(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ駆動源によって駆動される、第1の吐出油路に作動油を吐出する斜板式の第1のポンプ部、第2の吐出油路に作動油を吐出する斜板式の第2のポンプ部、及び、第3の吐出油路に作動油を吐出する第3のポンプ部と、
前記第1のポンプ部、前記第2のポンプ部及び前記第3のポンプ部の吐出圧力、並びに、補機の作動状態に応じて供給される信号圧に基づき斜板の傾転量を変化させる傾転量制御部と、
前記第1の吐出油路から分岐し第1のオリフィスが設けられた第1の制御油路と、
前記第2の吐出油路から分岐し第2のオリフィスが設けられた第2の制御油路と、
前記第1の制御油路及び前記第2の制御油路が合流して接続され、前記傾転量制御部の第1の受圧面に、前記第1のポンプ部の吐出圧力及び前記第2のポンプ部の吐出圧力に基づく第1の制御油圧を導入する第3の制御油路と、
前記第3の吐出油路から分岐して、前記傾転量制御部の第2の受圧面に、前記第3のポンプ部の吐出圧力に基づく第2の制御油圧を供給する第4の制御油路と、
前記傾転量制御部の第3の受圧面に、前記信号圧に基づく第3の制御油圧を供給する第5の制御油路と、
前記第3の制御油路に設けられた第3のオリフィスと、
を備える、斜板式可変容量ポンプの油圧回路。
前記傾転量制御部は、それぞれ一端側が前記斜板を押圧可能であり、他端側が前記第1の受圧面、前記第2の受圧面又は前記第3の受圧面である第1のピストン、第2のピストン及び第3のピストンを備える、請求項1に記載の斜板式可変容量ポンプの油圧回路。
前記傾転量制御部は、カバーに形成された油路に連通して前記第3の制御油路の一部を構成する軸方向油路が形成された油路部材を備え、前記第3のオリフィスは、前記油路部材の側面と前記軸方向油路とを連通する径方向油路に設けられる、請求項1又は2に記載の斜板式可変容量ポンプの油圧回路。
前記信号圧は、前記駆動源によって駆動される第4のポンプ部の吐出圧力を用いて生成される圧力である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜板式可変容量ポンプの油圧回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エアコンディショナ等の他の補機が動作する場合に馬力を低くする(モードコントロール:以下「減馬力機能」ともいう。)ことができる斜板式可変容量ポンプとして、特許文献1に記載されたような馬力制御レギュレータ以外の手段を備えたものがある。
図4は、斜板式可変容量ポンプの吐出圧力P1,P2をそれぞれ受圧する第1のピストン361及び第2のピストン363以外に、ギヤポンプ油圧Pg1及び補機のオンオフ状態に応じて供給される流体圧(信号圧)Piを受圧する段付きの第3のピストン365を備えた斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示している。
【0006】
係る油圧回路では、ギヤポンプ油圧Pg1が第3のピストン365の小径部の端部の周囲の圧力室357に導入されるとともに、補機のオンオフ状態に応じて供給される信号圧Piが信号圧導入ポートZを介して第3のピストン365の段差部の周囲の圧力室359に導入される。第3のピストン365は、小径部の端面でギヤポンプ油圧Pg1を受圧するとともに、段差面で信号圧Piを受圧し、受圧した圧力に応じて斜板の傾転量制御を補助することによって、馬力を低減させる。
【0007】
図15は、斜板式可変容量ポンプの馬力特性の一例を示している。実線は、ギヤポンプ油圧Pg1が低い場合であって、信号圧Piがゼロの場合の流量−圧力特性を示している。ギヤポンプ油圧Pg1が低い場合に、補機がオンにされると、信号圧Piを受圧して得られた補助力により信号圧Piがゼロの場合よりも低いポンプ吐出圧力で斜板が傾転しポンプ吐出流量が低下し始めるため、馬力が低下する(点線)。また、一点鎖線は、ギヤポンプ油圧Pg1が高い場合であって、信号圧Piがゼロの場合の流量−圧力特性を示している。ギヤポンプ油圧Pg1が高い場合に、補機がオンにされると、信号圧Piを受圧して得られた補助力により、信号圧Piがゼロの場合よりも低いポンプ吐出圧力で斜板が傾転しポンプ吐出流量が低下し始めるため、馬力が低下する(二点鎖線)。
【0008】
しかし、補機のオンオフ状態に応じて供給される信号圧Piは比較的低い圧力である一方、第3のピストン365における当該信号圧Piの受圧面積は比較的小さくなっている。そのため、減馬力量を大きくすることが困難となっている。特に、信号圧Piは、斜板式可変容量ポンプの駆動軸に連結されたギヤポンプ(第2のギヤポンプ118)の吐出圧力Pg2に基づいており、高圧にすることは容易ではない。また、
