【文献】
SUHENDI,A. et al.,Self-Assembly of Colloidal Nanoparticles Inside Charged Droplets during Spray-Drying in the Fabrication of Nanostructured Particles,Langmuir,米国,ACS Publications,2013年 9月25日,Vol.29,pp.13152-13161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
〔製造する中空粒子〕
本発明で製造する中空粒子について説明する。
図1(a)に示す中空粒子は、第1発明で製造する中空粒子3Aの一例であり、
図1(b)に示す中空粒子は、第2発明で製造する中空粒子3Bの一例であり、
図1(c)に示す中空粒子は、第3発明で製造する中空粒子3Cの一例である。
図1(a)〜
図1(c)に示すように、本発明(第1〜第3発明)で製造する中空粒子3(3A〜3C)は、何れも、中空部32、及び該中空部32を取り囲む球状の外殻部33を有している。なお、以下、第1〜第3発明で製造される中空粒子3A〜3Cに共通する事項については、中空粒子3A〜3Cを包含する中空粒子3という用語を用いて説明する。
【0013】
中空粒子3(中空粒子3A〜3C)は、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下であり、且つ空孔率が5体積%以上70体積%以下である。
本発明は、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下の微小な中空粒子3を製造できる点において優れている。平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)等による観察像から計測された粒子径であって、50個以上の粒子が観察できる任意倍率での視野中に存在する中空粒子3の直径の数平均値をいう。平均粒子径は用途等を考慮して適宜調整しうるが、より好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、更に好ましくは0.3μm以上3μm以下である。
また製造する中空粒子3は、中空の粒子であり、空孔率が5体積%以上である。空孔率が5体積%以上であることによって、中空であることによる種々の有利な効果が得られ、中空粒子と言える。他方、空孔率が70体積%以下であることによって、種々の利用に耐え得る強度をもった中空粒子となる。中空粒子3の空孔率は、より好ましくは7体積%以上50体積%以下であり、更に好ましくは10体積%以上40体積%以下である。
【0014】
第1発明で製造する中空粒子3Aは、細孔容積が0.1cm
3/g以上5cm
3/g以下であり、外殻部33に高分子成分34を1質量%以上50質量%以下含んでいる。
中空粒子3Aは、細孔容積が0.1cm
3/g以上、より好ましくは0.2cm
3/g以上であることによって、外殻部33の内部と外部の物質透過性が高くなるため、揮散制御基材として揮散性に優れたものとなり、また、細孔容積が5cm
3/g以下、より好ましくは2cm
3/g以下であることによって、過度に外殻部33が低密度にならないため、粒子の強度に優れたものとなる。
また中空粒子3Aは、外殻部33に高分子成分34を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上含むことによって、高分子成分34が、外殻部33を形成する金属酸化物粒子を結合するバインダーとして機能し、また、その高分子成分により粒子の外殻部33は、軟性熱や溶媒による崩壊性に優れたものとなる。また外殻部33に高分子成分34を50質量%以下、より好ましくは30質量%以下含むことによって、外殻部33は金属酸化物粒子が高濃度に充填され、強度に優れたものとなる。
中空粒子3の平均粒子径、空孔率、細孔容積、及び高分子成分の含有率の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0015】
第1発明で製造される中空粒子3Aは、高分子成分による柔軟性、外殻部の溶媒や熱による崩壊性等の一又は二以上の有利な性質を有しており、それらの一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、中空部32に各種機能成分を内包し、外部環境に応じて機能成分を徐放するようなドラッグデリバリー基材として用いることができ、また、樹脂フィルムや塗料用組成物に配合して、それらの膜材料に中空部に充填した空気相や各種機能成分を付与する充填剤等として用いることができる。第1発明で製造される中空粒子3Aの用途は、上述した用途に制限されるものではない。
【0016】
第2発明で製造する中空粒子3Bは、細孔容積が0.1cm
3/g以上5cm
3/g以下であり、外殻部33の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、外殻部33のメソ細孔の平均細孔径が1nm以上100nm以下である。
中空粒子3Bは、細孔容積が0.1cm
3/g以上、より好ましくは0.2cm
3/g以上であることによって、外殻部33の内部と外部の物質透過性が高くなるため、揮散制御基材として揮散性に優れたものとなり、また、細孔容積が5cm
3/g以下、より好ましくは2cm
3/g以下であることによって、過度に外殻部33が低密度にならないため、粒子の強度に優れたものとなる。
中空粒子3Bは、外殻部33の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、高温下で熱分解しやすい有機物の含有量が低いことによって、耐熱性に優れたものとなる。外殻部33の高分子成分の含有率の下限値はゼロである。
また、外殻部33のメソ細孔の平均細孔径が1nm以上、より好ましくは10nm以上であることによって、各種成分の粒子内部への浸透性、内部に浸透させた成分の徐放性、物理的な衝撃による崩壊性に優れたものとなり、また、メソ細孔の平均細孔径が100nm以下、より好ましくは50nm以下であることによって、外殻部33が高密度となり中空粒子3Bが強度に優れたものとなる。
【0017】
第2発明で製造される中空粒子3Bは、中空部に各種の成分を封入可能であることに加えて、徐放性又は物理的な衝撃による崩壊性を有すること、耐熱性を有すること等の一又は二以上の有利な性質を有しており、それらの一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、医薬品、香料成分、機能性成分の徐放剤として用いることができる。第2発明で製造される中空粒子3Bの用途は、上述した用途に制限されるものではない。
【0018】
第3発明で製造する中空粒子3Cは、細孔容積が0.1cm
3/g以下であり、外殻部33の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、外殻部33のメソ細孔の平均細孔径が1nm以下であり、BET比表面積が20
m2/g以下である。
中空粒子3Cは、細孔容積が0.1cm
3/g以下であることによって、外殻部33の内部と外部の物質透過性が低くなるため、気密性に優れたものとなる。細孔容積の下限値はゼロである。
また中空粒子3Cは、外殻部33の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、高温下で熱分解しやすい有機物の含有量が低いことによって、耐熱性に優れたものとなる。外殻部33の高分子成分の含有率の下限値はゼロである。
また中空粒子3Cは、外殻部のメソ細孔の平均細孔径が1nm以下であることによって、各種成分の粒子内部への浸透抑制性能、外殻部33が金属酸化物により高密度化することで物理的な衝撃に対する強度に優れたものとなる。
中空粒子3の、外殻部のメソ細孔の平均細孔径及びBET比表面積の測定方法は、後述する実施例において説明する。
【0019】
第3発明で製造される中空粒子3Cは、外殻部33の内側に溶融樹脂が浸透しないか又は浸透しにくく高気密性を有することや、高強度、耐熱性を有すること等の一又は二以上の有利な性質を有している。それらの一又は二以上を活かして種々の用途に用いることができる。例えば、樹脂用の充填剤として用いられ、成形体に、低誘電率性、低比重性、光拡散性又は反射防止性といった性能を付与することができる。中空粒子3Cが配合された樹脂製シートは、CPU等のパッケージ基板等に使用される層間絶縁膜として好ましく用いられる。第3発明で製造される中空粒子3Cの用途は、上述した用途に制限されるものではない。
【0020】
〔中空粒子の製造方法〕
中空粒子3Aを製造する第1発明の中空粒子の製造方法について説明する。
第1発明の中空粒子の製造方法は、粒子径が10nm以上200nm以下の金属酸化物粒子と高分子化合物を含む原料液を静電噴霧し、生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する。原料液としては、高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液に、金属酸化物粒子が分散したものが好ましく用いられる。また本発明の課題を解決できる種類及び量の範囲内において、公知の充填剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、シランカップリング剤、無機粒子、樹脂粒子、架橋剤、電解質、酸・塩基、香料、油性成分、ワックス、蓄熱材、医薬成分等を配合することができる。
