特許第6512711号(P6512711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512711
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】短下肢装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   A61F5/01 N
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-89740(P2016-89740)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-196187(P2017-196187A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】303053600
【氏名又は名称】有限会社出水義肢装具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】弓木野 勇次
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−193999(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0257162(US,A1)
【文献】 特開2007−007311(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3013624(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、
該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、
前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、
下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、
足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、
足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、
前記足内連結部の直上において、前記足内支持部に固定されるホルダ部と、
一端が前記足外連結部の直上において前記足外支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体と、を備える短下肢装具において、
前記足外連結部、または前記足内連結部は、
前記足外支持部、または前記足内支持部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、
前記下腿装着部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、
前記第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、前記ナット部に螺合するボルト部と、を有する
短下肢装具。
【請求項2】
足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、
該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、
前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、
下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、
足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、
足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、
前記足内連結部の直上において、前記足内支持部に固定されるホルダ部と、
一端が前記足外連結部の直上において前記足外支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体と、を備える短下肢装具において、
前記足外連結部、または前記足内連結部は、
前記下腿装着部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、
前記足外支持部、または前記足内支持部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、
前記第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、前記ナット部に螺合するボルト部と、を有する
短下肢装具。
【請求項3】
足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、
該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、
前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、
下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、
足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、
足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、
前記足外連結部の直上において、前記足外支持部に固定されるホルダ部と、
一端が前記足内連結部の直上において前記足内支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体と、を備える短下肢装具において、
前記足外連結部、または前記足内連結部は、
前記足外支持部、または前記足内支持部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、
前記下腿装着部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、
前記第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、前記ナット部に螺合するボルト部と、を有する
短下肢装具。
【請求項4】
足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、
該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、
前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、
下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、
足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、
足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、
前記足外連結部の直上において、前記足外支持部に固定されるホルダ部と、
一端が前記足内連結部の直上において前記足内支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体と、を備える短下肢装具において、
前記足外連結部、または前記足内連結部は、
前記下腿装着部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、
前記足外支持部、または前記足内支持部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、
前記第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、前記ナット部に螺合するボルト部と、を有する
短下肢装具。
【請求項5】
前記足内連結部と前記足外連結部の回転中心は、略同軸上に位置する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の短下肢装具。
【請求項6】
前記ベルト体は、
背屈動作の可動範囲を規制する第1のベルト体と、
底屈動作の可動範囲を規制する第2のベルト体と、を有する
請求項1から請求項の何れか一項に記載の短下肢装具。
【請求項7】
前記足底板部は、
前記中足部の厚みを前記踵部、および前記前足部の厚みよりも相対的に厚い厚肉部を有する
請求項1から請求項の何れか一項に記載の短下肢装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短下肢装具に関するものである。詳しくは、軽量かつ高強度でありながら、足首の底背屈運動が可能であり、適正な歩行を支援する短下肢装具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中、脳溢血、あるいは脳梗塞による片麻痺や抹消神経麻痺を原因として、足首関節を自己の意思で自由に動かすことができないという障害が生じることがある。このような障害を負った患者は、歩行の際に足先が垂れ下がる(垂下足)ために円滑な体重移動が行えず、歩行が困難となる。
【0003】
従来より、このような垂下足の症状をもつ患者は、つま先が床に引っかかる等して歩行に支障が生じることから、健常に近い歩行を実現するための補助具として、短下肢装具が一般に用いられてきた。
【0004】
このような短下肢装具としては、旧くは金属製の短下肢装具が主に使用されてきた。しかしながら、金属製の短下肢装具は、全体とし外観が大きくなるとともに重量も重く、必ずしも見栄え、および使い勝手のよいものではなかった。
【0005】
そこで、近年では、軽量化が図られ、見栄えもよくなるプラスチック製、あるいは合成樹脂製の短下肢装具が主流となっている。
【0006】
例えば、特許文献1には、図5に示すように、比較的硬質な合成樹脂で構成され、足底を載置する足底板部202と、下腿に装着する下腿装着部205とが連続して一体成型された短下肢装具201が開示されている。この短下肢装具201によれば、装具全体の重量が軽減されるとともに見栄えも良くなる。さらに、足底板部202と下腿装着部205が一体成型されているため、足首の底屈動作(つま先が垂れ下がる方向に曲がること)、および背屈動作(つま先が持ち上がる方向に曲がること。)の双方が阻止され、垂下足を矯正することが可能となっている。
【0007】