図4に示した回路構成の斜板式可変容量ポンプにおいて、特許文献1に記載されたような馬力制御レギュレータ等の新たな部品を組み込むスペースも限られており、大幅な変更が必要となってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、補機のオンオフ状態に応じて供給される油圧の受圧面積が大きくされ、当該補機の作動時における斜板式可変容量ポンプの減馬力量を大きくすることができる斜板式可変容量ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、それぞれ駆動源によって駆動される、第1の吐出油路に作動油を吐出する斜板式の第1のポンプ部、第2の吐出油路に作動油を吐出する斜板式の第2のポンプ部、及び、第3の吐出油路に作動油を吐出する第3のポンプ部と、第1のポンプ部、第2のポンプ部及び第3のポンプ部の吐出圧力、並びに、補機の作動状態に応じて供給される信号圧に基づき斜板の傾転量を変化させる傾転量制御部と、第1の吐出油路から分岐し第1のオリフィスが設けられた第1の制御油路と、第2の吐出油路から分岐し第2のオリフィスが設けられた第2の制御油路と、第1の制御油路及び第2の制御油路が合流して接続され、傾転量制御部の第1の受圧面に、第1のポンプ部の吐出圧力及び第2のポンプ部の吐出圧力に基づく第1の制御油圧を導入する第3の制御油路と、第3の吐出油路から分岐して、傾転量制御部の第2の受圧面に、第3のポンプ部の吐出圧力に基づく第2の制御油圧を供給する第4の制御油路と、傾転量制御部の第3の受圧面に、信号圧に基づく第3の制御油圧を供給する第5の制御油路と、第3の制御油路に設けられた第3のオリフィスと、を備える、斜板式可変容量ポンプの油圧回路が提供される。
【0011】
傾転量制御部は、それぞれ一端側が斜板を押圧可能であり、他端側が第1の受圧面、第2の受圧面又は第3の受圧面である第1のピストン、第2のピストン及び第3のピストンを備えてもよい。
【0012】
傾転量制御部は、カバーに形成された油路に連通して第3の制御油路の一部を構成する軸方向油路が形成された油路部材を備え、第3のオリフィスは、油路部材の側面と軸方向油路とを連通する径方向油路に設けられてもよい。
【0013】
信号圧は、駆動源によって駆動される第4のポンプ部の吐出圧力を用いて生成される圧力であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、補機の作動状態に応じて供給される油圧の受圧面積が大きくされ、当該補機の作動時における斜板式可変容量ポンプの馬力の低下量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る斜板式可変容量ポンプの構成例を示す断面図である。
【
図2】同実施形態に係る斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図3】同実施形態に係る傾転量制御部の構成例を示す断面図である。
【
図4】比較例1に係る(従来の)斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図5】実施例1に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図6】比較例1に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図7】比較例2に係る斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図8】比較例2に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図9】比較例3に係る斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図10】比較例3に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図11】比較例4に係る斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図12】比較例4に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図13】比較例5に係る斜板式可変容量ポンプの油圧回路を示す説明図である。
