特許第6512330号(P6512330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512330
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気ポート構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/11 20060101AFI20190425BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   F02B77/11 D
   F02F1/42 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-54245(P2018-54245)
(22)【出願日】2018年3月22日
(62)【分割の表示】特願2014-63994(P2014-63994)の分割
【原出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2018-91343(P2018-91343A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣也
(72)【発明者】
【氏名】土橋 優貴
(72)【発明者】
【氏名】城田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 大
(72)【発明者】
【氏名】口田 征人
(72)【発明者】
【氏名】東 博文
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−274045(JP,A)
【文献】 特開2007−192176(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10313293(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/11
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路に配置されて燃料を供給するインジェクタと、吸気ポートの内部に配置されて前記吸気ポートと吸気通路を形成する断熱部材とを備える内燃機関の吸気ポート断熱構造であって、
前記断熱部材は、前記インジェクタの噴口より前記吸気通路上流側に位置する上流側壁部と、前記噴口より前記吸気通路下流側に位置する下流側壁部とを有するとともに、前記インジェクタが配置される側の壁面に切欠を有しており、
当該切欠は、前記上流側壁部の下流端と前記下流側壁部の上縁で囲まれた領域に設けられており、
前記上流側壁部の下流端は前記噴口より前記吸気通路上流側に位置し
前記下流側壁部は前記噴口に対向する側の前記壁面の前記燃料噴霧が付着される箇所まで延設される
ことを特徴とする内燃機関の吸気ポート断熱構造。
【請求項2】
前記断熱部材の前記上流側壁部は略円筒状に形成され、前記吸気ポートの壁面を構成する内周面と、前記シリンダヘッドの凹部に嵌合される外周面とを有し、
前記外周面は、前記下流部分に近づくにつれて外径寸法が小さくなる傾斜面で形成されている、
ことを特徴とする請求項記載の内燃機関の吸気ポート構造。
【請求項3】
前記断熱部材は、中空の部材と、前記中空の部材の内部に挿入された断熱材料とで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の吸気ポート構造。
【請求項4】
前記上流側壁部と前記下流側壁部は別体である、
ことを特徴とする請求項1〜の何れか1項記載の内燃機関の吸気ポート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気ポート構造に関し、より詳細にはポート噴射式の内燃機関の吸気ポート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費向上の観点から熱効率を高めた高圧縮比の内燃機関が求められている。
高圧縮比の内燃機関は、低圧縮比の機関に比べて圧縮後の混合気の温度が高くなるため、ノッキングしやすくなり、点火時期をリタード(遅角)する必要がある。
その結果、燃費の向上効果が低減してしまうことから、吸気温度ひいては混合気温度の上昇を抑制することが必要となる。
ところで、吸気は、インテークマニホールドの吸気通路と、シリンダヘッドに設けられる吸気ポートを介して燃焼室に吸引される。
