特許第6513430号(P6513430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513430
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】コンベヤベルト及びベルトコンベヤ
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/44 20060101AFI20190425BHJP
   B65G 15/42 20060101ALI20190425BHJP
   B65G 15/08 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   B65G15/44
   B65G15/42 Z
   B65G15/08 A
   B65G15/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-42265(P2015-42265)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-160069(P2016-160069A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 「コンベヤベルト」の納品(平成26年10月31日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】岩田 幸浩
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−138170(JP,A)
【文献】 特開2009−173382(JP,A)
【文献】 特開平10−101205(JP,A)
【文献】 実開昭58−083314(JP,U)
【文献】 実開昭51−135387(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0284185(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04220872(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が搭載される搬送面を備えた帯状のベルト本体と、該ベルト本体の前記搬送面に設けられた横桟とを備え、
前記搬送物の搬送に際し、前記ベルト本体の幅方向の両側縁部が互いに引き寄せられて該ベルト本体が前記搬送面を内側にして樋状又は筒状にされて用いられ、
該横桟がベルト本体の幅方向に沿って立設された板状部を有し、
該板状部は、前記樋状又は前記筒状にされた際にベルト幅方向に生じる圧縮応力によって曲げ変形が生じて座屈した状態となる低弾性部と該低弾性部にくらべて曲げ変形が生じ難い高弾性部とを備え、前記低弾性部と前記高弾性部とを前記ベルト本体の幅方向に交互に備えているコンベヤベルト。
【請求項2】
前記板状部には前記搬送方向前面側又は背面側から凹入されてなる凹入部が備えられ、該凹入部がベルト本体の幅方向に間隔を設けて複数備えられており、
前記幅方向において隣り合う凹入部の間において該凹入部よりも厚みの厚い部位が前記高弾性部で該高弾性部よりも厚みの薄い前記凹入部が前記低弾性部となっている請求項1記載のコンベヤベルト。
【請求項3】
前記板状部には、搬送方向前面側から凹入されてなる前面凹入部と、搬送方向背面側から凹入されてなる背面凹入部とが前記凹入部として備えられており、前面凹入部と背面凹入部とがベルト本体の幅方向に交互に備えられている請求項2記載のコンベヤベルト。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載のコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルト及びベルトコンベヤに関し、より詳しくは帯状のベルト本体と横桟とを備えたコンベヤベルト及びこのようなコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の搬送物を搬送する手段としてベルトコンベヤが広く用いられている。
