(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
・本発明の実施形態の説明
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0009】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
並列された一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置される内側コア部、および前記巻回部から露出する外側コア部を有する磁性コアと、を備えるリアクトルであって、
前記コイルと前記磁性コアとの間に介在される絶縁性部材の一部で構成され、前記巻回部の並列方向に前記外側コア部を分断するギャップ部を備える。
【0010】
実施形態に係るリアクトルでは、コイルと磁性コアとの間に介在される絶縁性部材の一部を利用して外側コア部の位置にギャップ部を形成することで、別途、ギャップ材を用意する手間、用意したギャップ材を配置する手間を低減できる。これらの手間を低減できる分だけ、実施形態に係るリアクトルは、従来よりも生産性に優れる。
【0011】
<2>実施形態に係るリアクトルとして、
前記磁性コアが、軟磁性粉末と樹脂との複合材料で構成されている形態を挙げることができる。
【0012】
磁性コア全体を複合材料で構成する場合、金型やケースにコイルを配置した後、金型やケースに複合材料を充填するだけで磁性コアを作製することができる。そのため、分割コアを用意する手間や、用意した分割コアを組み合わせる手間を低減でき、リアクトルの生産性を向上させることができる。
【0013】
ここで、複合材料の充填によって磁性コアを作製する場合、コイルの巻回部の内部にギャップ部を設けることは難しい。巻回部の内部でギャップ部となる部材を所定位置に固定しておくことが難しく、複合材料の充填圧力で上記部材の位置が変化し易いからである。これに対して、実施形態に係るリアクトルでは、外側コア部の位置にギャップ部を配置しているため、コイルが邪魔でギャップ部となる部材を固定し難いという問題がない。
【0014】
<3>実施形態に係るリアクトルとして、
前記絶縁性部材は、前記巻回部の端面と前記外側コア部との間に介在される端面介在部材であって、
前記ギャップ部は、前記端面介在部材における前記コイルが配置される側とは反対側の面に一体に設けられている形態を挙げることができる。
【0015】
端面介在部材にギャップ部となる部分を一体に設けることで、コイルに端面介在部材を組み合わせれば、同時に外側コア部の位置にギャップ部を配置することができる。この構成は、複合材料で磁性コアを構成する場合に特に有効である。コイルに対して端面介在部材を固定すれば、コイルに対するギャップ部の位置も固定されるため、リアクトルを作製する際にコイルを収納する金型やケースに複合材料を充填しても、ギャップ部が所定の位置に維持されるからである。
【0016】
<4>実施形態に係るリアクトルとして、
前記絶縁性部材は、前記コイルに被覆されるコイルモールド部であって、
前記コイルモールド部は、
前記巻回部の各ターンを一体化するターン被覆部と、
前記巻回部の端面と前記外側コア部との間に介在される端面被覆部と、を備え、
前記ギャップ部は、前記端面被覆部における前記コイルが配置される側とは反対側の面に一体に設けられている形態を挙げることができる。
【0017】
コイルモールド部のターン被覆部によってコイルの各ターンを一体化することで、コイルが扱い易くなる。また、コイルモールド部の端面被覆部によって巻回部の端面と外側コア部との間の絶縁を確保することができる。
【0018】
コイルモールド部にギャップ部となる部分を一体に設けることで、コイルに対するギャップ部の位置を常に所定位置に保つことができる。この構成は、複合材料で磁性コアを構成する場合に特に有効である。コイルに対するギャップ部の位置が固定されているため、コイルを収納する金型やケースに複合材料を充填しても、その充填圧力によってコイルに対するギャップ部の位置が変化することがないからである。
【0019】
・本発明の実施形態の詳細
以下、本発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0020】
<実施形態1>
実施形態1では、
図1〜
図3に基づいてリアクトル1の構成を説明する。
