特許第6513229号(P6513229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000002
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000003
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000004
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000005
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000006
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000007
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000008
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000009
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000010
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000011
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000012
  • 特許6513229-印刷装置、基板位置調整方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513229
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】印刷装置、基板位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/08 20060101AFI20190425BHJP
   B41F 15/26 20060101ALI20190425BHJP
   B41F 15/40 20060101ALI20190425BHJP
   B41F 15/42 20060101ALI20190425BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B41F15/08 303E
   B41F15/26 A
   B41F15/40 B
   B41F15/42
   H05K3/34 505D
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-562205(P2017-562205)
(86)(22)【出願日】2016年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2016051510
(87)【国際公開番号】WO2017126043
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年2月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 克己
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182231(JP,A)
【文献】 特開平11−227157(JP,A)
【文献】 特開平04−044848(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/147812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/08
B41F 15/26
B41F 15/40
B41F 15/42
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクの下方で基板を駆動して前記基板を前記マスクに対向させる基板駆動部と、
前記マスクの上方に設けられたスキージを駆動するスキージ駆動部と、
前記スキージが受ける圧力を検出する圧力検出部と、
前記マスクの上面のうち前記基板が対向する第1範囲に接した前記スキージが受ける圧力を前記圧力検出部により検出した結果に基づき、前記マスクに対する前記基板の高さが所定範囲に収まっているかを確認し、前記マスクに対する前記基板の高さが前記所定範囲に収まっていない場合には、前記マスクに対する前記基板の位置を前記基板駆動部により鉛直方向に調整して、前記基板の高さを変更する制御部と、
前記マスクに対向する前記基板を水平方向からクランプし、前記マスクの下面に接するクランププレート
を備え
前記スキージ駆動部は、前記スキージを昇降可能に支持する支持部材と、前記支持部材と前記スキージとの高さの差に応じて変化する付勢力を前記支持部材と前記スキージとの間に生じさせることで前記スキージを下方に付勢する付勢部材と、前記支持部材を昇降させる駆動源とを有し、前記スキージが前記マスクに接した状態において前記付勢力に抗して前記駆動源により前記支持部材を下方へ押圧することで、前記付勢力に応じた圧力で前記スキージを前記マスクに押圧可能であり、前記支持部材を所定高さに位置させることで前記マスクの上面のうち前記クランププレートが対向する第2範囲に前記スキージを押圧した後に、前記支持部材を前記水平方向に平行に移動させることで前記スキージを前記第1範囲に摺動させる圧力検出用動作を実行し、
前記制御部は、前記圧力検出用動作において前記第2範囲に押圧される前記スキージが受ける圧力と前記第1範囲に摺動される前記スキージが受ける圧力との差に基づき、前記マスクに対する前記基板の位置を鉛直方向に調整する印刷装置。
【請求項2】
前記スキージ駆動部は、前記マスクの上面に供給されたペーストを前記スキージに沿って広げるために前記スキージを前記マスクに摺動させる慣らし動作の前に前記圧力検出用動作を実行し、
前記制御部は、前記スキージ駆動部による前記慣らし動作の前に、前記マスクに対する前記基板の位置を鉛直方向に調整する請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記スキージ駆動部は、前記スキージを前記マスクに摺動させることで前記スキージの上面の半田を前記マスクの孔を介して前記基板に印刷する印刷動作の前に前記圧力検出用動作を実行し、
前記制御部は、前記スキージ駆動部による前記印刷動作の前に、前記マスクに対する前記基板の位置を鉛直方向に調整する請求項に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記スキージ駆動部は、前記スキージを前記マスクに摺動させることで前記スキージの上面の半田を前記マスクの孔を介して前記基板に印刷する印刷動作を、予め設定されている枚数の前記基板に実行した後に前記圧力検出用動作を実行し、
