【実施例】
【0014】
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。
図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた車両用動力伝達装置16(以下、動力伝達装置16という)とを備えている。動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース18内に、トルクコンバータ20、自動変速機22、自動変速機22の出力回転部材である変速機出力歯車24に連結された減速ギヤ機構26、その減速ギヤ機構26に連結されたディファレンシャルギヤ(差動歯車装置)28等を備えている。また、動力伝達装置16は、ディファレンシャルギヤ28に連結された1対のドライブシャフト(車軸)30等を備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、トルクコンバータ20、自動変速機22、減速ギヤ機構26、ディファレンシャルギヤ28、およびドライブシャフト30等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
【0015】
エンジン12は、車両10の駆動力源であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。このエンジン12は、後述する電子制御装置70によって吸入空気量、燃料供給量、点火時期等の運転状態が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。なお、エンジン12が、本発明の原動機に対応している。
【0016】
図2は、トルクコンバータ20や自動変速機22の一例を説明する骨子図である。なお、トルクコンバータ20や自動変速機22等は、自動変速機22の入力回転部材である変速機入力軸32(入力軸32)の軸心RCに対して略対称的に構成されており、
図2ではその軸心RCの下半分が省略されている。
【0017】
図2において、トルクコンバータ20は、エンジン12と自動変速機22との間に動力伝達経路において、軸心RC回りに回転するように配設されており、エンジン12に連結されたポンプ翼車20p、および入力軸32に連結されたタービン翼車20tなどを備えた流体式伝動装置である。入力軸32は、タービン翼車20tによって回転駆動されるタービン軸でもある。また、動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間(すなわちトルクコンバータ20の入出力回転部材間)を直結可能なロックアップクラッチLCを備えている。また、動力伝達装置16は、ポンプ翼車20pに連結された機械式のオイルポンプ34を備えている。オイルポンプ34は、エンジン12によって回転駆動されることにより、自動変速機22を変速制御したり、動力伝達装置16の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の元圧となる作動油圧を発生する(吐出する)。すなわち、オイルポンプ34によって汲み上げられた作動油は、車両10に備えられた油圧制御回路50(
図1参照)の元圧として供給される。
【0018】
自動変速機22は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する有段式の自動変速機である。自動変速機22は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置36と、ラビニヨ型に構成されている、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置38およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置40とを同軸線上(軸心RC上)に有する、遊星歯車式の多段変速機である。自動変速機22は、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合は単に係合装置Cという)を備えている。なお、第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2が、本発明の係合装置に対応している。
【0019】
第1遊星歯車装置36は、第1サンギヤS1と、互いに噛み合う複数対の第1遊星歯車P1と、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1と、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1とを備えている。第2遊星歯車装置38は、第2サンギヤS2と、第2遊星歯車P2と、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持するキャリヤRCAと、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合うリングギヤRRとを備えている。第3遊星歯車装置40は、第3サンギヤS3と、互いに噛み合う複数対の第3遊星歯車P3a,P3bと、その第3遊星歯車P3a,P3bを自転および公転可能に支持するキャリヤRCAと、第3遊星歯車P3a,P3bを介して第3サンギヤS3と噛み合うリングギヤRRとを備えている。第2遊星歯車装置38および第3遊星歯車装置40においては、第3遊星歯車P3bは第2遊星歯車P2と共通化され、また、キャリヤが共通のキャリヤRCAで構成されると共にリングギヤが共通のリングギヤRRで構成される、所謂ラビニヨ型となっている。
【0020】
係合装置Cは、
図3の簡略化した断面図で示すように、油圧アクチュエータ41によって駆動させられるピストン42(油圧ピストン)と、そのピストン42により押圧される摩擦係合要素44(本発明の係合要素に対応)と、ピストン42を摩擦係合要素44から遠ざかる方向に付勢するスプリング46とを含んで構成される、油圧式の摩擦係合装置(クラッチ、ブレーキ)である。係合装置Cは、油圧制御回路50内のソレノイドバルブから出力されて油圧アクチュエータ41内に供給される油圧Pcによりそれぞれのトルク容量Tcが変化させられることで、それぞれ作動状態(係合や解放などの状態)が切り替えられる。
【0021】
図3は、ピストン42と摩擦係合要素44との間が詰められた状態(ピストン42と摩擦係合要素44とが当接した状態)であって、係合装置Cのトルク容量Tcがゼロの位置、すなわち係合装置Cがトルク容量Tcを持ちだす直前の状態を示している。このときのピストン42の位置は、ピストンストロークエンド位置と呼ばれ、このときの油圧アクチュエータ41内の油圧は、ピストンストロークエンド圧Pendと呼ばれている。ピストンストロークエンド圧Pendは、係合装置Cの各諸元(スプリング42の剛性など)に基づいて予め求められる値である。
【0022】
自動変速機22において、第1サンギヤS1は、ケース18に連結されている。第1キャリヤCA1は、入力軸32に連結されている。第1キャリヤCA1と第2サンギヤS2とは、第4クラッチC4を介して選択的に連結されている。第1リングギヤR1と第3サンギヤS3とは、第1クラッチC1を介して選択的に連結されている。第1リングギヤR1と第2サンギヤS2とは、第3クラッチC3を介して選択的に連結されている。第2サンギヤS2は、第1ブレーキB1を介してケース18に選択的に連結されている。キャリヤRCAは、第2クラッチC2を介して入力軸32に選択的に連結されている。キャリヤRCAは、第2ブレーキB2を介してケース18に選択的に連結されている。リングギヤRRは、変速機出力歯車24に連結されている。
【0023】
自動変速機22は、後述する電子制御装置70により運転者のアクセル操作や車速V等に応じて係合装置Cの係合と解放とが制御されることで、ギヤ比(変速比)γ(=入力回転速度Nin/出力回転速度Nout)が異なる複数のギヤ段(変速段)が選択的に形成される。自動変速機22は、例えば
