(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に供給される処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と前記処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを行う電動バルブと、前記電動バルブを制御する制御装置と、を備え、
前記電動バルブは、
処理液が流入する流入口と、前記流入口に流入した処理液を排出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に配置された開口と、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に延びる流路と、前記開口を取り囲む環状の弁座と、が設けられた本体と、
前記弁座に接触し、前記流入口から前記流出口への処理液の流通を遮断する閉位置と、前記弁座から離れ、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に処理液を流す開位置と、の間で前記本体に対して移動可能な弁体と、
前記閉位置と前記開位置との間で前記弁体を移動させ、前記制御装置からの指令に応じて前記閉位置から前記開位置までの任意の位置に前記弁体を位置させる電動アクチュエータと、を含み、
前記弁体は、前記開口に挿入された錐体部と、間隔を空けて前記錐体部を取り囲んでおり、前記弁座に対向する環状部と、を含み、
前記錐体部は、前記閉位置から前記開位置までのいずれの位置においても前記本体に非接触である錐体状の外周面を含み、
前記環状部は、前記閉位置において前記弁座に垂直に押し付けられ、前記閉位置以外の位置において前記弁座から離れる環状先端部を含み、
前記弁座と前記開口の縁とは、同一平面上に配置されている、基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記基板処理装置では、開閉バルブと流量調整バルブとが設けられている。可動部品が多いと、コストが増加したりより広いスペースが必要となるだけでなく、基板を汚染させるパーティクルが増加する可能性が高まる。
前記基板処理装置において、開閉バルブを省略して、処理液の供給および供給停止と流量の調整とを流量調整バルブに実行させることが考えられる。しかしながら、この場合、処理液ノズルへの処理液の供給を停止するときに、円錐状の弁体(ニードル)が円錐状の弁座に擦れるので、弁体および弁座の摩耗によりパーティクルが発生してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、パーティクルを低減しながら、処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを一つのバルブで実行できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板に供給される処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と前記処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを行う電動バルブと、前記電動バルブを制御する制御装置と、を備え、前記電動バルブは、処理液が流入する流入口と、前記流入口に流入した処理液を排出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に配置された開口と、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に延びる流路と、前記開口を取り囲む環状の弁座と、が設けられた本体と、前記弁座に接触し、前記流入口から前記流出口への処理液の流通を遮断する閉位置と、前記弁座から離れ、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に処理液を流す開位置と、の間で前記本体に対して移動可能な弁体と、前記閉位置と前記開位置との間で前記弁体を移動させ、前記制御装置からの指令に応じて前記閉位置から前記開位置までの任意の位置に前記弁体を位置させる電動アクチュエータと、を含み、前記弁体は、前記開口に挿入された錐体部と、間隔を空けて前記錐体部を取り囲んでおり、前記弁座に対向する環状部と、を含み、前記錐体部は、前記閉位置から前記開位置までのいずれの位置においても前記本体に非接触である錐体状の外周面を含み、前記環状部は、前記閉位置において前記弁座に垂直に押し付けられ、前記閉位置以外の位置において前記弁座から離れる環状先端部を含
