特許第6512892号(P6512892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6512892硬化性樹脂組成物及びこれを用いた硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512892
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びこれを用いた硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20190425BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20190425BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190425BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20190425BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20190425BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   C08F290/00
   C08F2/46
   C08F2/44 C
   C09J4/02
   C09J109/00
   G02F1/1335
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-64047(P2015-64047)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183250(P2016-183250A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100109793
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 惠理子
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 宣明
(72)【発明者】
【氏名】辻野 恭範
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148650(JP,A)
【文献】 特開2008−174658(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/196355(WO,A1)
【文献】 特開2014−189758(JP,A)
【文献】 特開2006−045474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08F 2/00−2/60
C08F 6/00−246/00
C08L 1/00−101/14
C09J 4/02
C09J 109/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ポリブタジエン及び水添ポリイソプレンからなる群より選択される共役ジエン系ポリマーユニットを1種又は2種以上含み、且つ主鎖及び/又は側鎖がα,β−不飽和カルボニル変性されているポリマー(以下「α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー」という);
(B)(メタ)アクリレート系化合物
(C)下記式(11)の繰り返し単位を有する、数平均分子量は5000〜80000の脂環骨格含有ポリマー;並びに
(D)数平均分子量が300〜1500であるポリブテンおよび/またはポリイソブチレン
を含有する硬化性樹脂組成物。
【化11】
((11)式中、Rcは脂環骨格含有基、R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアリルオキシアルキル基である)。
【請求項2】
(11)式中のRcに含まれる脂環骨格は、多環系である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)脂環骨格含有ポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)脂環骨格含有ポリマーと前記(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンの含有質量比率(C:D)は85:15〜5:95である請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)脂環骨格含有ポリマー並びに前記(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンの合計含有量は、樹脂成分総量の1〜90質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー及び(B)(メタ)アクリレート系化合物の合計含有量は、樹脂成分総量の10〜99質量%である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期の黄色度(YI0)が1.0以下であり、且つ105℃で1000時間の条件下に暴露後の黄色度(YI1000)が1.9以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期のヘイズ(H0)が0.5%以下であり、且つ85℃で85%RH1000時間環境下に暴露後のヘイズ(H1000)が2.0%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物をエネルギー線照射により硬化して得られる硬化物。
【請求項10】
請求項に記載の硬化物を有する画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温、高湿に長時間曝されても優れた密着性、無色透明性を保持できる硬化物を提供できる硬化性樹脂組成物 、並びに該硬化性樹脂組成物の硬化物及び当該硬化物を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置などの光学ディスプレイにおいて、表示画面への保護シートの貼着、各種機能性光学シートの接合、光学機器部材間の隙間の充填などには、耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の電気的特性、密着性、透明性を有する硬化性樹脂組成物が一般に用いられている。
【0003】
アクリロイル基やメタクリロイル基(これらを特に区別しない場合、「(メタ)アクリロイル基」と総称する)等の重合性官能基を有する(メタ)アクリロイル基含有ポリマー及び/又は(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート系重合性モノマーを組み合わせた硬化性樹脂は、硬化反応を精密に制御することが可能であり、さらに耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の電気的特性、密着性、透明性に優れた硬化物を得ることができることから、上記光学機器等に用いる接着剤、充填剤として一般に知られている。
【0004】
(メタ)アクリロイル基含有ポリマー及び/又は(メタ)アクリレート化合物等の重合性モノマーを組合せた硬化性樹脂は、硬化反応による収縮が生じるため、上記光学ディスプレイ等において充填剤や粘着剤として用いた場合、硬化収縮の結果、表示性能の低下をもたらすことがある。また、(メタ)アクリロイル基含有ポリマー及び/又は(メタ)アクリレート化合物等の重合性モノマーを組合せた硬化性樹脂は、ポリオレフィンなどの低エネルギー表面への接着性に劣る傾向にある。このため、非反応性の樹脂を併用することが一般に行われている。
【0005】
例えば、特開2012−162705号公報(特許文献1)では、ポリエーテルポリオールの(メタ)アクリロイル変性ポリマー及び(メタ)アクリレート系化合物の組合せからなる硬化性樹脂に、可塑剤として、ロジンエステル系樹脂やポリエーテルポリオールを含有させることを開示している。
【0006】
また、特開2014−189758号公報(特許文献2)には、透明性に優れ、耐熱性、耐光性、耐湿性等の耐久性に優れ、さらに低誘電率の硬化物を提供できる光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリロイル変性共役ジエン系ポリマー、親水性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、光重合開始剤を含有するエネルギー線硬化型樹脂組成物が提案されている。
実施例では、非反応性の粘着性付与剤として、不純物が少ないロジンエステル系樹脂(荒川化学工業社のロジンエステル「KE−311」)を併用している(段落0149)。
【0007】
さらに、特開2006−45474号公報(特許文献3)では、アクリレート系モノマー混合物及び光重合開始剤を含有する光重合性アクリル系粘着剤組成物において、粘着性付与樹脂として、所定の重量平均分子量、溶解性パラメーター及びガラス転移温度を有する(メタ)アクリレート系ポリマーを用いることが提案されている。実施例では、イソボルニルアクリレートポリマーを粘着付与樹脂として用いており、かかる樹脂組成物では、透明性に優れ、接着性に優れることが開示されている。
【0008】
また、特開2008−174658号公報(特許文献4)には、N−ビニルカルボン酸アミドと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、及び架橋剤を含む粘着剤組成物に、接着性を高める粘着付与樹脂として、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーなどを用いる組成物が開示されている(段落0027)。
実施例では、上記(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしてイソボルニルアクリレートポリマーを含有したアクリル系粘着剤組成物が、接着力及びリワーク性に優れ、さらに50℃×0.5MPaのオートクレーブにて30分間処理し、次いで60℃×90%RHの環境下で500時間処理する耐久性試験においても、剥がれや浮きが認められなかったことが示されている(段落0053−0055、0057、0058、表1)。
【0009】
