特許第6512991号(P6512991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6512991低温液化ガス用のタンクローリーおよびそれを用いた低温液化ガスの荷卸し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6512991
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】低温液化ガス用のタンクローリーおよびそれを用いた低温液化ガスの荷卸し方法
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/22 20060101AFI20190425BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B60P3/22 Z
   F17C13/00 302F
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-155105(P2015-155105)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-30660(P2017-30660A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】首藤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】森 晃一
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−076878(JP,A)
【文献】 実開平04−074138(JP,U)
【文献】 特開平11−321433(JP,A)
【文献】 特表2012−509224(JP,A)
【文献】 米国特許第5353849(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00−9/00
F17C 13/00
B63B 27/24
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留するタンクと、
上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しするための荷卸しホースと、
上記荷卸しホースの先端部を接続することにより、上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口とを備えた
ことを特徴とする低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項2】
上記荷卸しホースの先端部と上記還流口とは、両路開閉型の迅速流体継手によって接続される
請求項1記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項3】
上記タンクから低温液化ガスを取り出して上記荷卸しホースに送るための取り出し配管をさらに備え、
上記取り出し配管には、上記荷卸しホースによって荷卸しされる上記低温液化ガスの流量を計測する流量計測器が配置されている
請求項1または2記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項4】
上記取り出し配管の少なくとも一部は、上記タンクに貯留された低温液化ガスの底面より下側に配置されている
請求項3記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項5】
上記取り出し配管には、
上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するためのポンプが配置されている
請求項3または4記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項6】
上記ポンプと上記流量計測器は、上記ポンプの稼動開始と上記流量計測器の稼動開始が連動するように制御される
請求項5記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項7】
上記タンクには、
上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するために上記タンク内を加圧する加圧機構が設けられている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項8】
上記タンクからの圧送圧力が、荷卸しされる低温液化ガスの流路に設けられた背圧弁の設定圧力よりも高くなるよう設定されている
請求項1〜7のいずれか一項に記載の低温液化ガス用のタンクローリー。
【請求項9】
低温液化ガスを貯留するタンクを搭載するタンクローリーにおいて、上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しホースによって荷卸しを開始する前に、
上記荷卸しホースの先端部を、上記荷卸しホースに取り出された低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口に接続し、
上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させ、上記荷卸しホースに上記低温液化ガスを流通させ、上記荷卸しホースを予冷する
ことを特徴とする低温液化ガスの荷卸し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば液化天然ガス,液化酸素,液化窒素等の低温液化ガスを輸送する際に用いる低温液化ガス用のタンクローリーおよびそれを用いた低温液化ガスの荷卸し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス,液化酸素,液化窒素等の低温液化ガスは、タンクローリーによって輸送する。たとえば液化天然ガス(LNG)をそのユーザーに供給する場合、ユーザーの敷地に、LNGの貯槽を施設する。タンクローリーのタンクにLNGを搭載し、ユーザーの上記貯槽まで輸送する。輸送したLNGは、タンクローリーの上記タンクから上記貯槽に対し、荷卸しを行う。いくつかある低温液化ガスの供給形態のうち、LNGではこのような供給形態をとることが増えている。
【0003】
近年、LNGの用途が広がり、その利用が拡大している。それに伴い、ユーザーに設置するLNGの貯槽は、そのユーザーにおける用途に合わせ、大小さまざまなサイズが用いられるようになっている。これにより、タンクローリーでユーザーにLNGを供給する場合、これまでよりも少量のLNGを貯槽に荷卸しする機会が増えている。
【0004】
LNGは、沸点が非常に低い低温液化ガスである。そのため、タンクローリーからユーザーの貯槽にLNGを荷卸しする場合は、つぎのような方法が採られている。
【0005】
〔送液について〕
荷卸しの際に、タンクローリーのタンクからユーザーの貯槽へLNGを圧送する方法は、二通りある。第1は、蒸発器で気化させたLNGをタンクに供給し、タンク内を加圧することによりLNGを圧送する方法である。第2は、ポンプによってタンクからLNGを取り出して圧送する方法である。
