(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512470
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】磁性基板及びその製造方法、磁性基板と絶縁材の接合構造物、並びにその接合構造物を有するチップ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20190425BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20190425BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20190425BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20190425BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20190425BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F1/34 140
H01F27/32 140
H01F37/00 D
H01F37/00 A
H01F37/00 J
H01F37/00 N
H01F41/02 D
【請求項の数】48
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-169215(P2014-169215)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-76606(P2015-76606A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年7月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0118707
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イ・サ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン・ヨン・イル
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ジン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム・スン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】イ・クン・ヨン
【審査官】
多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−253320(JP,A)
【文献】
実開平03−090371(JP,U)
【文献】
特開平03−173410(JP,A)
【文献】
特開2006−156499(JP,A)
【文献】
特開2005−213115(JP,A)
【文献】
特開2013−140929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 1/34
H01F 17/00
H01F 27/32
H01F 37/00
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト層を有する磁性基板と、
前記磁性基板上に配置されており、内部に配置された電極を有する絶縁層と、
前記絶縁層上で前記電極に連結された外部電極と、を含み、
前記磁性基板は、
少なくとも一つの第1フェライト層を有するコア層と、
前記コア層と前記絶縁層との間に配置され、前記コア層に比べガラスの含量が高い第2フェライト層と、を含み、
前記磁性基板と前記絶縁層との界面に、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nを含む化学的
結合構造を有する、チップ部品。
【請求項2】
前記磁性基板は、シラノール基(Si‐OH)を用いた化学的結合により前記絶縁層に密着されることで、前記絶縁層とともに接合構造物を成す、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項3】
前記第2フェライト層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有する、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項4】
フェライト層を有する磁性基板と、
前記磁性基板上に配置されており、内部に配置された電極を有する絶縁層と、
前記絶縁層上で前記電極に連結された外部電極と、を含み、
前記磁性基板は、複数の前記フェライト層の積層体であり、
前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される前記積層体の外層は、他のフェライト層に比べガラス成分の含量が高く、
前記磁性基板と前記絶縁層との界面に、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nを含む化学的
結合構造を有する、チップ部品。
【請求項5】
前記第2フェライト層は、Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つ及びSiO2を焼成または焼結して形成されたガラス成分を含有する、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項6】
前記第2フェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及びガラス成分を含有し、
前記フェライト層のうち前記第2フェライト層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有する、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項7】
前記絶縁層はポリマー絶縁層を有する、請求項1又は4に記載のチップ部品。
【請求項8】
前記絶縁層はネガ型感光性物質を有し、
前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含む、請求項1又は4に記載のチップ部品。
【請求項9】
前記絶縁層は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含む、請求項1又は4に記載のチップ部品。
【請求項10】
前記絶縁層は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含む、請求項1又は4に記載のチップ部品。
【請求項11】
前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、
前記第2フェライト層の厚さは150μm〜350μmである、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項12】
複数のフェライト層を有する磁性基板と、
前記磁性基板を覆う絶縁層、及び前記絶縁層に形成されたコイル電極を有する電極層と、
前記電極層を覆うとともに、前記コイル電極の一部を露出させる孔を有する磁性複合材と、
前記磁性複合材により囲まれ、前記孔を介して前記コイル電極に連結された外部電極と、を含み、
前記複数のフェライト層のうち相対的に前記絶縁層に隣接して配置された前記磁性基板の外層は、前記磁性基板の中央部分の層に比べガラス成分の含量が高く、
前記磁性基板は、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nの化学構造を有する化学的結合により前記絶縁層と互いに密着される、チップ部品。
【請求項13】
前記外層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有する、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項14】
前記外層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラス成分を含有し、
前記複数のフェライト層のうち前記外層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有する、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項15】
前記絶縁層は、ネガ型感光性物質を有し、
前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含む、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項16】