図4の係合作動表に示すように、第1速ギヤ段1st−第8速ギヤ段8thの8つの前進ギヤ段、および後進ギヤ段「Rev」の各ギヤ段が選択的に形成される。なお、入力回転速度Ninは、入力軸32の回転速度であり、出力回転速度Noutは、変速機出力歯車24の回転速度である。各ギヤ段に対応する自動変速機22のギヤ比γは、第1遊星歯車装置36、第2遊星歯車装置38、および第3遊星歯車装置40の各歯車比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。第1速ギヤ段「1st」のギヤ比γが最も大きく、高車速側(第8速ギヤ段「8th」側)程小さくなる。
【0024】
図4の係合作動表は、自動変速機22にて形成される各ギヤ段と係合装置Cの各作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
図3に示すように、前進ギヤ段では、第1クラッチC1と第2ブレーキB2との係合によって第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。第1クラッチC1と第1ブレーキB1との係合によって第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1と第3クラッチC3との係合によって第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1と第4クラッチC4との係合によって第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。第1クラッチC1と第2クラッチC2との係合によって第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。第2クラッチC2と第4クラッチC4との係合によって第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。第2クラッチC2と第3クラッチC3との係合によって第7速ギヤ段「7th」が成立させられる。第2クラッチC2と第1ブレーキB1との係合によって第8速ギヤ段「8th」が成立させられる。また、第3クラッチC3と第2ブレーキB2との係合よって後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。また、係合装置Cが何れも解放されることにより、自動変速機22は、何れのギヤ段も形成されないニュートラル状態(すなわち動力伝達を遮断するニュートラル状態)とされる。
【0025】
図1に戻り、車両10は、例えば自動変速機22の変速制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置70を備えている。よって、
図1は、電子制御装置70の入出力系統を示す図であり、また、電子制御装置70による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。電子制御装置70は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置70は、エンジン12の出力制御、自動変速機22の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン出力制御用、油圧制御用(変速制御用)等に分けて構成される。
【0026】
電子制御装置70には、車両10に設けられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ52、入力回転速度センサ54、出力回転速度センサ56、アクセル開度センサ58、スロットル弁開度センサ60、ブレーキスイッチ62、シフトポジションセンサ64、油温センサ66など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン回転速度Ne、タービン軸の回転速度(すなわちタービン回転速度Nt)でもある入力回転速度Nin、車速Vに対応する出力回転速度Nout、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキ操作部材の運転者による操作が為されたブレーキ操作状態を示す信号であるブレーキオンBon、「P」,「R」,「N」,「D」等のシフトレバーの操作位置(シフトポジション)POSsh、油圧制御回路50内の作動油の温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。また、電子制御装置70からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン12、油圧制御回路50など)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、油圧制御指令信号Satなど)が、それぞれ供給される。この油圧制御指令信号Satは、係合装置Cの各油圧アクチュエータへ供給される各油圧(すなわち係合油圧)を調圧する各ソレノイドバルブを駆動する為の指令信号(油圧指令値、指示圧)であり、油圧制御回路50へ出力される。
【0027】
油圧制御回路50は、第1クラッチC1の(油圧アクチュエータの)係合油圧Pc1を調圧するためのソレノイドバルブSL1、第2クラッチC2の係合油圧Pc2を調圧するためのソレノイドバルブSL2、第3クラッチC3の係合油圧Pc3を調圧するためのソレノイドバルブSL3、第4クラッチC4の係合油圧Pc4を調圧するためのソレノイドバルブSL4、第1ブレーキB1の係合油圧Pb1を調圧するためのソレノイドバルブSL5、第2ブレーキB2の係合油圧Pb2を調圧するためのソレノイドバルブSL6を備えている。各ソレノイドバルブSL1〜SL6は、電子制御装置70から出力される油圧指令信号Spに基づいて各係合装置Cの油圧Pc(係合油圧)を調圧する。
【0028】
電子制御装置70は、車両10における各種制御の為の制御機能を実現する為に、エンジン制御手段すなわちエンジン制御部72、変速制御手段すなわち変速制御部74、変速判定手段すなわち変速判定部76、駆動切替判定手段すなわち駆動切替判定部78、油圧サージ制御手段すなわち油圧サージ制御部80を、機能的に備えている。
【0029】
エンジン制御部72は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動力マップ)にアクセル開度θaccおよび車速V(出力回転速度Nout等も同意)を適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン制御部72は、伝達損失、補機負荷、自動変速機22のギヤ比γ等を考慮して、その要求駆動力Fdemが得られる目標トルクTe*を設定し、その目標トルクTe*が得られるように、エンジン12の出力制御を行うエンジン制御指令信号Seをスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置などへ出力する。なお、目標トルクTe*が、本発明の原動機の目標トルクに対応している。
【0030】
変速制御部74は、予め定められた関係(変速マップ、変速線図)を用いて自動変速機22のギヤ段の切替え制御の実行有無を判断することで自動変速機22の変速を判断する。変速制御部74は、上記変速マップに車速関連値および駆動要求量を適用することで自動変速機22の変速を判断する(すなわち自動変速機22にて形成するギヤ段を判断する)。変速制御部74は、その判断したギヤ段を形成するように、自動変速機22の変速に関与する係合装置Cを係合または解放させる油圧制御指令信号Satを油圧制御回路50へ出力する。
【0031】