該ベルトコンベヤは、通常、帯状のベルト本体を有するコンベヤベルトを備え、前記ベルト本体を無端状にさせて周回させ、該ベルト本体上に搭載した搬送物を目的地まで搬送させるべく用いられている。
この種のベルトコンベヤは、搬送物の出発点から目的地までの間に高低差があり、例えば、搬送物の搬送方向に向けて急傾斜な上り勾配を有する場合、ベルト本体上を滑って搬送物が逆戻りしてしまうおそれがある。
そのためこの種の用途においては、従来、ベルト本体の搬送面に横桟を設けて搬送物の後戻りを防いだコンベヤベルトが利用されたりしている。
該横桟は、重力の作用によってベルト本体の長手方向(以下、「ベルト長手方向」ともいう)に沿って搬送物が後戻りしてベルトコンベヤの搬送能力が低下してしまうことを抑制すべく、通常、ベルト本体の幅方向(以下、「ベルト幅方向」ともいう)に沿って配され、搬送面よりも突出した部位をベルト幅方向に沿って形成させる形でベルト本体上に設けられている。
また、搬送経路に勾配が無くコンベヤベルトが傾斜角0度で用いられる場合でも、搬送物が転がって後戻りすることを抑制して搬送量を安定させる目的で横桟を設けたコンベヤベルトが利用されている。
【0003】
ところで、前記ベルト本体は、搬送物の搬送に際して常に平板状の形態で使用されるわけではなく、例えば、搬送物が粉体や粒状物などのように当該ベルト本体の側方から落下し易いようなものである場合には搬送区間においてベルト幅方向両端部を中央部よりも持ち上げた形で使用されたりしており、トラフコンベヤやパイプコンベヤなどと呼ばれるベルトコンベヤにおいては搬送区間において樋状や筒状となって使用されている(下記特許文献1、2参照)。
また、コンベヤベルトは、食品や医薬品などのクリーンな環境で搬送されることが要求されるような物を搬送する場合には、外部より異物が混入することを防止する目的で筒状にして用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101205号公報
【特許文献2】特開2005−330043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような搬送物の移動を促進することが求められている横桟は、搬送面からある程度の高さを有している方がその効果を確実に発揮させる上において有利となる。
ここでベルト幅方向に沿って設けられる前記横桟は、ベルト本体を樋状や筒状に変形させようとした際にその曲げ剛性によって前記変形を阻止させる要因となり得る。
そして、横桟を、例えば、背の高い板状構造としてしまうとベルト本体を前記のように樋状や筒状に変形させることがより一層困難になるおそれがある。
この点について詳しく説明すると、ベルト本体を樋状や筒状に変形させようとした際には、横桟にはベルト本体に沿った形状に曲げようとする力を作用させることになるとともにベルト幅方向に圧縮しようとする力を作用させることになるが、当該横桟を背の高い板状構造としてしまうとこれらに抗する強度をコンベヤベルトに与える結果となってしまい、前記のような変形をベルト本体に生じさせることが困難になるおそれがある。
【0006】
また、例えば、横桟にある程度の柔軟性を持たせベルト本体を樋状や筒状に変形させる際の妨げにならないようにすることも考えられる。
しかしながら、例えば、図9に示したようにベルト本体100xの搬送面に柔軟な板状の横桟120xを設けただけでは、ベルト本体100xを樋状や筒状に変形させようとした際に横桟120xがベルト幅方向中央部において折れ曲がるとともに搬送方向、又は、搬送方向とは逆方向に倒伏してしまうおそれがある。
横桟120xは、このように倒伏してしまうと搬送物の後戻りを防止するという機能が大きく損なわれる。
【0007】
このような問題に対し、例えば、横桟を板状構造とせずに特許文献2に示されているような蛇腹状とすることが考えられる。
この場合、横桟がベルト幅方向において優れた伸縮性を発揮することから横桟の高さなどがベルト本体の変形性に与える影響は少ないと考えられる。
一方で、この蛇腹状の横桟は、ベルト本体の平面視においてベルト幅方向に山と谷とを繰り返す形状となっており、この谷部に搬送物が挟まり易い。