前記絶縁層は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含む、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項17】
前記絶縁層は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含む、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項18】
前記チップ部品は、差動伝送方式の高速インタフェースで発生するコモンモードノイズ(common mode noise)を除去するためのコモンモードノイズフィルターである、請求項12に記載のチップ部品。
【請求項19】
薄膜型または積層型の受動素子に適用されるものであって、ガラス成分の含量が異なる異種のフェライト層からなっており、前記フェライト層のうち、ガラス成分の含量が相対的に高いフェライト層が外側に配置された構造を有し、
前記外側に配置されたフェライト層は、前記受動素子の内部に配置された電極を有する絶縁層に密着される層であり、
前記ガラス成分は、前記外側に配置されたフェライト層の表面上にシラノール基(Si‐OH)を形成するためのものである、磁性基板。
【請求項20】
前記外側に配置されたフェライト層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成される、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項21】
前記外側に配置されたフェライト層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成され、
前記シラノール基は、前記フェライト層の積層体を焼成または焼結することで、前記外側に配置されたフェライト層中の前記ガラス成分が前記積層体の焼成セルの界面に移動して形成されたものである、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項22】
前記外側に配置されたフェライト層中の前記ガラス成分の含量は1.0wt%〜5.0wt%である、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項23】
前記ガラス成分は、Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つ及びSiO2を焼成または焼結することで形成される、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項24】
前記外側に配置されたフェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラス成分を含有し、
前記外側に配置されたフェライト層以外のフェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有する、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項25】
前記外側に配置された少なくとも一つのフェライト層は前記磁性基板の外層を成し、
前記外層以外のフェライト層はコア層を成しており、
前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、
前記外層の厚さは150μm〜350μmである、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項26】
前記磁性基板は、コモンモードノイズフィルター(common mode noise filter:CMF)を製造するためのベース基板として用いられるものであって、
前記外側に配置されたフェライト層は、前記コモンモードノイズフィルターのコイル電極
が内蔵された電極層の絶縁層に密着される層である、請求項19に記載の磁性基板。
【請求項27】
フェライトシートが積層された多層構造(multilayer structure)に、焼成または焼結処理を施すことで製造され、
前記多層構造は、相対的に中央に配置されたコア層と、前記コア層上に積層され、前記多層構造の最外側に配置された外層と、を含み、
前記外層は、電極を有する絶縁層に密着される層であり、
前記外層は、前記コア層を成すフェライトシートに比べガラス含量が相対的に高いフェライトシートからなり、
前記外層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成され、
前記シラノール基は、前記外層の表面上を化学的結合させるためのものである、磁性基板。
【請求項28】
前記シラノール基は、前記外層を成すフェライトシートにガラス成分を加えて生成される、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項29】
前記外層のガラス成分は、Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つ及びSiO2を焼成または焼結することで形成される、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項30】
前記コア層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有し、
前記外層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及びガラス成分を含有する、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項31】
前記外層のガラス成分の含量は1.0wt%〜5.0wt%である、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項32】
前記外層のガラス成分は、Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つ及びSiO2を焼成または焼結することで形成される、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項33】
前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、
前記外層の厚さは150μm〜350μmである、請求項27に記載の磁性基板。
【請求項34】
第1フェライトシートを準備する段階と、
前記第1フェライトシートに比べガラス成分の含量が相対的に高い第2フェライトシートを準備する段階と、
前記第1フェライトシート上に前記第2フェライトシートを積層することで、シート積層体を製造する段階と、
前記シート積層体を焼成または焼結する段階と、を含み、
前記第2フェライトシートは、電極を有する絶縁シートに密着される層であり、
前記ガラス成分は、前記第2フェライトシートの表面上にシラノール基(Si‐OH)を形成するためのものである、磁性基板の製造方法。
【請求項35】
前記第2フェライトシートを準備する段階は、
Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つを含有する粉末とSiO2粉末との混合物を準備する段階と、
前記混合物にバインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造する段階と、
前記スラリーをシート化する段階と、を含む、請求項34に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項36】
前記第1フェライトシートを準備する段階は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物を含有する粉末及び鉄(Fe)酸化物を含有する粉末を含むフェライト原料をキャストする段階を含み、
前記第2フェライトシートを準備する段階は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物を含有する粉末、鉄(Fe)酸化物を含有する粉末、及び前記ガラス成分を含有する粉末を含むフェライト原料をキャストする段階を含む、請求項34に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項37】
前記シート積層体を製造する段階は、
複数の前記第1フェライトシートを積層してコア層を製造する段階と、
前記コア層の少なくとも一面上に前記第2フェライトシートを積層して外層を製造する段階と、を含む、請求項34に記載の磁性基板の製造方法。
【請求項38】
フェライト層を有する磁性基板と、
Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nを含む化学的結合構造により前記磁性基板に密着された絶縁材と、を含み、
前記磁性基板は、
少なくとも一つの第1フェライト層を有するコア層と、
前記絶縁材に隣接して配置され、前記コア層に比べガラス含量が高い第2フェライト層と、
を含む、
磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項39】
前記磁性基板は、シラノール基(Si‐OH)を用いた化学的結合により前記絶縁材に密着される、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項40】
前記第2フェライト層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有する、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項41】
前記第2フェライト層は、Bi2O3、ZnO、B2O3、及びAl2O3の少なくとも何れか一つ及びSiO2を焼成または焼結して形成されたガラス成分を含有する、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項42】
前記第2フェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及びガラス成分を含有し、
前記フェライト層のうち前記第2フェライト層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有する、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項43】
前記絶縁材はポリマー絶縁層を有する、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項44】
前記絶縁材は、ネガ型感光性物質を有し、
前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含む、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項45】
前記絶縁材は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含む、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項46】
前記絶縁材は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含む、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項47】
前記磁性基板は、
前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、
前記第2フェライト層の厚さは150μm〜350μmである、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【請求項48】
前記磁性基板はコモンモードノイズフィルターのベース基板であり、
前記絶縁材は、前記ベース基板上にコイル電極を形成するために、前記磁性基板の表面粗さに比べ小さい表面粗さを有する絶縁層である、
請求項38に記載の磁性基板と絶縁材の接合構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性基板及びその製造方法、磁性基板と絶縁材の接合構造物、並びにその接合構造物を有するチップ部品に関し、より詳細には、ポリマー絶縁層等の絶縁材に対する密着力を向上させることができる磁性基板及びその製造方法、磁性基板と絶縁材の接合構造物、並びにその接合構造物を有するチップ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化、高仕様化、及び多機能化が進んでおり、このような傾向に応えるべく、それに適用されるチップ部品も開発されている。このようなチップ部品のうちコモンモードフィルタ(Common Mode Filter:CMF)またはパワーインダクタ(power inductor)等の受動素子は、所定の磁性基板をベース(base)として製造されており、この磁性基板としては、代表的にフェライト材質からなる磁性基板(magnetic substrate)が用いられている。
【0003】
この磁性基板上に電極パターンを形成するためには、金属スパッタリング工程等の薄膜形成工程により前記磁性基板上にシード層(seed layer)を形成しなければならない。しかし、フェライト磁性基板の表面粗さは、前記シード層を効果的に形成するための表面粗さに比べ遥かに大きい。したがって、このような表面粗さの差を相殺するために、前記磁性基板上に所定の絶縁層を形成し、前記絶縁層上に電極パターンを形成する。しかし、このような異種材質の接合構造物は、磁性基板と絶縁層との間の密着力が低いため、接合界面におけるクラック(crack)やデラミネーション(delamination)等のチップ部品の信頼性を低下させる問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本公開特許第2013‐0035474
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、薄膜型または積層型の受動素子等のチップ部品に適用されることができ、粗さが異なる絶縁材に対する密着力を向上させることで、チップ部品の製品信頼性を向上させることができる磁性基板及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、磁性基板と絶縁材との間におけるクラック(crack)やデラミネーション(delamination)等の現象を防止することができる磁性基板と絶縁材の接合構造物及びそれを有するチップ部品を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、フェライト基板と、前記フェライト基板上に積層される絶縁層とを、互いに高い密着力で密着させることができる磁性基板と絶縁材の接合構造物及びそれを有するチップ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるチップ部品は、フェライト層を有する磁性基板と、前記磁性基板上に配置されており、内部に配置された電極を有する絶縁層と、前記絶縁層上で前記電極に連結された外部電極と、を含み、前記磁性基板と前記絶縁層との界面に、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nを含む化学的結合構造を有することができる。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、シラノール基(Si‐OH)を用いた化学的結合により前記絶縁層に密着されることで、前記絶縁層とともに接合構造物を成すことができる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、少なくとも一つの第1フェライト層を有するコア層と、前記コア層と前記絶縁層との間に配置され、前記コア層に比べガラス(glass)の含量が高い第2フェライト層と、を含むことができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、相対的に前記磁性基板の中央部分に配置されたコア層と、前記コア層に比べ前記磁性基板の外側部分に配置された外層と、を含み、前記外層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有することができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、複数の前記フェライト層の積層体であり、前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される前記積層体の外層は、他のフェライト層に比べガラス成分の含量が高いことができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、複数の前記フェライト層の積層体であり、前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される前記積層体の外層は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結して形成されたガラス成分を含有することができる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及びガラス成分を含有し、前記フェライト層のうち前記外層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有することができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材はポリマー絶縁層を有することができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材はネガ型感光性物質を有し、前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、少なくとも一つのフェライト層を有し、相対的に前記磁性基板の中央部分に配置されたコア層と、前記コア層に比べ前記磁性基板の外側部分に配置された外層と、を含み、前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、前記外層の厚さは150μm〜350μmであることができる。