【
図14】比較例5に係る斜板式可変容量ポンプの特性を示す説明図である。
【
図15】斜板式可変容量ポンプの減馬力機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<1.斜板式可変容量ポンプの全体構成例>
まず、
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る油圧回路が適用される斜板式可変容量ポンプの構成例について説明する。
図1は、斜板式可変容量ポンプ100の断面図を示している。係る斜板式可変容量ポンプ100は、例えば複数の油圧アクチュエータにより操作される油圧ショベル等の油圧機器に搭載されて使用される。斜板式可変容量ポンプ100は、斜板30の傾きである傾転量を制御することによって、ポンプ吐出流量を調整可能なピストンポンプである。
【0018】
係る斜板式可変容量ポンプ100において、油路構成及び傾転量制御部50以外の構成については、従来公知の斜板式可変容量ポンプと同様に構成し得る。以下、油路構成及び傾転量制御部50以外の斜板式可変容量ポンプ100の全体構成について簡単に説明する。
【0019】
斜板式可変容量ポンプ100は、ポンプハウジング5とカバー10とを備える。ポンプハウジング5及びカバー10には、図示しないエンジンにより回転駆動される駆動軸8が挿通される。本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100は、図示しない2つの吐出ポートを備えた2連ポンプである。また、駆動軸8には、図示しない第1ギヤポンプ及び第2ギヤポンプが連結されている。第1ギヤポンプは、駆動軸8の回転により、所定の油圧(以下、「第1のギヤポンプ油圧」ともいう。)を圧送する。また、第2ギヤポンプは、駆動軸8の回転により、低圧の油圧(以下、「第2のギヤポンプ油圧」ともいう。)を圧送する。第2のギヤポンプ油圧は、エアコンディショナ等の補機の作動時に斜板式可変容量ポンプ100の馬力を低下させるために傾転量制御部50の図示しない第3のピストンの他端面に供給される信号圧の元圧となる。
【0020】
ポンプハウジング5及びカバー10により形成される内部空間には、斜板30及びシリンダブロック40が収容される。シリンダブロック40は、駆動軸8に連結され、駆動軸8の回転により回転駆動する。シリンダブロック40は、駆動軸8の軸方向に沿って複数のシリンダ41を備える。それぞれのシリンダ41には、加圧ピストン45が軸方向に往復動可能に保持されている。
【0021】
それぞれの加圧ピストン45の一端側は、斜板30に当接している。駆動軸8の回転によりシリンダブロック40が一回転する間に、加圧ピストン45はシリンダ41内を往復動し、作動油の吸入及び吐出が行われる。加圧ピストン45の往復動の方向に直交する面に対する斜板30の傾き(傾転量)によって、シリンダブロック40が一回転する間の加圧ピストン45のストローク量が可変となっている。すなわち、斜板30の傾転量によって、ポンプ吐出流量が可変となる。
【0022】
斜板30は、図中の上方において、コイルスプリング35により付勢されている。コイルスプリング35は、カバー10と斜板30とにより挟持されている。一方、斜板30は、図中の下方において、傾転量制御部50のピストン(第1のピストン61)の一端面に当接している。第1のピストン61は、カバー10に固定されたガイドスリーブ51により、駆動軸8の軸方向に沿って摺動可能に支持される。
図1では第1のピストン61のみが示されているが、実際には第2のピストン及び第3のピストンも並列配置されており、それぞれのピストンの一端面が斜板30に当接している。
【0023】
係る傾転量制御部50の第1のピストン61の他端面は第1の制御油圧Pcの受圧面となっており、第2のピストンの他端面は第2の制御油圧(第1のギヤポンプ油圧)Pg1の受圧面となっており、第3のピストンの他端面は第3の制御油圧(信号圧)Piの受圧面となっている。したがって、斜板30の下方側は、各ピストンを介して負荷される第1の制御油圧Pc、第2の制御油圧Pg1、第3の制御油圧Piにより押圧される。
【0024】
制御油圧が小さい状態では、斜板30は、コイルスプリング35に付勢されて傾転量が最大の状態になる。この状態から制御油圧が大きくなるにつれて、コイルスプリング35の付勢力に抗して斜板30の下方側が押圧され、傾転量が小さくなる。係る斜板式可変容量ポンプ100は、ポンプ吐出圧力が大きくなるほど第1の制御油圧Pcが大きくなってポンプ吐出流量は小さくされる。また、斜板式可変容量ポンプ100は、図示しない第1ギヤポンプの吐出圧力Pg1に応じて斜板30の傾転量制御を補助するとともに、補機のオンオフ状態に応じて供給される信号圧Piに応じて斜板30の傾転量制御を補助する。