上記変速マップは、車速関連値および駆動要求量を変数とする二次元座標上に、自動変速機22の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。この変速マップにおける各変速線は、アップシフトが判断される為のアップシフト線、およびダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。アップシフト線およびダウンシフト線は、各々、複数のギヤ段において相互に1段異なるギヤ段間毎に予め定められている。この各変速線は、ある駆動要求量を示す線上において実際の車速関連値が線を横切ったか否か、または、ある車速関連値を示す線上において実際の駆動要求量が線を横切ったか否か、すなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点)を横切ったか否かを判定する為のものであり、この変速点の連なりとして予め定められている。上記車速関連値は、車速Vやその車速Vに関連する値であって、例えば車速Vや車輪速や出力回転速度Nout等である。上記駆動要求量は、運転者による車両10に対する駆動要求の大きさを表す値であって、例えば上述した要求駆動力Fdem[N]、要求駆動力Fdemに関連する要求駆動トルク[Nm]や要求駆動パワー[W]等である。この駆動要求量として、単にアクセル開度θacc[%]やスロットル弁開度θth[%]や吸入空気量[g/sec]等を用いることもできる。
【0032】
変速制御部74は、自動変速機22の所定のギヤ段への変速を判断すると、自動変速機22の変速に関与する係合装置Cを掴み替える(すなわち変速中に係合される係合側係合装置を係合するとともに、変速中に解放される解放側係合装置を解放する)、所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う。例えば、第2速ギヤ段2ndから第3速ギヤ段3rdへのアップシフトでは、第1ブレーキB1と第3クラッチC3とで掴み替えが行われる(すなわち第1ブレーキB1を解放するとともに、第3クラッチC3を係合するクラッチツゥクラッチ変速が実行される)。また、例えば第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトでは、第3クラッチC3を解放するとともに、第1ブレーキB1を係合するクラッチツゥクラッチ変速が実行される。本実施例では、変速時に掴み替えが行われる係合装置Cのうちで、解放される係合装置を解放側係合装置と称し、係合される係合装置を係合側係合装置と称する。前記油圧制御指令信号Satとしては、変速中の解放側係合装置のトルク容量(クラッチトルク)を得る為の解放側指示圧、および変速中の係合側係合装置のトルク容量(クラッチトルク)を得る為の係合側指示圧である。
【0033】
ところで、例えばアクセルペダルが踏み込まれない状態などでは、エンジン12から駆動トルクが出力されないため、入力軸32の入力トルクTinが、入力回転速度Ninを低下させる方向のトルク(負トルク、負の値)となる。以下、エンジン12から駆動トルク(正トルク、正の値)が出力される状態(すなわち入力軸32の入力トルクTinが正の値の状態)を駆動状態と称し、エンジン12から駆動トルクが出力されない状態(すなわち入力軸32の入力トルクTinが負の値の状態)を被駆動状態を称する。また、ダウンシフトにあっては、変速中(イナーシャ相中)に入力軸32の入力回転速度Ninが引き上げられる。このように、入力軸32に作用するトルクの方向(入力回転速度低下方向)に対して、ダウンシフトに伴う入力軸32の変化方向(入力回転速度上昇方向)が逆方向である場合、変速中(変速過渡期)に係合される係合側係合装置の係合油圧を制御することで、イナーシャ相中の入力軸32の入力回転速度Ninが制御される。なお、入力軸32の入力回転速度Ninが、本発明の回転要素の回転速度に対応している。
【0034】
一方、アクセルペダルが踏み込まれると、エンジン8から入力軸32の入力回転速度Ninを上昇させる方向の駆動トルク(正トルク)が出力されて入力軸32の入力トルクTinが正の値となる駆動状態となる。このとき、入力軸32にかかる入力トルクTinの方向(入力回転速度上昇方向)に対して、ダウンシフトに伴う入力軸32の変化方向(入力回転速度上昇方向)が同じ方向になる。このような、エンジン12から駆動トルクが出力されて入力トルクTinが正の値となる駆動状態でのダウンシフト中にあっては、変速中に解放される解放側係合装置の係合油圧を制御することで、イナーシャ相中の入力軸32の入力回転速度Ninが制御される。
【0035】
ここで、入力軸32の入力トルクTinが負の値となる被駆動状態でのダウンシフト(以下、被駆動ダウンシフトと称す)中に、アクセルペダルが踏み込まれるなどして、エンジン8から駆動トルクが出力されて入力トルクTinが正の値となる駆動状態に切り替わると、イナーシャ相中の入力回転速度Ninが、係合側係合装置による回転速度制御から解放側係合装置による回転速度制御に切り替えられる。しかしながら、被駆動ダウンシフトのイナーシャ相中は、解放側係合装置の係合油圧が、トルク容量がゼロとなるピストンストロークエンド圧Pend以下、或いはその付近で待機した状態となっており、回転速度制御に必要なトルク容量の確保に遅れが生じる虞がある。従って、エンジントルクの立ち上がりに対して、解放側係合装置の実係合油圧の立ち上がりが遅れ、解放側係合装置のトルク容量が確保できない状態で制御が実行されることで、入力回転速度Ninの吹きやショックが発生する虞がある。なお、以下において、エンジン8から入力軸32の入力回転速度Ninを上昇させる方向の駆動トルクが出力された状態(駆動状態)でのダウンシフトを駆動ダウンシフトと称す。
【0036】
上記問題を
図5に示すタイムチャートを用いて説明する。
図5は、例えばアクセルペダルオフのコースト走行中に車速Vが低下することで、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトが開始され、且つ、イナーシャ相中にアクセルペダルが踏み込まれたときの状態を示している。すなわち、被駆動ダウンシフトから、イナーシャ相中に駆動ダウンシフトに切り替えられたときの車両の状態を示している。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は、上から順番に、ギヤ段、入力回転速度Nin、入力トルクTin、出力トルクTout、解放側係合装置に対応する第3クラッチC3の指示圧Pc3*、係合側係合装置に対応する第1ブレーキB1の指示圧Pb1*に対応している。なお、第3クラッチC3のみ、実線で示す指示圧Pc3*に対して、一点鎖線で示す係合油圧Pc3(実油圧)が記載されている。
【0037】
第3速ギヤ段3rdでコースト走行中(t1時点前)では、エンジン8から入力軸32への駆動トルクが出力されず、入力軸32の入力トルクTinが負の値となっている。このような走行状態において、t1時点において第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトが判断されると、解放側係合装置に対応する第3クラッチC3の指示圧Pc3*が予め設定されている所定圧まで低下させられ、一時的にその所定圧で維持された後、さらに第3クラッチC3のトルク容量がゼロとなる待機圧まで低下させられる(t1時点〜t2時点)。一方、係合側係合装置に対応する第1ブレーキB1にあっては、ダウンシフトが判断されると、係合油圧Pb1(実油圧)の応答性を高めるため、指示圧Pb1*を予め設定されている所定圧まで一時的に増圧する所謂クイックフィルが実行される。クイックフィルが終了すると、予め設定されている待機圧で待機させられる(t1時点〜t2時点)。
【0038】