【0020】
本発明によるチップ部品は、複数のフェライト層を有する磁性基板と、前記磁性基板を覆う絶縁層、及び前記絶縁層に形成されたコイル電極を有する電極層と、前記電極層を覆うとともに、前記コイル電極の一部を露出させる孔を有する磁性複合材と、前記磁性複合材により囲まれ、前記孔を介して前記コイル電極に連結された外部電極と、を含み、前記磁性基板は、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nの化学構造を有する化学的結合により前記絶縁層と互いに密着される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記フェライト層のうち相対的に前記絶縁層に隣接して配置された前記磁性基板の外層は、前記磁性基板の中央部分の層に比べガラス成分の含量が高いことができる。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される前記磁性基板の外層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有することができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記フェライト層のうち前記絶縁層に密着される前記磁性基板の外層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラス成分を含有し、前記フェライト層のうち前記外層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有することができる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、ネガ型感光性物質を有し、前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、前記チップ部品は、差動伝送方式の高速インタフェースで発生するコモンモードノイズ(common mode noise)を除去するためのコモンモードノイズフィルタであることができる。
【0028】
本発明による磁性基板は、薄膜型または積層型の受動素子に適用されるものであって、ガラス成分の含量が異なる異種のフェライト層からなっており、前記フェライト層のうち、ガラス成分の含量が相対的に高いフェライト層が外側に配置された構造を有する。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記外側に配置されたフェライト層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成されることができる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記外側に配置されたフェライト層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成され、前記シラノール基は、前記フェライト層の積層体を焼成または焼結することで、前記外層中の前記ガラス成分が前記積層体の焼成セルの界面に移動して形成されたものであることができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記外層中の前記ガラス成分の含量は1.0wt%〜5.0wt%であることができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記ガラス成分は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結することで形成されることができる。
【0033】
本発明の実施形態によれば、前記外側に配置されたフェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラスを含有し、前記外側に配置されたフェライト層以外のフェライト層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有することができる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記外側に配置された少なくとも一つのフェライト層は前記磁性基板の外層を成し、前記外層以外のフェライト層はコア層を成しており、前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、前記外層の厚さは150μm〜350μmであることができる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、コモンモードノイズフィルター(common mode noise filter:CMF)を製造するためのベース基板として用いられるものであって、前記外側に配置されたフェライト層は、前記コモンモードノイズフィルタのコイル電極が内蔵された電極層の絶縁層に密着される層であり、前記ガラス成分は、前記外側に配置されたフェライト層の表面上にシラノール基を形成するためのものであることができる。
【0036】
本発明による磁性基板は、フェライトシートが積層された多層構造(multilayer structure)に、焼成または焼結処理を施すことで製造され、前記多層構造は、相対的に中央に配置されたコア層と、前記コア層上に積層され、前記多層構造の最外側に配置された外層と、を含み、前記外層の表面上にはシラノール基(Si‐OH)が形成される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、前記外層は、前記コア層を成すフェライトシートに比べガラス含量が相対的に高いフェライトシートからなることができる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、前記シラノール基は、前記外層を成すフェライトシートにガラス成分を加えて生成されることができる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、前記ガラス成分は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結することで形成されることができる。
【0040】
本発明の実施形態によれば、前記コア層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有し、前記外層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラス成分を含有することができる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記第2フェライトシート中の前記ガラス成分の含量は1.0wt%〜5.0wt%であることができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、前記ガラス成分は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結することで形成されることができる。
【0043】
本発明の実施形態によれば、前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、前記外層の厚さは150μm〜350μmであることができる。
【0044】
本発明による磁性基板の製造方法は、第1フェライトシートを準備する段階と、前記第1フェライトシートに比べガラス成分の含量が相対的に高い第2フェライトシートを準備する段階と、前記第1フェライトシート上に前記第2フェライトシートを積層することで、シート積層体を製造する段階と、前記シート積層体を焼成または焼結する段階と、を含む。
【0045】
本発明の実施形態によれば、前記第2フェライトシートを準備する段階は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つを含有する粉末とSiO
2粉末との混合物を準備する段階と、前記混合物にバインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造する段階と、前記スラリーをシート化する段階と、を含むことができる。
【0046】
