【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり部分放電現象及び絶縁劣化に対する対策が求められているが、特許文献1〜3等の従来の技術をもってしても未だ充分ではなく、この点で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部分放電現象による絶縁破壊や絶縁劣化を充分に抑制することができ、しかも溶媒や樹脂等のマトリックス中への均一分散性にも優れる材料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、部分放電現象及び絶縁劣化を防ぐ又は抑制する対策について検討するうち、一般的な層状シリケートは、面部分がアニオン性を、端部がカチオン性を有することに起因して、溶媒や樹脂等のマトリックス中に分散した場合に、シリケート粒子間において面部と端部とで静電気的結合を生じ、カードハウス構造と称される構造を形成することに着目した。この構造ではシリケート粒子同士が密に積層した構造を形成することが難しく、部分放電による絶縁破壊を充分に抑制することができない。そこで、シロキサン結合及びアミド結合を含む所定構造のシロキサン化合物を、層状シリケートに併用させると、アミド結合がカチオン性を有することに起因して、シロキサン化合物が層状シリケートの面部分に静電的に配位し、これにより粒子同士が密に積層した構造を取りやすくなり、部分放電による絶縁破壊が充分に抑制されることを見いだした。このシロキサン化合物はナノオーダーで空隙を有するため、高電界下に晒されても空間電荷の蓄積が小さいと予想され、これを併用することで、部分放電による絶縁劣化速度を小さくすることも可能になる。
【0008】
だが、検討を重ねるうち、このようなシロキサン化合物は、オニウム塩等に比べると配位能が低いため、併用する層状シリケートによっては、層間進入が不充分となり、マトリックス中への均一分散が難しいことを見いだした。そこで、このシロキサン化合物とともに用いる層状シリケートとして、所定の組成からなる層間シリケート化合物を用いれば、シロキサン化合物が充分に層間進入でき、部分放電現象による絶縁破壊や絶縁劣化を充分に抑制するとともに、アモルファス化させることも可能になることを見いだした。このようにして本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、シロキサン化合物と層状シリケート化合物とを含む組成物であって、
該シロキサン化合物は、シロキサン結合を有し、かつ下記平均組成式(1):
X
aY
bZ
cSiO
d (1)
(式中、Xは、同一又は異なって、アミド結合を含む有機基を表す。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR
1基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。R
1は、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表し、置換基を有していてもよい。Zは、同一又は異なって、アミド結合を含まない有機基を表す。aは、0でない3以下の数であり、b及びcは、同一又は異なって、0又は3未満の数であり、dは、0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表され、
該層状シリケート化合物は、下記平均組成式(2):
Si
4−eAl
eMg
3−fNa
0.33O
10(OH)
2 (2)
(式中、e及びfは、同一又は異なって、0以上1未満の数である。)で表される組成物である。
【0010】
上記層状シリケート化合物は、アスペクト比が2〜100であり、かつ陽イオン交換容量が10〜150meq/100gであることが好ましい。これにより、部分放電現象による絶縁破壊や絶縁劣化をより充分に抑制することが可能になる。
【0011】
本発明はまた、上記組成物と、有機樹脂とを含む樹脂組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
【0012】
〔シロキサン化合物と層状シリケート化合物とを含む組成物〕
本発明の第一の態様である、シロキサン化合物と層状シリケート化合物とを含む組成物(「組成物」又は「本発明の組成物」とも称す)についてまず説明する。
【0013】
本発明の組成物は、シロキサン化合物と層状シリケート化合物とを含むが、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。なお、本発明の組成物は、シロキサン化合物と層状シリケート化合物とを、これらが一体化した形態で含むことが好ましい。すなわちシロキサン化合物と層状シリケート化合物との複合体を含むことが好ましい。
【0014】
上記組成物において、シロキサン化合物の含有量(2種以上用いる場合はその総量)は、層状シリケート化合物の総量100質量部に対し、10〜1500質量部であることが好ましい。これにより、シロキサン化合物が層状シリケート化合物をより充分に分散させることができる。より好ましくは50〜1000質量部、更に好ましくは100〜500質量部である。
【0015】
1)シロキサン化合物
