(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513364
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】液状食品及び半液状食品の熱処理に用いられる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20190425BHJP
F25B 29/00 20060101ALI20190425BHJP
A23G 3/02 20060101ALN20190425BHJP
A23G 9/22 20060101ALN20190425BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
F25B29/00 361A
!A23G3/02
!A23G9/22
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-205886(P2014-205886)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2015-91230(P2015-91230A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】BO2013A000551
(32)【優先日】2013年10月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514194842
【氏名又は名称】エイエルアイ エス.ピイ.エイ. カルピジャーニ グループ
【氏名又は名称原語表記】ALI S.p.A. CARPIGIANI GROUP
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア コッキ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ラッザリーニ
【審査官】
飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−124192(JP,U)
【文献】
米国特許第04607494(US,A)
【文献】
特開平05−176686(JP,A)
【文献】
特開昭57−181650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
F25B
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状食品及び半液状食品の熱処理及び製造に用いられる装置であって、
熱処理対象の各食品を収容する少なくとも2つの容器(3A、3B)と、
前記容器(3A、3B)に収容されている前記食品を分配する少なくとも1つの分配器(4)と、
前記容器(3A、3B)に収容されている前記食品に対して作用可能に機能する熱処理手段(6)と、
を備え、
前記熱処理手段(6)は、作動流体を循環させる少なくとも1つの回路(7)と、熱力学サイクルに従って作動する少なくとも2つの第1熱交換器(8A、8B)と、を有し、
前記2つの第1熱交換器(8A、8B)のそれぞれは、前記容器(3A、3B)のそれぞれ1つと関連付けられ、
前記熱処理手段(6)は、前記熱交換器(8A、8B)の一方が少なくとも1つの前記容器(3A、3B)の内容物を加熱して第1液状食品又は第1半液状食品を製造し、前記熱交換器(8A、8B)の他方が他方の前記容器(3A、3B)の内容物を冷却して第2液状食品又は第2半液状食品を製造し、
前記少なくとも1つの分配器(4)は、一方の前記容器(3A)と連結され、前記一方の前記容器から前記第1液状食品又は前記第1半液状食品を分配できる第1分配器(21A)と、他方の前記容器(3B)から前記第2液状食品又は前記第2半液状食品を分配できる第2分配器(21B)と、両方の前記容器(3A、3B)からの食品を分配し混合できる第3分配器(21C)とを備える、ことを特徴とする、
装置(1)。
【請求項2】
前記熱処理手段(6)は、一方の前記第1熱交換器(8A)によって前記容器(3A、3B)の一方から熱を除去し、他方の前記第1熱交換器(8B)によって他方の前記容器(3B)に熱を伝達するよう構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱処理手段(6)は、一方の前記第1熱交換器(8A)によって前記容器(3A、3B)の一方から熱を除去し、同時に、他方の前記第1熱交換器(8B)によって他方の前記容器(3B)に熱を伝達するよう構成される、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
