(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
中空樹脂粒子は、水に、架橋性モノマーと疎水性溶剤とを混合し、架橋性モノマーにより疎水性溶剤を内包した架橋性モノマー液滴を得る工程、架橋性モノマー液滴における架橋性モノマーを重合させて、疎水性溶剤を内包した架橋性モノマーの重合体を含む樹脂粒子を得る工程、および、樹脂粒子おいて内包された疎水性溶剤を除去して、架橋性モノマーの重合体を含み、内部が中空である中空樹脂粒子を得る工程を備える製造方法により、得ることができる。
【0021】
水に、架橋性モノマーと疎水性溶剤とを混合し、架橋性モノマーにより疎水性溶剤を内包した架橋性モノマー液滴を得る工程では、まず、架橋性モノマーと疎水性溶剤とを混合して混合液を調製する。
【0022】
架橋性モノマーは、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマー(以下、三官能以上モノマーとする。)を1種以上含有する。
【0023】
三官能以上モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマー(メタクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマーおよび/またはアクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマー)、アリル基含有三官能以上モノマーなどが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマーは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有三官能モノマー(3つの重合性二重結合を有する三官能モノマー)、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有四官能モノマー(4つの重合性二重結合を有する四官能モノマー)、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有五官能モノマー(5つの重合性二重結合を有する五官能モノマー)、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有六官能モノマー(6つの重合性二重結合を有する六官能モノマー)などが挙げられる。
【0025】
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートと定義される。
【0026】
アリル基含有三官能以上モノマーとしては、例えば、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル基含有三官能モノマー(3つの重合性二重結合を有する三官能モノマー)などが挙げられる。
【0027】
三官能以上モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマーが挙げられる。
【0028】
すなわち、三官能以上モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。
【0029】
三官能以上モノマーが、(メタ)アクリロイルオキシ基を含めば、強度を向上させることができ、その結果、体積中空率を大きくできる。
【0030】
また、三官能以上モノマーとしては、より好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基含有四官能モノマー、(メタ)アクリロイルオキシ基含有五官能モノマー、(メタ)アクリロイルオキシ基含有六官能モノマーが挙げられる。
【0031】
すなわち、より好ましくは、三官能以上モノマーは、4つ以上6以下の重合性二重結合を有する。
【0032】
三官能以上モノマーが、4つ以上6以下の重合性二重結合を有すれば、より一層強度を向上させることができ、その結果、体積中空率をより一層大きくできる。
【0033】
また、三官能以上モノマーとしては、さらに好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0034】
架橋性モノマーは、1種類以上の三官能以上モノマーを含んでいる。また、架橋性モノマーは、2種以上の三官能以上モノマーを含んでもよい。
【0035】
架橋性モノマーが、2種類以上の三官能以上モノマーを含む場合には、三官能以上モノマーは、重合性二重結合の数が互いに異なる2種以上の三官能以上モノマーを含有してもよい。
【0036】
三官能以上モノマーの配合割合は、架橋性モノマーに対して、例えば、85質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下、また、例えば、99質量部以下である。
【0037】
また、架橋性モノマーは、必要により、2つの重合性二重結合を有する二官能モノマーを含む。
【0038】
二官能モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレンなどのビニル基含有二官能モノマー、例えば、ジアリルフタレートなどのアリル基含有二官能モノマー、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有二官能モノマーなどが挙げられる。
【0039】
二官能モノマーの配合割合は、三官能以上モノマーおよび二官能性モノマーの総量100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0040】
二官能モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