静電噴霧工程においては、
図2に示すように、静電噴霧により噴霧された帯電した液滴31が、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって小径の液滴31Aが生じるとともに、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の金属酸化物粒子35及び高分子成分34の濃度が高まる。そして、更に乾燥が進むことによって、表面近傍に金属酸化物粒子35及び高分子成分34からなる被膜33Aを有する粒子37が生じる。この被膜33Aが形成された粒子37の内部の溶媒が蒸発することによって、中空部32及び外殻部33を有する微小な中空粒子3Aが得られる。
【0021】
中空部32を有する微小な中空粒子3Aを得るためには、被膜33Aが形成されるタイミングが重要である。例えば、静電噴霧により噴霧した直後の液滴に被膜が形成されると、その後の分裂が阻害され、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子が得られにくくなる。
他方、静電噴霧により噴霧した液滴が、レイリー分裂を繰り返して微粒子化しても被膜が形成されないと、平均粒子径が10μm以下の微小粒子とはなるものの、
図2(e)に示すように、中空部を有しない中実粒子38となり易くなる。
【0022】
被膜の形成のタイミングを適正なものとして微小な中空粒子3Aを効率よく生じさせる観点から、本発明においては、原料液に含ませる金属酸化物粒子の粒子径を10nm以上としている。金属酸化物粒子の粒子径が10nm未満であると、
図3(a)に示すように、表面Sからの溶媒の蒸発に伴う液滴の半径の減少速度に対して、同等以上の速度で金属酸化物粒子35が液滴31の中心方向cへと拡散し易くなるため、液滴31の表面近傍の金属酸化物粒子の濃度が高くなりにくく、その結果、外殻部33となる被膜33Aが形成されにくい。他方、金属酸化物粒子の粒子径を10nm以上、特に20nm以上とすると、
図3(b)に示すように、表面Sからの溶媒の蒸発に伴う液滴の半径の減少速度に対して、金属酸化物粒子35の、液滴31の中心方向cへの拡散速度が遅くなり易く、外殻部33となる被膜33Aが形成されやすくなる。
金属酸化物粒子の粒子径が200nm超であると、静電噴霧後、早い段階で被膜が形成されやすくなり、レイリー分裂や表面からの蒸発が抑制されて、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子が得られにくくなる。
このように、噴霧後に被膜33Aが形成されるタイミングが遅くなると中実粒子になり易くなり、噴霧後に被膜33Aが形成されるタイミングが早すぎると微小な粒子が得られにくくなるため、微小な中空粒子を得るためには、噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜が形成されるようにする。
【0023】
平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子を得る観点から、原料液に含ませる金属酸化物粒子35は、粒子径が10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
同様の観点から、原料液中の金属酸化物粒子35の含有率(質量%)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下であり、また好ましくは5%以上40%以下、より好ましくは10%以上20%以下である。
ここでいう金属酸化物粒子の粒子径は、溶媒中で分散した状態の金属酸化物のメジアン径を意味し、具体的には金属酸化物の分散液を粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、粒子径分布測定装置 SZ―100など)で測定されたメジアン径の値を用いることとする。
【0024】
被膜の形成のタイミングに影響する因子としては、上述した金属酸化物粒子35の粒径の他に、原料液の粘度、原料液を噴霧する環境条件、溶媒の揮発のしやすさ等が挙げられる。これらの因子は、静電噴霧された液滴がレイリー分裂により適度に微粒子化した段階で被膜が形成されるように適宜に調整する。
【0025】
金属酸化物粒子の金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化カルシウム、或いは酸化インジウム錫などの複合酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してよい。入手の容易性や中空構造の制御の点からは酸化ケイ素又は酸化チタンを用いることが好ましい。
【0026】
原料液に含ませる高分子化合物は、有機高分子であり、水溶性高分子でも良いし、非水溶性高分子でも良い。また天然高分子でも合成高分子でも良い。
原料液に含ませる高分子化合物は、第1発明においては、製造する中空粒子3Aの外殻部を金属酸化物粒子と共に構成する高分子成分となり、また、第2及び第3発明においては、中空粒子3B,3Cの製造途中に生じる粒子の外殻部を金属酸化物粒子と共に構成する高分子成分となる。第1〜第3発明で製造する中空粒子に関し、外殻部の高分子成分は、有機化合物である高分子成分である。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、キトサン、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、ゼラチン、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。非水溶性高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等が例示できる。
用いられる高分子化合物は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した高分子化合物から任意の複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0027】
原料液に、高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液を用いる場合、該溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン等を例示することができる。用いる溶媒は1種類に限定されるわけではなく、前記例示した溶媒から任意の複数種類を選定し、混合して用いても構わない。
【0028】
特に溶媒として水又は水を50質量%超含むものを用いる場合は、前述した各種の水溶性高分子のような水溶性高分子を用いるのが好適である。水溶性高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性高分子の中でも、水溶性多糖類又は水溶性多糖類誘導体が好適である。水溶性多糖類誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースが特に好適である。水を50質量%超含む溶媒としては、水とアルコール類(メタノール、エタノール等)との混合物が挙げられる。
原料液中の高分子化合物(高分子成分)の含有率(質量%)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下であり、また好ましくは5%以上30%以下、より好ましくは10%以上25%以下である。
【0029】
静電噴霧する原料液の粘度は、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子を得る観点から、好ましくは10mPa・s以上500mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以上350mPa・s以下である。
原料液には、金属酸化物粒子及び高分子化合物に加えて、公知の充填剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、シランカップリング剤、無機粒子、樹脂粒子、架橋剤、電解質、酸・塩基、香料、油性成分、ワックス、蓄熱剤、医薬成分等を配合することができる。原料液の粘度の測定方法は、実施例において後述する。
【0030】
噴霧後、捕集面に到達するまでの間の適切なタイミングで被膜33Aが形成されるようにして、平均粒子径が10μm以下の微小な中空粒子3Aを得る観点から、液滴31を乾燥させる気相の露点温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、さらに好ましくは-20℃以上であり、また好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下であり、また好ましくは−50℃以上20℃以下、より好ましくは−30℃以上10℃以下、さらに好ましくは−20℃以上0℃以下である。
