(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スワラは、空気を旋回させてボイラ火炉の燃焼空間に供給し、この燃焼空間に、燃料ノズルから噴射される燃料流れを中心とした空気の旋回流を形成する。空気の旋回流は、燃焼バーナから遠ざかるにつれて遠心力により急拡大する。そのため、旋回流には中心部に向けて圧力が低下する逆圧力勾配が生じる。この逆圧力勾配によって、旋回流が燃焼バーナからある距離離れた時点で旋回流の中心部に向かう流れを形成する。これにより燃ガスを循環させ、その高温により未燃の混合気を着火し、火炎を保持する。
【0007】
ところで、近年、化石燃料の枯渇化の観点から、石油残渣物であるSDAピッチやVR燃料(Vacuum Residue)などの難燃焼成分を含む燃料を有効利用することが求められている。この燃料は、コストが安価であるという利点がある。
【0008】
しかし、難燃焼成分を含む燃料を上述したような燃焼バーナで用いる場合、当該燃料がスワラによる逆圧力勾配によって旋回流の中心部に向かう流れがスワラや燃料ノズルにまで至り、スワラや燃料ノズルに付着することでスワラや燃料ノズルの寿命を著しく低下させる要因となる。具体的に、スワラや燃料ノズルに付着した燃料中の揮発分が火炎の輻射熱によって揮発し、高残留炭素分がスワラの中央部や燃料ノズルの締付部材に固着して堆積する。そして、スワラや燃料ノズルへの炭素分の堆積量が増加すると、火炎がスワラ側や燃料ノズル側に引き付けられ、炭素分が異常燃焼してスワラや燃料ノズルが溶損するおそれがある。また、スワラや燃料ノズルへの炭素分の堆積量が増加すると、燃料に含まれる硫黄分により堆積した部分が硫化腐食するおそれがある。この結果、スワラや燃料ノズルの寿命を著しく低下させてしまう。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、燃料の付着を抑制してこれによる損傷を防ぐことのできる燃焼バーナおよびボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の燃焼バーナは、燃料を供給する燃料供給路が内周側に形成される内筒と、内筒を囲むように配置されて内筒との間に空気供給側と燃焼空間側とに通じる空気供給路を形成する外筒と、前記空気供給路の空気供給側と燃焼空間側との間で延在し、かつ、前記内筒と前記外筒との間で放射状に複数設けられ、前記内筒の軸方向で傾斜する羽根と、を備え、前記内筒の前記羽根が設けられた外面において、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする。
【0011】
この燃焼バーナによれば、燃焼バーナに形成された傾斜面によって羽根がなす旋回流の中心部であって燃焼バーナ側に向かう流れに対向する対向流が生じ、この対向流により燃焼バーナ側に向かう流れを弱め、燃焼バーナにまで至る事態を抑制する。この結果、流体燃料に含まれる難燃焼成分である高残留炭素分が燃焼バーナに固着して堆積する事態を抑制することができ、炭素分の異常燃焼や硫黄分の硫化腐食による燃焼バーナの損傷を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記傾斜面は、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に3度以上60度以下の範囲で傾斜することを特徴とする。
【0013】
傾斜面の角度が3度未満であると、圧損が最小となり対向流の効果が得難い。一方、傾斜面の角度が60度を超えると、流れが剥離して対向流が燃料供給路側に向く空気流となり燃料供給路からの燃料の流れに影響を与えるおそれがある。従って、傾斜面の角度を3度以上60度以下の範囲とすることで、対向流により燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記傾斜面による前記内筒の燃焼空間側の端部の厚さ寸法が2mm以上であることを特徴とする。
【0015】
