(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケトン化合物がアセトフェノン、ベンゾフェノン、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
前記フランアルデヒド化合物がフルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、5−アセトキシメチルフルフラールである請求項1又は2に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
耐火性粒子と請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳型造型用粘結剤組成物と当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤組成物とを混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<鋳型造型用粘結剤組成物>
本実施形態の鋳型造型用粘結剤組成物(以下、単に粘結剤組成物ともいう)は、フランアルデヒド化合物、及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物を3〜15質量%含有する。
R
1−CO−R
2 (1)
(前記一般式(1)において、R
1、R
2はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、R
1とR
2が環を形成する場合はR
1とR
2の炭素数の合計が3〜6の炭化水素基である)。当該粘結剤組成物によれば、SOx等の有害物質や有害ガスの発生を抑制しながら鋳型の強度が高く、鋳型の可撓性を向上させることができる。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下の様に考えられる。
【0011】
フランアルデヒド化合物を含有する樹脂に対し、特定構造のケトン化合物を添加すると当該ケトン化合物が可塑剤として働き、三次元網目構造中のソフトセグメントが増大するため、脆さが改善されることで、鋳型の可撓性が向上し、鋳型の強度を向上させることができると考えられる。
【0012】
〔フランアルデヒド化合物〕
前記粘結剤組成物は、SOx等の有害物質や有害ガスの発生を抑制する観点、及び鋳型の強度向上の観点から、フランアルデヒド化合物を含有する。前記フランアルデヒド化合物は、フラン環を有するアルデヒドであり、フルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が例示できる。これらの中でも、鋳型の強度向上の観点から、フルフラール、及び5−ヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、フルフラールがより好ましい。
【0013】
前記粘結剤組成物中の前記フランアルデヒド化合物の含有量は、鋳型の強度向上の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。前記粘結剤組成物中のフランアルデヒド化合物の含有量は、同様の観点から、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中のフランアルデヒド化合物の含有量は、同様の観点から、10〜85質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、20〜75質量%が更に好ましい。
【0014】
〔ケトン化合物〕
前記粘結剤組成物は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、前記一般式(1)で表されるケトン化合物を含有する。前記一般式(1)において、R
1、R
2がそれぞれ炭化水素基である場合、R
1、R
2の炭素数は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、それぞれ1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。R
1、R
2がそれぞれ炭化水素基である場合、R
1、R
2の炭素数は、同様の観点から、それぞれ6以下が好ましい。また、R
1、R
2がそれぞれ炭化水素基である場合、R
1、R
2の炭素数は、同様の観点から、それぞれ1〜6が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜6が更に好ましい。
【0015】
前記一般式(1)において、R
1とR
2が環を形成する場合、R
1とR
2の炭素数の合計は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。R
1とR
2が環を形成する場合、R
1とR
2の炭素数の合計は、同様の観点から、6以下が好ましい。また、R
1とR
2が環を形成する場合、R
1とR
2の炭素数の合計は、同様の観点から、3〜6が好ましく、4〜6がより好ましく、5又は6が更に好ましい。
【0016】
前記ケトン化合物は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、メシチルオキシド、メチルヘプテノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ホロン、イソホロン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、及びベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、アセトフェノン、ベンゾフェノン、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上がより好ましく、ベンゾフェノンが更に好ましい。
【0017】
前記粘結剤組成物中の前記ケトン化合物の含有量は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記ケトン化合物の含有量は、同様の観点から、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中の前記ケトン化合物の含有量は、同様の観点から、3〜15質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい。
【0018】