流体を循環させる単一の回路(7)を有し、前記2つの第1熱交換器(8A、8B)が、前記単一の回路(7)に沿って、前記単一の回路内で直列に連結されていることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
放出端が一方の前記第1熱交換器(8A)と連結され、戻り端が他方の前記第1熱交換器(8B)と連結されているコンプレッサ(11)と、
前記2つの第1熱交換器(8A、8B)の間に配置された絞り弁(12)と、
を備えることを特徴とする、
請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記2つの第1熱交換器(8A、8B)の間に配置された切替弁(13)と、
前記切替弁(13)と前記コンプレッサ(11)の間に配置されたバイパス分岐路(14)と、
を備えることを特徴とする、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記切替弁(13)は、前記コンプレッサ(11)の前記放出端と連結されている前記第1熱交換器(8A)の下流側に位置し、かつ、前記絞り弁(12)の上流側に位置することを特徴とする、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記切替弁(13)は、前記作動流体循環回路(7)の構成を変更するよう、オペレータにより制御可能であることを特徴とする、
請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも2つの作動流体循環回路(7A、7B)として、第1作動流体循環回路(7A)及び第2作動流体循環回路(7B)を有し、前記第1作動流体循環回路(7A)及び前記第2作動流体循環回路(7B)は、分離され、独立し、前記第1作動流体循環回路(7A)及び前記第2作動流体循環回路(7B)には、前記第1熱交換器(8A、8B)がそれぞれ組み込まれていることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
各作動流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ(11)と、前記第1熱交換器(8)と、第2熱交換器(15)と、絞り弁(12)とを有し、熱力学サイクルに従って作動し、
前記作動流体循環回路のうち一方(7B)において、前記第1熱交換器(8B)は凝縮器として機能し、前記第2熱交換器(15)は蒸発器として機能し、
前記作動流体循環回路のうち他方(7A)において、前記第1熱交換器(8A)は蒸発器として機能し、前記第2熱交換器(15)は凝縮器として機能する、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
各作動流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ(11)と、前記第1熱交換器(8)と、第2熱交換器(15)と、絞り弁(12)とを有し、熱力学サイクルに従って作動し、
前記作動流体循環回路(7A、7B)のそれぞれは、前記コンプレッサ(11)の放出端の下流側に位置する切替弁(16)を更に有し、
前記切替弁(16)の出口は、第1切り替え位置にて前記第2熱交換器(15)と、第2切り替え位置にて前記絞り弁(12)と前記第1熱交換器(8A、8B)との間に配置されたノード(17)と、両方に連結されており、
前記切替弁(16)と前記ノード(17)との連結は、バイパス分岐路(18)によりなされている、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記切替弁(16)は、前記作動流体循環回路(7)の構成を変更するよう、オペレータにより制御可能であることを特徴とする、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
各作動流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ(11)と、前記第1熱交換器(8A、8B)と、第2熱交換器(15)と、絞り弁(12)とを有し、熱力学サイクルに従って作動し、
前記作動流体循環回路(7A、7B)のそれぞれは、前記第1熱交換器(8A、8B)が蒸発器として機能し、前記第2熱交換器(15)が凝縮器として機能する第1構成と、前記第1熱交換器(8A、8B)が凝縮器として、前記第2熱交換器(15)が蒸発器として機能する第2構成との間で、熱力学サイクルを逆転させる弁(19)を更に備える、
ことを特徴とする、
請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記サイクル逆転弁(19)はオペレータにより制御可能であることを特徴とする、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1作動流体循環回路(7A)に組み込まれた前記熱交換器(8A’、8A)のそれぞれに具備される、相互に連結されている第1槽(V1)と第1シリンダ(3A)とを備え、