【0006】
第1の蒸発器による方法は、つぎのメリットとデメリットがある。
メリットは、電源などのユーティリティが不要で、充填開始までの時間が短いことである。
デメリットは、まず、蒸発器を設置するスペースを車両に確保しなければならず、搭載できるタンクがその分小さくなることである。また、タンクの耐圧強度を上げなければならず、タンクの重量が増すデメリットもある。さらに、LNGの荷卸しが終わった後、タンク内の圧力を下げなければならず、その分のガスを捨てなければならないのがデメリットである。
【0007】
第2のポンプによる方法は、つぎのメリットとデメリットがある。
メリットは、ポンプが蒸発器よりも設置スペースが小さいため、搭載できるタンクをその分大きくできることである。また、タンクの耐圧強度は小さくてすみ、タンクの重量を軽くできるメリットがある。さらに、LNGの荷卸しが終わった後、タンク内の圧力を下げる必要がなく、そのときに捨てるガスの量も少なくてすむのもメリットである。
デメリットは、荷卸しを始める前にポンプを予冷しておかなければ、ポンプが冷却するまでLNGが気化して無駄になることである。これを避けるためには、ポンプを予冷する必要があり、そうすると予冷に時間がかかってしまうのがデメリットになる。
【0008】
本出願人は、タンクローリーに搭載されたポンプを予冷する技術に関する先行技術文献として特許文献1(特開平11−321433号公報)を把握している。
【0009】
特許文献1は、ポンプの予冷作業をなくすため、低温液化ガスでポンプを常時予冷することが提案されている。
【0010】
特許文献1には、つぎの記載がある。
[要約]
[課題]ポンプ予冷の作業をなくすことができ、耐久性に優れたタンクローリーを提供する。
[解決手段]超低温液化ガスを収容するタンク1を搭載したタンクローリーである。そして、上記タンク1の外部に、タンク1の内部と吸入パイプ26を介して連通する断熱容器3を設け、この断熱容器3内に吸入パイプ26を通してタンク1内の超低温液化ガスを導入し、この断熱容器3内に導入した超低温液化ガスに密閉型ポンプ2を浸漬して超低温液化ガスで密閉型ポンプ2を常時冷却するようにしている。
【0011】
〔計量について〕
荷卸しされたLNGの量(以下「取引量」という)は、たとえばつぎのようにして算定する。
第1の算定方法は、ユーザーの貯槽に取りつけた液面計を用い、荷卸し前後の液面の増加分を取引量として算定する方法である。
第2の算定方法は、タンクローリーの重量を測定するトラックスケールを用い、荷卸し前後の重量の減少分を取引量として算定する方法である。
【0012】
第1の算定方法には、つぎの問題がある。
すなわち、まず、液面計を用いた取引量の算定精度が低い。また、荷卸し中にユーザーが貯槽内のLNGを消費した場合、取引量を正確に算定できない。
【0013】
第2の算定方法には、液面計に比べて正確な取引量を算定できる反面、つぎの問題がある。
すなわち、トラックスケールを備えた計量基地でタンクローリーを重量測定しなくてはならない。つまり、荷卸しの前後にユーザーと計量基地の間でタンクローリーを往復させる必要がある。その分だけ、荷卸しに要するトータルの時間が長くなり、タンクローリーの燃料も無駄である。しかも、顧客に対して取引量を速やかに通知できない。さらに、荷卸しホースを事前に予冷するために消費されるLNGは、廃棄されているにもかかわらず、ユーザーに対する取引量に含めて算定することになる。
【0014】
上記の問題を解決するため、重量計を搭載したタンクローリーが開発されている。
本出願人は、そのような先行技術文献として、特許文献2(特開2006−064636号公報)および特許文献3(特開2014−215192号公報)を把握している。
【0015】
特許文献2には、つぎの記載がある。
[0014]
自重計システム10は、車両1に搭載される。車両1は、積載物を搬送する搬送車、たとえば液化ガスを搬送するガスローリー車であり、前後左右の車輪1aと、液化ガスが充填されるタンク1bと、運転席を含むキャビン1cを有している。タンク1bには、たとえば、液化窒素ガス等の液化ガスが充填されている。
[0015]
自重計システム10は、各車輪1aにかかる積載物重量の変化量を検出する積載物重量変化量計測用のセンサ11と、キャビン1cの内部に設置され、センサ11がハーネス等で接続された自重計12と、キャビン1の外部に設置され、自重計12にハーネス等で接続された外部操作器13とを備えている。
[0017]
図2は、自重計12の構成例を示すブロック図である。自重計12は、システム全体を制御すると共に計算手段として働くマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)120と、不揮発性メモリとしてのEEPROM121と、LCD(液晶ディスプレイ)等からなる表示器122と、印字手段としてのプリンタ123と、操作部124と、カードライタ125とを備えている。
【0016】
特許文献3には、つぎの記載がある。
[要約]
[課題]タンクローリから供給先への低温液化ガスの供給量を自動的かつ確実に計量できる低温液化ガス供給量の計量装置を提供する。
[解決手段]タンクローリー11のタンク内の低温液化ガス量の変化によって生じる車軸17の歪量を検知する歪センサ18と、歪センサ18で検知した歪量の変化に基づいて低温液化ガスの供給量を算出する演算手段21を有する制御手段19と、演算手段21が低温液化ガスの重量変化から算出した供給先への低温液化ガスの供給量を含む情報を伝票に印字して発行する伝票発行手段20と、演算手段21の演算操作開始と演算操作終了とを手動で指示する手動操作手段22と、イグニッションキー25の回動操作に付随して、演算手段21の演算操作開始と演算操作終了とを自動で指示する自動操作手段23とを備える。制御手段19は、自動操作手段23の指示と手動操作手段22の指示を制御して指示を切り換える切替手段24を備える。
【0017】
上記特許文献2および特許文献3は、タンクローリーに重量計を搭載している。これにより、ユーザーの貯槽に設けた液面計で取引量を算定するのに比べ、正確な取引量を算定することができる。また、トラックスケールによって取引量を算定するのに比べ、荷卸しに要するトータルの時間を短くすることができる。加えて、特許文献2および特許文献3では、取引量の自動計測に関する提案もなされている。
【0018】
また、本出願人は、タンクローリーに関する先行技術文献として、特許文献4(実開平4−74138号公報)を把握している。
【0019】
特許文献4は、流量計を用いて低温液化ガスの取引量を算定する方法を提案するものであり、下記の記載がある。
[実用新案登録請求の範囲]
低温液化ガス貯槽を備えた低温液化ガスローリー車において、前記低温液化ガス貯槽に連設する低温液化ガス導出管にカルマン式流量センサと温度センサとを設けると共に、これら両センサからの信号を受けてカルマン式流量センサからの流量信号を温度センサからの温度信号により温度補正して低温液化ガス供給量を算出する積算演算器を設けたことを特徴とする低温液化ガスローリー車。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平11−321433号公報
