特許第6512344号(P6512344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6512344
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法及び接着剤の塗工方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/12 20060101AFI20190425BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20190425BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20190425BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190425BHJP
   B05D 5/10 20060101ALI20190425BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190425BHJP
   B01F 3/10 20060101ALI20190425BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B32B37/12
   C09J175/06
   C09J175/08
   B32B27/40
   B05D5/10
   B05D7/24 301U
   B05D7/24 301P
   B01F3/10
   B01F5/00 F
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-98945(P2018-98945)
(22)【出願日】2018年5月23日
【審査請求日】2018年8月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武本 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義浩
(72)【発明者】
【氏名】土屋 翔吾
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−087598(JP,A)
【文献】 特開2004−224887(JP,A)
【文献】 米国特許第06601782(US,B1)
【文献】 特開2012−207122(JP,A)
【文献】 特開2013−203927(JP,A)
【文献】 特表2009−507984(JP,A)
【文献】 国際公開第95/026385(WO,A1)
【文献】 特開2005−238232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 37/12
B01F 3/10
B01F 5/00
B05D 5/10
B05D 7/24
B32B 27/40
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材上に接着剤層を設けた後に、第2基材と貼り合せてなる積層体の製造方法であって、少なくとも主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーが連結された液体混合装置を用いて混合した後に、第1基材上に塗布して接着剤層を形成することを特徴とする積層体の製造方法であって、
主剤、硬化剤及び溶剤が、第1スタティックミキサー、次いで第2スタティックミキサーの順で混合され、第2スタティックミキサーの内径が、第1スタティックミキサーの内径よりも大きく、
主剤が、ポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールである、積層体の製造方法
【請求項2】
第1スタティックミキサーと第2スタティックミキサーとの内径比が、0.5〜0.75である、請求項に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
B型粘度計による25℃における測定で、主剤の粘度が500〜15,000mPa・sであり、溶剤の粘度が1〜100mPa・sである、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
硬化剤がポリイソシアネートである、請求項1〜いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
基材上に、主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結した液体混合装置を用いて混合した後に、塗工することを特徴とする、接着剤の塗工方法であって、
主剤、硬化剤及び溶剤が、第1スタティックミキサー、次いで第2スタティックミキサーの順で混合され、第2スタティックミキサーの内径が、第1スタティックミキサーの内径よりも大きく、
主剤が、ポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールである、接着剤の塗工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用積層体を形成する上での接着剤の硬化エージング時間をさらに短縮しても、従来と遜色ない接着性能とラミネート後外観とを発現する積層体の製造方法、及び接着剤の塗工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の包装材料として、各種プラスチックフィルム同士の貼り合せや、アルミニウム箔などの金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロンなどのプラスチックフィルムとを、接着剤層を介して積層化したものが用いられている。従来、主剤と硬化剤、溶剤からなる接着剤溶液を用いるにあたっては、通常はタンク等の容器に所定の割合で投入して撹拌棒で混合し、塗工する装置にその液を供給していた。しかし、このようなバッチ方式では混合された接着剤溶液を大量生産すると、使い残すと廃棄せざるを得ないという無駄があり、少量生産すると作業が煩雑になり効率が悪い状況である。また、混合された接着剤溶液は、その調整後ある程度の時間が経過すると、粘度が増加して流動性の低下によりムラなく均一な塗工をすることが難しい。