み、前記弁座と前記開口の縁とは、同一平面上に配置されている、基板処理装置である。
請求項2に記載の発明は、基板に供給される処理液を吐出する処理液ノズルと、前記処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と前記処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを行う電動バルブと、前記電動バルブを制御する制御装置と、を備え、前記電動バルブは、処理液が流入する流入口と、前記流入口に流入した処理液を排出する流出口と、前記流入口と前記流出口との間に配置された開口と、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に延びる流路と、前記開口を取り囲む環状の弁座と、が設けられた本体と、前記弁座に接触し、前記流入口から前記流出口への処理液の流通を遮断する閉位置と、前記弁座から離れ、前記開口を介して前記流入口から前記流出口に処理液を流す開位置と、の間で前記本体に対して移動可能な弁体と、前記閉位置と前記開位置との間で前記弁体を移動させ、前記制御装置からの指令に応じて前記閉位置から前記開位置までの任意の位置に前記弁体を位置させる電動アクチュエータと、を含み、前記弁体は、前記開口に挿入された錐体部と、間隔を空けて前記錐体部を取り囲んでおり、前記弁座に対向する環状部と、を含み、前記錐体部は、前記閉位置から前記開位置までのいずれの位置においても前記本体に非接触である錐体状の外周面を含み、前記環状部は、前記閉位置において前記弁座に垂直に押し付けられ、前記閉位置以外の位置において前記弁座から離れる環状先端部を含み、前記錐体部の外径の最大値は、前記開口の直径よりも小さく、前記開口の縁は、前記閉位置から前記開位置までのいずれの位置に前記弁体が位置しているときでも、前記錐体部のまわりに位置している、基板処理装置である。
【0007】
こ
れらの発明によれば、開口に挿入された錐体部と弁座に対向する環状部とが、弁体に設けられている。電動アクチュエータは、制御装置からの指令に応じて閉位置と開位置との間で弁体を移動させる。電動アクチュエータが弁体を移動させると、錐体部および環状部が移動する。
錐体部の移動により、開口の流路面積(錐体部で占有されていない部分の面積)が連続的に変化する。処理液ノズルに供給される処理液の流量は、電動アクチュエータによって自動で調整される。また、電動アクチュエータが閉位置に弁体を位置させると、環状部が弁座に接触し、電動アクチュエータが閉位置以外の位置に弁体を位置させると、環状部が弁座から離れる。処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止は、電動アクチュエータによって自動で切り替えられる。したがって、処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを一つのバルブ(電動バルブ)で実行できる。
【0008】
錐体部の外周面は、閉位置から開位置までのいずれの位置においても本体に非接触である。したがって、弁体の移動により、錐体部が本体に擦れて、パーティクルが発生することはない。また、環状部の環状先端部は、閉位置において弁座に垂直に押し付けられる。したがって、円錐状の弁体を円錐または円筒状の弁座に押し付ける場合と比べて、パーティクルが発生し難い。そのため、流路内で発生するパーティクルを低減でき、基板に供給される処理液の清浄度を高めることができる。
【0009】
請求項
3に記載の発明は、前記弁座および環状先端部は、いずれも平坦である、請求項1
または2に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、平坦な環状先端部が、平坦な弁座に垂直に押し付けられる。これにより、弁座および環状先端部が面接触する。そのため、弁体および弁座が線接触する場合と比べて、処理液の流通をより確実に遮断できる。さらに、平面同士が垂直に押し付けられるので、円錐状の弁体を円錐または円筒状の弁座に押し付ける場合と比べて、パーティクルが発生し難い。これにより、流路内で発生するパーティクルを低減できる。
【0010】
請求項
4に記載の発明は、前記環状先端部の内径は、前記開口の直径よりも大きい、請求項1
〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
