特許第6512218号(P6512218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6512218液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512218
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20190425BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190425BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190425BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/34
   A61K8/37
   A61Q11/00
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-514923(P2016-514923)
(86)(22)【出願日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2015061990
(87)【国際公開番号】WO2015163284
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-87254(P2014-87254)
(32)【優先日】2014年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-112323(P2014-112323)
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】数野 恵子
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 康宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 妥治
(72)【発明者】
【氏名】新倉 祐司
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2011/077847(JP,A1)
【文献】 特開2011−168506(JP,A)
【文献】 特開2013−116884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)と、N−アシルタウリン塩(B)とを含有し、N−アシルタウリン塩(B)の含有量が0.2〜0.8質量%であり、(エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量)/(N−アシルタウリン塩(B)の含有量)が、質量比として0.15〜3であることを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項2】
油性成分が、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油及び脂肪酸の炭素数が6〜12であるトリ脂肪酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上の油脂である請求項1記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜1.0質量%である請求項1又は2記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
N−アシルタウリン塩(B)が、ラウロイルメチルタウリン塩である請求項1、2又は3記載の液体口腔用組成物。
【請求項5】
エマルション(A)が、多価アルコール及び水を分散媒とし、油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化した、O/W型のエマルションである請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
【請求項6】
エマルション(A)の乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、それ以外にノニオン性界面活性剤を更に含有する請求項5記載の液体口腔用組成物。
【請求項7】
それ以外に更に含有するノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項6記載の液体口腔用組成物。
【請求項8】
更に、イソプロピルメチルフェノール(C)を0.01〜0.2質量%含有する請求項1乃至のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
【請求項9】
更に、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を含有し、前記クローブ油及び/又はタイム油の含有量が組成物全体の0.00001〜0.01質量%である請求項1乃至のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
【請求項10】
組成物中のエタノールの含有量が100ppm以下である請求項1乃至のいずれか1項記載の液体口腔用組成物。
【請求項11】
油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)を配合した液体口腔用組成物に、N−アシルタウリン塩(B)を0.2〜0.8質量%配合し、(エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量)/(N−アシルタウリン塩(B)の含有量)を、質量比として0.15〜3とする前記液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【請求項12】
エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜1.0質量%である請求項11記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【請求項13】
N−アシルタウリン塩(B)が、ラウロイルメチルタウリン塩である請求項11又は12記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【請求項14】
