されている請求項に記載の化粧シート。
【請求項6】
基材の上に、接着剤層と、プライマー層と、化粧シートとが、この順に形成され、
前記接着剤層は、水性接着剤及びポリウレタン系ホットメルト接着剤のいずれかにより形成され、
前記プライマー層は、粒径2μmのシリカ1.5質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系且つ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂により形成され、
前記化粧シートは、ポリオレフィン系シートであることを特徴とする化粧板。
【請求項7】
前記接着剤層は、前記水性接着剤により形成され、
前記水性接着剤は、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体を含んでいる請求項6に記載の化粧板。
【請求項8】
基材の上に、接着剤層と、プライマー層と、化粧シートとが、この順に形成され、
前記接着剤層は、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体により形成され、
前記プライマー層は、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネートウレタン系樹脂のいずれかにより形成され、
前記化粧シートは、ポリオレフィン系シートであることを特徴とする化粧板。
【請求項9】
前記プライマー層は、粒径2μmのシリカ3.8質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤10質量部を含有したアクリルウレタン系樹脂により形成されている請求項に記載の化粧板。
【請求項10】
前記プライマー層は、主剤100質量部に対して硬化剤4質量部を含有したポリカーボネートウレタン系樹脂により形成されている請求項に記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材や家具等に使用可能な化粧シート及び化粧板に関する。
【0002】
現在、特許文献1に、ポリオレフィン系化粧シートが開示されている。このポリオレフィン系化粧シートの裏面(接着面)には、裏面プライマーとしてのポリウレタン系バックコート層が形成されており、このポリウレタン系バックコート層が木質基材の表面に塗工されたアクリル系樹脂や酢酸ビニル系樹脂の水性接着剤と接着することで、ポリオレフィン系化粧シートと木質基材とを強固に貼り合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3147735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現在、顧客側の都合(製品開発、技術動向)等により、化粧シート用の接着剤として、アクリル系樹脂や酢酸ビニル系樹脂の水性接着剤に限らず、一液湿気硬化型ウレタンホットメルト接着剤等のPUR(Poly Urethane Reactive)系ホットメルト接着剤が使用され始めている。そこで、従来から使用されている水性接着剤と、新たに使用され始めたPUR系ホットメルト接着剤との両方に対応するため、任意の接着剤に使用可能な裏面プライマーを開発することが求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とを含む任意の接着剤に使用可能な裏面プライマーを用いた化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る化粧シートは、水性接着剤及びポリウレタン(PUR)系ホットメルト接着剤のいずれかからなる接着剤層が設けられた基材の表面に貼り合わせる化粧シートにおいて、接着面となるポリオレフィン系シートの裏面に、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂のいずれかからなるプライマー層が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、基材に化粧シートを貼り合わせる際に、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とを含む任意の接着剤に使用可能な裏面プライマーを用いるため、顧客側の都合により、水性接着剤又はPUR系ホットメルト接着剤のいずれの接着剤が使われても、安定した接着強度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る化粧板の積層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧板は、基材1の表面に、接着剤層2と、プライマー層(易接着層)3と、化粧シート4とが、この順に形成されている。すなわち、本実施形態に係る化粧板は、基材1の表面に、接着剤及びプライマー(下塗り剤)を介して化粧シート4をラミネートしたものである。例えば、基材1の表面に接着剤を施して接着剤層2を形成し、化粧シート4の裏面(接着面)にプライマーを施してプライマー層3を形成し、接着剤層2とプライマー層3とを貼り合わせることで、基材1の表面と化粧シート4の裏面とを貼り合わせる。
【0011】
(基材1)
基材1は、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、繊維板、複合材、集成材等である。本実施形態では、基材1として、中密度繊維板(MDF)を使用する。すなわち、基材1は、MDF基材である。MDFは、木質繊維を原料とする成型板(ファイバーボード)の一種であり、木材チップを蒸煮、解繊したものに接着剤となる合成樹脂を加え板状に熱圧成型したものである。同じ木材チップ材を原料とするパーティクルボードや配向性ストランドボード(OSB)に比べて構成要素(セグメント)が小さく、表面だけでなく木口部分も平滑である。なお、実際には、基材1として、パーティクルボードや配向性ストランドボード(OSB)を使用しても良い。また、基材1として、プラスチックフィルム、紙、金属、布、皮革、ガラス、陶磁器等も使用可能である。
【0012】
(接着剤層2)
基材1の上には、接着剤層2が形成されている。接着剤層2は、基材1と化粧シート4とを貼り合わせるために形成されている。接着剤層2は、例えば、接着剤を乾燥、硬化させることにより形成できる。
【0013】
接着剤については特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0014】
従来、接着剤層2として、水性接着剤、特にエマルジョン接着剤が使用されてきた。例えば、主剤としてウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体が用いられ、硬化剤として脂肪族イソシアネートが用いられていた。水性接着剤は、引火の危険性や毒性の心配が少なく、比較的安全性が高い。エマルジョン接着剤は、合成樹脂のポリマーを水の中に均一に分散させた接着剤である。エマルジョン接着剤は、被着体の隙間に浸透して、楔のように硬化する投錨効果が期待できる。
【0015】
水性接着剤の乾燥温度、乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すれば良い。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0016】