しかしながら、足首関節を強固に固定し、底屈動作と背屈動作の双方が阻止されてしまうと、足首の関節がほとんど動けない状態となり、歩行が不自然となる欠点を有している。特に、歩行訓練を開始する急性期、回復期の患者にとっては、このような短下肢装具を装着しての訓練では、逆に回復の妨げとなる可能性があった。
【0008】
そのため、同じく特許文献1には、図6に示すように、歩行時における足首の底屈動作と背屈動作を可能とする短下肢装具301が提案されている。即ち、足底板部302と下腿装着部305を、連結軸336を介して揺動可能に連結し、下腿装着部305の背には縦方向にスプリング337が設けられている。そして、足底板部302の踵部310に取り付けられたスライダー338によってスプリング337を押圧可能となっている。したがって、足首が底屈方向に動くと、スライダー338がスプリング337を押し縮め、このスプリング337の弾性復元力によって、底屈方向の動きが抑制されることになる。
【0009】
また、特許文献2には、図7に示すように、下腿に装着される下腿装着部405、足底に装着される足底板部402、ダンパー439、および連結軸436を備えた短下肢装具401が開示されている。
【0010】
具体的には、ダンパー439の可動端に取り付けられたガイドブロック440とリンク441を備え、さらに短下肢装具401が患者に装着されたときに患者の前後方向に伸びるガイドレール442を有している。また、リンク441はその下端が足底板部402に固定されており、上端がガイドレール442にスライド可能に係合されている。このような連結機構において、足底板部402の揺動に連動してガイドレール442に係合しているリンク441が、ガイドブロック440を下腿の長手方向に沿って直線的に動かすことにより、下腿装着部405に固定されているダンパー439が機能し、踵が地面に設置した後の足の底屈動作を補助することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−103443号公報
【特許文献2】特開2011−98014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に記載の短下肢装具においては、スプリングが脹脛添体の後方に取り付けられていることから、歩行の障害となる可能性がある。特に階段を下りる際には、階段にこのスプリングが当たり、転倒の危険性が懸念される。また、スプリングを有することにより、総重量が重くなるとともに、全体的な見栄えも必ずしも良いものとは言えない。
【0013】
また、短下肢装具は、歩行時の人体荷重を最も受ける装具であり、一定以上の強度が必要となる。この点、特許文献1に開示の合成樹脂製の短下肢装具では、足底部と脹脛添体(下腿部)が分割方式となっているため、強度が不足し、長年の使用に伴う形状変形、および破断が懸念される。
【0014】
一方、特許文献2に記載の短下肢装具においては、リンク機構を含む連結機構、ダンパー、およびバネユニットから構成され、これら装置が短下肢装具に内蔵されていることから、全体としての外形が大きくなるとともに、構造が複雑化し、総重量も重いものとなっている。
【0015】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、軽量かつ高強度でありながら、足首の底背屈運動が可能であり、適正な歩行を支援する短下肢装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の短下肢装具は、足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、前記足内連結部の直上において、前記足内支持部に固定されるホルダ部と、一端が前記足外連結部の直上において前記足外支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体とを備える。
【0017】
ここで、下腿装着部に対して、足外支持部、および足内支持部が揺動可能であるため、底屈動作と背屈動作の双方が可能となり、健常に近い歩行を実現することができる。
【0018】
また、下腿装着部と足外支持部が、足外踵関節に対応する位置において連結されていることにより、底屈動作と背屈動作の動きに対応して短下肢装具が揺動するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0019】
また、下腿装着部と足内支持部が、足内踵関節に対応する位置において連結されていることにより、底屈動作と背屈動作の動きに対応して短下肢装具が揺動するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0020】
また、足内連結部の直上において、足内支持部に固定されるホルダ部と、一端が足外連結部の直上において足外支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体とを有することにより、患者の病態の変化に応じて、底屈範囲、および背屈範囲を自由に変更することが可能となる。
【0021】
また、足外連結部、および足内連結部から下腿装着部を分離することができるため、足底板部、足外支持部、および足内支持部からなるセミ短下肢装具としても使用することができる。したがって、1つの短下肢装具で、患者の病態の変化に応じて使用する短下肢装具を使い分けることができる。
