【文献】
新しい肺がん治療標的遺伝子の発見,国立がん研究センター プレスリリース,2012年 2月 9日,インターネット:<URL:http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20120209.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化合物1またはその薬学的に許容される塩が、化合物1またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物として投与される、請求項9に記載の医薬。
【発明を実施するための形態】
【0014】
略語および定義
以下の略語および用語は、本出願の全体を通して示された意味を有する。
【0015】
記号「−」は、単結合を意味し、「=」は、二重結合を意味する。
【0016】
化学構造が図示または記載される場合、別途明記されていない限り、すべての炭素は、4の原子価に一致するように水素置換を有すると想定される。例えば、以下の図式の左側の構造において、9個の水素があることが含意される。9個の水素は、右側の構造中に図示される。構造中の特定の原子は、置換として水素(1つまたは複数)(明確に定義された水素)有するように、例えば、−CH
2CH
2−のように、文字式で記載される場合もある。上述の説明的な技術は、そうでなければ複雑な構造の説明に簡潔さおよび単純さを提供するために、化学技術分野において一般的であることは、当業者によって理解されよう。
【0017】
基「R」が、例えば、式:
にあるように、環系上に「浮遊している」ように示される場合、特別の定めのない限り、安定した構造が形成される限り、環原子のうちの1つからの示された、含意された、または明確に定義された水素の置換を仮定すると、置換基「R」は、環系のいずれの原子にも存在してもよい。
【0018】
基「R」が、例えば、式:
にあるように、縮合環系上に浮遊しているように示される場合、特別の定めのない限り、安定した構造が形成される限り、環原子のうちの1つからの示された水素(例えば、上記の式中の−NH−)、含意された水素(例えば、水素が示されないが存在すると理解される上記の式にあるような)、または明確に定義された水素(例えば、上記の式中、「Z」が=CH−に等しい)の置換を仮定すると、置換基「R」は、縮合環系のいずれの原子にも存在し得る。示された例において、「R」基は、縮合環系の5員環または6員環のいずれかに存在し得る。基「R」が、例えば、式:
にあるように、飽和炭素を含有する環系に存在するように示される場合、式中、この例において、それぞれが環上の現在示されている、含意されている、または明確に定義されている水素を置換すると仮定すると、「y」は、1を超えることができ、特別の定めのない限り、得られる構造が安定している場合、2つの「R」は、同一の炭素に存在し得る。簡単な例では、Rがメチル基である場合、示された環の炭素上にジェミナルジメチルが存在し得る(「環状」炭素)。別の例では、同じ炭素上の2つのRは、その炭素を含み、環を形成し得、したがって、例えば、式:
にあるように、示された環でスピロ環(「スピロシクリル」基)構造を生成する。
【0019】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0020】
「KIF5B」は、KIF5Bタンパク質、またはKIF5B遺伝子を指し得る。キネシン−1重鎖とも呼ばれるKIF5Bタンパク質は、KIF5B遺伝子によってコードされたタンパク質である。KIF5Bタンパク質は、ヒト等の哺乳動物に由来し得る。ヒトKIF5Bタンパク質をコードするヒトKIF5B遺伝子は、染色体10(10q11.22)に局在化され、26エクソンを含有する。KIF5Bは、本明細書にさらに記載される。
【0021】
「KIF5B−RET融合タンパク質または遺伝子」とは、KIF5B等の融合パートナーのN末端ドメインおよびRETタンパク質のC末端ドメインを含む融合タンパク質を指す。融合パートナーのN末端ドメインは、融合タンパク質のN末端ドメインに位置し得、RETタンパク質のC末端ドメインは、融合タンパク質のC末端ドメインに位置し得る。融合パートナーは、KIF5Bタンパク質のN末端ドメインであり得、融合タンパク質のN末端に位置し得る。この場合、融合タンパク質は、KIF5B−RETとして表され得、N末端でKIF5Bタンパク質のN末端ドメインと、C末端でRETタンパク質のC末端ドメインとを含む。別の実施形態は、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を提供し、融合パートナーのN末端ドメインをコードする遺伝子は、5′末端に位置し、RETタンパク質のC末端ドメインをコードする遺伝子は、3′末端に位置する。
【0022】
本発明の目的のための「患者」には、ヒトおよび他の動物、特に、哺乳動物、ならびに他の生物が含まれる。したがって、本方法は、ヒトの治療および獣医学的用途の両方に適用できる。別の実施形態において、患者は、哺乳動物であり、別の実施形態において、その患者は、ヒトである。
【0023】
化合物の「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理学的活性を保有している塩を意味する。薬学的に許容される塩は、無毒であることが理解されよう。好適な薬学的に許容される塩におけるさらなる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17
th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985(参照により本明細書に組み込まれる)、またはS.M.Berge,et al.,「Pharmaceutical Salts,」J.Pharm.Sci.,1977;66:1−19に見出され得、これらは共に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ならびに酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、グルコヘプトン酸、4、4’−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、p−トルエンスルホン酸、およびサリチル酸等の有機酸で形成されるものが挙げられる。
【0025】
「プロドラッグ」は、例えば、血液中での加水分解によってインビボで(通常急速に)変換されて、上記式の親化合物を得る、化合物を指す。一般的な例としては、カルボン酸部分を持つ活性型を有する化合物のエステルおよびアミド型が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物の薬学的に許容されるエステルの例としては、アルキル基が直鎖または分岐鎖であるアルキルエステル(例えば、約1個〜約6個の炭素を有する)が挙げられるが、これに限定されない。また、許容されるエステルには、ベンジル等が含まれるが、これに限定されないシクロアルキルエステルおよびアリールアルキルも含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容されるアミドの例としては、一級アミド、二級および三級アルキルアミド(例えば、約1個〜約6個の炭素を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物のアミドおよびエステルは、従来の方法に従って調製され得る。プロドラッグについての完全な考察は、T.Higuchi and V.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems,」Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に提供されており、これらの両方は、参照によりすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0026】
「RET」または「RETタンパク質」は、膜貫通受容体チロシンキナーゼであり、本明細書にさらに記載される。
【0027】
「治療有効量」は、患者に投与されるとき、疾患の症状を改善する本発明の化合物の量である。治療有効量は、単独でまたは他の活性成分と組み合わせて、c−Metおよび/もしくはVEGFR2を調整するのに有効であるか、または癌を治療もしくは予防するのに有効である化合物の量を含むことが意図される。「治療有効量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、疾患状態およびその重症度、治療されるべき患者の年齢等に応じて異なるであろう。治療有効量は、それらの知識および本開示を考慮する当業者によって決定することができる。
【0028】
本明細書で使用される、疾患、障害、または症候群の「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」には、(i)ヒトにおける疾患、障害、または症候群が生じることを防ぐこと、すなわち、疾患、障害、または症候群に曝露されるか、またはその素因を持つ可能性はあるが、疾患、障害、または症候群の症状をまだ経験していないか、または示していない動物において、疾患、障害、または症候群の臨床症状の発現を防ぐこと、(ii)疾患、障害、または症候群を逆転または阻害すること、すなわち、その発現を阻止すること、ならびに(iii)疾患、障害、または症候群を軽減すること、すなわち、疾患、障害、または症候群の退縮を引き起こすこと、が含まれる。当該技術分野で知られているように、全身的対局所的送達、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、薬物の相互作用、および状態の重症度に関しての調整が必要な場合があり、それらは通常の実験で確認できるであろう。
【0029】
本明細書に記載される反応のそれぞれに対する「収率」は、理論的収量に対するパーセンテージとして表される。
【0030】
実施形態
一実施形態において、式Iの化合物は、式Ia:
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
1がハロであり、
R
2がハロであり、
Qが、CHまたはNである。
【0031】
別の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1:
またはその薬学的に許容される塩である。前述のように、化合物1は、本明細書では、N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドと称される。国際公開第2005/030140号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、化合物1を開示し、どのようにしてそれが作製されるかについて記載し(実施例12、37、38、および48)、キナーゼのシグナル変換を阻害、調節、および/または調整するための本化合物の治療活性も開示する(アッセイ、表4、項目289)。実施例48は、国際公開第2005/030140号の段落[0353]にある。
【0032】
他の実施形態において、式I、Ia、もしくは化合物1の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物として投与され、この薬学的組成物には、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤がさらに含まれる。特定の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1である。
【0033】
本明細書に記載される式I、式Ia、および化合物Iの化合物には、列挙される化合物、ならびに個々の異性体および異性体の混合物の両方が含まれる。それぞれの例において、式Iの化合物には、列挙される化合物の薬学的に許容される塩、水和物、および/もしくは溶媒和物、ならびに任意の個々の異性体およびその異性体の混合物が含まれる。
【0034】
他の実施形態において、式I、Ia、または化合物1の化合物は、(L)−リンゴ酸塩であり得る。式Iの化合物および化合物1のリンゴ酸塩は、国際公開PCT/米国特許第2010/021194号および米国特許出願第61/325095号に開示されており、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
他の実施形態において、式Iの化合物は、(D)−リンゴ酸塩である。
【0036】
他の実施形態において、式Iaの化合物は、リンゴ酸塩である。
【0037】
他の実施形態において、式Iaの化合物は、(L)−リンゴ酸塩である。
【0038】
他の実施形態において、化合物1は、(D)−リンゴ酸塩である。
【0039】
他の実施形態において、化合物1は、リンゴ酸塩である。
【0040】
他の実施形態において、化合物1は、(L)−リンゴ酸塩である。
【0041】
別の実施形態において、リンゴ酸塩は、米国特許出願第61/325095号に開示されるように、化合物1の(L)リンゴ酸塩および/または(D)リンゴ酸塩の結晶性N−1型またはN−2型である。また、化合物1のリンゴ酸塩のN−1および/またはN−2の結晶形態を含む結晶性光学異性体の特性については、国際公開第WO2008/083319号(参照によりその全体が組み込まれる)を参照のこと。そのような形態を作製し、特徴付けるための方法は、国際公開PCT/米国特許第10/021194号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において十分に記載されている。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、NSCLCを逆転または阻害するための方法に関し、本方法は、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、治療有効量の式Iの化合物をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。特定の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1である。
【0043】
別の実施形態において、KIF5B−RET融合陽性のNSCLCを逆転または阻害するための方法に関し、本方法は、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、治療有効量の式Iの化合物をそのような治療を必要とする患者に投与することを含む。特定の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1である。
【0044】
別の実施形態において、式Iの化合物は、1つ以上の他の治療の前、同時に、その後に投与される。別の実施形態において、式Iの化合物は、1つ以上の他の治療の後に投与される。「治療」は、外科手術、化学療法剤、ホルモン療法、抗体、免疫療法、放射性ヨード療法、および放射線を含む治療選択のうちのいずれかが当業者に利用可能であることを意味する。とりわけ、「治療」は、別の化学療法剤または抗体を意味する。
【0045】
したがって、別の実施形態において、式Iの化合物は、シスプラチンおよび/またはゲムシタビン治療後に投与される。
【0046】
別の実施形態において、式Iの化合物は、ドエクタクセル(doectaxel)治療後に投与される。
【0047】
別の実施形態において、式Iの化合物は、HER−2抗体治療後に投与される。別の実施形態において、HER−2抗体は、トラスツズマブである。
【0048】
別の実施形態において、式Iの化合物は、シスプラチンおよび/またはゲムシタビンおよび/またはドセタキセル治療後に投与される。
【0049】
別の実施形態において、式I、Ia、もしくは化合物1の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、錠剤またはカプセル剤として1日1回経口投与される。これらのおよび他の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1である。
【0050】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、カプセル剤または錠剤として経口投与される。