前記粘結剤組成物中における、前記フランアルデヒド化合物の含有量に対する前記ケトン化合物の含有量の比(フランアルデヒド化合物の含有量/ケトン化合物の含有量)は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中における、前記フランアルデヒド化合物の含有量に対する前記ケトン化合物の含有量の比は、同様の観点から、30以下が好ましく、23以下がより好ましく、14以下が更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中における、前記フランアルデヒド化合物の含有量に対する前記ケトン化合物の含有量の比は、同様の観点から、3〜30が好ましく、5〜23がより好ましく、7〜14が更に好ましい。
【0019】
〔その他の成分〕
[酸硬化性樹脂]
前記粘結剤組成物には、粘結剤成分として従来公知の酸硬化性樹脂が含まれていても良い。当該酸硬化性樹脂としては、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素変性フラン樹脂)、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物よりなる群から選ばれる1種からなるものや、これらの群から選ばれる2種以上の混合物からなるものが例示できる。また、これらの群から選ばれる2種以上の共縮合物からなるものも使用できる。このうち、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、フルフリルアルコール、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)から選ばれる1種以上、並びにこれらの共縮合物を使用するのが好ましい。フルフリルアルコールは、非石油資源である植物から製造できるため、地球環境の観点からは、フルフリルアルコールを使用するのが好ましい。
【0020】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、フルフラール、テレフタルアルデヒド等が挙げられ、これらのうち1種以上を適宜使用できる。鋳型の強度向上の観点からは、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0021】
前記粘結剤組成物中の前記酸硬化性樹脂の含有量は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記酸硬化性樹脂の含有量は、同様の観点から、90質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中の前記酸硬化性樹脂の含有量は、同様の観点から、1〜90質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜30質量%が更に好ましい。
【0022】
〔尿素〕
前記粘結剤組成物は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、尿素を含んでもよい。
【0023】
前記尿素とは、ホルムアルデヒドやフルフリルアルコール等と縮合反応していない尿素であり、未反応分として残存したものでも、別途添加されたものでも何れでも良い。前記粘結剤組成物中の前記尿素の含有量は、鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記尿素の含有量は、硬化速度を向上させ、鋳型の強度を向上させ、ホルムアルデヒド濃度を低減させる観点から、10質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく4.5質量%以下が更に好ましい。
【0024】
なお、粘結剤組成物中の尿素は、以下のようなLC/MS分析操作により測定することができる。サンプルの調製は、アセトン/水=50/50の混合溶液で100倍希釈し、さらに移動相で100倍希釈する。
<LC/MS分析条件>
カラム:Unison UK−Amino HT
移動相:0.1% TFA アセトニトリル/水=95/5
流量:0.2mL/min
カラム温度:40℃
MS:SIM m/z:61.0 [M+H]+
【0025】
アミノ基を有する化合物(例えば尿素など)から得られる粘結剤組成物では、当該アミノ基が樹脂成分と架橋結合を形成すると考えられ、得られる鋳型の可撓性に好ましい影響を与えることが推測される。アミノ基の含有量は窒素含有量(質量%)で見積もることが出来る。鋳型の強度向上の観点、及び鋳型の可撓性向上の観点から、前記粘結剤組成物中の窒素含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、1.8質量%以上がより更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中の窒素含有量は、同様の観点から、4.0質量%以下が好ましく、3.8質量%以下がより好ましく、3.7質量%以下が更に好ましく、3.6質量%以下がより更に好ましい。また、前記粘結剤組成物中の窒素含有量は、同様の観点から、0.5〜4.0質量%が好ましく、1.0〜3.8質量%がより好ましく、1.5〜3.7質量%が更に好ましく、1.8〜3.6質量%がより更に好ましい。前記粘結剤組成物中の窒素含有量を前記範囲内に調整するには、前記粘結剤組成物中の窒素含有化合物の含有量を調整すればよい。窒素含有化合物としては、尿素、メラミン、尿素とアルデヒド類の縮合物、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)、メラミンとアルデヒド類の縮合物、尿素樹脂及び尿素変性樹脂等が好ましい。前記粘結剤組成物中の窒素含有量は、ケルダール法により定量することが出来る。更には、尿素、尿素樹脂、フルフリルアルコール・尿素樹脂(尿素変性樹脂)、及びフルフリルアルコール・尿素ホルムアルデヒド樹脂由来の窒素含有量は、尿素由来のカルボニル基(C=O基)を13C−NMRで定量することで求めることも出来る。
【0026】
〔硬化促進剤〕
前記粘結剤組成物中には、鋳型の硬化速度向上の観点から、硬化促進剤が含まれていてもよい。硬化促進剤としては、鋳型の硬化速度向上の観点、及び鋳型の強度向上の観点から、下記一般式(2)で表される化合物(以下、硬化促進剤(1)という)、フェノール誘導体、芳香族ジアルデヒド、及びタンニン類からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