前記制御部は、前記圧力検出用動作の実行後に、前記マスクに対する前記基板の位置を鉛直方向に調整する請求項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方から基板に重なるマスクの上面をスキージにより摺動することで、マスクの上面のペーストを基板に印刷する印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクを用いて基板にペーストを印刷する印刷装置には、マスクに対して基板の高さを合わせるための機構が装備されている。例えば特許文献1のスクリーン印刷機では、コンベアがバックアップピンの上方へ基板を搬入すると、バックアップピンが上昇してコンベアから基板を受け取る。さらに、バックアップピンを支持する基板昇降装置がバックアップピンを伴って上昇することで、基板をマスクの高さにまで上昇させてマスクの下面に接触させる。これによって、マスクの上面をスキージにより摺動して、マスクの上面のクリーム半田を基板に適切に印刷することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/147812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には基板の上昇幅が不適切であるために、基板とマスクとの間に隙間が生じたり、基板がマスクを押し上げてマスクが盛り上がったりすることがあった。この原因としては、例えばオペレーターが基板の上昇幅を誤って設定したり、基板の厚みがロットにより変化したりすることが挙げられる。そして、このように基板の高さがマスクに対して不適切であると、基板へのペーストの印刷を良好に行うことは難しかった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、マスクに対して基板の高さを適切に調整することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、マスクを保持するマスク保持部と、マスクの下方で基板を駆動して基板をマスクに対向させる基板駆動部と、マスクの上方に設けられたスキージを駆動するスキージ駆動部と、スキージが受ける圧力を検出する圧力検出部と、マスクの上面のうち基板が対向する第1範囲に接したスキージが受ける圧力を圧力検出部により検出した結果に基づき、マスクに対する基板の位置を基板駆動部により鉛直方向に調整する制御部とを備える。
【0007】
本発明に係る基板高さ調整方法は、マスクに基板を下方から対向させる工程と、マスクの上面のうち基板が対向する第1範囲に接したスキージが受ける圧力を検出する工程と、第1範囲からスキージが受ける圧力を検出した結果に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、マスクの上面のうち基板が対向する第1範囲に接したスキージが受ける圧力を検出する。つまり、マスクに対して基板の位置が不適切であると、上述のようにマスクと基板との間に隙間ができたり、マスクが盛り上がったりするために、マスクの第1範囲に接するスキージが受ける圧力に影響が生じる。そこで、本発明は、マスクに対する基板の位置とスキージに働く圧力との間の相関関係を利用して、スキージが受ける圧力に基づきマスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する。その結果、鉛直方向においてマスクに対して基板の位置を適切に調整することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用した印刷装置を模式的に示す正面図である。
図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図3】スキージユニットを模式的に示す側面図である。
図4】スキージユニットを模式的に示す正面図である。
図5】スキージユニットの動作を模式的に示す側面図である。
図6】マスクの下面の高さと基板の上面の高さとの位置関係を模式的に示す正面図である。
図7】基板高さ補正処理の第1例を示すフローチャートである。
図8図7のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。
図9】基板高さ補正処理の第2例を示すフローチャートである。
図10図9のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。
図11】基板高さ補正処理の第3例を示すフローチャートである。
図12図10のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明を適用した印刷装置を模式的に示す正面図である。図2図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。図1および以下の図では、Z方向を鉛直方向とし、X方向およびY方向を水平方向とするXYZ直交座標軸を適宜示す。この印刷装置1は、マスクMを保持するマスク保持ユニット2と、マスクMの下方に配置された基板保持ユニット4と、マスクMの上方に配置されたスキージユニット6とを備える。さらに、印刷装置1は、CPU(Central Processing Unit)およびRAM(Random Access Memory)等で構成された主制御部10と、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部11とを備える。そして、主制御部10が記憶部11に記憶される印刷プログラムに従って各ユニット4、6を制御することで、基板保持ユニット4により基板SをマスクMに下方から対向させつつスキージユニット6のスキージ70の先端をマスクMの上面にX方向へ摺動させる(印刷動作)。これによって、マスクMの上面に供給された半田が、マスクMを貫通するパターン孔を介して基板Sの上面に印刷される。
【0011】
また、印刷装置1は、装置に設けられた可動部の動作を制御する駆動制御部12およびバルブ制御部13を備え、主制御部10は、駆動制御部12およびバルブ制御部13によりユニット4、6の可動部を制御する。さらに、印刷装置1は、例えば液晶ディスプレイ等で構成された表示ユニット14と、キーボードやマウスといった入力機器で構成された入力ユニット15とを備える。したがって、作業者は、表示ユニット14の表示内容を確認することで印刷装置1の稼働状況を確認したり、入力ユニット15を操作することで印刷装置1に指令を入力したりできる。なお、表示ユニット14および入力ユニット15はタッチパネルにより一体的に構成しても構わない。
【0012】
マスク保持ユニット2はクランプ部材21を有し、マスクMはその周縁部に設けられたフレームFを介してクランプ部材21に着脱可能に取り付けられる。これによって、平板形状を有するマスクMがマスク保持ユニット2により水平に保持される。このマスクMは、平面視において矩形状を有し、基板Sへの印刷パターンに応じた形状の貫通孔(パターン孔)を有する。
【0013】
基板保持ユニット4は、マスク保持ユニット2に保持されたマスクMの下方に配置され、マスクMに対して基板Sの位置を合わせる機能を担う。この基板保持ユニット4は、基板Sを搬送する一対のコンベア41と、コンベア41から受け取った基板Sを保持する基板保持部42と、コンベア41および基板保持部42を支持する平板形状の可動テーブル43とを有する。