しかも、このような横桟を備えたコンベヤベルトで搬送物の搬送を行うと、谷部に搬送物が挟まった状態でベルト本体が平坦な帯状の状態から樋状や筒状に変形された際に搬送物が横桟に強く当接される結果となって該搬送物が横桟に食い込んでベルト本体の変形が解除された後でも搬送物を谷部から取出し難くなるおそれがある。
そうすると、例えば、搬送物が本来コンベヤベルトから落下しなければならない目的地において横桟に食い込んだ搬送物がそのままの状態になって落下せずに再び出発地点に向けて返送されてしまうおそれがある。
このように従来のベルトコンベヤにおいては、搬送物を目的地に確実に運搬するという点において改良の余地が残された状態になっている。
【0008】
本発明の課題は、上記のような点に鑑み、ベルトコンベヤの搬送性の改善を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、搬送物の挟み込みを抑制すべく横桟に板状構造を備えさせつつも、ベルト幅方向の応力がこの横桟に加わった際に当該横桟に座屈を生じさせ易いようにすることで搬送面からの高さが高い横桟を設けてもコンベヤベルトを樋状や筒状に変形させることが容易になることを見出して本発明を完成させるに到ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、前記課題を解決すべく、搬送物が搭載される搬送面を備えた帯状のベルト本体と、該ベルト本体の前記搬送面に設けられた横桟とを備え、該横桟がベルト本体の幅方向に沿って立設された板状部を有し、該板状部は前記搬送物の搬送方向に向けた曲げ変形における曲げ弾性率の相対的に低い低弾性部と前記曲げ弾性率の相対的に高い高弾性部とを備え、前記低弾性部と前記高弾性部とを前記ベルト本体の幅方向に交互に備えているコンベヤベルトを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記のようなコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンベヤベルトは、横桟がベルト本体の幅方向に沿って立設された板状部を有することから、当該板状部によって搬送物の移動を促進させ得る。
しかも、本発明のコンベヤベルトは、搬送物の移動促進に板状部が利用され得ることから、従来の蛇腹状の横桟を利用して搬送物の移動を促進させる場合に比べて横桟に搬送物が挟まれにくい。
従って、本発明のコンベヤベルトを用いることでベルトコンベヤの搬送性が改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ベルトコンベヤの一態様を示した概略図。
図2】一実施形態のコンベヤベルトの部分的な概略斜視図。
図3図2の一部を拡大した拡大図。
図4】コンベヤベルトを樋状及び筒状に変化させた様子を示した概略斜視図。
図5】横桟を作製するための部材を示した概略平面図及び概略側面図。
図6】横桟の変形例を示した概略正面図及び概略側面図。
図7】横桟の変形例を示した概略正面図及び概略側面図。
図8】横桟の変形例を示した概略正面図及び概略側面図。
図9】従来の横桟について示した概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について(添付図面に基づき)以下に説明する。
本発明のコンベヤベルトは、例えば、搬送経路が水平面に対して−90度(垂直下り)〜+90度(垂直上り)の角度となるような態様において用いられる。
以下においては、搬送物の搬送経路に傾斜角30度以上の区間が設けられている急傾斜ベルトコンベヤにおいて粒状物などの搬送に利用されるコンベヤベルトを例に本発明の実施形態について説明する。
また、以下においては、コンベヤベルトが搬送物の搬送区間において筒状とされる急傾斜ベルトコンベヤ(以下「急傾斜パイプコンベヤ」ともいう)を例に本発明の実施形態について説明する。
【0015】
なお、図1は、本実施形態に係る急傾斜パイプコンベヤの概略構成を示した概略図であり、図2は、該急傾斜パイプコンベヤに無端状の状態で備えられているコンベヤベルトの一部を示した概略斜視図である。
さらに、図3は、図2と同じく概略斜視図で横桟の設けられている部分を拡大して示したものである。
なお、この図1〜3におけるブロック矢印Dが急傾斜パイプコンベヤによって搬送物を搬送する際の搬送方向を示すものでコンベヤベルトの移動方向を示すものである。