弁体および弁座の接触面積が小さすぎると、十分な密閉性を確保できなくなる。その一方で、弁体および弁座の接触面積が大きすぎると、バルブを閉止させるために大きな圧力が必要となる。そのため、弁体および弁座の接触面積は、十分な密閉性を確保できる範囲内で極力小さいことが好ましい。この発明によれば、環状先端部の内径が開口の直径よりも大きいので、環状先端部の内径が開口の直径以下である場合と比べて、弁座および環状先端部の接触面積を低減できる。したがって、処理液の流通をより確実に遮断しながら、パーティクルを低減できる。
【0011】
請求項
5に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記電動バルブを通過する処理液の流量を検出する流量計をさらに含み、前記制御装置は、前記閉位置に位置する前記弁体を、前記開口の縁から前記錐体部までの径方向(錐体部の中心線に直交する方向)の距離が前記環状部から前記弁座までの軸方向(錐体部の中心線に沿う方向)の距離に等しい中間位置を介して、前記中間位置よりも前記開位置側の位置であり、前記電動バルブを通過する処理液の流量の目標値に対応する目標位置に移動させるとき、前記閉位置から前記中間位置までは、一定の移動速度で前記弁体を移動させる第1等速制御を行い、前記中間位置から前記目標位置までは、前記流量計の検出値に基づいて前記弁体を移動させるフィードバック制御を行う、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0012】
フィードバック制御の代表例は、比例動作、積分動作、および微分動作を行うPID制御である。フィードバック制御は、PID制御に限らず、比例動作を行う比例制御であってもよいし、比例動作および積分動作を行うPI制御であってもよい。
この発明によれば、弁体が閉位置以外の位置に配置されているとき、流入口に流入した処理液は、環状部と弁座との間の隙間と、錐体部と開口の縁との間の隙間とを通過する。中間位置よりも閉位置側の位置では、環状部と弁座との間の流路面積が、開口の流路面積(錐体部と開口の縁との間により規定される流路面積)よりも小さいため、電動バルブを通過する処理液の流量を律速する。その一方で、中間位置よりも開位置側の位置では、開口の流路面積が、環状部と弁座との間の流路面積よりも小さいため、電動バルブを通過する処理液の流量を律速する。
【0013】
制御装置は、閉位置から中間位置までは、一定の移動速度で弁体を移動させる第1等速制御を行う。そして、制御装置は、中間位置から目標位置までは、流量計の検出値に基づいて弁体を移動させるフィードバック制御を行う。つまり、目標位置は、開口の流路面積が処理液の流量を律速する範囲にあるので、制御装置は、環状部と弁座との間の流路面積が処理液の流量を律速する範囲の外に弁体を速やかに移動させる。したがって、当初からフィードバック制御を行う場合と比べて、流量の測定値が安定するまでの時間を短縮できる。
【0014】
請求項
6に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記電動バルブを通過する処理液の流量を検出する流量計をさらに含み、前記制御装置は、前記開口の縁から前記錐体部までの径方向の距離が前記環状部から前記弁座までの軸方向の距離に等しい中間位置よりも前記開位置側に位置する前記弁体を、前記中間位置を介して前記閉位置に移動させるとき、前記中間位置よりも前記開位置側の位置から前記中間位置までは、一定の移動速度で前記弁体を移動させる第2等速制御を行い、前記中間位置から前記閉位置までの少なくとも一部では、前記第2等速制御での前記弁体の移動速度よりも小さい移動速度で前記弁体を移動させる減速制御を行う、請求項1〜
5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、制御装置は、当初の位置(中間位置よりも開位置側の位置)から中間位置までは、一定の移動速度で弁体を移動させる第2等速制御を行う。そして、制御装置は、中間位置から閉位置までの少なくとも一部では、第2等速制御での弁体の移動速度よりも小さい移動速度で弁体を移動させる減速制御を行う。このように、弁体が弁座に接触する直前の移動速度が低下するので、弁体が弁座に接触するときの衝撃を低減でき、弁体と弁座との接触により発生するパーティクルをさらに低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。
【0018】
処理ユニット2は、基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック4と、スピンチャック4に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する処理液ノズル11とを含む。