前記第2作動流体循環回路(7B)に組み込まれた前記熱交換器(8B’、8B)のそれぞれに具備される、相互に連結されている第2槽(V2)と第2シリンダ(3B)とを更に備える、
請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記作動流体循環回路(7A、7B)のそれぞれは、前記槽(V1、V2)又は前記シリンダ(3A、3B)内の前記食品に熱処理が行われるように、前記作動流体を、第1作動モードでは前記槽(V1、V2)に、第2作動モードでは前記シリンダ(3A、3B)に二者択一的に循環させる切替手段(22)を備える、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記作動流体循環プラント(7A、7B)は、前記第1作動モードにおいて、ホットガス熱サイクルを実行するよう構成される、
請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記作動流体循環回路(7)は、前記作動流体の移動方向を逆転可能で、前記作動流体が第1方向に移動する場合に一方の前記容器(3A、3B)を加熱させ、前記作動流体が前記第1方向とは異なる第2方向に移動する場合に前記一方の前記容器(3A、3B)を冷却させるよう構成される、
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも第1及び第2の液状食品又は半液状食品を製造するために、液状食品又は半液状食品に対して熱処理を行う方法であって、
熱処理の対象となる液状食品又は半液状食品をそれぞれ収容する少なくとも2つの容器(3A、3B)を用意するステップと、
第1液状食品又は第1半液状食品を製造するために、前記2つの容器(3A、3B)のうち一方から熱を除去して、前記2つの容器(3A、3B)のうち一方における食品を冷却しながら、第2液状食品又は第2半液状食品を製造するために、前記2つの容器(3A、3B)のうち他方(3B)に熱を伝達して前記2つの容器(3A、3B)のうち他方における食品を加熱する、前記2つの容器(3A、3B)における食品に熱処理を行うステップと、
前記2つの容器(3A、3B)の一方の前記容器内の前記第1液状食品又は前記第1半液状食品と、前記2つの容器(3A、3B)の他方の前記容器内の前記第2液状食品又は前記第2半液状食品とを攪拌して混合するステップと、
を有する方法。
【請求項20】
前記2つの容器(3A、3B)における食品に熱処理を行う前記ステップは、同時に行われる、
前記2つの容器(3A、3B)のうち一方から熱を除去するステップと、
他方の前記容器(3B)に熱を伝達するステップを含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記2つの容器(3A、3B)のうち一方から熱を除去する前記ステップと、他方の前記容器(3B)に熱を伝達する前記ステップとは、同じ循環回路(7)内で作動流体を循環し熱交換させることで実行される、
請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記2つの容器(3A、3B)のうち一方から熱を除去する前記ステップと、他方の前記容器(3B)に熱を伝達する前記ステップとは、別個の、分離している2つ循環回路(7A、7B)において作動流体を循環し熱交換させることで実行される、
請求項19又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状食品及び半液状食品の熱処理と製造に用いられる装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、アイスクリーム、ホイップクリーム、クリーム、チョコレート、ヨーグルト、グラニタなどの食品に対する熱処理に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この類の装置は、例えば「低温殺菌装置」と呼ばれる装置であり、完全な衛生環境下で、パティセリー、アイスクリーム、グルメ部門など様々な品目の食品に対し、混合、調理、低温殺菌、均質化、冷却、熟成、保管を実行し得る装置を指すが、これに限られる訳ではない。
【0003】
一般的に上記の装置は、熱処理対象の食品を収容する1つの槽と、槽の前方底部に取り付けられている1つ以上の分配器コックと、槽の内部に取り付けられ食品を混合する攪拌器と、を含む。
【0004】
周知の方法によれば、熱処理は、一般的に、電気抵抗器及び/又は熱力学サイクルに基づく加熱システムを用いて行われる。