本発明の実施形態によれば、前記第1フェライトシートを準備する段階は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物を含有する粉末及び鉄(Fe)酸化物を含有する粉末を含むフェライト原料をキャストする段階を含み、前記第2フェライトシートを準備する段階は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物を含有する粉末、鉄(Fe)酸化物を含有する粉末、及び前記ガラス成分を含有する粉末を含むフェライト原料をキャストする段階を含むことができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記シート積層体を製造する段階は、複数の前記第1フェライトシートを積層してコア層を製造する段階と、前記コア層の少なくとも一面上に前記第2フェライトシートを積層して外層を製造する段階と、を含むことができる。
【0048】
本発明による磁性基板と絶縁材の接合構造物は、フェライト層を有する磁性基板と、Si‐O‐CまたはSi‐O‐Nを含む化学的結合構造により前記磁性基板に密着された絶縁材と、を含む。
【0049】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、シラノール基(Si‐OH)を用いた化学的結合により前記絶縁材に密着されることができる。
【0050】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、少なくとも一つの第1フェライト層を有するコア層と、前記絶縁材に隣接して配置され、前記コア層に比べガラス含量が高い第2フェライト層と、を含むことができる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、相対的に前記磁性基板の中央部分に配置されたコア層と、前記絶縁材に密着されるように前記基板の外側部分に配置された外層と、を含み、前記外層は、1.0wt%〜5.0wt%のガラス成分を含有することができる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、複数の前記フェライト層の積層体であり、前記フェライト層のうち前記絶縁材に密着されるフェライト層は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結して形成されたガラス成分を含有することができる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、前記フェライト層のうち前記絶縁材に密着される層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及びガラス成分を含有し、前記フェライト層のうち前記外層以外の層は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有することができる。
【0054】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材はポリマー絶縁層を有することができる。
【0055】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、ネガ型感光性物質を有し、前記ネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0056】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0057】
本発明の実施形態によれば、前記絶縁材は、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、ビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体の少なくとも何れか一つを含むことができる。
【0058】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板は、少なくとも一つのフェライト層を有し、相対的に前記基板の中央部分に配置されたコア層と、前記コア層に比べ前記基板の外側部分に配置された外層と、を含み、前記コア層の厚さは600μm〜900μmであり、前記外層の厚さは150μm〜350μmであることができる。
【0059】
本発明の実施形態によれば、前記磁性基板はコモンモードノイズフィルタのベース基板であり、前記絶縁材は、前記ベース基板上にコイル電極を形成するために、前記磁性基板の表面粗さに比べ小さい表面粗さを有する絶縁層であることができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によるチップ部品は、磁性基板と、前記磁性基板上に積層された電極層と、前記電極層を覆うとともに、前記電極層のコイル電極の一部を露出させる孔を有するフェライト複合材と、前記孔を介して前記コイル電極に連結される外部電極と、を備えており、前記磁性基板と前記電極層の絶縁層は、Si‐O‐CまたはSi‐O‐N等の化学構造を有する化学的結合により互いに密着された構造を有することができる。これにより、本発明によるチップ部品は、前記磁性基板と前記絶縁層とが互いに高い密着力で密着された磁性基板と絶縁材との接合構造を有するため、これら磁性基板と絶縁材との界面におけるクラックやデラミネーションによる断線、短絡、及び製品信頼性の低下等を防止することができる。
【0061】
本発明による磁性基板は、薄膜型または積層型の受動素子に適用されるものであって、ガラス成分の含量が異なる異種のフェライト層からなり、前記フェライト層のうちガラス成分の含量が相対的に高いフェライト層が外層に配置されており、前記外層の表面上には、受動素子のコイル電極を形成するための絶縁層との化学的結合を成すためのシラノール基が生成される。これにより、本発明による磁性基板は、化学的結合によって前記絶縁層と高い密着力で密着される構造を有することができる。
【0062】
本発明の実施形態による基板の製造方法は、第1フェライトシート及び前記第1フェライトシートに比べガラス含量が相対的に高い第2フェライトシートを準備した後、前記第1及び第2フェライトシートを積層することで製造された多層構造に、焼成または焼結を施す段階を含むことができる。この際、前記焼成または焼結する段階で、前記第2フェライトシート中のガラスにより、前記多層構造の表面上にシラノール基(Si‐OH)が生成される。このような多層構造により、外部絶縁材、例えば、ポリマー絶縁層と接合する際に、前記シラノール基を用いた化学的結合によって前記絶縁層との密着力が向上されることができる。したがって、本発明の実施形態による磁性基板の製造方法によれば、異種材質、例えば、絶縁材と、化学的結合によって高い密着力で接合されるため、接合界面におけるクラックやデラミネーションによる断線、短絡、及び製品信頼性の低下等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の実施形態によるチップ部品を示す図面である。
【
図2】
図1に図示された磁性基板を示す図面である。
【
図3】
図1に図示されたA領域を拡大した図面である。
【
図4】本発明の実施形態によるポリマー絶縁層に使用できる樹脂成分を示す図面である。
【
図5】本発明の実施形態による磁性基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6a】本発明の実施形態による磁性基板の製造過程を説明するための図面である。
【
図6b】本発明の実施形態による磁性基板の製造過程を説明するための図面である。
【
図6c】本発明の実施形態による磁性基板の製造過程を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを果たす方法は、添付図面とともに詳細に後述される実施形態を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に限定されず、相異なる多様な形態で具現されることができる。本実施形態は、本発明の開示が完全になるようにするとともに、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に伝達するために提供されることができる。明細書全体において、同一参照符号は同一構成要素を示す。
【0065】
本明細書で用いられる用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定しようとするものではない。本明細書で、単数型は文句で特別に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0066】
また、本明細書にて記述する実施形態は、本発明の理想的な例示図である断面図及び/または平面図を参考して説明される。図面において、膜及び領域の厚さは、技術内容を効果的に説明するために誇張されたものである。従って、本発明の実施形態は、図示された特定形態に制限されるものでなく、製造工程によって生成される形態の変化も含むものである。例えば、直角で図示された領域は、丸い形態または所定曲率を有する形態であることができる。
【0067】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態による磁性基板及びその製造方法、前記磁性基板と絶縁材の接合構造物、並びに前記接合構造物を有するチップ部品について詳細に説明する。