【0051】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、最大100mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0052】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、100mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0053】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、95mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0054】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、90mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0055】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、85mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0056】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、80mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0057】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、75mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0058】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、70mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0059】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、65mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0060】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、60mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0061】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、55mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0062】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、50mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0063】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、45mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0064】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、40mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0065】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、30mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0066】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、25mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0067】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、20mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0068】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、15mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0069】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、10mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0070】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、5mgの化合物1を含有するカプセル剤または錠剤として1日1回経口投与される。
【0071】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、以下の表に提供される錠剤として1日1回経口投与される。
【0072】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、以下の表に提供される錠剤として1日1回経口投与される。
【0073】
別の実施形態において、化合物1は、その遊離塩基またはリンゴ酸塩として、以下の表に提供される錠剤として1日1回経口投与される。
【0074】
上記に提供される錠剤製剤のうちのいずれも、所望の化合物1の用量に応じて調節することができる。したがって、製剤成分のそれぞれの量は、前節に提供される様々な量の化合物1を含有する錠剤製剤を提供するために比例して調節することができる。別の実施形態において、製剤は、20、40、60、または80mgの化合物1を含有することができる。
【0075】
これらのおよび他の実施形態において、本発明は、哺乳動物における異常細胞の成長の進行を阻害する、または逆転させるための方法を提供し、本方法は、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、異常細胞の成長は、KIF5B−RETによって媒介される癌である。一実施形態において、この癌は、肺腺癌である。別のものにおいて、肺腺癌は、非小細胞肺癌である。別の実施形態において、肺腺癌は、KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌である。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、化合物1またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物として投与される。別の実施形態において、式Iの化合物は、別の形態の治療後に投与される。別の実施形態において、化合物1は、シスプラチンおよび/またはゲムシタビン治療後に投与される。別の実施形態において、化合物1は、ドエクタクセル(doectaxel)治療後に投与される。別の実施形態において、化合物1は、シスプラチンおよび/またはゲムシタビンおよび/またはドセタキセル治療後に投与される。
【0076】
投与
純粋な形態で、または適切な薬学的組成物での式I、式Ia、もしくは化合物1の化合物、またはその薬学的に許容される塩の投与は、同様の有用性を提供するための許容される投与様式または薬剤のうちのいずれかによって実行することができる。したがって、投与は、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、軟質カプセルおよび硬質ゼラチンカプセル(カプセル剤または錠剤であってもよい)、粉末、溶液、懸濁液、またはエアロゾル等の固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体の剤形で、特に、正確な投与量の単純投与に好適な単位剤形で、例えば、経口的、経鼻的、非経口的(静脈内、筋肉内、または皮下)、局所的、経皮的、膣内、膀胱内、槽内(intracistemally)、または経直腸的であってもよい。
【0077】
組成物は従来の薬学的担体または賦形剤、および活性薬剤として式Iの化合物を含み、さらに、担体および補助剤等を含んでもよい。
【0078】
アジュバントは、保存剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、乳化剤、および分散剤を含む。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤および抗真菌剤によって確実にすることができる。また、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム等を含むことが望ましい場合がある。注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等の吸収を遅延させる薬剤の使用によってもたらすことができる。
【0079】
必要に応じて、式Iの化合物の薬学的組成物はまた、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエン等の、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤等の少量の補助物質を含有してもよい。
【0080】
組成物の選択は、薬剤投与様式(例えば、経口投与については、錠剤、丸剤、またはカプセル形態の製剤)および薬剤物質の生物学的利用能等の様々な要因に依存する。近年、表面積の増加、すなわち、粒径の減少によって生物学的利用能を増加させることができるという原理に基づいて、薬学的組成物が、生物学的利用能に劣る薬剤に対して特に開発された。例えば、米国特許第4,107,288号は、活性物質が巨大分子の架橋マトリックスに支持された、10〜1,000nmの範囲のサイズの粒子を有する薬学的組成物を記載している。米国特許第5,145,684号は、薬剤物質が表面改質剤の存在下でナノ粒子(400nmの平均粒径)に微粉砕され、次いで、液体媒体中に分散させて、非常に高い生物学的利用能を示す薬学的組成物を得る薬学的組成物の製造を記載している。
【0081】
非経口的注射に適した組成物は、生理学的に許容される水性または非水性の滅菌溶液、分散液、懸濁液、または乳剤、および滅菌した注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油等)、ならびにオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材の使用によって、分散液の場合には要求される粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0082】
特定の一投与経路は、治療される疾患状態の重症度に応じて調整することができる便利な毎日の投薬レジメンを使用する経口投与である。
【0083】
経口投与のための固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末、および顆粒が含まれる。そのような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム等の少なくとも1つの不活性の通常の賦形剤(または担体)、または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、(b)結合剤、例えば、セルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアガム、(c)湿潤剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウム、(h)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイト、ならびに(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤も含み得る。
【0084】
上述の固形剤形は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、ならびに当技術分野で周知の他のものを用いて調製することができる。それらは、安定化剤を含有してもよく、それらが、遅延化する様式で、腸管の特定の部分で活性化合物または化合物を放出させるような組成物であり得る。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。活性化合物はまた、適切であるならば、1つ以上の上述した賦形剤と共に、マイクロカプセル化形態であり得る。
【0085】
経口投与される液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。そのような剤形は、例えば、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに任意の製薬用アジュバントを、担体、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等;溶解剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド;油、特に綿実油、ラッカセイ油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、およびソルビタンの脂肪酸エステル;またはこれらの物質の混合物に溶解または分散すること等によって調製され、それによって、溶液または懸濁液を形成する。
【0086】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロオキシド、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物を含んでもよい。
【0087】
直腸投与のための組成物は、例えば、式Iの化合物と、通常の温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって適切な体腔で溶解し、そこで活性成分を放出する、例えば適切な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、もしくは坐薬ワックスとを混合することにより調製可能な坐薬である。
【0088】
式Iの化合物の局所適用のための剤形には、軟膏、パウダー、スプレー、および吸入剤が含まれる。活性成分は、生理学的に許容される担体、および必要な場合は任意の保存剤、緩衝液、または噴霧剤と滅菌条件下で混合される。眼用調製物、眼用軟膏、パウダー、および溶液もまた、本開示の範囲内に入ることが企図される。
【0089】
圧縮ガスを用いて、式Iの化合物をエアロゾル形態に分散させることができる。この目的に好適な不活性ガスは、窒素、二酸化炭素等である。
【0090】
一般に、意図される投与様式に応じて、薬学的に許容される組成物は、式Iの化合物(複数可)またはその薬学的に許容される塩を約1重量%〜約99重量%、および好適な薬学的賦形剤を99重量%〜1重量%含むであろう。一例において、本組成物は、式I、式Ia、もしくは化合物1の化合物(複数可)、またはその薬学的に許容される塩が約5重量%〜約75重量%の間であり、残りが好適な薬学的賦形剤である。
【0091】
そのような剤形を調製するための実際の方法は、当業者に知られているか、または明らかであり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)を参照されたい。投与される組成物は、いずれにしても、本開示の教示に従い、疾患状態の治療のために治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0092】
本開示の組成物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、使用される特定の化合物の活性、化合物の代謝安定性および作用期間の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排出速度、薬剤の組み合わせ、特定の疾患状態の重症度、および治療を受けている宿主を含む多様な要因に応じて変化するであろう、治療有効量で投与される。式I、式Ia、または化合物1の化合物は、1日当たり約0.1〜約1,000mgの範囲の投薬量レベルで患者に投与することができる。約70キログラムの体重の正常なヒトの成人の場合、例えば投薬量は、1日体重1キログラム当たり約0.01〜約100mgの範囲とされる。しかしながら、使用される特定の投薬量は変わり得る。例えば、投薬量は、患者の必要性、治療される状態の重症度、および使用される化合物の薬理学的活性を含む多くの要因に依存し得る。特定の患者への最適量の決定法は、当業者にはよく知られている。
【0093】