【特許文献2】特開2006−064636号公報
【特許文献3】特開2014−215192号公報
【特許文献4】実開平4−74138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、LNGのように沸点が低い低温液化ガスは、タンクローリーから荷卸しをする際に極めて気化しやすい。このため、上記特許文献1〜4にはそれぞれ、解決すべきつぎの問題がある。
【0022】
特許文献1は、低温液化ガスでポンプを常時予冷し、ポンプの予冷作業をなくしたものである。ところが、特許文献1では、ポンプの予冷をなくしたとしても、荷卸しの前には、荷卸しホースを予冷しなければならない。つまり、荷卸しホースの予冷で低温液化ガスが気化するため、その分が廃棄ロスになるのを避けられない。とくにLNGのような可燃性ガスでは、廃棄方法が悪ければ着火や爆発等の危険がある。
【0023】
特許文献2および特許文献3は、タンクローリーに搭載した重量計で、荷卸しした低温液化ガスの取引量を計測する。この方法によれば、ユーザーに対する取引量の算定を、トラックスケールに近い精度で行える。ところが、特許文献2および特許文献3では、荷卸しの前には、荷卸しホースを予冷しなければならない。つまり、荷卸しホースの予冷で低温液化ガスが気化するため、その分が廃棄ロスになるのを避けられない。とくにLNGのような可燃性ガスでは、廃棄方法が悪ければ着火や爆発等の危険がある。また、特許文献2および特許文献3は、トラックスケールによる算定と同様に、タンクローリーの重量減少分を取引量として算定するため、荷卸しホースを予冷する時に気化して廃棄される低温液化ガスを、取引量に含めて算定することになる。このため、ユーザーにとっては、貯槽に貯留されない分まで費用を負担することになり、不利益を被ることになる。
【0024】
また、特許文献3は、荷卸しに要する時間の記録を運転員が忘れた場合に備え、タンクローリーのイグニッションキーと荷卸し時間の記録を連動させた自動計量記録を搭載している。ところが、特許文献3において、すべての計量を自動で行おうとすると、いちいちイグニッションキーを操作するために、タンクローリー後方の荷卸し場所と、タンクローリー前方の運転席を往復しなくてはならない。これは極めて非効率である。したがって、すべての計量を自動で行うのは現実的でない。この点で、運転員毎に生じる取引量の算定ばらつきが解消されない。
【0025】
特許文献4は、取引量を流量計で算定する方法である。ところが、特許文献4では、荷卸しの前には、荷卸しホースを予冷しなければならない。つまり、荷卸しホースの予冷で低温液化ガスが気化するため、その分が廃棄ロスになるのを避けられない。とくにLNGのような可燃性ガスでは、廃棄方法が悪ければ着火や爆発等の危険がある。加えて、荷卸しのまえに、流量計も予冷する必要がある。その予冷を行なう分だけ廃棄ロスが増え、荷卸しに要する時間が長くなる。また、取引量を算定する際に、積算開始時間と終了時間の記録が、運転員の裁量で行われることになる。このため、運転員毎に取引量の算定ばらつきが出たり、測定ミスが起きたりする可能性もある。
【0026】
〔目的〕
本発明は、このような事情に鑑み、つぎの目的をもってなされたものである。
低温液化ガスを荷卸しする際に、低温液化ガスの廃棄ロスを減少する低温液化ガス用のタンクローリーおよびそれを用いた低温液化ガスの荷卸し方法を提供する。
さらには正確な荷卸し量を算定できる低温液化ガス用のタンクローリーおよびそれを用いた低温液化ガスの荷卸し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
低温液化ガスを貯留するタンクと、
上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しするための荷卸しホースと、
上記荷卸しホースの先端部を接続することにより、上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口とを備えた。
【0028】
請求項2記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項1記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記荷卸しホースの先端部と上記還流口とは、両路開閉型の迅速流体継手によって接続される。
【0029】
請求項3記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項1または2記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記タンクから低温液化ガスを取り出して上記荷卸しホースに送るための取り出し配管をさらに備え、
上記取り出し配管には、上記荷卸しホースによって荷卸しされる上記低温液化ガスの流量を計測する流量計測器が配置されている。
【0030】
請求項4記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項3記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記取り出し配管の少なくとも一部は、上記タンクに貯留された低温液化ガスの底面より下側に配置されている。
【0031】
請求項5記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項3または4記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記取り出し配管には、
上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するためのポンプが配置されている。
【0032】
請求項6記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項5記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記ポンプと上記流量計測器は、上記ポンプの稼動開始と上記流量計測器の稼動開始が連動するように制御される。
【0033】
請求項7記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項1〜4のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記タンクには、
上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するために上記タンク内を加圧する加圧機構が設けられている。
【0034】
請求項8記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の構成に加え、つぎの構成を採用した。
上記タンクからの圧送圧力が、荷卸しされる低温液化ガスの流路に設けられた背圧弁の設定圧力よりも高くなるよう設定されている。
【0035】
請求項9記載の低温液化ガスの荷卸し方法は、上記目的を達成するため、つぎの構成を採用した。