【0068】
図1は本発明の実施形態によるチップ部品を示す図面であり、
図2は
図1に図示された磁性基板を示す図面であり、
図3は
図1に図示されたA領域を拡大した図面である。また、
図4は本発明の実施形態によるポリマー絶縁層に使用できる樹脂成分を示す図面である。
【0069】
図1から
図4を参照すれば、本発明の実施形態によるチップ部品100は、コモンモードノイズフィルタ(Common Mode Noise Filter:CMF)またはパワーインダクタ等の受動素子であって、積層型または薄膜型の受動素子であることができる。
【0070】
前記チップ部品100がコモンモードノイズフィルタである場合、前記チップ部品100は、差動伝送方式の高速インタフェースで発生するコモンモードノイズ(common mode noise)を除去するためのものであることができる。また、前記チップ部品100がパワーインダクタである場合、携帯電子機器内のDC‐DCコンバータ等の電源回路に用いられるインダクタであって、積層型パワーインダクタであることができる。
【0071】
一例として、前記チップ部品100は、コモンモードノイズフィルタであって、磁性基板110と、電極層120と、磁性複合材130と、外部電極140と、を含むことができる。
【0072】
前記磁性基板110は、前記電極層120及び外部電極140を形成するためのベース基板(base substrate)として用いられることができる。前記チップ部品100に電流が印加された際に前記電極層120で発生する磁力線束の流れを円滑にするために、前記磁性基板110は、電気抵抗が高く、且つ磁力損失が小さい材料で製造されることが好ましい。一例として、前記磁性基板110は、Ni‐Zn、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系、Ni‐Zn‐Mg系、Mn‐Mg‐Zn系フェライトまたはこれらの混合材料で製造されることが好ましい。選択的に、前記磁性基板110は、上記のフェライト材料に、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、インジウム(ln)、及びスズ(Sn)の少なくとも何れか一つの金属を添加して製造されることができる。
【0073】
前記磁性基板110は多層構造を有することができる。前記多層構造は、複数のフェライトシートを積層したシート積層体に、焼成または焼結処理を施すことにより形成されたものであることができる。前記多層構造は、コア層112と、前記コア層112の外側に配置された外層114と、を有することができる。前記コア層112は、少なくとも一つの第1フェライト層112aを有することができる。一例として、前記コア層112は、複数の第1フェライト層112aが積層された積層構造を有することができる。前記外層114は、前記第1フェライト層112aに比べガラス(glass)成分の含量が相対的に高い少なくとも一つの第2フェライト層114aを有することができる。一例として、前記第2フェライト層114aは、前記コア層112の一面上に積層されて、前記磁性シート積層体の最外層を成すことができる。
【0074】
前記第1及び第2フェライト層112a、114aの主材料は、互いに同一または類似するものであって、ガラス含量が互いに異なる。一例として、前記第1フェライト層112aは、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、及び鉄(Fe)の少なくとも何れか一つの金属を含有するフェライト材料で製造されることができ、前記第2フェライト層114aは、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、及び鉄(Fe)の少なくとも何れか一つの金属及び前記ガラスを含有するフェライト材料で製造されることができる。好ましくは、前記第1フェライト層112aは、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物及び鉄(Fe)酸化物を含有するフェライト材料で製造されることができ、前記第2フェライト層114aは、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、及び銅(Cu)の少なくとも何れか一つの酸化物、鉄(Fe)酸化物、及び前記ガラスを含有するフェライト材料で製造されることができる。即ち、前記第1フェライト層112aにはガラスが含有されていないか、または前記第2フェライト層114aに比べ相対的に微量のガラスが含有されることができる。
【0075】
また、前記第1及び第2フェライト層112a、114a中の鉄(Fe)の含量は、他の金属の含量に比べ相対的に高いことができる。一例として、前記第1及び第2フェライト層112a、114a中の鉄(Fe)の含量は、略60wt%以上、好ましくは65wt%以上であることができる。これは、磁性基板としての機能を十分に奏するためには、前記鉄の含量を高めることが好ましいためである。前記鉄以外の他のニッケル(Ni)及び亜鉛(Zn)の含量は25wt%以下であり、銅(Cu)の含量は10wt%以下であることができる。
【0076】
前記ガラス成分は、前記外層114の表面上にシラノール基(Si‐OH)を形成するためのものである。一例として、前記ガラス成分は、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、及びAl
2O
3の少なくとも何れか一つ及びSiO
2を焼成または焼結して形成されたものであることができる。上記のような第1及び第2フェライト層112a、114aを製造するためのシート積層体に焼成または焼結等の熱処理を施すと、前記第2フェライト層114aとなるべきのフェライトシート中のガラス成分が、前記シート積層体の焼成セルの界面に移動する。この焼成セルの表面に、所定の研磨工程を行うことにより、前記界面上に生成された前記シラノール基が外部に露出されることができる。これにより、前記第2フェライト層114aの表面上にシラノール基(Si‐OH)が生成されることができる。この場合、前記シート積層体の基板透磁率が大きく損失することなく、絶縁層122中の樹脂(resin)またはシラン(silane)等と化学的結合を効果的に形成することができるシラノール基が、前記磁性基板110の表面上に生成されることができる。
【0077】
一方、前記第2フェライト層114a中のガラス成分の含量は5wt%以下であることができる。一例として、前記第2フェライト層114a中のガラス成分の含量は、略1.0wt%〜5.0wt%に調節されることが好ましい。前記第2フェライト層114a中のガラス成分の含量が1.0wt%未満であると、前記ガラス成分の含量が微小であるため、前記ガラス成分を含有させて前記磁性基板110と前記電極層120との間の密着効率を高めるための前記シラノール基が十分に形成されない恐れがある。反対に、前記ガラス成分の含量が5wt%を超過すると、フェライトシートのグレインセル(grain cell)の粒度成長が妨げられ、表面に多孔性を有するガラス焼結体が不均一に成長する現象が生じる恐れがある。したがって、前記第2フェライト層114a中の前記ガラス成分の含量は、略1.0wt%〜5.0wt%に調節されることが好ましく、1.5wt%〜3.5wt%に調節されることがより好ましい。
【0078】
ここで、上述の実施形態では、前記磁性基板110がフェライト材料で製造された磁性体基板である場合を例として説明したが、前記磁性基板110の材質は多様に変更されることができる。例えば、本発明の他の例として、前記磁性基板110として、無機酸化物からなる酸化層を有する基板が用いられることができる。本発明のさらに他の例として、前記磁性基板110として、セラミックシート(ceramic sheet)、バリスタシート(baristor sheet)、及び液晶高分子(liquid crystal polymer)材質の基板、その他の多様な種類の絶縁シート等が用いられることができる。
【0079】
一方、上記のような構造を有する磁性基板110は、前記外層114の厚さが前記コア層112の厚さに比べ相対的に薄いことが好ましい。より具体的には、前記外層114は、上述の化学的結合のためにガラス成分が含有された第2フェライト層114aを有するため、その磁性特性が、前記第1フェライト層112aを有する前記コア層112に比べ少し低い。したがって、前記コア層112の厚さを相対的に増加させるとともに、前記外層114は、化学的結合を奏するに十分な厚さを有するようにすることが好ましい。
【0080】