以上のように、(メタ)アクリロイル基含有ポリマー及び/又は(メタ)アクリレート系モノマーを用いた硬化性樹脂組成物において、透明性、接着性、耐久性を改善するために、(メタ)アクリロイル基含有ポリマーの構造や、併用する非反応性樹脂等を工夫した樹脂組成物が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−162705号公報
【特許文献2】特開2014−189758号公報
【特許文献3】特開2006−45474号公報
【特許文献4】特開2008−174658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、近年、光学ディスプレイの無色透明性に対する要求は益々厳しくなっている。とりわけカーナビのように、車載用の光学ディスプレイにおいては、車内が80℃以上の高温にまで上昇し、さらにかかる状態で長時間放置される場合もある。このような高温下で長時間放置された場合でも接着強度、光学特性の低下が小さいことが求められるようになっている。
【0012】
(メタ)アクリロイル基含有ポリマー及び/又は(メタ)アクリレート化合物等の重合性モノマーを組合せた硬化性樹脂組成物に可塑性付与または粘着性付与を目的として一般に用いられるロジン酸エステル等のロジン酸誘導体、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、C5およびC9系石油樹脂、クマロン樹脂などの天然物質由来の非反応性樹脂は、黄褐色に着色している。このため、無色透明性に対する要求が厳しいディスプレイ等の用途では、改善が求められている。この点、近年、無色ともいえる超淡色ロジン及びその誘導体が開発され、上市されている。特許文献2の実施例で使用した荒川化学工業株式会社の[KE−311]は、その一例である。
【0013】
しかしながら、特許文献2では、耐久性を、100℃のオーブン中で250時間加熱後の変色の有無に基づく耐熱性、200MJ/m2で光照射後の変色を目視で確認する耐光性、85℃、及び85%RHで100時間保持した後の濁度を目視で確認した耐湿性により評価している(段落0135−0138)だけである。車載用表示装置で求められる耐久性は、上記評価基準で満足できる耐久性では不十分である。
【0014】
上記特許文献3は、透明性に優れる合成ポリマーからなる非反応性樹脂を用いているが、粘着剤用途との関係から、その評価は、常温での接着力、外観の評価にとどまっており、カーナビのように車載用表示装置に用いる粘着剤、充填剤用途に適用することは困難である。
【0015】
特許文献4では、耐久性が評価されているものの、60℃×90%RHの環境下で500時間処理(段落0058)といった高湿下での接着強度の耐久性の評価に留まっており、やはり車載用表示装置のように、高温下で長時間放置されても、接着強度、光学特性の低下が少ない高度な耐熱性、耐久性が求められる用途には適用できない。
【0016】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車載の表示装置に好適に用いることができるような厳しい耐久性を満足できる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)水添ポリブタジエン及び水添ポリイソプレンからなる群より選択される共役ジエン系ポリマーユニットを1種又は2種以上含み、且つ主鎖及び/又は側鎖がα,β−不飽和カルボニル変性されているポリマー(以下「α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー」という);
(B)(メタ)アクリレート系化合物
(C)下記式(11)の繰り返し単位を有する、数平均分子量は5000〜80000の脂環骨格含有ポリマー;並びに
(D)数平均分子量が300〜1500であるポリブテンおよび/またはポリイソブチレンを含有する。
【0018】
【化11】
【0019】
(11)式中、Rcは脂環骨格含有基、R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアリルオキシアルキル基である。
また、Rcに含まれる脂環骨格は、多環系であることが好ましい。
【0020】
記(C)脂環骨格含有ポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上であることが好ましい。
【0021】
記(C)脂環骨格含有ポリマーと前記(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンの含有質量比率(C:D)は85:15〜5:95であることが好ましい。また、前記(C)脂環骨格含有ポリマー並びに前記(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンの合計含有量は、樹脂成分総量の1〜90質量%であることが好ましい。
また、前記(C)脂環骨格含有ポリマー並びに(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンは、(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンを溶媒として重合反応を行うことにより生成された(C)脂環骨格含有ポリマー溶液であることが好ましい。
【0022】
前記(A)α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー及び(B)(メタ)アクリレート系化合物の合計含有量は、樹脂成分総量の10〜99質量%であることが好ましい。
【0023】
上記本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期の黄色度(YI0)が1.0以下であり、且つ105℃で1000時間の条件下に暴露後の黄色度(YI1000)が1.9以下であることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期のヘイズ(H0)が0.5%以下であり、且つ85℃で85%RH1000時間環境下に暴露後のヘイズ(H1000)が2.0%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明は、上記本発明の硬化性樹脂組成物をエネルギー線照射により硬化して得られる硬化物、該硬化物を有する画像表示装置も包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は、密着性、無色透明性に優れ、特に高温、高湿下で長時間保持された場合であっても、黄変着色、曇りが少なく、且つ密着性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0027】
<エネルギー線硬化型樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、
(A)水添ポリブタジエン,水添ポリイソプレン、及びポリイソプレンからなる群より選択される共役ジエン系ポリマーユニットを1種又は2種以上含み、且つ主鎖及び/又は側鎖がα,β−不飽和カルボニル変性されているポリマー(以下「α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー」という);
(B)(メタ)アクリレート系化合物
(C)脂環骨格含有ポリマー;並びに
(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレン
を含有する。
以下、各成分について説明する。
【0028】
(A)水添ポリブタジエンユニット,水添ポリイソプレンユニット、及びポリイソプレンユニットからなる群より選択される共役ジエン系ポリマーユニットを1又は2以上含み、且つ主鎖及び/又は側鎖がα,β−不飽和カルボニル変性されているポリマー(以下「α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー」)
【0029】
水添ポリブタジエンは、ブタジエンが1,2−付加重合及び/または1,4−付加重合することにより合成されるポリブタジエンを水素添加したものである。水素添加は、(C)成分である脂環骨格含有ポリマーとの相溶性、硬化物の透明性が損なわれない程度であれば、部分水素添加物であってもよい。なお、(1)式は、一例として挙げた水添ポリブタジエン(完全水添物)ユニットを示している。(1)式中、p、qはそれぞれ0〜100の整数であり、p+q=10〜150の整数である。
【0030】
【化1】
【0031】
ポリイソプレンは、イソプレンが付加重合したもので、1,4−付加重合体、1,2−付加重合体、3,4−付加重合体のいずれでもよく、1,4−付加重合体の場合、シス体であってもよいし、トランス体であってもよい。ポリイソプレンユニットは、水素添加されていても、されていなくてもよく、水素添加がされている場合、完全水素添加、部分水素添加のいずれであってもよい。
【0032】
(A)成分であるα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーには、上記のような水添ポリブタジエンユニット,水添ポリイソプレンユニット、ポリイソプレンユニットが1又は2以上含まれている。
1つのユニットしか含んでいない場合をα,β−不飽和カルボニル変性モノユニット型ジエン系ポリマーと称し、2以上のユニットを含んでいる場合をα,β−不飽和カルボニル変性マルチユニット型ジエン系ポリマーと称し、必要に応じて区別する。単に「α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー」と称する場合には、モノユニット型及びマルチユニット型の双方を含む。
【0033】
α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーは、対応する共役ジエン系ポリマーユニットを有する共役ジエン系ポリマーポリオール(共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’))と、α,β−不飽和カルボニル化合物(a−2)との反応により合成される。
【0034】
(a−1)共役ジエン系ポリマーポリオール
共役ジエン系ポリマーポリオールとは、水添ポリブタジエン,水添ポリイソプレン、又はポリイソプレンの主鎖又は側鎖に水酸基を2個以上有する化合物である。好ましくは、主鎖末端に水酸基を有する末端水酸基含有タイプの(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールである。