t2時点においてイナーシャ相が開始されると、入力回転速度Ninが上昇し、第1ブレーキB1の油圧制御によって入力回転速度Ninが制御される。具体的には、入力回転速度Ninが、変速後のギヤ段である第2速ギヤ段2ndの変速比γ2および出力回転速度Noutによって算出される目標入力回転速度Nin*に向かって漸増するように、第1ブレーキB1の係合油圧Pb1を制御するフィードバック制御が実行される(t2時点〜t3時点)。このフィードバック制御にあっては、目標入力回転速度Nin*と随時検出される入力回転速度Ninとの差分(=Nin*−Nin)を偏差ΔNinとして、フィードバック制御量すなわち第1ブレーキB1の指示圧Pb1*が随時算出される。
【0039】
このイナーシャ相中にアクセルペダルが踏み込まれることで、入力トルクTinが増加し、t3時点で正の値に切り替わる。すなわち、t3時点において、入力トルクTinが、負の値(負トルク)から正の値(正トルク)に切り替わる。このとき、入力回転速度Ninの回転速度制御が、解放側係合装置に対応する第3クラッチC3の係合油圧による制御に切り替えられ、t3時点において、第3クラッチC3の指示圧Pc3*が引き上げられる。ここで、t3時点での第3クラッチC3の指示圧Pc3*が、第3クラッチC3を構成するピストン42と摩擦係合要素44との間が詰められた状態となるピストンストロークエンド圧Pend未満の状態が長くなると、ピストン42と摩擦係合要素44とが乖離しており、ピストン42と摩擦係合要素44との間を詰める必要が生じる。このように、ピストン42と摩擦係合要素44との間が詰まる位置までピストン42を戻すことで、係合油圧Pc3(実油圧)の油圧応答性が悪化する。すなわち、
図5の実線で示す第3クラッチC3の指示圧Pc3*に対して、一点鎖線で示す係合油圧Pc3(実油圧)の応答性が遅くなる。
【0040】
第3クラッチC3の指示圧Pc3*に対する実油圧である係合油圧Pc3の油圧応答性が悪化すると、第3クラッチC3のトルク容量が不足し、変速機出力歯車24に伝達される出力トルクToutが落ち込んで運転者に駆動力の抜け感を与えてしまう。また、第3クラッチC3のトルク容量が不足することで、入力回転速度Ninの過度な上昇を抑えることが困難になり、入力回転速度Ninが目標回転速度Nin*よりも一時的に高くなる入力回転速度Ninの吹きが発生する。
【0041】
また、t4時点において入力回転速度Ninが目標回転速度Nin*と同期してイナーシャ相が終了すると、第1ブレーキB1が完全係合される油圧まで指示圧Pb1*が引き上げられるとともに、第3クラッチC3が解放されるように指示圧Pc3*がゼロに引き下げられる。ここで、入力回転速度Ninが吹き上がった後に第1ブレーキB1のトルク容量が増加することで、吹き上がりによる影響が出力側に伝達され、出力トルクToutが変動することによるショックが発生する。上述した現象は、ダウンシフトに限定されず、アップシフトにおいても発生する。
【0042】
なお、入力軸32の入力トルクTinが負の値である被駆動状態でのアップシフト中は、変速中に解放される解放側係合装置の係合油圧を制御することで、イナーシャ相中の入力軸32の入力回転速度Ninが制御され、エンジン12から駆動トルクが出力されて入力トルクTinが正の値となる駆動状態でのアップシフト中は、変速中に係合される係合側係合装置の係合油圧を制御することで、イナーシャ相中の入力軸32の入力回転速度Ninが制御される。
【0043】
そこで、本実施例では、変速中に入力軸32に作用するトルク(入力トルクTin)が負の値(負トルク)から正の値(正トルク)に切り替わる、すなわち被駆動状態から駆動状態に切り替わると、後述する油圧サージ圧制御部80を実行することで、変速中に発生する入力回転速度Ninの吹きおよびショックを抑制する。以下、変速中に駆動状態が切り替わったときの制御方法について詳細に説明する。
【0044】
図1に戻り、変速判定部76は、変速線図に基づいて所定のギヤ段への変速が判断されると、被駆動状態でのアップシフト(以下、被駆動アップシフトと称す)、または、被駆動状態でのダウンシフト(被駆動ダウンシフト)であるか否かを判定する。変速判定部76は、例えば、所定のギヤ段への変速が判断されると、その所定のギヤ段が現在のギヤ段よりも高速側のギヤ段であればアップシフトと判定し、所定のギヤ段が現在のギヤ段よりも低速側のギヤ段であればダウンシフトと判定する。
【0045】
また、変速判定部76は、入力軸32の入力トルクTinが負の値の場合、被駆動(被駆動状態)と判定する。また、変速判定部76は、入力トルクTinが正の値の場合、駆動(駆動状態)と判定する。
【0046】
変速判定部76は、予め求められて記憶されている入力軸32の入力トルクTinを算出するトルクマップ(不図示)を用いて入力トルクTinを算出し、算出された入力トルクTinが負の値であって、且つアップシフトである場合には被駆動アップシフトと判定し、算出された入力トルクTinが負の値であって、且つダウンシフトである場合には被駆動ダウンシフトと判定する。なお、前記トルクマップは、例えばアクセル開度θacc、および車速V(出力回転速度Nout)をはじめとする、入力トルクTinに関連する各種パラメータで構成され、各種パラメータを前記トルクマップに適用することで入力トルクTinが算出される。なお、トルクマップは、公知の技術であるため、その説明を省略する。以下において、駆動状態でのアップシフトを駆動アップシフトと称し、駆動状態でのダウンシフトを駆動ダウンシフトと称する。
【0047】
駆動切替判定部78は、入力軸32の入力トルクTinが負の値である被駆動状態から、入力トルクTinが正の値である駆動状態に切り替わったか否かを判定する。駆動切替判定部78は、被駆動状態(被駆動)から駆動状態(駆動)への切り替わりを、例えば変速中に入力トルクTinが予め設定されている所定値(本実施例ではゼロ)を越えたかに基づいて判定する。被駆動ダウンシフト中にあっては、駆動切替判定部78によって被駆動から駆動への切り替わりが判定されると、被駆動ダウンシフトから駆動ダウンシフトへ切り替わる。また、被駆動アップシフト中にあっては、駆動切替判定部78によって被駆動から駆動への切り替わりが判定されると、被駆動アップシフトから駆動アップシフトへ切り替わる。
【0048】
被駆動ダウンシフトにあっては、イナーシャ相中の入力回転速度Ninが係合側係合装置によって制御されるが、駆動ダウンシフトに切り替わると、解放側係合装置による入力回転速度Ninの回転速度制御に切り替わる。この解放側係合装置が、本発明の自動変速機の回転要素を制御する係合装置に対応する。また、被駆動アップシフトにあっては、イナーシャ相中の入力回転速度Ninが解放側係合装置によって制御されるが、駆動アップシフトに切り替わると、係合側係合装置による入力回転速度Ninの回転速度制御に切り替わる。この係合側係合装置は、本発明の自動変速機の回転要素を制御する係合装置に対応する。
【0049】
ここで、上述したように、例えば被駆動ダウンシフトから駆動ダウンシフトに切り替わったとき、解放側係合装置は、トルク容量がゼロとなるピストンストロークエンド圧Pend以下で待機した状態となっており、ピストン42と摩擦係合要素44とが乖離していると、解放側係合装置の油圧応答性が悪化し、解放側係合装置のトルク容量を速やかに確保するのが困難となる。また、被駆動アップシフトから駆動アップシフトに切り替わったとき、係合側係合装置のトルク容量がゼロとなるピストンストロークエンド圧Pend以下で待機した状態となっており、ピストン42と摩擦係合要素44とが乖離していると、係合側係合装置の油圧応答性が悪化し、係合側係合装置のトルク容量を速やかに確保するのが困難となる。
【0050】