好ましい一例として、前記コア層112の厚さは、前記磁性基板110の全厚さの略70%〜85%以上であり、前記外層114の厚さは、前記磁性基板110の全厚さの略15%〜30%であることが好ましい。より具体的には、前記コア層112は、略40μm〜100μmの厚さに製作された第1フェライトシート112aを加圧及び圧着することで、略600μm〜900μmの厚さを有するように製造され、前記外層114は、略40μm〜100μmの厚さに製作された第2フェライトシート114aを前記コア層112上に加圧及び圧着することで、略150μm〜350μmの厚さを有するように製造されることができる。これにより、前記磁性基板110の全厚さは、略750μm〜1250μmとなることが好ましい。このように詳細厚さが調節された磁性基板110により、前記電極層120との接合面上にシラノール基を用いた化学的結合を奏するとともに、前記磁性基板110の磁性特性を維持することができる。
【0081】
前記電極層120は、絶縁層122と、前記絶縁層122内に配置されるコイル電極124と、を含むことができる。前記絶縁層122は、樹脂などの絶縁材からなる複数の絶縁シートで形成されることができる。例えば、前記絶縁層122は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、及びポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂等の高分子材質からなることができる。
【0082】
ここで、前記絶縁層122は、ポリマーを含有するポリマー絶縁層であることが好ましい。より具体的には、前記磁性基板110がフェライト基板である場合、前記磁性基板110自体の表面粗さは略0.5μmである。この磁性基板110上に前記コイル電極124を直接形成するためには、前記磁性基板110に、金属スパッタリング工程等の薄膜形成工程でシード層(seed layer)を形成しなければならない。しかし、薄膜形成対象物と薄膜との間の十分な密着力を確保するためには、前記薄膜形成対象物の表面粗さが略0.05μm以下ではなければならない。
【0083】
したがって、このような表面粗さの差を相殺するために、前記絶縁層122としてポリマー絶縁層を用いることが好ましい。もし、前記絶縁層122としてセラミック絶縁層を用いる場合、セラミック絶縁層はエポキシ樹脂等の一般的な熱硬化性樹脂に対する密着力が低いため、前記セラミック絶縁層を前記磁性基板110に接合させる別の工程が追加されて、製造効率が低下する。また、前記磁性基板110と前記セラミック絶縁層とは、全く異なる材質からなる接合構造物であるため、前記磁性基板110と前記セラミック絶縁層とを接合する際における接合効率を高めるための追加的な工程を行わなければならず、この際の工程条件等は非常に難しい。
【0084】
前記絶縁層122に付加されるポリマー物質としては、前記磁性基板110のシラノール基(Si‐OH)と効果的な化学的結合を成すことができる所定の感光性絶縁材が用いられることが好ましい。
図4に好ましい感光性絶縁材を図示した。このポリマー物質の大部分はネガ型感光性物質であって、この物質は、エポキシ成分及びヒドロキシ基を含むベンゼン環を硬化する際に、特定の硬化構造を形成する特性を奏することができる。
図4に図示された物質の中で、上記のような特性を奏するネガ型感光性物質は、トリフェノール誘導体(triphenol derivative)、ヒドロキシスチレン誘導体(hydroxystyrene derivative)、及びエポキシ化合物(epoxy compound)等である。
【0085】
一方、フェライト表面のヒドロキシ基は、大部分のエポキシ基及びベンゼン環のヒドロキシ基と反応することができ、この際の化学反応は、アミンまたはアジド系の硬化剤または硬化促進剤によりなされることができる。このような反応を導き出すことができる物質としては、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、りん系エポキシ樹脂、及びこれら樹脂の複合材の少なくとも何れか一つであることができる。したがって、この樹脂材質をポリマー絶縁層の材料として用いることで、高い化学的結合効率を期待することができる。その他にも、可溶性熱硬化性液晶オリゴマー、スチレン、ヒドロキシスチレン等のビニルベンゼン系単量体、及びマルチフェノールで構成された重合体もポリマー絶縁層の材料として用いられることができる。
【0086】
前記コイル電極124は、前記絶縁シート上に配置された導電性パターンであることができる。前記コイル電極124は、前記絶縁層122内で複層のコイル構造を成すように、前記絶縁シートにわたって積層された構造で提供されることができる。例えば、前記コイル電極124は、第1コイル124aと、前記第1コイル124aの他の平面上に配置された第2コイル124bと、を含むことができる。前記第1コイル124aと前記第2コイル124bは相似形状を有することができる。前記第1コイル124aと前記第2コイル124bは、前記絶縁層122を挟んで互いに離隔して配置されており、前記絶縁層122を貫通する電極ビア(via、不図示)を介して互いに導通されることができる。
【0087】
上記のような構造を有する前記コイル電極124は、前記第1コイル124aと前記第2コイル124bとの間に同一の方向の電流が流れると、磁束(Magnetic flux)が互いに補強されて、コモンモードインピーダンスが高くなることにより、コモンモードノイズを抑制させることができる。反対に、前記第1コイル124aと前記第2コイル124bとの間に反対方向の電流が流れると、磁束が互いに相殺されて、差動モードインピーダンスが減少することにより、所望する伝送信号を通過させるコモンモードフィルタの動作を行うことができる。
【0088】
前記磁性複合材130は、前記電極層120上で前記外部電極140を囲むように提供されることができる。さらに、前記磁性複合材130は、前記コイル電極124の一部を露出させる孔を有することができる。前記磁性複合材130は、所定の磁性材料とその他の樹脂及びバインダー(binder)等からなる複合材料で製造されることができる。例えば、前記磁性複合材130は、Ni‐Zn、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系、Ni‐Zn‐Mg系、Mn‐Mg‐Zn系フェライトまたはこれらの混合材料で製造されることができる。この材料で製造された前記磁性複合材130は、電気抵抗が高く、且つ磁力損失が小さく、組成変化によりインピーダンス設計が容易である特性を有する。
【0089】
前記外部電極140は、前記チップ部品100を外部の電子機器(不図示)と電気的に連結するためのものである。前記外部電極140は、前記電極層120のコイル電極124の外側領域を覆う構造で提供されることができる。前記外部電極140は、前記磁性複合材130の孔により露出された前記コイル電極124と電気的に連結されることができる。
【0090】
ここで、前記チップ部品100は、静電放電保護素子(不図示)をさらに含むことができる。前記静電放電保護素子は、サージ電流(surge current)、高電圧、及びリーク電流等が発生した時に、それを吸収処理するためのものであって、機能層を有する静電放電吸収層を備えることができる。前記静電放電吸収層は、静電放電(ESD)を吸収または遮断する機能層(funtional layer)として用いられることができる。この静電放電吸収層は、前記静電放電保護素子にサージ電流、高電圧、及びリーク電流等が発生した時に、前記サージ電流が前記電極に連結されたグランド層に流れるようにするためのものであって、前記サージ電流が発生する前には絶縁性を有し、前記サージ電流が発生した時にのみ前記サージ電流が前記電極に流れる電流経路(current path)を発生させることができる。
【0091】
一方、前記磁性基板110と前記絶縁層122とは、互いに密着して一つの接合構造物を成すことができる。この際、前記磁性基板110と前記絶縁層122との間の密着力を高めるために、シラノール基(Si‐OH)を用いた化学的結合により前記磁性基板110と前記絶縁層122とが互いに密着された構造を有することができる。前記化学的結合は、前記絶縁層122に密着される前記磁性基板110の表面にシラノール基を生成させた後、前記磁性基板110と前記絶縁層122とが互いに密着することで、前記絶縁層122中のポリマー物質と前記磁性基板110の表面のシラノール基とが互いにSi‐O‐CまたはSi‐O‐Nのような結合構造を成すことにより形成されることができる。前記磁性基板110と前記絶縁層122とは、それらの間の接合界面121で強い化学的結合により互いに密着されるため、上記のような接合構造物は、クラックやデラミネーション等の現象を防止することができる。
【0092】
上述したように、本発明の実施形態によるチップ部品100は、フェライトシートの積層構造物であって、ベース基板として用いられる磁性基板110と、前記磁性基板110上に積層された電極層120と、前記電極層120を覆うとともに、前記電極層120のコイル電極124の一部を露出させる孔を有する磁性複合材130と、前記孔を介して前記コイル電極124に連結される外部電極140と、を備えており、前記磁性基板110と、前記電極層120の絶縁層122とは、Si‐O‐CまたはSi‐O‐N等の化学構造を有する化学的結合により互いに密着された構造を有することができる。これにより、本発明によるチップ部品は、磁性基板と絶縁層とが互いに高い密着力で接合された磁性基板と絶縁材との接合構造物を有することで、その磁性基板と絶縁材との界面におけるクラックやデラミネーションによる断線、短絡、及び製品信頼性の低下等を防止することができる。