低温液化ガスを貯留するタンクを搭載するタンクローリーにおいて、上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しホースによって荷卸しを開始する前に、
上記荷卸しホースの先端部を、上記荷卸しホースに取り出された低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口に接続し、
上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させ、上記荷卸しホースに上記低温液化ガスを流通させ、上記荷卸しホースを予冷する。
【発明の効果】
【0036】
請求項1記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、低温液化ガスを貯留するタンクと、上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しするための荷卸しホースとを備えている。さらに、上記荷卸しホースの先端部を接続することにより、上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口を備えている。
上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しホースによって荷卸しを開始する前に、上記荷卸しホースの先端部を、上記荷卸しホースに取り出された低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口に接続し、上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させ、上記荷卸しホースに上記低温液化ガスを流通させ、上記荷卸しホースを予冷することができる。
低温液化ガスを荷卸しする前に行う荷卸しホースの予冷では、低温液化ガスが荷卸しホースとタンクを循環する。したがって、予冷によって気化して廃棄される低温液化ガスのロスを大幅に減少することができる。そして、予冷で気化して廃棄される低温液化ガスを取引量に含めて算定することが少なく、ユーザーの不利益が大幅に減少する。
【0037】
請求項2記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記荷卸しホースの先端部と上記還流口とは、両路開閉型の迅速流体継手によって接続される。
両路開閉型の迅速流体継手は、プラグとソケットの双方にそれぞれバルブが内臓されている。上記プラグとソケットを接続した状態で、両バルブは上流側の荷卸しホースと下流側の還流口を連通させる。上記プラグとソケットを分離した状態で、両バルブはプラグとソケットそれぞれの開口を閉じ、荷卸しホースの先端および還流口から低温液化ガスが流出するのを防止する。
したがって、上記荷卸しホースの先端部を還流口に接続して予冷するときは、低温液化ガスが迅速流体継手内を流れる。これにより、上記荷卸しホースに取り出された低温液化ガスをタンクに還流させて、荷卸しホースを予冷することができる。予冷が終われば、迅速流体継手を分離して荷卸しホースをユーザーの貯槽に接続し、荷卸しを行う。このとき、荷卸しホースの先端および還流口から低温液化ガスは流出しない。とくにLNGのような可燃性ガスや酸素のような支燃性ガスにおける安全性を確保できる。
【0038】
請求項3記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記タンクから低温液化ガスを取り出して上記荷卸しホースに送るための取り出し配管をさらに備え、
上記取り出し配管には、上記荷卸しホースによって荷卸しされる上記低温液化ガスの流量を計測する流量計測器が配置されている。
荷卸しホースによって荷卸しされる低温液化ガスの量が流量計測器で計測され、それに基づいて取引量を算定できる。このため、重量減少によって取引量を算定するときのように、気化して廃棄される低温液化ガスによる重量変化や、タンクローリーの取り出し配管等に氷が付着することによる重量変化を取引量に含めて算定することがない。このため、ユーザーの不利益が大幅に減少する。
【0039】
請求項4記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記取り出し配管の少なくとも一部は、上記タンクに貯留された低温液化ガスの底面より下側に配置されている。
荷卸しの前にあらかじめ、タンクからの低温液化ガスで取り出し配管を満たして予冷することができる。取り出し配管の冷却で気化して廃棄される低温液化ガスのロスを少なくでき、取り出し配管の予冷に要する時間も節約できる。
たとえば、上記取り出し配管に流量計測器を設けている場合は、流量計測器の予冷にともなう低温液化ガスのロスを減少し、予冷時間を節約できる。
たとえば、上記取り出し配管にポンプを設けている場合は、ポンプの予冷にともなう低温液化ガスのロスを減少し、予冷時間を節約できる。
【0040】
請求項5記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記取り出し配管には、上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するためのポンプが配置されている。
上記ポンプによって低温液化ガスを荷卸しホースに向かって圧送する。
たとえば、上記取り出し配管にポンプを設けている場合は、ポンプの予冷にともなう低温液化ガスのロスを減少し、予冷時間を節約できる。
【0041】
請求項6記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記ポンプと上記流量計測器は、上記ポンプの稼動開始と上記流量計測器の稼動開始が連動するように制御される。
このようにすることにより、ポンプが稼動している間だけ、圧送される低温液化ガスの流量を流量計測器が計測し、それに基づいて取引量を算定できる。このため、正確な取引量を算定できる。従来問題となっていた取引量の算定ばらつきや測定ミスを防止し、ユーザーの不利益を防止できる。
【0042】
請求項7記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記タンクには、
上記タンク内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホースに向かって圧送するために上記タンク内を加圧する加圧機構が設けられている。
上記加圧機構による加圧でタンク内を加圧して低温液化ガスを荷卸しホースに向かって圧送する。
【0043】
請求項8記載の低温液化ガス用のタンクローリーは、上記タンクからの圧送圧力が、荷卸しされる低温液化ガスの流路に設けられた背圧弁の設定圧力よりも高くなるよう設定されている。
タンクからの圧送圧力を上記背圧弁の設定圧力より高くすることで、ポンプを運転したりタンクを加圧したりして初めて、低温液化ガスが荷卸し方向へと流れ、荷卸し量の計測を開始する前に低温液化ガスの荷卸しが始まってしまうことを防ぐことができる。荷卸し量の計測を開始する前にタンクから液化ガスが流れることを防ぐことができ、荷卸し量の積算精度を向上することができる。
【0044】
請求項9記載の低温液化ガスの荷卸し方法は、
