【0019】
(化粧シート4)
化粧シート4は、基材1に意匠性を付与するためのシート状の化粧材である。化粧シート4としては、一般に流通、使用されている化粧シートを任意に用いることができる。また、特に阻害要因がない限り、化粧シートとして使用可能な各種素材を用いることができる。
本実施形態では、化粧シート4として、ポリオレフィン系化粧シートを使用する。ポリオレフィンは、プラスチック(樹脂)の一種で、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等、炭素(C)と水素(H)のみで構成され、燃やすと水(H2O)と二酸化炭素(CO2)等になる樹脂である。
図示しないが、化粧シート4は、例えば、シートの基材となるフィルムの表面側に、印刷層と、絵柄層と、樹脂層とを、この順に積層してなる。また、シートの基材となるフィルムの裏面側には、プライマーが塗工され、プライマー層3が形成される。但し、実際には、化粧シート4として、絵柄層の無い単色の化粧材等も適宜選択可能である。
シートの基材となるフィルムは、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により、ポリエステル等をフィルム状にしたものである。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。また、シートの基材としては、耐油性を有する耐油紙等の紙基材を用いることもできる。
印刷層は、化粧材の意匠性を高める目的で設けられ、フィルムの表面に意図した色彩を与える隠蔽層若しくは全面ベタ層とも称されるものであり、フィルムの表面側の全面を被覆する一様均一な部材である。印刷層は、通常は不透明色で形成することが多いが、着色透明で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。また、フィルムが白色であることを活かす場合には無色透明で形成する場合もある。
絵柄層は、印刷層の表面側に所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
樹脂層は、印刷層又は絵柄層の表面を保護する表面保護層又はコート層(コーティング層)とも称されるものであり、印刷層又は絵柄層の表面側の全面を被覆する一様均一な部材である。樹脂層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により樹脂層を形成する場合には、化粧材の耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。
【実施例1】
【0023】
以下に、本発明の実施例1〜3と、その比較例について説明する。表1に、本発明の実施例1〜3と、その比較例の詳細を示す。
【表1】
【0024】
(実施例1)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径2μmのシリカ3.8質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤10質量部を含有した、ガラス転移点102℃のアクリルウレタン系樹脂を、塗布量1.3g/m
2dryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0025】
(実施例2)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、主剤100質量部に対して硬化剤4質量部を含有したポリカーボネートウレタン系樹脂を、塗布量0.9g/m
2dryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0026】
(実施例3)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径2μmのシリカ1.5質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系且つ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系(塩酢ビ系)樹脂を、塗布量0.9g/m
2dryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0027】
(比較例)
基材1として、厚み3mmのMDF基材を用いる。化粧シート4の基材となるフィルムとして、厚み0.07mmのポリプロピレン樹脂原反を用いる。プライマー層3として、粒径4μmのシリカ9質量%を添加し、主剤100質量部に対して硬化剤3質量部を含有したポリエステルウレタン系樹脂を、塗布量1.2g/m
2dryで化粧シート4の基材となるフィルムの裏面に塗工した。
【0028】
(性能評価1)
剥離試験として、化粧シート4に25mm幅に切り込みを入れて剥離試験を行った。具体的には、本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのそれぞれに接着させた後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。なお、基材1と化粧シート4との剥離強度は30N/25mm幅である。
ここでは、水性接着剤として、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体からなる一液水性接着剤を、基材1の表面に塗布した。
また、PUR系ホットメルト接着剤として、一液湿気硬化型ウレタンホットメルト接着剤を、厚み0.04mm、塗布量40g/m
2dryで、基材1の表面に塗布した。
表2に、その試験結果を示す。
【表2】
[評価]
○:合格(基材材破)
△:合格(基材材破だが一部原反界面剥離)
×:不合格(原反界面剥離)
【0029】
実施例1及び実施例2については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例3については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
比較例については、強制的に剥離させて材破状態を観察した場合、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤とのいずれに対しても、基材1に界面剥離が発生したため、不合格とした。
【0030】
(性能評価2)
環境試験後の剥離試験として、以下の(A)〜(E)の試験を行った。
(A)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させた後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。これは、性能評価1における水性接着剤に対する試験と同様である。
(B)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、40℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(C)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、60℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(D)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、80℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(E)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、100℃雰囲気下で2000時間放置した後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
ここでは、水性接着剤として、ウレタン変性エチレン−酢酸ビニル重合体からなる一液水性接着剤を、基材1の表面に塗布した。
表3に、その試験結果を示す。
【表3】
[評価]
○:合格(基材材破)
△:合格(基材材破だが一部原反界面剥離)
×:不合格(原反界面剥離)
【0031】
実施例1については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例2については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
実施例3については、上記の(A)〜(E)の全ての試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
比較例については、上記の(B)の試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。また、上記の(C)の試験においては、基本的に基材1が材破し、一部で化粧シート4の基材であるポリプロピレン樹脂原反に界面剥離が発生したが、実用上は問題ないため、合格とした。しかし、上記の(A)、(D)及び(E)のそれぞれの試験の結果、基材1に界面剥離が発生したため、不合格とした。
【0032】
(性能評価3)
環境試験後の剥離試験として、以下の(I)、(II)の試験を行った。
(I)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、−20℃雰囲気下(2時間)、60℃雰囲気下(2時間)を1サイクルとして、80サイクルの寒熱繰り返し試験を行った後、強制的に剥離させて材破状態を観察した。
(II)本発明の実施例1〜3及びその比較例の裏面プライマーを、水性接着剤に接着させ、60℃雰囲気下で化粧板を25mm幅にカットし、片端部を基材1からはがし、先端部分の化粧シート4を剥離させ、500gの重りをのせ、その剥離された化粧シート4を90°方向に500g荷重をかけて引っ張った状態で1時間放置し、基材1と化粧シート4との剥離長さ(剥離距離)を測定した。
表4に、その試験結果を示す。
【表4】
[評価]
○:合格(基材材破)
【0033】
本発明の実施例1〜3及びその比較例のいずれについても、上記の(I)の寒熱繰り返し試験の結果、基材1が材破し、接着剤層2とプライマー層3との接着強度が十分であることが確認できたため、合格とした。
本発明の実施例1については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、1.1mmのひずみを測定した。
本発明の実施例2については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、2.3mmのひずみを測定した。
本発明の実施例3については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、3.5mmのひずみを測定した。
本発明の比較例については、上記の(II)の耐熱クリープ試験の結果、4.8mmのひずみを測定した。
【0034】
(結果)
このように、本発明の実施例1〜3は、比較例と比較して、水性接着剤とPUR系ホットメルト接着剤との両方に対して、接着強度及び環境耐性が良好である。