スピンチャック4は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース6と、スピンベース6の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン5と、スピンベース6の中央部から下方に延びるスピン軸7と、スピン軸7を回転させることによりスピンベース6およびチャックピン5を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ8とを含む。スピンチャック4は、複数のチャックピン5を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース6の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0019】
基板処理装置1は、処理液を処理液ノズル11に導く処理液配管12と、第1薬液を処理液配管12に導く第1配管13と、第2薬液を処理液配管12に導く第2配管16と、純水(脱イオン水:Deionized Water)を処理液配管12に導く第3配管19とを含む。基板処理装置1は、さらに、第1配管13に介装された第1バルブ14と、第1バルブ14を通過する液体の流量を検出する第1流量計15と、第2配管16に介装された第2バルブ17と、第2バルブ17を通過する液体の流量を検出する第2流量計18と、第3配管19に介装された第3バルブ20と、第3バルブ20を通過する液体の流量を検出する第3流量計21とを含む。
【0020】
第1バルブ14、第2バルブ17、および第3バルブ20は、いずれも電動バルブである。制御装置3は、各バルブ14、17、20を開閉させる。制御装置3は、さらに、各バルブ14、17、20の開度を制御することにより、各バルブ14、17、20を通過する液体の流量を変更する。第1流量計15、第2流量計18、および第3流量計21の検出値は、制御装置3に入力される。制御装置3は、各流量計15、16、21の検出値に基づいて流量の測定値を求める。制御装置3は、各流量計15、16、21の検出値に基づいて各バルブ14、17、20の開度を変更することにより、流量の測定値(測定流量値)を流量の目標値(目標流量値)に近づける若しくは一致させる。
【0021】
第1薬液の一例は、アンモニア水である。第2薬液の一例は、過酸化水素水である。各バルブ14、17、20が開かれると、第1バルブ14の開度に対応する流量のアンモニア水と、第2バルブ17の開度に対応する流量の過酸化水素水と、第3バルブ20の開度に対応する流量の純水とが、処理液配管12に供給される。これにより、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合液であるSC−1が、処理液配管12内で生成され、処理液ノズル11から吐出される。また、第1バルブ14および第2バルブ17が閉じられ、第3バルブ20が開かれると、純水が、処理液配管12に供給され、処理液ノズル11から吐出される。
【0022】
基板Wを処理するとき、制御装置3は、スピンチャック4を制御することにより、基板Wを回転させる。この状態で、制御装置3は、回転している基板Wの上面に向けて処理液ノズル11にSC−1を吐出させる。これにより、薬液の一例であるSC−1が基板Wの上面全域に供給される(薬液供給工程)。
制御装置3は、処理液ノズル11からのSC−1の吐出を停止させた後、リンス液の一例である純水を回転している基板Wに向けて処理液ノズル11に吐出させる。これにより、純水が基板Wの上面全域に供給され、基板Wに付着しているSC−1が洗い流される(リンス液供給工程)。
【0023】
制御装置3は、処理液ノズル11からの純水の吐出を停止させた後、スピンチャック4に基板Wを高速回転させる。これにより、基板Wに付着している純水が遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そのため、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥工程)。
図2は、電動バルブの一例である第1バルブ14について説明するための断面図である。以下では、第1バルブ14について説明する。第2バルブ17および第3バルブ20についての説明は省略するが、第2バルブ17および第3バルブ20は、いずれも第1バルブ14と同等の構成を有している。
【0024】