低温液化ガスを貯留するタンクを搭載するタンクローリーにおいて、上記タンクから取り出した上記低温液化ガスを荷卸しホースによって荷卸しを開始する前に、
上記荷卸しホースの先端部を、上記荷卸しホースに取り出された低温液化ガスを上記タンクに還流させるための還流口に接続し、
上記荷卸しホースに取り出された上記低温液化ガスを上記タンクに還流させ、上記荷卸しホースに上記低温液化ガスを流通させ、上記荷卸しホースを予冷する。
低温液化ガスを荷卸しする前に行う荷卸しホースの予冷では、低温液化ガスが荷卸しホースとタンクを循環する。したがって、予冷によって気化して廃棄される低温液化ガスのロスを大幅に減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の低温液化ガス用のタンクローリーの第1実施形態を示す図である。
図2】上記第1実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。(A)は予冷状態、(B)は荷卸し状態である。
図3】両路開閉型の迅速流体継手の一例を示す断面図である。
図4】第2実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。(A)は予冷状態、(B)は荷卸し状態である。
図5-1】第3実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。第1例の予冷状態である。
図5-2】第3実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。第2例の予冷状態である。
図5-3】第3実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。第3例の予冷状態である。
図6】第4実施形態のタンクローリーの構成を説明する図である。(A)は予冷状態、(B)は荷卸し状態である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0047】
〔第1実施形態〕
図1図3は、本発明を適用した低温液化ガス用のタンクローリーの第1実施形態を示す。この例では、上記低温液化ガスとして液化天然ガス(LNG)を輸送するものについて説明する。
【0048】
〔全体構造〕
本実施形態のタンクローリーは、輸送してきた低温液化ガスを、ユーザーに設置した低温液化ガスの貯槽10に対して荷卸しを行う。
【0049】
上記タンクローリーは、低温液化ガスを貯留するタンク1が車載され、荷卸しホース2と、還流口3とを備えている。また、上記タンクローリーは、ポンプ7、流量計測器6等を備えている。
【0050】
〔タンク〕
上記タンク1は、二重構造とした内槽と外槽の間に真空断熱層が形成された二重断熱構造の低温液化ガス容器である。上記タンク1は、横置きに車載され、凸面状に膨らんだ端面を前後に配置している。
【0051】
〔荷卸しホース〕
上記荷卸しホース2は、上記タンク1から取り出した上記低温液化ガスを荷卸しする。上記荷卸しホース2としては、たとえばステンレス製のフレキシブルメタルホースを用いることができる。
【0052】
〔取り出し配管〕
上記タンク1には、上記タンク1から低温液化ガスを取り出して上記荷卸しホース2に送るための取り出し配管5が接続されている。上記荷卸しホース2の根元部分は、上記取り出し配管5に接続されている。上記タンク1から取り出し配管5に取り出された低温液化ガスが上記荷卸しホース2に送られる。
【0053】
上記取り出し配管5は、上記タンク1の底部に接続された根元部分から低温液化ガスを取り出して上記荷卸しホース2に送る。上記取り出し配管5の先端側は、荷卸しホース2に接続される取出し路5Aと、上記タンク1上部の気相部分に連通する連通路5Bとに分岐している。
【0054】
上記取出し路5Aには、開閉弁21、逆止弁22および安全弁23が設けられている。上記安全弁23には、タンク1の上部からガスを排気して圧力を開放する排気路11が接続されている。上記連通路5Bには開閉弁24が設けられている。上記取り出し配管5には、取出し路5Aおよび連通路5Bを含め、断熱材で覆われた断熱配管が採用されている。
【0055】
〔流量計測器〕
上記取り出し配管5には、上記荷卸しホース2によって荷卸しされる上記低温液化ガスの流量を計測する流量計測器6が配置されている。
【0056】
上記流量計測器6は、計測対象とする流体が低温液化ガスであるため、極低温に耐えるものが用いられる。たとえば、コリオリ流量計、タービン流量計、オリフィス流量計、渦流量計、超音波流量計、金属管式面積流量計などを用いることができる。
【0057】
特に、タンクローリーは流量計測器6の設置スペースが限られる。そのため、流量計測器6の前後に直管部が必要でなく、設置スペースを節約できるコリオリ流量計が好適である。
【0058】
また、LNGは産地によって密度が異なるため、質量流量で取引を行う場合は、コリオリ流量計を利用するか、密度計とその他の流量計(たとえばタービン流量計、オリフィス流量計、渦流量計、超音波流量計)を組み合わせて使用するのが好ましい。密度計の設置場所として、タンク1内や流量計測器6付近の配管を用いることができる。
【0059】
〔ポンプ〕
上記取り出し配管5には、上記タンク1内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホース2に向かって所定の圧送圧力で圧送するためのポンプ7が配置されている。
【0060】
上記ポンプ7は、遠心式ポンプ、サブマージドポンプ、キャンドポンプ、マグネットポンプ、ダイアフラムポンプ等を用いることができる。圧送する流体が低温液化ガスであるため、極低温に耐えるものが用いられる。たとえば、軸シールポンプ、サブマージドポンプ、キャンドポンプ、マグネットカップリング駆動シールレスポンプなどである。また、低温液化ガスとしてLNGを圧送する場合、LNGが可燃性ガスであるため、密閉構造を持つ無漏洩ポンプが好ましい。
【0061】
ポンプ7の昇圧部(ポンプ羽根車)が、タンク1の最低液面よりも下になるようにポンプ7を配置するのが好ましい。このようにすることにより、ポンプ7の吸い込み揚程(NPSHa)を確保することが出来、キャビテーションを起こさない安定した運転が可能となる。
【0062】
上記取り出し配管5の少なくとも一部は、上記タンク1に貯留された低温液化ガスの底面より下側に配置されている。そして、上記ポンプ7および流量計測器6は、上記取り出し配管5のうち低温液化ガスの底面より下側に配置された部分に配置される。これにより、開閉弁24を開けることにより、タンク1内の低温液化ガスが、取り出し配管5のうち低温液化ガスの底面より下側に配置された部分に流れ込む。したがって、荷卸し作業の前に、あらかじめ開閉弁24を開けておくことで、低温液化ガスの底面より下側に配置された部分にあるポンプ7および流量計測器6を予冷することができる。
【0063】
〔制御〕
上記ポンプ7と上記流量計測器6は、上記ポンプ7の稼動開始と上記流量計測器6の稼動開始が連動するように制御部13により制御される。つまり、ポンプ7が稼動している間だけ、圧送される低温液化ガスの流量を流量計測器6が計測する。
【0064】
〔還流口〕