【0003】
特許文献1には、接着剤層を形成する主剤と硬化剤とを、1つのスタティックミキサーを有する混合装置で混合した後に基材に塗布することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、小型でコンパクトな本体であっても長い流路を有する、複数の流動体を混合可能な混合装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−78505号公報
【特許文献2】特開2011-523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、主剤と硬化剤とを含むドライラミネート用接着剤は、硬化のためのエージング工程を要するが、生産効率向上のため、さらなるエージング時間の短縮が求められている。エージング時間短縮には、硬化速度が高い、即ち反応性が高い主剤と硬化剤とを用いればよいが、反応性の高さ故に、接着剤組成物は、主剤及び硬化剤をさらに溶剤と混合して固形分濃度を下げる必要がある。
しかしながら、特許文献1及び2のように、ミキサー部が1つのである混合装置を用いた場合、特に高粘度の主剤と低粘度の溶剤とを迅速に混合することができず、混合不足による接着性不良やラミネート外観不良が発生するという課題があり、エージング時間の更なる短縮と、接着性及びラミネート外観とを両立が望まれている。
【0007】
すなわち本発明は、エージング時間の更なる短縮と、従来と遜色のない優れた接着性及びラミネート外観とを両立可能な積層体の製造方法、並びに接着剤の塗工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、以下の発明〔1〕〜〔7〕に関する。
〔1〕第1基材上に接着剤層を設けた後に、第2基材と貼り合せてなる積層体の製造方法であって、少なくとも主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーが連結された液体混合装置を用いて混合した後に、第1基材上に塗布して接着剤層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
【0009】
〔2〕主剤、硬化剤及び溶剤が、第1スタティックミキサー、次いで第2スタティックミキサーの順で混合され、第2スタティックミキサーの内径が、第1スタティックミキサーの内径よりも大きいことを特徴とする、〔1〕に記載の積層体の製造方法。
【0010】
〔3〕第1スタティックミキサーと第2スタティックミキサーとの内径比が、0.5〜0.75である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体の製造方法。
【0011】
〔4〕B型粘度計による25℃における測定で、主剤の粘度が500〜15,000mPa・sであり、溶剤の粘度が1〜100mPa・sである、〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【0012】
〔5〕主剤がポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールである、〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【0013】
〔6〕硬化剤がポリイソシアネートである、〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【0014】
〔7〕基材上に、主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結した液体混合装置を用いて混合した後に、塗工することを特徴とする、接着剤の塗工方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、エージング時間の更なる短縮と、優れた接着性及びラミネート外観とを両立可能な積層体の製造方法、並びに接着剤の塗工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の液体混合装置の1実施形態である。
図2図2は、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結した液体混合部を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
本発明の積層体の製造方法は、接着剤層を形成する接着剤組成物の成分である主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結した液体混合装置を用いて混合することを特徴とし、エージング時間の更なる短縮、及び、従来と遜色のない優れた接着性及びラミネート外観との両立を達成するという効果を奏するものである。
【0018】
<液体混合装置>
本発明の液体混合装置は、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーが連結された液体混合部を含むものである。これにより特に主剤と溶剤といった粘度の大きく異なる成分を含む接着剤組成物を迅速に混合することができ、速硬化性によるエージング時間の短縮と、ラミネート外観とを両立することができる。