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と端面介在部材4A,4Bとを組み合わせた組合体10と、組合体10を収納するケース6と、を備える。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明し、次いで、そのリアクトル1の製造方法を説明する。
【0021】
≪組合体≫
[コイル]
本実施形態のコイル2は、
図3に示すように、一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。各巻回部2A,2Bは、巻線2wを螺旋状に巻回した部分で、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。本例では、一本の巻線2wでコイル2を製造しているが、別々の巻線により作製した巻回部2A,2Bを連結することでコイル2を製造しても構わない。
【0022】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0023】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線(巻線2w)からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0024】
コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。両端部2a,2bではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0025】
コイル2の巻回部2A,2Bは、樹脂によって一体化されていることが好ましい。本例の場合、コイル2の巻回部2A,2Bはそれぞれ、一体化樹脂によって個別に一体化されている。本例の一体化樹脂は、巻線2wの外周(エナメルなどの絶縁被覆のさらに外周)に形成される熱融着樹脂の被覆層を融着させることで構成されており、非常に薄い。そのため、巻回部2A,2Bの各ターンが一体化樹脂で一体化されていても、巻回部2A,2Bのターンの形状や、ターンの境界が外観上から分かる状態になっている。一体化樹脂の材質として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂を利用することもできる。
【0026】
[磁性コア]
磁性コア3は、
図1,2に示すように、巻回部2A,2Bの外側に配置される外側コア部32と、巻回部2A,2Bの内部に配置される内側コア部(図示せず)と、に分けることができる。本例では、外側コア部32と内側コア部とは一体に繋がっている。
【0027】
外側コア部32は、ギャップ部41gによって巻回部2A,2Bの並列方向に分断されている。ギャップ部41gは、後述する端面介在部材4A,4Bの一部で構成されている。ここで、ギャップ部41gは、外側コア部32を物理的に完全に2分割するものに限定されるわけではなく、外側コア部32の磁路を分断できる構成であれば良い。つまり、外側コア部32における磁路に影響の無いところには、ギャップ部41gは無くても構わない。例えばギャップ部41gは、巻回部2A,2Bの軸方向における外側コア部32の端面に到達しない長さであっても、磁路となる部分にギャップ部41gが介在されていれば良い。
【0028】
磁性コア3は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料で構成されている。軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)などで構成される磁性粒子の集合体である。この磁性コア3は、後述するリアクトルの製造方法に示すように、ケース6にコイル2を収納した後、ケース6の内部に複合材料を充填することで形成される。そのため、磁性コア3の外側コア部32は、ケース6の内周面に接合している。
【0029】
[端面介在部材]
端面介在部材4A,4Bは、
図3に示すように、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32(