【0025】
本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100では、傾転量制御部50の各ピストンの他端面には、図示しない油路構成を介して制御油圧が導かれる。
【0026】
<2.油圧回路の構成例>
次に、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の油圧回路110の構成例を説明する。
図2は、本実施形態に係る油圧回路110の回路図である。係る油圧回路110は、第1のポンプ部112と第2のポンプ部114と第3のポンプ部116と第4のポンプ部118とを備える。このうち、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114は、斜板式可変容量ポンプ100の加圧ピストン45の吸入圧送動作により2つの吐出ポートA1,A2から吐出されるポンプ部に相当する。また、第3のポンプ部116及び第4のポンプ部118は、それぞれ上述の第1ギヤポンプ及び第2ギヤポンプに相当する。
【0027】
第1のポンプ部112は、第1の吐出油路122を介して第1の吐出ポートA1から油圧機器のアクチュエータ等に対して作動油圧P1を供給する。第2のポンプ部114は、第2の吐出油路124を介して第2の吐出ポートA2から油圧機器のアクチュエータ等に対して作動油圧P2を供給する。第3のポンプ部116は、第3の吐出油路126を介して第3の吐出ポートA3から第1のギヤポンプ油圧Pg1を供給する。第4のポンプ部118は、第4の吐出油路128を介して第4の吐出ポートA4から第2のギヤポンプ油圧Pg2を供給する。
【0028】
第1の吐出油路122には、第1の制御油路132が分岐して接続されている。また、第2の吐出油路124には、第2の制御油路134が分岐して接続されている。第1の制御油路132及び第2の制御油路134は合流し、第3の制御油路135に接続されている。第3の制御油路135は、傾転量制御部50の第1のピストン61の圧力室53に、吐出圧力P1,P2の平均圧である第1の制御油圧Pcを導入する。第1の制御油路132には第1のオリフィス142が設けられ、第2の制御油路134には第2のオリフィス144が設けられている。第1のオリフィス142及び第2のオリフィス144の直径は同一とされ、これにより、第1のピストン61の圧力室53に導入される第1の制御油圧Pcが、吐出圧力P1,P2の平均圧とされる。
【0029】
第3の吐出油路126には、第4の制御油路136が分岐して接続されている。第4の制御油路136は、傾転量制御部50の第2のピストン63の圧力室55に、第1のギヤポンプ油圧(以下、「第2の制御油圧」ともいう。)Pg1を導入する。また、傾転量制御部50の第3のピストン65の圧力室57には、信号圧導入ポートZを介して、第4のポンプ部118の吐出圧力である第2のギヤポンプ油圧Pg2に基づく信号圧(以下、「第3の制御油圧」ともいう。)Piが導入される。第3の制御油圧Piは、図示しない信号圧制御部により、エアコンディショナ等の補機のオンオフ状態あるいは出力に応じて、適宜の値に制御される。
【0030】
傾転量制御部50では、それぞれ圧力室53,55,57に導入される第1の制御油圧Pc、第2の制御油圧Pg1及び第3の制御油圧Piにより、第1のピストン61、第2のピストン63及び第3のピストン65を介して斜板30が押圧される。これにより、斜板30の傾転量が制御される。その結果、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出流量が変化し、馬力が制御される。
【0031】
第3の制御油圧Piは、エアコンディショナ等の補機のオンオフ状態に応じて適宜の圧力とされる。補機のオン状態では、補機を駆動させるための馬力が必要になることから、オフ状態に比べて大きい値の第3の制御油圧Piが圧力室57に導入されるようになっており、斜板30の傾転量がより小さくなる。例えば、エアコンディショナの作動スイッチがオンにされたときに、図示しない信号圧制御部により信号圧Piが大きくなるように切り替えられてもよい。
【0032】