本発明の液体混合装置は、この他、従来公知の構成を有していてもよい。液体混合装置の一例である図1によれば、後述の主剤、硬化剤及び溶剤は別々のタンクに供給されており、それぞれポンプを用いて主にSUS配管を経由しながら液体混合部(内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結したもの)に送液され、混合される。また、液体混合装置は温度制御機能を備えていてもよい。
【0019】
一般的に主剤の粘度は、B型粘度計による25℃測定において、500〜15,000mPa・s、好ましくは1,000〜8,000mPa・sと高粘度であることから、ポンプはモーノポンプ又はダイアフラムポンプを用いることが好ましい。一方、硬化剤の粘度は、B型粘度計による25℃測定において、1〜5,000mPa・s、好ましくは50〜3,000mPa・sとであり、溶剤の粘度は、B型粘度計による25℃測定において、1〜100mPa・s、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは1〜5mPa・sであり、硬化剤及び溶剤は、主剤と比較と比較すると低粘度であることから、ポンプはダイアフラムポンプ又はギアポンプを用いることが好ましい。
【0020】
各成分の配合比率は、主剤及び硬化剤の種類によって適宜選択することができるが、主剤100質量部に対して、硬化剤が3〜200質量部、溶剤は塗工不揮発分が5〜50質量%になるように制御することが好ましい。
また、本発明の液体混合装置は、積層体を製造するための接着剤塗工機及びラミネーター機と連結されていてもよく、送液速度は、接着剤塗工機及びラミネーター機によって適宜選択することができる。例として、加工速度が50〜300m/分であり、接着剤塗布量が0.1〜10g/mである場合、送液速度(吐出量)は100〜2000g/分程度である。
【0021】
[スタティックミキサー]
スタティックミキサーは、図2に示すとおり、駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)であり、ミキサー内に入った流体は、エレメントにより順次撹拌混合されるものである。エレメントは長方形の板を180度ねじった形で、ねじれの方向により、右エレメントと左エレメントがある。各エレメントの寸法は直径に対して、1.5倍の長さを基本としている。材質は、SUS又はプラスチック等が用いられるが、好ましくはSUSであり、より好ましくはSUS304である。
【0022】
本発明においては、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを有しており、主剤、硬化剤及び溶剤が混合される順に、第1スタティックミキサー、第2スタティックミキサー、第3(以下同様)とする。
スタティックミキサーの内径は、送液速度等によって適宜選択できるが、粘度差のある主剤、硬化剤及び溶剤を適切に撹拌混合し、接着強度とラミネート外観との両立を達成するためには、好ましくは第1スタティックミキサーと第2スタティックミキサーとの内径比は0.33〜3であり、より好ましくは、第2スタティックミキサーの内径が、第1スタティックミキサーの内径よりも大きく、更に好ましくは、第1スタティックミキサーと第2スタティックミキサーとの内径比が、0.5〜0.75である。
上記により、第1スタティックミキサーが微細に撹拌し、その後、より内径の大きい第2スタティックミキサーにより滞留時間を持たせて主剤、硬化剤及び溶剤をなじませて樹脂を溶解させることにより、効率的に均一な接着剤溶液を作り出すことができる。
【0023】
エレメント数は、送液速度等によって適宜選択できるが、好ましくは4〜50であり、より好ましくは6〜40であり、更に好ましくは8〜30であり、特に好ましくは10〜25である。
【0024】
(第1スタティックミキサー)
第1スタティックミキサーとしては、
ノリタケ製の型式1/4−N30−232−F(内径:10.5mm、全長200mm、エレメント数:12)、型式3/8−N30−232−F(内径:14.0mm、全長260mm、エレメント数:12)等を好適に用いることができる。
【0025】
(第2スタティックミキサー)
第2スタティックミキサーとしては、ノリタケ製の型式3/8−N30−232−F(内径:14.0mm、全長260mm、エレメント数:12)、型式1/2−N30−232−F(内径:17.5mm、全長320mm、エレメント数:12)等を好適に用いることができる。
【0026】
<接着剤層>
本発明の接着剤層は、少なくとも主剤、硬化剤及び溶剤を含む接着剤組成物を、上述の液体混合装置を用いて混合した後に、第1基材上に塗布し、必要に応じて乾燥して得ることができる。
【0027】
<主剤>
本発明における接着剤組成物を構成する主剤は、液状主剤であればよく、例えばポリオールが挙げられる。本発明で使用されるポリオールとしては、特に限定されるものではなく、例えばポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等を単独で使用、又は2種類以上を併用することができる。
中でも、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが好適に用いられ、速硬化の観点からより好ましくは、ポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールである。
【0028】
[ポリエステルポリオール]
本発明の接着用組成物に含有されるポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンもしくはそれらの混合物と、を反応させて得られるポリエステルポリオール、あるいはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールは、その質量平均分子量が5,000〜30,000のものが好ましく、10,000〜20,000のものがより好ましい。質量平均分子量が5,000未満のポリエステルポリオールを用いた場合には、得られる接着剤の凝集力が小さく、接着強度が低くなる場合がある。一方、30,000を超えるポリエステルポリオールを用いた場合には、後述に述べるが、合成上ポリオール中の水酸基に無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物を反応させることは難しく、著しい増粘やゲル化を引き起こす場合がある。