【0005】
この種の装置の一部は、それぞれ収容した食品の処理に用いられる2つ以上の槽を装備している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、これらの装置、以降「多槽型」装置と呼ばれる装置において、熱処理(加熱/冷却)手段は、その運用多様性に制限がある。
【0007】
先行技術の熱処理手段は運用多様性が制限されているため、まず、同じ装置から得られる食品の種類が制限されてしまう。さらには、大きく異なる食品を同時に製造すること、特には一方の槽で低温食品を他方の槽で高温食品を取り扱うことが出来ない(例:アイスクリームとチョコレート)。
【0008】
したがって、上述した種類の装置は、一般的に低温食品を製造するものと、高温食品を製造するものの2つに分けられる。
【0009】
本発明は、上述した問題を克服することを目的とする。
【0010】
より具体的には、本発明の目的の1つは、先行技術より遥かに多様な食品を製造可能な、液状食品及び半液状食品に熱処理を行う装置を提供することにある。
【0011】
本発明の更なる目的は、大きく異なる種類の食品を同時に製造可能な、特には、「多槽型」装置の場合に、一方の槽で低温食品を、他方の槽で高温食品を取り扱える液状食品及び半液状食品の熱処理を行う装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、これらの目的は、添付の1つ以上の請求項に記載された技術的特徴を有する、液状食品及び半液状食品の熱処理に用いられる装置により成し遂げることができる。
【0013】
より具体的には、前記の目的は、
熱処理対象の2種の食品(一方は加熱されるべき、つまり製造時に加熱されるべき「熱いもの」、他方は冷却されるべき、つまり熱を奪われるべき「冷たいもの」)のそれぞれを収容する少なくとも2つの容器と、
容器に収容されている食品を分配する少なくとも1つの分配器と、
容器に収容されている食品に対して作用可能に機能する熱処理手段と、を備える液状食品及び半液状食品の熱処理に用いられる装置を以って成し遂げることができる。
【0014】
熱処理手段は、作動流体を循環させる少なくとも1つの回路と、熱力学サイクルに従って作動する少なくとも2つの第1熱交換器とを有し、2つの第1熱交換器のそれぞれは、各容器と関連付けられる。熱処理手段は、熱交換器のうち一方が容器のうち少なくとも一つの内容物を加熱して第1食品を製造し、熱交換器の他方が他方の容器の内容物を冷却して第2食品を製造する。
【0015】
本発明によれば、当該装置では、共に続いて用いられて、あるいは、それぞれ別に用いられて、高温食品と低温食品とを製造可能である。
【0016】
熱交換器は、同じ流体循環回路に用いられてもよいし、異なる循環回路に用いられてもよい。
【0017】
さらに、熱交換器は、同時或いは交互に作動するように構成されてもよい。
【0018】
上述の目的に関する本発明の技術的特徴は、添付の特許請求の範囲に明確に記載されており、その利点に関しては、添付の図面を参照して、本発明の好ましい(但しこれに限定されない)実施形態を例示として説明する下記の詳細の説明により明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る装置の第1実施形態を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る装置の第2実施形態を示す概略図である。
【
図3】本発明に係る装置の第3実施形態を示す概略図である。
【
図4】本発明に係る装置の第4実施形態を示す概略図である。
【
図5】本発明に係る装置の第5実施形態を示す概略図である。
【
図6】本発明に係る装置の第6実施形態を示す概略図である。
【
図7】
図1に示された装置の変形例を示す図である。
【
図8】
図1〜
図7の図面に図示された装置の更なる変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照すると、符号1は全体を通して液状食品及び半液状食品の熱処理に用いられる装置を示す。
【0021】
好ましくは、装置1により処理される食品は、アイスクリーム、ホイップクリーム、クリーム、チョコレート、ヨーグルト、或いはこれらと類似する食品である。
【0022】
より具体的には、装置1は「高温」食品(例えばチョコレート)と「低温」食品(例えばアイスクリーム)とを同時に処理することができる。
【0023】
装置1はフレーム2を備え、フレーム2には、熱処理対象の食品をそれぞれ収容する2つ以上の容器(3A、3B)が取り付けられている。本明細書及び添付の図面では2つの容器3について言及しているが、本発明の精神から逸脱することなく、装置1は2つより多い槽3を備えることができる。
【0024】