インテークマニホールドおよびシリンダヘッドは、燃焼室から伝わる熱によって加熱されているため、吸気は、インテークマニホールドの吸気通路やシリンダヘッドの吸気ポートの壁面から受熱することで温度上昇することが避けられない。
そこで、インテークマニホールドを断熱性を有する樹脂材料で構成し、インテークマニホールドの樹脂製の挿入部を吸気ポートに挿入した吸気管の取付構造が提案されている(特許文献1参照)。
この構造では、樹脂製の挿入部を吸気ポートに挿入し、吸気ポートの壁面のうちシリンダヘッドの壁面で構成される部分の面積を減らして、吸気の温度上昇の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インジェクタから吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射式の内燃機関の場合、インジェクタから噴射された燃料は、吸気ポートの壁面を構成するシリンダヘッドの壁面および吸気バルブに当たって受熱することで気化が促進される。
内燃機関の回転速度が上昇し吸気速度が速くなると、インジェクタの噴口から噴射された燃料は、噴口よりも下流側に位置する吸気ポートの壁面のうち噴口が位置する側の吸気ポートの壁面に当たって受熱することで気化が促進される。
上記従来技術の場合、樹脂製の挿入部が噴口よりも下流側まで延在していることから、噴口よりも下流側に位置する吸気ポートの壁面のうち噴口が位置する側の吸気ポートの壁面を構成するシリンダヘッドの壁面の部分の面積も少ない。
このため、噴口から噴出された燃料は、樹脂製の挿入部で構成される壁面の部分に付着してしまい、燃料の気化が抑制されることから、燃焼効率が低下し、燃費の向上を図る上で不利となる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、吸気温度の上昇を抑制しつつ、燃料の気化を促進することにより燃費の向上を図る上で有利な内燃機関の吸気ポート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、吸気通路に配置されて燃料を供給するインジェクタと、吸気ポートの内部に配置されて前記吸気ポートと吸気通路を形成する断熱部材とを備える内燃機関の吸気ポート断熱構造であって、前記断熱部材は、前記インジェクタの噴口より前記吸気通路上流側に位置する上流側壁部と、前記噴口より前記吸気通路下流側に位置する下流側壁部とを有するとともに、前記インジェクタが配置される側の壁面に切欠を有しており、当該切欠は、前記上流側壁部の下流端と前記下流側壁部の上縁で囲まれた領域に設けられており、前記上流側壁部の下流端は前記噴口より前記吸気通路上流側に位置し、前記下流側壁部は前記噴口に対向する側の前記壁面の前記燃料噴霧が付着される箇所まで延設されることを特徴とする。
請求項記載の発明は、前記断熱部材の前記上流側壁部は略円筒状に形成され、前記吸気ポートの壁面を構成する内周面と、前記シリンダヘッドの凹部に嵌合される外周面とを有し、前記外周面は、前記下流部分に近づくにつれて外径寸法が小さくなる傾斜面で形成されていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、前記断熱部材は、中空の部材と、前記中空の部材の内部に挿入された断熱材料とで構成されていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、前記上流側壁部と前記下流側壁部は別体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、断熱部材の上流側壁部の下流端は噴口より吸気通路の上流側に位置し、噴口よりも下流側に位置する吸気ポートの壁面のうち噴口が位置する側で噴口から吸気ポートの延在方向に沿って延在する壁面の箇所がシリンダヘッドで構成されているため、噴口より下流の吸気ポートは壁面が露出することになる。
従って、エンジンの高速回転域において、吸気ポートを流れる吸気速度が速くなるため、噴口から噴射された燃料の大半は、噴口が位置する側で吸気ポートの延在方向に沿って延在する壁面の箇所に付着し、壁面から受熱することで、吸気ポート内で気化が効率よくなされ燃料の燃焼効率の向上を図る上で有利となる。また、噴口から噴射された燃料の大半が付着されない壁面の箇所であるポートの壁面は、断熱部材で構成されているので、吸気の温度上昇を抑制する上で有利となる。したがって、エンジンの燃費の向上を図る上で有利となる。