上記シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si−O結合)を有し、かつ上記平均組成式(1)で表されるものである。このようなシロキサン化合物が有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)は、(SiO
m)
nと表すこともできる。シロキサン化合物における(SiO
m)
n以外の構造は、X、Y及びZであり、これらは主鎖骨格のケイ素原子に結合することとなる。
上記シロキサン化合物はまた、ポリシルセスキオキサンであることが好ましい。
【0016】
上記シロキサン骨格は、例えば、鎖状(直鎖状又は分岐状)、ラダー状、網状、環状、籠状、キュービック状等であることが好ましい。中でも、シロキサン化合物が少量であっても効果が発揮されやすい観点から、ラダー状、網状、又は、籠状であることが好ましい。より好ましくは、ラダー状又は籠状である。なお、本明細書中、籠状構造とは、不完全型籠状構造も含むものとする。
X、Y及びZは、「鎖」の形態となった繰り返し単位に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。例えば、Xは、側鎖として1分子に1つ以上含まれていればよい。
【0017】
上記(SiO
m)
nにおいて、nは重合度を表す。重合度は、主鎖骨格の重合度を表すが、アミド結合を有する有機基Xは、必ずしもn個存在していなくてもよい。言い換えれば、(SiO
m)
nの1つの単位に必ず1つのアミド結合を有する有機基Xが存在していなくてもよい。また、アミド結合を有する有機基Xは、1分子中に1つ以上含まれていればよいが、複数含まれる場合、1つのケイ素原子に2以上のアミド結合を有する有機基が結合していてもよい。
【0018】
上記主鎖骨格(SiO
m)
nにおいて、mは、1以上、2未満の数であることが好ましい。より好ましくは1.5〜1.8である。nは重合度を表し、1〜5000であることが好ましい。より好ましくは1〜2000、更に好ましくは1〜1000であり、特に好ましくは1〜200である。
【0019】
ここで、例えば、nが2である場合のシロキサン化合物としては、ケイ素原子にアミド結合を有する有機基(X)が少なくとも1個結合してなる構成単位(「構成単位(I)」とも称す)が2つ含まれる形態と、該構成単位(I)が1つしか含まれない形態が挙げられる。具体的には、下記式:
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、AはY又はZであり、X、Y及びZは、各々上記と同様である。)等が好適であり、同一の構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、異なる構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、当該構成単位(I)を1つしか含まないコポリマーの形態(共縮合構造の形態)がある。
【0022】
上記シロキサン化合物において、シロキサン骨格の占める割合は、シロキサン化合物100質量%中、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜70質量%、更に好ましくは20〜50質量%である。
【0023】
上記平均組成式(1)において、Xは、アミド結合を含む有機基を表す。この有機基として好ましくは、アミド結合と、疎水基と、有機骨格とを含む基である。中でも、「−N(H)−C(=O)−R
2(R
2は、疎水基を表す)」で表される基と、有機骨格とを含む基であることがより好ましい。
【0024】
上記疎水基は、シロキサン化合物と併用される層状シリケート化合物や有機樹脂との相溶性を考慮して選択することが好適である。例えば、炭素数1〜30の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、炭素数3〜30の飽和脂環式炭化水素基(シクロアルキル基)、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基等が好ましい。より好ましくは、炭素数3〜20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基であり、直鎖又は分岐鎖アルキル基の中でも直鎖アルキル基が好適である。中でも、耐熱性が特に求められる用途に用いる場合は、疎水基(R
2)は芳香族炭化水素基であることが特に好ましい。芳香族炭化水素基の中でも好ましくは、フェニル基である。
【0025】
ここで、上記シロキサン化合物と有機樹脂とを併用する場合において、有機樹脂としてPMMAを用いる場合、疎水基は、直鎖状アルキル基であることが好ましく、中でも、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。更に好ましくは、炭素数6〜11の直鎖状アルキル基である。これにより、PMMAとの相溶性がより向上され、透明性に優れる硬化物が得られるため、光学フィルム用途に特に好適なものとなる。また、有機樹脂としてPStを用いる場合、疎水基は、芳香族炭化水素基であることが好ましく、中でも、フェニル基であることがより好ましい。これにより、PStとの相溶性がより向上され、透明性に優れる硬化物が得られるため、光学フィルム用途に特に好適なものとなる。
【0026】