図2に示すように、第1バルブ14は、処理液を導く流路30が形成された本体25と、流路30を開閉する弁体31とを含む。第1バルブ14は、さらに、弁体31を軸方向X1(錐体部33の中心線に沿う方向)に移動させる動力を発生する電動モータ23と、電動モータ23の回転を弁体31の直線運動に変換する運動変換機構22と、電動モータ23の回転角を検出する回転角センサ24とを含む。第1バルブ14において処理液に接する部分(接液部)は、薬液に対する耐性を有する合成樹脂(たとえば、フッ素樹脂)で作成されている。流路30の内面30cや弁体31の外面は、接液部に含まれる。
【0025】
電動アクチュエータの一例である電動モータ23は、制御装置3によって制御される。図示はしないが、運動変換機構22は、たとえば、軸方向X1に延びる雄ねじと雄ねじを取り囲む雌ねじとを含む。電動モータ23が回転すると、電動モータ23の回転角に応じた移動量で弁体31が軸方向X1に移動する。制御装置3は、回転角センサ24の検出値に基づいて電動モータ23を制御することにより、閉位置(
図5に示す位置)から開位置(
図7に示す位置)までの任意の位置に弁体31を位置させる。制御装置3は、さらに、電動モータ23の回転速度を制御することにより、弁体31の移動速度を任意の速度に変更する。
【0026】
図2に示すように、本体25は、フィルターでろ過された処理液が流入する流入口26と、流入口26に流入した処理液を排出する流出口29と、流入口26と流出口29との間に配置された円形の開口27と、開口27を介して流入口26から流出口29に延びる流路30と、開口27を同心円状に取り囲む円環状の弁座28とを含む。流路30は、流入口26から下流に延びる上流部30aと、流出口29から上流に延びる下流部30bとを含む。上流部30aおよび下流部30bは、本体25の内部で交差している。開口27は、流路30の内面30cに形成されている。第1配管13は、流入口26に接続された上流配管13aと、流出口29に接続された下流配管13bとを含む。
【0027】
図2に示すように、弁体31は、円板部32と、錐体部33と、環状部34とを含む。円板部32と、錐体部33と、環状部34とは、たとえば、一体である。弁体31は、環状部34が弁座28に接触し、流入口26から流出口29への処理液の流通を遮断する閉位置(
図5に示す位置)と、環状部34が弁座28から離れ、開口27を介して流入口26から流出口29に処理液を流す開位置(
図7に示す位置)と、の間で本体25に対して移動可能である。流入口26から流出口29への処理液の流通は、環状部34と弁座28との接触によって遮断される。流入口26から流出口29に流れる処理液の流量は、錐体部33によって連続的に調整される。
【0028】
図2に示すように、円板部32は、本体25に設けられた凹部内に配置されている。円板部32の端面32aは、流路30内に配置されている。環状部34は、円板部32の端面32aから弁座28に向かって延びている。錐体部33は、円板部32の端面32aから開口27に向かって延びている。
図3に示すように、錐体部33は、円板部32から離れるにしたがって外径が連続的に減少する円錐状の外周面33aを含む。錐体部33の外周面33aは、下流に向かって先細りになっている。錐体部33の外周面33aは、軸方向X1に対して一定の傾斜角度で傾いている。錐体部33の先端は、環状部34よりも円板部32から軸方向X1に離れている。錐体部33の先端は、弁座28に対して下流に配置されている。流路30の下流部30bの内面は、錐体部33を同心円状に取り囲む円筒状である。開口27の縁27aは、下流部30bの内面の上流端に相当する。錐体部33は、開口27に挿入されている。
【0029】
図3に示すように、環状部34は、軸方向X1に弁座28に対向する環状先端部34aを含む。環状先端部34aは、たとえば、軸方向X1に直交する平面上に配置された平坦面である。同様に、弁座28は、たとえば、軸方向X1に直交する平面上に配置された平坦面である。環状先端部34aおよび弁座28は、平行に対向している。環状部34の内周面は、径方向Y1(軸方向X1に直交する方向)に間隔を空けて錐体部33の外周面33aを同心円状に取り囲んでいる。円板部32の端面32aと錐体部33の外周面33aと環状部34の内周面とは、錐体部33を取り囲む環状溝35を形成している。
【0030】