ここで、本実施形態に係る油圧回路110では、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2の平均圧である第1の制御油圧Pcを第1のピストン61の圧力室53に導く第3の制御油路135に、第3のオリフィス145が設けられている。第3のオリフィス145は、斜板式可変容量ポンプ100の駆動に伴って生じる斜板30の振動が第3の制御油路135に伝達されることを抑制する機能と、第3のオリフィス145から圧力室53までの第3の制御油路135の容積及び圧力室53の容積に応じた斜板30の振動を抑制する機能を有する。
【0033】
係る圧力室53及び第3の制御油路135内の圧力脈動が大きくなると、斜板30の振動もさらに大きくなって、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114によるポンプ吐出流量が不安定になる。その結果、斜板式可変容量ポンプ100を等馬力で制御することが困難となる。第3のオリフィス145は、係る圧力脈動を抑制して、等馬力制御を可能としている。
【0034】
このとき、第3のオリフィス145は、圧力脈動を抑制可能な位置、すなわち、ポンプ吐出流量の変動幅がより小さくなる位置に設けられることが好ましい。つまり、圧力脈動の節又は腹の位置等の要因によって、第3のオリフィス145を設けることによる圧力脈動の抑制効果に差が生じ得ることから、適切な位置を選択して第3のオリフィス145を設けることが好ましい。
【0035】
<3.傾転量制御部>
図3は、傾転量制御部50の構成例を示す部分断面図である。傾転量制御部50は、カバー10に対してボルト81により固定されたガイドスリーブ51を備える。ガイドスリーブ51は、第1のガイド部51a、第2のガイド部51b、第3のガイド部51cを有する。第1のガイド部51aには、第1のピストン61が摺動自在に保持されている。第2のガイド部51bには、第2のピストン63が摺動自在に保持されている。第3のガイド部51cには、第3のピストン65が摺動自在に保持されている。
【0036】
第1のガイド部51aは、カバー10とは反対側の端部が開口し、他端側がカバー10に形成された油路部材70の保持穴12に対向する。保持穴12には、第3の制御油路135の一部をなす軸方向孔(軸方向油路)71及び第3のオリフィス145が形成された油路部材70が挿入されている。第3のオリフィス145は、軸方向孔71に直交し径方向に延びる油路上に設けられている。油路部材70における第3のオリフィス145が形成された位置の外周面には環状溝73が設けられ、係る環状溝73には、カバー10に形成された図示しない第3の制御油路135が連通している。
【0037】
第3の制御油路135を介して供給される第1の制御油圧Pcは、第3のオリフィス145を介して軸方向孔(軸方向油路)71を流れ、第1のガイド部51a内に導入される。第1のピストン61は、第1のガイド部51a内に導入された第1の制御油圧Pcを受圧して、第1のガイド部51a内を移動する。すなわち、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の傾転量制御部50では、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2を一つの第1のピストン61で受圧し、斜板30の制御に利用する。
【0038】
第3のオリフィス145が油路部材70に形成されているため、第3のオリフィス145から第1のピストン61までの距離が短くされる。そのため、第3の制御油路135内で生じる圧力脈動が抑制され、ポンプ吐出流量をより安定させることができる。
【0039】
第2のガイド部51bは、カバー10とは反対側の端部が開口し、他端側がカバー10に形成された第4の制御油路136に連通する油路83に連通する。第2のピストン63は、第2のガイド部51bに挿入され、第4の制御油路136から導入される第2の制御油圧Pg1を受圧して、第2のガイド部51b内を移動する。
【0040】
第3のガイド部51cは、カバー10とは反対側の端部が開口し、他端側がカバー10に形成された第5の制御油路138に連通する油路85に連通する。第3のピストン65は、第3のガイド部51cに挿入され、第5の制御油路138から導入される第3の制御油圧Piを受圧して、第3のガイド部51c内を移動する。すなわち、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100は、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2を一つの第1のピストン61で受圧するように構成したことに伴って、信号圧(第3の制御油圧)Piを、第3のピストン65によって独立的に受圧し得る。このため、信号圧Piの受圧面積を大きくすることが可能になる。