架橋性モノマーは、好ましくは、二官能モノマーを含まず、三官能以上モノマーからなる。
【0042】
疎水性溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、2−エチルヘキシル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類などが挙げられ、好ましくは、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類が挙げられ、より好ましくは、トルエン、ヘキサンが挙げられる。
【0043】
疎水性溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
そして、架橋性モノマーと疎水性溶剤とを混合し、混合液を調製する。
【0045】
疎水性溶剤の配合割合は、架橋性モノマー100質量部に対して、例えば、80質量部以上、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、350質量部以上であり、また、例えば、600質量部以下である。
【0046】
混合液には、重合体を構成するモノマーとして、架橋性モノマーの他に、1つの重合性二重結合を有する単官能モノマーを配合することが好ましい。
【0047】
単官能モノマーを配合すれば、立体障害によるビニル基の反応性低下が抑制され、強度を向上させることができ、その結果、体積中空率を大きくできる。
【0048】
単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基含有単官能モノマー、ビニル基含有単官能モノマー、モノオレフィンなどが挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリロイルオキシ基含有単官能モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルエキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの環構造含有(メタ)アクリル酸エステル、例えば、(メタ)アクリル酸β−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸δ−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸γ−アミノプロピル、(メタ)アクリル酸γ−N,N−ジエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0050】
ビニル基含有単官能モノマーは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニルモノマー、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテルなどのビニルエーテル、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0051】
モノオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
【0052】
単官能モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基含有単官能モノマーが挙げられる。
【0053】
すなわち、単官能モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。
【0054】
単官能モノマーが、(メタ)アクリロイルオキシ基を含めば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する三官能以上モノマーとの共重合性が良く、反応率が向上し、強度を向上させることができ、その結果、体積中空率を大きくできる。
【0055】
また、単官能モノマーとしては、より好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、さらに好ましくは、炭素数1〜4のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、とりわけ好ましくは、メタクリル酸、メタクリル酸メチルが挙げられる。
【0056】
単官能モノマーとしてメタクリル酸を用いると、粒子安定性が向上し、凝集物が少なくなり、収率が向上する。
【0057】
単官能モノマーの配合割合は、三官能以上モノマーおよび単官能モノマーの総量100質量部に対して、例えば、2質量部以上であり、また、例えば、8質量部以下である。
【0058】
また、単官能モノマーの配合割合は、架橋性モノマーに対して、例えば、3質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下である。
【0059】
単官能モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。単官能モノマーを2種類併用する場合には、好ましくは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用、より好ましくは、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルを併用する。
【0060】
(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用する場合には、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステルの総量100質量部に対して、(メタ)アクリル酸の配合割合は、例えば、40質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下であり、また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、例えば、40質量部以上であり、また、例えば、60質量部以下である。