図3に示すように、環状先端部34aの内径は、たとえば、開口27の直径よりも大きい。錐体部33の最大径(錐体部33の根元の外径)は、たとえば、開口27の直径よりも小さい。したがって、軸方向X1に関して環状先端部34aと等しい位置での錐体部33の外径D1は、開口27の直径よりも小さい。環状先端部34aの幅(環状先端部34aの内縁から環状先端部34aの外縁までの径方向Y1の長さ)は、たとえば、環状部34の高さ(円板部32の端面32aから環状先端部34aまでの軸方向X1の長さ)よりも小さい。環状先端部34aの内径と開口27の直径との差の1/2(開口27の縁27aから環状先端部34aの内端までの、径方向Y1の距離)は、たとえば、環状部34の高さよりも小さく、環状先端部34aの幅よりも小さい。
【0031】
図2に示すように、弁体31が閉位置に配置されると、環状先端部34aの全周が弁座28の全周に押し付けられ、環状部34が弾性変形する。環状部34と錐体部33との間に空間があり、環状部34が錐体部33から離れているので、環状部34の弾性変形が錐体部33によって阻害され難い。環状先端部34aは、弾性変形により弁座28に密着し、弁座28に面接触する。これにより、弁体31と弁座28との間の隙間が密閉される。その一方で、閉位置以外の位置に弁体31が配置されると、環状先端部34aが弁座28から離れ、流入口26に流入した処理液が、流路30の内面30cと弁体31の外面との間を通って流出口29に流れる。
【0032】
図5〜
図7に示すように、錐体部33の一部は、閉位置から開位置までのいずれの位置においても開口27内に配置されている。錐体部33の外周面33aは、閉位置から開位置までのいずれの位置においても本体25に非接触である。弁体31が開位置側に移動すると、錐体部33が開口27を占有する面積が連続的に増加する。弁体31が閉位置側に移動すると、錐体部33が開口27を占有する面積が連続的に減少する。これにより、開口27の流路面積(錐体部33で占有されていない部分の面積)が変化し、第1バルブ14を通過する処理液の流量が変更される。
【0033】
図3に示すように、環状先端部34aから弁座28までの軸方向X1の距離(軸方向距離Da)は、弁体31が開位置に近づくにしたがって増加する。同様に、開口27の縁27aから錐体部33の外周面33aまでの径方向Y1の距離(径方向距離Dr)は、弁体31が開位置に近づくにしたがって増加する。軸方向距離Daの変化の割合は、径方向距離Drの変化の割合よりも大きい。
【0034】
径方向距離Drおよび軸方向距離Daが等しい位置は、閉位置と開位置との間の中間位置である。中間位置では、環状部34と弁座28との間の流路面積(軸方向距離Da×環状部34の周長)と、開口27の流路面積(錐体部33で占有されていない部分の面積)とが概ね一致する。
弁体31が閉位置以外の位置に配置されているとき、流入口26に流入した処理液は、環状部34と弁座28との間の隙間と、錐体部33と開口27の縁27aとの間の隙間とを通過する。第1バルブ14を通過する処理液の流量は、環状部34と弁座28との間の流路面積と開口27の流路面積のいずれかによって律速される。
【0035】
図4に示すように、中間位置よりも閉位置側の位置では、環状部34と弁座28との間の流路面積が、開口27の流路面積よりも小さいため、第1バルブ14を通過する処理液の流量を律速する。その一方で、中間位置よりも開位置側の位置では、開口27の流路面積が、環状部34と弁座28との間の流路面積よりも小さいため、第1バルブ14を通過する処理液の流量を律速する。
【0036】
図8は、制御装置3が第1バルブ14を開くときの弁体31の位置の時間的変化を示している。
図9は、制御装置3が第1バルブ14を閉じるときの弁体31の位置の時間的変化を示している。
図8において、実線は、実施例であり、一点鎖線は、比較例1であり、二点鎖線は、比較例2である。
図8中の目標位置は、第1バルブ14を通過する処理液の流量の目標値に対応する位置である。つまり、弁体31が目標位置に配置されると、第1バルブ14を通過する処理液の流量が流量の目標値に一致する。以下では、目標位置が中間位置よりも開位置側の位置である場合について説明する。
【0037】
図8に示すように、制御装置3は、閉位置から中間位置までは、一定の移動速度で弁体31を移動させる第1等速制御を行う。そして、制御装置3は、中間位置から目標位置までは、第1流量計15の検出値に基づいて弁体31を移動させるPID制御を行う。
第1バルブ14の速応性を高めるために、制御装置3は、第1等速制御において、たとえば最高速度で弁体31を移動させる。また、PID定数は、たとえば、オーバーシュートが発生しないように設定されている。すなわち、PID定数は、弁体31の位置が目標位置を超えず、流量の測定値が流量の目標値を超えないように設定されている。
【0038】
図8の一点鎖線(比較例1)は、流量の測定値が流量の目標値を超えるまで等速制御を行い、その後、PID制御を行ったときの弁体31の位置の時間的変化を示している。