これを解消するため、変速中に駆動切替判定部78によって被駆動から駆動に切り替えられたことを判断すると、油圧サージ制御部80が実行される。油圧サージ制御部80は、変速中に被駆動から駆動に切り替えられたことを判断すると、切替後に入力回転速度Ninを制御する係合装置の係合油圧の応答性を向上するため、切替後に入力回転速度Ninを制御する係合装置の係合油圧の指示圧として出力される目標サージ圧Psg、および目標サージ圧Psgの出力時間である目標サージ時間Tを設定し、その目標サージ圧Psgを目標サージ時間Tだけ出力する指令を出力する。この目標サージ圧Psgは、ピストンストロークエンド圧Pendよりも十分に高い油圧に設定される。
【0051】
油圧サージ制御部80は、目標サージ圧Psgの高さおよび目標サージ時間Tを、エンジン8の目標トルクTe*に基づいて設定する。油圧サージ制御部80は、例えばアクセル開度Accおよびエンジン回転速度Neから構成される、エンジン12の目標トルクTe*を求める関係マップ(不図示)を記憶しており、この関係マップに、随時検出されるアクセル開度Accおよびエンジン回転速度Neを適用することで目標トルクTe*を算出する。
【0052】
また、油圧サージ制御部80は、例えば
図6(a)、(b)に示すような、目標トルクTe*をパラメータとする、目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tを求めるマップをそれぞれ記憶しており、このマップに算出された目標トルクTe*を適用することで目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tを決定する。前記マップは、予め実験または解析によって求められ、
図6(a)、(b)に示すように、目標トルクTe*が大きくなるほど目標サージ圧Psgが高くなるように設定され、目標トルクTe*が大きくなるほど目標サージ時間Tが長くなるように設定されている。これらマップによって、目標トルクTe*に応じた最適な目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定される。
【0053】
ところで、変速中(イナーシャ相中)の被駆動から駆動に切り替えられた時点で、係合装置のピストン42がピストンストロークエンド位置、すなわちピストン42と摩擦係合要素44とが詰まる位置(
図3参照)にあった場合には、係合装置の油圧の応答遅れを考慮する必要はなく、ピストン42と摩擦係合要素44とが詰まった状態で目標サージ圧Psgが出力されることで、むしろイナーシャ相の進行が妨げられる可能性がある。また、ピストン42と摩擦係合要素44との乖離が大きいほど、ピストン42の移動量が大きくなるため、油圧応答性の悪化が顕著となり、入力回転速度Ninの吹きが発生しやすくなる。そこで、油圧サージ制御部80は、ピストン42のピストンストロークエンド位置への到達度合を表すピストンストロークエンド到達度合S(0≦S≦1.0)を、後述するピストン戻り時間Trtに基づいて推定し、このピストンストロークエンド到達度合S(以下、到達度合S)に基づいて、目標トルクTe*から求められた目標サージ時間Tを補正(調整)する。到達度合Sは、ピストン42がピストンストロークエンド位置にある場合(乖離量がゼロ)において1.0に設定され、ピストン42が摩擦係合要素44から離れるに従って値が小さくなる。
【0054】
ピストン戻り時間Trtは、到達度合Sを推定するためのパラメータであり、ピストン戻り時間Trtがゼロのとき、到達度合Sが1.0すなわちピストン42がピストンストロークエンド位置(ピストン42と摩擦係合要素44との間が詰まる位置)にあると推定される。また、ピストン戻り時間Trtが大きくなるほど、到達度合Sが低くなる、すなわちピストン42と摩擦係合要素44との乖離量が大きいものと推定される。
【0055】
ピストン戻り時間Trtは、係合装置の指示圧が、ピストンストロークエンド圧Pend未満となる時間と、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend以上となる時間とを計測することで求められる。ピストン戻り時間Trtは、係合装置の指示圧がピストンスロトークエンド圧Pend未満である間(期間)は増加側に積算され、係合装置の係合油圧がピストンストロークエンド圧Pend以上である間(期間)は減少側に減算される。また、ピストン戻り時間Trtは、下限値がゼロに設定されている。従って、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満の状態が長くなるほどピストン戻り時間Trtが増加し、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend以上の時間が長くなるほどピストン戻り時間Trtが減少する。そして、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満の時間よりも、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend以上の時間の方が長くなると、ピストン戻り時間Trtがゼロとなる。このとき、到達度合Sが1.0すなわちピストン42がピストンストロークエンド位置にあるものと推定される。
【0056】
また、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend以上の時間よりも、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満の時間の方が長くなると、ピストン戻り時間Trtがゼロよりも大きくなる。このとき、ピストン42がピストンストロークエンド位置に到達していないと推定される。また、ピストン戻り時間Trtが大きいほど、ピストン42と係合装置との間の乖離量が大きいものと推定される。指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満になると、ピストン42が摩擦係合要素44から離れる側に移動する。従って、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満にある時間が長くなるほど、到達度合Sが低くなるものと推定される。
【0057】
また、ピストン戻り時間Trtは、係合装置が完全解放された状態、すなわち指示圧がゼロの状態では、ゼロに設定(リセット)される。また、目標サージ圧Psgが出力された場合にも、ピストン戻り時間Trtがゼロに設定(リセット)される。
【0058】
上記を踏まえた油圧サージ制御部80の制御機能に対応する、ピストン戻り時間Trtを求めるフローチャートを
図7に示す。このフローチャートは、車両走行中に実行される。ステップS1(以下、ステップを省略)では、係合装置が完全解放状態であるか否か、すなわち係合装置の指示圧がゼロであるか否かが判定される。係合装置が完全解放状態である場合にはS1が肯定され、S4において戻り時間Trtがゼロに設定(リセット)される。
【0059】
係合装置が完全解放状態でない場合、S1が否定され、目標サージ圧Psgが出力されたか否かが判定される。目標サージ圧Psgが出力された場合にはS2が肯定され、S5において戻り時間Trtがゼロに設定(リセット)される。目標サージ圧Psgが出力されない場合にはS2が否定され、S3において係合装置の指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満か否かが判定される。指示圧がピストンストロークエンド圧Pend未満の場合にはS3が肯定され、ピストン戻り時間Trtが増加側に積算される。一方、指示圧がピストンストロークエンド圧Pend以上の場合にはS3が否定され、S7においてピストン戻り時間Trtが減算される。上記フローチャートに基づいてピストン戻り時間Trtが計測される。
【0060】
図8は、
図7のフローチャートに基づいて計測されるピストン戻り時間Trtを示すタイムチャートである。なお、
図7のタイムチャートは、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトを一例にして示している。