【0031】
図4には、本発明(第1〜第3発明)の静電噴霧工程に好ましく用いられる中空粒子の製造装置の一例の概略構成が示されている。
図4に示す中空粒子の製造装置1は、原料液である液体30を噴霧させる液体噴霧部2と、液体噴霧部2に対して、原料液である液体30を供給する原料液供給手段(図示せず)と、液体噴霧部2に対して圧縮空気4を供給する圧縮空気供給手段(図示せず)と、高電圧発生手段5と、液体噴霧部2に形成された液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。
液体噴霧部2は、原料液である液体30が通過する導電性金属製の金属細管21を備えた液体吐出ノズル22と、液体吐出ノズル22の一端に形成された液体吐出口23と、液体吐出口23の周囲から圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24と、圧縮空気を噴射する第2噴射口25とを備えている。第2噴射口25には、コロナ放電用の針電極26を設け、コロナ放電により生じた空気イオンを含むイオン搬送流を生じさせることもできる。
高電圧発生手段5は、導電性の金属細管21に高電圧を印加可能であるとともに、コロナ放電用の針電極26にもコロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能であり、導電性の金属細管及び針電極と前記対向電極との間に電位差を生じさせ得る。対向電極6は、接地されるか、又は液体吐出口23から噴霧された帯電粒子とは逆極性の電圧が印可される。
【0032】
製造装置1について更に説明すると、液体吐出ノズル22は、導電性の金属細管21自体から構成されている。金属細管21は、通直な直管であり、内部を原料液である液体30が流通可能になっている。金属細管21の内径は、例えば0.1mm以上1.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。金属細管21の外径は、例えば0.2mm以上2.0mm以下で、好ましくは0.3mm以上1.5mm以下である。金属細管21の内径及び外径をこの範囲内に設定することで、原料液である液体30を、容易に、かつ定量的に送液できるとともに、ノズル周辺の狭い領域に電界が集中し、原料液を効率よく帯電させられる。
【0033】
金属細管21及び液体吐出ノズル22は、液体噴霧部2のケース体20に、共通する中心軸が一方向Xに延在するように支持されており、液体吐出ノズル22の一端に開口する開口部が、液体吐出口23を形成している。液体噴霧部2の正面視において、液体吐出口23は円形であり、その周囲に、圧縮空気を噴出させる圧縮空気の第1噴射口24が形成されている。
第1噴射口24は、
図5に示すように、液体吐出口23を囲む環状に形成されていることが好ましいが、液体吐出口23の周囲に、複数個、好ましくは3個以上20個以下の第1噴射口24が、液体吐出口23を囲むように環状に配置されていても良い。
液体噴霧部2の正面視とは、液体吐出ノズル22の液体吐出口23をその正面から視た状態をいい、本実施形態の装置1においては、液体噴霧部2を、
図4における下側から視た状態である。
【0034】
第1噴射口24は、圧縮空気供給手段によって圧縮空気が供給される内部空間42と連通した第1流路24Aの一端部に形成されており、圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、第1流路24Aを通過した圧縮空気が、第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する。また、原料液供給手段は、液体吐出ノズル22に対して微粒子の原料液である液体30を定量的に供給することができる。第1噴射口24から微粒化用圧縮空気を噴出させつつ、液体吐出ノズル22に原料液である液体30を供給することによって、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。
図7には、液体吐出ノズル22の中心軸の延在方向Xが鉛直方向に一致し、第1流路24Aが液体吐出ノズル22の中心軸に沿って延在する例を示したが、本発明において、圧縮空気4や微粒化した液体3
0を噴射させる方向は、特に制限されず、鉛直方向の下方に代えて、水平方向、斜め上方、斜め下方等としても良い。また、第1流路24Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行でも良いし非平行でも良い。
【0035】
また、液体吐出ノズル22の液体吐出口23から離間した位置に、液体吐出口23と対向配置された対向電極6とを備えている。詳細には、対向電極6は、液体吐出ノズル22の液体吐出口23の開口の正面の位置において、液体吐出口23の開口に対面して配置されている。対向電極6は、金属等から構成されており導電性を有している。液体吐出ノズル22の先端と対向電極6との間の距離(最短距離)は、好ましくは200mm以上1500mm以下であり、また、より好ましくは300mm以上1000mm以下である。
【0036】
高電圧発生手段5は、
図4に示すように、液体吐出ノズル22の導電性の金属細管21と対向電極6との間に、高電圧を印加可能に構成されている。
図4に示す例では、液体吐出ノズル22の金属細管21に負電圧が印加されており、金属細管21が負極、対向電極6が接地されており、金属細管21と対向電極6との間には電界が生じる。なお、金属細管21と対向電極6との間に電界を生じさせるためには、
図4に示す電圧の印加の仕方に代えて、液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。また、対向電極6は必ずしも接地する必要は無く、金属細管21とは逆極性の電圧を印加するようにしてもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
【0037】
高電圧発生手段5には高圧電源装置などの公知の装置を用いることができる。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は1kV以上、特に5kV以上とすることが、液体吐出口23から噴霧される原料液の液滴を十分に帯電させ、液滴のレイリー分裂を促進する点から好ましい。金属細管21と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは1kV以上60kV以下、より好ましくは5kV以上50kV以下である。
【0038】
図4に示す製造装置1における液体噴霧部2は、圧縮空気を噴射する第2噴射口25を備えている。
製造装置1における第2噴射口25は、
図5に示すように、液体吐出口23の中心からの距離が、第1噴射口24よりも遠く、また、第1噴射口24から第2噴射口25までの距離L3が、液体吐出口23の中心から第1噴射口24までの距離L1よりも長くなっている。第2噴射口25は、
図5に示すように、少なくとも、液体吐出口23の挟む両側の位置に一対形成されていることが好ましい。また、第2噴射口25は、
図6に示すように、液体吐出口23の周囲に、液体吐出口23との間に間隔を設けて形成された傾斜面27に形成されている。傾斜面27は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端、液体吐出口23から遠い側に傾斜上端を有している。傾斜面27は、平面状であることが好ましいが、凸曲面又は凹曲面状であっても良い。第2噴射口25は、液体吐出口23を挟むように一対設けるのに代えて、液体吐出口23の周囲に均等に3個以上設けることもできる。
【0039】
第2噴射口25は、
図4及び
図7に示すように、第2噴射口25は、
図1及び
図4に示すように、遠位流路25A及び液体吐出ノズル22の中心軸に対して角度を有する傾斜流路25Bを介して、前述した内部空間42と連通している。圧縮空気供給手段によって内部空間42に圧縮空気4が供給されると、その一部が、前述したように、第1流路24Aを通って第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41として噴出する一方、他の一部が、遠位流路25A及び傾斜流路25Bを通って、第2噴射口25から噴射される。第1流路24A、遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、それぞれ内面が円筒状をなしていることが好ましい。
遠位流路25A及び傾斜流路25Bは、互いに連通して、第2噴射口25に空気を供給する連続流路を形成しており、遠位流路25Aは、傾斜流路25Bに比して第2噴射口25から遠い位置にある。
図7に示す遠位流路25Aは、液体吐出ノズル22の中心軸と平行に形成されているが、非平行であっても良く、また、傾斜流路25Bに対して角度を有する遠位流路25A自体が存在しなくても良い。
【0040】
また第2噴射口25には、コロナ放電を生じさせるための針電極26を設けることもできる。本実施形態の高電圧発生手段5は、針電極26にも、コロナ放電を生じさせるための高電圧を印加可能に構成されている。