図1,2参照)との間の絶縁を確保する部材である。端面介在部材4A,4Bは、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂で構成することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで端面介在部材4A,4Bを形成することができる。上記樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、端面介在部材4A,4Bの放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0030】
巻回部2A,2Bの端部2a,2bが配置される側(巻線端部側)にある端面介在部材4Aと、連結部2Rが配置される側(連結部側)にある端面介在部材4Bは、同様の機能を持った構成を備える。
図3では、大きさや形状などが若干異なっていても同様の機能を持った構成には同一の符合を付している。
【0031】
端面介在部材4A,4Bは、矩形枠部40と、巻回部2A,2Bの端面に接触するB字状板材である端面接触部41と、で構成されている。
【0032】
端面接触部41のコイル2側の面には、巻回部2A,2Bの軸方向端部を収納する二つのターン収納部41s(特に端面介在部材4Aを参照)が形成されている。ターン収納部41sは、巻回部2A,2Bの軸方向端面の形状に沿った凹みであって、当該端面全体を端面介在部材4A,4Bに面接触させるために形成されている。ターン収納部41sによって巻回部2A,2Bの軸方向端面と端面介在部材4A,4Bとを面接触させることで、接触部分からの樹脂漏れを抑制することができる。
【0033】
端面接触部41には、一対の貫通孔41h,41hが設けられている。貫通孔41hは、後述するリアクトルの製造方法において、巻回部2A,2Bの内部に複合材料を充填するための入口となる。
【0034】
端面接触部41はさらに、一対の貫通孔41h,41hの間に設けられるギャップ部41gを備える。ギャップ部41gは、巻回部2A,2Bの軸方向におけるコイル2から離れる側に向って突出する板状部材である。ギャップ部41gは、
図1,2に示すように、巻回部2A,2Bの並列方向に外側コア部32を分断し、外側コア部32の位置にギャップを形成する。ギャップ部41gの厚さを調整することで、磁性コア3の磁気特性を調整することができる。
【0035】
端面介在部材4A,4Bは、巻回部2A,2Bの並列方向にある外側面400のうち、巻回部2A,2B側の位置に、巻回部2A,2Bの並列方向の外側に張り出す一対の張出部42を備える。張出部42は、巻回部2A,2Bとケース6との接触を抑制すると共に、ケース6におけるコイル2の位置を決める。また、張出部42は、後述するリアクトルの製造方法においてケース6内に複合材料を充填する際、外側面400の位置から複合材料を漏れ難くする機能を持っている。
【0036】
≪ケース≫
ケース6は、
図3に示すように、底板部60と側壁部61とで構成されている。底板部60と側壁部61とは一体に形成しても良いし、別々に用意した底板部60と側壁部61とを連結しても良い。ケース6の材料としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金などの非磁性金属、あるいは樹脂などを利用することができる。底板部60と側壁部61とを別体とするのであれば、両者60,61の材料を異ならせることもできる。例えば、底板部60を非磁性金属、側壁を樹脂とする、あるいはその逆とすることが挙げられる。
【0037】
[底板部]
本例の底板部60は、巻回部2A,2Bが載置されるコイル載置部60bと、コイル載置部60bよりも高く、外側コア部32(
図1,2)の底面に接触するコア接触部60sを備える。コイル載置部60bは、後述する側壁部61の連結部61Cと一体になっており、コア接触部60sは、後述する側壁部61のコア対向部61A,61Bと一体になっている。
【0038】
[側壁部]
本例の側壁部61は、外側コア部32(
図1,2)の外周面に対向する一対のコア対向部61A,61Bと、これらコア対向部61A,61Bを繋ぐ連結部61Cとで構成されている。連結部61Cは、コア対向部61A,61Bを連結して側壁部61の剛性を向上させるためにあり、その高さは、巻回部2A,2Bの下方側の曲げ角部を覆う程度しかない。そのため、
図1,2に示すように、巻回部2Aにおける並列方向の外側面、および巻回部2Bにおける並列方向の外側面は、ケース6の外部に露出する。つまり、本例のケース6の側壁部61は、巻回部2A,2Bの並列方向の外側面に対応する部分を切欠くことで形成され、当該外側面をケース6の外方に露出させる切欠き部61Eを備える形状と言い換えることもできる。