【0022】
また、短下肢装具を構成する足底板部、足外支持部、足内支持部、下腿装着部がカーボン素材から構成されているため、軽量でありながら、強度も高く、見栄えのよいものとなっている。特に、短下肢装具の全体の厚さを薄肉とすることができるため、短下肢装具を装着した状態であっても、健常者用の靴を履くことも可能となる。
【0023】
上記の目的を達成するために、本発明の短下肢装具は、足底を載せ、前足部、中足部、踵部を有するカーボン素材の足底板部と、該足底板部の足外側面に立設するカーボン素材の足外支持部と、前記足底板部の足内側面に立設し、前記足外支持部と対向配置されたカーボン素材の足内支持部と、下腿部に装着されるカーボン素材の下腿装着部と、足外踝関節に対応する位置において、前記足外支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足外連結部と、足内踝関節に対応する位置において、前記足内支持部と前記下腿装着部を揺動可能に連結する足内連結部と、前記足外連結部の直上において、前記足外支持部に固定されるホルダ部と、一端が前記足内連結部の直上において前記足内支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体とを備える。
【0024】
ここで、下腿装着部に対して、足外支持部、および足内支持部が揺動可能であるため、底屈動作と背屈動作の双方が可能となり、健常に近い歩行を実現することができる。
【0025】
また、下腿装着部と足外支持部が、足外踵関節に対応する位置において連結されていることにより、底屈動作と背屈動作の動きに対応して短下肢装具が揺動するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0026】
また、下腿装着部と足内支持部が、足内踵関節に対応する位置において連結されていることにより、底屈動作と背屈動作の動きに対応して短下肢装具が揺動するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0027】
また、足外連結部の直上において、足外支持部に固定されるホルダ部と、一端が足内連結部の直上において足内支持部に固定され、他端が前記ホルダ部に連係するベルト体とを有することにより、患者の病態の変化に応じて、底屈範囲、および背屈範囲を自由に変更することが可能となる。
【0028】
また、足外連結部、および足内連結部から下腿装着部を分離することができるため、足底板部、足外支持部、および足内支持部からなるセミ短下肢装具としても使用することができる。したがって、1つの短下肢装具で、患者の病態の変化に応じて使用する短下肢装具を使い分けることができる。
【0029】
また、短下肢装具を構成する足底板部、足外支持部、足内支持部、下腿装着部がカーボン素材から構成されているため、軽量でありながら、強度も高く、見栄えのよいものとなっている。特に、短下肢装具の全体の厚さを薄肉とすることができるため、短下肢装具を装着した状態であっても、健常者用の靴を履くことが可能となる。
【0030】
また、足外連結部と足内連結部の回転中心が略同軸上に位置する場合には、下腿装着部に対する足外支持部、および足内支持部の揺動が安定するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0031】
また、ベルト体が、背屈動作の可動範囲を規制する第1のベルト体と、底屈動作の可動範囲を規制する第2のベルト体とを有する場合には、背屈動作と底屈動作のそれぞれについて可動範囲を変更することができる。したがって、患者の病態の変化に応じて、底屈範囲を広く(狭く)、または背屈範囲を広く(狭く)設定することが可能となる。
【0032】
また、足底部について、中足部の厚みを、踵部および前足部の厚みよりも相対的に厚い厚肉部とする場合には、足底板部全体において撓みをもたせることができる。したがって、歩行時の着地、および蹴りだしの衝撃を緩和しつつ高い安定性を実現することができる。
【0033】
また、足外連結部、または足内連結部は、足外支持部、または足内支持部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、下腿装着部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、ナット部に螺合するボルト部とを有する場合には、短下肢装具の揺動に伴うボルト部とナット部の緩みを緩み防止部により確実に防止することができる。
【0034】
即ち、第1の凸柱部と第2の凸柱部がそれぞれ断面略多角形であるため、ナット部と緩み防止部が嵌合した状態では、ボルト部とナット部の同一方向への共回りが規制される。したがって、短下肢装具が揺動しても、ナット部がボルト部から抜け出るのを防止することができる。
【0035】
また、足外連結部、または足内連結部は、下腿部に当接する第1の平板部の略中央であって、内形が断面略多角形の貫通孔が形成された第1の凸柱部を有する緩み防止部と、足外支持部、または足内支持部に当接する第2の平板部の略中央であって、雌ネジが螺設され、外形が前記第1の凸柱部に嵌合可能な断面略多角形の第2の凸柱部を有するナット部と、第1の凸柱部に貫通可能であるとともに、ナット部に螺合するボルト部とを有する場合には、短下肢装具の揺動に伴うボルト部とナット部の緩みを緩み防止部により確実に防止することができる。