以下においては、この移動方向における前方側を単に「前方」と称し、該前方に向いた面について「前面」或いは「前面側」と称する場合がある。
また、以下においては、この移動方向における後方側を単に「後方」と称し、該後方に向いた面について「背面」或いは「背面側」と称する場合がある。
そして、以下においてはベルト長手方向を「縦」或いは「縦方向」と称し、ベルト幅方向を「横」或いは「横方向」と称することがある。
【0016】
本実施形態の急傾斜パイプコンベヤ1は、図に示したように主要構成材として長尺帯状のコンベヤベルト10を備え、該コンベヤベルト10を無端状の状態で備えている。
即ち、急傾斜パイプコンベヤ1は、コンベヤベルト10を周回させることで当該コンベヤベルト10に搭載した搬送物Aを出発点から目的地へと搬送し得るように構成されている。
また、本実施形態の急傾斜パイプコンベヤ1は、搬送物の搬送経路に高い傾斜角(例えば、仰角30度以上90度以下)の区間が設けられている。
【0017】
本実施形態のコンベヤベルト10は、搬送物の搬送区域の出発点となる荷積み地点Sにおいては搬送面11sを上方に向けた平坦な帯状となって水平移動し、その後、上り傾斜となっった後に両側部が中央部に対して持ち上げられて樋状とされ、引き続き両側部が互いに引き寄せられて最終的には筒状にされて急傾斜区間Tを走行し、目的地となる荷下ろし地点Gの手前において再び平坦な帯状に展開されて水平移動するような形で急傾斜パイプコンベヤ1に備えられている。
なお、本実施形態のコンベヤベルト10は、往路終端においてプーリー20に巻き掛けられ折り返し走行となり搬送面11sを下向きにした状態で荷積み地点Sに戻るように急傾斜パイプコンベヤ1に備えられている。
そして、本実施形態の急傾斜パイプコンベヤ1は、このプーリー20によってコンベヤベルト10の走行方向が180度転回される地点において搬送物Aを自然落下させ、該搬送物Aを使用して製品を作製するための設備ZのホッパーZ1に前記搬送物Aを供給し得るように構成されている。
【0018】
前記コンベヤベルト10は、図2に示すように搬送物が搭載される搬送面を備えた帯状のベルト本体11と、該ベルト本体の幅方向に延在するように設けられた横桟12とを備えている。
前記コンベヤベルト10は、前記横桟12を複数備え、ベルト長手方向に略等間隔となるように複数の横桟12を備えている。
【0019】
前記横桟は、ベルト本体の幅方向に沿って立設され、ベルト移動方向に面するように立設された板状部12aと該板状部12aをベルト本体11に固定するための基板部12bとを備えている。
前記横桟は、前記板状部12aがベルト幅方向に横長となった直板状となっており、前記基板部12bがベルト幅方向における長さを板状部12aと共通させた横長な直板状となっている。
なお、前記板状部12aが板面を搬送方向Dに向けてベルト本体の搬送面11sに対して垂直となって配されているのに対して前記基板部12bはその板面を前記搬送面11sに平行させており、該搬送面11sと面接触する形でベルト本体に固定されている。
【0020】
前記板状部12aは、前記基板部12bのベルト長手方向における中央部を通ってベルト本体11を幅方向に横断する形で備えられている。
なお、本実施形態のコンベヤベルト10は、前記板状部12a及び前記基板部12bが、ベルト本体11の全幅にわたって形成されてはおらず、前記板状部12a及び前記基板部12bの形成されていない部分がベルト本体11の両側縁部に設けられている。
このコンベヤベルト10の幅方向両端部においてベルト本体11だけの平板状になっている部分は、当該コンベヤベルト10を筒状に変形させる際に重ね合わせられる部分として備えられているものである。
【0021】
前記板状部12aは、前記搬送物Aの搬送方向Dに向けた曲げ変形において示される曲げ弾性率の相対的に低い低弾性部12sと前記曲げ弾性率の相対的に高い高弾性部12hとを備え、前記低弾性部12sと前記高弾性部12hとを前記ベルト本体の幅方向に交互に備えている。
即ち、前記板状部12aには、搬送方向に向けて凸となるように長手方向途中で屈曲させた際に示される曲げ弾性率が低い部分と高い部分とがベルト本体の幅方向に交互に備えられている。