他の実施形態において、式I、式Ia、または化合物1の化合物は、他の癌治療と同時に患者に投与することができる。そのような治療には、他の癌化学療法、ホルモン補充療法、放射線療法。または免疫療法が含まれる。他の治療法の選択は、化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与様式および時間、排出速度、薬剤の組み合わせ、特定の疾患状態の重症度、および治療を受けている宿主を含む多くの要因に依存する。
【0094】
別の態様において、本発明は、KIF5B−RET融合陽性のNSCLC等のRET融合関連疾患を検出、診断、および治療するための方法を提供する。そのような障害の検出および診断のための方法を本明細書でさらに詳細に記載する。これらの障害の治療は、KIF5B−RET融合陽性のNSCLC等のRET融合関連疾患を有すると特定または診断されている患者への、治療有効量の、式Iの化合物もしくは式Iの化合物のリンゴ酸塩または式Iの化合物の別の薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物の投与によりさらに良好に達成することができ、特定の実施形態において、式Iの化合物は、化合物1または化合物1のリンゴ酸塩であることを含む。RET融合の説明が以下に続く。
【0095】
RETおよびKIF5B
検出、診断の方法、検出および診断のためのキット、スクリーニングの方法、治療および予防の方法、肺癌患者のための様々な療法、治療剤および他の薬学的成分の有効性を測定するための方法を含むRETタンパク質、KIF5Bタンパク質、KIF5B−RET融合(または単に「融合タンパク質および核酸」と呼ばれる場合がある)は、以下に記載される様々な治療と組み合わせて使用することができる。
【0096】
RETタンパク質は、膜貫通受容体チロシンキナーゼである。RETは、細胞外領域(カドヘリン様ドメインを含有する)、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを含有する細胞内領域からなる。RETタンパク質は、共受容体およびリガンド、例えばグリア由来神経栄養因子(GDNF)等と結合することによって二量化するとき、自動リン酸化反応によって活性化し、次いで、下流シグナル伝達経路をシミュレートする。
【0097】
RETタンパク質は、ヒト等の哺乳動物に由来し得る。ヒトRETタンパク質をコードするヒトRET遺伝子は、染色体10(10q11.2)に局在化され、変異体に応じて19〜21エクソンを含有する。ヒトRETタンパク質は、ヒトRET遺伝子によってコードされ得る。RETタンパク質のC末端ドメインは、RET遺伝子の12番目のエクソンから最後のエクソン(例えば、20番目のエクソン)のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含み得る。RETタンパク質のC末端ドメインは、12番目のエクソンの出発位置から連続して少なくとも約300個のアミノ酸を含み得る。例えば、RETタンパク質のC末端ドメインは、12番目のエクソンの出発位置(例えば、713番目の位置)からRETタンパク質(20エクソン)のC末端に向かって、約300〜約450個のアミノ酸、連続して約300〜約420個のアミノ酸、または連続して約300〜約402個のアミノ酸を含み得る。
【0098】
キネシン−1重鎖とも呼ばれるKIF5Bタンパク質は、KIF5B遺伝子によってコードされるタンパク質である。KIF5Bタンパク質は、ヒト等の哺乳動物に由来し得る。ヒトKIF5Bタンパク質をコードするヒトKIF5B遺伝子は、染色体10(10q11.22)に局在化され、26個のエクソンを含有する。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインは、KIF5B遺伝子の1番目のエクソンから16番目のエクソン、または1番目のエクソンから15番目のエクソン、または1番目のエクソンから23番目のエクソンのポリヌクレオチドによってコードされたアミノ酸を含み得る。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインは、KIF5Bタンパク質の1番目のエクソンから連続して少なくとも約329個のアミノ酸(つまり、少なくとも1番目から329番目の位置のアミノ酸配列)を含み得る。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインは、KIF5Bタンパク質の329番目の位置のアミノ酸から開始する少なくとも2つの二重コイルドメインをさらに含み得る。例えば、さらに含まれるこの2つの二重コイルドメインは、KIF5Bタンパク質の第20の位置の329番目から638番目のアミノ酸配列を有し得る。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインは、KIF5Bタンパク質の第1の位置から連続して約329〜900個のアミノ酸、連続して約329〜700個のアミノ酸、連続して約329〜650個のアミノ酸、または連続して約329〜638個のアミノ酸を含み得る。
【0099】
KIF5B−RET融合は、染色体10上に逆転または転座によるRET関連の染色体再配置である。融合タンパク質は、当業者に既知のまたは本明細書に記載される様々な方法を使用して検出および検証される。次いで、活性成分として、融合タンパク質に対する少なくとも1つの阻害剤、融合タンパク質をコードする融合遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、RETをコードする遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む式Iの組成物が、肺癌を予防または治療するために記載されている。
【0100】
融合タンパク質において、融合または融合領域は、KIF5B遺伝子とRET遺伝子の様々なエクソン間で生じ得る。多くの融合が当業者に知られている。そのような融合の例には、KIF5B遺伝子の20番目または16番目のエクソンおよびRET遺伝子の12番目のエクソンが含まれ、これは融合点または切断点と呼ばれる。他のRETおよびKIF5Bの融合または切断点が知られている。「融合領域」という用語は、融合点周辺のポリヌクレオチド断片(約30ヌクレオチド)またはポリペプチド断片(約30アミノ酸)を指し得る。
【0101】
他の変異体では、融合タンパク質は、以下のうちのいずれかとして記載される。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインが、本質的には、NCBIによって記載されるKIF5Bタンパク質の第1の位置から連続して少なくとも約329個のアミノ酸からなる。KIF5Bタンパク質のN末端ドメインでが、KIF5Bタンパク質の第329の位置のアミノ酸から開始する少なくとも2つのKIF5B二重コイルドメインを含む、融合タンパク質。KIF5Bタンパク質のN末端ドメイン20が、本質的には、NCBIによって記載されるように、1番目のエクソンから16番目のエクソンのポリヌクレオチド、または1番目のエクソンから15番目のエクソン、または1番目のエクソンから23番目のエクソンのポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなる、融合タンパク質。染色体10上の他の既知のRET融合には、エクソン15、16、22、23、24におけるKIF5Bを含み、すべては、エクソン12におけるRETを伴うもの、エクソン24におけるKIF5Bおよびエクソン11ならびにエクソン8におけるRETを含む。全てが染色体10上にある、エクソン1におけるCCDC6およびエクソン12におけるRET、エクソン6におけるNCOA4およびエクソン12におけるRET、ならびにエクソン14におけるTRIM33およびエクソン12におけるRETは、既知のRET融合である。エクソン12におけるRETを伴うエクソン14におけるTRIM33は、肺癌に関与し、このタイプの癌は、カボザンチニブ投与に対してよく応答することが知られている。Cancer Discovery,Alexander Drilon,Lu Wang,Adnan Hasanovic,et al.,Published OnlineFirst March 26,2013、DOI:10.1158/2159−8290.CD−13−0035、2013年6月の米国癌研究学会を参照のこと。
【0102】
一実施形態において、融合タンパク質は、RETタンパク質のC末端ドメインが、本質的に、融合タンパク質の12番目のエクソンに対応するアミノ酸の出発位置からRETタンパク質のC末端に向かって連続して約300〜450個のアミノ酸からなる。
【0103】
本明細書に使用される、エクソン番号は、NCBIによって割り当てられたエクソン番号に従って番号付けされる。融合タンパク質KIF5B−RETは、NCBIによってそのようなものとして特定されるアミノ酸配列のうちのいずれかを有し得る。DNA分子のヌクレオチド配列およびDNA分子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列は、自動化DNAシーケンサーまたは自動化ペプチドシーケンサーによって決定され得る。そのような自動化配列決定手段によって決定された(ヌクレオチドまたはアミノ酸)配列は、実際の配列と比較して部分的な誤差を含み得る。通常、自動化配列決定によって決定された配列は、実際の配列と比較して、少なくとも約90%、少なくとも20の約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%の配列同一性を有し得る。したがって、融合タンパク質、融合遺伝子、または融合領域は、NCBIによってそのようなものとして特定される配列と比較して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%の配列同一性を有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有し得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、KIF5Bの638個のN末端残基およびRETの402個のC末端残基からなり得る。融合遺伝子は、二重コイルドメインと一緒にタンパク質チロシンキナーゼドメインを有する。二重コイルドメインは、自動リン酸反応によって発癌性タンパク質チロシンキナーゼドメインを活性化するであろうホモ二量化を誘導する。KIF5Bは、その活性プロモーターにより普遍的に発現する微小管ベースのモータータンパク質であり、真核細胞中の細胞小器官の輸送に関与する。つまり、KIF5B−RET融合遺伝子は、高度に発現し、KIF5Bにより翻訳後二量化され得る。次いで、二量化されたRETタンパク質チロシンキナーゼドメインは、異常に刺激を受け、そのため、発癌性経路の刺激を促進し得る。
【0105】
一旦融合が検出されると、それは、KIF5B−RETの融合タンパク質をコードするKIF5B−RETの融合遺伝子として知られることとなる。対象から得られた試験試料において本明細書に記載される融合を検出するステップを含む、肺癌を診断するために情報を提供する方法。診断は、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を比較し得、癌を有しない個体からの標準試料と比較した、RETの過剰発現は、少なくとも1つの要素が試験試料中で選択され、検出されるとき、対象が、癌患者、肺癌患者、NSCLC肺癌患者、RET融合関連NSCLC患者、および/またはKIF5B−RET融合関連NSCLC患者のうちのいずれかまたはすべてとして特定されるのを可能にする。
【0106】
染色体10の反転は、染色体10における反転領域(への相補的結合)によりハイブリダイズすることができる、例えば、染色体10における反転領域を含む連続する100〜200個のヌクレオチドを有するポリヌクレオチド断片を産生することができるポリヌクレオチド(プローブ)および/または染色体10の反転を検出することができるプライマー対を使用することによって検出し得る。融合タンパク質、融合遺伝子、および融合領域が、本明細書に記載される。具体的な実施形態において、融合タンパク質はまた、融合タンパク質または融合遺伝子または融合遺伝子に対応するmRNAの存在を検出することによっても検出され得る。
【0107】
融合タンパク質の存在は、融合タンパク質と融合タンパク質に特異的に結合する材料(例えば、抗体またはアプタマー)との間の相互作用を測定する一般的なアッセイによって検出され得る。一般的なアッセイは、イムノクロマトグラフィー、免疫組織化学染色法、酵素結合(liked)免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、発光イムノアッセイ(LIA)、ウエスタンブロット法、FACS等であり得る。
【0108】
加えて、融合遺伝子またはmRNAの存在は、融合遺伝子またはmRNA(への相補的結合)でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを使用して、PCR、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)等の一般的なアッセイによって検出され得る。FISHは、以下にさらに詳細に記載される。融合遺伝子は、超並列シークエンシング技術を通して全トランスクリプトーム(RNA)および/または全ゲノムDNAシークエンシングの積分技法を使用することによって検出および/または検証され得る。融合遺伝子またはmRNAでハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、siRNA、オリゴヌクレオチド、DNAプローブ、またはDNAプライマーであり得、試験試料中の融合もしくは切断遺伝子または転写物を用いた直接ハイブリダイゼーションによって融合遺伝子またはmRNAを検出することができる。
【0109】
FISHアッセイは、1つ以上のプローブセットを使用して行うことができ、実施形態は、例えば、(1)RET遺伝子を含む染色体部位(第1染色体部位)を標的とした第1のプローブセットであって、第1の蛍光物質で標識されたプローブ1Aと第2の蛍光物質で標識されたプローブ1Bとからなり、プローブ1Aは、前述の第1染色体部位内の5′領域である第1の領域に相補的であり、プローブ1Bは、前述の第1の領域からの距離で存在し、前述の第1染色体部位内の3′領域である第2の領域に相補的であり、KIF5BとRET遺伝子の間の転座によってKIF5B−RET融合遺伝子が生成するときのRET遺伝子における切断点が、前述の第1の領域の3′末端部、前述の第1の領域と第2の領域の間、または前述の第2の領域の5′末端部に位置する、第1のプローブセット、(2)KIF5B遺伝子を含む染色体部位(第2染色体部位)を標的とした第2のプローブセットであって、第1の蛍光物質で標識されたプローブ2Aと第2の蛍光物質で標識されたプローブ2Bとからなり、プローブ2Aは、前述の第2染色体部位内の5′領域である第1の領域に相補的であり、プローブ2Bは、前述の第1の領域からの距離で存在し、前述の第2染色体部位内の3′領域である第2の領域に相補的であり、KIF5BとRET遺伝子の間の転座によってKIF5B−RET融合遺伝子が生成するときのKIF5B遺伝子における切断点が、前述の第1の領域の3′末端部、前述の第1の領域と第2の領域の間、または前述の第2の領域の5′末端部に位置する、第2のプローブセット、(3)前述のプローブ2Aと前述のプローブ1Bとからなる第3のプローブセット、ならびに(4)RET遺伝子を含む染色体部位(第3染色体部位)に相補的であるプローブ4AとKIF5B遺伝子を含む染色体部位(第4染色体部位)に相補的であるプローブ4Bとからなる第4のプローブセット、等が提供される。
【0110】
前述の第1染色体部位の長さは、0.5〜2.0Mbであり得る。前述の第2染色体部位の長さは、0.5〜2.0Mbであり得る。前述の第3染色体部位の長さは、0.5〜2.0Mbであり得る。前述の第4染色体部位の長さは、0.5〜2.0Mbであり得る。
【0111】