エマルション(A)が、多価アルコール及び水を分散媒とし、油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化した、O/W型のエマルションである請求項1112又は13記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【請求項15】
エマルション(A)の乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、それ以外にノニオン性界面活性剤を更に含有する請求項14記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【請求項16】
組成物中のエタノールの含有量を100ppm以下とする請求項11乃至15のいずれか1項記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が優れ、また、良好な使用感を与えることもできる、エマルション配合の液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルションを液体口腔用組成物に配合する技術としては、エタノール配合製剤のエタノール刺激を抑えるために特定のエマルションを配合した技術(特許文献1;特開2005−179231号公報)、薬用成分の滞留性を向上させ作用性を高める技術(特許文献2:特開2005−179231号公報、特許文献3:特開平11−335253号公報、特許文献4:特許第5043588号公報、特許文献5:特開2011−168506号公報、特許文献6:特開2012−12394号公報、特許文献7:国際公開第2011/115034号、特許文献8:国際公開第2011/077847号)などが提案されている。
【0003】
しかし、エマルション組成は、水相と油相が乳化剤を介して混合した状態であり、長期間の保存、機械的な振動、急激な温度変化などによってエマルションの凝集や合一などが生じ、乳化破壊が起こり易く、液体製剤では乳化破壊によって外観が変化して品質的にも問題が生じ、上記特許文献においても保存安定性の改善については提案されているが、特に低温過酷条件保存で凍結、融解時の外観の復元性については未だ改善の余地があった。
なお、上記特許文献は、低温過酷条件保存で凍結時の復元性について言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−179231号公報
【特許文献2】特開2005−179231号公報
【特許文献3】特開平11−335253号公報
【特許文献4】特許第5043588号公報
【特許文献5】特開2011−168506号公報
【特許文献6】特開2012−12394号公報
【特許文献7】国際公開第2011/115034号
【特許文献8】国際公開第2011/077847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、エマルションを配合した液体口腔用組成物において、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)の向上が、技術課題であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が優れ、また、良好な使用感を与えることもできる、エマルション配合の液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)を配合した液体口腔用組成物に、N−アシルタウリン塩(B)を配合すると、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が向上し、安定な製剤外観を与え、また、良好な使用感を与えることもできることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明においては、エマルション(A)とN−アシルタウリン塩(B)とを組み合わせると、上記エマルション配合液体製剤の凍結融解時の外観安定性、具体的には−20℃の低温で凍結後の外観の復元性が格段に向上し、後述する実施例に示すように、−20℃で24時間凍結後に25℃で24時間放置して融解させる凍結融解作業を5回繰り返しても液の白濁度変化を抑制し得る凍結復元性を与える。この場合、(A)、(B)成分の組み合わせによって、急激な温度変化によるエマルションの凝集、合一(エマルション粒径の肥大化)が特異的に抑制され、エマルションの安定性が向上し、上記効果を与え、また、(B)成分由来の刺激感が軽減して口腔内で使用時の刺激感が抑えられるだけでなく、口腔内にスッキリ感を効果的に付与し、良好な使用感を与える。
【0009】
本発明では、特に、エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が組成物全体に対して特定範囲内であり、更にまた、(エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量)/(N−アシルタウリン塩(B)の含有量)が特定比率範囲内であると、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)、使用感がより向上する。よって、上記範囲内で、(A)、(B)成分を配合することが好ましい。
【0010】
更に、イソプロピルメチルフェノール(C)を配合すると、上記効果が優れると共にイソプロピルメチルフェノールの口腔バイオフィルム殺菌力が十分に発現し、高い歯周病原性バイオフィルム殺菌効果を与えることができる。
また更に、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を配合すると、N−アシルタウリン塩(B)に由来する辛味が抑えられ、辛味による刺激感も抑制され、より優れた使用感を付与できる。
【0011】
従って、本発明は、下記の液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法を提供する。
〔1〕
油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)と、N−アシルタウリン塩(B)とを含有し、N−アシルタウリン塩(B)の含有量が0.2〜0.8質量%であり、(エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量)/(N−アシルタウリン塩(B)の含有量)が、質量比として0.15〜3であることを特徴とする液体口腔用組成物。
〔2〕