【0030】
(ポリエステルポリウレタンポリオール)
また、ポリエステルポリオールとして、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリエステルポリウレタンポリオールを使用することもできる。
ポリエステルポリウレタンポリオールは例えば、質量平均分子量1,000〜20,000のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとをNCO/OHモル比が1未満、好ましくは0.3〜0.98となるように配合し、反応させて得られる。ウレタン結合を導入してなるポリエステルポリウレタンポリオールは、凝集力が高く、金属への接着性が優れるため好ましい。
【0031】
(酸変性)
また、上述のポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール中の水酸基の一部に、無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物を反応させてなる反応生成物であることが好ましい。無水トリメリット酸とトリメリット酸エステル無水物のエステル化変性により、樹脂末端部或いは樹脂骨格中にブランチとしてカルボキシル基を含有するため、ポリイソシアネート化合物と混合使用する場合、安定性に優れ、また、その質量平均分子量が30,000〜100,000であることにより、エージング時間の短縮(速硬化性)に効果的である。
【0032】
トリメリット酸エステル無水物は、トリメリット酸の3つのカルボン酸の1つが水酸基を有する化合物とエステル化反応し、残る2つが酸無水物基となったものであり、好ましくは、炭素数2〜30のアルキレングリコールまたはアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させることにより得られるエステル化合物である。中でも、アルキレングリコール鎖が長すぎるとウレタン結合やエステル結合の極性基の密度が下がり接着性低下につながりやすくなり、アルカントリオールを用いると合成時に急激な増粘、ゲル化の危険性が高まるため、下記式(1)で示されるエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが好ましい。
【0033】
【化1】
【0034】
無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物との配合割合は、無水トリメリット酸が10〜70質量%であり、トリメリット酸エステル無水物が90〜30質量%であることが好ましい。無水トリメリット酸が10質量%以上(トリメリット酸エステル無水物が90質量未満)であることによって、得られるポリエステルポリオールの分子量が大きくなりすぎず、接着用組成物の粘度上昇を抑制でき、良好な外観の積層体を得ることができる。無水トリメリット酸が70質量以下(トリメリット酸エステル無水物が30質量%超え)であることによって、得られるポリエステルポリオールの分子量が低下し過ぎずないので、接着用組成物が水分の影響を受けにくく、安定した接着性能を発現できる。
【0035】
上記ポリエステルポリオールと無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物との反応は、無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物の開環によるエステル化反応が主反応となるように、反応温度を200℃以下に制御して行う。また、無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物は、ポリオールが有する水酸基の20〜90%が無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物でエステル化されるように、ポリオールと反応させることが好ましい。ここで、〔%〕とは水酸基の個数を基準にしたものである。上記数値が20%未満の場合は、得られる接着剤の耐内容物性の向上が十分でなく、エージング時間の短縮も十分でない場合がある。また、90%を越えると、未反応の無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物が残り易く、ポリエステルポリオール中に懸濁状態で入り、最終的にラミネート基材との接着強度などの物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0036】
[ポリエーテルポリオール]
本発明の接着用組成物に含有されるポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、2官能の他、3官能以上のものを用いることができる。また、官能基数の異なるものを複数組み合わせて用いることもできる。ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量が100以上、5,000以下のものが好ましい。また、異なる分子量のものを複数組み合わせて用いることもできる。
【0037】
(ポリエーテルポリウレタンポリオール)