【0061】
また、三官能以上モノマーと単官能モノマーとの組合せとしては、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基含有三官能以上モノマーと(メタ)アクリロイルオキシ基含有単官能モノマーとの組合せが挙げられる。
【0062】
すなわち、好ましくは、三官能以上モノマーおよび単官能モノマーの両方が、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む。
【0063】
三官能以上モノマーおよび単官能モノマーの両方が、(メタ)アクリロイルオキシ基を含めば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する三官能以上モノマーとの共重合性が良く、反応率が向上し、より一層強度を向上させることができ、その結果、より一層体積中空率を大きくできる。
【0064】
また、混合液には、重合開始剤を配合することもできる。
【0065】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、例えば、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシドなどのペルオキシド化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物などの油溶性重合開始剤が挙げられ、好ましくは、アゾ化合物、より好ましくは、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が挙げられる。
【0066】
重合開始剤の配合割合は、架橋性モノマー100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、5質量部以下である。
【0067】
次いで、水に、混合液を添加し、撹拌する。
【0068】
混合液の添加割合は、水100部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、120質量部以下、好ましくは、90質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0069】
水には、好ましくは、予め、分散剤を配合する。
【0070】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)共重合体などの高分子分散剤、例えば、ノニオン系界面活性剤、例えば、アニオン系界面活性剤、例えば、両性界面活性剤などが挙げられ、好ましくは、高分子分散剤、より好ましくは、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0071】
分散剤の配合割合は、架橋性モノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下である。
【0072】
水に、撹拌する方法として、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
【0073】
攪拌条件は、適宜設定され、ホモミキサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、500rpm以上に、例えば、30000rpm以下に設定する。攪拌時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、1時間以下である。攪拌温度は、例えば、20℃以上であり、また、例えば、30℃以下である。
【0074】
このとき、水中に疎水性溶剤が分散される一方、疎水性溶剤と水とは親和せず、架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーが疎水性溶剤よりも相対的に水と親和することから、架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーは、水と疎水性溶剤との間に介在する。そして、上記の攪拌を続けるにつれて、水と疎水性溶剤との間に介在する架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーは、疎水性溶剤を包むように、液滴を形成する。
【0075】
これにより、架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーにより疎水性溶剤を内包する架橋性モノマー液滴が得られる。
【0076】
また、このような架橋性モノマー液滴は、水中に分散されている。つまり、架橋性モノマー液滴を含む水分散液が得られる。
【0077】
また、多孔膜圧入分散機を用いる場合には、粒子径分布の小さい架橋性モノマー液滴を得ることができ、得られる中空樹脂粒子(後述)の体積平均粒子径分布も小さくなる。
【0078】
架橋性モノマー液滴の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0079】
上記の平均粒子径は、動的光散乱法により求めることができる。
【0080】
続いて、架橋性モノマー液滴における架橋性モノマーを重合させて、疎水性溶剤を内包した架橋性モノマーの重合体を含む樹脂粒子を得る工程では、架橋性モノマー液滴における架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーを重合させる。
【0081】
