(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エポキシ樹脂(但し、後述の(D)成分を除く)、(B)活性エステル系硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)エポキシ当量が300以下であり、かつ、アルコキシ基の含有量が分子全体の質量を基準として30質量%以下であるエポキシ基含有シリコーン化合物を含み、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(C)成分の含有量が40質量%以上であり、(D)成分の含有量が0.3〜10質量%であり、(D)成分が、環状のシロキサン構造を有する、樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル系硬化剤、(C)無機充填材、及び(D)エポキシ当量が300以下であり、かつ、アルコキシ基の含有量が分子全体の質量を基準として30質量%以下であるエポキシ基含有シリコーン化合物を含み、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、(C)成分の含有量が40質量%以上であり、(D)成分の含有量が0.3〜10質量%であることを特徴とする。
【0012】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含む。
【0013】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%としたとき、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。あるいはまた、エポキシ樹脂は、上記の固体状エポキシ樹脂のみを含んでもよい。
【0015】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032H」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:8の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)シート状積層材料の形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)シート状積層材料の形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができるなどの効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:7の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:6の範囲がさらに好ましい。
【0018】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは3質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜35質量%、さらに好ましくは10質量%〜35質量%又は10質量%〜30質量%である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0019】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0020】
<(B)活性エステル系硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(B)成分として、活性エステル系硬化剤を含む。
【0021】
活性エステル系硬化剤は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する活性エステル化合物である。本発明者らは、活性エステル系硬化剤と、後述する(D)成分とを組み合わせて使用することにより、薄型のプリント配線板にあっても部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させ得ることを見出した。
【0022】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に活性エステル基を2個以上有する活性エステル化合物が好ましく、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する活性エステル化合物が好ましく用いられる。活性エステル系硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる活性エステル化合物が好ましい。中でも、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物から選択される1種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらに好ましく、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させて得られる芳香族化合物であって、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物がさらにより好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボキシ基を1分子中に有するカルボン酸化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0024】
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素原子数1〜20(好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8)の脂肪族カルボン酸、炭素原子数7〜20(好ましくは7〜10)の芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。
【0025】
チオカルボン酸化合物としては、特に制限はないが、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0026】
フェノール化合物としては、例えば、炭素原子数6〜40(好ましくは6〜30、より好ましくは6〜23、さらに好ましくは6〜22)のフェノール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール等が挙げられる。フェノール化合物としてはまた、フェノールノボラック、特開2013−40270号公報記載のフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーを使用してもよい。
【0027】
ナフトール化合物としては、例えば、炭素原子数10〜40(好ましくは10〜30、より好ましくは10〜20)のナフトール化合物が挙げられ、好適な具体例としては、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。ナフトール化合物としてはまた、ナフトールノボラックを使用してもよい。
【0028】
中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらに好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノールノボラック、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーがさらにより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエン型ジフェノール、フェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーが殊更好ましく、ジシクロペンタジエン型ジフェノールが特に好ましい。
【0029】
チオール化合物としては、特に制限はないが、例えば、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0030】
活性エステル系硬化剤の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物が挙げられ、中でもジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基を有するリン原子含有オリゴマーとを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましい。なお本発明において、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0031】
ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、より具体的には下記式(i)の化合物が挙げられる。
【0032】
【化3】