KIF5BとRET遺伝子の間の転座を検出するためのキットは、1つ以上のプローブセットを含むことができる。(1)第1のプローブセットは、第1の蛍光物質で標識されたプローブ1Aと第2の蛍光物質で標識されたプローブ1Bとを含み、プローブ1Aは、前述の第1染色体部位内の5′領域である第1の領域に相補的であり、プローブ1Bは、前述の第1の領域からの距離で存在し、前述の第1染色体部位内の3′領域である第2の領域に相補的であり、KIF5BとRET遺伝子の間の転座によってKIF5B−RET融合遺伝子が生成するときのRET遺伝子における切断点が、前述の第1の領域の3′末端部、前述の第1の領域と第2の領域の間、または前述の第2の領域の5′末端部に位置する、(2)KIF5B遺伝子を含む染色体部位(第2染色体部位)を標的とした第2のプローブセットであって、第1の蛍光物質で標識されたプローブ2Aと第2の蛍光物質で標識されたプローブ2Bとからなり、プローブ2Aは、前述の第2染色体部位内の5′領域である第1の領域に相補的であり、プローブ2Bは、前述の第1の領域からの距離で存在し、前述の第2染色体部位内の3′領域である第2の領域に相補的であり、KIF5BとRET遺伝子の間の転座によってKIF5B−RET融合遺伝子が生成するときのKIF5B遺伝子における切断点が、前述の第1の領域の3′末端部、前述の第1の領域と第2の領域の間、または前述の第2の領域の5′末端部に位置する、第2のプローブセット、(3)前述のプローブ2Aと前述のプローブ1Bとからなる第3のプローブセット、ならびにRET遺伝子を含む染色体部位(第3染色体部位)に相補的であるプローブ4AとKIF5B遺伝子を含む染色体部位(第4染色体部位)に相補的であるプローブ4Bとからなる第4のプローブセット。
【0112】
RET−KIF5Bの転座に対して感受性を示す患者を特定するのに有用なキットは、プローブの使用についての説明、DNA対比染色剤、ハイブリダイゼーション用緩衝液、封入剤、コントロールスライドを含む群から選択される1つ以上の要素を含む。このキットは、本発明の検出方法を適宜かつ有効に企図することを可能にする。このキットは、必要要素(必須要素)として、前述の第1のプローブセット、第2のプローブセット、第3のプローブセット、または第4のプローブセットを含むことができる。また、2つ以上のタイプのプローブセットもキットに含むことができる。例えば、このキットは、第1のプローブセットおよび第3のプローブセットを組み込むことができる。それぞれのプローブセットについての詳細は上で記載されているので、ここでは繰り返さない。
【0113】
「KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在または不在の検出」は、前述の融合ポリペプチドまたはゲノムDNAからの転写物をコードするゲノムDNAを使用して直接的に行うことができるが、その転写物(前述の融合ポリペプチド)からの翻訳産物を使用して直接的に行われ得る。
【0114】
融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAが10p11.2領域と10q11.2領域の間の反転によって形成されるため、この反転の現象は、「KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在または不在の検出」において検出され得る。この反転の検出では、例えば、RET遺伝子のキナーゼドメインコード領域よりも5′側の上流領域とRET遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域との間の分裂が検出され得るか、またはカドヘリン反復をコードする領域とRET遺伝子のコード領域よりも5′側の上流領域とRET遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域との間の分裂が検出され得るか、または二重コイルドメインの一部もしくはすべてのコード領域とKIF5B遺伝子のコード領域よりも5′側の上流領域とKIF5B遺伝子の二重コイルドメインのコード領域よりも3′側の下流領域との間の分裂が検出され得る。
【0115】
当業者に知られており、利用可能な技術は、本発明において「KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在または不在の検出」において使用され得る。「前述の融合ポリペプチドをコードするゲノムDNA」が対象物である場合、例えば、蛍光等を用いたin situハイブリダイゼーション(ISH)、ゲノムPCR、直接配列決定、サザンブロット法、またはゲノムマイクロアレイが使用され得る。「前述のゲノムDNAからの転写物」が対象物である場合、例えば、RT−PCR、直接配列決定、ノーザンブロット法、ドットブロット法、またはcDNAマイクロアレイ分析が使用され得る。
【0116】
本発明のキットはまた、他の要素も含むことができる。これらの他の要素の例は、プローブの使用についての仕様書、DAPI等のDNA対比染色液、ハイブリダイゼーション用緩衝液、洗浄緩衝液、溶媒、封入剤(mounting media)、コントロールスライド、反応容器、および他の器具である。また、診断目的の仕様書も含むことができる。さらに、どのようにして癌患者からの染色体試料におけるKIF5B−RET転座の検出(陽性同定)が、RETキナーゼ阻害剤を使用してこれらの患者において設定されるべきかを示す仕様書等もまた、含むことができる。さらに、この計画の治療コースおよび説明を決定するための計画もまた、含むことができる。
【0117】
比較的長いプローブ(約200kb(プローブ1A)〜約1,370kb(プローブ4B)が企図される。したがって、プローブと標的配列との間の相補性は、本発明において意図される特異的なハイブリダイゼーションが達成され得る限り、完全に制限される必要はない。標的配列間の類似性の一例は、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%である。
【0118】
第1のプローブセットおよび第2のプローブセットが使用される場合は、KIF5B遺伝子とRET遺伝子の間で転座が生じる染色体試料では、2つの蛍光シグナルが離れて別々に検出され、転座が生じなかった染色体試料では、典型的には、2つの蛍光シグナルが近接して観察されるか、または2つの蛍光シグナルの組み合わせであるシグナル(黄色)が観察される。したがって、KIF5B遺伝子とRET遺伝子の間の転座の有無は、蛍光シグナルのパターンに反映される。このため、KIF5B遺伝子とRET遺伝子の間の転座は、蛍光シグナルのパターンから判定することができる。
【0119】
上述の判定は、好ましくは、典型的には、対照(試験試料)との結果の比較に基づいて行われる。ここで、対照は、非小細胞肺癌に罹患している患者由来の染色体試料または前癌性の病変を示す患者由来の染色体試料である。加えて、前癌性の病変がない患者由来の染色体試料、癌に罹患していない患者由来の染色体試料、または正常な健常者から採取された染色体試料もまた、対照として使用することができる。また、細胞株由来の染色体試料も、対照として使用することができる。
【0120】
融合遺伝子がKIF5B−RETの融合タンパク質をコードする融合遺伝子KIF5B−RETであるとき、融合遺伝子KIF5B−RETは、融合領域(への相補的結合)でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド(プローブ)および/または融合領域を含む連続的な100〜200ヌクレオチドを有するポリヌクレオチド断片を生成することができるプライマー対を使用することによって検出され得る。加えて、融合タンパク質KIF5B−RETは、融合タンパク質KIF5B−RETの融合領域に特異的に結合する抗体またはアプタマーを使用して検出され得る。
【0121】
加えて、検出は、発色性in situハイブリダイゼーション(CISH)方法および銀in situハイブリダイゼーション(SISH)方法である融合アッセイによって行うことができる。本出願での「融合点」とは、KIF5Bのそれぞれの遺伝子由来の一部がRET遺伝子由来の一部と融合される点を指す。
【0122】
「融合領域(または反転領域)でハイブリダイズすることができる」という用語は、相補配列または融合領域(または反転領域)の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を指す。別の実施形態は、融合領域でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、融合領域を含む連続して100〜200ヌクレオチドを有するポリヌクレオチド断片を生成することができるプライマー対からなる群から選択される1つ以上を含む、癌を診断するための組成物を提供する。また、染色体10において反転領域でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド、染色体10の反転領域を含む連続して100〜200ヌクレオチドを有するポリヌクレオチド断片を生成することができるプライマー対、および融合領域に結合する抗体またはアプタマー。別の実施形態は、癌を診断するために、融合タンパク質および/または融合遺伝子の使用を提供する。患者は、任意の哺乳動物、例えば、ヒトまたはサル等の霊長類、マウスまたはラット等の齧歯動物、とりわけ、ヒトであり得る。言及される任意のアッセイで使用するのに適している試験試料は、細胞(例えば、肺細胞)、組織(例えば、肺組織)、体液(例えば、血液)、循環腫瘍DNA、循環腫瘍細胞であり得る。この試料は、腫瘍の外科生検、腫瘍のコア生検、腫瘍の微細針吸引、胸膜滲出液、細胞を分離する他の既知の方法、および患者由来の細胞および組織を分離する他の既知の方法を含む、当業者に既知の任意の様式で収集され得る。例えば、FISHアッセイ(本明細書に記載される)は、循環腫瘍細胞において行われ得る。
【0123】
患者は、キナーゼ阻害剤による治療を受けている、または治療される予定を有するものであり得る。試験試料は、ヒト癌細胞由来の細胞またはその抽出物を含み得る。
【0124】
別の実施形態は、5′末端で融合パートナーの位置のN末端ドメインをコードする遺伝子および3′末端でRETタンパク質の位置のC末端ドメインをコードする遺伝子である、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を提供する。具体的な実施形態において、融合タンパク質がKIF5B−RETタンパク質であるとき、融合遺伝子は、5′末端でKIF5Bの位置のN末端ドメインをコードする遺伝子および3′末端でRETタンパク質の位置のC末端ドメインをコードする遺伝子であるKIF5B−RET遺伝子として表され得る。
【0125】
別の実施形態は、融合遺伝子、および任意に、融合遺伝子に作動可能に連結した転写要素(例えば、プロモーター等)を含む、発現ベクターを提供する。別の実施形態は、発現ベクターで形質転換された形質転換細胞を提供する。
【0126】
治療または診断(生検試料等)のコースで得られた生物学的標本は、多くの場合、ホルマリンで固定されるが、この場合、in situハイブリダイゼーションの使用が、検出対象物であるDNAゲノムがホルマリン固定下で安定し、検出感度が高いため、有利である。
【0127】
in situハイブリダイゼーションにおいて、生物学的標本中のKIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAは、少なくとも15塩基の鎖長を有する下述の(a)または(b)のポリヌクレオチドをハイブリダイズすることによって検出することができる:
(a)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブからなる群から選択する少なくとも1つのプローブであるポリヌクレオチド
(b)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドの融合部位にハイブリダイズするプローブであるポリヌクレオチド。
【0128】
しかしながら、遺伝子のDNA配列は、自然界(つまり、非人工的)に突然変異し得る。したがって、そのような自然変異体はまた、本発明の(以下、同様に)対象物であり得る。
【0129】
本発明の(a)に述べられたポリヌクレオチドは、KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはそのポリヌクレオチドの標的塩基配列であるRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズすることによって、それが生物学的標本において前述のKIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAの存在を検出することができる場合、任意であり得る。それは、好ましくは、以下の(a1)〜(a4)に述べられたポリヌクレオチドである。
【0130】
(a1)二重コイルドメインの一部またはすべてのコード領域およびKIF5B遺伝子のコード領域よりも5′側の上流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5′KIF5Bプローブ1」とも称される)と、キナーゼドメインのコード領域およびRET遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3′RETプローブ1」とも称される)との組み合わせ
【0131】
(a2)RET遺伝子のキナーゼドメインのコード領域よりも5′側の上流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5′RETプローブ1」とも称される)と、RET遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3′RETプローブ1」とも称される)との組み合わせ
【0132】
(a3)カドヘリン反復のコード領域とRET遺伝子のコード領域よりも5′側の上流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5′RETプローブ2」とも称される)と、RET遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3′RETプローブ2」とも称される)との組み合わせ
【0133】
(a4)二重コイルドメインの一部またはすべてのコード領域およびKIF5B遺伝子のコード領域よりも5′側の上流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「5′KIF5Bプローブ1」とも称される)と、KIF5B遺伝子のコード領域よりも3′側の下流領域にハイブリダイズするポリヌクレオチド(以下、「3′KIF5Bプローブ1」とも称される)との組み合わせ。
【0134】
in situハイブリダイゼーションにおいて使用される(a1)のポリヌクレオチドへの領域(標的塩基配列)は、標的塩基配列への特異性および検出感度のため、好ましくは、KIF5B遺伝子およびRET遺伝子の融合部位から1,000,000塩基以内の領域であり、in situハイブリダイゼーションにおいて使用される(a2)〜(a4)のポリヌクレオチドへの領域は、同じ理由のため、好ましくは、KIF5B遺伝子またはRET遺伝子において、切断点から1,000,000塩基以内の領域である。
【0135】
in situハイブリダイゼーションに使用される上記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドは、標的塩基配列への特異性および検出の感度から前述の標的塩基配列のすべてを網羅することができる複数種のポリペプチドからなる集団であることが好ましい。この場合、集団を構成するポリヌクレオチドの長さは、少なくとも15塩基、好ましくは、100〜1000塩基である。
【0136】
in situハイブリダイゼーションに使用される上記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドは、好ましくは、検出のため、蛍光色素等によって標識される。そのような蛍光色素の例としては、DEAC、FITC、R6G、TexRed、およびCy5が挙げられるが、これらに限定されない。また、蛍光色素以外にDAB等の色素(色原体)または酵素的金属沈着に基づく銀等によって、前述のポリヌクレオチドを標識してもよい。
【0137】
in situハイブリダイゼーションにおいて、5′KIF1Bプローブ1および3′RETプローブ1が使用される場合、または5′RETプローブ1および3′RETプローブ1が使用される場合、または5′RETプローブ2および3′RETプローブ2が使用される場合、または5′KIF1Bプローブ1および3′KIF1Bプローブ1が使用される場合、これらのプローブは互いに異なる色素により標識されることが好ましい。このように異なる色素で標識されたプローブの組み合わせを用いてin situハイブリダイゼーションが行われるとき、5′KIF1Bプローブ1の標識が発するシグナル(例えば、蛍光)と3′RETプローブ1の標識が発するシグナルとが重なるとき、KIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出したと判定することができる。一方、5′RETプローブ1の標識が発するシグナルと3′RETプローブ1の標識が発するシグナルとが分離するとき、または5′RETプローブ2の標識が発するシグナルと3′RETプローブ2の標識が発するシグナルとが分離するとき、または5′KIF1Bプローブ1の標識が発するシグナルと3′KIF1Bプローブ1の標識が発するシグナルとが分離するとき、KIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出したと判定することができる。