架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーを重合させるには、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素ガス、アルゴンなど)で、水分散液を撹拌しながら加熱する。
【0082】
加熱温度としては、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下であり、また、加熱時間は、例えば、3時間以上、好ましくは、12時間以上であり、また、例えば、36時間以下である。
【0083】
この重合では、疎水性溶剤と水との界面で架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーが重合する。すなわち、架橋性モノマー液滴の表面の架橋性モノマーおよび必要により配合される単官能モノマーが重合する。
【0084】
そのため、この重合により、疎水性溶剤を内包した架橋性モノマーの重合体を含む、好ましくは、架橋性モノマーと単官能モノマーとの共重合体からなる、樹脂粒子が得られる。
【0085】
このような樹脂粒子は、水中に分散されている。
【0086】
最後に、樹脂粒子おいて内包された疎水性溶剤を除去して、架橋性モノマーの重合体(好ましくは、架橋性モノマーと単官能モノマーとの共重合体)を含み、内部が中空である中空樹脂粒子を得る工程では、樹脂粒子おいて内包された疎水性溶剤を除去する。
【0087】
樹脂粒子おいて内包された疎水性溶剤を除去するには、この水分散液を、減圧し、架橋性モノマーの重合体(好ましくは、架橋性モノマーと単官能モノマーとの共重合体)に内包された疎水性溶剤を気化させ、空気と置換する。その結果、樹脂粒子の内部が中空となる。
【0088】
これにより、架橋性モノマーの重合体を含み、好ましくは、架橋性モノマーと単官能モノマーとの共重合体からなり、内部が中空である中空樹脂粒子が得られる。
【0089】
中空樹脂粒子が、架橋性モノマーと単官能モノマーとの共重合体からなれば、強度を向上させることができ、その結果、体積中空率を大きくできる。
【0090】
このような中空樹脂粒子は、水中に分散されている。
【0091】
この中空樹脂粒子は、内部が中空である。そして、この中空樹脂粒子は、架橋性モノマーの重合体を含む中空樹脂粒子であって、架橋性モノマーは、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを1種以上含有するため、高架橋の三次元ネットワークが形成され、粒子が高強度化され、疎水性溶剤を除去する際に生まれる負圧に粒子が耐えることができ、高い割合で、真球状の粒子として得られ、真球状である比率が高い。
【0092】
具体的には、真球状の中空樹脂粒子の割合は、得られた中空樹脂粒子に対して、例えば、80%以上、好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0093】
なお、真球状の中空樹脂粒子の割合の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0094】
中空樹脂粒子の形状が真球状であれば、強度を向上させることができる。
【0095】
また、この中空樹脂粒子では、架橋性モノマーは、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを1種以上含有するため、2つのビニル基を有するジビニルベンゼン(2つの重合性二重結合を有する)の重合体からなる特許文献1の中空高分子微粒子と比べて、架橋密度を向上させることができ、強度を向上させることができる。
【0096】
そのため、例えば、中空樹脂粒子を含む樹脂を基材に塗工した後に、キャレンダー処理を施しても、中空樹脂粒子の破壊を抑制することができる。
【0097】
また、強度が高いため、体積中空率を高くすることができる。
【0098】
具体的には、中空樹脂粒子の体積中空率は、例えば、30%以上、好ましくは、60%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、85%以下である。
【0099】
中空樹脂粒子の体積中空率が、上記の上限以下であれば、強度に優れる。
【0100】
中空樹脂粒子の体積中空率が、上記の下限以上であれば、断熱性に優れる。
【0101】
なお、体積中空率の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0102】
また、中空樹脂粒子の内部(中空部分)に、香料、染料、蓄熱材、薬剤、紫外吸収剤、無機顔料などを内包させることもできる。
【0103】
また、中空樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、20μm以下である。
【0104】
なお、体積平均粒子径の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0105】
中空樹脂粒子の体積平均粒子径が、上記の上限以下であれば、例えば、中空樹脂粒子を含む樹脂を基材に塗工する際、塗膜の平滑性が向上する。
【0106】
中空樹脂粒子の体積平均粒子径が、上記の下限以上であれば、断熱性に優れる。
【0107】
このようにして得られた中空樹脂粒子は、分散液のままで使用してもよく、また、必要により、濾過、水洗、乾燥し、粉体の形態で、各種用途に用いることができる。
【0108】
なお、上記した説明では、架橋性モノマーと疎水性溶剤と重合開始剤とを混合して混合液を調製し、水に混合液を添加したが、架橋性モノマーと疎水性溶剤と重合開始剤とを予め混合することなく、別々に、水に添加することもできる。
【0109】