各容器(3A、3B)は、槽であってもよく、あるいは、(外側に対し密封可能な)処理シリンダであってもよい。
【0025】
図1〜6は、槽を備える装置1を示す。一方、
図7に図示した装置1は、(他の方式で食品を充填できる)処理シリンダを装備している。
【0026】
したがって、本発明によれば、2つの容器(3A、3B)のそれぞれは、槽であっても、処理シリンダであってもよい。
【0027】
本明細書では、主に槽3を備える装置1に関して記載する。しかしながら、記載は、槽の代わりに処理シリンダを有する装置1に対しても適用可能である。
【0028】
各槽3は、ここでは詳細に説明しない既知の方式で前方壁の底部に取り付けられ、槽3内に収容された食品の分配に用いられる1つ以上のタップ4(より一般的に言えば、分配器4)を備えることが好ましい。
【0029】
より一般的に言えば、タップ4は、槽3と関連付けられた分配手段を構成する。
【0030】
各槽3には、ここでは詳細に説明しない既知の方式で1つ以上の動力駆動攪拌器5が内部に取り付けられ、当該攪拌器は、槽3に収容された食品を混合する。
【0031】
攪拌器は、食品を混合するほか、一部の適用では冷却壁を擦るよう構成される。
【0032】
装置1は、少なくとも部分的にフレーム2の内部に収納され、槽3に収容されている食品に対して作用可能に機能する熱処理手段6を更に備える。
【0033】
本発明の一特徴によれば、熱処理手段6は、作動流体(好ましくは冷媒流体)を循環させる1つ以上の回路7と、熱力学サイクルに従って作動する2つ以上の第1熱交換器8とを有する。
【0034】
2つの第1熱交換器8のそれぞれは、槽3のそれぞれ1つと関連付けられている。
【0035】
より具体的には、第1熱交換器8は、各槽3の側壁に巻回されているコイルを有し、槽3の自身の側壁を介して食品と熱交換する。
【0036】
熱処理手段6は、第1熱交換器8の一方によって処理対象の2種の食品のうち一方から熱が除去され、(同時に)第1熱交換器8の他方によって処理対象の2種の食品のうち他方に熱が伝達される、少なくとも1つの作動モードを有する。
【0037】
処理対象の食品の一方から排除される熱は、処理対象の食品の他方に伝達される熱である必要はない(この点について、
図3〜5は、処理対象の食品の一方から排除されえた熱が、処理対象の食品の他方に伝達されない実施形態を図示している)。
【0038】
言い換えれば、装置1は、2つの槽3に収容されている大きく相違する2つの食品、特には一方の槽3の低温食品と他方の槽3の高温食品とに関し、同時に、作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0039】
各図面に別途に図示されている様々な実施形態において、熱処理手段6は追加の作動モード、特に、第1熱交換器8の両方によって同時に熱が除去されるか、もしくは、第1熱交換器8の両方によって同時に熱を放出する作動モードを有してもよい。さらに、各熱交換器8は、各槽3から熱を除去又は各槽3に熱を伝達するよう、選択的にオン/オフされてもよい。
【0040】
図1に図示されている実施形態では、単一の作動流体循環回路7が設けられており、この中に、2つの槽3A及び3Bとそれぞれ関連付けられている2つの第1熱交換器(8A、8B:8)が、直列に連結されている。
【0041】
回路7は、コンプレッサ11と、絞り弁12と、を含み、既知の方式で熱力学サイクルを得る。
【0042】
より具体的には、コンプレッサ11の下流側に位置する、つまりコンプレッサ11の放出端に連結されている第1熱交換器8Aは、循環回路7で循環している流体を冷却する(凝縮する)ことで、槽3A(
図1では左側にある槽3A)に収容されている食品を加熱する。
【0043】
コンプレッサ11の上流側に位置する、つまりコンプレッサ11の戻り端に連結されている第1熱交換器8Bは、循環回路7で循環している作動流体を加熱する(蒸発させる)ことで、槽3B(
図1では右側にある槽3)に収容されている食品を冷却する。
【0044】
言い換えれば、装置1は、一方の槽3Bにおける低温食品と他方の槽3Aにおける高温食品に関し、同時に作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0045】
したがって、ここに図示されている実施形態において、装置1は、作動流体を循環させる単一の回路7と、各槽と関連付けられ、作動流体を循環させる回路7の凝縮器及び蒸発器として機能する第1熱交換器(8A、8B)とを備える。
【0046】
図2に図示されている実施形態は、
図1に図示されているものの変形例である。
【0047】
ここでは、回路7は、2つの第1熱交換器8A、8Bの間に配置されている切替弁13と、切替弁13とコンプレッサ11との間に配置されているバイパス分岐路14とを更に備える。