【0035】
(a−1’)(a−1)の連結体
(a−1’)は、(a−1)共役ジエン系ポリマーポリオールと連結用化合物との反応により多量体化させて得られる。
【0036】
(連結用化合物)
連結用化合物は、(水添)共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)の水酸基と反応できる官能基Lを2個以上有する化合物であり、例えば、下記式(2a)で表わされる2官能化合物、(2b)で表わされる3官能化合物、(2c)で表わされる4官能化合物が挙げられる。好ましくは2官能化合物である。式(2a)(2b)(2c)中、Lは水酸基と反応する官能基であり、M,M’,M″は有機基である。
【0037】
【化2】
【0038】
前記官能基Lとしては、具体的には、(i)イソシアネート基、(ii)カルボキシル基(ハロゲン化カルボニル基、エステルを含む)、(iii)エポキシ基が挙げられる。また、有機基M,M’,M″としては、上記官能基を有し、それぞれ2,3,4つのフリーの結合の手を有する脂肪族、芳香族、脂環族のいずれでもよいが、(a−1)成分との反応性及び相溶性の観点から、炭素数2〜18、好ましくは3〜15、特に好ましくは8〜12の脂肪族、脂環族が好ましい。
【0039】
(i)イソシアネート基含有連結用化合物
イソシアネート基含有連結用化合物としては、イソシアネート基を2個以上、好ましくは2〜4個有する脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートであって、好ましくはジイソシアネートである。
【0040】
ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6−ジイソシアナトヘキサン)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート;リシンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート又はテトラメチルヘキサンジイソシアネートの誘導体等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−、1,3−又は1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−又は2,4’−ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、又は2,4−又は2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、3−メチルジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート又はジフェニルエーテル4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
トリス(4−イソシアン酸フェニル)チオリン酸エステル等のトリイソシアネート、1,3,5,7−アダマンタンテトライルテトライソシアネート等のテトライソシアネートを用いてもよい。
【0041】
(ii)カルボキシル基含有連結用化合物
カルボキシル基を2個以上有する連結用化合物としては、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリカルボン酸、又はこれらの無水物若しくはエステル;ピリジン2,6−ジカルボン酸ジクロライド等のハロゲン化カルボニル基含有連結用化合物などを用いることができ、これらは飽和脂肪族カルボン酸、不飽和カルボン酸、カルボキシル基以外の水素原子がハロゲン、水酸基、カルボニル基等で置換された置換カルボン酸、芳香族カルボン酸など、炭素数2〜18、好ましくは3〜15、より好ましくは8〜12の飽和カルボン酸である。これらのうち、好ましくはジカルボン酸またはそのエステルである。
【0042】
具体的には、ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸、プロパントリカルボン酸等の飽和ジカルボン酸、又はこれらの無水物、又はこれらの炭素数1〜20のアルキルエステル;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸;フタル酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0043】
(iii)エポキシ基含有連結用化合物
エポキシ基含有連結用化合物は、水酸基と反応する官能基として、炭素、酸素原子からなる3員環構造(エポキシ基、オキシラン基、グリシジル基など)を2個以上有する連結用化合物で、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はこれらの水添物とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得られるエポキシ樹脂で、炭素数2〜18、好ましくは3〜15、より好ましくは8〜12のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテルなどを用いることができる。
【0044】
(連結反応)
(a−1)(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールと、上述の連結用化合物との反応により、(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールが連結して多量体化する。(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールの連結体を、「マルチユニット型ジエン系ポリマー」と称する。
【0045】
(水添)共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)の多量体化は、当該ポリオール(a−1)の水酸基と連結用化合物の官能基Lとの反応により形成される結合を連結部として行われる。従って、連結用化合物が(i)イソシアネート基含有連結用化合物の場合、共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)の水酸基と反応して、ウレタン結合を形成する。連結用化合物が(ii)カルボキシル基含有連結用化合物の場合、ジエン系ポリマーポリオール(a−1)の水酸基と反応して、エステル結合を形成する。連結用化合物が(iii)エポキシ基含有連結用化合物の場合、ジエン系ポリマーポリオール(a−1)の水酸基と反応して、エポキシ環が開環し、エーテル結合を形成する。
【0046】
以上のように連結用化合物の種類、量に応じて、2量体化、3量体化、又は4量体化したポリオールの多量体が得られる。連結用化合物とジエン系ポリマーポリオール(a−1)との反応は、急激な多量体化により、ゲル化しないような条件で反応させる。通常、反応触媒の種類、ポリオールと連結用化合物の仕込量比率の調整、反応温度の調整、仕込速度(滴下速度)等により、ゲル化しない条件を適宜選択することができる。
【0047】
以下、多量体化により得られるマルチユニット型ジエン系ポリマーについては、連結用化合物として代表的な2官能タイプ(L−M−L)を用いた場合を中心に説明する。
【0048】
1種類の(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールを用いて多量体化されている場合、合成反応に供されるジエン系ポリマーポリオール(a−1)と連結用化合物との当量比により、下記式(3a)又は(3b)に示すように、1種類の(水添)共役ジエン系ポリマーユニットが連結部により複数連結されたマルチユニット型ジエン系ポリマーが得られる。式中、n1,n2はそれぞれ独立して1〜20の整数である。
【0049】
式(3a)はジエン系ポリマーポリオールが過剰の場合(末端官能基がポリマーポリオール由来の−OHとなる)を示し、式(3b)は連結用化合物が過剰の場合(末端官能基は連結用化合物由来のLとなる)を示す。
【0050】
【化3】
【0051】
2種類又は3種類の(水添)共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)を連結反応に供した場合、例えば2種類のジエン系ポリマーポリオールを使用し、且つジエン系ポリマーポリオールが過剰の場合、下記式(4)に示すように、(水添)共役ジエン系ポリマー1のユニット及び(水添)共役ジエン系ポリマー2のユニットをそれぞれl,m+1個有するマルチユニット型ジエン系ポリマーが得られる。異なる種類の(水添)共役ジエン系ポリマーポリオールを用いて連結反応を行った場合、各ポリマーユニットの含有比率(l:m+1)は、合成反応時の仕込み比率により調整され、(水添)共役ジエン系ポリマーユニットの連結の態様は、ランダムに連結されたランダムタイプであってもよいし、同種類の(水添)共役ジエン系ポリマーユニットが連結したブロックタイプであってもよい。
【0052】
【化4】
【0053】
(3a),(3b),(4)式中、Zは使用する連結用化合物の官能基Lと水酸基との反応の結果、生成される結合で、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合である。好ましくはウレタン結合、エステル結合であり、より好ましくはウレタン結合である。
【0054】
なお、連結用化合物として3官能性連結用化合物を用いた場合、あるいはジエン系ポリマーポリオール(a−1)として、水酸基が3個以上のポリオールを用いた場合には、下記式(5a),(5b)のように3次元的に多量体化がおこる。
【0055】
【化5】
【0056】
マルチユニット型ジエン系ポリマーの末端は、合成反応に供されるポリマーポリオール(a−1)と連結化合物との当量比による。(4)式、(5)式は、(イ)ジエン系ポリマーポリオールの水酸基当量が過剰で、得られるマルチユニット型ジエン系ポリマーの末端は水酸基の場合を示しているが、(ロ)連結用化合物の官能基Lが過剰の場合、得られるマルチユニット型ジエン系ポリマーの末端は当該官能基Lとなる。
【0057】
(a−2)α,β不飽和カルボニル化合物((メタ)アクリロイル化剤)