上記疎水基はまた、置換基を有していてもよい。置換基としては特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基等が挙げられる。
【0027】
上記有機骨格としては、例えば、(1)炭素数1〜6の(ポリ)アルキレン基を有する構造、(2)2級アミノ基を有する構造、又は、(3)3級アミノ基を有する構造、のいずれか1以上の構造が好ましい。特に上記Xは、これらの有機骨格のいずれか1以上の構造の末端に、アミド結合を介して疎水基を有する構造であることがより好ましい。中でも、シロキサン化合物の熱的安定性がより高まる点で、炭素数1〜6の(ポリ)アルキレン基の末端に、アミド結合を介して疎水基を有する構造が更に好ましい。
なお、上記シロキサン化合物が籠状形状をとる場合、有機骨格層がシェル部分、無機骨格層がコア部分となる形態であることが特に好ましい。
【0028】
上記Xとして特に好ましくは、下記一般式(3):
【0029】
【化2】
【0030】
(式中、R
2は、上述した疎水基を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される構造(基)である。式(3)中、x+zは、0以上10以下の整数であるが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5、更に好ましくは3である。また、yは0であることが好ましい。
【0031】
Xの係数aは、0でない3以下の数である。すなわち0<a≦3を満たす数である。このaは、Xで表される有機基が占める割合が、後述する好ましい範囲になるよう設定することが好適である。例えば、aは0.2以上であることが好ましく、これにより、耐熱性、耐加水分解性等がより向上するとともに、層状シリケート化合物の分散性がより高められ、絶縁性やガスバリア性等により優れた組成物が得られる。より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.8以上であり、また、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下であり、最も好ましくは1である。
【0032】
上記シロキサン化合物において、アミド基導入率は、20%以上であることが好ましい。これにより、耐熱性、耐加水分解性等がより向上するとともに、層状シリケート化合物の分散性がより高められ、絶縁性やガスバリア性等により優れた組成物が得られる。より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であり、また、好ましくは300%以下、より好ましくは200%以下、更に好ましくは150%以下であり、最も好ましくは100%以下である。
本明細書中、アミド基導入率は、ガスクロマトグラフィ(GC)を用いて反応基質の消費量を追跡することで算出することができる。
【0033】
Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR
1基からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。中でも、水酸基又はOR
1基が好適である。より好ましくはOR
1基であり、更に好ましくは、R
1が炭素数1〜8のアルキル基を表す場合のOR
1基である。
【0034】
Zは、アミド結合を含まない有機基を表す。具体的には、アルキル基;アリール基、アラルキル基等の芳香族残基;不飽和脂肪族残基;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよい。好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、芳香族残基である。
【0035】
Yの係数b及びZの係数cは、それぞれ、0又は3未満の数である。すなわち0≦b<3、0≦c<3を満たす数である。酸素原子Oの係数dは、0でない2未満の数である。すなわち0<d<2を満たす数である。これらの係数は、Xの係数aが上述した好ましい範囲になるように設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0036】
上記シロキサン化合物はまた、下記計算式(α)で求められるシラノール基量が、0.1以下であることが好ましい。
[Si−OH結合モル数]/[Si−O結合モル数] (α)
これにより、上記組成物が著しく低粘度化する他、上記組成物やそれを用いて得た硬化物が耐吸湿性(低吸湿性)に極めて優れたものとなる。計算式(α)で求められるシラノール基量は、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.01以下である。特に好ましくは、上記シロキサン化合物が残存シラノール基を有さないことである。
ここで、[Si−OH結合モル数]とは、SiとOHとの結合数をモル数で表す。例えば、1モルのSi原子のそれぞれに2つのOH基が結合している場合には、[Si−OH結合モル数]は2モルとなる。Si−O結合モル数についても同様に数えるものとする。
【0037】
上記シロキサン化合物として特に好ましくは、上述したように、籠状又はラダー状のシロキサン骨格(ポリシロキサン骨格)を有することである。ラダー状のシロキサン骨格(ポリシロキサン骨格)を有する場合、本発明の組成物は耐熱性により優れたものとなる。また、籠状のシロキサン骨格(ポリシロキサン骨格)を有する場合、本発明の組成物は耐熱性や低吸湿性により優れるとともに、粘度が低減されたものとなる。