また、エンジンの低速回転域において、噴口から噴射された燃料の大半が付着する吸気ポートの壁面は、シリンダヘッドで構成されているので、吸気ポートの壁面に付着した燃料の気化が高温なシリンダヘッドの壁面で効率よくなされ、燃料の燃焼効率の向上を図る上で有利となる。また、エンジンの低速回転域において、噴口から噴射された燃料の大半が付着されない壁面の箇所であるポートの壁面は、断熱部材で構成されているので、シリンダヘッドの熱の吸気への伝達が抑制され、吸気の温度上昇を抑制する上で有利となる。したがって、エンジンの燃費の向上を図る上で有利となる。
請求項記載の発明によれば、吸気ポートの凹部に上流部分を嵌合させたときに、上流部分をガタツキなく嵌合する上で有利となる。
請求項記載の発明によれば、中空の部材の内部に挿入する断熱材料の種類を選択し、あるいは、シート状の断熱材料の枚数および厚さを設定することで、シリンダヘッドの温度分布に対応させて最適な吸気ポートの断熱性能を確保する上で有利となる。
請求項記載の発明によれば、上流部分と下流部分とに用いる断熱材料の種類を変えることで、上流部分と下流部分とで断熱性能を変えることができ、シリンダヘッドの温度分布に対応させて最適な吸気ポートの断熱性能を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る内燃機関の吸気ポート構造を示す断面図である。
図2】(A)は図1のAA線断面図、(B)は図1のBB線断面図、(C)は図1のCC線断面図を示す。
図3】断熱部材の構成を示す斜視図である。
図4】断熱部材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、内燃機関の全体構成について説明する。
図1に示すように、内燃機関(以下エンジンという)10は、シリンダ12が形成されたシリンダブロック14と、シリンダブロック14の上部に設けられたシリンダヘッド16と、シリンダ12に配設されたピストン18とを含んで構成されている。
シリンダヘッド16の両側には吸気管20(インテークマニホールド)と排気管22(エキゾーストマニホールド)が連結されている。
燃焼室24は、シリンダ12の内周面とシリンダヘッド16の下面とピストン18の頂面とによって構成され、シリンダヘッド16には燃焼室24に位置するように点火プラグ26が設けられている。
ピストン18はコネクティングロッド28を介して不図示のクランクシャフトに連結され、図中符号1802、1804は圧力リング、符号1806はオイルリングを示している。
【0009】
シリンダヘッド16には、燃焼室24に吸気を供給する吸気ポート30と、燃焼室24内の排気を排出する排気ポート32とが設けられている。
吸気ポート30には、吸気管20の吸気通路2002が接続され、排気ポート32には、排気管22の排気通路2202が接続されている。
また、吸気ポート30に吸気バルブ34が設けられ、排気ポート32に排気バルブ36が設けられ、それら吸気バルブ34、排気バルブ36はバルブスプリング38,40により閉止方向に付勢されている。吸気バルブ34、排気バルブ36は不図示の吸排気カムにより駆動され、吸気ポート30、排気ポート32を開閉する。
【0010】
本実施の形態では、エンジン10は、インジェクタ42から吸気ポート30内に燃料を噴射するポート噴射式エンジンである。
インジェクタ42は、不図示のポンプから供給された燃料を噴射するものであり、吸気ポート30内に噴口4202を向けた燃料噴射ノズル4204と、燃料噴射ノズル4204に設けられアクチュエータにより噴口4202を開閉する不図示のニードル弁とを含んで構成されている。
ポート噴射式エンジンでは、吸気管20の吸気通路2002から吸気ポート30内に吸入された吸入空気とインジェクタ42の噴口4202から噴射された燃料とが吸気ポート30内で混合されて混合気となり、燃焼室24に供給される。
そして、クランクシャフトが回転することにより、吸気カム、排気カムを介して吸気バルブ34、排気バルブ36が開閉され、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が実行され、主として、排気・吸気行程中に、噴口4202から燃料が吸気ポート30内に噴射される。
【0011】