【0138】
ポリヌクレオチドの標識は、既知の技術によって行われ得る。例えば、ニックトランスレーションまたはランダムプライム法により蛍光色素等によって標識された基質塩基は、ポリヌクレオチドに取り込ませ、そのポリヌクレオチドを標識され得る。in situハイブリダイゼーションにおいて、上記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドおよび前述の生体試料と、をハイブリダイズするときに使用される条件は、関連するポリヌクレオチドの長さ等の様々な要因により異なり得るが、高ストリンジェンシーなハイブリダイズの条件の一例は、0.2xSSC、65℃であり、低ストリンジェンシーなハイブリダイズの条件の一例は、2.0xSSC、50℃である。前述の条件と同じストリンジェンシーな条件は、当業者が塩濃度(SSCの希釈率)および温度、ならびに界面活性剤(NP−40等)の濃度、ホルムアミドの濃度、およびpH等の様々な条件を適切に選択することによって達成され得ることに留意すべきである。
【0139】
前述のin situハイブリダイゼーション以外に、上記の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドを使用するKIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出するための方法の例は、サザンブロット、ノーザンブロット、およびドットブロットである。これらの方法においては、前述の融合遺伝子は、前述の生物学的標本から得られる核酸抽出物を転写した膜に、上記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドをハイブリダイズさせることによって検出される。(a)のポリヌクレオチドを使用するとき、KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリペプチドとRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリペプチドとが膜上に展開された同じバンドを認識したときに、KIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出することができる。
【0140】
ゲノムマイクロアレイ分析およびDNAマイクロアレイ分析は、上記(b)のポリヌクレオチドを使用して、KIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするゲノムDNAを検出するためのさらなる方法である。これらの方法において、(b)のポリヌクレオチドのアレイを基板上に固定し、アレイ上のポリヌクレオチドと接触する生物学的標本を置くことによって、関連ゲノムDNAを検出する。PCRまたは配列決定において、下記(c)のポリヌクレオチドは、DNA(ゲノムDNA、cDNA)または鋳型として生物学的標本から調製したRNAを使用して、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの一部またはすべてを特異的に増幅させるために使用され得る。(c)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドの融合部位を挟み込むように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド。「一対のプライマーであるポリヌクレオチド」は、標的として作用する前述の融合ポリヌクレオチド等の塩基配列において、片方のプライマーがKIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズし、他方のプライマーがRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプライマーセットである。これらのポリヌクレオチドの長さは、通常、15〜100塩基であり、好ましくは、17〜30塩基である。
【0141】
PCRによる検出の精度および感度の観点から、本発明の(c)に記載のポリヌクレオチドは、好ましくは、KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドの融合部位から5000塩基以内の前述の融合ポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な配列である。
【0142】
「一対のプライマーであるポリヌクレオチド」は、標的として作用するKIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて既知の技術によって適切に設計することができる。「一対のプライマーであるポリヌクレオチド」の有利な例は、KIF5B−RET−F1、KIF5B−int15−F1、KIF5B−int15−F2、KIF5B−ex16−F1、KIF5B−ex23−F1、KIF5B−ex24−F1、KIF5B−F−orf2438、およびKIF5B−int15−F3.5からなる群から選択される1つのプライマーと、KIF5B−RET−R1、RET−int11−R3、RET−int7−R1、RET−int11−R0.5、RET−int11−R1、RET−int7−R2、およびRET−R−orf2364からなる群から選択される1つのプライマーとからなるプライマーセットである。より好ましくは、それは、KIF5B−RET−F1およびKIF5B−RET−R1、KIF5B−int15−F1およびKIF5B−RET−R1、KIF5B−int15−F2およびRET−int11−R3、KIF5B−ex16−F1およびKIF5B−RET−R1、KIF5B−ex23−F1およびKIF5B−RET−R1、またはKIF5B−ex24−F1プライマーおよびRET−int7−R1プライマーである。
【0143】
本発明は、KIF5B−RET融合を特定、評定、または検出する方法;癌、例えば、KIF5B−RET融合を有する癌に罹患している対象を特定、評定、評価、および/もしくは治療する方法;単離されたKIF5B−RET核酸分子、核酸構築物、核酸分子を含む宿主細胞;精製されたKIF5B−RETポリペプチドおよび結合剤;検出試薬(例えば、プローブ、プライマー、抗体、キット、例えば、KIF5B−RET核酸またはタンパク質の特定の検出が可能);5′KIF5B−3′RET融合、例えば、新規の阻害剤と相互作用する、例えば、阻害する分子を特定するためのスクリーニングアッセイ;ならびに、癌、例えば、KIF5B−RET融合を有する癌に罹患している対象を評価、特定、評定、および/または治療するためのアッセイおよびキットを提供する。本明細書で特定される組成物および方法は、例えば、新しいKIF5B−RET阻害剤を特定する、対象、例えば、癌に罹患している患者を評価、特定、または選択するため、ならびに癌を治療または予防するために使用することができる。
【0144】
KIF5B−RET核酸分子。一態様において、本発明は、KIF5B遺伝子の断片およびRETプロトオンコジーンの断片を含む核酸分子(例えば、単離されたまたは精製された)核酸分子を特徴とする。一実施形態において、核酸分子には、融合、例えば、KIF5Bのエクソン(例えば、キネシンモータードメインまたはその断片をコードする1つ以上のエクソン)、およびRETのエクソン(例えば、RETチロシンキナーゼドメインまたはその断片をコードする1つ以上のエクソン)のインフレーム融合が含まれる。
【0145】
一実施形態において、5′KIF5B−3′RET核酸分子は、コードされた5′KIF5B−3′RET融合が、キナーゼ活性を有し、例えば、本明細書に称される癌の細胞中の野生型RETと比較して、活性、例えば、キナーゼ活性を上昇させるように、十分なKIF5Bおよび十分なRET配列を含む。一実施形態において、コードした5′KIF5B−3′RET融合は、KIF5B由来の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、9、10、または11エクソン、および少なくとも1、2、3、4、5、6、7、9、または10のRETエクソンを含む。一実施形態において、コードされた5′KIF5B−3′RET融合ポリペプチドは、キノシンモータードメイン、二重コイルドメイン、またはその機能的断片、およびRETチロシンキナーゼドメインまたはその機能的断片を含む。
【0146】
一実施形態において、核酸分子は、KIF5Bのエクソン15とRETのエクソン12とのインフレーム融合を有するヌクレオチド配列(例えば、染色体10上の11MB挾動原体内の配列)を含む。他の実施形態において、核酸分子は、染色体10のヌクレオチド43,611,042−43,611,118の領域において、ヌクレオチドに結合(例えば、並列)する染色体10の32,316,376−32,316,416の領域内にヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、切断点を含むヌクレオチド配列を含む。例えば、KIF5B−RET融合は、KIF5Bまたはその断片の少なくともエクソン15(例えば、KIF5Bまたはその断片のエクソン1〜15)のRETの少なくともエクソン12(例えば、RETまたはその断片のエクソン12〜20)とのインフレーム融合を含むことができる。ある特定の実施形態において、KIF5B−RET融合は、5′−KIF5Bから3′−RETの構造内にある。一実施形態において、核酸分子は、KIF5B遺伝子のエクソン1〜15、もしくはその断片のヌクレオチド配列、またはそれに実質的に同一である配列を含む。別の実施形態において、核酸分子は、RET遺伝子のエクソン12〜20、もしくはその断片のヌクレオチド配列、またはそれに実質的に同一である配列を含む。
【0147】
他の実施形態において、核酸分子は、KIF5B遺伝子の断片およびRETプロトオンコジーンの断片を含むKIF5B−RET融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、ヌクレオチド配列は、キネシンモータードメインまたはその機能的断片、およびRETチロシンキナーゼドメインまたはその機能的断片を含む、KIF5B−RET融合ポリペプチドをコードする。
【0148】
別の実施形態において、核酸分子は、RET転写物とKIF5B転写物との間の融合接合部を含むKIF5B−RET融合を含む。別の実施形態において、核酸分子は、融合、例えば、RETの少なくともエクソン11またはその断片(例えば、RETのエクソン1〜11またはその断片)、および少なくともエクソン16またはその断片(例えば、KIF5Bまたはその断片のエクソン16〜25)のインフレーム融合を含む。ある特定の実施形態において、KIF5B−RET融合は、5′−RETから3′−KIF5Bの構造内にある。一実施形態において、核酸分子は、RET遺伝子のエクソン1〜11、もしくはその断片のヌクレオチド配列、またはそれに実質的に同一である配列に対応するヌクレオトドを含む。
【0149】
関連する態様において、本発明は、本明細書に記載されるKIF5B−RET核酸分子を含む核酸構築物を特徴とする。ある特定の実施形態において、核酸分子は、天然または異種調節配列に作動可能に連結される。また、本明細書に記載されるKIF5B−RET核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞、例えば、本明細書に記載される核酸分子およびポリペプチドを生成するために適しているベクターおよび宿主細胞も含まれる。
【0150】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合をコードする核酸分子の発現を減少させるまたは阻害する核酸分子を特徴とする。そのような核酸分子の例には、例えば、KIF5B−RETをコードする核酸にハイブリダイズするアンチセンス分子、リボザイム、RNAi、三重らせん分子、またはKIF5B−RETの転写調節領域を含み、KIF5B−RETのmRNA発現を遮断もしくは減少させる。
【0151】
本発明はまた、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合を含む、側面に位置する、それにハイブリダイズする、プローブ、プライマー、おとり、またはライブラリーメンバーとして好適な核酸分子、例えば、核酸断片も特徴とし、これらは、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合を特定するのに有用であるか、別様に本明細書に記載されるKIF5B−RET融合に基づく。ある特定の実施形態において、プローブ、プライマー、またはおとり分子は、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合核酸分子の捕捉、検出、または単離を可能にするオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合核酸分子の断片に実質的に相補的であるヌクレオチド配列を含むことができる。核酸断片、例えば、オリゴヌクレオチドと、標的KIF5B−RET配列との間の配列同一性は、配列が標的配列の捕捉、検出、または単離を可能にするのに十分に相補的である限り、正確である必要はない。一実施形態において、核酸断片は、約5〜25、例えば、10〜20、または10〜15ヌクレオチド長さのオリゴヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーである。他の実施形態において、核酸断片は、約100〜300ヌクレオチド、130〜230ヌクレオチド、150〜200ヌクレオチド、200〜350、350〜950、300〜600、500〜1000、750〜2000、ヌクレオチド00ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含むおとりであるが、必ずしもKIF5B−RET融合核酸を含まない。
【0152】
一実施形態において、核酸断片は、例えば、ハイブリダイゼーションによって、KIF5B−RET融合を特定または捕捉するために使用することができる。例えば、核酸断片は、例えば、ハイブリダイゼーションによって、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合を特定するまたは捕捉するために使用するプローブ、プライマーであり得る。一実施形態において、核酸断片は、KIF5B−RETの切断点を特定するまたは捕捉するために使用するために有用であり得る。1.一実施形態において、核酸断片は、KIF5Bのエクソン15のRETのエクソン12とのインフレーム融合を生成する染色体再配置内のヌクレオチド配列(例えば、染色体10上の11MB挾動原体内の配列)にハイブリダイズする。一実施形態において、核酸断片は、染色体10のヌクレオチド43,611,042〜43,611,118の領域内にヌクレオチドに結合する(例えば、並列する)す染色体10の32,316,376〜32,316,416の領域内でヌクレオチド配列にハイブリダイズする。
【0153】
本明細書に記載されるプローブまたはプライマーは、例えば、FISH検出またはPCR増幅のために使用することができる。検出がPCRに基づいている1つの例示的な実施形態において、KIF5B−RET融合接合点の増幅は、例えば、本明細書に記載されるKIF5B−RET融合接合点、例えば、本明細書に記載される染色体再配置の突然変異体または接合点の側面に位置する配列を増幅するために、プライマーまたはプライマー対を使用して行われ得る。一実施形態において、一対の単離されたオリゴヌクレオチドプライマーは、KIF5B−RET融合における位置を含むまたはそれに隣接する領域を増幅させることができる。例えば、順方向プライマーは、KIF5BゲノムまたはmRNA配列内にヌクレオチド配列をハイブリダイズするように設計することができる。
【0154】
核酸断片は、例えば、放射性標識、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識、酵素標識、結合対標識で検出可能に標識され得るか、または、親和性タグ、タグ、または識別子(例えば、アダプター、バーコード、または他の配列識別子)を含み得る。
【0155】