【0014】
一対のコンベア41はX方向に間隔を空けつつY方向に平行に配置されており、それぞれの上面で基板SのX方向の両端を下方から支持する。また、基板保持ユニット4には、これらコンベア41を駆動するコンベア駆動部M41が設けられている。そして、駆動制御部12からの指令を受けたコンベア駆動部M41が各コンベア41を駆動すると、各コンベア41がY方向に基板Sを搬送して、印刷装置1に対する基板Sの搬入あるいは搬出を実行する。
【0015】
基板保持部42は、平板形状の昇降テーブル421と、可動テーブル43に対してZ方向にスライド可能なスライド支柱422とを有し、昇降テーブル421がスライド支柱422の上端に支持されている。また、昇降テーブル421の上面にはZ方向に立設された複数のバックアップピン423がX方向およびY方向に間隔を空けて並ぶ。さらに、基板保持部42にはバックアップ駆動部M423が設けられており、駆動制御部12からの指令を受けたバックアップ駆動部M423がスライド支柱422を昇降させることで、昇降テーブル421とともにバックアップピン423を昇降させる。例えばコンベア41の基板Sの搬入時は、バックアップ駆動部M423は、各バックアップピン423の上端をコンベア41の上面より下方に位置させる。そして、コンベア41がバックアップピン423の直上に基板Sを搬入すると、バックアップ駆動部M423はバックアップピン423を上昇させることで、バックアップピン423の上端をコンベア41の上面より上方へ突出させる。これによって、コンベア41の上面から各バックアップピン423の上端へ基板Sが受け渡される。
【0016】
また、基板保持部42は、一対のコンベア41の上方でX方向に間隔を空けて配置された一対のクランププレート424と、これらクランププレート424の少なくとも一方をX方向に駆動するプレート駆動部M424とを有する。各クランププレート424の上面はX方向およびY方向に平行な平面であり、同じ高さに位置する。プレート駆動部M424は、バルブ制御部13からの指令に応じてバルブを開閉することで、クランププレート424へ供給するエアを調整する。これによって、クランププレート424がX方向に駆動される。
【0017】
そして、駆動制御部12がバックアップピン423上の基板Sを一対のクランププレート424の間にまで上昇させ、バルブ制御部13からの指令を受けたバルブが動作してこれらクランププレート424の間隔を狭めることで、基板Sがこれらクランププレート424によりX方向(水平方向)からクランプされる。具体的には、基板Sの上面の高さをクランププレート424の上面の高さに一致させるバックアップ駆動部M423の駆動量を示す基板高さ制御データが記憶部11に格納されている。例えばバックアップ駆動部M423がスライド支柱422を駆動するアクチュエーターである場合には、基板Sとクランププレート424との上面の高さが一致する際のアクチュエーターのロッドの位置(駆動量)を基板高さ制御データとして格納することができる。あるいは、バックアップ駆動部M423がスライド支柱422を駆動するモーターである場合には、基板Sとクランププレート424との上面の高さが一致する際のモーターの回転角度(駆動量)を基板高さ制御データとして格納することができる。なお、基板高さ制御データの記憶部11への格納は、作業者による入力ユニット15への操作等により予め実行される。そして、バックアップ駆動部M423は基板高さ制御データが示す上昇幅だけ基板Sを上昇させる。この際、バックアップ駆動部M423による基板Sの上昇中は、プレート駆動部M424は一対のクランププレート424の間隔を基板SのX方向の幅より広くする。そして、バックアップ駆動部M423による基板Sの上昇が完了すると、プレート駆動部M424は一対のクランププレート424の間隔を狭めて、これらクランププレート424により基板SをX方向から挟む。こうして、基板Sがクランププレート424によりクランプされる。
【0018】
さらに、基板保持ユニット4は、可動テーブル43を駆動するテーブル駆動機構44を有する。このテーブル駆動機構44は、X軸テーブル441と、X軸テーブル441の上面に取り付けられたY軸テーブル442と、Y軸テーブル442の上面に取り付けられたR軸テーブル443と、R軸テーブル443に対して可動テーブル43を昇降させるボールネジ444とを有する。さらに、テーブル駆動機構44は、X軸テーブル441をX方向に駆動するX軸駆動部M441と、Y軸テーブル442をY方向へ駆動するY軸駆動部M442と、R軸テーブル443をR方向(Z方向に平行な軸を中心とする回転方向)に駆動するR軸駆動部M443と、ボールネジ444を回転させることで可動テーブル43をZ方向に駆動するZ軸駆動部M444とを有する。したがって、駆動制御部12は、各駆動部M441〜M444を制御することで、可動テーブル43に配置されたコンベア41および基板保持部42をX、Y、Z、R方向に駆動することができる。例えば搬入された基板SをマスクMに対して位置決めする際には、駆動制御部12は、クランププレート424にクランプされた基板Sの位置を、X・Y・R軸駆動部M441〜M443によりXY面内で調整するとともに、Z軸駆動部M444によりZ方向に調整する。これによって、クランププレート424および基板Sそれぞれの上面がマスクMの下面に接触する。
【0019】
続いては、スキージユニット6の詳細について、図3図5を併用して説明する。ここで、図3はスキージユニットを模式的に示す側面図であり、図4はスキージユニットを模式的に示す正面図であり、図5はスキージユニットの動作を模式的に示す側面図である。スキージユニット6は、マスク保持ユニット2に保持されたマスクMの上方に配置され、スキージ70を具備する印刷ヘッド7と、印刷ヘッド7をX方向およびZ方向へ駆動するヘッド駆動機構8とを有する。
【0020】
印刷ヘッド7は、Y方向に平行な軸を中心にスキージ70を回動可能に支持する支持ブラケット71と、支持ブラケット71に取り付けられた回動モーターM70とを有する。回動モーターM70はスキージ70の回動軸に接続されており、駆動制御部12は回動モーターM70によりスキージ70を回動させることで、スキージ70がマスクMに接する角度(アタック角度)を調整することができる。
【0021】
また、印刷ヘッド7は、スキージ70が取り付けられた支持ブラケット71を支持する支持フレーム72を支持ブラケット71の上方に有する。つまり、印刷ヘッド7は、Z方向に平行に延設された2本のサポートロッド73を有し、各サポートロッド73が支持フレーム72に対してZ方向にスライド可能に設けられている。支持フレーム72には、各サポートロッド73に対応して挿入孔がZ方向に貫通しており、2本のサポートロッド73は対応する挿入孔に上方から挿入されている。各サポートロッド73は、挿入孔よりも径の大きいフランジ731をそれぞれの上端に有し、フランジ731が上方から支持フレーム72に引っ掛かることで、サポートロッド73が支持フレーム72から抜け落ちないように構成されている。一方、2本のサポートロッド73の下端は、支持ブラケット71の上端を構成するプレート711の上面に取り付けられる。こうして支持フレーム72は、その下方に設けられたスキージ70をZ方向へ移動可能に支持する。