モノユニット型(水添)共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)をα,β不飽和カルボニル変性するのに用いられるα,β不飽和カルボニル化合物(a−2)は、一般式が下記式(6)で表されるα,β不飽和カルボニル化合物である。(6)式中、Qはモノユニット型共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)の末端官能基(水酸基又は連結用化合物の官能基L)と反応する官能基、又は当該官能基を有する原子団、又はハロゲンである。
【0058】
【化6】
【0059】
(イ)末端官能基が水酸基の場合
水酸基と反応する官能基としては、イソシアナート基、カルボキシル基(ハロゲン化カルボニル基、エステル含む)、エポキシ基が挙げられる。
従って、水酸基と反応する官能基を有するα,β不飽和カルボニル化合物(a−2)としては、一般式(7a)で表わされるイソシアナート基含有不飽和カルボニル化合物;一般式(7b)で表わされるカルボキシル基含有不飽和カルボニル化合物;一般式(7c)で表されるエポキシ基含有不飽和カルボニル化合物;Qが−OH又は−OR(Rは炭素数1〜20の直鎖又は分岐を有するアルキル基またはアリール基)であるカルボン酸またはカルボン酸エステル;Qがハロゲンであるカルボン酸ハロゲン化物が該当する。
【0060】
【化7】
【0061】
上記一般式(6),(7a)−(7c)において、R1,R2は、それぞれ、水素、又はメチル、エチル、プロピル等の炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状アルキル基を示し、R1,とR2は同じでも異なっていてもよい。
【0062】
(7a)−(7c)式中、Xは介在基であり、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、好ましくはメチレン、エチレンである。
【0063】
(7a)式で表されるイソシアナート基含有不飽和カルボニル化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート等が挙げられる。
【0064】
(7b)式で表わされるカルボキシル基含有不飽和カルボニル化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸等の(メタ)アクリロイルオキシカルボン酸などを用いることができる。
【0065】
(7c)で表わされるエポキシ基含有不飽和カルボニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどを用いることができる。
【0066】
Qが−OH又は−OR(Rは炭素数1〜20の直鎖又は分岐を有するアルキル基)であるカルボン酸またはカルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸などのカルボン酸化合物類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどを用いることができる。
【0067】
また、Qがハロゲンの場合として、塩化(メタ)アクリル酸、臭化(メタ)アクリル酸などの不飽和酸ハロゲン化物を用いることができる。
【0068】
(ロ)末端官能基が、連結用化合物由来の官能基Lの場合
官能基Lと反応する官能基を有するα,β不飽和カルボニル化合物(a−2)としては、下記一般式(8a)で表わされる不飽和カルボン酸、又は一般式(8b)で表される不飽和カルボン酸ヒドロキシエステルが該当する。(8b)式中、R(OH)は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキルの水素原子の1つは水酸基で置換されたヒドロキシルアルキル基である。
【0069】
【化8】
【0070】
従って、Qが−OHの場合、(8a)式で表されるα,β−不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられる。
【0071】
また(8b)式で表されるような、QがR(OH)を含有する原子団であるα,β−不飽和カルボニル化合物の場合、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和カルボン酸ヒドロキシエステルが挙げられる。
【0072】
以上のような構成を有するα,β−不飽和カルボニル化合物は、α,β不飽和カルボニル基において、R1が水素又はメチル基、R2が水素であるアクリロイル基又はメタクリロイル基が好ましく用いられる。以下、α,β−不飽和カルボニル基が(メタ)アクリロイル基である場合には、「(メタ)アクリロイル化剤」を用いた場合を代表として説明する。
【0073】
〔α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーの合成:共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)と、不飽和カルボニル化合物(a−2)との反応〕
上述の共役ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)と上述のα,β不飽和カルボニル化合物((メタ)アクリロイル化剤)(a−2)とを反応させて、α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーを合成する。
【0074】
ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)の末端官能基(水酸基、又は連結用化合物に由来する官能基L)と、(メタ)アクリロイル化剤(a−2)中の官能基とが反応して、結合を形成し、下記一般式(9)で表されるように、ジエン系ポリマーユニットの末端が(メタ)アクリロイル基でキャップされる。
【0075】
【化9】
【0076】
(9)式中、Yは、ジエン系ポリマーポリオール(a−1)又はその連結体(a−1’)の末端官能基(−OH又はL)とα,β不飽和カルボニル化合物(a−2)の官能基とが反応した結果、生成される連結結合含有基であり、使用する化合物、官能基の種類により、ウレタン結合、エステル結合、若しくはエーテル結合、又はこれらの結合の含有する有機基となる。
【0077】
以上のようなα,β−不飽和カルボニル変性反応のうち、好ましくは末端官能基が水酸基である連結体(a−1’)と、(メタ)アクリロイル化剤として(7a)式で表されるイソシアネート含有(メタ)アクリレートを用いる反応であり、下記(10)式で表されるα,β−不飽和カルボニル変性体が得られる。
【0078】
【化10】
【0079】
式中、ジエン系ポリマーユニットは、1つのジエン系ポリマーユニット又は2つ以上のジエン系ポリマーユニットの連結体である。連結体(a−1’)が複数の種類のジエン系ポリマーユニットを含んでいる場合、(10)式中のジエン系ポリマーユニットも複数種類のジエン系ポリマーユニットを含有するマルチユニット型ジエン系ポリマーとなる。
【0080】
(水添)共役ジエン系ポリマーにα,β−不飽和カルボニル基を導入する反応(α,β−不飽和カルボニル変性反応)は、通常、溶媒存在下で行われる。本発明の組成物では、(B)成分である(メタ)アクリレート系化合物が通常、常温で液体であることから、(A)成分の反応溶媒として用いることができる。溶媒除去等の操作なしに、合成により得られた生成物を、(A)成分と(B)成分との混合物として用いることが可能となる。このことは、溶媒除去操作という工程の簡略化だけでなく、組成物中に(A)成分由来の残存溶剤といった不純物の混入も回避することができるという利点がある。残存溶媒は、硬化物において、ボイドの原因となり得ることから、組成物の必須成分以外である溶剤の使用を回避した(A)成分を用いることで、接着剤層の透明化、画質の向上といった効果を期待できる。
【0081】
得られる不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー(A)の数平均分子量、粘度は、繰り返し単位となるジエンユニットの種類、多量体化の有無等によって異なるが、一般にマルチユニット型では分子量、粘度が増大し、ジエン系ポリマーユニットの増大に伴って、さらに分子量、粘度が増大する。
【0082】
(A)成分の数平均分子量(Mn)は、含有される(水添)共役ジエンの種類、含有されるジエン系ポリマーユニット数にもよるが、3000〜50000、好ましくは4000〜40000、より好ましくは5000〜30000、さらに好ましくは5000〜20000の高分子量化合物となる。また、25℃における粘度は、(水添)共役ジエン系ポリマーユニットの種類、個数、反応条件等により異なるが、5〜2000Pa・s、好ましくは8〜1500Pa・sである。
【0083】
なお、本明細書にいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(溶媒:テトラヒドロフラン)を用いて測定した値である。また、上記粘度は、温度25℃の条件下で、B型粘度計(型式「RB80L」:東機産業社製)を用いて測定することができる。
【0084】
尚、本発明で(A)成分として用いるα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーは、ポリマー1分子鎖あたり2個以上のα,β−不飽和カルボニル基を有するα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーと、ポリマー1分子鎖あたり1個のα,β−不飽和カルボニル基しか有しないα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーとの混合物であってもよい。α,β−不飽和カルボニル変性(水添)共役ジエン系ポリマー全体として、ポリマー分子鎖あたり平均1.5個以上のα,β−不飽和カルボニル基を有することが好ましい。
【0085】
以上のような(A)成分の含有量は、組成物に含まれる樹脂成分中、樹脂成分の含有量総量を100として、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。5質量%以下では、相対的に(C)脂環骨格含有ポリマーの含有率が高くなり、硬化不足となって、硬化物が軟らかくなりすぎる。50質量%を超えると、(C)脂環骨格含有ポリマーの含有率が相対的に少なくなりすぎて、耐熱性、密着性が不足する。
【0086】
なお、本明細書にいう樹脂成分とは、硬化物において樹脂として存在し得る(A)成分、(B)成分、及び(C)成分、さらに(D)成分を含有する場合は(D)成分、さらに他の非反応性樹脂を含有する場合は他の非反応性樹脂をいう。したがって、樹脂成分総量というときは、これらの含有量総量をいう。