KIF5B−RET融合核酸分子またはポリペプチドが対象由来の試料中に存在するという直接獲得する知識を含む、KIF5B−RET融合の存在を決定する方法。試料は、液体、細胞、組織、例えば、腫瘍組織からなる試料であり得、それは、核酸試料、タンパク質試料、腫瘍生検、または循環腫瘍細胞もしくは核酸を含み得、それは、NSCLC、SCLC、SCC、またはその組み合わせ、および腺癌または黒色腫を含む肺癌から選択され得る。
【0156】
核酸分子内のKIF5B−RET融合、および核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、増幅系アッセイ、PCR−RFLPアッセイ、リアルタイムPCR、配列決定、スクリーニングアッセイ、FISH、分光による染色体解析、またはMFISH、比較ゲノムハイブリダイゼーション)、in situハイブリダイゼーション、SSP、HPLC、または質量分光遺伝子型決定のうちのいずれかの使用による検出方法。
【0157】
タンパク質試料をKIF5B−RET融合ポリペプチドに特異的に結合する試薬と接触させることと、KIF5B−RET融合ポリペプチドおよび試薬の複合体の形成を検出することとを含む、KIF5B−RET融合ポリペプチドを検出する方法が記載される。ポリペプチドの検出方法は、結合および非結合試薬の検出を促進するために検出可能な基で標識された試薬を使用することを含み、この試薬は、抗体分子であり、KIF5B−RET融合のレベルおよび活性が評価され、KIF5B−RET融合は、対象における治療を開始する前、その間、またはその後に検出され、KIF5B−RET融合は、癌を有する診断時に検出され、KIF5B−RET融合は、所定間隔で、例えば、第1の時点および少なくともそれに続く時点で検出される。
【0158】
治療への応答はまた、具体的には、KIF5B−RET融合の存在の決定への応答も含まれ、(1)患者集団を階層化すること、(2)治療に応答する可能性が高い、もしくは可能性が低い対象を特定または選択すること、(3)治療の選択肢を選択すること、および/または(4)対象における経時的な疾患を予後予測すること、のうちの1つ以上が使用される。
【0159】
KIF5B−RET融合またはその断片を含む切断点をコードする単離されたまたは精製された核酸分子。天然または異種調節配列に作動可能に連結される単離されたまたは精製された核KIF5B−RET核酸分子。KIF5B−RET融合またはその断片を含む切断点をコードする核酸分子を含む単離されたまたは精製されたベクター。ベクターを含む宿主細胞。アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、または三重らせん分子から選択することができる、KIF5B−RET融合をコードする核酸分子の発現を特異的に減少または阻害する核酸分子。単離されたまたは精製されたKIF5B−RET融合ポリペプチドまたはその断片を含む断片点。RETキナーゼ活性、および/または二量体化もしくは三量体化する活性を有する、単離されたまたは精製されたKIF5B−RET融合ポリペプチド。KIF5B−RET融合ポリペプチドに特異的に結合する単離されたまたは精製された抗体分子。KIF5B−RET融合ポリペプチドに対して単一特異的な抗体分子である、抗体分子。
【0160】
本発明におけるKIF5B−RETポリヌクレオチドの翻訳産物を検出するための方法の例は、免疫染色、ウエスタンブロット法、ELISA、フローサイトメトリー、免疫沈降、および抗体アレイ分析である。これらの方法において、KIF5B−RET融合ポリペプチドに結合する抗体が使用される。そのような抗体の例は、KIF5Bタンパク質とRETタンパク質との融合部位を含むポリペプチドに特異的な抗体(以下、「融合部位に特異的な抗体」とも称される)、RETタンパク質の前述の融合部位からのC末端側の領域からなるポリペプチドに結合する抗体(以下、「RET−C末端抗体」とも称される)、およびKIF5Bタンパク質の前述の融合部位からのN末端側の領域からなるポリペプチドに結合する抗体(以下、「KIF5B−N末端抗体」とも称される)である。ここで、「融合部位に特異的な抗体」とは、前述の融合部位を含むポリペプチドに特異的に結合するが、野生型(正常型)KIF5Bタンパク質および野生型(正常型)RETタンパク質のいずれにも結合しない抗体を意味する。
【0161】
KIF5B−RET融合ポリペプチドは、前述の融合部位に特異的な抗体または前述のRET−C末端抗体とKIF5B−N末端抗体の組み合わせによって検出することができる。しかしながら、例えば、正常な肺細胞ではRETタンパク質の発現はほとんど検出されないため、免疫染色法において、RET−C末端抗体を単独で使用する場合でも、肺腺癌組織におけるKIF5B−RET融合ポリペプチドの存在を検出することができる。
【0162】
「KIF5B−RET融合ポリペプチドに結合する抗体」は、当業者によって、適切な既知の方法を選択して調製することができる。そのような既知の方法の例は、RETタンパク質のC末端部分からなる前述のポリペプチド、KIF5B−RET融合ポリペプチド、KIF5Bタンパク質のN末端部分からなる前述のポリペプチド等を免疫動物に接種し、それにより、動物の免疫系を活性化させ、次いで、動物の血清(ポリクローナル抗体)を回収する方法、ならびにハイブリドーマ法、組換えDNA法、およびファージディスプレイ法等のモノクローナル抗体を生成する方法である。標識物質を結合させた抗体を使用する場合、標的タンパク質は、標識を検出することによって直接検出することができる。標識物質は、抗体に結合させることができ、検出することができるものであれば、特に制限されない。例としては、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、マイクロペロキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、アルカリホスファターゼ、ビオチン、および放射性物質等が挙げられる。さらに、標識物質を結合させた抗体を使用して標的タンパク質を直接的に検出する方法に加えて、タンパク質G、タンパク質A、または標識物質を結合させた二次抗体を使用して標的タンパク質を間接的に検出する方法も使用され得る。
【0163】
前述の方法によって対象から単離された標本において、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在が検出される場合、式I、Ia、または化合物1等のRETチロシンキナーゼ阻害剤による癌治療の有効性が、その患者において高いと判定され、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在が検出されない場合、RETチロシンキナーゼ阻害剤による癌治療の有効性が、その患者において低いと判定される。
【0164】
上述のように、少なくとも15塩基の鎖長を有する、下記(a)〜(c)に記載のポリヌクレオチドのうちのいずれもが、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの存在または非存在を検出するために有利に使用され得る:(a)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブからなる群から選択する少なくとも1つのプローブであるポリヌクレオチド、(b)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドの融合部位にハイブリダイズするプローブであるポリヌクレオチド、(c)KIF5Bタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびRETタンパク質をコードするポリヌクレオチドの融合部位を挟み込むように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド。
【0165】
これらのポリヌクレオチドは、標的遺伝子の特定の塩基配列に相補的である塩基配列を有する。ここで、「相補的」とは、それがハイブリダイズするならば、完全に相補的でないことを意味し得る。例えば、これらのポリペプチドは、特定の塩基配列に対して、80%以上、好ましくは、90%、より好ましくは、95%以上、最も好ましくは、100%の相同性を有する。
【0166】
(a)〜(c)のポリヌクレオチドでは、DNAまたはRNAの一部またはすべてにおいて、PNA(ポリアミド核酸、ペプチド核酸)、LNA(商標、ロックされた核酸、架橋された核酸)、ENA(商標、2′−O、4′−C−エチレン架橋された核酸)、GNA(グリセロール核酸)、およびTNA(トレオース核酸)等の人工核酸によって、ヌクレオチドが置換され得る。
【0167】
さらに、上述のように、KIF5B−RET融合ポリペプチドに結合する抗体は、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドの翻訳産物を検出するのに有利に使用される。したがって、本発明は、この抗体を含むRETチロシンキナーゼ阻害剤による癌治療の有効性を検出するための薬物を提供する。
【0168】
本発明の融合遺伝子の検出方法は、試験対象から得られた本出願のポリヌクレオチドの存在を検出するステップを含む。試験対象から得られた試料として、試験対象から収集された物質(生体から単離された試料)、具体的には、収集された任意の種類の体液(好ましくは血液)、肺胞および気管支洗浄、生検を行った試料、および痰試料が、使用される。好ましくは、試験対象の肺内の罹患領域からの生検試料または痰試料が、使用される。この試料から、ゲノムDNAを抽出および使用することができる。加えて、その転写物(ゲノムの転写および翻訳の結果として生成された産物、例えば、mRNA、cDNA、およびタンパク質)を使用することができる。特に、mRNAまたはcDNAを調製および使用することが好ましい。
【0169】
ゲノムDNAは、既知の方法によって検出することができ、この抽出は、市販のDNA抽出キットを使用して容易に行うことができる。
【0170】
検出のステップは、周知の遺伝子分析方法(例えば、PCR、LCR(リガーゼ連鎖反応)、SDA(ストランド置換増幅)、NASBA(核酸配列に基づく増幅)、ICAN(等温およびキメラプライマー開始核酸増幅)、LAMP(ループ媒介性等温増幅)法、TMA(Gen−Probe′s TMA system)法、in situハイブリダイゼーション法、およびマイクロアレイ等の遺伝子検出方法として一般に使用される周知の方法)に従って行われ得る。例えば、検出されるべきポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸がプローブとして使用されるハイブリダイゼーション技術、検出されるべきポリヌクレオチドにハイブリダイズするDNAがプライマーとして使用される遺伝子増幅技術等が使用される。
【0171】
具体的には、試験対象から得られた試料由来の核酸、例えば、mRNA等を使用して、検出が行われる。mRNA量は、検出されるべきポリヌクレオチドの配列を特異的に増幅することができるように設計されたプライマーを使用することによって遺伝子増幅反応の方法によって測定される。本発明の検出方法に使用されるプライマー、または検出キットに含まれるプライマーは、プライマーが検出されるべきポリヌクレオチドの配列を特異的に増幅させることができる限り、特に制限されず、検出されるべきポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて設計される。PCR増幅モニター法に使用されるプライマーは、プライマー設計ソフトウェア(例えば、PE Biosystemsによって製造されるPrimer Express)等を使用して設計することができる。加えて、PCR産物のサイズが大きくなると増幅効率が悪くなるため、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーは、mRNAまたはcDNAが増幅されるときに得られた増幅産物のサイズが1kb以下になるように設計されるのが適切である。
【0172】
より具体的には、センスプライマー(5′プライマー)は、KIF5Bをコードする部分から設計され、アンチセンスプライマー(3′プライマー)は、RETをコードする部分から設計される。本発明の検出キットに含まれるプライマーを使用することが好ましく、検出キットに最も好適に含まれるプライマーを使用することがより好ましい。PCR増幅モニター法では、それぞれの遺伝子に対応する上記センスプライマーを混合することによって、単一の反応液においてすべての融合ポリヌクレオチドを検出するためにマルチプレックスPCRを設計することも可能である。各増幅技術に適している方法によって、標的遺伝子(全遺伝子またはその特異的部分)が増幅されたかどうかを確認することが可能である。例えば、PCR法では、PCR産物は、アガロースゲル電気泳動によって分析し、臭化エチジウム染色等に曝し、それによって、標的サイズを有する増幅された断片を得られたかどうかを確認することが可能である。標的サイズを有する増幅された断片を得られた場合は、検出されるべきポリヌクレオチドが試験対象から得られた試料中に存在することを示す。このようにして、検出されるべきポリヌクレオチドの存在を検出することができる。
【0173】
本発明の融合遺伝子の検出方法は、好ましくは、遺伝子増幅反応によって試験対象から得られた試料中に特定のポリヌクレオチドの存在を検出するステップと、標的サイズを有する増幅された断片を得られたかどうかを検出するステップとを含む。
【0174】
ハイブリダイゼーション技術を使用する検出は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロット法、DNAマイクロアレイ法、およびRNAプロテクション法等を使用して行う。ハイブリダイゼーションに使用するプローブとして、配列を含むプローブを使用することが可能である。検出されるべきポリヌクレオチドまたはそれらの相補鎖にストリンジェントな条件下で(好ましくはよりストリンジェントな条件下で)ハイブリダイズする連続した少なくとも32塩基からなる核酸分子の中心として融合点の上流および下流のそれぞれ16塩基からなる配列を含むか、またはそれらの相補鎖を含む、プローブを使用することが可能である。
【0175】
ハイブリダイゼーションは、当業者に既知の「ストリンジェントな条件下」または「よりストリンジェントな条件下」のいずれかで使用することができる。また、RT−PCR等の遺伝子増幅技術を使用することも可能である。RT−PCR法においては、PCR増幅モニター(リアルタイムPCR)法は、遺伝子増幅の過程中に行い、それによって、検出されるべきポリヌクレオチドの存在が、より定量的に分析され得る。PCR増幅モニター法を使用することができる。リアルタイムPCRは周知の方法であり、この方法のために市販の装置およびキットを使用して簡便に行うことができる。
【0176】
本発明の実施形態のいくつかの融合タンパク質の検出方法は、試験対象から得られた試料中の特定のポリペプチド、すなわち、検出されるべきポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(以下、検出されるべきポリペプチドと呼ばれる)の存在を検出するステップを含む。そのような検出ステップは、試験対象から得られた試料(例えば、試験対象から得られた癌組織または細胞)由来の可溶化液を調製し、その液体中に含まれる検出されるべきポリペプチドを抗KIF5B抗体および抗RET抗体と混合することによって行われる免疫アッセイ法または酵素活性アッセイ法によって行うことができる。好ましくは、酵素免疫アッセイ法、二重抗体サンドイッチELISA法、蛍光免疫アッセイ法、ラジオイムノアッセイ法、およびウエスタンブロット法等の検出されるべきポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使用する技術を使用することが可能である。
【0177】
本発明の検出方法において、検出されるべきポリヌクレオチドまたは検出されるべきポリペプチドが試験対象から得られた試料から検出される場合は、試験対象は、ポリヌクレオチド陽性である癌を有する対象(患者)であり、RET阻害剤を使用する治療を提供されるべき対象である。
【0178】
本発明の検出キットは、本発明の検出方法において、検出されるべきポリヌクレオチドを特異的に増幅させることができるように設計された少なくともセンスおよびアンチセンスプライマーを含む。センスおよびアンチセンスプライマーセットは、検出されるべきポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして作用するポリヌクレオチドのセットである。
【0179】