【0048】
バイパス分岐路14は、作動流体をコンプレッサ11と第1交換器8Aの間で循環させるように構成されている。
【0049】
より具体的には、切替弁13は、コンプレッサ11の放出端と連結されている第1熱交換器8の下流側に位置し、絞り弁12の上流側に位置する。
【0050】
切替弁13は、循環回路7の構成を変更するよう、オペレータにより制御可能である。
【0051】
動作として、バイパス分岐路14が閉じられ、2つの第1熱交換器8の間の連結が開かれる第1位置に切替弁13が位置する場合、装置1は
図1に記載されている方式で稼働する。
【0052】
一方、バイパス分岐路14が開かれ、2つの第1熱交換器8の間の連結が閉じられる第2位置へ切替弁13が切り替えられた場合、絞り弁12と、絞り弁12の下流側に位置する第1熱交換器8Bとは、流体の循環から遮断され、コンプレッサ11の放出端と連結されている第1熱交換器8Aには作動流体が流れて槽3Aに熱を伝達し、槽3Aが収容している食品を加熱する。
【0053】
この場合、回路7を循環する流体は、稼働そのものにより熱(コンプレッサ11の部品間の摩擦によって生じる熱、及び、コンプレッサ11そのものの電動機においてジュール効果により生じる熱)が生じるコンプレッサ11において加熱され、流体が通過する第1熱交換器8Aと関連付けられている槽3Aに収容されている食品に熱を伝達する。
【0054】
したがって、この場合、装置1は、槽3の一方における低温食品と槽3の他方における高温食品とに関し、同時に作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができ、上述した切り替えにより得られる他の構成によって、他方の槽3Bが未稼働状態であリながら、同時に、一方の槽3Aにおける高温食品に関し、作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0055】
図3、
図4、
図5に図示されている実施形態において、装置1は、作動流体を循環させる2つの回路7(それぞれ7A及び7Bの符号が割り当てられる)を有し、当該2つの回路は、互いに別個で独立しており、それぞれに第1熱交換器8が組み込まれている。
【0056】
好ましくは、2つの流体循環回路(7A、7B)は同じ構成を有している。つまり、2つの流体循環回路は、構造上同一であるが、後述の異なる実施形態によって、相違する作動モードで、稼働する、もしくは稼働することができる。
図3に図示されている実施形態において、各作動流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ11、第1熱交換器8、第2熱交換器15、及び絞り弁12を有し、熱力学サイクルに従って作動する。
【0057】
第1熱交換器8は、各槽3と関連付けられている。より具体的には、第1熱交換器8は、各槽3の側壁に巻回されているコイルを有し、槽3に収容された食品と熱を交換する。
【0058】
2つの流体循環回路7のうち一方(
図3の左側に図示されている回路7A)において、第1熱交換器8Aは凝縮器として機能し、第2熱交換器15は蒸発器として機能する。一方、他方の流体循環回路7B(
図3の右側に図示されているもの)において、第1熱交換器8Bは蒸発器として機能し、第2熱交換器15は凝縮器として機能する。
【0059】
言い換えれば、この構成では、装置1は、一方の槽3Bにおける低温食品と他方の槽3Aにおける高温食品に関し、同時に、作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0060】
図3に図示されている実施形態によれば、作動流体循環回路7Bは冷却サイクルを実施し、同時に回路7Aは「ヒートポンプ」として機能する。
【0061】
図4の実施形態において、互いに別個で、独立している2つの作動流体循環回路(7A、7B)が設けられている。
【0062】
作動流体循環回路(7A、7B)はそれぞれ、2つの槽(3A、3B)のうち一方と関連付けられている。
【0063】
好ましくは、2つの作動流体循環回路(7A、7B)は同一である。
【0064】
各作動流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ11、第1熱交換器8、第2熱交換器15、及び絞り弁12を有し、熱力学サイクルに従って作動する。より詳細には、第2熱交換器15はコンプレッサ11の放出端に通じており、絞り弁12を介して第1熱交換器8に連結されている。
【0065】
第1熱交換器8は、各槽3と関連付けられている。
【0066】
より具体的には、第1熱交換器8は、各槽3の側壁に巻回されているコイルを有し、槽3に収容された食品と熱を交換する。
【0067】