【0038】
ここで、ラダー状のシロキサン骨格とは、シロキサン結合(Si−O結合)からなる直鎖状のシロキサン鎖を2つ有し、1の直鎖状のシロキサン鎖を構成するケイ素原子と他の直鎖状のシロキサン鎖を構成するケイ素原子とが1つの酸素原子を介して結合することにより、当該2つの直鎖状のシロキサン鎖が、平行に位置している骨格を意味する。籠状のシロキサン骨格とは、シロキサン結合(Si−O結合)からなるシロキサン鎖が立体的に結合された骨格を意味し、例えば、〔R
aSiO
1.5〕
n(nは2の倍数で、かつ4以上の整数である。R
aは後述する。)で表すことができる。
以下に、これらのシロキサン化合物について、更に説明する。
【0039】
1−1)籠状ポリシロキサン化合物
籠状ポリシロキサン化合物として好ましくは、下記式(1−a)〜(1−d)で表される化合物等である。式中、R
aは、同一又は異なって、上記平均組成式(1)中のX、Y又はZを表し、R
aのうち少なくとも1つは、上記平均組成式(1)中のXである。
【0040】
【化3】
【0041】
上記籠状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、300以上、5000以下であることが好適である。これにより、層状シリケート化合物をより充分に分散することができるため、本発明の組成物はナノコンポジット材用途等の各種用途により好適なものとなる。重量平均分子量の下限としてより好ましくは500以上、更に好ましくは1000以上、特に好ましくは1300以上である。また、重量平均分子量の上限としてより好ましくは5000未満、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下、最も好ましくは2000以下である。
【0042】
本明細書中、重量平均分子量及び数平均分子量は、後述する測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
また各ポリシロキサン化合物の構造は、例えば、
1H−NMR、
13C−NMR、MALDI−TOF−MS、FT−IRを測定して同定することができる。
【0043】
1−2)ラダー状ポリシロキサン化合物
ラダー状ポリシロキサン化合物として好ましくは、下記一般式(1−e)で表される化合物である。式中、R
aは、同一又は異なって、上記平均組成式(1)中のX、Y又はZを表し、R
aのうち少なくとも1つは、上記平均組成式(1)中のXである。R
bは、同一又は異なって、Y又はZを表す。
【0044】
【化4】
【0045】
上記一般式(1−e)中、重合度nは、10〜1000であることが好ましい。重合度がこのような好ましい範囲にあれば、上記ラダー状ポリシロキサン化合物は耐熱性により優れたものとなる。より好ましくは15〜800、更に好ましくは20〜500である。
【0046】
上記ラダー状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、上述した籠状ポリシロキサン化合物の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。具体的には、5000以上であることが好ましく、より好ましくは6000以上、更に好ましくは8000以上である。また、重量平均分子量の上限は20万以下であることが好ましい。
【0047】
本発明の組成物で用いられるシロキサン化合物を得るための方法は特に限定されないが、例えば、アミノ基含有シラン化合物と有機カルボン酸化合物とによるアミド化反応工程を含む製造方法(i)や、アミノ基含有シラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含む製造方法(ii)を採用することが好ましい。これらの中でも、原料の安定性や安全性が高く、かつ製造効率が良いうえ、シロキサン化合物を高収率で得ることができる観点から、製造方法(i)を採用することが好適である。製造方法(i)では、得られるシロキサン化合物の分子量を適宜設定することも容易に行うことができる。
【0048】
i)製造方法(i)
製造方法(i)は、アミノ基含有シラン化合物と有機カルボン酸化合物とによるアミド化反応工程を含む製造方法である。アミノ基含有シラン化合物と有機カルボン酸化合物とは、反応率が非常に高く、副生物である水による触媒失活がないため、高収率でシロキサン化合物を得ることができる。また、このアミド化反応工程は、アミノ基含有シラン化合物と有機カルボン酸化合物との反応工程(単に「反応工程」とも称す)と、加水分解・縮合工程とを含むことが好ましいが、前段の反応工程で生じた副生水を後段の加水分解・縮合工程でのゾルゲル反応に利用することで、製造時の副生物はほぼアルコールのみとなる。アルコールは反応時に乾溜塔で回収することができるため、副生物のろ過回収工程を不要とすることができ、製造効率が良い。また、反応基質の加水分解等を考慮する必要がないため、反応溶媒の脱水処理や反応装置の乾燥等も不要とすることができる他、生成物中に強酸や強塩基が高濃度で残存することがないため、反応後の生成物洗浄工程も不要とすることができる。このように製造方法(i)は、工業的に非常に有利な手法である。