内筒の燃焼空間側の端部の厚さが2mm未満であると、加工時の容易性や、硫黄分の硫化腐食への対策が低下するおそれがある。従って、厚さを2mm以上とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記内筒からなる前記燃料供給路に燃料ノズルが配置され、前記内筒の燃焼空間側の端部で前記燃料ノズルを覆うことを特徴とする。
【0017】
この燃焼バーナによれば、燃料ノズルに対し、火炎による輻射熱の影響を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記傾斜面は、前記羽根と前記内筒の前記空気供給路の面との間に隙間を形成するように設けられていることを特徴とする。
【0019】
この燃焼バーナによれば、流れの縮流や剥離を回避することができる。
【0020】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記傾斜面は、前記羽根の間で空気供給側から燃焼空間側に向けて前記内筒の周方向に広がって設けられていることを特徴とする。
【0021】
この燃焼バーナによれば、傾斜面に沿う気流が周方向に広がって拡散されるため、羽根の燃焼空間側の端部付近において対向流の作用が得られるため、羽根に対する燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0022】
また、本発明の燃焼バーナでは、前記傾斜面は、前記空気供給路側に凸曲状に湾曲しつつ空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に傾斜して形成されることを特徴とする。
【0023】
この燃焼バーナによれば、傾斜面に沿う気流がより中央寄りに向かうため、中央部において対向流の作用が得られるため、中央部である燃料供給路近辺への燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0024】
また、本発明のボイラは、中空形状の火炉内で燃料と空気を燃焼させると共に、前記火炉内で熱交換を行って熱を回収するボイラにおいて、前記火炉の周壁に上述したいずれか1つの燃焼バーナが配置されることを特徴とする。
【0025】
このボイラによれば、燃焼バーナに形成された傾斜面によって羽根がなす旋回流の中心部であって燃焼バーナ側に向かう流れに対向する対向流が生じ、この対向流により燃焼バーナ側に向かう流れを弱め、燃焼バーナにまで至る事態を抑制する。この結果、流体燃料に含まれる難燃焼成分である高残留炭素分が燃焼バーナに固着して堆積する事態を抑制することができ、炭素分の異常燃焼や硫黄分の硫化腐食による燃焼バーナの損傷を防ぐことができる。このため、ボイラにおいて火炎を維持して長期に亘り安定した性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、燃料の付着を抑制してこれによる損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0029】
図1は、本実施形態に係るボイラの概略側面図である。
【0030】
本実施形態の油焚きボイラは、石油残渣物であるSDAピッチやVR燃料(Vacuum Residue)などの難燃焼成分を含む流体燃料を用い、流体燃料を燃焼バーナにより噴霧媒体としての蒸気(または、高圧空気、高圧ガス、可燃性ガスなど)により微粒化させて噴霧し、火炉内で燃焼させ、この燃焼により発生した熱を回収することが可能な油焚きボイラである。
【0031】
本実施形態において、
図1に示すように、油焚きボイラ10は、コンベンショナルボイラであって、火炉11と燃焼装置12とを有している。火炉11は、四角筒の中空形状で鉛直方向に沿って設置されている。火炉11は、中空形状を構成する周壁の下部に燃焼装置12が設けられている。
【0032】
燃焼装置12は、火炉11の周壁に装着された複数の燃焼バーナ21を有している。本実施形態にて、燃焼バーナ21は、火炉11の周方向に沿って、例えば、4個が均等間隔で配設されたものを1セットとし、鉛直方向に沿って、例えば、3セット、つまり、3段配置されている。なお、燃焼バーナ21の配置場所や個数はこれに限定されるものではない。
【0033】