ポリエーテルポリウレタンポリオールは、イソシアネート成分とポリエーテルポリオールとを水酸基過剰の条件下に反応させて、得ることができるものであり、通常、数平均分子量約400〜2,000の2官能ポリプロピレングリコールや数平均分子量約400〜4,000の3官能ポリプロピレングリコールと、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等のイソシアネート成分とから、ポリエーテルポリウレタンポリオールを合成することができる。中でも、ポリエーテルポリウレタンポリオールの硬化剤成分としてイソシアネート成分としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートを必須とすることが好ましい。
なお、2官能のイソシアネートを、2官能イソシアネートから誘導されるビュレット体やヌレート体と区別する趣旨で、「モノマー」と表現することがある。
【0038】
前記イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す場合がある)を必須とし、TDI以外の2官能のイソシアネートモノマーもさらに使用できる。TDI以外の2官能のイソシアネートモノマーとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’−MDIと略す場合がある)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’−MDIと略す場合がある)、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略す場合がある)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す場合がある)等、を挙げることができる。NCO/OHの当量比で、イソシアネート(NCO)を過剰として末端イソシアネートにしたものを硬化剤として使用することもできる。また、ウレタン合成触媒として、金属触媒が広く使用されており、その活性の高さから、有機スズ触媒が用いられ、主にジブチルスズジラウレート(DBTDL)又はスタナスオクトエートが使用されている。鉄、銅、チタニウム、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属化合物、中でもこれらのアセチルアセトナート錯体が高いウレタン化活性を有することが古くから知られている。非金属触媒として、3級アミン触媒が使用されるが触媒活性が低く、金属アセチルアセトナート錯体に3級アミン触媒を添加する方法も挙げられ、本発明において特に限定するものではなく、必要に応じて含有させることができる。
【0039】
<硬化剤>
本発明における接着剤組成物を構成する硬化剤は、液状硬化剤であればよく、例えばポリイソシアネートが挙げられる。上記ポリイソシアネートとしては、
例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、
例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート、
例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω'−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4'4"−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族又は芳香脂肪族の有機トリイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタン−2,2'−5,5'−テトライソシアネートなどの芳香脂肪族テトライソシアネートで代表される有機テトライソシアネートなどのポリイソシアネート単量体など、が挙げられる。
【0040】
更に、ポリイソシアネートとしては、前述のポリーオールにおけるウレタン結合の導入の場合に例示したポリイソシアネート単量体と、水又は低分子量ポリオールとを反応させて得られる付加体、ビューレット、アロハネートなどの誘導体および上記ポリイソシアネート単量体から誘導された二量体、三量体などの誘導体、炭酸ガスと上記有機ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有する誘導体またはそれらの混合物などが挙げられる。上記低分子量ポリオールとしては、二官能ポリオール、トリメチロールプロパンのような三官能ポリオール、分子量200〜20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールなどのものが挙げられる。
【0041】
硬化剤のポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体がとりわけ好ましい。特に、イソホロンジイソシアネート誘導体を20質量%以上含有したものを使用すると、耐水性、耐ボイル性等の諸物性、特に、印刷インキに対する諸物性が著しく向上する。
【0042】
<溶剤>
本発明における溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケント等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであれば必要に応じいかなるものを使用してもよい。好ましくは、酢酸エチルがよい。
【0043】
<その他成分>
本発明の接着剤組成物には、耐熱水性を高めるため、さらに、シランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.1〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。
【0044】