【0049】
−反応工程−
上記反応工程では、アミノ基含有シラン化合物と有機カルボン酸化合物とを用いるが、これら反応原料は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0050】
上記アミノ基含有シラン化合物は、アミノ基とアルコキシシリル基とを有する化合物であることが好ましい。例えば、ケイ素原子に、(1)炭素数1〜6のアルキレン基を有する構造、(2)2級アミノ基を有する構造、又は、(3)3級アミノ基を有する構造、のいずれかの構造が結合し、該構造の、ケイ素原子とは反対側の末端に、アミノ基が結合した構造を有するものが好ましい。上記(1)〜(3)の中でも、(1)炭素数1〜6のアルキレン基を有する構造がより好ましい。
【0051】
上記アミノ基含有シラン化合物として更に好ましくは、例えば、下記式(4):
【0052】
【化5】
【0053】
(式中、R
3は、同一若しくは異なって、炭素数1〜20のアルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、置換基があってもよい。x及びzは、同一若しくは異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される化合物である。
【0054】
上記式(4)中、x、y及びzはすべて上記式(3)における各記号と同じであり、yは0であることが好ましく、x及びzの合計は3であることが好ましい。また、R
3としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
【0055】
上記アミノ基含有シラン化合物として特に好ましくは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリ(イソプロポキシ)シラン、3−アミノプロピルトリブトキシシランである。
【0056】
上記有機カルボン酸化合物とは、1分子中にカルボキシル基(COOH)を1個又は2個以上有する有機化合物であり、特に限定されるものではない。好ましくは、疎水基とカルボキシル基とを有する化合物であり、より好ましくは、R
2−C(=O)−OH(Rは、疎水基を表す)で表される化合物である。R
2で表される疎水基については、上述したとおりである。
【0057】
上記反応工程において、有機カルボン酸化合物の使用量(添加量)は、当該化合物が有するカルボキシル基の量が、アミノ基含有シラン化合物が有するアミノ基1モルに対し、0.5〜3モルとなるように設定することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2モル、更に好ましくは1モルである。
【0058】
上記反応工程では、反応温度を室温〜250℃として行うことが好ましい。より好ましくは室温〜200℃である。反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、3分〜24時間が好ましい。
【0059】
上記反応工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を1種又は2種以上を用いることが好適である。具体的には、例えば、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられるが、この中でも、アミド系溶媒やエーテル系溶媒が好ましい。
【0060】
アミド系溶媒としては特に限定されないが、例えば、N−メチルピロリジノン、N,N’−ジメチルアセタミド、N,N’−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0061】
エーテル系溶媒としては特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0062】
−加水分解・縮合工程−
上記加水分解・縮合工程は、上記反応工程で得られた生成物中のアルコキシシリル基を加水分解反応させ、その後、縮合反応させる工程であることが好ましい。加水分解反応により得られたシラノール基(Si(OH)
3)の縮合反応により、本発明におけるシロキサン化合物を得ることができる。
【0063】
上記加水分解・縮合工程では、水を用いることが好ましい。この際、上記反応工程で副生した水を用いることが好ましいが、必要に応じて水を添加してもよく、添加形態は特に限定されず、滴下してもよいし、一括投入してもよい。
なお、水分濃度の管理は不要であるが、例えば、上記反応工程による生成物中の固形分100質量部に対し、10〜2000質量部の水を用いることが好ましい。より好ましくは10〜500質量部、更に好ましくは20〜400質量部である。
【0064】
上記加水分解・縮合工程ではまた、触媒を1種又は2種以上用いることが好ましい。
触媒としては、Fe、Al、In、Zr、Co、Ni及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属化合物が好適である。すなわち上記製造方法(i)は、Fe、Al、In、Zr、Co、Ni及びZnからなる群より選択される少なくとも1種を含む金属化合物の存在下で行うことが好適である。これにより、反応がより進行し、シロキサン化合物の製造効率をより一層高めることができる。