油性成分が、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油及び脂肪酸の炭素数が6〜12であるトリ脂肪酸グリセリルから選ばれる1種又は2種以上の油脂である〔1〕記載の液体口腔用組成物。
〔3〕
エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜1.0質量%である〔1〕又は〔2〕記載の液体口腔用組成物。
〔4〕
N−アシルタウリン塩(B)が、ラウロイルメチルタウリン塩である〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の液体口腔用組成物。
〔5〕
エマルション(A)が、多価アルコール及び水を分散媒とし、油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化した、O/W型のエマルションである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
〔6〕
エマルション(A)の乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、それ以外にノニオン性界面活性剤を更に含有する〔5〕記載の液体口腔用組成物。
〔7〕
それ以外に更に含有するノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である〔6〕記載の液体口腔用組成物。

更に、イソプロピルメチルフェノール(C)を0.01〜0.2質量%含有する〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。

更に、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を含有し、前記クローブ油及び/又はタイム油の含有量が組成物全体の0.00001〜0.01質量%である〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
10
組成物中のエタノールの含有量が100ppm以下である〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
11
油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)を配合した液体口腔用組成物に、N−アシルタウリン塩(B)を0.2〜0.8質量%配合し、(エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量)/(N−アシルタウリン塩(B)の含有量)を、質量比として0.15〜3とする前記液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
12
エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜1.0質量%である〔11〕記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
13
N−アシルタウリン塩(B)が、ラウロイルメチルタウリン塩である〔11〕又は〔12〕記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
14
エマルション(A)が、多価アルコール及び水を分散媒とし、油性成分をノニオン性界面活性剤によって乳化した、O/W型のエマルションである〔11〕、〔12〕又は〔13〕記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
〔15〕
エマルション(A)の乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、それ以外にノニオン性界面活性剤を更に含有する〔14〕記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
16
組成物中のエタノールの含有量を100ppm以下とする〔11〕〜〔15〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
17
更に、イソプロピルメチルフェノール(C)を0.01〜0.2質量%配合する、〔11〕〜〔16〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
18
更に、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を、前記クローブ油及び/又はタイム油の含有量が組成物全体の0.00001〜0.01質量%となるように配合する、〔11〕〜〔17〕のいずれかに記載の液体口腔用組成物の凍結復元性向上方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が優れ、また、良好な使用感を与えることもできる、エマルションが配合された液体口腔用組成物及びその凍結復元性向上方法を提供できる。更に、本発明では、イソプロピルメチルフェノールを配合し、高い口腔バイオフィルム殺菌力を付与することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の液体口腔用組成物は、油性成分が25℃で液体の油脂からなるエマルション(A)と、N−アシルタウリン塩(B)とを含有する。
【0014】
エマルション(A)は、エマルション粒子中に含まれる油性成分が25℃で液体の油脂からなるものである。このエマルション(A)としては、多価アルコール、水等を分散媒とし、上記油脂を乳化剤で乳化することによって得られるO/W型(水中油滴型)のエマルションを用いることができ、このようなO/W型のエマルションを添加、配合することが好ましい。この場合、液体口腔用組成物中にO/W型のエマルションの油滴粒子が分散し、上記分散媒が液体口腔用組成物の水相と混合し、O/W型のエマルションとして存在する。
【0015】
油性成分である25℃で液体の油脂としては、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油などの液状油脂、炭素鎖長6〜12のトリ脂肪酸グリセリルが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得る。トリ脂肪酸グリセリルとしては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。上記油脂としては、中でも、トリ脂肪酸グリセリル、とりわけトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルが、酸化による変色が起こりにくく安定でもあることから、好適である。