燃焼バーナ21は、燃料供給配管22を介して燃料供給源23に連結されている。燃料供給配管22は、燃料供給量を調整可能な流量調整弁24が設けられている。また、燃焼バーナ21は、蒸気供給配管25を介して蒸気供給源26に連結されている。蒸気供給配管25は、蒸気供給量を調整可能な流量調整弁27が設けられている。また、燃焼バーナ21の装着位置である火炉11の周壁に風箱28が設けられている。風箱28は、空気ダクト29の一端部が連結されている。空気ダクト29は、他端部に送風機30が装着されている。そして、各燃焼バーナ21は、風箱28に通じている。
【0034】
従って、各燃焼バーナ21は、燃料供給源23から燃料供給配管22を通して燃料が供給されると共に、蒸気供給源26から蒸気供給配管25を通して蒸気が供給される。また、各燃焼バーナ21は、空気ダクト29から排ガスと熱交換して加熱された燃焼用空気が風箱28に供給される。そのため、燃焼バーナ21は燃料と蒸気を混合して微粒化した後、混合流体として火炉11内に噴射すると共に、燃焼用空気を火炉11内に噴射し、火炉11内で火炎を形成することができる。
【0035】
火炉11は、上部に煙道31が連結されている。煙道31は、対流伝熱部(熱回収部)として排ガスの熱を回収するための過熱器(スーパーヒータ)32,33、再熱器34,35、節炭器(エコノマイザ)36,37,38が設けられている。従って、煙道31では、火炉11での燃焼で発生した排ガスと水との間で熱交換が行われる。
【0036】
煙道31は、その下流側に熱交換を行った排ガスが排出される排ガス管39が連結されている。排ガス管39は、図示しないが、脱硝装置、電気集塵機、誘引送風機、脱硫装置が設けられ、下流端部に煙突が設けられている。
【0037】
従って、各燃焼バーナ21が燃料と蒸気との混合流体を火炉11内に噴射すると、火炉11では、混合流体と空気とが燃焼して火炎が生じ、この火炉11内の下部で火炎が生じると、燃焼ガス(排ガス)がこの火炉11内を上昇し、煙道31に排出される。
【0038】
このとき、図には明示しないが、給水ポンプから供給された水は、節炭器36,37,38によって予熱された後、蒸気ドラムに供給され、火炉11の周壁の各水管に供給される間に加熱されて飽和蒸気となり、蒸気ドラムに送り込まれる。さらに、蒸気ドラムの飽和蒸気は、過熱器32,33に導入されて燃焼ガスによって過熱される。過熱器32,33で生成された過熱蒸気は、発電プラント(例えば、タービンなど)に供給される。また、タービンでの膨張過程の途中で取り出した蒸気は、再熱器34,35に導入され、再度過熱されてタービンに戻される。なお、火炉11をドラム型(蒸気ドラム)として説明したが、この構造に限定されるものではない。その後、煙道31の節炭器36,37,38を通過した排ガスは、排ガス管39にて、脱硝装置にて、触媒によりNOxなどの有害物質が除去され、電気集塵機で粒子状物質が除去され、脱硫装置により硫黄分が除去された後、煙突から大気中に排出される。
【0039】
図2は、本実施形態に係る燃焼バーナの概略縦断面図である。
図3は、本実施形態に係る燃焼バーナの概略正面図である。
図4は、本実施形態に係る燃焼バーナのスワラ部分の縦断面図である。
図5は、本実施形態に係る燃焼バーナのスワラ部分の拡大斜視図である。
【0040】
燃焼バーナ21は、
図2および
図3に示すように、円筒状に形成され、その中央側に燃料供給路1が設けられ、燃料供給路1の外周側に空気供給路2が設けられている。
【0041】
燃料供給路1は、燃焼バーナ21の中央に配置された円筒状の内筒3の内周側に形成されている。そして、燃料供給路1を構成する内筒3の内周側に、燃料ノズル80が配置されている。
【0042】
燃料ノズル80は、
図4に示すように、ノズル基台81と、バックプレート82と、バーナチップ83と、締付部材84とを有している。
【0043】