【0036】
即ち、第1の凸柱部と第2の凸柱部がそれぞれ断面略多角形であるため、ナット部と緩み防止部が嵌合した状態では、ボルト部とナット部の同一方向への共回りが規制される。したがって、短下肢装具が揺動しても、ナット部がボルト部から抜け出るのを防止することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る短下肢装具は、軽量かつ高強度でありながら、足首の底背屈運動が可能であり、適正な歩行を支援することができるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る短下肢装具の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る短下肢装具の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る短下肢装具の下腿装着部と足外支持部、および足内支持部の連結状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る短下肢装具をカットダウンしたセミ短下肢装具の斜視図である。
図5】従来技術を示す図である。
図6】従来技術を示す図である。
図7】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、短下肢装具に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図においては、説明の便宜上、患者が短下肢装具101を設置した状態において、足底面から下腿部に向かう方向を上方向と定義し、上方向の反対方向を下方向と定義する。
【0040】
まず、本発明を適用した実施形態に係る短下肢装具101の全体構成について、図1、および図2を用いて説明する。短下肢装具101は、足底を載置する足底板部102、足側を支持する足外支持部103、足内支持部104、および下腿部に装着する下腿装着部105aを有するとともに、短下肢装具101を患者の足に固定するためのバンド106a、106bを備えている。
【0041】
足底板部102の、足載置部107は、略0.3mm厚のカーボンシートを積層したものであり、主に前足部108、中足部109、踵部110から構成されている。中足部109は、前足部108、および踵部110に比べて、その厚さが厚肉に構成されている。具体的には、中足部109は0.3mm厚のカーボンシートを5枚積層し、全体の厚さを1.5mmとした。一方、前足部108、および踵部110は0.3mm厚のカーボンシートを3枚積層し、0.9mmとした。これにより、足載置部107は、中足部109を中心として長さ方向に撓んだ形状となる。
【0042】
ここで、必ずしも、足載置部107は撓み形状とする必要はない。前足部108、中足部109、踵部110を均一な厚さとしてもよい。ただし、撓み形状とすることにより、歩行時の着地、および蹴りだしの衝撃を緩和しつつ高い安定性を実現し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0043】
また、必ずしも、前足部108、中足部109、踵部110の厚みは、前記した数値に限定されるものではない。例えば、前足部108、中足部109、踵部110の各厚みを前記した厚みよりも薄肉に、または厚肉に形成してもよい。ただし、足載置部107の厚みを1.5mmよりも厚肉とすると、健常者用の靴を履くことが困難となる。また、足載置部107は患者の荷重が最もかかる部位であるため、厚みを0.9mmよりも薄肉とすると、強度が保てず、経年劣化による破断の可能性が高まる。
【0044】
また、必ずしも、足載置部107を撓み形状とする場合において、前足部108と踵部110の厚みを均一にする必要はない。例えば、前足部108の厚みを1.2mm、踵部110の厚みを0.9mm、または前足部108の厚みを0.9mm、踵部110の厚みを1.2mmとしてもよい。これらは、患者の体格、病態に応じて適宜変更することができる。
【0045】
足底板部102の裏面(床面設置面)は、合成ゴムを圧着した図示しないアウターソールが形成され、歩行時の床面設置音を軽減するようになっている。
【0046】
足底板部102の足外側面111、および足内側面112には、0.3mm厚のカーボンシートを8枚積層(2.4mm厚)した足外支持部103、および足内支持部104が上方向に向けて脹脛の直下位置に達する高さまで、互いに対向して立設されている。
【0047】
ここで、必ずしも、足外支持部103、および足内支持部104の高さは脹脛の直下である必要ない。ただし、後述するように、本発明の短下肢装具101は下腿装着部105aを取り外すことで、セミ短下肢装具136としても使用することが可能となる。その場合、セミ短下肢装具136として機能させるためにも、足外支持部103、および足内支持部104の高さ位置は脹脛の直下であることが好ましい。
【0048】