【化1】
〔式中、X
1及びX
2は、それぞれ水素原子、CH
3又はC
2H
5の何れかを表す。〕
【0028】
前記粘結剤組成物中の前記硬化促進剤の含有量は、鋳型の硬化速度向上の観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。前記粘結剤組成物中の前記硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の粘結剤組成物への溶解性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0029】
前記硬化促進剤(1)としては、2,5−ビスヒドロキシメチルフラン、2,5−ビスメトキシメチルフラン、2,5−ビスエトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−メトキシメチルフラン、2−ヒドロキシメチル−5−エトキシメチルフラン、2−メトキシメチル−5−エトキシメチルフランが挙げられる。なかでも、鋳型の硬化速度向上の観点から、2,5−ビスヒドロキシメチルフランを使用するのが好ましい。
【0030】
前記フェノール誘導体としては、例えばレゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール等が挙げられる。なかでも、鋳型の硬化速度向上の観点から、レゾルシンが好ましい。前記粘結剤組成物中の前記フェノール誘導体の含有量は、フェノール誘導体の粘結剤組成物への溶解性の観点、鋳型の硬化速度向上の観点から、1〜25質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。なかでも、レゾルシンを用いる場合は、前記粘結剤組成物中のレゾルシンの含有量は、レゾルシンの粘結剤組成物への溶解性の観点から、1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましく、3〜6質量%が更に好ましい。
【0031】
前記芳香族ジアルデヒドとしては、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド及びイソフタルアルデヒド等、並びにそれらの誘導体等が挙げられる。それらの誘導体とは、基本骨格としての2つのホルミル基を有する芳香族化合物の芳香環にアルキル基等の置換基を有する化合物等を意味する。鋳型の硬化速度向上の観点から、テレフタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒドの誘導体が好ましく、テレフタルアルデヒドがより好ましい。前記粘結剤組成物中の芳香族ジアルデヒドの含有量は、芳香族ジアルデヒドを粘結剤組成物に十分に溶解させる観点、及び芳香族ジアルデヒド自体の臭気を抑制する観点から、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。
【0032】
タンニン類としては、縮合タンニンや加水分解型タンニンが挙げられる。これら縮合タンニンや加水分解型タンニンの例としては、ピロガロール骨格やレゾルシン骨格を持つタンニンが挙げられる。また、これらタンニン類を含有する樹皮抽出物や植物由来の葉、実、種、植物に寄生した虫こぶ等の天然物からの抽出物を添加しても構わない。
【0033】
〔水〕
前記粘結剤組成物中には、水が含まれてもよい。例えば、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物などの各種縮合物を合成する場合、水溶液状の原料を使用したり縮合水が生成したりするため、縮合物は、通常、水との混合物の形態で得られる。このような縮合物を前記粘結剤組成物に使用するにあたり、水は必要に応じて、トッピング等で除去しても構わないが、硬化反応速度を維持できる限り、製造の際にあえて除去する必要はない。また、前記粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する目的などで、水をさらに添加してもよい。前記粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する目的で水をさらに添加する場合、前記粘結剤組成物の水の含有量は0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましい。ただし、硬化反応速度を維持する観点から、前記粘結剤組成物の水の含有量は30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。また、前記粘結剤組成物の水の含有量は、前記粘結剤組成物を取扱いやすい粘度に調整する観点、及び硬化反応速度を維持する観点から、0.5〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、3〜25質量%が更に好ましい。
【0034】
前記粘結剤組成物中には、シランカップリング剤が含まれていてもよい。例えば、前記粘結剤組成物中にシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の強度をより向上させることができるため好ましい。シランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランや、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシランなどが用いられる。好ましくは、アミノシラン、エポキシシラン、ウレイドシランである。より好ましくはアミノシラン、エポキシシランである。アミノシランの中でも、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。エポキシシランの中でも、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。シランカップリング剤の前記粘結剤組成物中の含有量は、鋳型の強度向上の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤の前記粘結剤組成物中の含有量は、同様の観点から、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
【0035】
<鋳型造型用組成物>
本実施形態の鋳型造型用組成物は、前記鋳型造型用粘結剤組成物、及び当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤組成物を含有する。