ノズル基台81は、円柱状に形成され、その内部に、内管81Aと外管81Bとからなる同軸の二重管が設けられている。内管81Aは、蒸気供給配管25に接続され、内管81Aと外管81Bとの間の環状空間は、燃料供給配管22に接続されている。ノズル基台81は、内管81Aに通じる蒸気通路孔81Cが中央に設けられている。また、ノズル基台81は、内管81Aと外管81Bとの間の環状空間に通じる燃料通路孔81Dが周方向に複数設けられている。また、ノズル基台81は、締付部材84と締結する雄ネジ溝81Eが周囲に設けられている。バックプレート82は、円盤状に形成され、ノズル基台81とバーナチップ83とを中継するもので、ノズル基台81の蒸気通路孔81Cおよび各燃料通路孔81Dに対応して通じる蒸気通路孔82Cおよび各燃料通路孔82Dが貫通して設けられている。バーナチップ83は、燃料ノズル80の最も先端に配置され、燃焼空間側が火炉11内に望む。バーナチップ83は、円柱状に形成され、その中央に、バックプレート82の蒸気通路孔82Cに通じる空洞部83Cが設けられ、当該空洞部83Cから先端側に貫通し、かつ放射方向に複数設けられた噴射孔83Eが形成されている。また、バーナチップ83は、空洞部83Cの外周側に、バックプレート82の各燃料通路孔82Dに通じ、かつ各噴射孔83Eに通じる各燃料通路孔83Dが形成されている。締付部材84は、円筒状に形成され、バーナチップ83の外周の凸部83Fに掛かる鍔部84Fが一端縁に設けられ、ノズル基台81の雄ネジ溝81Eに締結される雌ネジ溝84Eが他端内面に設けられている。
【0044】
従って、燃料ノズル80は、ノズル基台81とバーナチップ83との間にバックプレート82を挟むように組み合わせ、締付部材84でバーナチップ83、バックプレート82およびノズル基台81の周囲を囲むようにし、締付部材84の鍔部84Fをバーナチップ83の凸部83Fに掛けつつ、締付部材84の雌ネジ溝84Eをノズル基台81の雄ネジ溝81Eに締結させることで、締付部材84の鍔部84Fによるバーナチップ83の凸部83Fへの面圧により流体の漏れを防いだ形態で組み立てられる。
【0045】
このような燃料ノズル80は、蒸気供給配管25から供給される蒸気は、ノズル基台81の内管81Aから、蒸気通路孔81C、蒸気通路孔82C、空洞部83Cを経て各噴射孔83Eに至る。一方、燃料供給配管22から供給される流体燃料は、ノズル基台81の内管81Aと外管81Bとの間の環状空間から、各燃料通路孔81D、各燃料通路孔82D、各燃料通路孔83Dを経て各噴射孔83Eにて蒸気と互いに混合して混合気(燃料)となり、各噴射孔83Eから噴射される。
【0046】
空気供給路2は、一次空気ノズル2Aと、二次空気ノズル2Bとを有する。一次空気ノズル2Aは、燃料供給路1を構成する内筒3の外周側に、円筒状の一次空気ノズル外筒4が設けられ、この内筒3と一次空気ノズル外筒4との間に形成されている。二次空気ノズル2Bは、一次空気ノズル外筒4の外周に重ねられた円筒状の二次空気ノズル内筒5と、二次空気ノズル内筒5の外周側に設けられた二次空気ノズル外筒6との間に形成されている。これら、一次空気ノズル2Aおよび二次空気ノズル2Bは、空気供給側が風箱28に通じ、燃焼空間側が火炉11内に通じている。従って、一次空気ノズル2Aおよび二次空気ノズル2Bは、送風機30により送られて空気ダクト29から排ガスと熱交換して加熱されて風箱28に供給された燃焼用空気を、火炉11内に噴射する。なお、一次空気ノズル外筒4および二次空気ノズル内筒5は、一体とした1つの円筒として形成されていてもよい。
【0047】
一次空気ノズル2Aは、
図2〜
図5に示すように、スワラ7が設けられている。スワラ7は、内筒3を含み構成され、内筒3と一次空気ノズル外筒4との間に設けられた外筒7Aを有する。また、スワラ7は、内筒3と外筒7Aとの間に掛け渡されて設けられた羽根7Bを有する。羽根7Bは、一次空気ノズル2A側の空気供給路2の空気供給側と燃焼空間側との間で延在し、かつ、内筒3と外筒7Aとの間で放射状に複数設けられている。また、羽根7Bは、内筒3の軸方向(空気供給側から燃焼空間側に向く方向)で傾斜して設けられている。これにより、羽根7Bは、一次空気ノズル2A側の空気供給路を通過する空気に旋回をかける。また、スワラ7は、
図4および
図5に示すように、内筒3について、一次空気ノズル2A側の空気供給路2側であって羽根7Bが設けられた外面において、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に傾斜する傾斜面7Cを有する。なお、