【0016】
エマルション中の油性成分量は、分散媒も含めたエマルション全体の10〜60%(質量%、以下同様。)、特に20〜50%が好ましい。エマルション粒子の平均粒径に応じて油性成分量は調整され、平均粒径が小さくなるほど油性成分量を少なくすることでエマルションの安定性が向上する。10%以上であると、十分にエマルション形成できる。60%以下であると、油性成分が分離することがなく、外観安定性が損なわれるのを防止するには好適である。
【0017】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤を1種又は2種以上用いることができ、HLB値が10〜16のものが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル等の脂肪酸炭素数が12〜16であるデカグリセリンモノ脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数は10〜100モル、特に20〜60モルが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの平均付加モル数は4〜20モル、特に6〜15モルが好ましい。
これらの中で、デカグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、特に凍結復元での外観安定性(凍結復元性)の点から、モノミリスチン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
【0018】
乳化剤の添加量は、通常、分散媒も含めたエマルション全体の5〜30%が好ましく、より好ましくは5〜20%である。乳化剤の添加量は、形成させるエマルション粒子の平均粒径に応じて調整され、平均粒径が小さくなるほど乳化剤の含有量を多くすることでエマルションの安定性は向上する。5%以上であると、油性成分が分離することがなく、30%以下であることが、ゲル化抑制には好適である。
【0019】
分散媒としては、水に加えて、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、平均分子量190〜630のポリエチレングリコール等の多価アルコールなどの1種又は2種以上を使用できる。
【0020】
上記エマルションは、エマルション粒子の平均粒径が30〜300nm、特に40〜250nmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、口腔内での刺激感を抑えると共にスッキリ感を与えつつ、外観安定性(凍結復元性)を向上するのにより好適である。平均粒径が小さすぎると、使用時の刺激感が強くなる場合があり、大きすぎると、使用後のスッキリ感が得られない場合がある。
【0021】
なお、エマルション粒子の平均粒径の測定方法は下記に示す通りである。
大塚電子(株)製、ダイナミック光散乱光度計DLS−8000を用いて、エマルションを精製水で1000倍希釈し、セルに入れて25℃での平均粒径を測定した。
【0022】
エマルション(A)としては、とりわけ、グリセリン又はジプロピレングリコールと水を分散媒とし、油性成分のトリ脂肪酸グリセリルを、脂肪酸炭素数が12〜16のデカグリセリンモノ脂肪酸エステル又はエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜60モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油によって乳化した、エマルション粒子の平均粒径が30〜250nmであるO/W型エマルションを好適に添加、配合し得る。
【0023】
エマルションの調製方法は、公知の方法を採用できる。
例えば、所定量のノニオン界面活性剤、分散媒の多価アルコール、及び半量の水をホモミキサーで撹拌後、油性成分を加え、エマルションを形成させ、最後に残りの水を加えることで、O/W型エマルションを調製することができる。その後、調製したエマルションは、高圧ホモジナイザーを用いて平均粒径を調節することができる。
高圧ホモジナイザーによる乳化では、剪断力の違いにより平均粒径が調整される。乳化粒子が微粒化すると、経時における安定性がさらに向上する。高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス インターナショナル CO社製)、ゴーリンホモジナイザー(ラニーゴーリン社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)などを使用し得るが、これらの機種に限定されず、同様な機構であればどのような機種でもよい。乳化(高圧乳化)時の圧力は通常、30MPa以上であり、30〜100MPaが好ましい。油相の水相への投入、乳化操作は、25〜50℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。
【0024】
本発明では、エマルション(A)として、上記方法で調製したエマルションを添加、配合できるが、市販品を用いることもできる。例えば、日光ケミカルズ(株)製のNET−TE−50等を使用し得る。
【0025】
本発明では、エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が、組成物全体の0.02〜1.0%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5%である。組成物中の油性成分の含有量が上記範囲内となるように、エマルション(A)が添加、配合されることが好ましい。エマルション粒子中に含まれる油性成分の含有量が0.02%以上であると、使用時の刺激感が強くなることを防止できる。1.0%以下であると、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が向上し、また、使用後のスッキリ感が不足するのを防止できる。
なお、エマルション(A)の添加量(分散媒も含めたエマルションの添加量)は、組成物全体の0.1〜4%が好ましく、より好ましくは0.2〜1.0%である。
【0026】