【0036】
前記硬化剤組成物は、前記粘結剤組成物を硬化させるものである。当該硬化剤組成物としては、o−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のカルボン酸、キシレンスルホン酸(特に、m−キシレンスルホン酸)やトルエンスルホン酸(特に、p−トルエンスルホン酸)、メタンスルホン酸等のスルホン酸系化合物、リン酸、酸性リン酸エステル等のリン酸系化合物、硫酸等を含む酸性水溶液など、従来公知のものを1種以上使用できる。ただし、スルホン酸や硫酸などの硫黄を含む酸を含有する硬化剤組成物を使用した場合、鋳造時にSOxガスが発生するため、硬化剤組成物中の硫黄を含む酸の含有量は、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましく、実質的に0%がより更に好ましい。係る場合、鋳造時のSOxガスの発生量をゼロにすることができる。SOxガスを抑制しながら鋳型の強度向上の観点から、前記硬化剤組成物はカルボン酸が好ましく、当該カルボン酸の中でも2,6−ジヒドロキシ安息香酸が好ましい。
【0037】
前記硬化剤組成物は、アルコール類、エーテルアルコール類及びエステル類よりなる群から選ばれる1種以上の溶剤を含有させることができる。これらの中でも、鋳型の強度向上の観点から、アルコール類、エーテルアルコール類が好ましく、エーテルアルコール類がより好ましい。前記溶剤を含有させると、前記硬化剤組成物中の水分量が低減されるため、鋳型の強度が更に向上する。前記溶剤の硬化剤組成物中の含有量は、鋳型の強度向上の観点から、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。また、前記硬化剤組成物の粘度を低減させる観点からは、メタノールやエタノールを含有させることが好ましい。
【0038】
鋳型の強度向上の観点から、前記アルコール類としては、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコールが好ましく、前記エーテルアルコール類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルが好ましく、前記エステル類としては、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが好ましい。
【0039】
更に、前記粘結剤組成物と前記硬化剤組成物の質量比は、鋳型の硬化速度向上の観点及び鋳型の強度向上の観点から、前記粘結剤組成物100質量部に対して、前記硬化剤組成物20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。前記粘結剤組成物と前記硬化剤組成物の質量比は、経済性の観点及び鋳物品質向上の観点から、前記粘結剤組成物100質量部に対して、前記硬化剤組成物100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい。
【0040】
<鋳型用組成物>
本実施形態の鋳型用組成物は、前記鋳型造型用粘結剤組成物、前記硬化剤組成物、及び耐火性粒子を含有する。
【0041】
前記耐火性粒子としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収したものや再生処理したものなども使用できる。
【0042】
前記鋳型用組成物において、前記耐火性粒子と前記粘結剤組成物と前記硬化剤組成物との比率は適宜設定できるが、鋳型の硬化速度向上の観点及び鋳型の強度向上の観点から、前記耐火性粒子100質量部に対して、前記粘結剤組成物が0.5質量部以上が好ましく、経済性の観点及び鋳物品質向上の観点から、前記耐火性粒子100質量部に対して、1.5質量部以下が好ましい。鋳型の硬化速度向上の観点及び鋳型の強度向上の観点から、前記耐火性粒子100質量部に対して、前記硬化剤組成物は0.07質量部以上が好ましく、経済性の観点及び鋳物品質向上の観点から、前記耐火性粒子100質量部に対して、1.0質量部以下が好ましい。
【0043】
前記鋳型用組成物を硬化させることによって鋳型を製造することができる。本実施形態の鋳型の製造方法において、従来の鋳型の製造プロセスをそのまま利用して鋳型を製造することができる。好ましい鋳型の製造方法として、前記耐火性粒子と前記鋳型造型用粘結剤組成物と、前記硬化剤組成物とを混合して前記鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法が挙げられる。
【0044】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
【0045】
<1>フランアルデヒド化合物、及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物を3〜15質量%含有する鋳型造型用粘結剤組成物。
R
1−CO−R
2 (1)
(前記一般式(1)において、R
1、R
2はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、R
1とR
2が環を形成する場合はR
1とR
2の炭素数の合計が3〜6の炭化水素基である。)
<2>前記フランアルデヒド化合物が、フルフラール、5−ヒドロキシメチルフルフラール、及び5−アセトキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、フルフラール、及び5−ヒドロキシメチルフルフラールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上がより好ましく、フルフラールが更に好ましい<1>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<3>前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記フランアルデヒド化合物の含有量が、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、10〜85質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、20〜75質量%が更に好ましい<1>又は<2>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<4>前記一般式(1)において、R