現在、接着剤層2として、新たに一液湿気硬化型ウレタンホットメルト接着剤等のPUR(Poly Urethane Reactive)系ホットメルト接着剤が使用され始めている。ホットメルト接着剤は、常温では固体であるが、80℃以上100℃以下程度での加熱溶融により液状化した状態で被着体に塗布され、冷却固化によって接合を形成する熱可塑性接着剤である。硬化が早く、溶剤を使っていないためガスが発生しない。中でも、PUR系ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系の未硬化樹脂(プレポリマー)を主成分とし、加熱溶解の後、空気中の水分(湿気)と反応し硬化する。一旦、反応が終了してしまえば強靱な皮膜を形成し強力な接着力を発揮する。反応が終わったPUR系ホットメルト接着剤は、再び熱で溶解されることはないため、耐熱性、更には耐寒性にも優れる。また、強靱な皮膜と強力な接着性能を持ち合わせているため、塗布量をかなり少なくすることが可能である。PUR系ホットメルト接着剤として、例えば、DIC株式会社製「タイフォースFH315」等が知られている。
【0017】
(プライマー層3)
接着剤層2と化粧シート4との間には、プライマー層3が形成されている。プライマー層3は、プライマー(下塗り剤)を化粧シート4に塗布することにより形成できる。なお、化粧シート4の裏面(接着面)に塗布するプライマーを裏面プライマーと称する。プライマーは、被着材表面の接着性を改善するために塗布する不揮発分の少ない低粘度液体である。プライマー層3の上に接着剤を塗布する場合には、プライマーが充分に乾いたところで接着剤を塗り重ねる。プライマーの種類は、被着材や接着剤の種類に応じて異なる。プライマーとしては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(例えば、アクリルとウレタンのブロック共重合体)等からなるウレタン系樹脂プライマー、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー等が挙げられる。
【0018】
本実施形態に係るプライマー層3は、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂のいずれかからなるプライマーを用いる。本実施形態に係るプライマー層3は、接着剤層2が水性接着剤かPUR系ホットメルト接着剤化かに関わらず、任意の接着剤に使用可能である。
【0019】
(化粧シート4)
化粧シート4は、基材1に意匠性を付与するためのシート状の化粧材である。化粧シート4としては、一般に流通、使用されている化粧シートを任意に用いることができる。また、特に阻害要因がない限り、化粧シートとして使用可能な各種素材を用いることができる。
本実施形態では、化粧シート4として、ポリオレフィン系化粧シートを使用する。ポリオレフィンは、プラスチック(樹脂)の一種で、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等、炭素(C)と水素(H)のみで構成され、燃やすと水(H2O)と二酸化炭素(CO2)等になる樹脂である。
図示しないが、化粧シート4は、例えば、シートの基材となるフィルムの表面側に、印刷層と、絵柄層と、樹脂層とを、この順に積層してなる。また、シートの基材となるフィルムの裏面側には、プライマーが塗工され、プライマー層3が形成される。但し、実際には、化粧シート4として、絵柄層の無い単色の化粧材等も適宜選択可能である。
シートの基材となるフィルムは、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により、ポリエステル等をフィルム状にしたものである。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。また、シートの基材としては、耐油性を有する耐油紙等の紙基材を用いることもできる。
印刷層は、化粧材の意匠性を高める目的で設けられ、フィルムの表面に意図した色彩を与える隠蔽層若しくは全面ベタ層とも称されるものであり、フィルムの表面側の全面を被覆する一様均一な部材である。印刷層は、通常は不透明色で形成することが多いが、着色透明で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。また、フィルムが白色であることを活かす場合には無色透明で形成する場合もある。
絵柄層は、印刷層の表面側に所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
樹脂層は、印刷層又は絵柄層の表面を保護する表面保護層又はコート層(コーティング層)とも称されるものであり、印刷層又は絵柄層の表面側の全面を被覆する一様均一な部材である。樹脂層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により樹脂層を形成する場合には、化粧材の耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【0020】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)本実施形態に係る化粧シートは、水性接着剤及びポリウレタン(PUR)系ホットメルト接着剤のいずれかからなる接着剤層が設けられた基材の表面に貼り合わせる化粧シートにおいて、接着面となるポリオレフィン系シートの裏面に、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂のいずれかからなるプライマー層が設けられている。
このように、基材に化粧シートを貼り合わせる際に、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とを含む任意の接着剤に使用可能な裏面プライマーを用いるため、顧客側の都合により、水性接着剤又はPUR系ホットメルト接着剤のいずれの接着剤が使われても、安定した接着強度を保つことができる。
【0021】
(2)本実施形態に係る化粧板は、基材の上に、接着剤層と、プライマー層と、化粧シートとが、この順に形成されている。接着剤層は、水性接着剤及びポリウレタン(PUR)系ホットメルト接着剤のいずれかにより形成されている。プライマー層は、アクリルウレタン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂のいずれかにより形成されている。化粧シートは、ポリオレフィン系シートである。
このように、基材に化粧シートを貼り合わせる際に、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とを含む任意の接着剤に使用可能な裏面プライマーを用いるため、顧客側の都合により、水性接着剤又はPUR系ホットメルト接着剤のいずれの接着剤が使われても、安定した接着強度を保つことができる。
【0022】
<その他実施形態>
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。すなわち、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【実施例1】
【0023】
以下に、本発明の実施例1〜3と、その比較例について説明する。表1に、本発明の実施例1〜3と、その比較例の詳細を示す。
【表1】
【0024】
(実施例1)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径2μmのシリカ3.8質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤10質量部を含有した、ガラス転移点102℃のアクリルウレタン系樹脂を、塗布量1.3g/mdryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0025】
(実施例2)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、主剤100質量部に対して硬化剤4質量部を含有したポリカーボネートウレタン系樹脂を、塗布量0.9g/mdryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0026】