(B)成分のN−アシルタウリン塩としては、ココイルメチルタウリン塩、ラウロイルメチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩等が挙げられ、これらのナトリウム塩が好適に用いられる。中でも、ラウロイルメチルタウリン塩が、凍結復元性の点から好ましい。
N−アシルタウリン塩として具体的には、日光ケミカルズ社製のNIKKOL CMT−30、NIKKOL CMT−30T、NIKKOL LMT、NIKKOL LMT−30、NIKKOL LMT−P、NIKKOL MMTなどの市販品を使用できる。
【0027】
N−アシルタウリン塩(B)の含有量は、組成物全体の0.2〜0.8%であり、好ましくは0.3〜0.5%である。含有量が上記範囲内であると、本発明の効果を付与できる。0.2%未満であると、凍結復元後に組成物の白濁度が変化し、外観安定性(凍結復元性)が損なわれる。また、口腔内にスッキリ感を付与できない。0.8%を超えると、凍結復元後にエマルションの安定性が低下して組成物の色調が退色(透明化)し、外観安定性(凍結復元性)が損なわれる。また、口腔内に刺激感を与え使用感が損なわれる。
なお、(B)成分の含有量は、上記範囲内において、エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分量に応じて調整することが好ましく、エマルション粒子の平均粒径にも応じた最適範囲に調整することがより好ましい。
【0028】
本発明組成物では、エマルション(A)のエマルション粒子中に含まれる油性成分の組成物全体に対する含有量(以下、エマルション(A)中の油性成分量と略記する。)と、N−アシルタウリン塩(B)の組成物全体に対する含有量との割合、即ち、(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量が、質量比として0.15〜3が好ましく、より好ましくは0.2〜2.5、さらに好ましくは0.3〜0.9である。この範囲内であると、特に凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)がより向上し、本発明効果がより優れる。比率が小さすぎると、十分な凍結復元性が得られず満足な外観安定性を付与できない場合がある。また、大きすぎると、刺激感が強く発現して使用感が低下する場合がある。
【0029】
更に、本発明においては、エマルション(A)の粒子の平均粒径、(B)成分のN−アシルタウリン塩の含有量、(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量の比率が、下記のいずれかの組み合わせであると、本発明の効果がさらに優れる。
(i)
エマルション(A)の粒子の平均粒径;30〜250nm
N−アシルタウリン塩(B)の含有量;0.2〜0.8%
(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量;質量比で0.20〜1.0
(ii)
エマルション(A)の粒子の平均粒径;40〜200nm
N−アシルタウリン塩(B)の含有量;0.2〜0.6%
(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量;質量比で0.25〜0.8
(iii)
エマルション(A)の粒子の平均粒径;40〜100nm
N−アシルタウリン塩(B)の含有量;0.2〜0.4%
(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量;質量比で0.3〜0.7
【0030】
上記(i)〜(iii)において、エマルション(A)の粒子の平均粒径が上記範囲内で、N−アシルタウリン塩(B)の含有量が少なすぎると、凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)が十分に向上しない場合があり、多すぎると、使用時の刺激感が強くなる場合がある。また、(エマルション(A)中の油性成分量)/(B)成分量の比率が小さすぎると、使用時の刺激感が強くなる場合があり、大きすぎると、凍結復元性が十分に向上しない場合がある。
【0031】
本発明では、更に、イソプロピルメチルフェノール(C)を添加することが好ましく、イソプロピルメチルフェノールを添加、配合すると、優れた外観安定性(凍結復元性)と共に高いバイオフィルム殺菌力を付与することができる。
イソプロピルメチルフェノールは、口腔製品に配合可能な殺菌成分であり、市販洗口剤等の液体製剤に配合されおり、バイオフィルムへの殺菌力を有することが知られている。しかし、イソプロピルメチルフェノールは難水溶性であるため、水溶液に安定配合するには界面活性剤で可溶化する必要があり、可溶化状態によって殺菌力のレベルが変化することが知られている。本発明の構成にイソプロピルメチルフェノール(C)を添加した場合、予想外に優れたバイオフィルム殺菌効果が得られることがわかった。本発明組成物にイソプロピルメチルフェノールを添加する場合は、組成物全体の0.01〜0.2%、特に0.02〜0.1%が好ましい。
【0032】
本発明の液体口腔用組成物は、洗口剤、液体歯磨等として調製され、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で剤型に応じた公知成分を配合できる。例えば、湿潤剤、増粘剤、界面活性剤、溶剤、さらに必要により、pH調整剤、甘味剤、着色料、香料、有効成分等を含有できる。
【0033】
湿潤剤としては、ソルビトール、キシリット、マルチット、ラクチット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。これら湿潤剤の配合量は、通常、5〜15%であり、エマルション(A)の分散媒を含めた総量が上記範囲内であることが好ましい。
【0034】
増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる(配合量は通常0〜1%、特に0〜0.5%)。
【0035】
界面活性剤として、エマルション(A)の乳化剤として用いられるノニオン性界面活性剤に加えて、液体口腔用組成物に一般的に用いられるN−アシルタウリン塩以外の界面活性剤を添加、配合することができる。具体的には、ノニオン性界面活性剤としてポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、両性界面活性剤としてアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリン型両性界面活性剤、N−脂肪酸アシル−L−アルギネート塩等のアミノ酸型界面活性剤などが挙げられる。これら界面活性剤の添加量は、0.1〜2%、特に0.1〜1.0%が好ましい。