図4に示すように、本実施形態においては、液体吐出ノズル22の金属細管21及び針電極26に、分岐させた金属導線51を介して、同極性の電圧が印加されるように構成されている。
針電極26は、その先端が、第2噴射口25から突出するように配置されていることが好ましい。針電極26は、遠位流路25A又は傾斜流路25Bの内面に固定されていても良く、また、遠位流路25Aの内面及び傾斜流路25Bの内面の何れにも接触しないように支持されていても良い。針電極26としては、放電用金属ワイヤ等を好ましく用いることができる。針電極として用いる放電用金属ワイヤの材質としては、タングステン、黄銅、銅、モリブデン等の導電性金属材料で腐食しにくいものが好ましい。また、針電極26は、圧縮空気の噴射に耐える強度を持ち、噴射を妨げない適度な太さであることが好ましく、例えば、針電極26の直径は、第2噴射口の口径の60%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。例えば第2噴射口の口径が0.5mmの場合0.2〜0.3mmが好ましい。針電極26は、先端を針状に尖らせて、放電し易くして用いる。なお、針電極26として、先端が尖った放電用金属ワイヤ等を用いる場合、針電極26の直径は、直径が最大の部位における直径とする。また、針電極26は、先端が尖っていない棒状体であっても良い。
【0041】
また、針電極26の第2噴射口25からの突出長さL5(
図7参照)は、コロナ放電の生じ易さの観点から、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また空気の流れを妨げる程度を減らし、液の付着を防止する観点から、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。
なお、遠位流路25Aや傾斜流路25Bが形成されている部材が導電体である場合、その部材に針電極26を融着し、その部材に高電圧発生手段5からの金属導線51等を接続しても良い。
【0042】
図4に示す例は、針電極26に、液体吐出ノズル22の金属細管21と同じ負電圧が印加した場合であるが、
図4に示す電圧の印加の仕方に代えて、針電極26及び液体吐出ノズル22の金属細管21に正電圧を印加するとともに、対向電極6を接地してもよい。高電圧発生手段5によって発生させる電圧は、直流電圧であることが好ましい。
【0043】
針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、15kV以上、特に20kV以上とすることが、コロナ放電により空気イオンを大量に生じさせる点から好ましい。一方、この電位差は60kV以下、特に50kV以下とすることが、装置の絶縁を過大にする必要がない点から好ましい。針電極26と対向電極6との間に加わる電位差は、好ましくは15kV以上60kV以下、より好ましくは20kV以上50kV以下である。
高電圧発生手段5は、液体吐出ノズル22の金属細管に電圧を印加する装置とは別に、針電極26に電圧を印加する装置を有していても良く、相互に異なる電圧を発生させる機能を備えた電源装置を用いて、液体吐出ノズル22の金属細管と針電極26とに独立して異なる電圧を印加しても良い。
本実施形態の製造装置1は、対向電極6の表面に、微粒子の捕集部7を備えている。微粒子の捕集部7は、導電性材料からなる対向電極6の表面であっても良いが、対向電極6の表面に、薄いフィルム等を被せて捕集部7として用いても良い。
【0044】
前述した製造装置1を用いて静電噴霧工程を実施するには、製造装置1の液体噴霧部2に、圧縮空気供給手段により圧縮空気を供給するとともに、定量送液ポンプ等の公知の原料液供給手段(図示せず)により液体噴霧部2に、原料液である液体30を供給する。圧縮空気の供給により、金属細管21の一端側に開口する液体吐出口23の周囲に位置する第1噴射口24から微粒化用圧縮空気41が噴出するとともに、第2噴射口25から圧縮空気が噴射される。
【0045】
この状態で、高電圧発生手段5を作動させて、微粒子の原料液である液体が通過する導電性の金属細管21及び針電極26に負電圧の直流高電圧を印加すると、金属細管21内を流れる液体30にマイナスの電荷が帯電し、その帯電した液体30が、液体吐出口23から、液体吐出口23の周囲から噴出された微粒化用圧縮空気41によって微粒化されて噴霧される。液体30は、噴霧により液滴となるとともに帯電した帯電液滴31となっている。
噴霧により生じた帯電液滴31は、第1噴射口24からの圧縮空気の噴射により生じた気流に乗り、また金属細管21と対向電極6に生じた電界に沿って対向電極6に向かって流れる。
【0046】
また、針電極26への負電圧の高電圧の印加により、針電極26からのコロナ放電で空気イオンが生じるとともに、第2噴射口25からの圧縮空気の噴射により、空気イオンを含む気流であるイオン搬送流45が生じる。イオン搬送流45中に含まれる空気イオンは、帯電液滴31と同じ極性であるマイナスに帯電している。
また第2噴射口25は、液体吐出口23に近い側に傾斜下端を有する傾斜面27に形成されており、空気イオンを含むイオン搬送流45は、
図7に示すように、前述した帯電液滴の流れFに対して、角度を付けて吹き付けられる。
コロナ放電で生じさせる空気イオン(負イオン)としては、例えば、O
2-(H
2O)
n ,O
3-(H
2O)
n ,NO
2-(H
2O)
n ,NO
3-(H
2O)
n ,CO
3-(H
2O)
n ,NO
3- ,NO
3-(HNO
3)
n ,NO
3-NO
3等が挙げられる。
【0047】
帯電液滴31と同じ極性に帯電した空気イオンを含むイオン搬送流45を、噴霧により生じた帯電液滴の流れFに吹き付けることによって、流れF中の帯電液滴31の帯電量が増加する。帯電量が増加する理由は、通常、帯電液滴と空気イオンは同極性であり、平行流ならば反発して合一することはないが、帯電液滴の流れFに角度をつけて高速の空気イオンを衝突させているので、帯電液滴に空気イオンが取り込まれ、その結果、帯電量が増加していると考えられる。
図2(a)〜
図2(d)に示すように、静電噴霧により噴霧された帯電した液滴31は、溶媒36の蒸発に伴いレイリー分裂することによって小径の液滴31Aを生じ、その液滴31Aの表面からも溶媒が蒸発して、表面近傍の金属酸化物粒子35及び高分子成分34の濃度が高まり、更に乾燥が進むことによって、第1発明において製造すべき前述した構成の中空粒子3Aが得られる。そして、その中空粒子3Aが捕集部7に捕集される。
捕集は、対向電極6を接地した状態、もしくは対向電極に、微粒子と逆極性の電圧、即ち微粒子がマイナスに帯電している場合はプラス、微粒子がプラスに帯電している場合はマイナスの電圧を印加した状態で行ってもよい。また針電極26を設置せずに、第2噴射口25から圧縮空気を噴射することも可能である。その際、噴射された気流は空気イオンを含まないため、帯電液滴31の帯電量が増加することはない。
【0048】
イオン搬送流45の吹き付けによる帯電量の増大を一層効果的に生じさせる観点から、イオン搬送流を生じさせるための圧縮空気を噴射する噴射口である第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとが、液体吐出口23からの距離Lが2〜6mmの範囲内において40〜80度の交差角度θ(
図7参照)で交差することが好ましい。
距離Lを2〜6mmの範囲内とすることにより、イオン搬送流45を、帯電液滴があまり拡散せず、空気イオンの濃度も高い状態で、帯電液滴の流れFに吹き付けることができ、帯電効率が高くなり、交差角度θを40〜80度の範囲内とすることにより、イオン搬送流45を帯電液滴の流れFに強く衝突させることができて帯電効率が高まるとともに、角度が大きすぎて液滴が広く飛散してしまうことも防止できる。
なお、第2噴射口25の中心軸25cと、液体吐出口23の中心軸23cとの交差は、中心軸どうしがねじれの位置にあっても該点Pにおいて交差しているとしてよい。液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする半径0.5mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することが好ましく、半径0.35mmの球殻の内部を第2噴射口25の中心軸25cが通過することがより好ましい。第2噴射口25の中心軸25cが液体吐出口23の中心軸23c上の点Pを中心とする前記半径の球殻の内部を通過していれば、該点Pにおいて交差しているとする。
【0049】
同様の観点から、第2噴射口25の中心軸25cと液体吐出口23の中心軸23cとは、液体吐出口23からの距離Lが3〜5mmの範囲内において45〜60度の交差角度θで交差することが更に好ましい。
液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出口23に隣接する液体30の流路の中心軸であり、該液体30の流路内に位置する部分に加えて、液体吐出口23から突出する、軸長方向への延長部分も含まれる。本実施形態における、液体吐出口23の中心軸23cは、液体吐出ノズル22の中心軸及びその軸長方向への延長部分と一致している。