【0087】
(B)(メタ)アクリレート系化合物
(メタ)アクリレート系化合物は、(A)成分であるα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーと共硬化可能な重合性化合物として用いられる。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の炭素数6〜20のアルキル基含有(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有(メタ)アクリレート;メチル−2−アリルオキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート等のアルキル基又はシクロアルキル基以外の置換基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0089】
これらのうち、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレートが、(C)成分たる脂環骨格含有ポリマーとの相溶性の観点から好ましく用いられる。また、耐湿性付与の観点から、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0090】
(B)(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、組成物の樹脂成分中、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜30質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
また、(A)成分及び(B)成分の合計含有量として、組成物に含まれる樹脂成分総量の10〜99質量%となるようにすることが好ましく、より好ましくは20〜80樹脂%、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0091】
(C)脂環骨格含有ポリマー
本発明で用いる脂環骨格含有ポリマーは、下記(11)式の繰り返し単位を有するポリマーであり、重合性官能基を持たない非反応性樹脂に該当する。
【化11】
【0092】
式中、R10、R11は、独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜6個のアルキル基、又はアリルオキシメチル、アリルオキシエチル、アリルオキシプロピル、アリルオキシブチル、アリルオキシペンチル等のアリルオキシアルキル基(アルキル基の炭素数1〜6)であり、好ましくは水素原子、メチル基である。
【0093】
式中、Rcは脂環骨格含有基を示している。脂環骨格は、単環、2員環以上の多環系のいずれでもよく、多環系の場合、橋かけ構造を有していてもよい。さらに、脂環骨格の重合反応性を阻害しない範囲であれば、脂環骨格に、メチル基等の低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。またさらに、前記置換基は「Rc−O」結合との間の介在有機基として含有されていてもよい。
【0094】
脂環骨格含有ポリマーは、脂環式化合物(例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、1,2−ジメチルシクロペンタン、メチルシクロへキサン、シクロペンテン等の単環式化合物;ビシクロ[2.2.1]へプタンノルボルナン、トリシクロ[2.2.1.0]へプタンノルトリシクレン、ジシクロペンタニル、アダマンタン、バスケタン等の多環式化合物など)と(メタ)アクリル酸とのエステルからなる(メタ)アクリル酸の脂環式化合物エステルを重合することにより得られる。
【0095】
(メタ)アクリル酸の脂環式化合物エステルとしては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート等の単環式(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]へプタ−2−イルアクリラート(以下、「イソボルニル(メタ)アクリレート」という)、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0096】
重合反応は、従来公知の方法、すなわち有機溶媒中で(メタ)アクリル酸の脂環式化合物エステルを重合することにより行うことができ、重合後、脱気すればよい。
上記重合反応では、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類、メルカプトイソシアヌレート類等のメルカプト基を有する化合物を用いることが好適である。より好ましくはアルキルメルカプタン類、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類であり、更に好ましくはn-ドデシルメルカプタンである。
上記重合で使用する有機溶媒の種類は特に限定せず、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル;ジメチルエーテル、エチレングリコール物メチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブなどの種々の公知の有機溶媒を使用することができる。本発明の樹脂組成物が、後述の(D)ポリブテン及び/又はポリイソブチレンを含有する場合、(D)成分を溶媒として用いることが好ましい。これにより、重合後に行う脱気処理が不要となり、そのまま組成物の調製に用いることができる。
【0097】
(C)脂環骨格含有ポリマーの数平均分子量は、5000〜80000であることが好ましく、より好ましくは5000〜50000、さらに好ましくは5000〜30000である。
分子量が低すぎると、所望の耐熱性と接着力が得られにくくなる。一方、分子量が高くなりすぎると、組成物の粘度が高くなり、他成分との相溶性が低下するため、得られる硬化物の光線透過率が低下する傾向にある。さらに分子量が10万を超えるような場合、高粘度のため、組成物の調製自体が困難になり、なおかつ相溶性が低下し、樹脂組成物が濁るおそれがある。
【0098】
また、(C)脂環骨格含有ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、50℃以上であることが好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。したがって、(C)脂環骨格含有ポリマーは、通常、単独では常温で固体である。しかしながら、溶媒を適宜選択することで、ポリマー溶液として用いることができる。
【0099】
このような脂環骨格含有ポリマーは、アクリル系ポリマーの硬化性樹脂組成物において、粘着性付与樹脂として作用することができ、硬化物の密着性増大に寄与する。脂環骨格含有ポリマーの含有量、分子量を調節することで、硬化物の硬度を調節することができる。
また、本発明で用いる(C)脂環骨格含有ポリマーは、(A)成分である(メタ)アクリロイル変性ジエン系ポリマーとの相溶性に優れる。従って、(A)成分である(メタ)アクリロイル変性ジエン系ポリマーと(B)成分である(メタ)アクリレート系化合物との硬化反応で得られる硬化物のネットワーク中に取り込まれることで、(C)脂環骨格含有ポリマーの微分散化を図ることができる。
さらに、脂環骨格含有ポリマーは、ガラス転移点が高く、耐熱性に優れる。高温下で長時間保持されても、分解、脱水素、酸化が起こりにくいことから、透明性、黄変といった光学的特性に対する変化が少なくて済む。
【0100】
脂環骨格含有ポリマーは、組成物中の樹脂成分の1〜50重量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%含有されることが好ましい。樹脂成分における脂環骨格含有ポリマーの含有率が高くなると、硬化物が硬くなる傾向にあり、ひいては硬化物の耐衝撃性の低下をもたらすおそれがある。また、硬化系を構成するα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー及び(メタ)アクリレート系化合物の含有量が相対的に下がることになり、ひいては硬化が困難となる。一方、樹脂成分における含有率が低くなりすぎると、硬化物の耐熱性が確保しにくくなり、また密着性も低下する傾向にある。
【0101】
(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレン
本発明の組成物には、さらに、数平均分子量が300〜1500の低分子量タイプのポリブテンおよび/またはポリイソブチレンが含有されていることが好ましい。ポリブテン、ポリイソブチレンは、各々単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。
【0102】
ポリブテンとは、イソブチレンを主体に1−ブテン、2−ブテンを共重合させたものであり、ポリイソブチレンとは、イソブチレンの単独重合体である。これらは分子量により常温で液状のものから固体のものまで幅広い分子量のものが市販されているが、本発明に用いるポリブテンやポリイソブチレンは、数平均分子量が300〜1500の低分子量タイプである。
【0103】
数平均分子量が300〜1500のポリブテンやポリイソブチレンは、常温で液状であり、且つ(A)成分及び(B)成分の硬化物との相溶性、(C)成分である脂環骨格含有ポリマーとの相溶性に優れる。このため、得られる硬化物において、脂環骨格含有ポリマーとともに、(A)成分と(B)成分の硬化反応により形成されるネットワークの中に取り込まれることができる。さらに、組成物の調製に際して、(C)脂環骨格含有ポリマーの合成溶媒として用いることもできる。(C)脂環骨格含有ポリマーの合成溶媒として用いることにより、合成反応により得られた脂環骨格含有ポリマー溶液をそのまま組成物の調製に利用することができる。
【0104】
このようなポリブテンおよび/またはポリイソブチレンは、可塑剤としての役割を有する。すなわち、ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンは、硬化物の硬度を低下させる役割を有する。この点、脂環骨格含有ポリマーが硬化物の硬度を高める作用を有することから、非反応性樹脂である脂環骨格含有ポリマーとの含有比率を調節することで、硬化物の耐衝撃性、硬度のバランスを適切に調節することができる。