また、必ずしも、足外支持部103、および足内支持部104の厚みは2.4mm厚である必要はない。例えば、2.4mmよりも厚肉、または薄肉に形成してもよい。ただし、2.4mm厚よりも厚肉に形成した場合、短下肢装具101全体として大型化し、重量が重くなるとともに、カーボンシートの多用によるコストアップが懸念される。一方、2.4mm厚よりも薄肉に形成した場合には、経年劣化による破断が懸念される。
【0049】
足外支持部103、および足内支持部104の踝近傍に対応する位置には、下腿装着部105aと連結される直径略10mmの取付孔113aが同軸上に上下方向に複数形成されている。
【0050】
ここで、必ずしも、足外支持部103に形成された取付孔113aと足内支持部104に形成された取付孔113aは同軸上に形成されている必要はない。ただし、足外支持部103に形成された取付孔113aと足内支持部104に形成された取付孔113aが同軸上に位置することにより、下腿装着部105aに対する足外支持部103、および足内支持部104の揺動が安定するため、使用感が向上し、健常に近い歩行を実現することができる。
【0051】
また、必ずしも、取付孔113aは上下方向に複数形成されている必要はない。ただし、取付孔113aが上下方向に複数形成されている場合には、下腿装着部105aの足外支持部103、および足内支持部104への取付位置を可変に設定できるため、ユーザーの体格に合わせて、その連結位置を適宜変更することが可能となる。
【0052】
足外支持部103、および足内支持部104の上方向先端には、ホルダ部114とベルト体115を有している。
【0053】
ベルト体115は、4〜5cm程度の幅広で所定の長さを有する可撓性ベルト部材であり、ユーザーの足に装着した際に、底屈動作の可動範囲を規制する第1のベルト体115aと、背屈動作の可動範囲を規制する第2のベルト体115bから構成されている。この第1のベルト体115a、および第2のベルト体115bは、一端側が自由端とし、他端側が足外支持部103にリベット117等の公知の固定手段により固定されている。
【0054】
ここで、必ずしも、ベルト体115は第1のベルト体115aと第2のベルト体115bから構成されている必要はない。例えば、第1のベルト体115a、および第2のベルト体115bの何れか一方のみを有していてもよい。これらは、ユーザーの病態、およびリハビリ訓練の用途、状況等に応じて適宜選択することができる。
【0055】
ホルダ部114は、ベルト体115を締付させるための締付具であり、例えば、ステンレス等の金属で成形され、第1のベルト体115の自由端が連係する第1の締付金具116aと、第2のベルト体115の自由端が連係する第2の締付金具116bが足内支持部104にリベット117等の公知の固定手段により固定されている。
【0056】
第1の締付金具116a、および第2の締付金具116bには、第1のベルト体115a、および第2のベルト体115bの自由端が挿通可能な第1の挿通孔部118a、第2の挿通孔部118bが形成されている。第1のベルト体115a、および第2のベルト体115bの自由端を、これら第1の挿通孔部118a、および第2の挿通孔部118bに挿通して先端側を折り返し、面ファスナー119により着脱自在に係止される。
【0057】
この時、面ファスナー119の係止位置を変更することが可能である。したがって、第1のベルト体115aの係止位置を変更することで、背屈動作の可動範囲を変更することができる。一方、第2のベルト体115bの係止位置を変更することで、底屈動作の可動範囲を変更することができる。
【0058】
ここで、必ずしも、第1の締付金具116a、および第2の締付金具116bはステンレス等の金属で形成されている必要はない。例えば、合成樹脂等で構成されていてもよい。
【0059】
また、必ずしも、第1のベルト体115aと第2のベルト体115bの係止位置は、可変位置で着脱自在である必要はない。例えば、所定の固定位置に係止されるように構成されていてもよい。ただし可変位置で着脱自在であることにより、ユーザーの病態、およびリハビリ訓練の用途、状況等に応じて係止位置を適宜選択することができるため、第1のベルト体115aと第2のベルト体115bの係止位置は、可変位置で着脱自在であることが好ましい。
【0060】
また、必ずしも、ベルト体115、およびホルダ部114はそれぞれ足外支持部103、および足内支持部104に固定されている必要はない。例えば、ベルト体115を足内支持部104に、ホルダ部114を足外支持部103に固定されていてもよい。これらは、使用するユーザーの好みに応じて適宜変更することができる。
【0061】
下腿装着部105aは前方支持式であり、背面側を開放した横断面略U字状で、下腿部の前面に当接する下腿前面当接部120と、両側面に当接する下腿側面当接部121が一体形成されている。なお、下腿装着部105aも0.3mm厚のカーボンシートを8枚積層(2.4mm厚)して形成されている。
【0062】
バンド106bは7〜8cm程度の幅広で所定の長さを有する可撓性ベルト部材である。このバンド106bは、一端側が自由端とし、他端側が下腿背面当接部122の一側面にリベット117等の公知の固定手段により固定され、ユーザーの下腿部に巻装して、面ファスナー119により適度な位置で締付することができる。
【0063】
ここで、必ずしも、下腿装着部105aは下腿部の前面を支持する前方支持式である必要はない。例えば、図2(b)で示すように、下腿部の背面に当接する下腿背面当接部122を有し、前面側が開放された後方支持式の下腿装着部105bであってもよい。