【0061】
t1時点以前にあっては、第3速ギヤ段で走行中であり、このとき第3クラッチC3の指示圧Pc3*は、ピストンストロークエンド圧Pendよりも高いため、ピストン戻り時間Trtは減算されることになるが、ピストン戻り時間Trtの下限値がゼロであるため、t1時点以前のピストン戻り時間Trtはゼロとなる。t1時点において第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトが開始されることで、指示圧Pc3*の低下が開始される。そして、t2時点において指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pendに到達し、t2時点からt3時点の間では、指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pend未満となっている。このとき、ピストン戻り時間Trtが積算されることで、ピストン戻り時間Trtが増加している。また、t3時点では、指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pendに復帰しており、t3時点以降は指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pendよりも高いことから、t3時点以降はピストン戻り時間Trtが減算されることでピストン戻り時間Trtが減少している。
【0062】
そして、t4時点において目標サージ圧Psgが出力されることで、ピストン戻り時間Trtがゼロに設定(リセット)されている。なお、t4時点でのピストン戻り時間Trtに基づいて目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが補正される。t4時点からt5時点の間にあっては、指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pend以上であるため、ピストン戻り時間Trtが下限値であるゼロで維持される。t5時点以降は、指示圧Pc3*がピストンストロークエンド圧Pend未満となり戻り時間Trtが積算されることで増加しているが、t6時点において指示圧Pc3*がゼロ、すなわち第3クラッチC3が完全解放されることでピストン戻り時間Trtがゼロに設定(リセット)されている。なお、上記は、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトを一例にしているが、他のダウンシフトやアップシフトにあってもピストン戻り時間Trtを計測することで到達度合Sが推定され、目標サージ時間Tが補正される。
【0063】
油圧サージ制御部80は、被駆動から駆動に切り替えられた時点でのピストン戻り時間Trtに基づいて目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tを補正する。油圧サージ制御部80は、ピストン戻り時間Trtがゼロの場合には、目標サージ時間Tをゼロに補正する。すなわち、目標サージ圧Psgを出力しない。ピストン戻り時間Trtがゼロの場合には、到達度合Sが1.0すなわちピストン42がピストンストロークエンド位置に位置するものと推定されるため、目標サージ圧Psgを出力しなくても油圧の応答遅れは生じないと判断されるためである。また、油圧サージ制御部80は、ピストン戻り時間Trtが長くなるほど、目標サージ時間Tを増加側に補正する。ピストン戻り時間Trtが長くなるほど、到達度合Sが低い値、すなわちピストン42と摩擦係合要素44との乖離量が大きいと推定され、油圧の応答性を高める必要があるためである。
【0064】
油圧サージ制御部80は、例えば
図9に示すようなピストン戻り時間Trtをパラメータとする、目標サージ時間Tの目標サージ時間補正係数α1または目標サージ時間補正値α2を求める目標サージ時間補正マップを記憶しており、目標トルクTe*に基づいて設定される目標サージ時間Tに対して、目標サージ時間補正マップから求められた補正係数α1を乗算する、或いは補正値α2を加算することで、目標サージ時間Tを補正する。このように目標サージ時間Tが補正されることで、目標サージ時間Tが到達度合Sを考慮した最適な値となる。
【0065】
油圧サージ制御部80は、被駆動状態でのダウンシフト中に駆動状態へ切り替えられたことを判断すると、変速中に解放される解放側係合装置(切替後に入力回転速度Ninの回転速度制御を行う)から駆動状態切替後に出力される指示圧としての目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tを設定し、その目標サージ圧Psgを目標サージ時間Tだけ出力する指令を油圧制御回路50に出力する。この目標サージ圧が出力されることで、係合装置のピストン42が速やかにピストンストロークエンド位置に移動し、指示圧に対して係合油圧が速やかに立ち上がることで油圧の応答性悪化が抑制される。
【0066】
以下、被駆動ダウンシフト中に駆動ダウンシフトへ切り替えられる場合の変速制御に関して、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトを一例に説明する。第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトでは、第3クラッチC3が解放されるとともに、第1ブレーキB1が係合される。すなわち、第3クラッチC3が解放側係合装置に対応し、第1ブレーキB1が係合側係合装置に対応する。
【0067】
図10は、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへの被駆動ダウンシフトのイナーシャ相中に駆動ダウンシフトに切り替えられたときの状態を示すタイムチャートである。なお、
図10の横軸および縦軸については、前述した
図5と同じであるためその説明を省略する。第3速ギヤ段3rdでコースト走行中(アクセルペダルオフ走行中)に、t1時点において、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段へ2ndへのダウンシフトが判断されると、第3クラッチC3を解放するとともに、第1ブレーキB1を係合する、クラッチツゥクラッチ制御が開始される。
【0068】
t1時点以降の制御について説明すると、第3クラッチC3の指示圧Pc3*が、予め設定されている所定圧まで低下させられ、一時的にその所定圧で維持された後、さらに第3クラッチC3のトルク容量がゼロとなる待機圧まで低下させられる(t1時点〜t2時点)。一方、第1ブレーキB1にあっては、t1時点においてダウンシフトが判断されると、係合油圧Pb1の応答性を高めるため、指示圧Pb1*を予め設定されている所定圧まで一時的に増圧するクイックフィルが実行される。そして、クイックフィルが終了すると、予め設定されている待機圧で待機させられる(t1時点〜t2時点)。
【0069】
t2時点においてイナーシャ相が開始されると、入力回転速度Ninが上昇し始める。このとき、第1ブレーキB1によって入力回転速度Ninが制御される。具体的には、入力回転速度Ninが、変速後のギヤ段である第2速ギヤ段2ndの変速比γ2および出力回転速度Noutによって算出される目標入力回転速度Nin*に向かって漸増するように、目標入力回転速度Nin*と随時検出される入力回転速度Ninとの差分(=Nin*−Nin)を偏差ΔNinとして、フィードバック制御量すなわち第1ブレーキB1の指示圧Pb1*を算出して出力するフィードバック制御が実行される(t2時点〜t3時点)。一方、第3クラッチC3にあっては、トルク容量がゼロとなるピストンストロークエンド圧Pend以下の待機圧で維持されている(t2時点〜t3時点)。
【0070】