【0022】
さらに、印刷ヘッド7は、スキージ70に印圧を加えるとともに当該印圧を検出する機構を有する。つまり、印刷ヘッド7は、支持ブラケット71のプレート711の上面に取り付けられた印圧センサー74と、印圧センサー74の上面に取り付けられたプレート741とを有する。この印圧センサー74は例えばロードセルで構成される。また、印刷ヘッド7は、Z方向に平行に延設されて支持フレーム72に対してZ方向にスライド可能な2本のガイドロッド75と、各ガイドロッド75に外嵌された圧縮バネ76とを有する。支持フレーム72には各ガイドロッド75に対応して挿入孔がZ方向に貫通しており、対応する挿入孔に上方から挿入された各ガイドロッド75の下端がプレート741の上面に取り付けられている。また、各圧縮バネ76は支持フレーム72から下方に突き出たガイドロッド75に外嵌され、圧縮バネ76の上端が支持フレーム72に下方から当接するとともに、圧縮バネ76の下端がプレート741に上方から当接する。こうして、支持フレーム72とプレート741の間に設けられた圧縮バネ76は、支持フレーム72とプレート741との間隔の減少に応じて増大する付勢力を発生する。その結果、プレート741、印圧センサー74、支持ブラケット71およびスキージ70は、圧縮バネ76の付勢力によって支持フレーム72から離れる方向、すなわち下方に付勢される。また、圧縮バネ76の付勢力は、印圧センサー74を介してスキージ70に伝わるため、主制御部10は、印圧センサー74の検出結果に基づき、スキージ70に加えられる付勢力を確認することができる。
【0023】
ヘッド駆動機構8は、Z方向に延設されたボールネジ82と、Z軸モーターM82と、Z軸モーターM82の出力をボールネジ82に伝達する無端ベルト83とを有し、支持フレーム72がボールネジ82のナットに取り付けられて、ボールネジ82の回転に応じて昇降する。したがって、駆動制御部12は、Z軸モーターM82の回転角度を制御することで、支持フレーム72の高さを調整することができる。さらに、ヘッド駆動機構8は、図3および図4に示すスキージユニット6の構成をX方向に一体的に駆動するX軸モーターM6を有する。したがって、駆動制御部12は、Z軸モーターM82により支持フレーム72を下降させてスキージ70をマスクMの上面に接触させた状態で、X軸モーターM6によりスキージ70をX方向に移動させることで印刷動作を実行することができる。
【0024】
このように構成されたスキージユニット6では、支持フレーム72の高さを調整することで、所定の印圧をスキージ70に加えることができる。図5を用いて説明すると、スキージ70がマスクMから上方へ離れた状態から支持フレーム72を下降させると、図5の状態A1に示すように、ある時点でスキージ70がマスクMに接触する。この状態では、サポートロッド73のフランジ731は支持フレーム72に接した状態にあり、支持フレーム72とプレート741の間隔は、圧縮バネ76の自然長、あるいは自然長より若干狭い間隔I0となる。続いて、状態A1から支持フレーム72を下降させると、支持フレーム72とプレート741の間隔は、間隔I0から支持フレーム72の下降幅ΔIだけ狭くなり、間隔I1となる(図5の状態A2)。その結果、圧縮バネ76が下降幅ΔIだけ縮んで、下降幅ΔIにそのバネ定数を乗じた付勢力に応じた圧力が印圧としてスキージ70に加えられる。具体的には、圧縮バネ76の付勢力と、印刷ヘッド7のうちの支持フレーム72に支持される部分の自重との和に相当する圧力がスキージ70に加わる印圧となる。
【0025】
このように、支持フレーム72の高さに応じた印圧がスキージ70に加わるため、駆動制御部12はZ軸モーターM82により支持フレーム72の高さを制御することで、印刷動作においてスキージ70に加える印圧を調整することができる。そこで、目標印圧がスキージ70に加わる高さ(印圧印加高さhp)に支持フレーム72を位置させるZ軸モーターM82の駆動量を示す印圧制御データが記憶部11に格納されている。そして、印刷動作の実行時には、印圧制御データが示す駆動量だけZ軸モーターM82が駆動すると、支持フレーム72が印圧印加高さhpに位置する。この際、具体的には、圧縮バネ76が目標印圧に相当する付勢力を発生する高さに支持フレーム72が位置する際のZ軸モーターM82の回転角度(駆動量)を印圧制御データとして格納することができる。あるいは、支持フレーム72の昇降をアクチュエーターで実行する場合には、圧縮バネ76が目標印圧に相当する付勢力を発生する高さに支持フレーム72が位置する際のアクチュエーターのロッドの位置(駆動量)を印刷制御データとして格納することができる。
【0026】
しかしながら、マスク保持ユニット2に保持されるマスクMの下面の高さと、基板保持ユニット4に保持される基板Sの上面の高さとの関係が不適切であるために、印圧制御データが示す高さに支持フレーム72を位置させても、スキージ70に加わる印圧が目標印圧からずれる場合があった。この点について図6を用いて説明する。
【0027】
図6はマスクの下面の高さと基板の上面の高さとの位置関係を模式的に示す正面図である。なお、図6では、マスクMの上面のうち基板Sが下方から対向する基板対向範囲W1と、マスクMの上面のうちクランププレート424が下方から対向するプレート対向範囲W2とが示されている。また、同図の各状態B1〜B3では、各クランププレート424の上面の高さは、マスク保持ユニット2に保持されるマスクMの下面の高さに一致している。
【0028】
図6の状態B1では、クランププレート424の上面より基板Sの上面が低く、その結果、マスクMと基板Sとの間に隙間が生じている。かかる状態B1で、印圧制御データが示す高さに支持フレーム72を位置させつつスキージ70を基板対向範囲W1に押圧した場合、マスクMの下面うちスキージ70の先端が対向する部分が基板Sに接するまで、可撓性を有するマスクMが隙間の幅Δh1だけ下方へ凹む。そのため、支持フレーム72とスキージ70との間隔、すなわち圧縮バネ76の長さが幅Δh1だけ伸び、スキージ70へ加わる印圧が目標印圧より減少する。なお、この際の印圧の減少量は、圧縮バネ76のバネ定数に幅Δh1を乗じた付勢力に相当する。
【0029】
また、図6の状態B2では、クランププレート424の上面より基板Sの上面が高く、その結果、マスクMの基板対向範囲W1がプレート対向範囲W2より盛り上がっている。かかる状態B2では、印圧制御データが示す高さに支持フレーム72を位置させつつスキージ70を基板対向範囲W1に押圧した場合、基板Sが印圧に抗して基板対向範囲W1を盛り上がった状態に支持し、スキージ70の下降を盛り上がりの幅Δh2だけ阻む。そのため、支持フレーム72とスキージ70との間隔、すなわち圧縮バネ76の長さが幅Δh2だけ縮み、スキージ70へ加わる印圧が目標印圧より増加する。なお、この際の印圧の増加量は、圧縮バネ76のバネ定数に幅Δh2を乗じた付勢力に相当する。
【0030】