【0065】
上記金属化合物は、Fe、Al、In、Zr、Co、Ni及びZnからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、これらの金属の、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機カルボン酸塩等が挙げられる。中でも、塩化物と有機カルボン酸塩が好適である。なお、金属化合物は1種又は2種以上を使用することができる。
【0066】
上記金属化合物の使用量(存在量)は、上記反応工程に供されるアミノ基含有シラン化合物1モルに対し、0.001〜0.2モルであることが好ましい。これによって、金属化合物に由来する作用効果をより充分に発揮することができる。より好ましくは0.002モル以上、更に好ましくは0.003モル以上であり、また、より好ましくは0.15モル以下、更に好ましくは0.1モル以下、特に好ましくは0.05モル以下である。
【0067】
上記加水分解・縮合工程における反応温度は、室温〜200℃であることが好ましい。より好ましくは室温〜160℃であり、更に好ましくは、副生物としてアルコールが生じる点から、アルコール、水及び溶媒の共沸還流下で保持することである。
【0068】
上記加水分解・縮合工程は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれで行ってよいが、副生アルコールを効率よく反応系外へ留去することで反応が進行しやすい点で、常圧以下で行うことが好ましい。また、反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、2〜48時間であることが好適である。
【0069】
上記製造方法(i)のアミド化反応工程の一例として、有機カルボン酸化合物として安息香酸を用い、アミノ基含有シラン化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた例を下記式(5)に示す。
【0070】
【化6】
【0071】
ii)製造方法(ii)
製造方法(ii)は、アミノ基含有シラン化合物と疎水性酸塩化物との反応工程と、加水分解・縮合工程とを含む製造方法である。
【0072】
−反応工程−
上記反応工程では、アミノ基含有シラン化合物と疎水性酸塩化物とを用いるが、これら反応原料は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。アミノ基含有シラン化合物については、製造方法(i)において上述したとおりである。
【0073】
上記疎水性酸塩化物としては、疎水基(R)を有する酸塩化物であれば特に限定されず、酸塩化物としては、例えば、スルホン酸塩化物、カルボン酸塩化物等が挙げられる。中でも、疎水性酸塩化物は、R
2−C(=O)−Cl(R
2は、疎水基を表す)で表される疎水性カルボン酸塩化物であることが好ましい。なお、R
2で表される疎水基については、上述したとおりである。
【0074】
上記反応工程において、疎水性酸塩化物の使用量(添加量)は、アミノ基含有シラン化合物が有するアミノ基1モルに対し、0.5〜3モルとすることが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2モル、更に好ましくは1モルである。
【0075】
上記アミノ基含有シラン化合物と疎水性酸塩化物との反応は、例えば、アミノ基含有シラン化合物に対し、疎水性酸塩化物によって求電子置換反応させることで、疎水基を側鎖に導入することが好ましい。
【0076】
上記反応工程では、反応温度を室温〜250℃として行うことが好ましい。より好ましくは室温〜200℃である。反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、3分〜24時間が好ましい。
【0077】
上記反応工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
溶媒としては、有機溶媒を1種又は2種以上を用いることが好適である。具体的には、例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられるが、この中でも、エーテル系溶媒が好ましい。これらエーテル系溶媒は、後の加水分解工程で水に溶けるため、製造工程がシンプルとなって好ましい。
エーテル系溶媒としては、ジグライム、テトラヒドロフラン(THF)、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、中でもジグライムがより好ましい。
【0078】
上記反応工程はまた、触媒の存在下で行うことが好ましく、触媒として、例えば、塩化水素、トリエチルアミン等の1種又は2種以上を用いることが好適である。
【0079】
−加水分解・縮合工程−
上記加水分解・縮合工程は、上記反応工程で得られた生成物中のアルコキシシリル基を加水分解反応させ、その後、縮合反応させる工程であることが好ましい。加水分解反応により得られたシラノール基(Si(OH)
3)の縮合反応により、本発明におけるシロキサン化合物を得ることができる。
【0080】
上記加水分解・縮合工程においては、水を用いることが好ましい。例えば、上記反応工程の生成物中の固形分100質量部に対し、10〜2000質量部の水を添加して反応させることが好適である。水の添加量としてより好ましくは10〜500質量部、更に好ましくは20〜400質量部である。