一実施形態において、本発明のプライマーセットは、(1)KIF5Bをコードする部分から設計されたセンスプライマーと、RETをコードする部分から設計されたアンチセンスプライマーとを含み、KIF5B遺伝子とRET遺伝子との融合遺伝子を検出するためのプライマーセットであって、アンチセンスプライマーは、「検出されるべきポリヌクレオチド」にストリンジェントな条件下で(好ましくはよりストリンジェントな条件下で)ハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基からなる核酸分子)からなり、センスプライマーは、「検出されるべきポリヌクレオチド」の相補鎖にストリンジェントな条件下で(好ましくはよりストリンジェントな条件下で)ハイブリダイズする核酸分子(好ましくは、少なくとも16塩基からなる核酸分子)からなる、プライマーセットを含む。
【0180】
以下のプライマーセット(2)および(3)は、プライマーセット(1)のより特異的な変異体としてプライマーに含まれる。
【0181】
(2)任意の連続する少なくとも16塩基からなるオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマーのプライマーセット。
【0182】
(3)任意の連続する少なくとも16塩基からなるオリゴヌクレオチドからなるセンスプライマーのプライマーセット。
【0183】
これらのプライマーセット(1)〜(3)では、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーが選択される位置の間隔が、好ましくは、1kb以下であるか、またはセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーによって増幅される増幅産物のサイズが、好ましくは1kb以下である。
【0184】
加えて、プライマーは、通常、15〜40塩基からなり、好ましくは、16〜24塩基からなり、より好ましくは、18〜24塩基からなり、特に好ましくは、20〜24塩基からなる鎖長を有する。
【0185】
プライマーセットは、検出されるべきポリヌクレオチドを増幅および検出するために使用することができる。さらに、特に限定されるものではないが、本発明のプライマーセットに含まれる大乗的なプライマーは、例えば、化学合成によって調製することができる。
【0186】
抗癌剤をスクリーニングする方法には、融合タンパク質を発現する細胞に試料化合物を接触させることと、細胞中の融合タンパク質の発現レベルを測定することと、を含み、試料化合物で処理される細胞中の融合タンパク質の発現レベルが、試料化合物による処理前のものまたは非処理細胞中のものと比較して減少し、この試料化合物が抗癌剤の候補化合物として決定される。
【0187】
抗癌剤をスクリーニングする方法は、同じ化合物の処理前の細胞中の融合タンパク質の発現レベルのステップをさらに含み得る。この場合、試料化合物の処理後の融合タンパク質の発現レベルが同じ細胞中の試料化合物による処理前のものと比較して減少するとき、この試料化合物が、抗癌剤の候補化合物として決定され得る。あるいは、抗癌剤をスクリーニングする方法は、融合タンパク質を発現する細胞を提供することと、提供された細胞の一部に試料化合物を接触させることと、を含み得る。この場合、試料化合物と接触させた細胞中の融合タンパク質の発現レベルが同じ化合物と接触させなかった細胞中のものと比較して減少するとき、この試料化合物が、抗癌剤の候補化合物として決定され得る。
【0188】
スクリーニング法に使用される細胞は、融合遺伝子もしくは融合タンパク質が発現および/または活性化する癌細胞由来の細胞、細胞の抽出物、または細胞の培養物であり得る。癌細胞は、上述のように、とりわけ、肺癌、例えば、肺腺癌等の非小細胞肺癌の固体癌細胞であり得る。
【0189】
さらに別の実施形態は、肺癌に対して抗癌剤をスクリーニングする方法を提供し、本方法は、試料化合物により融合タンパク質を発現する細胞を処理することと、細胞中の融合タンパク質の発現レベルを測定することと、を含み、試料化合物で処理される細胞中の融合タンパク質の発現レベルが、試料化合物による処理前のものまたは非処理細胞中のものと比較して減少し、この試料化合物が肺癌に対する抗癌剤の候補化合物として決定される。
【0190】
KIF5B−RET融合タンパク質は、肺癌を診断するためのマーカーとして、または肺癌を治療もしくは予防もしくは治療するために使用することができる。肺癌の治療または予防は、治療有効量の、融合タンパク質に対する少なくとも1つの阻害剤、融合タンパク質をコードする融合遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、RETをコードする遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、またはそれらの組み合わせを、それを必要とする患者に投与するステップを含む。この阻害剤は、式I、Ia、または化合物1であり得る。
【0191】
別の実施形態は、癌を予防および/または治療する方法を提供し、本方法は、薬学的(治療的)有効量の、融合タンパク質に対する少なくとも1つの阻害剤、融合タンパク質をコードする融合遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、RETをコードする遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、またはそれらの組み合わせを、それを必要とする患者に投与するステップを含み、これらのうちのいずれも、式1の化合物および本明細書に開示される他の特定の化合物であり得る。本方法は、そのような治療を施すステップの前に、癌の予防および/または治療を必要とする患者を特定するステップをさらに含み得る。別の実施形態は、癌を予防および/または治療するための組成物を提供し、本方法は、式1を含む融合タンパク質に対する少なくとも1つの阻害剤を、単独でまたは融合タンパク質をコードする融合遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、RETをコードする遺伝子に対する少なくとも1つの阻害剤、またはそれらの組み合わせとともに投与することを含む。別の実施形態は、癌を予防および/または治療するために、融合タンパク質に対する阻害剤、融合タンパク質をコードする融合遺伝子に対する阻害剤、RETをコードする遺伝子に対する阻害剤の使用を提供する。この阻害剤は、式I、Ia、または化合物1であり得る。
【0192】
本発明では、癌は、肺癌、とりわけ、小細胞肺癌(SCLC)または非小細胞肺癌(NSCLC)、例えば、肺腺癌、扁平上皮細胞肺癌、または大細胞肺癌であり得る。
【0193】
融合タンパク質に対する阻害剤が、融合タンパク質に特異的に結合するアプタマー、融合タンパク質に特異的に結合する抗体20、および融合遺伝子またはRETをコードする遺伝子に対する阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つである組成物は、siRNA、shRNA、miRNA、およびアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、これらは、融合遺伝子またはRETをコードする遺伝子に特異的に結合することができる。
【0194】
RETおよび/またはRETキナーゼ活性(例えば、転写、翻訳、または安定性)の発現を阻害する任意のRETキナーゼ阻害剤が、単独でまたは式I、Ia、または1の化合物と組み合わせて使用され得る。
【0195】
阻害剤は、RETに特異的であり得るか、または非特異的(例えば、非特異的キナーゼ阻害剤、複数標的阻害剤)であり得る。いくつかのRETキナーゼ阻害剤が開発されており、それらの臨床的適用は、調査中である。RETキナーゼ活性の下流、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)および細胞外シグナルキナーゼ1/2(ERK)等のキナーゼ(Wixted JH et al.J Biol Chem 2011)、およびSTAT3(Hwang JH et al.Mol Endocrinol 2003;17:1155−1166)がある。そのような下流シグナル伝送経路を阻害する薬物はまた、RETキナーゼ阻害剤への代替物として、またはアジュバントとして、単独または式1の化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0196】
あるモードでは、KIF5B−RET転座を有すると判断される対象はまた、転座部位を越える部位でRET突然変異体を有すると判断される。RET突然変異体の一例は、活性化突然変異体である。RET活性化突然変異体は、野生型突然変異体と比較して活性化の増加を引き起こす無作為の突然変異体である。例えば、RET活性化突然変異体は、永続的なRET活性化をもたらし得る。さらに、RET阻害剤と関連する、またはその使用による二次的なRET活性化突然変異体が存在し得る。RETシグナル活性の増加を引き起こす突然変異体は、例えば、キナーゼドメイン点突然変異、欠失、挿入、複製、もしくは反転、またはこれらのうちの2つ以上の組み合わせにより生じ、RETシグナルの増加を引き起こす。KIF5B−RET転座およびRET突然変異体の両方を有すると判定される対象については、RETキナーゼ阻害剤で治療する決定もなされ得る。加えて、治療/療法は、その決定に基づいて実行され得る。
【0197】
上述のように、RETチロシンキナーゼ阻害剤による癌治療の有効性は、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチドが本発明の方法によって検出される患者において高いと考えられる。このため、癌治療は、KIF5B遺伝子およびRET遺伝子を有するそれらの癌患者に、選択的にRETチロシンキナーゼ阻害剤を投与することによって効果的に行われ得る。したがって、本発明は、癌を治療するための方法を提供し、本方法は、式I、Ia、または化合物1であるRETチロシンキナーゼ阻害剤を、そのRETチロシンキナーゼ阻害剤による癌治療の有効性が本明細書に記載される前述の診断方法によって高いと判断された患者に投与するステップを含む。
【0198】
本発明では、「標本」は、生物学的標本(例えば、細胞、組織、器官、液体(血液、リンパ液等)、消化液、痰、肺胞/気管支洗浄液、尿、排泄物)だけでなく、核酸抽出物(ゲノムDNA抽出物、mRNA抽出物、またはmRNA抽出物から調製されるcDNA調製物もしくはcRNA調製物)、あるいはこれらの生物学的標本から得られたタンパク質抽出物も含まれる。この標本はまた、ホルマリン固定処理、アルコール固定処理、凍結処理、またはパラフィン包埋処理を行うものであり得る。
【0199】
さらに、ゲノムDNA、mRNA、cDNA、またはタンパク質は、標本のタイプ、状態等を考慮して好適な周知の技術を選択した後、当業者によって調製され得る。
【0200】
活性成分としての前述の物質(ポリヌクレオチド、抗体)に加えて、本発明の薬物は、他の薬学的に許容される成分を含み得る。そのような成分の例は、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、生理的食塩水等を含む。緩衝剤として、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等が使用され得る。乳化剤として、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が使用され得る。懸濁剤として、グリセロールモノステアレート、アルミニウムモノステアレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等が使用され得る。安定剤として、プロピレングリコール、亜硫酸ジエチル、アスコルビン酸等が使用され得る。保存剤として、アジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等が使用され得る。
【0201】
さらに、ポリヌクレオチドおよび抗体を含む調製物に加えて、基剤、陽性対照(例えば、KIF5B−RET融合ポリヌクレオチド、KIF5B−RET融合ポリペプチド、またはそれらを有する細胞等)、およびポリヌクレオチドおよび抗体に添付される標識の検出に必要な陰性対照、in situハイブリダイゼーション等に使用される対比染色試薬(DAPI等)、抗体を検出する際に必要とされる分子(例えば、二次抗体、タンパク質G、タンパク質A)、ならびに抗体の希釈もしくは洗浄に使用される緩衝液などの調製物が、本発明の方法において使用されるキットとして合わせられ得る。このキットには、キットの使用のための取扱説明書が含まれ得る。本発明はまた、本発明の方法で使用される前述のキットを提供する。
【0202】
本明細書に記載される検出方法は、本質的に融合パートナーのN末端ドメインおよびRETタンパク質のC末端ドメインからなる融合タンパク質が検出されるときに、特に有用である。融合タンパク質は、本質的にKIF5Bタンパク質のN末端ドメインおよびRETタンパク質のC末端ドメインからなるKIF5B−RET融合タンパク質であり得る。本方法は、肺癌、特に、非小細胞肺癌を診断するために使用することができ、本方法には、染色体10上に反転または転座を含むRET関連の染色体再配置、RETタンパク質が他のタンパク質と融合される融合タンパク質、融合タンパク質をコードする融合遺伝子、および癌を有しない個体からの標準試料と比較したRETの過剰発現のうちの少なくとも1つを検出することを含む。上記群から選択される上述の再配置のうちの1つが試験試料中に検出されるとき、式I、Ia、または化合物1等のRET阻害剤の処置のための個体。
【0203】
化合物1の調製
N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドおよびその(L)−リンゴ酸塩の調製。
【0204】
N−(4−[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドおよびその(L)−リンゴ酸塩の調製に使用される合成経路をスキーム1に示す。
【0205】
4−クロロ−6,7−ジメトキシ−キノリンの調製
反応器に、6,7−ジメトキシ−キノリン−4−オール(10.0kg)およびアセトニトリル(64.0L)を順次装填した。得られた混合物を約65℃まで加熱し、オキシ塩化リン(POCl
3、50.0kg)を添加した。POCl
3の添加後、反応混合物の温度を約80℃まで上昇させた。2パーセント未満の出発材料が残留したときに(工程内高性能液体クロマトグラフィー[HPLC]分析)、その反応は完了したと見なした(約9.0時間)。反応混合物を、約10℃まで冷却し、次いで、ジクロロメタン(DCM、238.0kg)、30% NH
4OH(135.0kg)、および氷(440.0kg)の冷却溶液に入れて反応停止処理を行った。得られた混合物を約14℃まで加温して、相を分離した。有機相を水(40.0kg)で洗浄し、真空蒸留によって濃縮して、溶媒(約190.0kg)を除去した。メチル−t−ブチルエーテル(MTBE、50.0kg)をバッチに添加し、混合物を約10℃まで冷却し、その間に、生成物が結晶化した。固体を遠心分離によって回収し、nヘプタン(20.0kg)で洗浄し、約40℃で乾燥させて、表題化合物(8.0kg)を得た。
【0206】
6,7−ジメチル−4−(4−ニトロ−フェノキシ)−キノリンの調製
反応器に、4−クロロ−6,7−ジメトキシ−キノリン(8.0kg)、4ニトロフェノール(7.0kg)、4ジメチルアミノピリジン(0.9kg)、および2,6ルチジン(40.0kg)を順次装填した。反応器の内容物を約147℃まで加熱した。この反応が完了したら(工程内HPLC分析によって判断して5パーセント未満の出発材料が残存する、約20時間)、反応器の内容物を約25℃まで冷却した。メタノール(26.0kg)を添加し、続いて、水(50.0kg)に溶解した炭酸カリウム(3.0kg)を添加した。反応器の内容物を約2時間撹拌した。得られた固体沈殿物を濾過し、水(67.0kg)で洗浄し、25℃で約12時間乾燥させて、表題化合物(4.0kg)を得た。
【0207】
4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミンの調製