図8の二点鎖線(比較例2)は、当初から、つまり、閉位置から目標位置までPID制御を行ったときの弁体31の位置の時間的変化を示している。比較例1および比較例2では、オーバーシュートが発生している上に、実施例と比べて、弁体31の位置が安定するまでの時間が長い。したがって、実施例は、比較例1および比較例2と比べて、速応性および安定性が高い。
【0039】
一方、
図9に示すように、制御装置3は、当初の位置(中間位置よりも開位置側の位置)から中間位置までは、一定の移動速度で弁体31を移動させる第2等速制御を行う。そして、制御装置3は、中間位置から閉位置までの少なくとも一部(特に、閉位置の直前の位置から閉位置)までは、第2等速制御での弁体31の移動速度よりも小さい移動速度で弁体31を移動させる減速制御を行う。制御装置3は、弁体31が閉位置に達した後、弁体31を弁座28に押し付ける。
【0040】
第1バルブ14の速応性を高めるために、制御装置3は、第2等速制御において、たとえば最高速度で弁体31を移動させる。また、弁体31が弁座28に接触するときの衝撃を低減するために、制御装置3は、減速制御において、第2等速制御のときよりも小さい移動速度で弁体31を移動させる。これにより、弁体31と弁座28との接触により発生するパーティクルが低減される。弁体31の移動速度が小さければ、減速制御は、等速制御であってもよいし、PID制御などのフィードバック制御であってもよい。
【0041】
以上のように本実施形態では、第1バルブ14を開閉する環状部34と第1バルブ14を通過する処理液の流量を調整する錐体部33とが、弁体31に設けられている。電動モータ23は、制御装置3からの指令に応じて閉位置と開位置との間で弁体31を移動させる。電動モータ23が弁体31を移動させると、錐体部33および環状部34が共に移動する。
【0042】
錐体部33の移動により、開口27の流路面積(錐体部33で占有されていない部分の面積)が連続的に変化する。処理液ノズル11に供給される処理液の流量は、電動モータ23によって自動で調整される。また、電動モータ23が閉位置に弁体31を位置させると、環状部34が弁座28に接触し、電動モータ23が閉位置以外の位置に弁体31を位置させると、環状部34が弁座28から離れる。処理液ノズル11への処理液の供給および供給停止は、電動モータ23によって自動で切り替えられる。したがって、処理液ノズル11への処理液の供給および供給停止と処理液ノズル11に供給される処理液の流量の調整とを一つのバルブ(第1バルブ14)で実行できる。
【0043】
錐体部33の外周面33aは、閉位置から開位置までのいずれの位置においても本体25に非接触である。したがって、弁体31の移動により、錐体部33が本体25に擦れて、パーティクルが発生することはない。また、環状部34の環状先端部34aは、閉位置において弁座28に垂直に押し付けられる。したがって、円錐状の弁体を円錐または円筒状の弁座に押し付ける場合と比べて、パーティクルが発生し難い。そのため、流路30内で発生するパーティクルを低減でき、基板Wに供給される処理液の清浄度を高めることができる。
【0044】
また本実施形態では、平坦な環状先端部34aが、平坦な弁座28に垂直に押し付けられる。これにより、弁座28および環状先端部34aが面接触する。そのため、弁体31および弁座28が線接触する場合と比べて、処理液の流通をより確実に遮断できる。さらに、平面同士が垂直に押し付けられるので、円錐状の弁体を円錐または円筒状の弁座に押し付ける場合と比べて、パーティクルが発生し難い。これにより、流路30内で発生するパーティクルを低減できる。
【0045】
弁体31および弁座28の接触面積が小さすぎると、十分な密閉性を確保できなくなる。その一方で、弁体31および弁座28の接触面積が大きすぎると、バルブを閉止させるために大きな圧力が必要となる。そのため、弁体31および弁座28の接触面積は、十分な密閉性を確保できる範囲内で極力小さいことが好ましい。本実施形態では、環状先端部34aの内径が開口27の直径よりも大きいので、環状先端部34aの内径が開口27の直径以下である場合と比べて、弁座28および環状先端部34aの接触面積を低減できる。したがって、処理液の流通をより確実に遮断しながら、パーティクルを低減できる。
【0046】