【0041】
図4に示した従来の油圧回路の場合においても、傾転量制御部350は、それぞれ導入される制御油圧を受圧して斜板30を制御する3本のピストンを備えている。従来の油圧回路では、3本のピストンが、それぞれ第1のポンプ部112の吐出圧力P1、第2のポンプ部114の吐出圧力P2、又は、第1のギヤポンプ油圧Pg1及び信号圧Piを受圧していた。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る油圧回路では、第1のピストン61が第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2の平均圧Pcを受圧する。このため、第1のギヤポンプ油圧Pg1及び信号圧Piを、それぞれ第2のピストン63及び第3のピストン65で独立して受圧することが可能になっている。したがって、傾転量制御部50の全体の大きさを大幅に変更することなく、信号圧Piの受圧面積を大きくすることができる。これにより、
図4に示した油圧回路構成を備えた斜板式可変容量ポンプ100を大きく設計変更することなく、補機の作動時の減馬力量を大きくすることができる。
【0043】
<4.まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の油圧回路110は、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2を一つの第1のピストン61で受圧するように構成する一方、補機の作動状態に応じて供給される信号圧Piを第3のピストン65で独立して受圧可能になっている。したがって、信号圧Piが比較的低圧であるとしても、大面積の受圧面で信号圧Piを受圧して、傾転量制御を補助することができる。これにより、補機の作動時における減馬力量を増大させることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る斜板式可変容量ポンプ100の油圧回路110は、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2の平均圧Pcを傾転量制御部50に導く第3の制御油路135に第3のオリフィス145を有する。したがって、斜板30の振動により生じる、圧力室53及び第3の制御油路135内の圧力脈動が抑制され、ポンプ吐出流量のバラつきが低減される。これにより、バラつきの少ない等馬力制御を実行することが可能になる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例について説明する。以下の実施例では、油圧回路の構成及びオリフィスの位置の違いによる、馬力特性の差を評価した。なお、以下の実施例は、エンジンの代わりに電動機を用いて馬力特性の差を評価したものであり、モータ回転数をエンジン回転数に代用した。
【0046】
(実施例)
実施例として、
図2に示す油圧回路110を用いて、馬力特性を評価した。係る油圧回路110において、傾転量制御部50は
図3に示したものを用いた。使用した作動油はVG46であり、モータ回転数(エンジン回転数)Nが2200rpmの時の第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2を25MPa、第3のポンプ部116の吐出圧力(第1のギヤポンプ油圧)Pg1を1.5MPa、第4のポンプ部118の吐出圧力に基づく信号圧Piを3.2MPaに設定した。その後、モータ回転数(エンジン回転数)Nを2200rpmから900rpmまで下げた後に再び2200rpmまで復帰させた場合のポンプ吐出流量Q1,Q2(L/min)、圧力P1,P2,Pg1,Pi(MPa)、トルクT(N・m)の変動を観察した。
【0047】
得られた結果を
図5に示す。
図5の横軸は、モータ回転数(エンジン回転数)N(rpm)を示している。実施例の油圧回路110によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2がモータ回転数(エンジン回転数)Nの増大に伴って比例的に増加し、トルクTは大きく変動することなく変化していた。
【0048】
(比較例1)
比較例1として、すでに説明した
図4に示す油圧回路を用いて、実施例と同様の方法により馬力特性を評価した。比較例1では、第1のオリフィス342が第1のピストン361の圧力室353よりも上流側に設けられ(