【0039】
図3に示すように、コア対向部61A,61Bは、上面視したときに略C字状に形成されている。具体的には、コア対向部61A,61Bは、外側コア部32(
図1,2)の端面(コイル2とは反対側の端面)を覆う端面カバー部61eと、外側コア部32の側面を覆う一対のサイドカバー部61sと、がC字状に繋がることで形成されている。サイドカバー部61sの外表面は、巻回部2A,2Bの外側面とほぼ面一になっている。サイドカバー部61sは、コイル2側の縁部近傍の厚みが薄くなることで形成される薄肉部600を備えており、この薄肉部600は、
図1,2に示すように、端面介在部材4A,4Bの外側面400を覆う。薄肉部600と外側面400とのオーバーラップ長を長くすることで、後述するリアクトルの製造方法において、端面介在部材4A,4Bと側壁部61のコア対向部61A,61Bとの隙間から複合材料が漏れることを抑制できる。
【0040】
≪リアクトルの効果≫
実施形態1のリアクトル1のように、端面介在部材4A,4Bに、磁性コア3の磁気特性を調整するギャップ部41gを形成することで、別途ギャップ材を用意する手間、ギャップ材を配置する手間を低減することができる。そのため、リアクトル1の生産性を向上させことができる。
【0041】
また、本例のリアクトル1では、ケース6の側壁部61のコア対向部61A,61Bによって磁性コア3の外側コア部32を物理的に保護することができる。また、巻回部2A,2Bの外側面を、ケース6の側壁部61から露出させることで、コイル2からケース6の外部に熱が放出され易くなり、リアクトル1の放熱性をより向上させることができる。
【0042】
≪用途≫
本例のリアクトル1は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC−DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。
【0043】
リアクトル1は、液体冷媒に浸漬された状態で使用することができる。液体冷媒は特に限定されないが、ハイブリッド自動車でリアクトル1を利用する場合、ATF(Automatic Transmission Fluid)などを液体冷媒として利用できる。その他、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC−123やHFC−134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などを液体冷媒として利用することもできる。
【0044】
≪リアクトルの製造方法≫
次に、実施形態1に係るリアクトル1を製造するためのリアクトルの製造方法の一例を説明する。リアクトルの製造方法は、大略、次の工程を備える。リアクトルの製造方法の説明にあたっては主として
図3を参照する。
・コイル作製工程
・一体化工程
・ケース準備工程
・配置工程
・充填工程
・硬化工程
【0045】
[コイル作製工程]
この工程では、巻線2wを用意し、巻線2wの一部を巻回することでコイル2を作製する。巻線2wの巻回には、公知の巻線機を利用することができる。巻線2wの外周には、巻回部2A,2Bの各ターンを一体化する一体化樹脂となる熱融着樹脂の被覆層を形成することができる。被覆層の厚さは適宜選択することができる。一体化樹脂を設けないのであれば、被覆層を有さない巻線2wを用いれば良く、次の一体化工程も必要ない。
【0046】
[一体化工程]
この工程では、コイル作製工程で作製したコイル2のうち、巻回部2A,2Bを一体化樹脂で一体化する。巻線2wの外周に熱融着樹脂の被覆層を形成している場合、コイル2を熱処理することで、一体化樹脂を形成することができる。これに対して、巻線2wの外周に被覆層を形成していない場合、コイル2の巻回部2A,2Bの外周や内周に樹脂を塗布し、樹脂を硬化させることで一体化樹脂を形成すると良い。
【0047】
[ケース準備工程]
この工程では、コイル2を収納するケース6として、
図3に示すように、一方の巻回部2Aの並列方向の外側面および他方の巻回部2Bにおける並列方向の外側面を露出させる切欠き部61Eを設けた側壁部61を備えるケース6を用意する。なお、ケース準備工程は、コイル作製工程や一体化工程の前に行なうこともできる。
【0048】
[配置工程]