t2時点からt4時点の間のイナーシャ相中においてアクセルペダルが踏み込まれることで入力トルクTinが増加し、t3時点において入力トルクTinが負の値から正の値に切り替わる。すなわち、t3時点において、被駆動状態から駆動状態に切り替わる。入力トルクTinが負の値から正の値に切り替わると、解放側係合装置である第3クラッチC3による入力回転速度Ninの回転速度制御に切り替えられる。
【0071】
このとき、第3クラッチC3において、回転速度制御を実行可能なトルク容量が必要となるが、第3クラッチC3の指示圧Pc3*は、ピストンストロークエンド圧Pend以下であることから、トルク容量はゼロであり、ピストン42と摩擦係合要素44とが乖離している場合もある。これに対して、本実施例では、t3時点において駆動切替判定部78によって被駆動から駆動への切替が判断されると、油圧サージ制御部80が実行されて最適な目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定され、第3クラッチC3の指示圧Pc3*として実線で示すような目標サージ圧Psgが目標サージ時間Tだけ出力(増圧)される。この目標サージ圧Psgが出力されることで、ピストン42と摩擦係合要素44との間が速やかに詰められることで油圧応答性が向上し、一点鎖線で示す係合油圧Pc3(実油圧)の立ち上がりが、破線で示す従来の係合油圧Pc3(実油圧)の立ち上がりに比べて早められる。よって、第3クラッチC3のトルク容量の立ち上がりも早くなることから、入力回転速度Ninの回転速度制御に必要なトルク容量が速やかに確保される。なお、t3時点以降において第3クラッチC3によって入力回転速度Ninが制御される間、第1ブレーキB1の係合油圧Pb1は、ピストンストロークエンド圧Pend近傍の値で待機させられ、イナーシャ相が終了するまでその油圧で維持される。
【0072】
また、目標サージ圧Psgの出力時間が目標サージ時間Tに到達すると、通常のフィードバック制御に復帰する。具体的には、入力回転速度Ninが、変速後のギヤ段である第2速ギヤ段2ndの変速比γ2および出力回転速度Noutによって算出される目標入力回転速度Nin*に向かって漸増するように、目標入力回転速度Nin*と随時検出される入力回転速度Ninとの差分(=Nin*−Nin)を偏差ΔNinとして、フィードバック制御量である第3クラッチC3の指示圧Pc3*を算出して出力するフィードバック制御が実行される(t3時点〜t4時点)。
【0073】
このように、t3時点において、第3クラッチC3の指示圧Pc3*として目標サージ圧Psgが出力されることで、第3クラッチC3のピストン42と摩擦係合要素44との間が速やかに詰められることで油圧応答性が向上し、第3クラッチC3が回転速度制御に必要なトルク容量を速やかに持つことが可能となる。従って、t3時点以降において、第3クラッチC3による回転速度制御によって、実線で示すように入力回転速度Ninを目標入力回転速度Nin*に向かって漸増するように変化させることができる。すなわち、従来発生していた、破線で示すような第3クラッチC3のトルク容量不足による入力回転速度Ninの吹きを抑制できる。また、第3クラッチC3のトルク容量が速やかに確保されることで、t3時点以降において出力トルクToutが落ち込むこともなくなり、従来発生していた破線で示すような出力トルクToutの落ち込みによる駆動力の抜け感を抑制できる。
【0074】
t4時点では、イナーシャ相の終了が判断され、第1ブレーキB1の指示圧Pb1*が、所定の完全係合油圧まで引き上げられ、第3クラッチC3の指示圧Pc3*がゼロに引き下げられている。本実施例では、イナーシャ相中に発生する入力回転速度Ninの吹きが抑制されるため、破線で示すような吹きに起因する出力トルクToutの変動(すなわちショック)が抑制される。なお、上記は、第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのダウンシフトを一例にして説明したが、他の変速段へのダウンシフトにあっても同様の制御が実行される。
【0075】
次いで、被駆動アップシフト中に駆動アップシフトに切り替えられる場合の制御について説明する。油圧サージ制御部80は、被駆動状態でのアップシフト中に駆動状態に切り替えられたことを判断すると、変速中に係合される係合側係合装置(切替後に入力回転速度Ninの回転速度制御を行う)から駆動状態切替後に出力される指示圧としての目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tを設定し、その目標サージ圧Psgを目標サージ時間Tだけ出力する指令を油圧制御回路50に出力する。以下、アップシフト中の変速制御に関して、第2速ギヤ段2ndから第3速ギヤ段3rdへのアップシフトを一例に説明する。第2速ギヤ段2ndから第3速ギヤ段3rdへのアップシフトでは、第3クラッチC3が係合されるとともに、第1ブレーキB1が解放される。すなわち、第3クラッチC3が係合側係合装置に対応し、第1ブレーキB1が解放側係合装置に対応する。
【0076】
図11は、第2速ギヤ段2ndから第3速ギヤ段3rdへの被駆動アップシフト中(イナーシャ相中)に駆動アップシフトに切り替えられたときの車両状態を示すタイムチャートである。例えば第2速ギヤ段2ndでコースト走行中(アクセルペダルオフ走行中)に、t1時点において第2速ギヤ段2ndから第3速ギヤ段3rdへのアップシフトが判断されると、第3クラッチC3を係合するとともに、第1ブレーキB1を解放するクラッチツゥクラッチ制御が開始される。
【0077】
t1以降の制御について説明すると、解放側係合装置に対応する第1ブレーキB1の指示圧Pb1*が、予め設定されている所定圧まで低下させられ、一時的にその所定圧で維持されたあと、さらに、第1ブレーキB1のトルク容量が所定値となる予め設定されている待機圧まで低下させられる(t1時点〜t2時点)。一方、係合側係合装置である第3クラッチC3にあっては、t1時点においてアップシフトが判断されると、係合油圧Pc3の応答性を高めるため、指示圧Pc3*が予め設定されている所定圧まで一時的に増圧させるクイックフィルが実行される。そして、クイックフィルが終了すると、予め設定されている待機圧で待機させられる(t1時点〜t2時点)。
【0078】
t2時点においてイナーシャ相が開始されると、入力回転速度Ninが低下し始める。このとき、第1ブレーキB1によって入力回転速度Ninが制御される。具体的には、入力回転速度Ninが、変速後のギヤ段である第3速ギヤ段3rdの変速比γ3および出力回転速度Noutによって算出される目標入力回転速度Nin*に向かって漸減するように、目標入力回転速度Nin*と入力回転速度Ninとの差分(=Nin*−Nin)を偏差ΔNinとして、フィードバック制御量である第1ブレーキB1の指示圧Pb1*を算出して出力するフィードバック制御が実行される(t2時点〜t3時点)。
【0079】
また、t2時点〜t3時点の間のイナーシャ相中においてアクセルペダルが踏み込まれることで入力トルクTinが増加し、t3時点において入力トルクTinがゼロとなっている。このとき、入力軸32にかかる入力トルクTinが、負の値から正の値に切り替わる。入力トルクTinが正の値に切り替わると、係合側係合装置である第3クラッチC3による入力回転速度Ninの回転速度制御に切り替えられる。
【0080】