(実施例3)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径2μmのシリカ1.5質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系且つ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系(塩酢ビ系)樹脂を、塗布量0.9g/mdryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0027】
(比較例)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径4μmのシリカ9質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系樹脂を、塗布量1.2g/mdryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0028】
(性能評価1)
剥離試験として、化粧シート4に25mm幅に切り込みを入れて剥離試験を行った。具体的には、本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのそれぞれに接着させた後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。なお、基材1と化粧シート4との剥離強度は30N/25mm幅である。
ここでは、水性接着剤として、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体からなる一液水性接着剤を、基材1の表面に塗布した。
また、PUR系ホットメルト接着剤として、一液湿気硬化型ウレタンホットメルト接着剤を、厚み0.04mm、塗布量40g/mdryで、基材1の表面に塗布した。
表2に、その試験結果を示す。
【表2】
[評価]
○:合格(基材材破)
△:合格(基材材破だが一部原反界面剥離)
×:不合格(原反界面剥離)
【0029】
実施例1及び実施例2については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例3については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
比較例については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1に界面剥離が発生したため、不合格とした。
【0030】
(性能評価2)
環境試験後の剥離試験として、以下の(A)〜(E)の試験を行った。
(A)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させた後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。これは、性能評価1における水性接着剤に対する試験と同様である。
(B)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、40℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(C)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、60℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(D)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、80℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(E)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、100℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
ここでは、水性接着剤として、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体からなる一液水性接着剤を、基材1の表面に塗布した。
表3に、その試験結果を示す。
【表3】
[評価]
○:合格(基材材破)
△:合格(基材材破だが一部原反界面剥離)
×:不合格(原反界面剥離)
【0031】
実施例1については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例2については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例3については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
比較例については、上記の(B)の試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。また、上記の(C)の試験においては、基本的に基材1が材破し、一部で化粧シート4の基材であるポリプロピレン樹脂原反に界面剥離が発生したが、実用上は問題ないため、合格とした。しかし、上記の(A)、(D)及び(E)のそれぞれの試験の結果、基材1に界面剥離が発生したため、不合格とした。
【0032】
(性能評価3)
環境試験後の剥離試験として、以下の(I)、(II)の試験を行った。
(I)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、−20℃雰囲気下(2時間)、60℃雰囲気下(2時間)を1サイクルとして、80サイクルの寒熱繰り返し試験を行った後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(II)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、60℃雰囲気下で化粧板を25mm幅にカットし、片端部を基材1からはがし、先端部分の化粧シート4を剥離させ、500gの重りをのせ、その剥離された化粧シート4を90°方向に500g荷重をかけて引っ張った状態で1時間放置し、基材1と化粧シート4との剥離長さ(剥離距離)を測定した。
表4に、その試験結果を示す。
【表4】
[評価]
○:合格(基材材破)
【0033】
本発明の実施例1〜3及びその比較例のいずれについても、上記の(I)の寒熱繰り返し試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
本発明の実施例1については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、1.1mmのひずみを測定した。
本発明の実施例2については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、2.3mmのひずみを測定した。
本発明の実施例3については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、3.5mmのひずみを測定した。
本発明の比較例については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、4.8mmのひずみを測定した。
【0034】
(結果)
このように、本発明の実施例1〜3は、比較例と比較して、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤との両方に対して、接着強度及び環境耐性が良好である。
【符号の説明】
【0035】
1 基材
2 接着剤層
3 プライマー層(易接着層)
4 化粧シート
図1