【0064】
下腿側面当接部121の先端には、足外支持部103、および足内支持部104に形成された取付孔113aに重合する取付孔113bが形成されている。
【0065】
下腿装着部105aと足外支持部103は足外連結部137を介して揺動可能に連結され、下腿装着部105aと足内連結部104は足内連結部138を介して揺揺動可能に連結される。具体的には、足外支持部103、および足内支持部104に形成された取付孔113aと下腿装着部105aの下腿側面当接部121に形成された取付孔113bを重合した状態で、図3に示すように、ボルト123、ナット124、緩み防止部125を挿通して固定される。
【0066】
ボルト123は頭部126が皿ネジで六角レンチにより回転可能な六角孔127が形成されており、雄ネジ128は、例えばそのピッチが略0.5mmピッチに形成されている。
【0067】
緩み防止部125は、頭部129が平板状の円盤で、頭部129の外側面がボルト123の頭部126の裏面が嵌合する凹部130が形成されている。この頭部129の裏面の略中央部には、内形が断面略四角形の貫通孔131が形成され、外径が円柱状の第1の凸柱部132を有している。
【0068】
ナット124は、頭部133が平板状の円盤で、この頭部133の裏面の略中央部には、第1の凸柱部132に嵌合可能な断面略四角形の第2の凸柱部135を有している。この第2の凸柱部135の内周には、ボルト123が螺合可能な雌ネジ134が螺設されている。
【0069】
このようなボルト123、ナット124、緩み防止部材125の具体的な取付方法としては、取付孔113aと取付孔113bを重合させた状態で、一方の側面から緩み防止部125の第1の凸柱部132を取付孔113aと取付孔113bに挿入する。また、他方の側面からナット124の第2の凸柱部135を第1の取付孔113aと取付孔113bに挿入するとともに、第1の凸柱部132に嵌合させる。さらに、緩み防止部125の頭部129の外側面からボルト123の雄ネジ128を挿入し、図示しない六角レンチを用いてナット124の雌ネジ134に螺合し、締め付け固定する。
【0070】
ここで、必ずしも、下腿装着部105aと足外支持部103、および足内支持部104の連結は、上記したボルト123、ナット124、緩み防止部125により固定する必要はない。例えば、ボルト123、およびナット124のみにより固定してもよい。ただし、ユーザーが短下肢装具101を装着した状態で歩行を続けると、特に下腿装着部105a、足外支持部103、および足内支持部104の連結軸には前進方向、左右方向の大きな負荷が発生するが、緩み防止部125を用いることにより、ボルト123、ナット124の共回りを規制し、長年使用によるボルト123とナット124の緩みを未然に防止することができる。
【0071】
また、必ずしも、第1の凸柱部132の内形、および第2の凸柱部135の外形は断面略四角形である必要はない。ボルト123とナット124の共回りを規制することができればよく、例えば、四角形以外の三角形、または五角形等の多角形体であればよい。
【0072】
このように、下腿装着部105aと足外支持部103、および足内支持部104の連結は六角レンチにより簡単に着脱可能である。したがって、例えば、ユーザーの病態に合わせて、短下肢装具101をカットダウンして図4に示す状態、即ちセミ短下肢装具136として使用することも可能である。なお、セミ短下肢装具136として使用する場合も、ベルト体115、およびホルダ部114を有するため、背屈、および背屈の可動範囲を任意に選択することができるため、実用性が向上する。
【0073】
以上、本発明を適用した短下肢装具においては、軽量かつ高強度でありながら、足首の底背屈運動が可能であり、適正な歩行を支援することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0074】
101、201、301、401 短下肢装具
102、202、402 足底板部
103 足外支持部
104 足内支持部
105a、105b、205、305、405 下腿装着部
106a、106b バンド
107 足載置部
108 前足部
109 中足部
110、310 踵部
111 足外側面
112 足内側面
113a、113b 取付孔
114 ホルダ部
115 ベルト体
115a 第1のベルト体
115b 第2のベルト体
116a 第1の締付金具
116b 第2の締付金具
117 リベット
118a 第1の挿通孔部
118b 第2の挿通孔部
119 面ファスナー
120 下腿前面当接部
121 下腿側面当接部
122 下腿背面当接部
123 ボルト
124 ナット
125 緩み防止部
126、129、133 頭部
127 六角孔
128 雄ネジ
130 凹部
131 貫通孔
132 第1の凸柱部
134 雌ネジ
135 第2の凸柱部
136 セミ短下肢装具
137 足外連結部
138 足内連結部
336、436 連結軸
337 スプリング
338 スライダー
439 ダンパー
440 ガイドブロック
441 リンク
442 ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7