本発明では、エマルション(A)の乳化剤を含めた界面活性剤の総含有量が上記範囲内であることが、とりわけエマルションの安定性の点から望ましい。界面活性剤の添加量が少なすぎると、凍結復元性が悪くなる場合があり、多すぎると、エマルションが溶解されてしまう場合がある。
【0036】
なお、N−アシルタウリン塩以外のアニオン性界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアシルサルコシン酸塩は配合しなくてもよいが、本発明の効果を妨げない範囲で添加してよい。添加する場合、その添加量は組成物全体の0.2%以下、特に0.1%以下が好ましい。
【0037】
溶剤としては、一般的に精製水が用いられ、配合量は通常、60%以上である。
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸や、これらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、リボ核酸又はその塩、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。なお、本発明組成物は、25℃でpH5.5〜8.5であることが好ましく、この付近のpH調整剤としてクエン酸とクエン酸ナトリウムとの組み合わせ、リン酸とそのナトリウム塩(特にリン酸二水素ナトリウムとリン酸一水素ナトリウム)との組み合わせが好ましい。
【0038】
甘味剤としてはサッカリンナトリウム、ステビオサイト、スクラロース、還元パラチノース、エリスリトール等が挙げられる。
着色料として、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号等の安全性の高い水溶性色素を添加できる。
【0039】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。これら香料の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で組成物中0.00001〜3%が望ましい。
なお、本発明では、香料として、特にクローブ油及び/又はタイム油を、組成物全体の好ましくは0.00001〜0.01%、より好ましくは0.0001〜0.003%含有すると、使用時の刺激感がさらに抑えられ、製剤の使用感がより向上する。
この場合、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を、組成物中のクローブ油及び/又はタイム油の含有量が上記範囲になるように配合することが好ましい。クローブ油及び/又はタイム油の含有量が上記範囲内であると、N−アシルタウリン塩(B)に由来する辛味が抑えられ、辛味による刺激感も抑制されて使用感がより向上する。
【0040】
有効成分としては、イソプロピルメチルフェノールに加えて、例えばトリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム等の殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸などの抗炎症剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸等のビタミンC類、トコフェロール酢酸エステル、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリビニルピロリドン、ラウロイルサルコシンナトリウム、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等を添加できる。なお、これら有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合できる。
【0041】
本発明の液体口腔用組成物は、実質的にエタノールを含まないほうが、エマルションの安定化の点から好ましい。ここで、「実質的にエタノールを含まない」とは、組成物中のエタノール量が組成物全体に対して好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下のものである。なお、液体口腔用組成物は、エタノールを無配合であっても、組成物中に配合される香料中に原料由来のエタノールが微量含まれる場合があるため、これらの理由を考慮した上で、香料中などに微量含有されるエタノール以外にエタノールを含まないことが望ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0043】
[実施例1〜16、比較例1〜10]
表1〜4に示す液体口腔用組成物(洗口剤)を常法により調製し、下記方法で凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)、口腔内で使用後のスッキリ感、使用時の刺激感のなさを評価した。また、表3、4に示すイソプロピルメチルフェノールを配合した液体口腔用組成物については、更に下記方法でバイオフィルム殺菌力を評価した。結果を表1〜4に併記した。
なお、使用したエマルションの調製方法、組成は下記の通りである。調製したエマルションA1〜A5を、表中に示す量で配合した。
【0044】
<エマルションの調製方法>
下記組成のO/W型エマルションを下記方法で調製した。なお、ホモミキサーによる攪拌は公知の高圧ホモジナイザー(圧力条件30〜100MPa)、油相の水相への投入、乳化操作は25〜50℃で行った。
また、エマルション粒子の平均粒子径は、大塚電子(株)製、ダイナミック光散乱光度計DLS−8000を用いて、エマルションを精製水で1000倍希釈し、セルに入れて25℃での平均粒径を測定した。
【0045】
<エマルションの組成>
[エマルションA1(平均粒径50nm)]
モノラウリン酸デカグリセリル 20%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 20
グリセリン 15
水 45
合計 100%
グリセリン、半量の水、モノラウリン酸デカグリセリルを予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0046】
[エマルションA2(平均粒径200nm)]