また本実施形態では、弁体31が閉位置以外の位置に配置されているとき、流入口26に流入した処理液は、環状部34と弁座28との間の隙間と、錐体部33と開口27の縁27aとの間の隙間とを通過する。中間位置よりも閉位置側の位置では、環状部34と弁座28との間の流路面積が、開口27の流路面積よりも小さいため、第1バルブ14を通過する処理液の流量を律速する。その一方で、中間位置よりも開位置側の位置では、開口27の流路面積が、環状部34と弁座28との間の流路面積よりも小さいため、第1バルブ14を通過する処理液の流量を律速する。
【0047】
制御装置3は、閉位置から中間位置までは、一定の移動速度で弁体31を移動させる第1等速制御を行う。そして、制御装置3は、中間位置から目標位置までは、第1流量計15の検出値に基づいて弁体31を移動させるフィードバック制御を行う。つまり、目標位置は、開口27の流路面積が処理液の流量を律速する範囲にあるので、制御装置3は、環状部34と弁座28との間の流路面積が処理液の流量を律速する範囲の外に弁体31を速やかに移動させる。したがって、当初からフィードバック制御を行う場合と比べて、流量の測定値が安定するまでの時間を短縮できる。
【0048】
また本実施形態では、制御装置3は、当初の位置(中間位置よりも開位置側の位置)から中間位置までは、一定の移動速度で弁体31を移動させる第2等速制御を行う。そして、制御装置3は、中間位置から閉位置までの全部または一部では、第2等速制御での弁体31の移動速度よりも小さい移動速度で弁体31を移動させる減速制御を行う。このように、弁体31が弁座28に接触する直前の移動速度が低下するので、弁体31が弁座28に接触するときの衝撃を低減でき、弁体31と弁座28との接触により発生するパーティクルをさらに低減できる。
【0049】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前記実施形態では、流路30がL字状の断面を有している場合について説明したが、流路30の断面形状は、L字に限られない。
前記実施形態では、弁座28が、本体25と一体である場合について説明したが、弁座28は、流路30を形成する他の部分とは別の部品であってもよい。
【0050】
前記実施形態では、電動モータ23が回転すると、弁体31は、その中心線まわりに回転せずに直線運動を行う場合について説明したが、運動変換機構22は、弁体31がその中心線まわりに回転しながら直線運動するように、電動モータ23の動力を弁体31に伝達する構成であってもよい。
前記実施形態では、錐体部33が円錐状である場合について説明したが、錐体部33は、角錐状であってもよい。錐体部33が円錐状および角錐状のいずれの場合においても、錐体部33の先端は、点ではなく、錐体部33の軸方向X1に直交する平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0051】
前記実施形態では、弁座28および環状先端部34aが、いずれも平坦な環状面である場合について説明したが、弁座28および環状先端部34aの少なくとも一方は、円弧状の断面を有する環状の曲面であってもよい。
前記実施形態では、環状先端部34aの内径が、開口27の直径よりも大きい場合について説明したが、環状先端部34aの内径は、開口27の直径以下であってもよい。
【0052】
前記実施形態では、フィードバック制御がPID制御である場合について説明したが、フィードバック制御は、PID制御に限らず、比例動作を行う比例制御であってもよいし、比例動作および積分動作を行うPI制御であってもよい。
前記実施形態では、薬液の一例であるSC−1と、リンス液の一例である純水とが、同じノズル(処理液ノズル11)から吐出される場合について説明したが、薬液およびリンス液は、別々のノズルから吐出されてもよい。薬液は、SC−1以外の液体であってもよい。リンス液は、純水以外の液体であってもよい。
【0053】
前記実施形態では、基板処理装置1が、円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前記実施形態では、基板処理装置1が枚葉式の装置である場合について説明したが、基板処理装置1は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置であってもよい。
基板処理装置1がバッチ式である場合、基板処理装置1は、処理液を貯留する処理槽と、複数枚の基板Wを保持しながら昇降することにより処理槽内の処理液に複数枚の基板Wを浸漬させるリフターと、処理槽内で処理液を吐出する処理液ノズルと、処理液ノズルへの処理液の供給および供給停止と処理液ノズルに供給される処理液の流量の調整とを行う電動バルブとを含む。
【0054】
前述の全ての構成のうちの二つ以上が組み合わされてもよい。同様に、前述の全ての工程のうちの二つ以上が組み合わされてもよい。