一方、図6の状態B3では、クランププレート424の上面と基板Sの上面とは同じ高さに位置する。その結果、マスクMの基板対向範囲W1とプレート対向範囲W2とが同じ高さに位置するとともに、マスクMの基板対向範囲W1は基板Sにより支持される。したがって、印圧制御データが示す高さに支持フレーム72を位置させつつスキージ70を基板対向範囲W1に押圧することで、目標印圧をスキージ70に加えることができる。
【0031】
このように、マスク保持ユニット2に保持されるマスクMの下面の高さと、基板保持ユニット4に保持される基板Sの上面の高さとの関係が、スキージ70に加わる印圧に影響する。そこで、主制御部10は、印圧印加高さhpに支持フレーム72を位置させた際にスキージ70に加わる印圧を検出した結果に基づき、マスクMに対する基板Sの高さを補正する基板高さ補正処理を実行する。
【0032】
図7は基板高さ補正処理の第1例を示すフローチャートであり、図8図7のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。基板高さ補正処理が開始すると、ステップS101において、スキージユニット6は支持フレーム72を初期高さhoに保ちつつスキージ70をマスクMのプレート対向範囲W2の上方へ移動させる(時刻t11)。これによって、スキージ70の先端のX方向における位置は、プレート対向範囲W2内の初期位置Xoとなる。なお、支持フレーム72が初期高さhoにある状態では、スキージ70の先端はマスクMのプレート対向範囲W2から上方へ離れている。続いて、スキージユニット6は支持フレーム72を初期高さhoから印圧印加高さhpへ下降させる(ステップS102)。これによって、支持フレーム72が時刻t12に印圧印加高さhpに到達し、スキージ70がマスクMのプレート対向範囲W2に押圧される。そして、主制御部10は、印圧センサー74の出力に基づきスキージ70に加わる印圧を測定する(ステップS103)。この際、マスクMの下面に接するクランププレート424がスキージ70に加わる印圧に抗してプレート対向範囲W2を支持するため、測定される印圧は目標印圧Ptとなる。
【0033】
続いて、スキージユニット6は、支持フレーム72を印圧印加高さhpに維持しつつ、支持フレーム72に伴ってスキージ70をX方向に平行に移動させて、スキージ70の先端をマスクMの上面に摺動させる(ステップS104)。そして、X方向に互いに隣接するプレート対向範囲W2と基板対向範囲W1との境界にスキージ70が到達する時刻t13以後に、主制御部10は、印圧センサー74の出力に基づきスキージ70に加わる印圧を測定する(ステップS105)。この際、マスクMと基板Sとが図6の状態B1に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptよりも小さい印圧Pa1となり(図8の印圧のグラフの一点鎖線)、マスクMと基板Sとが図6の状態B2に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptよりも大きい印圧Pb1となり(図8の印圧のグラフの二点差線)、マスクMと基板Sとが状態B3に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptと一致する(図8の印圧のグラフの破線)。
【0034】
そこで、主制御部10は、ステップS103で測定した印圧とステップS105で測定した印圧との差を算出し(ステップS106)、所定の変換テーブルに基づき、この印圧差を基板Sの上面の高さに変換する(ステップS107)。なお、この変換テーブルは、支持フレーム72を印圧印加高さhpに位置させた状態で基板Sの上面の高さを変更しながら印圧差を測定する実験を予め実行した結果から求められて、記憶部11に記憶されている。ステップS108では、主制御部10は、基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっているかを確認することで、基板Sの上面の高さが適切かを判断する。
【0035】
そして、基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていない場合(ステップS108で「NO」の場合)は、主制御部10は、基板Sの高さを変更する(ステップS109)。具体的には、クランププレート424による基板Sのクランプを解除してからバックアップ駆動部M423によりバックアップピン423を昇降させることで基板Sの高さを変更し、再びクランププレート424により基板Sをクランプする。この際、主制御部10は、目標印圧Ptに対してステップS105での実測印圧が小さい場合には基板Sを上昇させ、目標印圧Ptに対してステップS105での実測印圧が大きい場合には基板Sを下降させる。そして、ステップS108で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されるまで、ステップS101〜S109が繰り返し実行される。最終的に、ステップS108で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されると、図7の基板高さ補正処理が終了する。
【0036】
以上に説明したように、基板高さ補正処理の第1例では、マスクMの上面のうち基板Sが対向する基板対向範囲W1に接したスキージ70が受ける印圧を検出する。つまり、マスクMに対して基板Sの高さが不適切であると、上述のようにマスクMと基板Sとの間に隙間ができたり、マスクMが盛り上がったりするために、マスクMの基板対向範囲W1に接するスキージ70が受ける印圧に影響が生じる。そこで、マスクMに対する基板Sの高さとスキージ70に働く印圧との間の相関関係を利用して、スキージ70が受ける印圧に基づきマスクMに対する基板Sの高さを調整する。その結果、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0037】
また、スキージ70は支持フレーム72により昇降可能に支持されており、圧縮バネ76が支持フレーム72とスキージ70との高さの差に応じて変化する付勢力を支持フレーム72とスキージ70との間に生じさせることでスキージ70を下方に付勢する。また、スキージ70の先端がマスクMの上面に接した状態において、Z軸モーターM82が圧縮バネ76の付勢力に抗して支持フレーム72を下方へ押圧することで、この付勢力に応じた印圧でスキージ70の先端をマスクMの上面に押圧する。かかる構成では、マスクMに対して基板Sの高さが不適切であると、マスクMの基板対向範囲W1に接するスキージ70に対して圧縮バネ76が加える印圧に影響が生じる。そこで、主制御部10は、基板対向範囲W1に押圧されるスキージ70が受ける印圧を印圧センサー74により検出した結果に基づき、マスクMに対する基板Sの高さを調整する。これによって、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0038】