図5に示す一点鎖線は、内筒3の外面に傾斜面7Cが設けられていない場合の、内筒3における燃焼空間側の外面縁の稜線、および、内筒3の外面と羽根7Bとの境界線をあらわしている。
【0048】
なお、
図4および
図5に示す形態は、内筒3の外面の全周に傾斜面7Cを設けて羽根7Bの内筒3側の端部を傾斜面7Cに合わせて内筒3側に延長させた構成、または、羽根7Bの端部の構成を変えずに、内筒3の外面の羽根7Bを除く部分に傾斜面7Cを形成した構成である。また、
図4および
図5に示す形態では、傾斜面7Cは、直線状の傾斜である。
【0049】
このように構成された燃焼バーナ21は、燃料供給路1に配置された燃料ノズル80により、上述したように蒸気と燃料流体とが混合した混合気(燃料)が噴射され、かつ空気供給路2に形成された各空気ノズル2A,2Bから空気が噴射されることで、燃焼空間側である火炉11内に火炎を形成する。また、燃焼バーナ21は、一次空気ノズル2Aに配置されたスワラ7により、通過する空気に旋回をかける。即ち、スワラ7は、火炉11内である燃焼空間に、燃料ノズル80から噴射される燃料流れを中心とした空気の旋回流(
図5に矢印Aで示す)を形成する。空気の旋回流は、燃焼バーナ21から遠ざかるにつれて遠心力により急拡大する(
図2に矢印Bで示す)。そのため、旋回流には中心部に向けて圧力が低下する逆圧力勾配が生じる。この逆圧力勾配によって、旋回流が燃焼バーナ21からある距離離れた時点で旋回流の中心部であって燃焼バーナ21側に向かう流れを形成する。これにより燃ガスを循環させ、その高温により未燃の混合気を着火し、火炎を保持する。
【0050】
また、本実施形態の燃焼バーナ21は、スワラ7を構成する内筒3の外面に、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に傾斜する傾斜面7Cを有する。このため、スワラ7を通過する空気のうち、傾斜面7Cの近傍を通過する空気は、傾斜面7Cに沿って空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に流れる(
図4に矢印Cで示す)。すると、この内方に向く空気の流れは、旋回流の中心部であって燃焼バーナ21側に向かう流れに対して対向流となる。
【0051】
従来では、旋回流の中心部に向かう流れがスワラ7や燃料ノズル80にまで至り、スワラ7や燃料ノズル80に付着することでスワラ7や燃料ノズル80の寿命を著しく低下させる要因となっていた。
【0052】
この点、本実施形態の燃焼バーナ21によれば、傾斜面7Cによって羽根7Bがなす旋回流の中心部であって燃焼バーナ21側に向かう流れに対向する対向流が生じ、この対向流によりであって燃焼バーナ21側に向かう流れを弱め、スワラ7や燃料ノズル80にまで至る事態を抑制する。この結果、流体燃料に含まれる難燃焼成分である高残留炭素分がスワラ7の中央部や燃料ノズル80の締付部材84に固着して堆積する事態を抑制することができ、炭素分の異常燃焼や硫黄分の硫化腐食によるスワラ7や燃料ノズル80の損傷を防ぐことができる。
【0053】
ここで、
図6は、本実施形態に係る燃焼バーナの作用を示す概略縦断面図であり、
図7は、一般の燃焼バーナの作用を示す概略縦断面図である。
【0054】
図6および
図7は、気流に粒子を入れた場合の粒子の流れを模擬したシミュレーションの結果を示している。
図6および
図7における一点鎖線が粒子の流れの外形線に相当する。
図7に示す一般の燃焼バーナでは、旋回流の中心部に向かう流れが強く燃焼バーナ21の近くまで粒子が戻っていることがわかる。一方、
図6に示す本実施形態の場合、スワラ7の傾斜面7Cによる対向流が作用し、旋回流の中心部に向かう流れが弱まり燃焼バーナ21の近くに粒子が戻っていないことがわかる。
【0055】
また、本実施形態の燃焼バーナ21では、傾斜面7Cは、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に3度以上60度以下の範囲の角度θで傾斜することが好ましい。
【0056】