第2噴射口25の中心軸25cは、第2噴射口25に隣接する流路、即ち前述した傾斜流路25Bの中心軸であり、該流路25B内に位置する部分に加えて第2噴射口25から突出する軸長方向への延長部分も含まれる。
【0050】
本発明における静電噴霧工程には、圧縮空気を併用しないエレクトロスプレー法を用いることもできるが、噴霧量を多くして中空粒子の生産効率を向上させる観点から、2流体ノズルを用いる方法により行うことが好ましい。2流体ノズルは、圧縮空気などの高速気体の流れを利用して液体を微粒化するものであり、テイラーコーンを生じさせる従来のエレクトロスプレー法に比して大量の液体を微粒化して噴霧することができる。
前述した製造装置1においては、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24が、2流体ノズルとして機能し、原料液である液体30が微粒化されて液体吐出口23から噴霧される。原料液の静電噴霧を、2流体ノズルを用いた方法で行う態様には、
図4に示す製造装置のように、液体吐出ノズル22及び第1噴射口24に加えて第2噴射口25からも圧縮空気を噴射して行う態様、及び第2噴射口25を設けずに、第1噴射口24のみから圧縮空気を噴射して行う態様等も含まれる。
【0051】
原料液である液体30の静電噴霧を2流体ノズルを行うことで、噴霧量を比較的多くすることができる。原料液の噴霧量は、0.1mL/分以上100mL/分以下とすることが好ましく、0.2mL/分以上50mL/分以下とすることが更に好ましい。
ここでいう噴霧量は、噴霧させるために液体吐出ノズル等に供給する原料液の量と同じである。例えば、上記の製造装置1においては、原料液である液体30を、液体吐出ノズル22に送液して該液体吐出ノズル22から吐出させているが、その液体吐出ノズル22に対する原料液である液体30の供給量が、原料液の噴霧量である。
【0052】
また、静電噴霧により生じた液滴の帯電量は、好ましくは10μC/g以上1000μC/g以下、より好ましくは100μC/g以上500μC/g以下である。静電噴霧により生じた液滴の帯電量を10μC/g以上とすることで、レイリー分裂による液滴の分裂が促進され、微細な中空粒子を製造することができ、1000μC/g以下とすることで、過剰な分裂による粒子径0.01μm以下の中空粒子の生成を抑制することができる。
静電噴霧により生じた液滴の帯電量の測定方法は、実施例において説明する。
【0053】
次に、中空粒子3Bを製造する第2発明の中空粒子の製造方法について説明する。
第2発明の中空粒子の製造方法は、第1発明における静電噴霧工程と同様の静電噴霧工程に加えて、当該静電噴霧工程で得られる中空粒子、好ましくは前述した中空粒子3Aと同様の構成を有する中空粒子を、その外殻部に含まれる高分子成分の熱分解温度以上で加熱する高分子分解工程を有する。
静電噴霧工程で得られる中空粒子は、
図1(a)に示すように、金属酸化物粒子35及び高分子成分34を含む外殻部33を有するが、該高分子成分34の熱分解温度以上で加熱することによって、外殻部33の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、且つ外殻部33のメソ細孔の平均細孔径が1nm以上200nm以下の、
図1(b)に示すような形態の中空粒子3Bが得られる。加熱には、静電噴霧工程で得られた中空粒子を加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。
【0054】
「高分子成分の熱分解温度」とは、外殻部33を構成している状態の高分子成分34の熱分解温度であり、例えば以下のようにして測定される。
即ち、熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、高分子成分34を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、その質量減少率を測定する。質量減少率が90%以上となった時の温度を熱分解温度とする。
高分子成分の熱分解温度は、高分子成分の種類等に応じて異なるが、高分子分解工程における加熱温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上であり、また好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下であり、また好ましくは200℃以上600℃以下であり、より好ましくは300℃以上500℃以下である。
高分子成分の熱分解温度以上で処理する時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは60分以上であり、また好ましくは2880分以下、より好ましくは1440分以下であり、また好ましくは10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。
【0055】
次に、中空粒子3Cを製造する第3発明の中空粒子の製造方法について説明する。
第3発明の中空粒子の製造方法は、第1発明における静電噴霧工程と同様の静電噴霧工程に加えて、当該静電噴霧工程で得られる中空粒子、好ましくは前述した中空粒子3Aと同様の構成を有する中空粒子を、その外殻部に含まれる高分子成分の熱分解温度以上で加熱し、またその外殻部に含まれる金属酸化物粒子を該金属酸化物粒子の融点以下の温度で焼結する、高分子分解及び焼結工程を有する。
第3発明における高分子分解及び焼結工程においては、第2発明と同様にして高分子分解工程を行った後、加熱温度を上げて焼結工程を行っても良いし、第2発明と同様にして高分子分解工程を行った後、得られた中空粒子3Bを一旦、保管等により常温まで冷やした後、再び加熱して焼結工程を行っても良い。また、静電噴霧工程で得られる中空粒子3Aを、外殻部33に含まれる金属酸化物粒子35が焼結する温度に一気に加熱して、一工程で、高分子成分の熱分解と金属酸化物粒子の焼結とを行っても良い。加熱には、粒子を加熱可能な任意の加熱装置を用いることができ、例えば、炉の内部の温度を任意に設定できる電気炉等を用いることができる。
【0056】
金属酸化物粒子を焼結させるための好ましい温度は、金属酸化物粒子の種類や粒径、不純物の量等に応じて、変動するが、金属酸化物粒子を焼結させる工程での好ましい加熱温度は、好ましくは800℃超、より好ましくは850℃以上、更に好ましくは900℃以上であり、また好ましくは1500℃以下、より好ましくは1300℃以下であり、更に好ましくは1200℃以下である。ただし、金属酸化物粒子を焼結させる工程での加熱温度の上限は、金属酸化物粒子の種類毎に定まるその金属酸化物粒子の融点である。
高分子分解工程後に行う焼結工程を別に行う場合、焼結工程における加熱時間は、例えば、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。
高分子分解工程と連続又は同時に行う焼結工程は、温度が焼結温度に達した後の加熱時間が、例えば、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である。
【0057】
第3発明によれば、静電噴霧工程で得られる粒子に対して、高分子成分の熱分解と金属酸化物粒子の焼結とを行うことにより、前述した構成の中空粒子3Cが得られる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
【0058】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の付記(中空粒子の製造方法)を開示する。
<1>
平均粒子径が0.01μm以上10μm以下、空孔率が5体積%以上70体積%以下、細孔容積が0.1cm
3/g以上5cm
3/g以下であり、外殻部に高分子成分を1質量%以上50質量%以下含む中空粒子の製造方法であって、
粒子径が10nm以上200nm以下の金属酸化物粒子と高分子化合物を含む原料液を静電噴霧し、生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程を有する、中空粒子の製造方法。
<2>
製造する中空粒子の前記平均粒子径が、0.1μm以上5μm以下であり、好ましくは0.3μm以上3μm以下である、前記<1>に記載の中空粒子の製造方法。
<3>
前記空孔率は、より好ましくは7体積%以上であり、更に好ましくは10体積%以上であり、また、より好ましくは50体積%以下であり、更に好ましくは40体積%以下であり、また、より好ましくは7体積%以上50体積%以下であり、更に好ましくは10体積%以上40体積%以下である、前記<1>又は<2>に記載の中空粒子の製造方法。
<4>
前記細孔容積が、より好ましくは0.2cm
3/g以上であり、また、より好ましくは2cm
3/g以下であり、また、より好ましくは0.2cm
3/g以上2cm
3/g以下である、前記<1>〜<3>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<5>
製造する中空粒子は、外殻部に高分子成分を、より好ましくは5質量%以上含み、また、より好ましくは30質量%以下含み、また、より好ましくは5質量%以上30質量%以下含む、前記<1>〜<4>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0059】