各作動流体循環回路7は、コンプレッサ11の放出端の下流側に位置する切替弁16を更に備える。切替弁16の出口は、第1切り替え位置にて第2熱交換器15と、第2切り替え位置にて絞り弁12と第1熱交換器8との間に配置されているノード17と、両方に連結されている。
【0068】
切替弁16とノード17との間の連結は、バイパス分岐路18によりなされている。
【0069】
切替弁16は、循環回路(7A、7B)の構成を変更するよう、オペレータにより制御可能である。
【0070】
動作として、バイパス分岐路18が閉じられ、コンプレッサ11と第2熱交換器15の間の連結が開かれる第1位置に切替弁16が位置する場合、単一の流体循環回路7の作動モードは、第1熱交換器8が蒸発器として機能し、第2熱交換器15が凝縮器として機能するものとなる。従って、槽3内の食品は冷却される。つまり、槽3において処理を受ける食品は「低温」食品である。
【0071】
一方、バイパス分岐路18が開かれ、コンプレッサ11と第2熱交換器15の間の連結が閉じられる第2位置に切替弁16が位置する場合、単一の流体循環回路7の作動モードは、絞り弁12と第2熱交換器15とは流体の循環から遮断され、一方で、第1熱交換器8には流体が流れて槽3に熱を伝達し、槽3が収容している食品を加熱する。
【0072】
この場合、回路7を循環する流体は、稼働そのものにより熱(コンプレッサ11の部品間の摩擦によって生じる熱、及び、コンプレッサ11そのものの電動機においてジュール効果により生じる熱)が生じるコンプレッサ11において加熱され、流体が通過する第1熱交換器8と関連付けられている槽3に収容されている食品に熱を伝達する。
【0073】
つまり、槽3において処理を受ける食品は「高温」食品である。
【0074】
したがって、この場合、2つの槽と熱処理手段6の構成により、装置1は、槽3の一方における低温又は高温食品と、槽3の他方における低温又は高温食品に関し、同時に、又は、互いに独立に、作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0075】
図5に図示されている実施形態において、各流体循環回路(7A、7B)は、コンプレッサ11、第1熱交換器8、第2熱交換器15、及び絞り弁12を有し、熱力学サイクルに従って作動する。
【0076】
より詳細には、第2熱交換器15は、絞り弁12を介して第1熱交換器8に連結されている。
【0077】
第1熱交換器8は、各槽3と関連付けられている。
【0078】
より具体的には、第1熱交換器8は、各槽3の側壁に巻回されているコイルを有し、槽3に収容された食品と熱を交換する。
【0079】
作動流体循環回路(7A、7B)のそれぞれは、第1熱交換器8が蒸発器として、第2熱交換器15が凝縮器として機能する第1構成と、第1熱交換器8が凝縮器として、第2熱交換器15が蒸発器として機能する第2構成との間で、熱力学サイクルを逆転させる弁19を更に備える。
【0080】
言い換えれば、作動流体循環回路(7A、7B)はそれぞれ、他方の流体循環回路(7A、7B)とは別途に、冷却モード又はヒートポンプモードで稼働するよう、オペレータにより制御可能である。
【0081】
サイクル逆転弁19は、既知のものであるため詳細な説明は省略する。サイクル逆転弁19は、オペレータにより制御可能である。
【0082】
この場合においても、装置1は、槽3の一方における低温食品と槽3の他方における高温食品に関し、同時に、又は、互いに独立に、作業及び/又は処理及び/又は製造を行うことができる。
【0083】
図6は、単一のコンプレッサ11を備える装置1の実施形態を図示する。
【0084】
当該実施形態では、槽3A内の食品は冷却され、槽3B内の食品は加熱される。
【0085】
図8に概略的に図示されている通り、装置1は槽3A内の食品を冷却し、槽3B内の食品を加熱することができる。
【0086】
したがって、作動流体は選択的に(択一的に)、冷却熱サイクルに従って作動する熱交換器8Aを通って流れ、若しくは、ホットガス熱サイクルに従って作動する熱交換器8Bを通って流れる。
【0087】
より具体的には、
図6において、符号20は熱交換器(熱放出用)を、符号21は減圧弁を示し、これらは、作動流体が熱交換器8Aを通って流れる時に用いられる。したがって、装置1は、流体循環回路7で稼働し、ユーザーが上述の経路、つまり熱交換器8A又は熱交換器8Bを通る経路の一方に流体の経路を切り替え可能な切替手段(図示せず。好ましくは、1つ以上の切替弁の形態である。)を備える。
【0088】
この実施形態によれば、流体循環回路7は、熱交換器8Aを通る一方と熱交換器8Bを通るもう一方の、2つの流体循環経路を有するように構成されている。
【0089】
これらの経路は、コンプレッサ11を有する流体循環回路7の一部を共有する。
【0090】