【0022】
本実施形態のコンベヤベルトは、前記曲げ変形に対して弾性復元させるべく前記板状部12aが弾性体によって形成されている。
そして、本実施形態の前記板状部12aには前記搬送方向前面側から凹入されてなる凹入部(以下「前面凹入部」ともいう)と、前記搬送方向背面側から凹入されてなる凹入部(以下「背面凹入部」ともいう)とが備えられており、前記前面凹入部12a1と前記背面凹入部12a2とがそれぞれ複数備えられている。
また、本実施形態の前記板状部12aは、前面凹入部12a1と背面凹入部12a2とがベルト本体の幅方向に交互に備えられている
本実施形態の前記板状部12aは、ベルト幅方向において隣り合う前面凹入部a1と背面凹入部12a2とが間隔を設けて備えられており、これらの凹入部の間において該凹入部よりも厚肉となった部位が前記高弾性部12hとなっている。
言い換えれば、本実施形態の板状部12aは、この高弾性部12hよりも厚みの薄い前記凹入部12a1,12a2が前記低弾性部となっている。
【0023】
このような横桟12を備えたコンベヤベルト10は、例えば、図3においてブロック矢印Rで示したように、ベルト本体11の両側縁部を互いに引き寄せて前記搬送面が内側となるような樋状としたり、筒状としたりした場合には、ベルト幅方向における圧縮応力Fが前記横桟12に作用する。
ここで本実施形態の横桟12は、曲げ弾性率が相対的に低い低弾性部12sを有することから、この圧縮応力Fに対して前記低弾性部12sに座屈を生じさせて該低弾性部12sを前方や後方に屈曲させた状態とすることができる。
即ち、本実施形態の横桟12は、ベルト本体11を筒状に変形させるのに際して前面凹入部12a1を後方に屈曲させ且つ背面凹入部12a2を前方に屈曲させて蛇腹状へと変形させることができる。
例えば、図4に示したようにベルト本体11を樋状にした場合、横桟12は、その頂部がベルト本体を横断する直線状から波線状へと変化し、さらにベルト本体11を筒状にした場合には前記波線の振幅が大きくなるような形へと変形する。
一方で、本実施形態の横桟12は、ベルト本体11が平坦な場合は直板状であるので、仮に、ベルト本体11が筒状になって当該横桟12が前記の蛇腹状となっている際に搬送物が挟まれたとしてもベルト本体11が平坦な状態に戻された際にそれまで挟まれていた搬送物を素早く開放することができる。
即ち、本実施形態のコンベヤベルト10は、搬送物Aを目的地において確実に荷下ろしすることができる。
【0024】
本実施形態において低弾性部12sとなっている前記凹入部12a1,12a2は、その数がある程度多い方が前記のように蛇腹状に変形させる上において有利である。
しかしながら、凹入部12a1,12a2の数が多くなるとそれだけ蛇腹状に変形させた際の振幅幅が小さくなり、各凹入部での曲げ半径が小さくなる結果として蛇腹状に変形させる際に高い圧縮応力Fを作用させる必要を生じさせるおそれがある。
また、前記凹入部12a1,12a2は、より小さな圧縮応力Fで蛇腹状に変形させる点からは横桟12に占める割合が高い方が有利である。
さらに、前記凹入部12a1,12a2は、より小さな圧縮応力Fで蛇腹状に変形させる点からは厚みが薄い方(曲げ弾性率が低い方)が有利である。
しかしながら、横桟12に占める凹入部12a1,12a2の割合を過度に高くしたり、凹入部12a1,12a2の機械的強度を過度に低くすると横桟自体の強度が低くなってしまうおそれがある。
そして、横桟12の強度が低いと、ベルト本体11が上り傾斜となって横桟12の前方に搭載された搬送物Aの重みが当該横桟12に加えられた場合などにおいて横桟が後方に倒れてしまって搬送物Aを後戻りさせてしまうおそれがある。
【0025】
従って、横桟の大きさや材質、並びに、搬送物の種類などにもよるが、凹入部12a1,12a2は、板状部に3箇所以上設けられることが好ましく、5箇所以上設けられることが好ましい。
凹入部12a1,12a2は、横桟12の長手方向(ベルト幅方向)に50mm〜200m毎に1個の割合で設けられることが好ましい。
ベルト幅方向において隣り合う前面凹入部12a1と背面凹入部12a2との間の距離、即ち、高弾性部12hの形成幅は、1mm以上100mm以下であることが好ましく、2mm以上50mm以下であることがより好ましい。