(式中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均数で0.05〜2.5である。)
【0033】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させる観点から、Rはナフチル基が好ましく、kは0が好ましく、nは0.25〜1.5が好ましい。
【0034】
活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報、特開2013−40270号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販の活性エステル化合物を用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC−8000−65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてEXB9416−70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、リン原子含有活性エステル化合物としてEXB9050L−62M(DIC(株)製)が挙げられる。
【0035】
後述する(D)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点から、樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。活性エステル系硬化剤の含有量の上限は特に限定されないが、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
また、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、機械強度の良好な絶縁層を得る観点から、(B)活性エステル系硬化剤の反応基数は、0.2〜2が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.35〜1がさらに好ましい。ここで、「エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「活性エステル化合物の反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する活性エステル化合物の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
【0037】
<(C)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(C)成分として、無機充填材を含む。
【0038】
部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点、熱膨張率の低い硬化物を得る観点から、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、40質量%以上であり、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上又は60質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量を高めると樹脂組成物の溶融粘度が上昇しプリント配線板の製造に際して積層性に劣る樹脂組成物に帰着する場合があるが、(B)成分と後述する(D)成分とを組み合わせて使用する本発明によれば、溶融粘度の過度の上昇なしに、無機充填材の含有量をさらに高めることができる。例えば、樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、62質量%以上、64質量%以上、66質量%以上、68質量%以上又は70質量%以上にまで高めてよい。
【0039】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、得られる硬化物の機械強度の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0040】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SO−C2」、「SO−C1」が挙げられる。
【0041】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、その上に微細な配線を形成し得る絶縁層を得る観点から、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましく、1μm以下、0.7μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、又は0.3μm以下がさらにより好ましい。一方、樹脂組成物を使用して樹脂ワニスを形成する際に適度な粘度を有し取り扱い性の良好な樹脂ワニスを得る観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上、0.07μm以上、又は0.1μm以上がさらに好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」、「LA−750」、「LA−950」等を使用することができる。
【0042】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0043】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m
2以上が好ましく、0.1mg/m
2以上がより好ましく、0.2mg/m
2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m
2以下が好ましく、0.8mg/m
2以下がより好ましく、0.5mg/m
2以下が更に好ましい。
【0044】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0045】
<(D)エポキシ基含有シリコーン化合物>
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として、エポキシ当量が300以下であり、かつ、アルコキシ基の含有量が分子全体の質量を基準として30質量%以下であるエポキシ基含有シリコーン化合物を含む。
【0046】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点から、(D)成分のエポキシ当量は、300以下であり、好ましくは280以下、より好ましくは260以下、さらに好ましくは240以下、さらにより好ましくは220以下、210以下又は200以下である。(D)成分のエポキシ当量の下限は特に限定されないが、好ましくは100以上、より好ましくは120以上である。(D)成分のエポキシ当量は、(A)成分と同様に、JIS K7236に従って測定することができる。
【0047】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点、適度な溶融粘度を呈する樹脂組成物を得る観点から、(D)成分におけるアルコキシ基の含有量は、該分子全体の質量を基準として、30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、4質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下である。該アルコキシ基の含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。該アルコキシ基の含有量は、(D)成分の分子量を100質量%としたときのアルコキシ基の含有量の値である。
【0048】
(D)成分の重量平均分子量は、エポキシ当量及びアルコキシ基の含有量が上記所望の範囲にある限りにおいて特に限定されないが、揮発性を低減させて取り扱い性を向上させる観点、分散性向上の観点から、300〜5000が好ましく、400〜4000がより好ましく、500〜3000がさらに好ましい。本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0049】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点から、樹脂組成物中の(D)成分の含有量は、0.3質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、又は2.0質量%以上である。(D)成分の含有量の上限は、樹脂組成物の硬化を促進し部品の実装工程において良好なリフロー挙動を達成する観点から、10質量%以下であり、好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは8.5質量%以下、8.0質量%以下、7.5質量%以下、又は7.0質量%以下である。
【0050】