この工程では、ケース6の内部にコイル2を配置する。本例では、コイル2に端面介在部材4A,4Bを組み付けた第一組物をケース6の上方からケース6内に挿入する。端面介在部材4A,4Bの外側面400は、コア対向部61A,61Bの薄肉部600で覆われる(
図1,2を合わせて参照)。そして、コア対向部61A(61B)の内周面と、端面介在部材4A(4B)との間に空間が形成される。また、一方の切欠き部61Eからは、巻回部2Aの外側面が露出し、他方の切欠き部61Eからは、巻回部2Bの外側面が露出する。
【0049】
[充填工程]
充填工程では、コア対向部61A(61B)の内周面と、端面介在部材4A(4B)との間に形成される空間の上方から複合材料を充填する。ケース6内に充填された複合材料は、コア対向部61A(61B)と端面介在部材4A(4B)との間に溜まると共に、端面介在部材4A,4Bの貫通孔41hから巻回部2A,2Bの内部にも流れ込む。コア対向部61A(61B)の薄肉部600が端面介在部材4A(4B)の外側面400を覆っており、また張出部42がコア対向部61A(61B)の端面を覆っているため、端面介在部材4A(4B)の外側面400の位置からケース6の外側に複合材料が漏れることが抑制される。
【0050】
[硬化工程]
硬化工程では、熱処理などで複合材料を硬化させる。硬化した複合材料のうち、巻回部2A,2Bの内部にあるものは内側コア部となり、巻回部2A,2Bの外側にあるものは外側コア部32となる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態2では、コイル2がコイルモールド部5を備える構成を
図4〜
図6に基づいて説明する。実施形態1と同様の機能を有する構成には、実施形態1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
≪ケース≫
実施形態2のケース6は、実施形態1のケース6とは側壁部61の構成が異なる。本例のケース6の側壁部61は、コア対向部61A,61Bと、巻回部2B側の連結部61Cに加えて、コイル対向部61Dを備える。コイル対向部61Dは、巻回部2Aの外側面に対向する部材である。つまり、本例のケース6の側壁部61は、組合体10の外周面のうち、巻回部2Bの外側面を除く三方を囲むように構成されており、切欠き部61Eの位置で巻回部2Bの外側面がケース6の外部に露出している。もちろん、巻回部2Aの外側面がケース6の外部に露出するように、コイル対向部61Dを巻回部2B側に設けることもできる。
【0053】
≪コイル≫
本例のコイル2はコイルモールド部5を備える。コイルモールド部5は、絶縁性樹脂で構成されており、例えば実施形態1の端面介在部材を構成する材料と同様の材料を利用することができる。コイルモールド部5には、端面介在部材と同様に、フィラーが含有されていても良い。
【0054】
コイルモールド部5は、巻回部2A,2Bの各ターンを一体化するターン被覆部50と、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32との間に介在される端面被覆部51とを備える。さらに、コイルモールド部5は、巻回部2A,2Bの連結部(図示せず)を覆う連結部被覆部52を備える。
【0055】
角筒状のコイル2の巻回部2A,2Bは、巻線2wが曲げられることで形成される四つの角部と、巻線2wが曲げられていない平坦部と、に分けられる。本例のターン被覆部50は、巻回部2A,2Bの四つの角部を覆うことで、巻回部2A,2Bの各ターンを一体化している。ターン被覆部50は、巻回部2A,2Bの平坦部を覆っていないため、巻回部2A,2Bの外側面からの放熱が、ターン被覆部50によって阻害されることはない。
【0056】
端面被覆部51は、
図6に示すように、巻回部2Aのターン被覆部50と巻回部2Bのターン被覆部50を連結するように設けられる。端面被覆部51には、巻回部2A,2Bの内部に連通する一対の貫通孔51h,51hが設けられている。この貫通孔51hは、実施形態1の端面介在部材4A,4Bの貫通孔41hと同様の機能、即ちリアクトルの製造の際に巻回部2A,2Bの内部に複合材料を導く機能を持っている。
【0057】
端面被覆部51は、巻回部2A,2Bの軸方向にコイル2から離れる側に向って突出する枠状に形成されている。その枠状の端面被覆部51の外側面(巻回部2A,2Bの並列方向の面)510は、ケース6のコア対向部61A,61Bの薄肉部600に当接する。外側面510は、実施形態1の端面介在部材4A,4Bの外側面400と同様の機能、即ちケース6におけるコイル2の位置決め、およびリアクトル1の作製時の複合材料の漏れを抑制する機能を持っている。