【0093】
本発明の実施形態による磁性基板110は、薄膜型または積層型の受動素子に適用されるものであって、ガラス成分の含量が異なる第1及び第2フェライト層112a、114aからなっており、前記第1フェライト層112aよりガラス成分の含量が相対的に高い前記第2フェライト層114aが外層114に配置された構造を有する。前記外層114には、前記受動素子のコイル電極124が内蔵された電極層120の絶縁層122と、Si‐O‐CまたはSi‐O‐N等の化学構造を有する化学的結合を成すためのシラノール基(Si‐OH)が生成されることができる。上記のように、本発明による磁性基板は、薄膜型または積層型の受動素子に適用されるものであって、ガラス成分の含量が異なる異種のフェライト層を含み、前記フェライト層のうちガラス成分の含量が相対的に高いフェライト層が外層に配置されており、前記外層の表面上には、受動素子のコイル電極の形成のための絶縁層との化学的結合を成すためのシラノール基が生成される。これにより、本発明による磁性基板は、化学的結合により前記絶縁層と高い密着力で密着される構造を有する。
【0094】
以下、本発明の実施形態による磁性基板の製造方法について詳細に説明する。ここで、上述の磁性シート積層体110についての説明と重複される内容は省略または簡素化されることができる。
【0095】
図5は本発明の実施形態による磁性基板の製造方法を示すフローチャートであり、
図6aから
図6cは本発明の実施形態による磁性基板の製造過程を説明するための図面である。
【0096】
先ず、
図5及び
図6aを参照すれば、第1フェライトシート111を準備することができる(S110)。前記第1フェライトシート111を準備する段階は、所定のフェライト材料を主原料として、有機バインダー及び溶媒を混合して第1スラリーを製造する段階と、前記第1スラリーをキャストして第1グリーンシート(green sheet)を製造する段階と、を含むことができる。前記第1スラリーを製造する段階で、前記第1スラリーは、Fe
2O
3粉末の含量が65wt%〜67wt%、NiO粉末の含量が7wt%〜25wt%、ZnO粉末の含量が6wt%〜27wt%、及びCuO粉末の含量が4wt%〜8wt%となるように、それぞれの成分の含量を調節した後、混合して製造することができる。前記第1グリーンシートは略40μm〜100μmの厚さに製作することが好ましい。前記第1グリーンシートを40μm未満の厚さに製作する場合には、工程上または技術上の困難性があり、反対に100μmを超過する厚さに製作する場合には、前記第1フェライトシート111の積層体を製造する際に厚さを高精度に調節することが困難であって、加工性及び取扱い性も著しく低下する恐れがある。上述の工程により、ガラス成分が含有されていないか、または極少量のガラス成分が含有された第1フェライトシート111を製造することができる。
【0097】
次に、前記第1フェライトシート111に比べガラス成分の含量が高い第2フェライトシート113を準備することができる(S120)。前記第2フェライトシート113を準備する段階は、所定のフェライト材料を主原料として、有機バインダー、溶媒、及びガラス成分を混合して第2スラリーを製造する段階と、前記第2スラリーをキャストして第2グリーンシートを製造する段階と、を含むことができる。
【0098】
前記第2スラリーを製造する段階で、前記第2スラリーは、Fe
2O
3粉末の含量が65wt%〜66wt%、NiO粉末の含量が7wt%〜25wt%、ZnO粉末の含量が6wt%〜22wt%、及びCuO粉末の含量が4wt%〜7wt%となるように混合して製造することができる。前記ガラス成分は、略1.5wt%〜3.0wt%の含量比で前記第2スラリーに混合することができる。前記ガラス成分としては、Bi
2O
3、ZnO、B
2O
3、Al
2O
3、及びSiO
2の少なくとも何れか一つを用いることができる。より具体的に、前記Bi
2O
3は前記ガラス成分に対して略60wt%以上で添加し、前記ZnO及び前記B
2O
3は前記ガラス成分に対して略5wt%〜20wt%で添加し、残りのAl
2O
3及びSiO
2は前記ガラス成分に対して5wt%未満で添加することができる。
【0099】
前記第2グリーンシートは略40μm〜100μmの厚さに製作することが好ましい。前記第2グリーンシートを40μm未満の厚さに製作する場合には、工程上または技術上の困難性があり、反対に100μmを超過する厚さに製作する場合には、前記第2フェライトシート113の積層体を製造する際に厚さを高精度に調節することが困難であって、加工性及び取扱い性も著しく低下する恐れがある。上述の工程により、ガラス成分が含有された第2フェライトシート113を製造することができる。
【0100】
次に、前記第1フェライトシート111上に前記第2フェライトシート113を積層することで、シート積層体を製造することができる(S130)。一例として、複数の前記第1フェライトシート111を積層及び圧着することで、略600μm〜900μmの厚さのシート積層体であるコア層112を製造することができる。また、複数の前記第2フェライトシート113を前記コア層112の少なくとも一面上に積層及び圧着することで、略150μm〜350μmの厚さの外層114を製造することができる。これにより、略1100μm〜1200μmの厚さを有する、前記コア層112及び前記外層114からなるシート積層体を製造することができる。
【0101】
次に、前記シート積層体に焼成または焼結工程を施すことで、表面にシラノール基(Si‐OH)が生成された多層構造を形成することができる(S140)。前記シート積層体に焼成または焼結工程を施す段階は、前記シート積層体に加圧及び熱処理工程を施すことにより行われることができる。この際、前記シート積層体の外層114中のガラスが前記磁性シート積層体の焼成セルの界面に移動される。この焼成セルに、前記界面を露出させる所定の研磨工程を施すことで、表面にシラノール基(Si‐OH)が多量生成された多層構造を形成することができる。これにより、外層114の表面上に、ポリマー絶縁材との化学的結合を成すシラノール基(Si‐OH)が生成された
図2に図示の磁性基板110を製造することができる。
【0102】
上述したように、本発明の実施形態による磁性基板の製造方法は、第1フェライトシート111を準備する段階と、前記第1フェライトシート111に比べガラス含量が相対的に高い第2フェライトシート113を準備する段階と、前記第1フェライトシート111上に前記第2フェライトシート113を積層することで、多層構造(multilayer structure)を製造する段階と、前記多層構造を焼成または焼結する段階と、を含むことができる。この際、前記第2フェライトシート113は前記多層構造の外層114を成しており、前記焼成または焼結する段階で、前記第2フェライトシート113中のガラスにより前記外層114の表面上にシラノール基(Si‐OH)が生成されることができる。このような前記多層構造により、外部絶縁材、例えば、前記絶縁層122と接合する際に、前記シラノール基によって前記絶縁層122との密着力を高めることができる。これにより、本発明の実施形態による磁性基板の製造方法は、異種材質、例えば、絶縁材と化学的結合によって高い密着力で接合されるため、接合界面におけるクラックやデラミネーションによる断線、短絡、及び製品信頼性の低下等を防止することができる磁性基板を製造することができる。
【0103】
以上の詳細な説明は本発明を例示するものである。また、上述の内容は本発明の好ましい実施形態を示して説明するものに過ぎず、本発明は本明細書に開示された発明の概念の範囲、述べた開示内容と均等な範囲及び/または当業界の技術または知識の範囲内で変更または修正が可能である。上述の実施形態は本発明を実施するにおいて最善の状態を説明するためのものであり、本発明のような他の発明を用いるにおいて当業界に公知された他の状態での実施、そして発明の具体的な適用分野及び用途で要求される多様な変更も可能である。従って、以上の発明の詳細な説明は開示された実施状態に本発明を制限しようとする意図ではない。また、添付された請求範囲は他の実施状態も含むと解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0104】
100 チップ部品
110 磁性基板
111 第1フェライトシート
112 コア層
112a 第1フェライト層
113 第2フェライトシート
114 外層
114b 第2フェライト層
120 電極層
122 絶縁層
124 コイル電極
130 磁性複合材
140 外部電極