このとき、第3クラッチC3において、回転速度制御を実行可能なトルク容量を速やかに確保する必要が生じるが、第3クラッチC3の指示圧Pc3*が、ピストンストロークエンド圧Pend未満の場合には、ピストン42と摩擦係合要素44との間を速やかに詰める必要がある。これに対して、本実施例では、t3時点において被駆動から駆動への切替が判断されると、油圧サージ制御部80が実行されることで、第3クラッチC3の指示圧Pc3*として目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定され、実線で示すように、設定された目標サージ圧Psgに目標サージ時間Tだけ増圧される。従って、第3クラッチC3のピストン42と摩擦係合要素44との間が速やかに詰められ、一点鎖線で示す係合油圧Pc3(実油圧)の応答性が、破線で示す目標サージ圧Psgが出力されない場合(従来技術)の係合油圧Pc3(実油圧)に比べて向上する。よって、入力回転速度Ninの回転速度制御に必要なトルク容量が速やかに確保される。また、目標サージ圧Psgの出力時間が目標サージ時間Tに到達すると、通常のフィードバック制御に復帰する。
【0081】
このように、t3時点において目標サージ圧Psgが出力されることで、第3クラッチC3のピストン42と摩擦係合要素44との間が速やかに詰められ、油圧の応答性が向上することから、第3クラッチC3のトルク容量の立ち上がりが早くなり、第3クラッチC3による回転速度制御に必要なトルク容量を速やかに持つことが可能になる。また、第3クラッチC3が速やかに回転速度制御に必要なトルク容量を確保することで、従来発生していた破線で示すような入力回転速度Ninの吹きが防止される。また、この吹きに起因する、従来発生していた破線で示すような出力トルクToutの変動が抑制されることで、ショックが抑制される。なお、上記は第3速ギヤ段3rdから第2速ギヤ段2ndへのアップシフトを一例にして説明したが、他の変速段へのアップシフトにあっても同様の制御が実行される。
【0082】
図12は、電子制御装置70の制御機能の要部、すなわち被駆動アップシフトまたは被駆動ダウンシフト中(イナーシャ相中)に、被駆動から駆動に切り替わったときの制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、車両走行中において繰り返し実行される。
【0083】
先ず、変速判定部76の制御機能に対応するステップS10(以下、ステップを省略)では、自動変速機14が被駆動アップシフト中または被駆動ダウンシフト中か否かが判定される。被駆動アップシフトおよび被駆動ダウンシフトの何れでもない場合にはS10が否定され、リターンさせられる。被駆動アップシフトまたは被駆動ダウンシフト中である場合にはS10が肯定され、S11に進む。
【0084】
駆動切替判定部78の制御機能に対応するS11では、駆動アップシフトに切り替わったか否かが判定される。例えばアクセルペダルが踏み込まれるなどして駆動アップシフトに切り替わった場合にはS11が肯定されてS12に進む。油圧サージ制御部80の制御機能に対応するS12では、目標トルクTe*およびピストン戻り時間Trtに基づいた目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定され、係合側係合装置においてその目標サージ圧Psgが目標サージ時間Tだけ出力(増圧)される。
【0085】
S11に戻り、被駆動アップシフトまたは被駆動ダウンシフトである場合にはS11が否定されてS13に進む。駆動切替判定部78の制御機能に対応するS13では、駆動ダウンシフトに切り替わったか否かが判定される。駆動ダウンシフトに切り替わった場合にはS13が肯定されてS14に進む。油圧サージ制御部80の制御機能に対応するS14では、目標トルクTe*およびピストン戻り時間Trtに基づいて目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定され、解放側係合装置においてその目標サージ圧Psgが目標サージ時間Tだけ出力(増圧)される。S13に戻り、被駆動ダウンシフトまたは被駆動アップシフトである場合にはS13が否定されてリターンさせられる。
【0086】
上述のように、本実施例によれば、被駆動状態でのアップシフト中に駆動状態に切り替えられると、変速中に係合される係合側係合装置によって自動変速機22の入力軸32の入力回転速度Ninの回転速度が制御されることになるが、このとき係合側係合装置の指示圧が、目標サージ圧Psgに目標サージ時間Tだけ増圧されるため、この係合側係合装置の応答性が高められる。また、被駆動状態でのダウンシフト中に駆動状態に切り替えられると、変速中に解放される解放側係合装置によって自動変速機22の入力軸32の入力回転速度Ninが制御されることになるが、このとき解放側係合装置の指示圧が、目標サージ圧Psgに目標サージ時間Tだけ増圧されるため、この解放側係合装置の応答性が高められる。よって、係合装置の応答遅れによる入力軸32の回転速度吹きやショックを抑制することができる。
【0087】
また、本実施例によれば、エンジン12の目標トルクTe*に基づいて目標サージ圧Tsgの高さおよび目標サージ時間Tが設定されるため、これら目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが最適な値に設定され、係合装置の応答性を確保しつつ、過剰なサージ圧の発生を抑制できる。
【0088】
また、本実施例によれば、ピストン戻り時間Trtに基づいてピストンストロークエンド到達度合Sを推定し、この到達度合Sからピストン42と係合要素との間が詰められた状態となるのに必要な油圧分を踏まえて、目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが調整されるので、係合装置の応答性を一層高めることができる。
【0089】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0090】
例えば、前述の実施例では、自動変速機14は前進8段の自動変速機であったが、本発明は、変速段数や自動変速機の連結関係(構造)については特に限定されない。これに関連して、ダウンシフト中に係合される係合側係合装置、およびダウンシフト中に解放される解放側係合装置についても、自動変速機の構造および変速段に応じて適宜変更される。同様に、アップシフト中に係合される係合側係合装置、およびアップシフト中に解放される解放側係合装置についても、自動変速機の構造および変速段に応じて適宜変更される。
【0091】
また、前述の実施例では、目標トルクTe*ならびにピストン戻り時間Trtに基づいて目標サージ圧Psgおよび目標サージ時間Tが設定されていたが、さらに、油圧の応答性に関連する作動油の油温THoilを考慮するものであっても構わない。
【0092】
また、前述の実施例では、ピストン戻り時間Trtに基づいて目標サージ時間Tが補正されていたが、目標サージ圧Psgについてもピストン戻り時間Trtに基づいて補正されても構わない。
【0093】
また、前述の実施例では、被駆動ダウンシフトから駆動ダウンシフト、および被駆動アップシフトから駆動アップシフトに切り替えられる態様が説明されているが、本発明は、被駆動ダウンシフトから駆動アップシフトに切り替えられる場合、および、被駆動アップシフトから駆動ダウンシフトに切り替えられる場合においても適用され得る。例えば被駆動ダウンシフト中に、運転者によるマニュアル操作(シフト操作)によって駆動アップシフトに切り替えられることがある。このような場合において、入力回転速度Ninを制御する係合装置が切り替えられる。このとき、入力回転速度Ninを制御する係合装置の応答性を高めるため、その係合装置にサージ圧(指示圧)を出力することで応答性が高められ、入力軸32の回転速度吹きやショックを抑制することができる。このように、被駆動アップシフト中に駆動ダウンシフト、または、被駆動ダウンシフト中に駆動アップシフトに切り替えられた場合であっても、入力回転速度Ninを制御する係合装置からサージ圧を出力させることで、前述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0094】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。