また、横桟12の長手方向における凹入部12a1,12a2の形成幅(L1)は、20mm〜150mmであることが好ましい。
さらに凹入部12a1,12a2の厚みは、凹入部の形成されていない高弾性部12hにおける板状部12aの厚みに対し、1/3〜2/3であることが好ましい。
より具体的には、前記高弾性部12hの厚みは、1mm〜12mmであることが好ましく、凹入部12a1,12a2の厚みは、0.5mm〜8mmであることが好ましい。
また、コンベヤベルトの全体的な大きさにもよるが、搬送面11sから前記板状部12aの上端までの高さHは、20mm〜250mmであることが好ましい。
ベルト幅方向における横桟自体の形成幅Lは、50mm以上ベルト本体幅W以下であることが好ましい。
なお、板状部12aの各部厚みや高さなどについては、当該板状部全体において均一化されている必要はなく、厚みや高さは、平均値として上記のような数値範囲内となっていることが好ましいものである。
【0026】
該板状部12aは、熱可塑性エラストマーなどの軟質樹脂を主成分とした樹脂組成物やゴム組成物によって構成させることが好ましい。
【0027】
前記樹脂組成物は、例えば、ポリウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどを主成分とし、さらに、可塑剤、粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などを含むものとすることができる。
また、前記樹脂組成物は、タルク、クレー、シリカ、カーボンブラック、マイカ、バーミキュライト、モンリロナイト、鉱物繊維、ガラス繊維、などの補強材が配合されていてもよい。
【0028】
前記ゴム組成物は、例えば、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等の合成ゴム、または、天然ゴムなどを主成分とし、さらに、素練り促進剤、スコーチ防止剤、可塑剤、粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、架橋剤、架橋助剤、加硫もどり防止剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などを含むものとすることができる。
また、前記ゴム組成物についてもタルク、クレー、シリカ、カーボンブラック、マイカ、バーミキュライト、モンリロナイト、鉱物繊維、ガラス繊維、などの補強材が配合されていてもよい。
【0029】
また、本実施形態の前記板状部12aは、これらの樹脂組成物やゴム組成物を不織布や織布を芯材としてシート化した樹脂シートやゴムシートによって形成させてもよい。
【0030】
なお、前記基板部12bについては、その素材や厚みなどが特に限定されるものではなく、例えば、前記板状部12aと同様の樹脂組成物やゴム組成物で前記板状部12aと同様の厚みのものとすることができる。
【0031】
前記横桟12は、例えば、図5に示したようなゴムシートSによって形成させることができる。
該ゴムシートSは、横長矩形状で、横寸法が形成させる横桟12のベルト幅方向寸法Lに相当し、縦寸法が横桟12の高さHの2倍強となっている。
該ゴムシートSは、当該ゴムシートSを横方向に横断する3本の仮想線L1,L2,L3に沿って折り曲げ加工されて横桟12の形成に用いられるものである。
前記仮想線の内の第1仮想線L1は、ゴムシートSの縦方向における中間点を通ってゴムシートSを横断しており、ゴムシートSを半折した際の折目にあたるものである。
一方で、残りの第2仮想線L2及び第3仮想線L3は、前記第1仮想線L1に平行し、且つ、該第1仮想線を挟んで対称となる位置に設けられている。
即ち、ゴムシートSは、縦方向において、一端縁から第3仮想線L3までの第1領域A1、第3仮想線L3から第1仮想線L1までの第2領域A2、第1仮想線L1から第2仮想線L2までの第3領域A3、及び、第2仮想線L2から他端縁までの第4領域A4といった4つの領域に区分けされた形になっている。
【0032】
第1仮想線L1と第2仮想線L2との距離、及び、第1仮想線L1と第3仮想線L3との距離は、横桟高さHに相当するものとなっている。