モノミリスチン酸デカグリセリル 10%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 50
グリセリン 15
水 25
合計 100%
グリセリン、半量の水、モノミリスチン酸デカグリセリルを予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0047】
[エマルションA3(平均粒径100nm)]
モノラウリン酸デカグリセリル 10%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 30
グリセリン 15
水 45
合計 100%
グリセリン、半量の水、モノラウリン酸デカグリセリルを予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0048】
[エマルションA4(平均粒径100nm)]
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 20%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 30
プロピレングリコール 10
水 40
合計 100%
プロピレングリコール、半量の水、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油を予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0049】
[エマルションA5(平均粒径50nm)]
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 20%
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 20
ジプロピレングリコール 10
水 50
合計 100%
ジプロピレングリコール、半量の水、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油を予備撹拌後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを加えて、ホモミキサーで撹拌し、最後に残りの水を加えて調製した。
【0050】
更に、使用原料の詳細を示す。
ラウロイルメチルタウリンナトリウム;日光ケミカルズ(株)製
イソプロピルメチルフェノール;大阪化成(株)製
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;
エチレンオキサイドの平均付加モル数60、日光ケミカルズ(株)製
なお、使用した香料はクローブ油及びタイム油を含有し、表1〜4に示す実施例及び比較例は、それぞれ組成物中にクローブ油を0.00001%、タイム油を0.00001%含有する。
【0051】
(1)凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)の評価方法
エマルション配合の液体口腔用組成物の外観は、エマルションの散乱現象により液が白濁している。エマルションの安定性が悪い場合には凝集、合一や可溶化などが起こり、凝集、合一で粒径が大きくなることで白濁度が増したり、逆に配合している界面活性剤等の影響で可溶化が進むと白濁度が減少するなどの変化が観察される。このことから、エマルションの安定性を液体口腔用組成物の白濁度の変化を指標に目視で評価した。
なお、本発明の液体口腔用組成物の外観は、エマルションの粒径が小さい場合にはうすい白濁となり、粒径が大きくなるに従い白濁となる。
サンプル(液体口腔用組成物)を満注量500mLの無色透明なPET容器(吉野工業所製)に450mL充填し、−20℃の状態で凍結させ24時間放置し、その後、25℃の状態で24時間放置し試料を融解させた。この作業を1サイクルとし、5回繰り返した。得られた凍結融解品について、外観安定性(分散したエマルションによる液の白濁度)を、−5℃で24時間、その後に25℃で24時間放置した対照品と比べて下記基準に則り、目視判定した。◎、○のものを外観安定性(凍結復元性)がよいと判断した。
外観安定性(凍結復元性)の評価基準:
◎:液の白濁度に変化は認められない
○:液の白濁度に僅かに変化が認められる
△:液の白濁度に変化が認められる
×:液の白濁度が大きく変化している
【0052】
(2)使用後のスッキリ感の評価方法
評価者10名が各液体口腔用組成物10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後のスッキリ感について評価した。下記の4段階の評点基準で評価し、10名の平均点から下記評価基準に従って判定した。
評点基準:
4点:高いスッキリ感を得た
3点:やや高いスッキリ感を得た
2点:ごくわずかにスッキリ感を得た
1点:ほとんどスッキリ感が得られなかった
洗口後のスッキリ感の評価基準:
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0053】
(3)使用時の刺激感のなさの評価方法
評価者10名が各液体口腔用組成物10mLを口に含み、30秒間すすいで洗口した時の刺激感のなさについて評価した。下記の4段階の評点基準で評価し、10名の平均点から下記の評価基準に従って判定した。
評点基準:
4点:刺激がなかった
3点:刺激がほとんどなかった
2点:刺激がややあった
1点:刺激がかなりあった
洗口時の刺激感の評価基準:
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0054】
(4)バイオフィルム殺菌力の評価方法
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を、0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものを、モデルバイオフィルム作製担体に用いた。
培養液は、トリプチケースソイブロス(Difco社製)30gを1Lの精製水に溶解した液にヘミン(Sigma社製)5mg/L、ビタミンK(和光純薬工業社製)1mg/Lを添加したものを用いた。
モデルバイオフィルムの作製に用いた口腔細菌は、いずれもアメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC)より購入したもので、口腔常在細菌としてストレプトコッカス ゴルドニアイ ATCC51656株及びアクチノマイセス ナエスランディ ATCC51655株、病原性細菌としてポルフィロモナス ジンジバリスATCC33277株を用いた。