特に、基板高さ補正処理の第1例では、支持フレーム72を印圧印加高さhpに位置させてマスクMのプレート対向範囲W2にスキージ70を押圧した後、支持フレーム72をX方向(水平方向)に移動させることでスキージ70をマスクMの基板対向範囲W1に摺動させる圧力検出用動作(ステップS102、S104)が実行される。この際、プレート対向範囲W2は下方から接するクランププレート424により支持されているため、プレート対向範囲W2に押圧されるスキージ70の高さはマスクMに対する基板Sの位置によらず安定する。一方、基板対向範囲W1に摺動されるスキージ70の高さは、マスクMに対する基板Sの位置によって変化する。つまり、マスクMと基板Sとの間に隙間がある場合には、スキージ70の押圧に伴って基板対向範囲W1が凹むために、基板対向範囲W1に摺動されるスキージ70の高さは、プレート対向範囲W2に押圧されるスキージ70の高さよりも低くなる。逆に、マスクMが盛り上がっている場合には、基板対向範囲W1に摺動されるスキージ70の高さは、プレート対向範囲W2に押圧されるスキージ70の高さよりも高くなる。その結果、マスクMに対して基板Sの高さが不適切であると、スキージ70がプレート対向範囲W2に押圧されている期間(時刻t13より前の期間)と、基板対向範囲W1に摺動されている期間(時刻t13より後の期間)とで、スキージ70と支持フレーム72との間隔が変化し、その結果、スキージ70に加わる印圧も変化する。そこで、主制御部10は、プレート対向範囲W2に押圧されるスキージ70が受ける印圧と基板対向範囲W1に摺動されるスキージ70が受ける印圧との差に基づき、マスクMに対する基板Sの高さを調整する。こうして、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0039】
図9は基板高さ補正処理の第2例を示すフローチャートであり、図10図9のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。以下では、上記実施形態との差異点を中心に説明することとし、共通点については適宜説明を省略する。ただし、上記実施形態と共通する構成を備えることで同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
【0040】
基板高さ補正処理が開始すると、ステップS201において、スキージユニット6は支持フレーム72を初期高さhoに保ちつつスキージ70をマスクMの基板対向範囲W1の上方へ移動させる(時刻t21)。なお、支持フレーム72が初期高さhoにある状態では、スキージ70の先端はマスクMの基板対向範囲W1から上方へ離れている。続いて、スキージユニット6は支持フレーム72を初期高さhoから印圧印加高さhpへ下降させる(ステップS202)。これによって、支持フレーム72が時刻t22に印圧印加高さhpに到達し、スキージ70がマスクMの基板対向範囲W1に押圧される。そして、主制御部10は、印圧センサー74の出力に基づきスキージ70に加わる印圧を測定する(ステップS203)。この際、マスクMと基板Sとが図6の状態B1に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptよりも小さい印圧Pa2となり(図10の印圧のグラフの一点鎖線)、マスクMと基板Sとが図6の状態B2に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptよりも大きい印圧Pb2となり(図10の印圧のグラフの二点差線)、マスクMと基板Sとが状態B3に示した位置関係にあると、測定される印圧は目標印圧Ptと一致する(図10の印圧のグラフの破線)。
【0041】
そこで、主制御部10は、記憶部11に予め記憶された目標印圧Ptと、ステップS203で測定した印圧との差を算出し(ステップS204)、上記の変換テーブルに基づき、この印圧差を基板Sの上面の高さに変換する(ステップS205)。続いて、ステップS206では、主制御部10は、基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっているかを確認することで、基板Sの上面の高さが適切かを判断する。基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていない場合(ステップS206で「NO」の場合)は、主制御部10は、上述のステップS109と同様に、基板Sの高さを変更する(ステップS207)。そして、ステップS206で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されるまで、ステップS201〜S207が繰り返し実行される。最終的に、ステップS206で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されると、図9の基板高さ補正処理が終了する。
【0042】
以上に説明したように、基板高さ補正処理の第2例においても、マスクMの上面のうち基板Sが対向する基板対向範囲W1に接したスキージ70が受ける印圧を検出する。そして、マスクMに対する基板Sの高さとスキージ70に働く印圧との間の相関関係を利用して、スキージ70が受ける印圧に基づきマスクMに対する基板Sの高さを調整する。その結果、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0043】
特に、基板高さ補正処理の第2例では、支持フレーム72を印圧印加高さhpに位置させることでスキージ70を基板対向範囲W1に押圧する圧力検出用動作が実行される(ステップS102)。そして、主制御部10は、基板対向範囲W1に押圧されるスキージ70が受ける印圧に基づき、マスクMに対する基板の高さを調整する。こうして、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0044】
図11は基板高さ補正処理の第3例を示すフローチャートであり、図12図10のフローチャートに基づき実行される動作を模式的に示すタイミングチャートである。以下では、上記実施形態との差異点を中心に説明することとし、共通点については適宜説明を省略する。ただし、上記実施形態と共通する構成を備えることで同様の効果が奏されることは言うまでも無い。
【0045】
基板高さ補正処理が開始すると、ステップS301において、スキージユニット6は支持フレーム72を初期高さhoに保ちつつスキージ70をマスクMの基板対向範囲W1の上方へ移動させる(時刻t31)。なお、支持フレーム72が初期高さhoにある状態では、スキージ70の先端はマスクMの基板対向範囲W1から上方へ離れている。続いて、スキージユニット6は支持フレーム72の初期高さhoからの下降を開始する(ステップS302)。
【0046】
支持フレーム72が一定速度で下降する間のある時点で、スキージ70はマスクMの上面に接触した後に基板Sからの抗力を受け始め、スキージ70への印圧がゼロから増加し始める。この際、マスクMと基板Sとが図6の状態B3に示した位置関係にあると、印圧の増加は時刻t33に始まり(図12の印圧のグラフの破線)、マスクMと基板Sとが図6の状態B2に示した位置関係にあると、印圧の増加は時刻t33より早い時刻t32に始まり(図12の印圧のグラフの二点鎖線)、マスクMと基板Sとが図6の状態B1に示した位置関係にあると、印圧の増加は時刻t33より遅い時刻t34に始まる(図12の印圧のグラフの一点鎖線)。