【0058】
端面被覆部51はさらに、一対の貫通孔51h,51hの間に設けられるギャップ部51gを備える。ギャップ部51gは、巻回部2A,2Bの軸方向におけるコイル2から離れる側に向って突出する板状部材である。ギャップ部51gは、
図4,5に示すように、巻回部2A,2Bの並列方向に外側コア部32を分断し、外側コア部32の位置にギャップを形成する。ギャップ部51gの厚さを調整することで、磁性コア3の磁気特性を調整することができる。ここで、ギャップ部51gは、実施形態1のギャップ部41gと同様に、巻回部2A,2Bの軸方向における外側コア部32の端面に到達しない長さであっても構わない。
【0059】
≪リアクトルの効果≫
実施形態2のリアクトル1のように、コイル2のコイルモールド部5に、磁性コア3の磁気特性を調整するギャップ部51gを形成することで、別途ギャップ材を用意する手間、ギャップ材を配置する手間を低減することができる。そのため、リアクトル1の生産性を向上させことができる。
【0060】
また、実施形態2の構成とすることで、リアクトル1の放熱性を向上させつつ、コイル2の両側面が露出される構成よりもリアクトル1の設置の自由度を高めることができる。ケース6の側壁部61がコイル対向部61Dを備える構成では、底板部60やコア対向部61A,61Bだけでなく、コイル対向部61Dも設置対象への取付部とすることができるからである。
【0061】
≪リアクトルの製造方法≫
実施形態2のリアクトル1を製造するには、
図6に示すように、コイルモールド部5を有するコイル2とケース6とを用意する。そして、ケース6の内部にコイル2を挿入する(配置工程)。その際、コイル対向部61Dの内周面に放熱材7を配置すると共に、コイル載置部60bにも放熱材70を配置すると良い。放熱材7,70を設けることで、コイル2からケース6への放熱を促すことができる。放熱材7,70としては、例えば放熱グリスや、発泡性の放熱シートなどを利用することができる。
【0062】
ケース6にコイル2を挿入することで、コア対向部61A(61B)の内周面と、端面被覆部51との間に空間が形成される。この空間の上方から複合材料を充填する(充填工程)。当該空間からケース6内に充填された複合材料は、コア対向部61A(61B)と端面被覆部51との間に溜まって外側コア部32(
図4,5)を形成すると共に、貫通孔51hを介して巻回部2A,2Bの内部に流れ込んで内側コア部を形成する。ここで、コア対向部61A(61B)の薄肉部600が端面被覆部51の外側面510を覆っているため、端面被覆部51の外側面510の位置からケース6の外側に複合材料が漏れることが抑制される。
【0063】
<実施形態3>
実施形態1,2に示すように、本開示の磁性コア3は、ケース6内に複合材料を充填することで構成されている。つまり、磁性コア3の外側コア部32が側壁部61の内周面(コア対向部61A,61Bの内周面)に接合することで、ケース6からの組合体10の脱落が抑制されている。ケース6からの組合体10の脱落をより効果的に抑制するために、ケース6に抜け止めとなる構成を設けることが好ましい。その抜け止めとなる構成の具体例を
図7に基づいて説明する。
【0064】
図7は、実施形態3で使用するケース6の概略斜視図である。
図7のケース6は、実施形態1の
図3のケース6と殆ど同じであるが、コア対向部61Aの内周面に抜け止め凹部61dを備える点で、実施形態1のケース6と異なる。なお、図面上は見えない位置にあるが、コア対向部61Bの内周面にもコア対向部61Aと同様の抜け止め凹部61dが設けられている。
【0065】
抜け止め凹部61dは、コア対向部61Aの端面カバー部61eの内周面のうち、底板部60側の一部が外側コア部32(
図1参照)から離れる側に凹むことで形成される。このような抜け止め凹部61dを有するケース6の内部に複合材料を充填すれば、抜け止め凹部61dに外側コア部32の一部が入り込み、外側コア部32が抜け止め凹部61dに引っ掛かる。この引っ掛かりによって、ケース6からの組合体10の脱落を抑制することができる。
【0066】
図7とは異なり、抜け止め凹部61dは、サイドカバー部61sの位置に設けることもできる。また、抜け止め凹部61dは、実施形態2のケース6にも適用することができる。