また、本発明の接着剤組成物には、耐酸性を高めるため、さらに、リンの酸素酸またはその誘導体を含有させることができる。リンの酸素酸またはその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸またはその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸またはその誘導体の添加量は、接着用組成物の固形分を基準として0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の接着剤組成物には、さらに、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有させることができる。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を含有させることができる。
【0046】
接着剤組成物の粘度が上記範囲より高い場合は、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケント等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであれば必要に応じいかなるものを使用してもよい。
【0047】
本発明における接着剤組成物における各成分の配合は、流動性が確保できる範囲でできるだけ低温で行うことが好ましく、具体的には10℃以上、30℃以下で配合することが好ましい。主剤の粘度は、500mPa・s以上、15000mPa・s以下、好ましくは500mPa・s以上、9000mPa・s以下である。硬化剤、溶剤の粘度は、1mPa・s以上、5000mPa・s以下である。
【0048】
<積層体>
本発明の積層体は、第1基材上に上述の接着剤層を設けた後に、第2基材と貼り合せてなるものであり、積層体の第2基材同士をヒートシールして包装材として用いることができる。
【0049】
[第1基材]
第1基材は、プラスチック製のフレキシブルな基材であれば特に限定されないが、包装材とした場合に表基材となることから、OPP(延伸ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、NY(ナイロン)であることが好ましい。また、バリア性等の機能性を付与するためのコーティング層を有してもよいし、各種機能を付与するための成分が基材中に含有されていてもよい。さらに、包材商品の安全性や意匠性を出すためにグラビアインキやフレキソインキなどよる印刷が施されてもよい。
【0050】
[第2基材]
第2基材は、プラスチック製のフレキシブルな基材であれば特に限定されず、第1基材と同種又は異種のものでもよい。包装材とした場合に最内層基材となることから、シール性を有するCPP(無延伸ポリプロピレン)や直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)などが好ましい。また、酸素や水分、光などを遮断する機能を発現させるためのCPP上に金属や金属酸化物の蒸着層を設けたもの(VMCPP)なども用いることができる。
【0051】
また本発明の積層体は、第1基材及び第2基材の間に、さらに中間層として第3の基材を有してもよい。第3の基材としては、バリア機能を高めるアルミニウム箔の金属箔やエバールフィルム(EVOH)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0052】
積層体としては、大別して、熱殺菌処理を要しない内容物(例えば、スナック菓子等)の包装に用いられる積層体と、熱殺菌処理を要する内容物(例えば、液状の食品等)の包装に用いられる積層体が挙げられる。
熱殺菌処理を要しない内容物の包装に用いられる積層体としては、OPP/接着剤層/CPP構成、VMCPP/接着剤層/OPP構成、PET/接着剤層/CPP構成、PET/接着剤層/VMCPP構成等が挙げられる。
また、熱殺菌処理を要する内容物の包装に用いられる積層体としては、85℃から100℃のボイル処理ではナイロン/接着剤層/LLDPE構成、110℃から135℃のレトルト処理ではPET/接着剤層/バリア材料としての金属箔であるアルミニウム箔/接着剤層/CPP構成等が挙げられる。
【0053】
<積層体の製造方法>
ドライラミネート用の接着剤として使用する場合、第1基材の一方の面に、グラビアコーター等によって接着剤用組成物を塗工し、乾燥して接着剤層の前駆体を形成した後、該接着剤層の前駆体上に第2基材を重ねてラミネータ等で貼り合わせた後、前記接着剤層の前駆体を常温もしくは加温下で硬化して、積層体を得ることができる。前記接着剤層の塗布量は、0.1〜10.0g/mであることが好ましい。これら積層体は、包装材の形成に好適に使用される。包装用積層体の厚さは、多くの場合、10μm以上である。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。また、略称について下記に示す。
TDI:トリレンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
XDI:キシリレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
4,4’−MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4’−MDI:2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0055】
<主剤の製造方法>
(主剤1):ポリエステルポリウレタンポリオール