【0047】
そして、印圧センサー74の検出結果に基づき測定される印圧が所定の閾値Pthに達したかが確認され(ステップS303)、印圧が閾値Pthに達した時点における支持フレーム72の高さがZ軸モーターM82のエンコーダー出力に基づき測定される(ステップS304)。この際、マスクMと基板Sとが図6の状態B3に示した位置関係にあると、印圧は時刻t36に閾値Pthに達して(図12の印圧のグラフの破線)、支持フレーム72は基準高さhtに位置し、マスクMと基板Sとが図6の状態B2に示した位置関係にあると、印圧は時刻t36より早い時刻t35に閾値Pthに達して(図12の印圧のグラフの二点鎖線)、支持フレーム72は基準高さhtより高い高さhbに位置し、マスクMと基板Sとが図6の状態B1に示した位置関係にあると、印圧は時刻t36より遅い時刻t37に閾値Pthに達して(図12の印圧のグラフの一点鎖線)、支持フレーム72は基準高さhtより低い高さhaに位置する。ちなみに、印圧が所定の閾値Pthに達した時点で、支持フレーム72の下降は停止する。
【0048】
そして、主制御部10は、記憶部11に予め記憶された基準高さhtと、ステップS304で測定した支持フレーム72の高さとの差を算出し(ステップS305)、この高さの差から基板Sの上面の高さを求める(ステップS306)。続いて、ステップS307では、主制御部10は、基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっているかを確認することで、基板Sの上面の高さが適切かを判断する。基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていない場合(ステップS307で「NO」の場合)は、主制御部10は、上述のステップS109と同様に、基板Sの高さを変更する(ステップS308)。そして、ステップS307で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されるまで、ステップS301〜S308が繰り返し実行される。最終的に、ステップS307で基板Sの上面の高さが所定範囲に収まっていることが確認されると、図11の基板高さ補正処理が終了する。
【0049】
以上に説明したように、基板高さ補正処理の第3例においても、マスクMの上面のうち基板Sが対向する基板対向範囲W1に接したスキージ70が受ける印圧を検出する。そして、マスクMに対する基板Sの高さとスキージ70に働く印圧との間の相関関係を利用して、スキージ70が受ける印圧に基づきマスクMに対する基板Sの高さを調整する。その結果、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0050】
特に、基板高さ補正処理の第3例では、スキージ70がマスクMから離れた状態からスキージ70をマスクMへ向けて下降させて基板対向範囲W1に接触させる圧力検出用動作(ステップS302)が実行される。つまり、スキージ70をマスクMへ向けて下降させて基板対向範囲W1に接触させた場合、スキージ70が受ける印圧の変化の態様は、マスクMに対する基板Sの高さに応じて異なる。そこで、主制御部10は、基板対向範囲W1に接したスキージ70が受ける印圧の変化に基づき、マスクMに対する基板Sの高さを調整する。こうして、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整することが可能となっている。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、マスク保持ユニット2が本発明の「マスク保持部」の一例に相当し、マスクMが本発明の「マスク」の一例に相当し、基板保持ユニット4が本発明の「基板駆動部」の一例に相当し、基板Sが本発明の「基板」の一例に相当し、スキージユニット6が本発明の「スキージ駆動部」の一例に相当し、スキージ70が本発明の「スキージ」の一例に相当し、印圧センサー74が本発明の「圧力検出部」の一例に相当し、印圧が本発明の「圧力」の一例に相当し、主制御部10が本発明の「制御部」の一例に相当し、基板対向範囲W1が本発明の「第1範囲」の一例に相当し、プレート対向範囲W2が本発明の「第2範囲」の一例に相当し、支持フレーム72が本発明の「支持部材」の一例に相当し、圧縮バネ76が本発明の「付勢部材」の一例に相当し、Z軸モーターM82が本発明の「駆動源」の一例に相当し、印圧印加高さhpが本発明の「所定高さ」の一例に相当する。
【0052】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、ステップS102、S202における支持フレーム72の下降先は印圧印加高さhpに限られず、印圧印加高さhpと異なる高さであっても良い。
【0053】
また、上記のスキージユニット6は、支持フレーム72をプレート711より上側に配置して圧縮バネ76によりスキージ70に付勢力を加えていた。しかしながら、支持フレーム72をプレート711より下側に配置して引っ張りバネによりスキージ70に付勢力を与えるようにスキージユニット6を構成しても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、基板高さ補正処理の実行タイミングについては具体的に説明しなかった。しかしながら、基板高さ補正処理は、種々のタイミングで実行可能である。 例えば、スキージユニット6は、マスクMの上面に供給された半田(ペースト)をスキージ70に沿って広げるためにスキージ70をマスクMに摺動させる慣らし動作を、新たに半田が供給される度に適宜実行する。そこで、主制御部10は、この慣らし動作の前に基板高さ補正処理を実行しても良い。これによって、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整した状態で慣らし動作を実行できる。また、主制御部10は印刷動作の前に、基板高さ補正処理を実行しても良い。これによって、マスクMに対して基板Sの高さを適切に調整した状態で印刷動作を実行できる。あるいは、主制御部10は、予め設定された枚数の基板Sに印刷動作を実行する度に基板高さ補正処理を実行しても良い。これによって、以後の印刷動作をマスクMに対して基板Sの高さを適切に調整した状態で実行できる。
【0055】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明では例えば次のように構成することができる。
【0056】
つまり、スキージ駆動部は、スキージを昇降可能に支持する支持部材と、支持部材とスキージとの高さの差に応じて変化する付勢力を支持部材とスキージとの間に生じさせることでスキージを下方に付勢する付勢部材と、支持部材を昇降させる駆動源とを有し、スキージがマスクに接した状態において付勢力に抗して駆動源により支持部材を下方へ押圧することで、付勢力に応じた圧力でスキージをマスクに押圧可能であり、制御部は、第1範囲に押圧されるスキージが受ける圧力を圧力検出部により検出した結果に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。