1、R
2がそれぞれ炭化水素基である場合、R
1、R
2の炭素数が、それぞれ1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、6以下が好ましく、1〜6が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜6が更に好ましい<1>〜<3>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<5>前記一般式(1)において、R
1とR
2が環を形成する場合、R
1とR
2の炭素数の合計が、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、6以下が好ましく、3〜6が好ましく、4〜6がより好ましく、5又は6が更に好ましい<1>〜<4>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<6>前記ケトン化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ピナコロン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、メシチルオキシド、メチルヘプテノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ホロン、イソホロン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、及びベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、アセトフェノン、ベンゾフェノン、及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上がより好ましく、ベンゾフェノンが更に好ましい<1>〜<5>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<7>前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記ケトン化合物の含有量が、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、3〜15質量%が好ましく、4〜12質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい<1>〜<6>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<8>前記鋳型造型用粘結剤組成物中における、前記フランアルデヒド化合物の含有量に対する前記ケトン化合物の含有量の比(フランアルデヒド化合物の含有量/ケトン化合物の含有量)が、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましく、30以下が好ましく、23以下がより好ましく、14以下が更に好ましく、3〜30が好ましく、5〜23がより好ましく、7〜14が更に好ましい<1>〜<7>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<9>更に、酸硬化性樹脂を含むのが好ましい<1>〜<8>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<10>前記酸硬化性樹脂が、フルフリルアルコール、フルフリルアルコールの縮合物、フルフリルアルコールとアルデヒド類の縮合物、フルフリルアルコールと尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素変性フラン樹脂)、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)、メラミンとアルデヒド類の縮合物、及び尿素とアルデヒド類の縮合物からなる群、並びに当該群から選ばれる2種以上の共縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、フルフリルアルコール、尿素とエチレン尿素とアルデヒド類の縮合物(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)から選ばれる1種以上、並びにこれらの共縮合物がより好ましく、フルフリルアルコールが更に好ましい<9>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<11>前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記酸硬化性樹脂の含有量が、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、90質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、1〜90質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜30質量%がより好ましい<9>又は<10>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<12>更に、尿素を含むのが好ましい<1>〜<11>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<13>前記鋳型造型用粘結剤組成物中の前記尿素の含有量が、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、10質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく4.5質量%以下が更に好ましい<12>に記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<14>前記鋳型造型用粘結剤組成物中の窒素含有量が、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、1.8質量%以上がより更に好ましく、4.0質量%以下が好ましく、3.8質量%以下がより好ましく、3.7質量%以下が更に好ましく、3.6質量%以下がより更に好ましく、0.5〜4.0質量%が好ましく、1.0〜3.8質量%がより好ましく、1.5〜3.7質量%が更に好ましく、1.8〜3.6質量%がより更に好ましい<1>〜<13>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<15>更に、シランカップリング剤を含むのが好ましい<1>〜<14>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<16>前記シランカップリング剤の前記鋳型造型用粘結剤組成物中の含有量が、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい<1>〜<15>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物。