上記還流口3は、接続路9を介して上記タンク1の上部に接続されている。上記還流口3は、上記荷卸しホース2の先端部を接続することにより、上記荷卸しホース2に取り出された上記低温液化ガスを上記タンク1に還流させる。上記還流口3は、タンク1内の低温液化ガスの最低液面よりも低い位置に配置されている。
【0065】
上記還流口3に還流される低温液化ガスは、上記タンク1内部の上部に存在する気相部分に導入される。上記還流口3からタンク1内に、ガス状の低温液化ガスが還流されると、その一部はタンク1内部に貯留された低温液化ガスによって冷却されて再び液化する。上記還流口3からタンク1内に、液状の低温液化ガスが還流されると、そのままタンク1内部に貯留される。
【0066】
上記還流口3をタンク1に接続する接続路9には、還流口3からタンク1内に還流される低温液化ガスの液温を計測する液温計8が設けられている。上記液温計8は、荷卸しホース2から還流される低温液化ガスの液温を測定する。これにより、荷卸しホース2が予冷されたかどうかを容易に確認できる。
【0067】
〔迅速流体継手〕
上記荷卸しホース2の先端部と上記還流口3とは、両路開閉型の迅速流体継手4によって接続される。上記迅速流体継手4は、ソケット4Aとプラグ4Bとから構成される。図示した例では、ソケット4Aが上記還流口3に取り付けられ、プラグ4Bが上記荷卸しホース2の先端部に取り付けられている。
これを逆にして、プラグ4Bを上記還流口3に取り付け、ソケット4Aを上記荷卸しホース2の先端部に取り付けてもよい。
【0068】
上記両路開閉型の迅速流体継手4は、ソケット4Aとプラグ4Bを接続した状態で上流側と下流側の流路が連通して低温液化ガスが流通する。ソケット4Aとプラグ4Bを分離すると、ソケット4A側の流路とプラグ4B側の流路がそれぞれ閉塞し、上流側の流路と下流側の流路にある低温液化ガスが漏れ出ないようになっている。
【0069】
荷卸しされる低温液化ガスを貯留する貯槽10の荷受け配管12には、ソケット4Aが取り付けられている。上記荷受け配管12先端のソケット4Aは、上記荷卸しホース2の先端部に取り付けられたプラグ4Bと接続可能なものである。
なお、上述したように、上記荷卸しホース2の先端部にソケット4Aを取り付け、上記還流口3にプラグ4Bを取り付けた場合、荷受け配管12先端にはプラグ4Bが取り付けられる。
【0070】
図3は、上記両路開閉型の迅速流体継手4の一例を示す。
【0071】
ソケット4Aは、大略筒状で、根元側に配管と連通する流路31Aがあり、先端面には閉塞壁32Aが設けられている。上記閉塞壁32Aの周囲には、プラグ4Bを受ける受け部30が形成されている。上記閉塞壁32Aの中央には、流通開口33Aが形成されている。上記流通開口33Aは、付勢部材35Aによって流路31A側から付勢される弁体34Aが着座する。上記流通開口33Aに弁体34Aが着座した状態で、弁体34Aの先端部が流通開口33Aから外側に突出するようになっている。
【0072】
プラグ4Bは、大略筒状で、根元側に配管と連通する流路31Bがあり、先端面には閉塞壁32Bが設けられている。上記閉塞壁32Bの中央には、流通開口33Bが形成されている。上記流通開口33Bは、付勢部材35Bによって流路31B側から付勢される弁体34Bが着座する。上記流通開口33Bに弁体34Bが着座した状態で、弁体34Bの先端部が流通開口33Bから外側に突出するようになっている。
【0073】
上記ソケット4Aの受け部30にプラグ4Bを嵌めてソケット4Aとプラグ4Bを接続すると、互いの流通開口33A,33Bから突出した両弁体34A,34Bが付き合わされる。この状態で、両弁体34A,34Bが互いに押し合って、それぞれの付勢部材35A,35Bの付勢力に抗して流通開口33A,33Bから離れる。すると、両流通開口33A,33Bを介してソケット4A側の流路31Aとプラグ4B側の流路31Bが連通し、両流路31A,31Bを低温液化ガスが流れる。
【0074】
上記ソケット4Aの受け部30からプラグ4Bを外してソケット4Aとプラグ4Bを分離すると、両弁体34A,34Bはそれぞれ付勢部材35A,35Bの付勢力により流通開口33A,33Bに着座する。すると、ソケット4Aの流路31Aにある低温液化ガスは流通開口33Aから漏れ出ず、プラグ4Bの流路31Bにある低温液化ガスも流通開口33Bから漏れ出ない。
【0075】
〔荷卸し方法〕
本実施形態の荷卸し方法は、低温液化ガスを貯留するタンク1を搭載した上記タンクローリーによって行う。上記タンク1から取り出した上記低温液化ガスを荷卸しホース2によって荷卸しを開始する前に、上記荷卸しホース2を予冷する。
【0076】
まず、上記荷卸しホース2の先端部を、上記荷卸しホース2に取り出された低温液化ガスを上記タンク1に還流させるための還流口3に接続する。ついで、上記荷卸しホース2に取り出された上記低温液化ガスを上記タンク1に還流させ、上記荷卸しホース2に上記低温液化ガスを流通させ、上記荷卸しホース2を予冷する。
【0077】
具体的には、つぎのように行うことができる。
【0078】
荷卸しの前にあらかじめ、開閉弁24が開き、開閉弁21が閉じた状態で、ポンプ7と流量計測器6を予冷している。迅速流体継手4は接続されている。
荷卸しを開始する前に、開閉弁21を開け、開閉弁24を閉じて荷卸しホース2を予冷する。荷卸しホース2が十分に予冷されたことを液温計8で確認し、迅速流体継手4を分離し、荷卸しホース2先端のソケット4Bを貯槽10のプラグ4Aに付け替える。
ポンプ7を起動して荷卸しを開始する。このとき、ポンプ7の運転信号を流量計測器6へ送ることで流量計測器6の積算カウンタをリセットし、荷卸し量の積算を開始する。
ポンプ7を停止し、荷卸しを終了する。このとき、ポンプ7の停止信号を流量計測器6へ送ることで流量計測器6の積算カウンタをリセットし、取引量を算出する。
荷卸しホース2先端のソケット4Bを貯槽10のソケット4Aからタンクローリーのソケット4Aに付け替える。
開閉弁21を閉じ、開閉弁24を開け、待機状態に移行する。
【0079】
それぞれの手順を詳しく説明する。
ユーザーの貯槽10に低温液化ガスを荷卸しする前から、タンクローリーに搭載されるポンプ7と流量計測器6を、タンク1内の低温液化ガスによって予冷している。ポンプ7および流量計測器6が配置された取り出し配管5は、下流側が連通路5Bによってタンク1の上部に連通している。上記開閉弁24を開けることにより上記取り出し配管5内にタンク1の低温液化ガスを導入する。すると、ポンプ7および流量計測器6内にも低温液化ガスが満たされ、予冷される。
【0080】
ユーザーの貯槽10に液化ガスを荷卸しする時には、取り出し配管5の取出し路5Aに荷卸しホース2の根元部を接続し、先端部をタンク1の還流口3に接続する。還流口3は、タンク1内の低温液化ガスの最低液面よりも低い位置に配置されている。上記還流口3とタンク1を接続する接続路9に設けた液温計8により、荷卸しホース2内が低温液化ガスで満たされたことを確認する。
【0081】
上記接続路9はタンク1上部の気相に接続されている。ユーザーの貯槽10に低温液化ガスを荷卸しする前に、荷卸しホース2の先端部を還流口3に接続して、タンク1内の低温液化ガスを荷卸しホース2内に流して予冷する。荷卸しホース2が十分に冷却されたことを液温計8で確認した後、荷卸しホース2の先端部の接続先を貯槽10に切り替え、荷卸しを開始する。