(C)成分と(D)成分との含有比率(C:D)は、特に限定しないが、通常85:15〜5:95の範囲であり、好ましくは60:40〜20:80の範囲から選択される。
【0105】
さらに、ポリブテン、ポリイソブチレンは、分子鎖内に極性基を有さず、組成物、硬化物の低誘電率化に寄与する。ポリブテン及び/又はポリイソブチレンの組成物中の含有量は、樹脂成分中0〜70質量%であり、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜5質量%の範囲で、目的とする特性に応じて適宜設定すればよい。
尚、前記(C)脂環骨格含有ポリマー並びに前記(D)ポリブテンおよび/またはポリイソブチレンの合計含有量は、樹脂成分総量の1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは50〜70質量%である。
【0106】
上記分子量範囲を有するポリブテンおよび/またはポリイソブチレンは、常温で液状を示すが、さらに、流動点が0℃以下であるものが好ましい。
【0107】
このようなポリブテンとしては、市販品を用いることもでき、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製の日石ポリブテンLV-7,日石ポリブテンLV-10,日石ポリブテンLV-25,日石ポリブテンLV-50,日石ポリブテンLV-100,日石ポリブテンHV-15,日石ポリブテンHV-35,日石ポリブテンHV-50,日石ポリブテンHV-100,日石ポリブテンHV-300;ENEOS社製のIndopol L-8,Indopol L-14,Indopol H-7,Indopol H-15,Indopol H-25,Indopol H-50,Indopol H-100,Indopol H-300などが挙げられる。また、ポリイソブチレンの市販品としては、Texas Petrochemicals社製のTPC595,TPC1105;BASF社製のGlissopal 1000,Glissopal 1300,Glissopal V190,Glissopal V500,Glissopal V640などが挙げられる。
【0108】
(E)光重合開始剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分の他に、さらに、(E)光重合開始剤を含有することが好ましい。これにより、組成物を、エネルギー線照射により短時間で硬化することが可能となる。
【0109】
光重合開始剤としては、従来より、エネルギー線硬化型樹脂組成物の分野で用いられている光重合開始剤を用いることができる。例えば、特開2013−014718号公報の段落0089、0090に記載の光重合開始剤が挙げられ、中でも、アセトフェノン類、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]エチルエステル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が好適である。
【0110】
硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量としては、用途により異なるが、通常、組成物中の樹脂成分100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好適である。0.1質量部以上であると樹脂組成物をより充分に硬化させることができ、また10質量部以下であると臭気発生や硬化物の着色を充分に抑制できる。より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
【0111】
(F)その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、必要に応じて、本発明の効果、特に無色透明性を害しない範囲内であれば、その他の非反応性樹脂、ヒュームドシリカ、その他の添加剤を含有してもよい。
【0112】
その他の非反応性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、変成フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クロマン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、さらに上記各樹脂の水添化物などの粘着性付与効果を有する樹脂;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド共重合体等のポリエーテルポリオール;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等の側鎖に重合性官能基や二重結合を有しない(メタ)アクリル系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6,6などのポリアミド系樹脂;水添型又は非水添型ポリイソプレン、水添型ポリブタジエン以外の共役ジエン系ポリマー;熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。粘着性付与効果を有する樹脂以外の非反応性樹脂は、一般に耐熱性が低いため、高温で長時間保持された後の接着強度の低下、着色の原因となる場合がある。また、粘着性付与効果を有する樹脂であっても着色が問題となる。従って、高温で長時間保持されるような用途の樹脂組成物には、樹脂組成物100質量部あたりの含有率は、40質量%以下とすることが好ましい。
【0113】
ヒュームドシリカは、酸化ケイ素を主成分とする化合物で、一次平均粒子径が50nm以下が好ましい。ヒュームドシリカは、粒子表面にシラノール基を有していて、シラノール基の一部を有機基で変性した疎水性タイプと、シラノール基の未変性のままである親水性タイプがある。いずれのタイプも使用できるが、とくに高湿下での接着剤の白濁を効率よく抑制でき、また高温下においても、硬化物からのポリブテンやポリイソブチレンの経時的分離が効率よく抑制できる点から、親水性タイプが好ましく用いられる。
【0114】
更に、用途、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、熱硬化触媒、紫外線吸収剤、連鎖移動安定剤、光安定剤、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、チキソトロピー付与剤、脱泡剤、着色剤等を含んでもよい。
【0115】
例えば、特開2012−162705号公報の段落0078〜0082に記載の各化合物を用いることができる。
【0116】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系のAO-10,AO-20,AO-30,AO-40,AO-50,AO-60,AO-70,AO-80(アデカ社製)、アンテージW-300,W-400,W-500(川口化学社製)、また光安定剤であるチヌビン765(BASF社製)などが挙げられ、耐久性の点で、AO-50,AO-60が好ましく用いられる。
【0117】
以上のようなその他の成分は、樹脂組成物の用途により適宜選択されるが、通常、樹脂組成物の0〜40質量%とすることが好ましく、より好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0118】
<硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の硬化性樹脂組成物は、以上のような成分を、所定割合で混合すればよい。
樹脂組成物中の樹脂成分中における(A)成分及び(B)成分の含有総量と、(C)成分((D)成分を含有する場合には(C)成分と(D)成分の含有総量)との比(A+B:C+D)が10:90〜99:1とすることが好ましいく、より好ましくは20:80〜60:40、さらに好ましくは50:50〜70:30である。
【0119】
また、(C)成分と(D)成分の含有量比率は、85:15〜5:95とすることが好ましく、より好ましくは60:40〜20:80である。脂環骨格含有ポリマー(C)が多くなりすぎると、硬化物が硬くなって耐衝撃性に劣る傾向があり、ポリブテン及び/またはポリイソブチレン(D)が多くなりすぎると、耐熱性、特に光学特性の耐熱性が低下する傾向にある。
【0120】
調製方法は、特に限定しないが、(B)成分である(メタ)アクリレート系化合物を溶媒とするα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー溶液を調製し、これを(C)成分(脂環骨格含有ポリマー)と混合することが好ましい。また、(D)成分を含有する場合には、(D)成分であるポリブテン及び/又はポリイソブチレンを溶媒とする(C)成分溶液を調製し、これを別途調製したα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー溶液と混合することが好ましい。(C)脂環骨格含有ポリマーは、通常、常温で固体であるが、(D)ポリブタン及び/又はポリイソブチレンとの併用により、液状として取り扱うことが可能となる。
【0121】
なお、(メタ)アクリレート系化合物を溶媒とするα,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマー溶液は、(メタ)アクリレート系化合物を溶媒中でα,β−不飽和カルボニル変性反応を行うことにより調製でき、ポリブテン及び/又はポリイソブチレンを溶媒とする脂環骨格含有ポリマー溶液は、ポリブテン及び/又はポリイソブチレンを溶媒として、脂環骨格含有ポリマーの合成反応を行うことにより調製することができる。
【0122】
光重合開始剤、その他の添加剤の配合順序は、特に限定しないが、通常(A),(B),及び(C)成分,必要に応じて含有される(D)成分の混合物を調製した後、当該混合物に光重合開始剤、その他の添加剤を添加することが好ましい。
【0123】
<硬化性樹脂組成物の硬化方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗工、滴下充填、流し込みなどの方法により、所定部位に適用することができる。組成物の性状、粘度、適用箇所に応じて、適宜選択すればよい。
【0124】