<17><1>〜<16>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤組成物を含有する鋳型造型用組成物。
<18>前記硬化剤組成物中の硫黄を含む酸の含有量が、60質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましく、実質的に0%がより更に好ましい<17>に記載の鋳型造型用組成物。
<19>前記硬化剤組成物が、カルボン酸が好ましい<17>又は<18>に記載の鋳型造型用組成物。
<20>前記硬化剤組成物が、2,6−ジヒドロキシ安息香酸が好ましい<17>〜<19>いずれかに記載の鋳型造型用組成物。
<21>前記鋳型造型用粘結剤組成物と前記硬化剤組成物の質量比が、前記粘結剤組成物100質量部に対して、前記硬化剤組成物20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましい<17>〜<20>いずれかに記載の鋳型造型用組成物。
<22><1>〜<16>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物、前記鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤組成物、及び耐火性粒子を含有する鋳型用組成物。
<23>前記硬化剤組成物が、<17>〜<21>いずれかに記載の鋳型造型用組成物に含有される硬化剤組成物である<22>に記載の鋳型用組成物。
<24>前記耐火性粒子100質量部に対して、前記鋳型造型用粘結剤組成物が0.5質量部以上が好ましく、1.5質量部以下が好ましい<22>又は<23>に記載の鋳型用組成物。
<25>前記耐火性粒子100質量部に対して、前記硬化剤組成物が0.07質量部以上が好ましく、1.0質量部以下が好ましい<22>〜<24>いずれかに記載の鋳型用組成物。
<26>耐火性粒子と<1>〜<16>いずれかに記載の鋳型造型用粘結剤組成物と当該鋳型造型用粘結剤組成物を硬化させる硬化剤組成物とを混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法。
<27>前記硬化剤組成物が、<17>〜<21>いずれかに記載の鋳型造型用組成物に含有される硬化剤組成物である<26>に記載の鋳型の製造方法。
<28>前記<1>〜<16>いずれかに記載の組成物の鋳型造型用粘結剤組成物としての使用。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0047】
<原料の製造>
〔縮合物1(尿素・エチレン尿素共縮合樹脂)の製造〕
三ツ口フラスコに37%ホルムアルデヒド液100質量部と、エチレン尿素を106質量部と、尿素を25質量部とを混合し、100℃で3時間反応させ、縮合物1を得た。縮合物1の組成は、尿素・エチレン尿素共縮合樹脂66質量%、水34質量%であった。
【0048】
<実施例1〜7、比較例1〜3>
〔粘結剤組成物の製造〕
表1に示すフランアルデヒド化合物、フルフリルアルコール、酸硬化性樹脂、尿素、ケトン化合物、及びシランカップリング剤をそれぞれ所定の質量比率で混合し、実施例1〜7、及び比較例1〜3の粘結剤組成物を製造した。なお、表1中、「FL」はフルフラール、「FFA」はフルフリルアルコールを意味する。また、シランカップリング剤は3‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM-402、信越化学工業株式会社製)を用いた。
【0049】
〔粘結剤組成物中の窒素含有量〕
JIS M 8813に示されるケルダール法にて測定を行った。粘結剤組成物中の窒素含有量は比較例、実施例ともに全て1.8質量%であった。
【0050】
〔鋳型用組成物〕
25℃、55%RHの条件下で、珪砂(フリーマントル)新砂100質量部に対し、表1に示す硬化剤組成物0.7質量部を添加し、次いで表1に示す粘結剤組成物1.0質量部を添加し、これらを混合して鋳型用組成物(混練砂)を得た。なお、表1中、2,6−DHBは2,6−ジヒドロキシ安息香酸を意味する。
【0051】
<試験例>
〔試験例1:鋳型の強度〕
25℃、55%RHの条件下で、混練した直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、同条件下で1時間経過したときに抜型を行い、JIS Z 2601に記載された方法で、テストピースの圧縮強度(MPa)を測定し、「1時間後強度」とした。「1時間後強度」の数値が高いものほど、硬化速度が速いことを示す。また、別途同様に作製し1時間後に抜型したテストピースは、充填から24時間後にJIS Z 2601に記載された方法で、テストピースの圧縮強度(MPa)を測定し、「24時間後強度」とした。「24時間後の圧縮強度」が高いものほど、鋳型強度が高いことを示す。得られた結果を表1に示す。
【0052】
〔試験例2:鋳型の可撓性〕
25℃、55%RHの条件下で、混練した直後の混練砂を直径50mm、高さ50mmの円柱形状のテストピース枠に充填し、同条件下で所定時間放置した後に抜型を行い、JIS Z 2601に記載された方法で、テストピースの圧縮強度(MPa)を測定し、得られた測定値が放置後はじめて1.0MPaに到達したときの充填直後からの放置時間を抜型時間とした。
【0053】
25℃、55%RHの条件下で、混練した直後の混練砂を長さ180mm、幅23mm、厚み23mmの直方体状のテストピース枠に充填し、同条件下で放置し、上述した抜型時間経過時に抜型した後、JIS K 7171に基づいて、荷重速度10mm/min、支点間距離120mmでテストピースが破断するまでの変位(mm)を測定した。当該変位が大きいほど鋳型の可撓性が高いことを示す。得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】