<6>
平均粒子径が0.01μm以上10μm以下、空孔率が5体積%以上70体積%以下、細孔容積が0.1cm
3/g以上5cm
3/g以下であり、外殻部の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、外殻部のメソ細孔の平均細孔径が1nm以上100nm以下である中空粒子の製造方法であって、
粒子径が10nm以上200nm以下の金属酸化物粒子と高分子化合物を含む原料液を、静電噴霧し、生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程、該静電噴霧工程で得られる粒子を、該粒子の外殻部に含まれる高分子成分の熱分解温度以上で加熱する高分子分解工程を有する、中空粒子の製造方法。
<7>
前記細孔容積が、より好ましくは0.2cm
3/g以上であり、また、より好ましくは2cm
3/g以下であり、また、より好ましくは0.2cm
3/g以上2cm
3/g以下である、前記<6>に記載の中空粒子の製造方法。
<8>
前記外殻部の高分子成分の含有率の下限値がゼロである、前記<6>又は<7>に記載の中空粒子の製造方法。
<9>
前記外殻部のメソ細孔の平均細孔径が、より好ましくは10nm以上であり、また、50nm以下であり、また、10nm以上50nm以下である、前記<6>〜<8>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0060】
<10>
平均粒子径が0.01μm以上10μm以下、空孔率が5体積%以上70体積%以下、細孔容積が0.1cm
3/g以下であり、外殻部の高分子成分の含有率が0.1質量%以下であり、外殻部のメソ細孔の平均細孔径が1nm以下であり、BET比表面積が20
m2/g以下である中空粒子の製造方法であって、
粒子径が10nm以上200nm以下の金属酸化物粒子と高分子化合物を含む原料液を、静電噴霧し、生じた液滴を気相中で乾燥させる静電噴霧工程、該静電噴霧工程で得られる粒子を、該粒子の外殻部に含まれる高分子成分の熱分解温度以上で加熱し、該粒子の外殻部に含まれる金属酸化物粒子を該金属酸化物粒子の融点以下の温度で焼結する、高分子分解及び焼結工程を有する、中空粒子の製造方法。
【0061】
<11>
原料液に含ませる金属酸化物粒子は、粒子径が10nm以上100nm以下である、前記<1>〜<10>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<12>
原料液中の金属酸化物粒子の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下であり、また好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上20質量%以下である、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<13>
前記金属酸化物粒子の金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナ、酸化鉄、酸化亜鉛、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化マンガン、酸化コバルト若しくは酸化カルシウム、又は酸化インジウム錫などの複合酸化物である、前記<1>〜<11>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<14>
前記金属酸化物粒子が酸化ケイ素又は酸化チタンの粒子である、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0062】
<15>
静電噴霧する前記原料液の粘度が10mPa・s以上500mPa・s以下である、前記<1>〜<13>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<16>
静電噴霧する原料液の粘度は、より好ましくは20mPa・s以上であり、また、350mPa・s以下であり、また、20mPa・s以上350mPa・s以下である。前記<1>〜<15>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<17>
原料液に含ませる高分子化合物が、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、キトサン、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ−γ−グルタミン酸、変性コーンスターチ、β−グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、ゼラチン、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースから選ばれる1種類以上の水溶性高分子である、前記<1>〜<16>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<18>
原料液に含ませる高分子化合物が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフラテート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチドから選ばれる1種類以上の非水溶性高分子である、前記<1>〜<17>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0063】
<19>
原料液に含ませる高分子化合物が、水溶性多糖類又は水溶性多糖類誘導体である、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<20>
前記水溶性多糖類誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の、アルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロースの1種類以上である、前記<19>に記載の中空粒子の製造方法。
<21>
原料液に、高分子化合物が溶媒に溶解又は分散した溶液であり、前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジンから選ばれる1種類以上である、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<22>
原料液中の高分子化合物の含有率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、また好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは10質量%以上25質量%以下である、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0064】
<23>
前記原料液の静電噴霧を、2流体ノズルを用いた方法により行う、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<24>
前記原料液の静電噴霧により生じた液滴の帯電量が10μC/g以上1000μC/g以下である、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<25>
静電噴霧により生じた液滴の帯電量は、好ましくは100μC/g以上であり、また、好ましくは500μC/g以下であり、また、好ましくは100μC/g以上500μC/g以下である、前記<1>〜<24>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。。
<26>
原料液の噴霧量が0.1mL/分以上100mL/分以下である、前記<1>〜<25>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<27>
原料液の噴霧量は、好ましくは0.2mL/分以上であり、また、好ましくは50mL/分以下であり、また、好ましくは0.2mL/分以上50mL/分以下である、前記<1>〜<26>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<28>
原料液の噴霧量が、前記液体吐出ノズルに供給する原料液の量と同じである、前記<26>又は<27>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<29>
前記液滴を乾燥させる気相の露点温度が−50℃以上20℃以下である、前記<1>〜<28>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<30>