このような中空樹脂粒子は、例えば、感熱記録材料、農薬、医薬、香料、液晶、接着剤などの分野において用いることができ、とりわけ、感熱記録材料に、好適に用いることができる。
【0110】
そのため、支持層と、断熱層と、感熱記録層とを順に備える感熱記録材料において、この中空樹脂粒子を断熱層に含有させることが好適である。
【0111】
具体的には、
図1において、感熱記録材料1は、支持層2と、断熱層3と、感熱記録層4とを順に備える。
【0112】
感熱記録材料1は、熱によって、色を変化させる材料であって、例えば、感熱記録紙、熱転写受容紙などが挙げられる。
【0113】
支持層2としては、例えば、紙、プラスチックシートなどが挙げられる。支持層2の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0114】
断熱層3は、感熱記録層4を発色させるために感熱ヘッドから与えられる熱の放散を防ぐ層である。
【0115】
断熱層3は、上記の中空樹脂粒子と、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン/ブタジエン エマルション、アクリルエマルションなどのバインダー樹脂とを含む。
【0116】
中空樹脂粒子およびバインダー樹脂の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0117】
断熱層3の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0118】
感熱記録層4は、上記のバインダー樹脂と、染料と、顕色剤とを含む。
【0119】
染料としては、例えば、フロオラン系有機染料、トリアリルメタン系有機染料、フェノキシアジン系有機染料などの公知の塩基性有機染料が挙げられる。
【0120】
顕色剤としては、特に制限されず、例えば、フェノール性化合物、芳香族カルボン酸などの公知の顕色剤が挙げられる。
【0121】
バインダー樹脂、染料および顕色剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
感熱記録層4の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0122】
感熱記録材料1を製造するには、まず、支持層2上に、断熱層3を形成する。
【0123】
断熱層3を形成するには、中空樹脂粒子とバインダー樹脂との混合物を、カーテンコート法、ロールコート法、ブレードコート法などの公知のコート法によって、塗布し、その後、乾燥させる。
【0124】
次いで、断熱層3上に、感熱記録層4を形成する。
【0125】
感熱記録層4を形成するには、上記のバインダー樹脂と、染料と、顕色剤との混合物を、カーテンコート法、ロールコート法、ブレードコート法などの公知のコート法によって、塗布し、その後、乾燥させる。
【0126】
これにより、感熱記録材料1が得られる。
【0127】
そして、このような感熱記録材料1において、断熱層3は上記の中空樹脂粒子を含んでいる。そのため、感熱記録材料1は、断熱性に優れる。
【0128】
また、上記した説明では、感熱記録材料1は、支持層2、断熱層3および感熱記録層4からなるが、例えば、支持層2と断熱層3との間や、断熱層3と感熱記録層4との間に、中間層(図示せず)が介在されていてもよい。
【0129】
また、感熱記録層4の上に、オーバーコート層(図示せず)が配置されていてもよい。このような場合には、感熱記録材料1は、支持層2と、断熱層3と、感熱記録層4と、オーバーコート層(図示せず)とを順に備える。
【0130】
また、支持層2の下に、バックコート層(図示せず)が配置されていてもよい。このような場合には、感熱記録材料1は、バックコート層(図示せず)と、支持層2と、断熱層3と、感熱記録層4とを順に備える。
【0131】
また、感熱記録材料1は、上記のオーバーコート層(図示せず)および上記のバックコート層(図示せず)の両方を備えることもできる。このような場合には、感熱記録材料1は、バックコート層(図示せず)と、支持層2と、断熱層3と、感熱記録層4とオーバーコート層(図示せず)とを順に備える。
【実施例】
【0132】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0133】
1. 成分の詳細
各実施例
、各比較例
および各参考比較例で用いた各成分を以下に記載する。
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
TAIC:トリアリルイソシアヌレート
PETTA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
MAA:メタクリル酸
MMA:メタクリル酸メチル
PVA210:ポリビニルアルコール、クラレ社製
V−59:2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
2.中空樹脂粒子の調製
実施例1
3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーとして、TMPTA 19質量部、重合開始剤として、V−59 0.4質量部、疎水性溶剤として、トルエン56質量部およびヘキサン24質量部を混合した混合液を調製した。そして、分散剤として、PVA210 5質量部を配合した蒸留水400質量部に、この混合液を混合し、その後、ホモジナイザーを用い、攪拌速度1000rpm、室温(25℃)の条件下で、撹拌し、水分散液を得た。
【0134】
得られた架橋性モノマー液滴の平均粒子径が14μm程度であった。
【0135】
次いで、水分散液を窒素ガス雰囲気下で、撹拌しながら70℃で加熱し、24時間重合させた。これにより、疎水性溶剤を内包した樹脂粒子を含む水分散液を得た。