図1に示すように、吸気ポート30は、その壁面の一部が、シリンダヘッド16に取着された断熱部材44で構成され、断熱部材44は、インジェクタ42が配置される側の壁面に切欠4402を有している。
図2(A)に示すように、吸気ポート30は、噴口4202が位置する側の壁面と噴口4202に対向する側の壁面との間の高さHと、この高さHに直交し高さHよりも大きい寸法の幅Wとを有する細長形状を呈している。
図2(A)〜(C)において符号C1は高さの中心を通る中心線を示し、符号C2は幅の中心を通る中心線を示し、吸気ポート30は中心線C1に対して線対称の形状であり、また、中心線C2に対して線対称の形状であり、噴口4202は中心線C2上に位置している。
断熱部材44は、吸気ポート30を流れる吸気の噴口4202よりも上流側に位置する上流部分46と、噴口4202よりも下流側に位置する下流部分48とを有している。
図1図2(A)、図3に示すように、上流部分46は筒状で、吸気ポート30の壁面を構成する内周面4602と、その反対に位置しシリンダヘッド16の凹部1602に嵌合される外周面4604とを有している。
外周面4604は、下流部分48に近づくにつれて外径寸法が小さくなる傾斜面で形成されている。
上流部分46の内周面4602は、吸気ポート30が均一の断面をもって延在するように形成され、噴口4202よりも上流側に位置する吸気ポート30の壁面3002の全域を構成している。
【0012】
また、下流部分48は、吸気ポート30の壁面を構成する内面4802と、その反対に位置しシリンダヘッド16の凹部1602に嵌合される外面4804とを有している。
下流部分48の内面4802は、噴口4202よりも下流側に位置する吸気ポート30の壁面のうち噴口4202に対向する側の壁面3004の箇所を構成し、噴口4202よりも下流側に位置する吸気ポート30の壁面のうち噴口4202が位置する側で吸気ポート30の延在方向に沿って延在する壁面3006の箇所はシリンダヘッド16で構成されている。
したがって、本実施の形態では、切欠4402は、上流部分46の下流端と下流部分48の上縁で囲まれた領域で燃焼室24側に向けて開放状に形成されている。
下流部分48の内面の幅W方向の中心は中心線C2上に位置し、本実施の形態では、図1図2(B)、(C)、図3に示すように、下流部分48の内面の幅W1と、下流部分48の内面の高さH1は、燃焼室24側に近づくにつれて次第に小さくなり、吸気ポート30の延在方向における単位長さ当たりの内面の面積が吸気の流れの下流側に至るにつれ次第に小さくなるように形成されている。
このように下流部分48の内面4802の幅W1、高さH1を燃焼室24側に近づくにつれて次第に小さくし、吸気ポート30の延在方向における単位長さ当たりの内面4802の面積を吸気の流れの下流側に至るにつれ次第に小さくしている。これにより、燃焼室24付近で断熱部材44が配置される面積が最小になるため、燃料を速やかに気化する上で有利となる。また、噴口4202から噴出された燃料の噴霧形状に合わせて断熱部材44が配置されるため、吸気管20を断熱しつつ燃料の気化を促進する上で有利となる。
【0013】
本実施の形態によれば、エンジン10の高速回転域において、吸気ポート30を流れる吸気速度が速くなるため、噴口4202から噴射された燃料の大半は、噴口4202が位置する側で吸気ポート30の延在方向に沿って延在する壁面3006の箇所に付着する。
そして、壁面3006から受熱することで吸気ポート30内で気化を促進され、吸気と混合された混合気として燃焼室24に吸引され、吸気ポート30の壁面3006に付着しなかった燃料は、吸気ポート30内で吸気と混合されて燃焼室24に吸引される。
本実施の形態では、噴口4202よりも下流側に位置する吸気ポート30の壁面のうち噴口4202が位置する側で吸気ポート30の延在方向に沿って延在する壁面3006の箇所はシリンダヘッド16で構成されている。
そのため、エンジン10の高速回転域において、吸気ポート30の壁面3006に付着した燃料の気化が高温なシリンダヘッド16の壁面3006で効率よくなされ、燃料の燃焼効率の向上を図る上で有利となる。
また、エンジン10の高速回転域において、噴口4202から噴射された燃料の大半が付着されない壁面の箇所である噴口4202よりも上流側に位置する吸気ポート30の壁面3002の全域と噴口4202よりも下流側に位置する吸気ポート30の壁面のうち噴口4202に対向する側の壁面3004の箇所は、上流部分46と下流部分48とからなる断熱部材44で構成されているので、シリンダヘッド16の熱の吸気への伝達が抑制され、吸気の温度上昇を抑制する上で有利となり、エンジン10の燃費の向上を図る上で有利となる。