【0081】
上記加水分解・縮合工程に用いる水は、イオン交換水、pH調整水等のいずれを用いてもよいが、pH7前後の水を用いることが好ましい。このような水を用いることにより、イオン性不純物量を低減させることが可能となり、低吸湿性又は高絶縁性のポリシロキサン化合物を得ることが可能になる。なお、水の純度は、pH7である方が好ましいが、塩化水素、シュウ酸、ピリジン、トリエチルアミン等は高温で反応系外へ揮散するので、微量添加してpHを2〜12の範囲で調整してもよい。
上記水の使用形態は、上記反応工程の生成物に滴下する形態でもよいし、一括投入する形態でもよい。
【0082】
上記加水分解・縮合工程では、触媒を1種又は2種以上用いることが好ましい。
触媒としては、亜鉛化合物を少なくとも使用することが好適である。亜鉛化合物としては亜鉛カルボン酸塩が好ましく、飽和脂肪族カルボン酸の亜鉛カルボン酸塩がより好ましい。飽和脂肪族カルボン酸の炭素数は1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10、更に好ましくは6〜8である。これらの中でも、水に可溶性の化合物が特に好ましく、最も好ましくは、2−エチルヘキサン酸亜鉛を用いることである。
【0083】
上記加水分解・縮合工程における反応温度は、室温〜200℃であることが好ましい。より好ましくは室温〜160℃であり、更に好ましくは、副生物としてアルコールが生じるので、アルコール、水、溶媒の共沸還流下で保持することである。
【0084】
上記加水分解・縮合工程における反応圧力は、常圧であっても加圧下であっても減圧下であってもよいが、副生アルコールを効率よく反応系外へ留去することで反応が進行しやすいので、常圧以下である方が好ましい。また、反応時間としては、反応温度、反応組成によって変わるが、2〜48時間であることが好適である。
【0085】
−その他の工程−
上記製造方法(ii)ではまた、ろ過工程及び洗浄工程を行うことが好適である。例えば、上記反応工程で得られた生成物に対してろ過及び洗浄工程を行った後、加水分解・縮合工程に供することが好ましい。洗浄工程では、水や、有機溶媒等の1種又は2種以上を使用して、1回又は2回以上洗浄を行うことが好ましい。有機溶媒は特に限定されず、例えば、アセトン、メタノール、ジエチルエーテル、トルエン等の通常の洗浄工程で使用される溶媒を用いればよい。また上記加水分解・縮合工程の後に、各工程等で用いた溶媒を除去する工程を行うことが好適である。
【0086】
上記製造方法(ii)の一例として、疎水性酸塩化物としてベンゾイルクロリドを用い、アミノ基含有シラン化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた反応例を下記式(6)に示す。
【0087】
【化7】
【0088】
2)層状シリケート化合物
上記層状シリケート化合物は、結晶格子が一定距離ごとに層を形成している構造(層構造)を有し、シリケート(珪酸塩)層間に陽イオンが存在し、水等の膨潤剤が該陽イオンと水和反応することによって、膨潤し、層間距離が広がる性質を有するものである。具体的には、下記平均組成式(2):
Si
4−eAl
eMg
3−fNa
0.33O
10(OH)
2 (2)
(式中、e及びfは、同一又は異なって、0以上1未満の数である。)で表される化合物である。
【0089】
上記層状シリケート化合物は、粉粒体(粉体又は粒体)であることが好ましい。例えば、平均一次粒子径が0.01〜200μmであることが好適である。より好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.3〜10μmである。
【0090】
上記層状シリケート化合物はまた、アスペクト比が2〜100であることが好ましい。アスペクト比がこの範囲内にあると、シロキサン化合物がより充分に層間進入でき、部分放電現象による絶縁破壊や絶縁劣化をより一層抑制するとともに、アモルファス化させることも可能になる。アスペクト比は、より好ましくは3〜90、更に好ましくは5〜80である。
本明細書中、アスペクト比とは、最大寸法aと最小寸法bとの比(a/b)を意味し、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0091】
上記層状シリケート化合物は更に、陽イオン交換容量が10〜150meq/100gであることが好ましい。陽イオン交換容量がこの範囲内にあると、部分放電現象による絶縁破壊や絶縁劣化をより一層抑制することができる。陽イオン交換容量は、より好ましくは15〜110meq/100g、更に好ましくは20〜100meq/100gである。
本明細書中、陽イオン交換容量は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0092】
3)溶媒
上記組成物はまた、溶媒を更に含むことが好ましい。一般に、層状無機化合物は溶媒(特に有機溶媒)への溶解性又は分散性が充分ではないが、本発明では、上述したシロキサン化合物と層状シリケート化合物とを併用することで、層状シリケート化合物を溶媒中に充分に分散することができる。
【0093】