これら3菌種をそれぞれ2×107cfu/mL(clony forming units)になるように上述の培養液に接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気条件下(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)で2週間連続培養(培養液の置換率は10vol%とした)を行い、HA表面に3菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
【0055】
形成させたモデルバイオフィルムを、評価薬剤(液体口腔用組成物)2mLに3分間浸漬し、滅菌生理食塩水1mLで6回洗浄した。その後、滅菌生理食塩水4mLで超音波処理(200μA、10秒間)によってモデルバイオフィルムを分散し、バクテロイデス寒天平板(カナマイシン添加の血液寒天平板)に50μL塗沫し、肉眼でコロニーが確認できるまで嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)した。生育したコロニー数をカウントし、残存するポルフィロモナス ジンジバリス菌の生菌数(cfu)を求め、下記基準に則り、判定した。◎、○のものをバイオフィルム殺菌力が優れると判断した。
評価基準:
◎:106未満
○:106以上107未満
△:107以上108未満
×:108以上
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、(B)成分を欠く比較例1〜3は、アニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムを含有していても外観安定性(凍結復元性)が劣り、(B)成分量が少ない比較例4も外観安定性(凍結復元性)が劣った。(B)成分が多すぎる比較例5は、凍結復元後に白濁した液の色調が退色(透明化)し、外観安定性(凍結復元性)が劣り、(B)成分由来の刺激感が発現した。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、イソプロピルメチルフェノールを添加すると、(B)成分を欠く比較例6〜8は、アニオン性界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムを含有していても、外観安定性(凍結復元性)が劣ると共にバイオフィルム殺菌力も低く、(B)成分量が少ない比較例9もバイオフィルム殺菌力が低かった。
【0062】
[実施例1722
表5に示す実施例1722の液体口腔用組成物(洗口剤)を上記と同様に調製し、上記と同様にして凍結融解時の外観安定性(凍結復元性)、口腔内で使用後のスッキリ感、使用時の刺激感のなさ、バイオフィルム殺菌力を評価し、下記方法で使用時の辛味のなさを評価した。また、表3に示す実施例の辛味のなさを同様に評価し、この結果と共に上記結果を表5に併記した。
なお、実施例1722で使用した香料a〜fは、いずれもクローブ油及びタイム油を含有し、各例の組成物中のクローブ油の含有量、タイム油の含有量は、表5に示すとおりである。
【0063】
(5)使用時の辛味のなさの評価方法
評価者10名が各液体口腔用組成物10mLを口に含み、30秒間すすいで洗口した時の辛味のなさについて評価した。下記の4段階の評点基準で評価し、10名の平均点から下記の評価基準に従って判定した。
評点基準:
4点:辛味がなかった
3点:辛味がほとんどなかった
2点:辛味がややあった
1点:辛味がかなりあった
洗口時の辛味のなさの評価基準:
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0064】
【表5】
【0065】
表5の結果からわかるように、クローブ油及び/又はタイム油を含む香料(D)を含有し、組成物中にクローブ油及び/又はタイム油を特定量含有すると、辛味が抑制され、使用時の刺激感がより抑えられて使用感が向上した。
【0066】
以下に処方例を示す。なお、使用原料は上記と同様である。
【0067】
[処方例1]洗口液
(A)エマルションA1(平均粒径50nm) 0.5%
エマルション(A)中の油性成分の含有量 0.10%
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.3%
フッ化ナトリウム 0.05%
グルコン酸銅 0.05%
グリセリン 3%
プロピレングリコール 4%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.20%
クエン酸 0.70%
クエン酸ナトリウム 0.3%
クローブ油及びタイム油を含む香料 0.2%
組成物中のクローブ油の含有量 0.00001%
組成物中のタイム油の含有量 0.00001%
水 残
合計 100%
【0068】
[処方例2]洗口液
(A)エマルションA1(平均粒径50nm) 0.5%
エマルション(A)中の油性成分の含有量 0.10%
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.3%
(C)イソプロピルメチルフェノール 0.05%
アラントイン 0.05%
グリセリン 3%
プロピレングリコール 4%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.20%
クエン酸 0.70%
クエン酸ナトリウム 0.3%
クローブ油及びタイム油を含む香料 0.2%
組成物中のクローブ油の含有量 0.00001%
組成物中のタイム油の含有量 0.00001%
水 残
合計 100%
【0069】
[処方例3]洗口液
(A)エマルションA1(平均粒径50nm) 0.5%
エマルション(A)中の油性成分の含有量 0.10%
(B)ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.3%
(C)イソプロピルメチルフェノール 0.05%
フッ化ナトリウム 0.02%
グリセリン 3%
プロピレングリコール 4%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.20%
クエン酸 0.70%
クエン酸ナトリウム 0.3%
クローブ油及びタイム油を含む香料 0.2%
組成物中のクローブ油の含有量 0.00001%
組成物中のタイム油の含有量 0.00001%
水 残
合計 100%