効果として、装置1は、単一のコンプレッサ11によって2つの槽(3A、3B)において食品を加熱/冷却するため、装置1の設置性、コスト、及び、構造の単純性という面において明白な利点を有する。
【0091】
図8は、
図1の装置の更なる変形実施形態の正面図である。
【0092】
この装置1は、第1食品を処理する第1シリンダ3Aと、第2食品を処理する第2シリンダ3Bとを備える。
【0093】
この点において、装置1は、第1シリンダ3Aと連結され、第1シリンダから第1食品を分配できる第1分配器21Aと、第2シリンダ3Bから第2食品を分配できる第2分配器21Bと、両方のシリンダ3A及び3Bからの食品を分配し混合できる第3分配器21Cとを備えることが好ましい。
【0094】
図8に図示されている例において、第1シリンダ3A及び第2シリンダ3Bとそれぞれ連結されている、2つの槽V1及びV2が設けられている。
【0095】
槽V1及びV2は各シリンダ(3A、3B)に供給を行う槽を有し、食品に対して第1熱処理を行えるようにする。
【0096】
この点において、
図8の装置1は、槽V1及び第1シリンダ3A内の食品に熱処理を施す熱処理プラント7Aと、槽V2及び第2シリンダ3B内の食品に熱処理を施す第2熱処理プラント7Bとを備える。
【0097】
この点において、上述した2つの熱処理プラント(7A;7B)のそれぞれに関し、熱処理プラント(7A;7B)は、シリンダ(3A;3B)を冷却し、或いは、槽(V1、V2)を加熱する。
【0098】
より具体的には、熱処理プラント(7A;7B)は、シリンダ(3A;3B)に熱処理を行う第1モード/構成と、槽(V1;V2)に熱処理を行う第2モード/構成とで稼働するように構成されている。
【0099】
第2モード/構成において、熱処理プラント(7A;7B)は、いわゆるホットガス熱サイクルを実行する。
【0100】
当該実施形態に係る装置1は、効果として、2つの相違する食品を処理/製造し、これらの混合物を分配することができる。
図8からも分かるように、装置1は、各シリンダ(3A、3B)とそれぞれ関連付けられている熱交換器(第1及び第2シリンダ(3A、3B)と関連付けられた、符号8A及び8Bが付されたもの)と、各槽(V1、V2)とそれぞれ関連付けられている熱交換器(第1及び第2槽(V1、V2)と関連付けられた、符号8A’及び8B’が付されたもの)と、を備える。
【0101】
これらの熱交換器(8A及び8B、8A’及び8B’)は、それぞれ、第1及び第2の熱処理回路(7A、7B)と関連付けられている。
【0102】
図8の実施形態において、装置1は、第1熱処理プラント7Aと関連付けられている第1コンプレッサ11と、第2熱処理プラント7Bと関連付けられている第2コンプレッサ11と、を備える。
【0103】
図8に図示されている実施形態において、作動流体循環回路(7A、7B)のそれぞれは、槽(V1、V2)、或いは、シリンダ(3A、3B)において食品に対して熱処理が行われるよう、槽(V1、V2)、或いは、シリンダ(3A、3B)において循環を選択的に行わせる切替手段22を備える。
【0104】
他の様態によれば、作動流体循環回路7は、作動流体の移動方向の逆転(選択)が可能で、流体が第1方向に移動した場合に容器(3A、3B)のうち一方が加熱され、流体が第1方向と逆の第2方向に移動した場合に容器(3A、3B)のうち一方が冷却されるように構成されている。
【0105】
本発明によれば、液状食品及び半液状食品の熱処理に用いられる方法を更に特徴とする。
当該方法は、
熱処理の対象となる基本物をそれぞれ収容する少なくとも2つの槽(3A、3B)を用意するステップと、
各槽(3A、3B)内に置かれた物を攪拌してそれらを混合するステップ(任意の(オプションの)ステップ)と、
2つの槽(3A、3B)のうち一方(3A)から熱を除去し、同時に他方の槽(3B)に熱を伝達することによって、2つの槽(3A、3B)内部に置かれている食品に熱処理を行うステップと、
を含む。
【0106】
第1実施形態によれば、2つの槽(3A、3B)のうち一方から熱を除去するステップと、同時に他方の槽(3B)に熱を伝達するステップとが、同じ循環回路7を循環する作動流体により熱交換して成し遂げることができる(
図1及び
図2)。
【0107】
第2実施形態によれば、2つの槽(3A、3B)のうち一方から熱を除去するステップと、同時に他方の槽(3B)に熱を伝達するステップとは、別個の、互いに分離している2つの作動流体循環回路(7A、7B)を循環する作動流体により熱交換して成し遂げることができる(
図3〜
図5)。
【0108】
上述の本発明は、産業上の応用が可能である。本発明は、発明の思想の範囲を逸脱しない限り、様々な方法で変更又は改作することができる。さらに、本発明の全ての構成要素は、技術的に等価の要素で代替することができる。