そして、ゴムシートSは、第1仮想線L1と第2仮想線L2との間の第3領域A1に前記前面凹入部12a1に対応するD字形状の貫通孔12a1xが備えられている。
また、ゴムシートSは、第1仮想線L1と第3仮想線L3との間の第2領域A2に前記背面凹入部12a2に対応するD字形状の貫通孔12a2xが備えられている。
該D字形状の貫通孔12a1x,12a2xは、それぞれD字の直線部分が前記第1仮想線L1に沿うようにゴムシートSに穿設されている。
そして、該ゴムシートSは、前記第1仮想線L1に沿って山折又は谷折にされて第2領域A2と第3領域A3とが接着され、この第1仮想線L1とは逆向きに第2仮想線L2と第3仮想線L3とが約90度の角度で折り曲げられることで前記横桟12とされる。
即ち、ゴムシートSは、このような折り曲げ及び接着が行われて前記貫通孔12a1x,12a2xが凹入部12a1,12a2となり、前記第1領域A1及び前記第4領域が前記基板部12bとなるものである。
【0033】
横桟12は、例えば、前記貫通孔12a1x,12a2xに代えて矩形や三角形の貫通孔を設けたゴムシートを用いれば、図6(b)、(c)に示すように、凹入部の形状を変更することができる。
また、横桟12は、丸形の貫通孔、或いは、1箇所に複数の丸形の貫通孔を設けたゴムシートを用いれば、図7(a)、(b)に示すように、凹入部の形状を変更することができる。
さらに、貫通孔を設けるのに替えて、補強用ゴムシート12c1,12c2を貼ったゴムシートを用いれば、図8に示したような横桟12を作製することができる。
なお、前記のような折り曲げ可能なゴムシートは、横桟12が簡便に形成可能となる上において有用なものではあるが、本実施形態の横桟12はこのような形ではなく種々の態様にて作製可能である。
【0034】
さらに、前記ベルト本体11についても、その素材や厚みなどが特に限定されるものではなく、一般的な搬送ベルトにおいて用いられているベルト本体と同様のものを本実施形態においても採用可能である。
【0035】
本実施形態に示したコンベヤベルトを備えたベルトコンベヤは、搬送物の逆戻りや搬送物の横桟への噛み込みが防止されるため、搬送物を目的地に効率良く搬送し得るとともに当該搬送物を目的地において確実に荷下ろしすることができる。
なお、本実施形態の急傾斜パイプコンベヤは、例えば、食品、薬品など異物混入を防止することが強く求められている搬送物の搬送に適したものである。
また、本実施形態の急傾斜パイプコンベヤは、鉱石やセメントなどの搬送時における粉塵の排出を防ぐことが強く求められている搬送物の搬送にも適している。
【0036】
なお、本実施形態においては、コンベヤベルトが筒状にされて急傾斜パイプコンベヤに利用される場合を例示しているが、本発明のコンベヤベルトはこのような急傾斜な環境においてのみ用いられるものではなく、パイプコンベヤにのみ用いられるものでもない。
【0037】
また、本実施形態においては、搬送方向前方への座屈と後方への座屈とをベルト幅方向において交互に形成させ易いことから前面凹入部と、背面凹入部とがベルト幅方向に交互に備えられている横桟を例示しているが、本発明のコンベヤベルトは、ベルト幅方向における前面凹入部と背面凹入部との並びをランダムなものとしても良い。
また、本発明のコンベヤベルトは、前面凹入部及び背面凹入部の内の何れか一方のみを板状部に複数形成させるようにしてもよい。
さらに、本実施形態においては、板状部全体の材質を共通させて横桟を製造容易なものとし得る点において凹入部の形成によって板状部に低弾性部と高弾性部とを形成させる態様を例示しているが、本発明においては、必ずしも凹入部を備えた板状部を横桟に設ける必要はなく、例えば、硬質ゴムと軟質ゴムとで長板を作製し、しかも、軟質ゴムで形成させた部位と硬質ゴムで形成させた部位とが長手方向に交互に配された長板を作製してこれを横桟の板状部として備えさせても良い。
以上のように本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 ベルトコンベヤ
10 コンベヤベルト
11 ベルト本体
12 横桟
12h 高弾性部
12s 低弾性部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9