【0136】
得られた水分散液を減圧し、樹脂粒子に内包された疎水性溶剤を留去し、中空樹脂粒子を含む水分散液を得た。
【0137】
実施例2〜
実施例4、実施例6、実施例8〜実施例12、比較例1〜比較例6
、参考比較例5および参考比較例7
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、中空樹脂粒子を含む水分散液を得た。
【0138】
3.評価
(体積平均粒子径)
各実施例
、各比較例
および各参考比較例の中空樹脂粒子について、中空樹脂粒子の体積平均粒子径を測定した。具体的には、試料1gと蒸留水10gとを30mLガラス製サンプル瓶に採取し、マグネティックスターラーで5分間撹拌した後、粒度分析計マイクロトラックHRA(日機装株式会社製)を用い、下記条件で粒度分布測定を実施した。
【0139】
Particle Transparency =Transp
Spherical Particles =Yes
Particle Refractive Index=1.50
Fluid Refractive Index =1.333
その結果を表1に示す。
(形状および体積中空率)
各実施例
、各比較例
および各参考比較例の中空樹脂粒子について、中空樹脂粒子の形状を観察し、また、その体積中空率を測定した。具体的には、中空樹脂粒子を含む水分散液をアルミホイル上に塗布し、40℃で12時間以上乾燥し、塗膜を得た。次いで、この塗膜を、液体窒素に浸して凍結させた後、速やかに切断し、得られた切断面を電子顕微鏡により観察した。無作為に選んだ10個の中空樹脂粒子の粒子径および中空部分の径を測定し、体積中空率を計算した。得られた体積中空率の平均値を中空樹脂粒子の体積中空率とした。
【0140】
その結果を表1に示す。
(真球状の中空樹脂粒子の割合)
各実施例
、各比較例
および各参考比較例の中空樹脂粒子について、真球状の中空樹脂粒子の割合を算出した。具体的には、中空樹脂粒子を含む水分散液をアルミホイル上に塗布し、40℃で12時間以上乾燥し、塗膜を得た。得られた塗膜表面を電子顕微鏡により観察し、無作為に選んだ50個の中空樹脂粒子の内、真球状を維持している粒子の割合を算出した。その結果を表1に示す。
(強度評価:キャレンダー試験)
各実施例
、各比較例
および各参考比較例の中空樹脂粒子について、中空樹脂粒子の強度を測定した。具体的には、蒸留水で不揮発分10%に調整した中空樹脂粒子を含む水分散液を市販のコート紙(坪量74g/m
2)の片面に、乾燥後の塗布量が2g/m
2となるように塗布し、エアドライヤー方式にて80℃で1分間乾燥させて、中空樹脂粒子を含む層(中空樹脂粒子層)を設け、中空樹脂粒子が塗工された塗工紙を得た。キャレンダー装置(「卓上キャレンダー 単板型」 由利ロール社製)を用いて、室温、線圧200kg/cm、処理速度2m/分で、この塗工紙にキャレンダー処理を施した。キャレンダー処理後の塗工紙の中空樹脂粒子層側の表面と、中空樹脂粒子層の切断面を、走査型電子顕微鏡により倍率2000倍で観察した。中空樹脂粒子層の切断面は、塗工紙を液体窒素に浸して凍結させた後、速やかに切断することにより得た。
【0141】
強度に関して次の基準で優劣を評価した。その結果を表1に示す。
◎:表面の粒子が形状を維持している
○:表面の粒子が形状をほぼ維持している
△:表面の粒子の内、約半分が潰れている
×:表面の粒子がすべて潰れている
(合成後の凝集物量)
各実施例
、各比較例
および各参考比較例の中空樹脂粒子について、凝集物発生量を測定した。具体的には、合成したエマルション100gを300メッシュのステンレス金網で濾過し、150℃で20分間乾燥させて、残渣重量を測定し、濾過したエマルションに対する重量比率を計算することにより凝集物量を得た。
【0142】
【表1】
【0143】
4.考察
架橋性モノマーが、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを1種以上含有する実施例1〜
実施例4、実施例6、実施例8〜実施例12
、参考比較例5および参考比較例7は、真球状粒子の割合が高く、また、強度を確保しつつ、体積中空率が高い。このことから、架橋性モノマーが、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを含有すれば、強度および体積中空率の両方に優れた真球状の中空樹脂粒子を得ることができたとわかる。
【0144】
一方、架橋性モノマーが、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを含有しない比較例1〜比較例6では、比較例1のように、真球状粒子の割合が高く、強度が高いものの、体積中空率が小さくなったり、また、比較例2〜比較例6のように、体積中空率が大きいものの、真球状粒子の割合が低く、強度も低くなった。このことから、架橋性モノマーが、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを含有しなければ、強度および体積中空率の両方に優れた真球状の中空樹脂粒子を得ることができなかったとわかる。
【課題】真球状である比率が高く、また、強度を確保しつつ、中空率を高くできる中空樹脂粒子、その中空樹脂粒子を含む断熱層を備える感熱記録材料、および、真球状として、高い割合で得ることができ、また、強度を確保しつつ、中空率を高くできる中空樹脂粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】中空樹脂粒子は、内部が中空であり、架橋性モノマーの重合体を含む中空樹脂粒子である。架橋性モノマーは、3つ以上の重合性二重結合を有する多官能モノマーを1種以上含有する。