一実施形態において、(D)成分は、式(1)で表される構造単位を含む。
【0051】
【化4】
(式中、R
1はエポキシ基を有する有機基を表し、R
2は水素原子、炭化水素基、又はアルコキシ基を表し、*は結合手を表す。)
【0052】
R
1で表されるエポキシ基を有する有機基としては、エポキシ基を有する限り特に限定されない。該有機基に含まれるエポキシ基の個数は特に限定されないが、好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個、さらに好ましくは1個である。
【0053】
一実施形態において、R
1は、式:X−(L)
p−で表される1価の基である。式中、Xはエポキシアルキル基、エポキシシクロアルキル基又はエポキシアリール基を表し、Lはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基、オキシシクロアルキレン基又はオキシアリーレン基を表し、pは0又は1を表す。
【0054】
Xで表されるエポキシアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜6である。
【0055】
Xで表されるエポキシシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜10、より好ましくは4〜6である。
【0056】
Xで表されるエポキシアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは6〜10である。
【0057】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、Xは、好ましくはエポキシシクロアルキル基、より好ましくは炭素原子数4〜10のエポキシシクロアルキル基である。中でも、Xは、エポキシシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0058】
Lで表されるアルキレン基、オキシアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6又は1〜4である。
【0059】
Lで表されるシクロアルキレン基、オキシシクロアルキレン基の炭素原子数は、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜10、さらに好ましくは3〜6である。
【0060】
Lで表されるアリーレン基、オキシアリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは6〜10である。
【0061】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、Lは、好ましくはアルキレン基、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基である。
【0062】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、pは1であることが好ましい。
【0063】
式(1)中、R
2で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びこれらの2つ以上が結合してなる1価の基が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜5、1〜4、又は1〜3である。シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6又は4〜6である。アリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜10である。アルキル基、シクロアルキル基、アリール基の2つ以上が結合してなる1価の基としては、例えば、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基が挙げられる。
【0064】
式(1)中、R
2で表されるアルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜5、1〜4又は1〜3である。
【0065】
(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、R
2は、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基である。
【0066】
(D)成分は、上記式(1)で表される構造単位を、1分子中に、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜8個、さらに好ましくは2〜6個、3〜6個又は3〜5個有する。
【0067】
(D)成分は、鎖状のシロキサン構造を有していてもよく、環状のシロキサン構造を有していてもよい。(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、(D)成分は、環状のシロキサン構造を有することが好ましい。
【0068】
好適な一実施形態において、(D)成分は、式(2)で表される化合物である。
【0069】
【化5】
(式中、
R
1及びR
2は上記と同じ意味を表し、
R
3は、R
1又はR
2を表し、
R
4は、水素原子、炭化水素基、又は式:−Si(R’)
3で表される1価の基を表し、ここでR’はR
1又はR
2を表す。
R
3とR
4はどちらも単結合であって互いに結合して環状のシロキサン構造を形成していてもよい。
nは2〜10の整数を表し、
mは0〜10の整数を表す。複数存在するR
1は同一でも相異なっていてもよく、複数存在するR
2は同一でも相異なっていてもよい。)
【0070】
式(2)中、R
1及びR
2の定義及び好適な例は上記のとおりである。
【0071】
式(2)中、R
4で表される炭化水素基は、式(1)中のR
2について説明した炭化水素基と同様である。エポキシ当量及びアルコキシ基の含有量が上記所望の範囲となる限りにおいて、R
3及びR
4は、上記選択肢の中から適宜決定してよい。中でも、(B)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより安定化し得る観点から、R
3とR
4はどちらも単結合であって互いに結合して環状のシロキサン構造を形成していることが好ましい。
【0072】
式(2)中、nは、好ましくは2〜8の整数、より好ましくは2〜6の整数、さらに好ましくは3〜6の整数又は3〜5の整数である。
【0073】
式(2)中、mは、好ましくは0〜8の整数、より好ましくは0〜6の整数、さらに好ましくは0〜4の整数又は0〜2の整数である。なお、式(2)中、添え字nで表される構造単位と添え字mで表される構造単位は、ランダムに含まれていてもよく、ブロック状に含まれていてもよい。
【0074】
特に好適な一実施形態において、(D)成分は、式(2−1)で表される化合物を含む。
【0076】
(D)成分は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
(D)成分の製造方法は特に限定されず、例えば、モノマーであるシラン化合物のアルコキシ基を部分加水分解し、重縮合させる反応によって得ることができる。(D)成分はまた、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「X−40−2670」(エポキシ当量200、アルコキシ基の含有量0質量%)、荒川化学工業(株)製「コンポセランSQ502−8」(エポキシ当量276、アルコキシ基の含有量約12質量%)などが挙げられる。
【0078】
<(E)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(E)熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。
【0079】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。
【0081】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YL7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0082】
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0083】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0084】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0085】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0086】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0087】
樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜10質量%、さらに好ましくは1質量%〜5質量%である。
【0088】
<(F)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、(F)硬化促進剤をさらに含んでもよい。
【0089】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜1質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0090】
<(G)硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(G)硬化剤(但し、(B)成分を除く。)をさらに含んでもよい。
【0091】
硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤等を挙げることができる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、上記(A)乃至(D)成分との組み合わせにおいて、部品の実装工程におけるリフロー挙動をより一層安定化し得る観点から、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤が好ましい。
【0092】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着強度(ピール強度)の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、「SN−395」、DIC(株)製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−1356」、「TD2090」等が挙げられる。
【0093】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4‘−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の市販品としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」、「PT30S」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0094】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0095】
樹脂組成物中の(G)成分の含有量は、特に限定されないが、得られる絶縁層の機械強度の観点から、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0096】
本発明の樹脂組成物において、(B)成分と(G)成分の合計量に対する(G)成分の質量比[(G)成分/((B)成分+(G)成分)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上である。該質量比の上限は特に限定されず、1であってよい。
【0097】
<(H)難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、(H)難燃剤をさらに含んでもよい。
【0098】
難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%である。
【0099】
<(I)有機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(I)有機充填材をさらに含んでもよい。
【0100】
有機充填材としては、プリント配線板の製造に際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0101】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER−91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)、パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0102】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR−1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに他の成分を含んでいてもよい。斯かる他の成分としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤及び硬化性樹脂等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0104】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0105】
本発明の樹脂組成物は、低熱膨張率の硬化物をもたらすことができる。本発明の樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数は、後述の<線熱膨張係数の測定>に記載の方法により測定することができる。具体的には、引張加重法で熱機械分析を行うことにより、25〜150℃の範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α
1;ppm/℃)、及び150℃から250℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α
2;ppm/℃)を測定することができる。
【0106】
樹脂組成物の硬化物のα
1は、プリント配線板におけるクラックや回路歪みの発生を抑制する観点から低いほど好ましい。α
1は、好ましくは40ppm/℃以下、より好ましくは35ppm/℃以下、さらに好ましくは30ppm/℃以下、さらにより好ましくは25ppm/℃以下である。α
1の下限は特に限定されないが、通常、1ppm/℃以上である。本発明の樹脂組成物は、このように低いα
1を呈することができる。
【0107】
樹脂組成物の硬化物のα
2は、クラックや回路歪みの発生を抑制する観点から低いことが好ましいが、α
2が低すぎると、部品の実装工程において良好なリフロー挙動を達成し難い場合があることを本発明者らは見出した。部品の実装工程におけるリフロー挙動を安定化させる観点から、樹脂組成物の硬化物のα
2は、好ましくは47ppm/℃以上、より好ましくは48ppm/℃以上、さらに好ましくは50ppm/℃以上、さらにより好ましくは52ppm/℃以上、又は54ppm/℃以上である。α
2の上限は、好ましくは60ppm/℃以下である。
【0108】
本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物を用いてプリント配線板の絶縁層を形成することにより、薄型のプリント配線板にあっても、部品の実装工程において良好なリフロー挙動を達成し得る。また、本発明の樹脂組成物は、適度な溶融粘度を呈し部品埋め込み性に優れることから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、部品内蔵回路板の部品を埋め込むための樹脂組成物(部品埋め込み用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物を部品埋め込み用樹脂組成物として使用することにより、薄型の部品内蔵回路板にあっても、部品の表面実装工程において良好なリフロー挙動を達成し得る。
【0109】
プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物として使用する場合、本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)、プリント配線板のソルダーレジストを形成するための樹脂組成物(プリント配線板のソルダーレジスト用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。
【0110】
[シート状積層材料]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物の層を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0111】
シート状積層材料としては、以下に示す接着フィルム、プリプレグが好ましい。
【0112】
一実施形態において、接着フィルムは、支持体と、該支持体と接合している樹脂組成物層(接着層)とを含んでなり、樹脂組成物層(接着層)が本発明の樹脂組成物から形成される。
【0113】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、さらにより好ましくは50μm以下又は40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上、10μm以上などとし得る。