イソフタル酸335g、セバシン酸148g、アジピン酸134g、エチレングリコール83g、ネオペンチルグリコール143g、1,6−ヘキサンジオール157gを仕込み、220〜260℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下で240〜260℃で5時間脱グリコール反応を行い、数平均分子量6,000、質量均分子量13,000、水酸基価17mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリウレタンポリオールを得た。さらにこのポリエステルポリオールの全量に対してイソホロンジイソシアネート10gを徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、数平均分子量8,000、質量均分子量20,000、水酸基価12mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリウレタンポリオール(a)を得た。ポリエステルポリウレタンポリオール(a)100gに対し、無水トリメリット酸:3g、エチレングリコールアンヒドロトリメリテート:2gを添加し、180℃で約2時間反応させ部分酸変性されたポリエステルポリウレタンポリオールA(水酸基価4.7mgKOH/g、酸価22.3mgKOH/g)を得た。得られた部分酸変性されたポリエステルポリウレタンポリオールAを酢酸エチルで希釈し、不揮発分50%のポリエステルポリウレタンポリオールである主剤1を得た。また主剤1の粘度は1,000mPa・s/25℃であった。
【0056】
(主剤2):ポリエーテルポリウレタンポリオール
数平均分子量約2,000の2官能ポリプロピレングリコール110部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール331部、トリレンジイソシアネート157部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80〜90℃で3〜5時間加熱してウレタン化反応を行った。ウレタン反応中は、反応触媒として、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)を0.1%添加して反応促進を行い、反応完了後、接着剤助剤なる3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.5%添加し、酢酸エチルで希釈して不揮発分65%に調整したポリエーテルポリウレタンポリオールである主剤2を得た。主剤2の水酸基価は23mgKOH/gであり、粘度は600mPa・s/25℃であった。
【0057】
<硬化剤の製造方法>
(硬化剤1)
XDIのトリメチロールプロパンアダクト体とIPDIのトリメチロールプロパンアダクト体とを、固形分比8:2の割合で配合したものを酢酸エチルで不揮発分70%に調整して硬化剤1を得た。硬化剤1のイソシアネート基含有率は10.8%であり、粘度は250mPa・s/25℃であった。
【0058】
(硬化剤2)
数平均分子量約2000の2官能ポリプロピレングリコール500部、数平均分子量約400の2官能ポリプロピレングリコール121部、数平均分子量約400の3官能ポリプロピレングリコール69部、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート310部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら70〜80℃で3〜5時間加熱してウレタン化反応を行い、反応完了後、酢酸エチルで希釈して不揮発分65%に調整したポリエーテルポリウレタンポリイソシアネートである硬化剤2を得た。硬化剤2のイソシアネート基含有率は3.2%であり、粘度は500mPa・s/25℃であった。
【0059】
<液体混合装置の調整>
図1の構成と同様にして、20L容量の主剤タンク、20L容量の硬化剤タンク、20L容量の溶剤タンク、ポンプ類及び、表1に示す液体混合部を有する液体混合装置A〜Gを得た。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
<積層体の製造方法>
[実施例1]
主剤タンク1に主剤1を、硬化剤タンクに硬化剤1を、溶剤タンクに酢酸エチルを、各々タンク容量の8割程度になるように仕込み、各ポンプ流量を調整して、主剤1/硬化剤1/酢酸エチル=100/30/154(質量比)、固形分濃度25質量%で、総流量2.1kg/分となるように液体混合装置Aを用いて混合して接着剤組成物とした後、
加工速度150m/分で、第1の基材であるNY基材(ユニチカ製:RT、膜厚15μm)上に乾燥後膜厚3.5μmになるよう前記接着剤組成物を塗工、乾燥して接着剤層を形成し、第2の基材であるLLDPE基材(三井化学東セロ製:TUX−FCD、膜厚50μm)と、第1の基材の前記接着剤層とを、富士機械工業製FL2のドライラミネーターを用いて貼り合せて、積層体a1を得た。
【0063】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
液体混合装置Aの代わりに、液体混合装置B〜Fを用いた以外は積層体a1と同様にして、積層体a2〜4、a6〜7を得た。
【0064】
[実施例5]
主剤タンク1に主剤2を、硬化剤タンクに硬化剤2を、溶剤タンクに酢酸エチルを、各々タンク容量の8割程度になるように仕込み、各ポンプ流量を調整して、主剤2/硬化剤2/酢酸エチル=100/100/125(質量比)、固形分濃度40質量%で、総流量1.3kg/分となるように液体混合装置Aを用いて混合した接着剤組成物を用いた以外は、積層体a1と同様にして、塗工、乾燥、貼り合わせを行い、積層体a5を得た。
【0065】
[比較例3]
液体混合装置Gの混合タンク容量の8割程度になるように、主剤1/硬化剤1/酢酸エチル=100/30/154の質量比で仕込み、撹拌した固形分濃度25質量%の接着剤組成物を用いた以外は、積層体a1と同様にして、塗工、乾燥、貼り合わせを行おうとしたが、塗工中で接着剤組成物の粘度が上昇したため作業を中断した。よって積層体a8は作製できなかった。
【0066】
[実施例6]