液滴を乾燥させる気相の露点温度は、好ましくは−30℃以上、より好ましくは-20℃以上、また好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下であり、また好ましくは−30℃以上10℃以下、より好ましくは−20℃以上0℃以下である、前記<1>〜<29>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【0065】
<31>
前記高分子分解工程における加熱温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上であり、また好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下であり、また好ましくは200℃以上600℃以下であり、より好ましくは300℃以上500℃以下である、前記<1>〜<30>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<32>
前記高分子分解工程において、前記高分子成分の熱分解温度以上で処理する時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは60分以上であり、また好ましくは2880分以下、より好ましくは1440分以下であり、また好ましくは10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である、前記<1>〜<31>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<33>
前記高分子分解及び焼結工程において、前記金属酸化物粒子を焼結させる工程での好ましい加熱温度は、好ましくは800℃超、より好ましくは850℃以上、更に好ましくは900℃以上であり、また好ましくは1500℃以下、より好ましくは1300℃以下であり、更に好ましくは1200℃以下である。ただし、金属酸化物粒子を焼結させる工程での加熱温度の上限は、金属酸化物粒子の種類毎に定まるその金属酸化物粒子の融点である、前記<1>〜<32>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<34>
前記高分子分解及び焼結工程において、高分子分解工程後に焼結工程を別に行う場合、焼結工程における加熱時間は、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である、前記<1>〜<33>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
<35>
前記高分子分解及び焼結工程において、高分子分解工程と連続又は同時に行う焼結工程は、温度が焼結温度に達した後の加熱時間が、10分以上2880分以下、より好ましくは60分以上1440分以下である、前記<1>〜<34>の何れか1に記載の中空粒子の製造方法。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0067】
(実施例1)
表1に示す処方の原料液Aを調製し、
図4に示す中空粒子の製造装置を用いて、原料液を静電噴霧し、微小な粒子を得た。ただし、針電極26を取り外し、第2噴射口からは空気イオンを含まない圧縮空気の噴射を行った。
金属酸化物粒子としては、表1に示す通り、粒子径21nmの酸化ケイ素粒子(日産化学工業株式会社製、スノーテックス50(登録商標))を用いた。また表1中の「MC」及び「HPC−1」は、メチルセルロース(信越化学工業株式会社製、メトローズ60SH−15(登録商標))及びヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬工業株式会社製、6.0−10.0mPa・s)を示す。原料液Aは、メチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースとを質量比で1:1で含んでおり、表1中の高分子成分の合計含有量の欄には、それらの合計量を示した。また、原料液の粘度を、以下に示す方法により測定し、表1に示した。
〔原料液の粘度の測定方法〕
レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、HAAKE RheoStress6000、センサーはPP60使用、センサーのギャップ1mm)を用い、せん断速度94S
-1での原料液の定常粘度を測定した。
【0068】
原料液の噴霧量は、表2に示す通り、0.5mL/分とした。
他の条件は、下記の通りとした。
噴霧空気圧:0.4MPa
気相の露点温度:13℃
細管への印加電圧:+20kV
噴射口から対向電極(捕集部)までの距離:850mm
【0069】
【表1】
【0070】
実施例1の結果得られた中空粒子について、平均粒子径、空孔率、細孔容積、及び外殻部の高分子成分の含有率を、以下に示す方法により測定し、その結果を表2に示した。
〔平均粒子径の測定方法〕
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JSM−6510)を用いて、加速電圧20kV、倍率5000倍にて粒子の観察を行った。50〜200個の粒子が含まれる2視野中の全粒子の直径を画像上で実測し、その平均を数平均粒子径として算出した。
〔空孔率の測定方法〕
中空粒子3Aについては以下のようにして空孔率を測定した。なお以下の手順は全て23℃環境下で行うものとする。
質量A
0(g)の5mL規格比重瓶にイソプロパノールを基準線まで注いだときの質量をA
1(g)、該比重瓶からイソプロパノールを捨て、十分に乾かした後に約0.5gの粒子を比重瓶に入れた時の質量をA
2(g)、再度イソプロパノールを基準線まで注いだときの質量をA
3(g)とする。粒子の見かけ比重、及び空孔率は以下の式から計算される。
見かけ比重=イソプロパノールの比重×(A
2−A
0)/(A
1+A
2−A
0−A
3)
空孔率(%)=100×(1−見かけ比重/金属酸化物粒子の真比重)
なお23℃でのイソプロパノールの比重は0.785、金属酸化物粒子が酸化ケイ素であった場合、その真比重は2.2とした。
中空粒子3B及び3Cについては以下のようにして空孔率を測定した。なお以下の手順は全て23℃環境下で行うものとする。
質量A
0(g)の5mL規格比重瓶にイオン交換水を基準線まで注いだときの質量をA
1(g)、該比重瓶からイオン交換水を捨て、十分に乾かした後に約0.5gの粒子を比重瓶に入れた時の質量をA
2(g)、再度イオン交換水を基準線まで注いだときの質量をA
3(g)とする。粒子の見かけ比重、及び空孔率は以下の式から計算される。
見かけ比重=イオン交換水の比重×(A
2−A
0)/(A
1+A
2−A
0−A
3)
空孔率(%)=100×(1−見かけ比重/金属酸化物粒子の真比重)
なお23℃でのイオン交換水の比重は0.998、金属酸化物粒子が酸化ケイ素であった場合、その真比重は2.2とした。
【0071】
〔細孔容積、BET比表面積、平均細孔径の測定方法〕
比表面積・細孔分布測定装置(日本ベル株式会社、商品名:BELSORP mini II)を用いて、液体窒素を用いた多点法で、粒子のBET比表面積を測定
し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用し、100nm以下の細孔分布におけるピークトップをメソ細孔の平均細孔径、累積を細孔容積とした。測定試料は130℃で2時間加熱する前処理を施した。また表2に記載した、メソ孔の平均細孔径が1nm以下という記載は、2nmから100nmの細孔分布においてピークトップがない状態を意味する。
【0072】
〔外殻部の高分子成分の含有率の測定方法〕
熱重量測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製、EXSTAR6000、TG/DTA6300など)を用いて、質量A(mg)の中空粒子を酸化雰囲気下で30℃から1000℃まで昇温速度5℃/分で加熱する。高分子成分の熱分解温度(測定方法は前述)における質量減少がB(mg)であった時、その中空粒子の外殻部の高分子成分の含有率は以下の式で算出することができる。
外殻部の高分子成分の含有率(%)=(B/A) ×100
なお、原料液に含まれる金属酸化物粒子と高分子化合物との固形分比(質量比)が、そのまま、中空粒子の外殻部の金属酸化物粒子と高分子成分との質量比となる場合は、原料液中の固形分比や配合比からから中空粒子の外殻部の高分子成分の含有率をとすることもできる。表1中の中空粒子Aの欄には、この方法により算出した含有率を記載した。
また、中空粒子から高分子成分が溶解可能な溶媒により高分子成分を抽出し、その抽出液を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロママトグラフィー、質量分析、示差走査熱量測定、熱重量測定装置などの熱分析などの機器分析またはその組合せによって、外殻部の高分子成分の含有率を測定することができる。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例2,3)
実施例1で得られた粒子の一部を、表2に示す条件で、高分子成分の熱分解温度以上の温度に加熱し、外殻部の高分子成分が消失した実施例2の中空粒子を得た。具体的には、昇温速度5℃/分で30℃から400℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却した。