【0057】
かかる構成では、マスクに対して基板の位置が不適切であると、上述のようにマスクと基板との間に隙間ができたり、マスクが盛り上がったりするために、マスクの第1範囲に接するスキージに対して付勢部材が加える圧力に影響が生じる。そこで、制御部は、スキージが受ける圧力に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する。その結果、マスクに対して基板の高さを適切に調整することができる。
【0058】
また、マスクに対向する基板を水平方向からクランプし、マスクの下面に接するクランププレートをさらに備え、スキージ駆動部は、支持部材を所定高さに位置させることでマスクの上面のうちクランププレートが対向する第2範囲にスキージを押圧した後に、支持部材を水平方向に平行に移動させることでスキージを第1範囲に摺動させる圧力検出用動作を実行し、制御部は、圧力検出用動作において第2範囲に押圧されるスキージが受ける圧力と第1範囲に摺動されるスキージが受ける圧力との差に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。
【0059】
かかる構成では、支持部材を所定高さに位置させてマスクの第2範囲にスキージを押圧した後、支持部材を水平方向に移動させることでスキージをマスクの第1範囲に摺動させる圧力検出用動作が実行される。この際、第2範囲は下方から接するクランププレートにより支持されているため、第2範囲に押圧されるスキージの高さはマスクに対する基板の位置によらず安定する。一方、第1範囲に摺動されるスキージの高さは、マスクに対する基板の位置によって変化する。つまり、マスクと基板との間に隙間がある場合には、スキージの押圧に伴って第1範囲が凹むために、第1範囲に摺動されるスキージの高さは、第2範囲に押圧されるスキージの高さよりも低くなる。逆に、マスクが盛り上がっている場合には、第1範囲に摺動されるスキージの高さは、第2範囲に押圧されるスキージの高さよりも高くなる。その結果、マスクに対して基板の位置が不適切であると、スキージが第2範囲に押圧されている期間と、第1範囲に摺動されている期間とで、スキージと支持部材との間隔が変化し、その結果、スキージに働く圧力も変化する。そこで、制御部は、第2範囲に押圧されるスキージが受ける圧力と第1範囲に摺動されるスキージが受ける圧力との差に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する。こうして、マスクに対して基板の高さを適切に調整することが可能となっている。
【0060】
また、スキージ駆動部は、支持部材を所定高さに位置させることでスキージを第1範囲に押圧する圧力検出用動作を実行し、制御部は、圧力検出用動作において第1範囲に押圧されるスキージが受ける圧力に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。
【0061】
つまり、第1範囲に押圧されるスキージの高さは、マスクに対する基板の位置によって変化する。具体的には、マスクと基板との間に隙間がある場合には、スキージの押圧に伴って第1範囲が凹む。そのため、基板がマスクの下面に接している場合と比較して、第1範囲に押圧されるスキージの高さは低くなり、スキージに働く圧力は小さくなる。逆に、マスクが盛り上がっている場合には、基板がマスクの下面に接している場合と比較して、第1範囲に押圧されるスキージの高さは高くなり、スキージに働く圧力は大きくなる。そこで、制御部は、第1範囲に押圧されるスキージが受ける圧力に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する。こうして、マスクに対して基板の高さを適切に調整することが可能となっている。
【0062】
また、スキージ駆動部は、スキージがマスクから離れた状態からスキージをマスクへ向けて下降させて第1範囲に接触させる圧力検出用動作を実行し、制御部は、圧力検出用動作において第1範囲に接したスキージが受ける圧力の変化に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。
【0063】
つまり、スキージをマスクへ向けて下降させて第1範囲に接触させた場合、スキージが受ける圧力の変化の態様は、マスクに対する基板の位置に応じて異なる。そこで、制御部は、第1範囲に接したスキージが受ける圧力の変化に基づき、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整する。こうして、マスクに対して基板の高さを適切に調整することが可能となっている。
【0064】
また、スキージ駆動部は、マスクの上面に供給されたペーストをスキージに沿って広げるためにスキージをマスクに摺動させる慣らし動作の前に圧力検出用動作を実行し、制御部は、スキージ駆動部による慣らし動作の前に、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。かかる構成では、マスクに対して基板の高さを適切に調整した状態で慣らし動作を実行できる。
【0065】
また、スキージ駆動部は、スキージをマスクに摺動させることでスキージの上面の半田をマスクの孔を介して基板に印刷する印刷動作の前に圧力検出用動作を実行し、制御部は、スキージ駆動部による印刷動作の前に、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成できる。かかる構成では、マスクに対して基板の高さを適切に調整した状態で印刷動作を実行できる。
【0066】
また、スキージ駆動部は、スキージをマスクに摺動させることでスキージの上面の半田をマスクの孔を介して基板に印刷する印刷動作を、予め設定されている枚数の基板に実行した後に圧力検出用動作を実行し、制御部は、圧力検出用動作の実行後に、マスクに対する基板の位置を鉛直方向に調整するように、印刷装置を構成しても良い。かかる構成では、予め設定されている枚数の基板へ印刷動作が実行されると、圧力検出用動作が実行されて、マスクに対する基板の位置が鉛直方向に調整される。そのため、以後の印刷動作を、マスクに対して基板の高さ適切に調整した状態で実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明は、上方から基板に重なるマスクの上面をスキージにより摺動することで、マスクの上面のペーストを基板に印刷する印刷技術全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…印刷装置
2…マスク保持ユニット
4…基板保持ユニット
6…スキージユニット
70…スキージ
72…支持フレーム
74…印圧センサー
76…圧縮バネ
10…主制御部
M82…Z軸モーター
W1…基板対向範囲
W2…プレート対向範囲
M…マスク
S…基板
hp…印圧印加高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12