第1の基材として、NY基材の代わりに、予め東洋モートン製主剤TM−250HVと硬化剤CAT−RT86L−60を推奨比率で混合した接着剤組成物からなる接着剤層(乾燥後膜厚3.5μm)を用いてPET基材(東洋紡製:E5102、膜厚12μm)とアルミニウム箔(サンアルミ製、膜厚7μm)とを貼り合わせた複合基材を用いて、アルミニウム箔上に接着剤組成物を塗工し、さらに、第2の基材として、LLDPE基材の代わりに、CPP基材(東レフィルム加工製:トレファンZK207、膜厚70μm)を用いた以外は、積層体a1と同様にして、積層体b1を得た。
【0067】
[実施例7〜9、比較例4〜5]
液体混合装置Aの代わりに、液体混合装置B〜Fを用いた以外は積層体b1と同様にして、積層体b2〜6を得た。
【0068】
[比較例6]
液体混合装置Gの混合タンク容量の8割程度になるように、主剤1/硬化剤1/酢酸エチル=100/30/154の質量比で仕込み、撹拌した固形分濃度25質量%の接着剤組成物を用いた以外は、積層体b1と同様にして、塗工、乾燥、貼り合わせを行おうとしたが、塗工中で接着剤組成物の粘度が上昇したため作業を中断した。よって積層体b7は作製できなかった。
【0069】
<積層体の評価>
得られた積層体について、下記の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0070】
(短時間エージング後のヒートシール強度(NY/LLDPE構成))
得られた積層体a1〜a8について、40℃エージング6時間後のヒートシール強度を測定し、下記基準で評価した。ヒートシール強度測定は、幅15mm×長さ60mmの試験片を切り取り、テストピースとした。ヒートシール部の端部のLLDPEとLLDPEとの間を開き、インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて300mm/分の速度で両端を引張り、テストピースが破断するまでの強度(N)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。ヒートシール条件は、テスター産業製TP−701B ヒートシールテスターを用いて、温度150℃、圧力0.2MPa、時間1秒の圧着とした。
◎:接着力55N以上
○:接着力40N以上、55N未満
△:接着力35N以上、40N未満
×:接着力35N未満
【0071】
(短時間エージング後のヒートシール強度(PET/AL/CPP構成))
得られた積層体b1〜b7について、40℃エージング24時間後のヒートシール強度を測定し、下記基準で評価した。ヒートシール強度測定は、幅15mm×長さ60mmの試験片を切り取り、テストピースとした。ヒートシール部の端部のCPPとCPPとの間を開き、インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて300mm/分の速度で両端を引張り、テストピースが破断するまでの強度(N)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。ヒートシール条件は、テスター産業製TP−701B ヒートシールテスターを用いて、温度190℃、圧力0.2MPa、時間1秒の圧着とした。
◎:接着力55N以上
○:接着力40N以上、55N未満
△:接着力35N以上、40N未満
×:接着力35N未満
【0072】
(ラミネート外観)
得られた積層体a1〜a8について、下記基準で目視評価を行なった。
◎:ハジキやムラがなく均一塗工できており、良好
○:ハジキがなく、僅かなムラがあるが、使用可能
×:ハジキやムラがあり、使用不可
【0073】
【表3】
【0074】
組成1:主剤1/硬化剤1/酢酸エチル=100/30/154 不揮発分25質量%
組成2:主剤2/硬化剤2/酢酸エチル=100/100/125 不揮発分40質量%
【0075】
表3の実施例に示す通り、内径の異なる少なくとも2本のスタティックミキサーを用いることにより、粘度差のある3成分を含む速硬化ラミネート接着剤を効率的に混合することができ、速硬化性(エージング時間短縮)とラミ外観との2つの課題を解決することができた。特に、第2スタティックミキサーの内径が、第1スタティックミキサーの内径よりも大きい場合に、より良好な結果を示した。
一方、比較例3及び6のように従来の混合方式である混合タンクによる大量の一括混合では、塗工中で接着剤組成物の粘度が上昇したため、均一な接着剤層を形成することができず、作業中断せざる負えない状況であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の第1基材上に接着剤層を設けた後に、第2基材と貼り合せてなる積層体の製造方法であって、少なくとも主剤、硬化剤及び溶剤を、内径の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーを連結した液体混合装置を用いて混合した後に、第1基材上に塗布し乾燥して接着剤層を形成することを特徴とする積層体の製造方法は、エージング時間の更なる短縮と、従来と遜色のない優れた接着性及びラミネート外観とを両立可能な積層体の製造方法に優れているため、消耗材料である多種多様な詰替え洗剤容器包装用途へも利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 主剤タンク
2 硬化剤タンク
3 溶剤タンク
4 主剤ポンプ
5 硬化剤ポンプ
6 溶剤ポンプ
7 液体混合部
8 エレメント
9 内径
10 全長
11 連結部
【要約】      (修正有)
【課題】エージング時間の更なる短縮と、従来と遜色のない優れた接着性及びラミネート外観とを両立可能な積層体の製造方法、並びに接着剤の塗工方法の提供。
【解決手段】第1基材上に接着剤層を設けた後に、第2基材と貼り合せてなる積層体の製造方法であって、少なくとも主剤、硬化剤及び溶剤を、内径9の異なる少なくとも2つのスタティックミキサーが連結された液体混合装置を用いて混合した後に、第1基材上に塗布して接着剤層を形成する積層体の製造方法。
【選択図】図2
図1
図2