また得られた実施例1の中空粒子の一部を、表2に示す条件で加熱し、外殻部の金属酸化物粒子が焼結した実施例3の中空粒子を得た。具体的には昇温速度5℃/分で30℃から400℃まで昇温し、1時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で400℃から900℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却した。
得られた実施例2及び3の中空粒子について、前述した方法により、平均粒子径、空孔率、細孔容積及びメソ孔の平均細孔径を測定し、それらの結果を表2に示した。また、実施例3については、前述した方法によりBET比表面積を測定し、その結果も表2に示した。
【0075】
(実施例2A)
高分子分解工程における温度を800℃に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例2Aの中空粒子を得た。具体的には昇温速度5℃/分で30℃から400℃まで昇温し、1時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で400℃から800℃まで昇温し、10時間保持した後、自然冷却した。
(実施例4)
噴霧量を2倍にする以外は、実施例1と同様にして中空粒子を得、その中空粒子に対して900℃で高分子分解及び焼結工程を行った。具体的には、昇温速度5℃/分で30℃から400℃まで昇温し、1時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で400℃から900℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却した。なお、噴霧量を2倍にした結果、噴霧した液滴の帯電量は、表2に示す通り減少した。
【0076】
(実施例5〜7)
メチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースの質量比を1:2とし、表1に示したように高分子成分の配合量を増やすことで粘度を高めたこと以外は、原料液Aと同様にして原料液Bを調製した。表2に示すように、実施例1と同様に噴霧工程を行い実施例5の中空粒子を得た。また実施例5の中空粒子を実施例2Aと同様の条件で加熱し、高分子分解工程を行い、実施例6の中空粒子を得た。さらに実施例5の中空粒子を実施例3と同様の条件で加熱し、高分子分解工程及び焼結工程を行い、実施例7の中空粒子を得た。
【0077】
(実施例8〜10)
表1に示すように金属酸化物粒子として粒子径145nmの酸化ケイ素粒子(日産化学工業株式会社製、スノーテックスZL)を用いたこと以外は原料液Aと同様にして原料液Cを調製した。表2に示すように、実施例1と同様に噴霧工程を行い実施例8の中空粒子を得た。また実施例8の中空粒子を実施例2Aと同様の条件で加熱し、高分子分解工程を行い、実施例9の中空粒子を得た。さらに実施例8の中空粒子を実施例3と同様の条件で加熱し、高分子分解工程を行い、実施例10の中空粒子を得た。
【0078】
(実施例11〜13)
表1に示すように高分子成分としてHPC−2(和光純薬工業株式会社製、150−400cP)を配合して粘度を低下させたこと以外は、原料液Aと同様にして原料液Dを調製した。表2に示すように、実施例1と同様に噴霧工程を行い実施例11の中空粒子を得た。また実施例11の中空粒子を実施例2と同様の条件で加熱し、高分子分解工程を行い、実施例12の中空粒子を得た。さらに実施例11の中空粒子を実施例3と同様の条件で加熱し、高分子分解工程及び焼結工程を行い、実施例13の中空粒子を得た。
【0079】
(実施例14、15)
金属酸化物粒子として粒子径38nmの高純度の二酸化ケイ素粒子(扶桑化学株式会社製、PL−1)を用い、表1に示した処方の原料液Gを調製した。原料液Gを用いるとともに、噴霧の条件を下記の通りに代えた以外は、実施例1と同様にして静電噴霧を行った。
【0080】
原料液の噴霧量は、表2に示す通り、0.5mL/分とした。
他の条件は、下記の通りとして噴霧し、実施例14の中空粒子を得た。
噴霧空気圧:0.4MPa
細管への印加電圧:−20kV
気相の露点温度:−34℃
噴射口から対向電極までの距離:1500mm
【0081】
実施例14の中空粒子を表2に示す条件で加熱し、外殻部の金属酸化物粒子が焼結した実施例15の中空粒子を得た。具体的には昇温速度20℃/分で30℃から1100℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却した。
【0082】
(比較例1)
金属細管21に高電圧を印加しない以外は、実施例1と同様にして、原料液Aの噴霧を行った。その結果、液滴が粒子化せず、捕集板状に膜化した。
(比較例2〜4)
金属酸化物粒子として粒子径4.3nmの酸化ケイ素粒子(日産化学工業株式会社製、スノーテックスXL)を用いたこと以外は原料液Aと同様にして原料液Eを調製した。表2に示すように、実施例1と同様にして原料液Eの静電噴霧を行い比較例2の粒子を得た。また比較例2の粒子を、表2に示す条件で加熱し、比較例3、4の粒子を得た。具体的には、比較例3は昇温速度5℃/分で30℃から500℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却し、比較例4は昇温速度5℃/分で30℃から500℃まで昇温し、1時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で500℃から900℃まで昇温し、1時間保持した後、自然冷却した。
(比較例5〜7)
原料液に高分子成分を配合せず、水とエタノールの混合比を変更した以外は、原料液Aと同様にして原料液Fを調製した。原料液Aに代えて原料液Fを用いる以外は実施例1と同様にして比較例5の粒子、実施例2と同様にして比較例6の粒子、実施例3と同様にして比較例7の粒子を得た。
【0083】
実施例2A〜15、及び比較例2〜7についても、得られた粒子の諸物性を測定して表2に示した。
【0084】
表2に示すように、第1発明の実施例である実施例1,5,8,11,14によれば、第1発明の目的物である前述した中空粒子3Aの構成を有する中空粒子が得られることが判る。
また、表2に示すように、第2発明の実施例である実施例2,2A,6,9,10,12によれば、第2発明の目的物である前述した中空粒子3Bの構成を有する中空粒子が得られることが判る。
また、表2に示すように、第3発明の実施例である実施例3,4,7,13,15によれば、第3発明の目的物である前述した中空粒子3Cの構成を有する中空粒子が得られることが判る。
【0085】
他方、静電噴霧を行わない比較例1については、液滴が、液滴のまま捕集部に到達し、粒子形状の粉体が得られなかった。また、粒径が4.3nmの金属酸化物粒子を用いた比較例2については、静電噴霧工程で得られる粒子の空孔率が5%未満であり、高分子分解工程により得られる比較例3の粒子及び焼結後に得られる比較例4の粒子についても空孔率が5%未満であった。即ち、比較例2〜4は、何れも、本発明で製造する中空粒子は得られなかった。高分子成分を配合しない比較例5〜7についても、静電噴霧工程で得られる粒子の空孔率が5%未満であり、高分子分解工程により得られる比較例6の粒子及び焼結後に得られる比較例7の粒子についても空孔率が5%未満と考えられた。即ち、比較例5〜7は、何れも、本発明で製造する中空粒子は得られなかった。
【0086】
表2中に示した噴霧した液滴の帯電量は、
図4に示す装置を用いて原料液を吐出し、吐出された原料液の帯電量を測定して求めた。
帯電量の測定には、
図8に示す評価装置8を用いた。評価装置8は、ファラデーケージ81、金属容器82、電荷量測定器83、及び定量送液ポンプ84を備えている。
ファラデーケージ81は、春日電機株式会社製のファラデーケージ(KQ−1400)を用い、電荷量測定器83は、春日電機株式会社製のクーロンメータ(NK−1002)を用い、定量送液ポンプ84としてはシリンジポンプを用いた。
図8中、符号88は、帯電した原料液であり、符号85〜87は、測定プローブ先端、測定プローブ、及びアースにつながる金属導線である。
【0087】
具体的には、ファラデーケージの金属容器82の質量を測定した後、金属容器をファラデーケージにセットして電荷量測定器83をゼロにリセットした。液体噴霧部2の金属細管21に負電圧の高電圧を印加し、液体噴霧部2に圧縮空気を供給して第1噴射口及び第2噴射口から噴射させた。次いで、定量送液ポンプ84を動作させ、液体吐出ノズル22の下端の液体吐出口23から原料液を噴霧した。原料液を適量噴霧した後、金属容器82に溜まった液88の質量を測定し、液の質量と電荷量測定器83の測定値から単位質量当たりの帯電量(C/g)を算出した。
実施例と同様に、放電用金属ワイヤ(針電極26)は取り外し、第2噴射口からは空気イオンを含まない圧縮空気の噴射を行った。
上記の帯電量の測定に使用した条件は下記の通りである。
液:原料液A−G
噴霧量:表2に記載の通り
噴霧空気圧:0.01MPa
液体吐出口23から金属容器の上端までの距離:200mm