【0114】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0115】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0116】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0117】
支持体は、樹脂組成物層と接合する側の表面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する側の表面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」などが挙げられる。
【0118】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5〜75μmの範囲が好ましく、10〜60μmの範囲がより好ましい。なお、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0119】
接着フィルムは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0120】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0121】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50〜150℃で3〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0122】
接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0123】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0124】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらにより好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されないが、通常、10μm以上である。
【0125】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0126】
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0127】
シート状積層材料において、樹脂組成物層の最低溶融粘度は、プリント配線板の製造に際して良好な積層性(回路埋め込み性)を達成する観点から、好ましくは15000ポイズ以下、より好ましくは14000ポイズ以下、さらに好ましくは12000ポイズ以下、さらにより好ましくは10000ポイズ以下、9000ポイズ以下、8000ポイズ以下、7000ポイズ以下、6000ポイズ以下、5000ポイズ以下又は4000ポイズ以下である。該最低溶融粘度の下限は、プリント配線板の製造に際して樹脂の染みだしを抑制する観点から、好ましくは300ポイズ以上、より好ましくは500ポイズ以上、さらに好ましくは700ポイズ以上、900ポイズ以上、又は1000ポイズ以上である。ここで、樹脂組成物層の「最低溶融粘度」とは、樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に樹脂組成物層が呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある温度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。「最低溶融粘度」とは、斯かる極小点の溶融粘度をいう。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができ、例えば、後述する<最低溶融粘度の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0128】
シート状積層材料において、樹脂組成物層の最低溶融粘度は、プリント配線板の具体的な設計(内層基板の回路厚さ、ライン/スペース比等)、プリント配線板の製造方法の具体的な設計(シート状積層材料と内層基板との積層温度等)に応じて、良好な積層性(部品埋め込み性)を達成するための最適値が異なる。よって、シート状積層材料を製造するにあたっては、樹脂組成物層が所期の最低溶融粘度を示すように設計する。この点、従来の樹脂組成物を使用したシート状積層材料に関しては、保管時に徐々に樹脂組成物層の粘度が増す場合があり、プリント配線板の製造に使用する際には所期の値よりも著しく高い最低溶融粘度を示す場合がある。
【0129】
これに対し、上記の(B)成分と(D)成分とを組み合わせて使用する本発明においては、保管時の樹脂組成物層の粘度の上昇が抑制され、所期の最低溶融粘度を有利に保つことができる。一実施形態において、本発明のシート状積層材料は、その製造直後の樹脂組成物層の最低溶融粘度をV
1(ポイズ)とし、23℃、60%湿度にて72時間保管した後の樹脂組成物層の最低溶融粘度をV
2(ポイズ)とするとき、V
2/V
1の比(以下、「増粘倍率」ともいう。)は、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下、1.4以下、又は1.3以下である。
【0130】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層形成用)、部品内蔵回路板の部品を埋め込むため(部品埋め込み用)として好適に使用することができる。プリント配線板の絶縁層を形成するために使用する場合、本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)、プリント配線板のソルダーレジストを形成するため(プリント配線板のソルダーレジスト用)としてより好適に使用することができる。
【0131】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層を含む。
【0132】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層を絶縁層として含む。他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層をソルダーレジストとして含む。本発明のプリント配線板において、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層は、その具体的用途に応じて適切な部材として含まれる。
【0133】
以下、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層を絶縁層として含むプリント配線板の実施形態について説明する。
【0134】
一実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述の接着フィルムを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0135】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用すればよい。
【0136】
内層基板の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。本発明によれば、さらに薄い内層基板を使用する場合であっても、実装工程におけるリフロー挙動を安定化させることができる。例えば、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下、110μm以下又は100μm以下の厚さの内層基板を使用する場合であっても、実装工程において良好なリフロー挙動を達成することができる。内層基板の厚さの下限は特に限定されないが、プリント配線板製造時の取り扱い性向上の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。
【0137】
内層基板と接着フィルムの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。接着フィルムを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に接着フィルムが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0138】
内層基板と接着フィルムの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0139】