傾斜面7Cの角度θが3度未満であると、傾斜面7Cを有さない一般的な燃焼バーナ21のスワラ7と近似してしまい圧損が最小となり対向流の効果が得難い。一方、傾斜面7Cの角度θが60度を超えると、流れが剥離して燃料ノズル80側に向く空気流となり燃料ノズル80からの混合気の噴射に影響を与えるおそれがある。従って、傾斜面7Cの角度θを3度以上60度以下の範囲とすることで、対向流により燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。なお、物理的に、傾斜面7Cの角度θが5度以上20度以下の範囲とすることが制作上好ましい。また、安定した性能を得るうえで、傾斜面7Cの角度θは10度前後が好ましい。
【0057】
また、実施形態の燃焼バーナ21では、傾斜面7Cによる内筒3の燃焼空間側の端部の厚さTの寸法が2mm以上であることが好ましい。
【0058】
内筒3の燃焼空間側の端部の厚さTが2mm未満であると、加工時の容易性や、硫黄分の硫化腐食への対策が低下するおそれがある。従って、厚さTを2mm以上とすることが好ましい。
【0059】
図8〜
図11は、本実施形態に係る他の例の燃焼バーナのスワラ部分の縦断面図である。
【0060】
図8に示す燃焼バーナ21では、傾斜面7Cを設けた内筒3の燃焼空間側の端部が、燃料ノズル80を覆うように延長して形成されている。
【0061】
この燃焼バーナ21によれば、燃料ノズル80に対し、火炎による輻射熱の影響を抑制することができる。
【0062】
図9に示す燃焼バーナ21では、傾斜面7Cが内筒3の外面の全周に設けられており、羽根7Bの内筒3側の端部との間に隙間7Dが形成されている。即ち、傾斜面7Cは、羽根7Bと内筒3の空気供給路2の面との間に隙間7Dを形成するように設けられている。
【0063】
この燃焼バーナによれば、流れの縮流や剥離を回避することができる。
【0064】
図10に示す燃焼バーナ21では、傾斜面7Cは、羽根7Bの間で空気供給側から燃焼空間側に向けて内筒3の周方向に広がって設けられている。なお、
図10に示す一点鎖線は、内筒3の外面に傾斜面7Cが設けられていない場合の、内筒3における燃焼空間側の外面縁の稜線をあらわしている。
【0065】
この燃焼バーナ21によれば、傾斜面7Cに沿う気流が周方向に広がって拡散されるため(
図10に矢印Dで示す)、羽根7Bの燃焼空間側の端部付近において対向流の作用が得られるため、羽根7Bに対する燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0066】
なお、
図10において、傾斜面7Cの空気供給側である始端が円弧状に形成されているが、角形状であってもよい。ただし、円弧状のほうが空気流を円滑に傾斜面7Cに沿って案内することができる。また、
図10において、傾斜面7Cの周方向に広がる稜線が円弧状に形成されているが、直線状であってもよい。
【0067】
図11に示す燃焼バーナ21では、傾斜面7Cは、空気供給路2側(即ち、内筒3の径方向外側)に凸曲状に湾曲しつつ、空気供給側から燃焼空間側に向けて内方に傾斜して形成されている。
【0068】
この燃焼バーナ21によれば、傾斜面7Cに沿う気流がより中央寄りに向かうため、中央部において対向流の作用が得られるため、中央部である燃料ノズル80への燃料の付着を抑制する効果を顕著に得ることができる。なお、凸曲状に湾曲する傾斜面7Cの場合の角度θは、内筒3の燃焼空間側の端部における接線の角度とする。
【0069】
また、本実施形態の油焚きボイラ10は、中空形状の火炉11内で燃料と空気を燃焼させると共に、火炉11内で熱交換を行って熱を回収するボイラにおいて、火炉11の周壁に上述した燃焼バーナ21が配置されている。
【0070】
この油焚きボイラ10によれば、燃焼バーナ21に形成された傾斜面7Cによって羽根7Bがなす旋回流の中心部であって燃焼バーナ21側に向かう流れに対向する対向流が生じ、この対向流により燃焼バーナ21側に向かう流れを弱め、スワラ7や燃料ノズル80にまで至る事態を抑制する。この結果、流体燃料に含まれる難燃焼成分である高残留炭素分がスワラ7の中央部や燃料ノズル80の締付部材84に固着して堆積する事態を抑制することができ、炭素分の異常燃焼や硫黄分の硫化腐食によるスワラ7や燃料ノズル80の損傷を防ぐことができる。このため、油焚きボイラ10において火炎を維持して長期に亘り安定した性能を得ることができる。