上記のような組成を有する本発明の硬化性組成物は、(A)α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーのα,β−不飽和カルボニル基((メタ)アクリロイル基)と(B)(メタ)アクリル酸エステルとの重合反応により硬化することができる。硬化反応は、熱、光、各種エネルギー線照射により開始させることができる。硬化速度や作業性の点から光硬化が好ましい。光照射による硬化と共に加熱による硬化との併用も可能である。
【0125】
エネルギー線としては、電子線、放射線、紫外線などを用いることができ、好ましくは波長150〜450nmの紫外線である。このような波長を発する光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、フラッシュ型キセノン灯、カーボンアーク灯、LED型UV光源等が挙げられる。照射積算光量は、好ましくは0.1〜50J/cm2、より好ましくは0.2〜30J/cm2、更に好ましくは0.3〜3J/cm2の範囲内である。
【0126】
熱硬化の場合は、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等を用いればよい。加熱温度は、熱硬化触媒の分解温度や使用する基材の種類等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは50〜150℃、より好ましくは50〜100℃、更に好ましくは60〜90℃の範囲内である。加熱時間は、熱硬化触媒の分解温度や塗布厚み等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは1分間〜12時間、より好ましくは10分間〜6時間、更に好ましくは10分間〜3時間の範囲内である。
【0127】
さらに、光照射による硬化と共に電子線照射による硬化を併用して得てもよい。この場合、加速電圧は、好ましくは0〜500kV、より好ましくは20〜300kV、更に好ましくは30〜200kVの範囲内である電子線を用いればよい。また、照射量は、好ましくは2〜500kGy、より好ましくは3〜300kGy、更に好ましくは4〜200kGyの範囲内である。
【0128】
以上のようにして硬化反応を開始させることで、硬化性樹脂組成物は硬化する。ここでいう硬化とは、流動性のない状態にすることを意味し、形状を保持できる状態である。
【0129】
なお、非反応性樹脂である(C)成分及び(D)成分は、硬化反応に参与しないが、硬化物のネットワーク構造に取り込まれることができる。(C)成分、(D)成分いずれも硬化物との相溶性に優れているので、ポリブテン及び/またはポリイソブチレンが常温で液状であっても、脂環骨格含有ポリマーが(D)成分の溶媒に溶解した溶液状態として存在していても、硬化物の形状は保持される。
【0130】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物の硬化物は、無色透明性、特に高温、高湿で長時間保存された場合でも黄変、曇りが少なく、且つ密着性に優れている。
【0131】
具体的には、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期の黄色度(YI0)が1.0以下(好ましくは0.9以下)であり、且つ105℃で1000時間の条件下に暴露後の黄色度(YI1000)が1.9以下(好ましくは1.3以下)であって、YI0に対するYI1000の増加率、すなわち黄変度(ΔYI)が100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下である。黄色度(YI)は、例えば、spectro color meter SE2000(日本電色社)を用いて測定される値である。
【0132】
また、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の初期のヘイズ(H0)が0.5%以下(好ましくは0.2以下)であり、且つ85℃で85%RH1000時間環境下に暴露後のヘイズ(H1000)が1%以下(好ましくは0.5以下)であって、H0に対するH1000の増加率(ΔH)が100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下である。
【0133】
このように、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温、高湿度下で、長時間保持されても、無色透明性を保持することができる。従って、光学式表示部材同士の接着剤、充填剤といった従来より公知の用途はいうまでもなく、特に高温で長時間保持されるような仕様で、光学特性、耐熱性の要求が厳しい用途、例えば、車載用の光学機器、例えばカーナビや車内の計器などの静電容量式タッチパネルの透明ガラス板とディスプレイ、保護シートなどとの貼着、隙間の充填剤などとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り質量基準を意味する。
【0135】
<測定及び評価方法>
本実施例で採用した測定、評価方法は以下の通りである。
(1)数平均分子量(Mn)
テトラヒドロフランを移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/分の条件下で、東ソー社製のカラムTSK−gel SuperHM−H2本、TSK−gel SuperH2000 1本を使用し、東ソー社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0136】
(2)組成物粘度(mPa・s)
得られた樹脂組成物の粘度は、温度25℃の条件下で、R/S Rheometer(BROOKFIELD社製、コーンプレートC50-2)を用いて測定し、1rpmにおける値を測定値とした。
【0137】
(3)硬化性(J/cm
得られた樹脂組成物をガラス板で、樹脂組成物の厚みが4mmとなるように挟んだ状態で、コンベア式UV照射器(照射ランプ:フュージョン社製ランプ、Dバルブ、照度:200mW/cm、コンベアスピード:1.2m/分、UVセンサ:UIT−250(ウシオ電機社製))でUV光を1J/cm2ずつ照射していき、硬度値が一定になる光照射量を測定した。
【0138】
(4)硬度
硬化性の評価で作製した硬化物を、ガラス板から取り出し、この硬化物を試験片(幅20mm×長さ20mm×厚み4mm)として、Durometer E硬度計(アスカー社)を用いて硬度を測定した。
【0139】
(5)光線透過率(%)
樹脂組成物をガラス板(厚み1mm)で、樹脂組成物の厚みが0.3mmとなるように挟んだ状態で紫外線照射し(3J/cm2、30秒)硬化させた。ガラス板に挟んだ状態の硬化物試験片(幅50mm×長さ70mm×厚み0.3mm)について、400nmにおける光線透過率を分光光度計(形式「UV−3100」、島津製作所社製)を用いて測定した。
【0140】
(6)比誘電率ε(100kHz)
樹脂組成物をガラス板(厚み1mm)で、樹脂組成物の厚みが0.5mmとなるように挟んだ状態で紫外線照射し(3J/cm2、30秒)硬化させた。得られた硬化物試験片(幅50mm×長さ50mm×厚み0.5mm)を取り出し、電極(ソーラトロン社SH2−Z、電極直径10mm)で挟持し、インピーダンスアナライザ(ソーラトロン社S1−1260)でキャパシタンスを測定し、比誘電率を算出した。
【0141】
(7)密着性
樹脂組成物をガラス板(厚み1mm)で、樹脂組成物の厚みが0.3mmとなるように挟んだ状態で紫外線照射し(3J/cm2、30秒)硬化させた。ガラス板に挟んだ状態の試験片(幅50mm×長さ70mm×厚み0.3mm)について、下記評価を行った。なお、透明耐湿性、黄変度についても、当該方法で作製した試験片を用いた。
【0142】
(7−1)密着耐湿性
ガラス板に挟んだ状態の試験片を、恒温恒湿機中(温度85℃、湿度85%RH)で1000時間保持した。1000時間加熱後の試験片の状態(外観)を目視により確認した。変化なしの場合を「○」、ガラス板からのハガレが認められた場合又は液化が起こっていた場合を「×」とした。
(7−2)密着耐熱性
ガラス板に挟んだ状態の試験片を、105℃のオーブン中で1000時間加熱した。恒温恒湿機中(温度85℃、湿度85%RH)で1000時間保持した。その後、試験片を取り出し、試験片の状態(外観)を目視により確認し、密着耐湿性と同様の基準で評価した。
【0143】
(8)透明耐湿性
ガラス板に挟んだ状態の試験片(幅50mm×長さ70mm×厚み0.3mm)の耐湿試験前及び試験後(1000時間保持後)の曇り度(ヘイズ)を、Haze Meter NDH2000(日本電色工業社)を用いて測定した。試験前のヘイズ値(H0)及び1000時間保持後のヘイズ値(H1000)から、透明変化率(ΔH(%)=(H1000 −H0)/H0×100)を求めた。
【0144】
(9)黄変度
ガラス板に挟んだ状態の試験片(幅50mm×長さ70mm×厚み0.3mm)の黄色度(YI)を、Spectro Color Meter SE2000(日本電色工業社)を用いて測定した。加熱前の黄色度(YI0)及び105℃のオーブン中で1000時間加熱後の黄色度(YI1000)を測定し、黄変度(ΔYI(%)=(YI1000 −YI0)/YI0×100)を求めた。
【0145】
<A:α,β−不飽和カルボニル変性ジエン系ポリマーの合成>
(1)アクリロイル変性ポリブタジエン1(マルチユニット水添型、0.5当量)
溶媒として使用するイソボルニルアクリレート(日本触媒製)639.2gをいれた容器に、水添共役ジエン系ポリマーポリオールとして日本曹達製のNISSOPB GI-3000(数平均分子量3000,ヨウ素価21以下)1000gを仕込んだ。ウレタン化触媒ジブチルスズジバーサテート(0.53g)及び重合禁止剤アデカスタブAO−60(0.53g)を添加し、バブリング下、撹拌しながら77℃に加熱した。次いで、連結用化合物としてイソホロンジイソシアナート(住化バイエルウレタン社製、品番デスモジュールI、以下同様)28.32g(GI-3000に含まれる水酸基に対して0.5当量に相当)を投入し、80℃で120分間反応させ、多量体化した。続いて、α,β−不飽和化合物として、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工社製、品番カレンズAOI)35.97g(GI-3000に含まれる水酸基に対して0.5当量に相当)を投入し、80℃で120分間反応させて、マルチユニット型水添ポリブタジエン(0.5当量)のアクリロイル変性体1(Mn=8000)を得た。
【0146】
(2)アクリロイル変性ポリブタジエン2(マルチユニット非水添型、0.5当量)