【0082】
荷卸しホース2の貯槽10側に接続する継手は、迅速流体継手4を使用する。迅速流体継手4はワンタッチで接続・分離することが可能で、継手を分離したときに分離部が密閉されて液が漏れない。このため、荷卸しホース2の予冷が完了した後、還流口3から荷卸しホース2を外しても、荷卸しホース2内は密閉され、荷卸しホース2内の低温液化ガスに空気が混入したり、低温液化ガスが漏れ出したりすることが防止される。
【0083】
前回の荷卸し後も荷卸しホース2の先端部を還流口3に接続していれば、つぎの荷卸し作業時に荷卸しホース2の先端部を還流口3に接続する作業を省略できる。また、荷卸し完了後に荷卸しホース2内の低温液化ガスを抜き取る作業も省略できる。したがって、荷卸し作業の時間を短くできる。
【0084】
また、ポンプ7の運転信号と流量計測器6の計測が、電気信号等で連動されている。ポンプ7の起動中(低温液化ガスを貯槽10に荷卸し中)に流量計測器6が作動し、低温液化ガスの荷卸し量つまり取引量の計測を行う。
【0085】
上記第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0086】
タンクローリーに搭載されたポンプ7と流量計測器6を荷卸しの前に予冷状態に保つことにより、ユーザーにおいて荷卸しに要する時間を短くすることができる。また、荷卸しホース2を予冷するときに気化するガスを廃棄しなくてすむため、経済的である。タンクローリーの設備(ポンプ7・流量計測器6・荷卸しホース2)を予冷する時に気化したガスを取引量に含めないで取引量を算定する。ユーザーに供給した液化ガスの取引量を正確に計測し、予冷で消費したガスの料金をユーザーに負担させずにすむ。
【0087】
荷卸し前後のいずれにおいても、荷卸しホース2内が低温液化ガスで満たされる。このため、荷卸しホース2の容量が取引量に影響しない。
つまり、荷卸し前は、流量計測器6による計測が始まっていない。この状態から荷卸しが始まると、荷卸しホース2内に存在する低温液化ガスまたはガスは、流量計測器6の計測を経ずに貯槽10に荷卸しされる。一方、荷卸しが終了したときに荷卸しホース2内に残った低温液化ガスまたはガスは、流量計測器6で計測はされるものの、貯槽10まで荷卸しはされない。
したがって、荷卸し前に荷卸しホース2内にガスが存在し、荷卸し後に荷卸しホース2内に低温液化ガスが残っていた場合、流量計測器6の計測量が貯槽10への荷卸し量よりも、荷卸しホース2の容量分だけ多くなってしまう。
本実施形態では、荷卸し前後のいずれも荷卸しホース2内が低温液化ガスで満たされているため、流量計測器6の計測量と貯槽10への荷卸し量とが等しくなる。したがって、本実施形態では、仮に長さが異なる荷卸しホース2を使ったとしても、長さの違いによって計測量に誤差が生じない。
【0088】
荷卸し前に荷卸しホース2を予冷する時は、荷卸しホース2の先端部をタンク1の還流口3に接続して予冷時のガスを回収する。これにより、LNGの廃棄ロスを減少させることができる。また、可燃性ガスであるLNGを大気に排出しないため、爆発等の危険がなく安全である。
【0089】
タンク1内の低温液化ガスの温度より、温度が高いガスがタンク1内に還流されることにより、タンク1内の圧力が上昇し、タンク1内の低温液化ガスが過冷却状態になる。過冷却状態の低温液化ガスをポンプ7に供給することで、キャビテーションを起こさない安定したポンプ7の運転が可能となる。また、還流口3付近に液温計8を設置して荷卸しホース2から還流される低温液化ガスの液温を測定し、荷卸しホース2が予冷されたかどうかを容易に確認することができる。
【0090】
荷卸しホース2と還流口3の接続に迅速流体継手4を使用したため、荷卸しホース2の予冷が完了した後、荷卸しホース2内に空気等のガスが混入するのを防ぐことができる。さらに、迅速流体継手4を分離したときにLNGが漏れ出ない。可燃性ガスであるLNGを大気に放出しないため、爆発等の危険がなく安全である。
【0091】
従来のポンプ搭載ローリーでは、荷卸しにあたってポンプと荷卸しホースの双方を予冷しなければならなかった。ポンプの予冷だけで15分以上を要していた。本実施形態では、ポンプ7と流量計測器6を荷卸し前から予冷しておくことができる。荷卸しにあたって荷卸しホース2を予冷するだけで済む。したがって、予冷に要する時間を大幅に短縮できるうえ、荷卸し時の廃棄ロスおよび作業時間を減少できる。荷卸しホース2の先端部を還流口3に接続したままの状態で保持する場合、荷卸しの終了後は、荷卸しホース2内の低温液化ガスを気化させることなく、そのまま先端部を還流口3に接続すればよい。したがって、荷卸しホース2内の低温液化ガスが気化するのを待つ必要がない。このように、荷卸し終了後の待ち時間が短縮され、輸送時間の短縮につながる。
【0092】
ポンプ7稼動の開始・終了と、流量計測器6積算の開始・終了を連動させて荷卸しの開始・終了を制御する。これにより、取引量を運転員が計量し忘れたり、取引量の計量誤差や計量ミスを防いだりすることができる。
ポンプ7稼動の開始と流量計測器6積算の開始が連動しているため、荷卸し結果である取引量の出力を荷卸しの終了と同時に行うことができ、スムーズな取引が可能となる。
タンクローリーからユーザーの貯槽10への荷卸し時間が短縮され、ユーザーにおいて取引量を計測することが可能となる。取引量の計量測定の精度が上がり、タンクローリーによる輸送の利便性が上がる。
【0093】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態を示す。
【0094】
この例では、貯槽10において、ソケット4Aより下流となる荷受け配管12に、背圧弁15を設けている。上記背圧弁15の設定圧力をタンク1からの圧送圧力よりも大きくする。つまり、上記タンク1からの圧送が、荷卸しされる低温液化ガスの流路に設けられた背圧弁15の設定圧力よりも高くなるよう設定する。これにより、タンク1の圧力が貯槽10の圧力よりも高い場合でも、対応できる。
すなわち、タンク1の圧力が貯槽10の圧力よりも高い場合、ポンプ7を運転したりタンク1を加圧したりしなくても、タンクローリーのプラグ4Bを貯槽10のソケット4Aに接続した瞬間にタンク1内の液が貯槽10へ流れる。
背圧弁15を設けて、その設定圧力をタンク1からの圧送圧力よりも高くすることで、ポンプ7を運転したりタンク1を加圧したりして初めて、低温液化ガスが貯槽10へと流れ、荷卸し量の計測を開始する前に低温液化ガスの荷卸しが始まってしまうことを防ぐことができる。
たとえば、タンク1の圧力をP1、ポンプ7運転後の圧力をP2、貯槽10の圧力をP3とすると、つぎのようになる。
P1<P3<P2の場合、背圧弁15がなくても、プラグ4Bとソケット4Aを接続したときに低温液化ガスが勝手に貯槽10に流れることはない。
P3<P1<P2の場合、背圧弁15がないと、プラグ4Bとソケット4Aを接続するのと同時に低温液化ガスが貯槽10に流れる。
このとき、背圧弁15の設定圧力P4を、P1<P4<P2と設定することで、ポンプ運転開始後に始めて低温液化ガスが貯槽10へと流れていく。
したがって、荷卸し量の計測を開始する前に、低温液化ガスが貯槽10へ流れていくことを防止できる。