積層は、市販の真空ラミネーターを使用して実施してよい。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0140】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された接着フィルムの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0141】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0142】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0143】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0144】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120〜240℃の範囲(好ましくは150〜220℃の範囲、より好ましくは170〜200℃の範囲)、硬化時間は5〜120分間の範囲(好ましくは10〜100分間、より好ましくは15〜90分間)とすることができる。
【0145】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5〜150分間、より好ましくは15〜120分間)予備加熱してもよい。
【0146】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
【0147】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に接着フィルムを用いる場合と同様である。
【0148】
[半導体装置]
本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。本発明のプリント配線板は、薄型であっても、高い半田リフロー温度を採用する部品の実装工程において良好なリフロー挙動を達成することができ、良好な実装性を実現し得る。
【0149】
部品の実装工程におけるリフロー挙動は、部品の実装工程におけるプリント配線板の反りを指標として評価することができ、反りが小さいほど、部品の実装工程におけるリフロー挙動は良好(安定)である。一実施形態において、本発明のプリント配線板は、ピーク温度が260℃と高い半田リフロー温度を採用する実装工程において、プリント配線板の反りを、35μm未満(好ましくは34μm以下、より好ましくは33μm以下、さらにより好ましくは32μm以下、31μm以下又は30μm以下)に抑えることができる。プリント配線板の反りは、プリント配線板中央の10mm角部分の反り挙動をシャドウモアレ装置にて観察した際の、変位データの最大高さと最小高さの差の値である。測定に際しては、IPC/JEDEC J−STD−020C(「Moisture/Reflow Sensitivity Classification For Nonhermetic Solid State Surface Mount Devices」、2004年7月)に記載されるリフロー温度プロファイル(鉛フリーアセンブリ用プロファイル;ピーク温度260℃)を再現するリフロー装置にプリント配線板を1回通した後、上記IPC/JEDEC J−STD−020Cに準拠したリフロー温度プロファイルにてプリント配線板の片面を加熱処理して、プリント配線板の他方の面に設けた格子線につき変位データを求める。なお、リフロー装置としては、例えば、日本アントム(株)製「HAS−6116」が挙げられ、シャドウモアレ装置としては、例えば、Akrometrix製「TherMoire AXP」が挙げられる。本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された層を含むプリント配線板は、薄型であっても、実装工程における反りが抑えられ、良好な実装性を実現する。
【0150】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0151】
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0152】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0153】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0154】
〔測定方法・評価方法〕
まず、各種測定方法・評価方法について説明する。
【0155】
<最低溶融粘度の測定>
実施例及び比較例で作製した接着フィルムの樹脂組成物層について、動的粘弾性測定装置((株)ユー・ビー・エム製「Rheosol−G3000」)を使用して溶融粘度を測定した。試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動1Hz、歪み1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(ポイズ)を測定した。各樹脂組成物層について、接着フィルム作成直後の初期の最低溶融粘度V
1(ポイズ)と、23℃、60%湿度にて72時間保管した後の最低溶融粘度V
2(ポイズ)を測定した。最低溶融粘度は、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準:
○:V
1及びV
2の両方が15000ポイズ未満
×:V
1及びV
2の少なくとも一方が15000ポイズ以上
【0156】
<線熱膨張係数の測定>
実施例及び比較例で作製した接着フィルム(200mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、樹脂組成物層がポリイミドフィルム(宇部興産(株)製「ユーピレックス25S」、厚さ25μm、240mm角)の平滑面と接するように、ポリイミドフィルムの片面の中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。
【0157】
得られた積層フィルムを、該積層フィルムのポリイミドフィルム面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工(株)製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該積層フィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。次いで、190℃で90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。
【0158】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、積層フィルムをガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に積層フィルムからポリイミドフィルム及び支持体を剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、25℃から150℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α1;ppm/℃)、及び150℃から250℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α2;ppm/℃)を算出した。
【0159】
<リフロー挙動評価用基板の調製>
(1)内層基板の準備
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板(銅箔をエッチングにより除去したアンクラッド板、厚さ0.10mm、三菱ガス化学(株)製「HL832NSF−LCA」)を用意した。
【0160】
(2)接着フィルムの積層
実施例及び比較例で作製した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0161】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
積層の後、基板の両面から支持体を剥離した。次いで、190℃で90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形性した。得られた基板を「基板1」と称する。
【0162】
<リフロー挙動の評価>
基板1を45mm角の個片に切り出した後(n=5)、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム(株)製「HAS−6116」)に一回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J−STD−020Cに準拠)。次いで、シャドウモアレ装置(Akrometrix製「TherMoire AXP」)を用いて、IPC/JEDEC J−STD−020C(ピーク温度260℃)に準拠したリフロー温度プロファイルにて基板下面を加熱し、基板上面に配した格子線に基づき基板中央の10mm角部分の変位を測定した。リフロー挙動は、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準:
○:全5サンプルについて、全温度範囲における変位データの最大高さと最少高さの差異が35μm未満
×:少なくとも1サンプルについて、全温度範囲における変位データの最大高さと最少高さの差異が35μm以上
【0163】
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828EL」、エポキシ当量約185)12部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)3部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量約288)25部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK/シクロヘキサノン=1/1溶液)10部を、ソルベントナフサ20部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)10部、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125、固形分60質量%のMEK溶液)10部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)16部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)135部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
次いで、アルキド樹脂系離型層付きPETフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm)の離型層側に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で5分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0164】
<実施例2>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量約288)25部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)8部を、ソルベントナフサ15部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)15部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発成分75質量%のMEK溶液)35部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発成分65質量%のトルエン溶液)12部、硬化促進剤(DMAP、固形分5質量%のMEK溶液)0.5部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート、固形分1質量%のMEK溶液)4部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SO−C2」、単位表面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)145部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
次いで、得られた樹脂ワニス2を使用して、実施例1と同様の手順で接着フィルム2を作製した。
【0165】
<実施例3>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200H」、エポキシ当量約275)9部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK/シクロヘキサノン=1/1溶溶液)15部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)4部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(DMAP、固形分5質量%のMEK溶液)3部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.25μm、(株)アドマテックス製「SO−C1」、単位表面積当たりのカーボン量0.36mg/m
2)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニス3を調製した。
次いで、樹脂ワニス3を使用して、実施例1と同様の手順で接着フィルム3を作製した。
【0166】
<比較例1>
(i)トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」、水酸基当量125、固形分60質量%のMEK溶液)の配合量を18部に変更した点、(ii)活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)16部に代えて、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、固形分60質量%のMEK溶液)12部を使用した点、(iii)硬化促進剤(DMAP、固形分5質量%のMEK溶液)の配合量を1.2部に変更した点以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0167】
<比較例2>
(i)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828EL」、エポキシ当量約185)の配合量を20部に変更した点、(ii)エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)を使用しなかった点以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0168】
<比較例3>
(i)ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)を使用しなかった点、(ii)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828EL」、エポキシ当量約185)の配合量を7部に変更した点、(iii)ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)を使用しなかった点、(iv)エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)の配合量を24部に変更した点以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0169】
<比較例4>
エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)10部に代えて、エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−41−1059A」、エポキシ当量350、アルコキシ基量42質量%)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0170】
<比較例5>
エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)10部に代えて、エポキシ基不含のシリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−9227」、アルコキシ基量15質量%)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0171】
<比較例6>
エポキシ基含有シリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2670」、エポキシ当量200、アルコキシ基量0質量%)10部に代えて、エポキシ基不含のシリコーン化合物(信越化学工業(株)製「X−40−2651」、アミノ基含有、アルコキシ基量7質量%)10部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0172】
<比較例7>
活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発成分65質量%のトルエン溶液)12部に代えて、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30S」、シアネート当量約133、不揮発成分85質量%のMEK溶液)8部を使用した以外は、実施例2と同様にして樹脂ワニス、接着フィルムを得た。
【0173】
【表1】