したがって、吸気の温度上昇を抑制しつつ燃焼効率を向上できるので、エンジン10の燃費の向上を図る上で有利となる。
【0014】
また、エンジン10の低速回転域では、噴口4202から噴射された燃料は、その大半が噴口4202に対向する側の吸気ポート30の壁面3008および吸気バルブ34に付着する。
そして、壁面3008および吸気バルブ34から受熱することで吸気ポート30内で気化が促進され、吸気と混合された混合気として燃焼室24に吸引され、吸気ポート30の壁面3008に付着しなかった燃料は、吸気ポート30内で吸気と混合されて燃焼室24に吸引される。
本実施の形態では、噴口4202に対向する側の壁面3004の箇所で燃料噴霧が付着される壁面3008の範囲はシリンダヘッド16で構成されている。
そして、下流部分48は、噴口4202に対向する壁面3004の箇所から壁面3008の範囲の手前まで延在している。
そのため、エンジン10の低速回転域において、吸気ポート30の壁面3008に付着した燃料の気化が効率よくなされ、燃料の燃焼効率の向上を図る上で有利となる。
また、下流部分48が噴口4202に対向する壁面3004の箇所から壁面3008の範囲の手前まで延在しているので、シリンダヘッド16の熱の吸気への伝達が抑制され、吸気の温度上昇を抑制する上でより有利となる。
したがって、エンジン10の低速回転域において、吸気の温度上昇をより抑制しつつ燃焼効率をより向上できるので、エンジン10の燃費の向上を図る上でより一層有利となる。
【0015】
また、上流部分46の外周面4604は、下流部分48に近づくにつれて外径寸法が小さくなる傾斜面で形成されているので、シリンダヘッド16の凹部1602に上流部分46を嵌合したときに、上流部分46をガタツキなく嵌合する上で有利となる。
【0016】
また、上流部分46と下流部分48とを別体で構成した場合、上流部分46と下流部分48とに用いる断熱材料の種類を変えることで、断熱性能を変えることができる。
例えば、上流部分46が配置されたシリンダヘッド16部分に冷却水通路(高温)が配置され、下流部分48が配置されたシリンダヘッド16部分がそれより低温である場合は、下流部分48よりも上流部分46の断熱性能を高めるように、断熱部材44を構成する断熱材料を選択し、あるいは、断熱材料の密度を設定できる。
そのため、シリンダヘッド16の温度分布に対応させて最適な断熱性能を確保する上で有利となる。
【0017】
また、図4に示すように、上流部分46と下流部分48をそれぞれ、中空の部材と、中空の部材の内部に挿入された断熱材料50とで構成してもよい。
このように中空の部材を用いると、中空の部材に挿入する断熱材料50としてシート状のものや粉末,液体など壁面を構成する上で十分な特性を有していない物質を用いることができ、所望する断熱性能に応じたシート状の断熱材料50を選択した場合は、断熱材料50の枚数および厚さを設定できる。
そのため、シリンダヘッド16の温度分布に対応させて最適な断熱性能を確保する上で有利となる。
【0018】
なお、中空の部材を構成する材料は、合成樹脂材料あるいは金属材料など従来公知の様々な材料が使用可能である。
また、断熱部材44を上流部分46と下流部分48とが一体的に構成された中空あるいは中実の合成樹脂材料で構成してもよいし、中空の金属材料で構成してもよい。
しかしながら、本実施の形態のように、断熱部材44の上流部分46と下流部分48をそれぞれ、中空の部材と、中空の部材の内部に挿入された断熱材料50とで構成すると、最適な断熱性能を確保する上でより有利となる。
【0019】
また、吸気管20側の開口から複数の吸気ポート30が分岐し、各吸気ポート30にインジェクタ42が設けられる場合には、上流部分46および下流部分48が適宜分岐されることになり、各インジェクタ42とそれら分岐された下流部分48との相対的位置関係は実施の形態と同様である。
【符号の説明】
【0020】
10 エンジン(内燃機関)
16 シリンダヘッド
30 吸気ポート
3002 壁面
3004 壁面
3006 壁面
3008 壁面
42 インジェクタ
4202 噴口
44 断熱部材
4402 切欠
46 上流部分
4602 内周面
4604 外周面
48 下流部分
50 断熱材料
図1
図2
図3
図4