水添共役ジエン系ポリマーポリオールとして日本曹達社製のNISSOPB GI-3000に代えて、非水添型の共役ジエン系ポリマーポリオールである日本曹達社製のG−3000を用いた以外は、アクリロイル変性ポリブタジエン1と同様の方法で合成を行い、アクリロイル変性ポリブタジエン2(0.5当量)(Mn=8000)を得た。
【0147】
<脂環骨格含有ポリマーの合成>
(1)ポリイソボルニルアクリレート7000(PIBA7000)
(1−1)PIBA7000−1
溶媒としてポリブテン(JX日鉱日石エネルギー製の日石ポリブテンHV−15(Mw=630)105gを入れた容器に、イソボルニルアクリレート(株式会社日本触媒製)44gを仕込み、窒素バブリング下、攪拌しながら77℃に加熱した。予めイソボルニルアクリレート16gで希釈した2,2’−アゾビス(3,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、「ABNV」と略記)0.6gとn−ドデシルメルカプタン1.2gを投入し、85℃で150分間反応させた。得られたポリイソボルニルアクリレートの数平均分子量は7000であった。こうして得られたポリイソボルニルアクリレートを「PIBA7000−1」と称する
このポリイソボルニルアクリレート(PIBA7000−1)溶液は、そのまま組成物No.1の調製に供した。
【0148】
(1−2)PIBA7000−2
溶媒としてトルエン105gをいれた容器に、イソボルニルアクリレート(株式会社日本触媒製)44gを仕込み、窒素バブリング下、攪拌しながら77℃に加熱した。予めイソボルニルアクリレート16gで希釈したABNV0.6gとn−ドデシルメルカプタン1.2gを投入し、85℃で150分間反応させた。得られたポリイソボルニルアクリレートの数平均分子量は7000であった。このようにして得られたポリイソボルニルアクリレートを、「PIBA7000−2」と称する。
このポリイソボルニルアクリレート(PIBA7000−2)溶液に、調製すべき組成に応じて所定量のイソボルニルアクリレート及びポリブテン(HV−15)を加え、トルエンを脱圧脱気し、組成物No.4,6の調製に供した。
【0149】
(2)ポリイソボルニルアクリレート50000(PIBA50000)
溶媒としてポリブテン(HV−15)105gを入れた容器に、イソボルニルアクリレート(株式会社日本触媒製)44gを仕込み、窒素バブリング下、攪拌しながら77℃に加熱した。予めイソボルニルアクリレート16gで希釈したABNV0.1gを投入し、85℃で150分間反応させた。得られたポリイソボルニルアクリレートの数平均分子量は50000であった。
得られたポリイソボルニルアクリレート(PIBA50000)溶液は、ポリブテン混合物として、組成物調製に供した。
【0150】
(3)ポリイソボルニルアクリレート100000(PIBA100000)
溶媒としてトルエン75gをいれた容器に、イソボルニルアクリレート(株式会社日本触媒製)44gを仕込み、窒素バブリング下、攪拌しながら77℃に加熱した。予めイソボルニルアクリレート16gで希釈したABNV0.1gを投入し、85℃で150分間反応させた。得られたポリイソボルニルアクリレートの数平均分子量は10万であった。得られたポリイソボルニルアクリレート(PIBA100000)溶液に、調製すべき組成に応じて所定量のイソボルニルアクリレート及びポリブテン(HV−15)を加え、トルエンを減圧脱気して、組成物調製に供した。
【0151】
(4)ポリイソボルニルメタクリレート7500(PIBM7500)
溶媒としてポリブテン(HV−15)175gを入れた容器に、イソボルニルメタクリレート(株式会社日本触媒製)75gを仕込み、窒素バブリング下、攪拌しながら77℃に加熱した。予めイソボルニルメタクリレート25gで希釈したABNV1.0gとn−ドデシルメルカプタン2.0gを投入し、85℃で150分間反応させた。得られたポリイソボルニルメタクリレートの数平均分子量は7500であった。
得られたポリイソボルニルメタクリレート(PIBM7500)溶液は、ポリブテン混合物として、組成物調製に供した。
【0152】
(5)ポリジシクロペンタニルアクリレート
イソボルニルアクリレートの代わりに、ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業製)を用いた以外は、(1)ポリイソボルニルアクリレートと同様に合成した。得られたポリジシクロペンタニルアクリレートの数平均分子量は8000であった。
得られたポリジシクロペンタニルアクリレート溶液は、ポリブテン混合物として、組成物調製に供した。
【0153】
<その他の非反応性樹脂:ポリイソデシルアクリレート>
イソボルニルアクリレートの代わりに、イソデシルアクリレート(サートマー製)を用いた以外は、(1)ポリイソボルニルアクリレートと同様に合成した。得られたポリイソデシルアクリレートの数平均分子量は6800であった。
得られたポリイソデシルアクリレート溶液は、ポリブテン混合物として、そのまま組成物調製に供した。
【0154】
<硬化性樹脂組成物No.1−9,11,12の調製>
上記で合成したアクリロイル変性ジエン系ポリマー溶液(溶媒:イソボルニルアクリレート);脂環骨格含有ポリマー溶液(溶媒:ポリブテン)、又はポリイソデシルアクリレート溶液(溶媒:ポリブテン)及びヒドロキシプロピルアクリレート(Tg−7℃、株式会社日本触媒製)を、表1に示す割合となるように混合した。さらに、光重合開始剤(E)としてイルガキュアTPO(モノアシルフォスフィンオキサイド)(BASF製)1質量部を添加混合し、ホモミキサー(プライミクス社製)で分散撹拌することにより樹脂組成物No.1−9,11,12を調製した。尚、脂環骨格含有ポリマー溶液における脂環骨格含有ポリマーとポリブテンとの含有量比率との関係から、組成物No.1については、PIBA7000−1のポリマー溶液(溶媒:ポリブテン)を使用し、組成物No.2,4については、PIBA7000−2を用いた。
得られた樹脂組成物の粘度を測定した。また、樹脂組成物の硬化性を上記評価方法にて測定したところ、いずれも2J/cm2であった。
【0155】
樹脂組成物を、上記測定評価方法に基づいて、硬度、光線透過率、比誘電率、密着性、透明耐湿性、黄変度を測定した。測定結果を表1に示す。なお、No.8については、粘度が高すぎて取扱い性に問題があったため、硬化物の評価を行わなかった。
【0156】
<硬化性樹脂組成物No.10の調製>
上記で合成したアクリロイル変性ジエン系ポリマー溶液(溶媒:イソボルニルアクリレート);非反応性樹脂としてポリブテン(HV−15);粘着付与剤としてKE-311(荒川化学工業社製の水添ロジンエステルの商品名)、及びヒドロキシプロピルアクリレート(Tg−7℃、株式会社日本触媒製)を表1に示す割合となるように配合した。さらに光重合開始剤(E)としてイルガキュアTPO(モノアシルフォスフィンオキサイド)(BASF製)1質量部を添加し、ホモミキサー(プライミクス社製)で分散撹拌することにより樹脂組成物No.10を調製した。
得られた樹脂組成物の粘度を測定した。また、樹脂組成物の硬化性を上記評価方法にて測定したところ、いずれも2J/cm2であった。
樹脂組成物を、上記測定評価方法に基づいて、硬度、光線透過率、比誘電率、密着性、透明耐湿性、黄変度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
表1からわかるように、非反応性樹脂として脂環骨格含有ポリマーを含有しない場合(No.9,12)は、密着性に劣っていた。
【0159】
No.10は、非反応性樹脂として脂環骨格含有ポリマーを含有しない組成物であるが、粘着性付与剤であるロジンエステルを含有していたため、密着性を確保できた。しかしながら、高温で長時間保持した場合の黄変度(ΔYI)が100%を超え、無色に対する要求が厳しい仕様では満足できないレベルであった。
一方、No.9について、高温で長時間保持した場合の黄変度(ΔYI)が小さかったのは、粘着性付与樹脂となる非反応性樹脂を含有しないためと考えられる。
【0160】
No.12は、脂環骨格含有ポリマーに代えて、脂環骨格を有しない長鎖アルキルアクリレートのポリマーを非反応性樹脂として含有する場合である。密着性が劣っていただけでなく、透明変化率(ΔH)、黄変度(ΔYI)が大きく、光学用途として、耐熱性、耐湿性が不足していた。
【0161】
一方、脂環骨格含有ポリマーを、アクリロイル変性ジエン系ポリマーとアクリレート系化合物とからなる硬化系に含有させた組成物No.1−7は、いずれも密着性、高温、高湿下での長時間保持の場合も、初期の無色透明性を保持することができた。したがって、無色透明性の要求が厳しい、ディスプレイ等の光学装置、特に、高温で長時間保持される車載用光学装置に好適に用いることができる。
【0162】
なお、No.1,2,7,8の比較から、脂環骨格含有ポリマーについて、分子量が高くなるほど硬化物の硬度が高くなる傾向があることがわかる。そして、脂環骨格含有ポリマーの分子量が10万の場合(No.8)には、組成物の粘度が高くなりすぎて透明な組成物を調製することが困難であった。
【0163】
また、No.1,4の比較から、脂環骨格含有ポリマーの分子量が同じであっても、含有量の増大に伴い、硬化物の硬度が高くなる傾向にあることがわかるが、硬化系のアクリロイル変性ジエン系ポリマーとアクリレート化合物の混合比率を変更することによりネットワークの密度を調節することができるので、これらの含有量を適宜調節することにより硬化物の硬度を調節できることがわかる(No.1,4とNo.6の比較)。
【0164】
No.11は、脂環骨格含有ポリマーを含有する場合であるが、高温下で長時間保持した場合の黄変度が大きかった。これは、アクリロイル変性ジエン系ポリマーとして、非水添系ポリブタジエンのアクリロイル変性体を用いているため、共役ジエン系ポリマーに由来する二重結合が黄変の原因となったためと考えられる。したがって、高度な無色透明性が要求される用途においては、(A)成分として、水添系共役ジエン系ポリマーのα,β−不飽和カルボニル変性体を用いる必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の硬化性樹脂組成物は、高温、高湿に長時間曝されても、無色透明性が保持でき、且つ優れた密着性を維持できるので、高温、高湿で使用される光学機器、特に車載用ディスプレイ等に用いる充填剤、接着剤として好適に用いることができる。