このように、背圧弁15を設けることにより、荷卸し量の計測を開始する前にタンク1から貯槽10に液化ガスが流れることを防ぐことができる。このため、荷卸し量の積算精度を向上することができる。
【0095】
また、この例では、開閉弁21と逆止弁22の間に圧力センサ14を配置している。この場合、流量計測器6の積算カウンタの操作を、圧力センサ14からの信号によって行うことができる。例えば、圧力センサ14の指示値が背圧弁15の設定値以上になった場合に流量計測器6の積算カウンタをリセットし、圧力センサ14の指示値が背圧弁15の設定値を下回った場合に流量計測器6の積算を終了し、積算結果を出力できる。このようにすることにより、荷卸し量の積算精度を向上させることができる。また、荷卸し量の積算の開始と終了を、ポンプの稼動の開始と終了ではなく、圧力センサ14を用いて行うことができる。荷卸し量の積算の開始と終了のトリガーを、ポンプの稼動開始と終了以外で実現できる。
【0096】
それ以外は、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。この例も第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0097】
図5−1、図5−2、図5−3は、本発明の第3実施形態である。
第3実施形態のタンクローリーは、上記タンク1には、上記タンク1内の上記低温液化ガスを上記荷卸しホース2に向かって所定の圧送圧力で圧送するために上記タンク1内を加圧する加圧機構20が設けられている。したがって、この例では取り出し配管5にポンプ7が設けられていない。
【0098】
図5−1は第1例である。
第1例の加圧機構20は、取出管26、蒸発器27および加圧管28を備えて構成される。この例では、上記取出管26、蒸発器27および加圧管28が、いずれも車載されている。上記取出管26は、タンク1の底部から低温液化ガスを取り出す。上記蒸発器27は、取出管26で取り出した低温液化ガスを気化させる。上記加圧管28は、蒸発器27で発生させたガスをタンク1の上部に導入してタンク1内を加圧する。
【0099】
図5−2は第2例である。
第2例の加圧機構20は、加圧管25と蒸発器29を備えて構成される。上記加圧管25は、貯槽10の上部から取り出したガスをタンク1の上部に導入してタンク1内を加圧する。
【0100】
図5−3は第3例である。
第3例の加圧機構20は、取出管16、蒸発器17および加圧管18を備えて構成される。この例では、上記蒸発器17は、ユーザーの設備として設置されており、車載されていない。上記取出管16は、タンク1の底部から低温液化ガスを取り出す。上記蒸発器17は、取出管16で取り出した低温液化ガスを気化させる。上記加圧管18は、蒸発器17で発生させたガスをタンク1の上部に導入してタンク1内を加圧する。
【0101】
それ以外は、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。この例も第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0102】
図6は、本発明の第4実施形態である。
この例は、上記荷卸しホース2の先端部と上記還流口3との接続に迅速流体継手4を使用しない例である。この例では、上記荷卸しホース2の先端部に設けた接続口42を上記還流口3に接続する。上記接続路9の還流口3近傍には、第1バルブ41Aが設けられている。上記荷卸しホース2の接続口42近傍には、第2バルブ41Bが設けられている。上記接続口42と還流口3を分離するときには、第1バルブ41Aと第2バルブ41Bを閉じ、接続路9と荷卸しホース2から低温液化ガスなどが漏れ出るのを防止する。上記接続口42と還流口3を接合したときには、第1バルブ41Aと第2バルブ41Bを開け、接続路9と荷卸しホース2の連通を確保する。
【0103】
貯槽10の荷受け配管12の先端には受け口43が設けられている。荷卸しのときには、上記荷卸しホース2の先端部に設けた接続口42を上記受け口43に接続する。上記荷受け配管12の受け口43近傍には、第3バルブ41Cが設けられている。接続口42を上記受け口43に接続したときには、上記第2バルブ41Bと第3バルブ41Cを開け、荷卸しホース2と荷受け配管12の連通を確保する。上記接続口42と受け口43を分離するときには、第2バルブ41Bと第3バルブ41Cを閉じ、荷受け配管12と荷卸しホース2から低温液化ガスなどが漏れ出るのを防止する。
【0104】
上記接続路9には安全弁44Aが設けられ、荷受け配管12にも安全弁44Bが設けられている。上記接続路9の第1バルブ41Aを閉じた状態で必要以上の圧力上昇があったときに、上記安全弁44Aが作動して圧力を抜く。上記荷受配管12の第3バルブ41Cを閉じた状態で必要以上の圧力上昇があったときに、上記安全弁44Bが作動して圧力を抜く。
【0105】
それ以外は、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付して説明を省略している。この例も第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0106】
〔変形例〕
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は図示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
【0107】
たとえば、本発明に適用できる低温液化ガスとしては、液化天然ガス等の炭化水素系燃料ガスに限定するものではなく、それ以外の工業ガスである液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、液化炭酸ガス等、各種の低温液化ガスを適用することができる。
【0108】
また、図1において、ポンプ7と流量計測器6の配置を逆にして、タンク1とポンプ7の間に流量計測器6を設置しても良い。タンク1の圧力が貯槽10の圧力よりも低い場合は、図1の構造およびこの変形例により、正確な取引量の計測が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1:タンク
2:荷卸しホース
3:還流口
4:迅速流体継手
4A:ソケット
4B:プラグ
5:取り出し配管
5A:取出し路
5B:連通路
6:流量計測器
7:ポンプ
8:液温計
9:接続路
10:貯槽
11:排気路
12:荷受け配管
13:制御部
14:圧力センサ
15:背圧弁
16:取出管
17:蒸発器
18:加圧管
20:加圧機構
21:開閉弁
22:逆止弁
23:安全弁
24:開閉弁
25:加圧管
26:取出管
27:蒸発器
28:加圧管
29:蒸発器
30:受け部
31A:流路
31B:流路
32A:閉塞壁
32B:閉塞壁
33A:流通開口
33B:流通開口
34A:弁体
34B:弁体
35A:付勢部材
35B:付勢部材
41A:第1バルブ
41B:第2バルブ
41C:第3バルブ
42:接続口
43:受け口
44A:安全弁
44B:安全弁
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6