上記溶媒としては特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましい。具体的には、クロロホルム、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルマミド等の非極性溶媒を用いることが好適である。
【0094】
上記溶媒の含有量は、シロキサン化合物と層状シリケート化合物との合計量100質量部に対し、10〜10000質量部であることが好ましい。より好ましくは50〜5000質量部、更に好ましくは100〜1000質量部である。
【0095】
4)その他の成分
上記組成物はまた、必要に応じ、求められる物性等に応じてその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。
【0096】
本発明の組成物は、層状シリケート化合物が充分に分散した形態(好ましくは、層状シリケート化合物が溶媒中に充分に分散した形態)からなるため、ナノコンポジット材料として様々な用途に有用なものである。例えば、ガスバリア性や絶縁性等に優れる組成物となり、絶縁材料やガスバリア材等の用途に好適に適用できる。その他、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途等の各種用途の他、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等にも好適に使用できる。
【0097】
〔樹脂組成物〕
次に、本発明の第二の態様である、上記組成物と有機樹脂とを含む樹脂組成物について説明する。
【0098】
上記シロキサン化合物は、有機樹脂(「有機ポリマー」とも称す)との相溶性にも優れるものである。したがって、本発明の組成物と有機樹脂とを含む樹脂組成物とすれば、極めて透明性が高い硬化物を与えることができ、また、有機無機ハイブリッド(複合)材料用途にも特に好適なものとなる。
【0099】
上述した本発明の組成物と有機樹脂とを含む樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0100】
上記有機樹脂としては特に限定されず、意図される用途(例えば、屈折率の調整に用いる光学フィルム用途等)等によって適宜選択すればよい。例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーのいずれもが好適に用いられる。具体的には、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、非晶質ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリスチレン(PSt)等が好ましい。また、グリシジル基及び/又はエポキシ基を少なくとも1つ有する化合物、多価フェノール化合物、マレイミド化合物も好ましく使用できる。これら化合物は、特許第5193207号公報に記載のものと同様のものが好適である。その他、特許第5193207号公報〔0131〕に記載の種々の有機樹脂も好ましく使用できる。
【0101】
上記樹脂組成物において、シロキサン化合物の含有量は、有機樹脂の総量100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましい。これにより、シロキサン化合物と有機樹脂との相溶性がより高まって、透明性や耐熱性等の各種物性に優れる硬化物を与えることが可能になる。より好ましくは20〜500質量部である。
【0102】
上記樹脂組成物はまた、必要に応じ、求められる物性等に応じてその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されず、例えば、溶媒、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、マット剤等が挙げられる。中でも、溶媒を少なくとも含むことが好適である。溶媒としては特に限定されないが、例えば、クロロホルム、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルマミド等の非極性溶媒である。より好ましくはクロロホルムである。
【0103】
上記その他の成分の含有量は、該成分に求められる性能等によって適宜設定すればよいが、例えば、溶媒を含む場合、その含有量は、樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物と有機樹脂との合計量100質量部に対し、10〜10000質量部であることが好ましい。より好ましくは50〜5000質量部、更に好ましくは100〜1000質量部である。
【0104】
上記樹脂組成物は、含有成分の相溶性に特に優れるため、フィラー(充填剤)用途等に有用であり、また透明性に優れる硬化物を与えることができるため、光学フィルム等の光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途にも好適に使用できる。また、優れた耐熱性を示すため、耐熱性の高い実装用材料としても好適に使用できる。その他、高い熱安定性が必要とされる実装分野だけでなく、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料、塗料や接着剤の材料等にも好適に用いることができる。