図3の第3のオリフィス145と同じ位置)、第2のオリフィス344が第2のピストン363の圧力室355の直前に設けられている(
図3の油路83の位置)。得られた結果を
図6に示す。比較例1の油圧回路によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2がモータ回転数(エンジン回転数)Nの増大に伴って比例的に増加し、略一定のトルクTで制御可能になっている。ただし、比較例1の油圧回路は、信号圧Piを、第3のピストン365の段差面で受圧する構成であるため、補機の作動時における減馬力量に制限がある。
【0049】
(比較例2)
比較例2として、
図7に示す油圧回路を用いて、実施例と同様の方法により馬力特性を評価した。
図7に示す油圧回路は、
図4に示す油圧回路における第1の制御油路332及び第2の制御油路334に設けられていた第1のオリフィス342及び第2のオリフィス344を省略したものである。得られた結果を
図8に示す。比較例2の油圧回路によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2がモータ回転数(エンジン回転数)Nの変化に伴って大きくばらついており、トルクTも大きく変動している。また、比較例2の油圧回路は、信号圧Piを、第3のピストン365の段差面で受圧する構成であるため、補機の作動時における減馬力量に制限がある。
【0050】
(比較例3)
比較例3として、
図9に示す油圧回路を用いて、実施例と同様の方法により馬力特性を評価した。
図9に示す油圧回路は、
図4に示す油圧回路における第2の制御油路334に設けられていた第2のオリフィス344を省略したものである。得られた結果を
図10に示す。比較例3の油圧回路によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2がモータ回転数(エンジン回転数)Nの増大に伴って比例的に増加し、略一定のトルクTで制御可能になっている。ただし、比較例3の油圧回路は、信号圧Piを、第3のピストン365の段差面で受圧する構成であるため、補機の作動時における減馬力量に制限がある。
【0051】
(比較例4)
比較例4として、
図11に示す油圧回路を用いて、実施例と同様の方法により馬力特性を評価した。
図11に示す油圧回路は、
図4に示す油圧回路における第1の制御油路332に設けられていた第1のオリフィス342を省略したものである。得られた結果を
図12に示す。比較例4の油圧回路によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2のバラつきが大きくなり、トルクTも大きく変動している。比較例3の油圧回路との差は、第1のオリフィス342と第2のオリフィス344の位置の違いによるものと考えられる。また、比較例4の油圧回路は、信号圧Piを、第3のピストン365の段差面で受圧する構成であるため、補機の作動時における減馬力量に制限がある。
【0052】
(比較例5)
比較例5として、
図13に示す油圧回路を用いて、実施例と同様の方法により馬力特性を評価した。
図13に示す油圧回路は、
図2に示す油圧回路における第3の制御油路135に設けられていた第3のオリフィス145を省略したものである。得られた結果を
図14に示す。比較例5の油圧回路によれば、ポンプ吐出流量Q1,Q2のバラつきが大きくなり、トルクTも大きく変動している。
【0053】
(実施例及び比較例の比較)
表1は、実施例及び比較例1〜5による馬力特性の評価結果を示す。表1において、馬力特性結果は、実施例におけるトルクTの変動幅を1とした場合の比率を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示したように、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2の平均圧Pcを第1のピストン61で受圧する実施例及び比較例5において、第3の制御油路135に第3のオリフィス145を備えていない場合(比較例5)には、等馬力制御が維持できないことが分かった。したがって、減馬力機能を増大させるために、第1のポンプ部112及び第2のポンプ部114の吐出圧力P1,P2の平均圧Pcを一つの第1のピストン61で受圧させるには、第3の制御油路135に第3のオリフィス145を設けると良いことが理解できる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。