ギ酸カリウム(5.0kg)、ギ酸(3.0kg)、および水(16.0kg)を含有する溶液を、6,7−ジメトキシ−4−(4−ニトロ−フェノキシ)−キノリン(4.0kg)、10パーセントのパラジウム炭素(50パーセント含水、0.4kg)の約60℃まで加熱したテトラヒドロフラン(THF、40.0kg)中の混合物に添加した。反応混合物の温度が約60℃に留まるように、添加を行った。工程内HPLC分析を使用して判断して、反応が完了したと見なしたら(2パーセント未満の出発材料が残留する、通常15時間)、反応器の内容物を濾過した。濾液を約35℃で真空蒸留によって半分まで濃縮し、結果として生成物の沈殿物を得た。生成物を濾過によって回収し、水(12.0kg)で洗浄し、約50℃で、真空下で乾燥させて、表題化合物(3.0kg;97パーセントの曲線下面積(AUC))を得た。
【0208】
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸の調製
バッチ温度が10℃を超えないような速度で、トリエチルアミン(8.0kg)を、THF(63.0kg)中の市販のシクロプロパン−1,1−ジカルボン酸(2 1、10.0kg)の冷却した(約4℃)溶液に添加した。その溶液を、約30分間撹拌し、次いで、塩化チオニル(9.0kg)を、バッチ温度を10℃未満に保ちながら添加した。添加が完了したら、バッチ温度が10℃を超えないような速度で、THF(25.0kg)中の4−フルオロアニリン(9.0kg)を添加した。混合物を約4時間撹拌し、次いで、酢酸イソプロピル(87.0kg)で希釈した。この溶液を、水酸化ナトリウム水溶液(50.0Lの水に溶解した2.0kg)、水(40.0L)、および水性塩化ナトリウム(40.0Lの水に溶解した10.0kg)で順次洗浄した。有機溶液を真空蒸留によって濃縮し、続いて、ヘプタンを添加し、その結果、固体の沈殿物を得た。固体を遠心分離によって回収し、次いで、真空下で、約35℃で乾燥させて、表題化合物を得た(10.0kg)。
【0209】
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの調製
バッチ温度が30℃を超えないような速度で、塩化オキサリル(1.0kg)を、THF(11kg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、0.02kg)の混合物中の1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸(2.0kg)の溶液に添加した。この溶液をさらなる加工を行わずに次のステップで使用した。
【0210】
N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの調製
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドを含有する先のステップからの溶液を、バッチ温度が30℃を超えないような速度で、THF(27.0kg)および水(13.0kg)中の4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミン(3.0kg)および炭酸カリウム(4.0kg)の混合物に添加した。反応が完了したら(通常10分で)、水(74.0kg)を添加した。混合物を15〜30℃で約10時間撹拌し、その結果、生成物の沈殿物を得た。生成物を濾過によって回収し、THF(11.0kg)および水(24.0kg)の予め作製した溶液で洗浄し、真空下で、約12時間約65℃で乾燥させて、表題化合物(遊離塩基、5.0kg)を得た。
1H NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ10.2(s,1H),10.05(s,1H),8.4(s,1H),7.8(m,2H),7.65(m,2H),7.5(s,1H),7.35(s,1H),7.25(m,2H),7.15(m,2H),6.4(s,1H),4.0(d,6H),1.5(s,4H)。LC/MS:M+H=502。
【0211】
N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、(L)リンゴ酸塩の調製
約25℃のバッチ温度を維持しながら、水(2.0kg)中のL−リンゴ酸(2.0kg)の溶液を、エタノール中のシクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド遊離塩基(1 5、5.0kg)の溶液に添加した。次いで、炭素(0.5kg)およびチオールシリカ(0.1kg)を添加し、得られた混合物を約78℃まで加熱し、この時点で水(6.0kg)を添加した。次いで、反応混合物を濾過し、続いて、イソプロパノール(38.0kg)を添加し、約25℃まで冷却した。生成物を濾過によって回収し、イソプロパノール(20.0kg)で洗浄し、約65℃で乾燥させて、表題化合物(5.0kg)を得た。
【0212】
N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドおよびその(L)−リンゴ酸塩の代替調製
国際公開PCT/米国特許第2012/024591号(この全内容は参照により組み込まれる)において記載されるような、N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドおよびその(L)−リンゴ酸塩の調製のために使用することができる、代替合成経路をスキーム2に示す。
【0213】
4−クロロ−6,7−ジメトキシ−キノリンの調製
反応器に、6,7−ジメトキシ−キノリン−4−オール(47.0kg)およびアセトニトリル(318.8kg)を順次装填した。得られた混合物を約60℃まで加熱し、オキシ塩化リン(POCl
3、130.6kg)を添加した。POCl
3の添加後、反応混合物の温度を約77℃まで上昇させた。3%未満の出発材料が残存したときに(工程内高性能液体クロマトグラフィー[HPLC]分析)、その反応は完了したと見なした(約13時間)。反応混合物を約2〜7℃まで冷却し、次いで、ジクロロメタン(DCM、482.8kg)、26パーセントのNH
4OH(251.3kg)、および水(900L)の冷却溶液に入れて反応停止を行った。得られた混合物を約20〜25℃に加温し、相を分離した。有機相をAW hyflo super−cel NF(セライト、5.4kg)床に通して濾過し、濾床をDCM(118.9kg)で洗浄した。合わせた有機相をブライン(282.9kg)で洗浄し、水(120L)と混合した。相を分離し、有機相を真空蒸留によって濃縮し、溶媒を除去した(約95Lの残量)。DCM(686.5kg)を、有機相を含有する反応器に装填し、真空蒸留によって濃縮し、溶媒を除去した(約90Lの残量)。次いで、メチルt−ブチルエーテル(MTBE、226.0kg)を装填し、混合物の温度を−20〜−25℃の調整し、2.5時間保持し、その結果、固体の沈殿物を得、次いで、これを濾過し、n−ヘプタン(92.0kg)で洗浄し、窒素下で、約25℃で、フィルタ上で乾燥させて、表題化合物を得た(35.6kg)。
【0214】
4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミンの調製
N,N−ジメチルアセトアミド(DMA、184.3kg)に溶解した4−アミノフェノール(24.4kg)を、4−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン(35.3kg)、ナトリウムt−ブトキシド(21.4kg)およびDMA(167.2kg)を含有する反応器に20〜25℃で装填した。次いで、この混合物を100〜105℃まで約13時間加熱した。工程内HPLC分析(2パーセント未満の出発材料が残存する)を使用して判断して、反応が完了したと見なした後、反応器の内容物を15〜20℃で冷却し、15〜30℃の温度を維持する速度で、水(前もって冷却した、2〜7℃、587L)を装填した。得られた固体の沈殿物を濾過し、水(47L)およびDMA(89.1kg)の混合物で洗浄し、最終的に、水(214L)で洗浄した。次いで、濾過ケーキを約25℃で、フィルタ上で乾燥させて、粗物4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミン(59.4kg含湿、LODに基づいて計算して41.6kg乾燥)を得た。粗物4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミンを、テトラヒドロフラン(THF、211.4kg)およびDMA(108.8kg)の混合物中で約1時間還流し(約75℃)、次いで、0〜5℃まで冷却し、約1時間熟成し、その後、固体を濾過し、THF(147.6kg)で洗浄し、フィルタ上で真空下に約25℃で乾燥させて、4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミン(34.0kg)を得た。
【0215】
4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミンの代替調製
4−クロロ−6,7−ジメトキシキノリン(34.8kg)および4−アミノフェノール(30.8kg)およびナトリウムtertペントキシド(1.8当量)88.7kg、THF中35重量パーセント)、続いて、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA、293.3kg)を反応器に装填した。次いで、この混合物を105〜115℃まで約9時間加熱した。工程内HPLC分析(2パーセント未満の出発材料が残存する)を使用して判定して、反応が完了したと見なした後、反応器の内容物を15〜25℃で冷却し、20〜30℃の温度を維持しながら、水(315kg)を2時間にわたり添加した。次いで、反応混合物をさらに1時間20〜25℃で振とうした。粗生成物を濾過によって回収し、88kgの水および82.1kgのDMAの混合物で洗浄し、続いて、175kgの水で洗浄した。生成物をフィルタ上で53時間乾燥させた。LODは、1パーセントw/w未満を示した。
【0216】
代替手順において、1.6当量のナトリウムtert−ペントキシドを使用し、反応温度を110〜120℃上昇させた。加えて、低下した温度を35〜40℃上昇させ、水添加の初めの温度は35〜40℃に調整したが、発熱のため45℃になった。
【0217】
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸の調製
バッチ温度が5℃を超えない速度で、トリエチルアミン(19.5kg)を、THF(89.6kg)中のシクロプロパン−1,1−ジカルボン酸(24.7kg)の冷却した(約5℃)溶液に添加した。溶液を約1.3時間撹拌し、次いで、バッチ温度を10℃未満に保ちながら、塩化チオニル(23.1kg)を添加した。添加が完了したら、温度を10℃未満に保ちながら、溶液を約4時間撹拌した。次いで、バッチ温度が10℃を超えない速度で、THF(33.1kg)中の4−フルオロアニリン(18.0kg)の溶液を添加した。混合物を約10時間撹拌し、その後、その反応は完了したと見なした。次いで、反応混合物を酢酸イソプロピル(218.1kg)で希釈した。この溶液を、水性水酸化ナトリウム(10.4kg、119Lの水に溶解した50パーセント)で順次洗浄し、水(415L)、次いで、水(100L)、最終的に、塩化ナトリウム(100Lの水に溶解した20.0kg)水溶液でさらに希釈した。有機溶液を真空蒸留によって40℃未満で濃縮し(100Lの残量)、続いて、n−ヘプタン(171.4kg)を添加し、その結果、固体の沈殿物を得た。固体を濾過によって回収し、n−ヘプタン(102.4kg)で洗浄し、その結果、湿った、粗物1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸(29.0kg)を得た。粗物、1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸をメタノール(139.7kg)に約25℃で溶解し、続いて、水(320L)を添加し、その結果、スラリーを得、これを濾過によって回収し、水(20L)およびn−ヘプタン(103.1kg)で順次洗浄し、次いで、フィルタ上で、窒素下で、約25℃で乾燥させて、表題化合物(25.4kg)を得た。
【0218】
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの調製
バッチ温度が25℃を超えないような速度で、塩化オキサリル(12.6kg)を、THF(96.1kg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、0.23kg)の混合物中の1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸(22.8kg)の溶液に添加した。この溶液をさらなる加工を行わずに次のステップで使用した。
【0219】
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの代替調製
反応器に、1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボン酸(35kg)、344gのDMF、および175kgのTHFを装填した。反応混合物を12〜17℃に調整し、次いで、この反応混合物に、1時間の期間にわたって19.9kgの塩化オキサリルを装填した。反応混合物は、12〜17℃で3〜8時間撹拌した。この溶液をさらなる加工を行わずに次のステップで使用した。
【0220】
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミドの調製
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドを含有する先のステップからの溶液を、バッチ温度が30℃を超えないような速度で、THF(245.7kg)および水(116L)中の化合物4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミン(23.5kg)および炭酸カリウム(31.9kg)の混合物に添加した。反応が完了したら(通常20分で)、水(653L)を添加した。混合物を20〜25℃で約10時間撹拌し、その結果、生成物の沈殿物を得た。生成物を濾過によって回収し、THF(68.6kg)および水(256L)の前もって作製した溶液で洗浄し、まず、窒素下で、約25℃で、フィルタ上で乾燥させ、次いで、真空下で、約45℃で乾燥させて、表題化合物(41.0kg、38.1kg、LODに基づいて計算して)を得た。
【0221】
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミンの代替調製
反応器に、4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミン(35.7kg、1当量)、続いて、412.9kgのTHFを装填した。反応混合物に、169kgの水中に48.3のK
2CO
3の溶液を装填した。上記の
1−(4−フルオロ−フェニルカルバモイル)−シクロプロパンカルボニルクロリドの代替調製に記載される酸塩化物溶液を、最低2時間にわたって20〜30℃の温度を維持しながら、4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニルアミンを含む反応器に移した。反応混合物を、20〜25℃で最低3時間撹拌した。次いで、反応温度を30〜25℃に調整して、混合物を振とうした。振とうを停止し、混合物の相を分離させた。下の水相は除去し、廃棄した。残った上の有機相に、804kgの水を添加した。この反応物は、15〜25℃で最低16時間撹拌した。
【0222】
生成物が沈殿した。生成物を濾過し、179kgの水および157.9kgのTHFの混合物で2回に分けて洗浄した。粗生成物を真空下で少なくとも2時間乾燥させた。次いで、乾燥した生成物を285.1kgのTHFに取り込んだ。得られた懸濁液を反応容器に移し、懸濁液が透明な(溶解した)溶液になるまで振とうし、これには、約30分間の30〜35℃への加熱を要した。次いで、456kgの水、ならびに20kgのSDAG−1エタノール(メタノール変性したエタノール)を2時間にわたり溶液に添加した。この混合物を15〜25℃で少なくとも16時間振とうした。生成物を濾過し、143kgの水および126.7のTHFの混合物で2回に分けて洗浄した。生成物は、40℃の最高温度設定で乾燥させた。
【0223】
代替手順において、酸塩化物形成中の反応温度を10〜15℃に調整した。再結晶温度は、1時間の間に15〜25℃から45〜50℃まで変化させ、次いで、2時間にわたり15〜25℃に冷却した。
【0224】
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド、リンゴ酸塩の調製
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド(1−5、13.3kg)、L−リンゴ酸(4.96kg)、メチルエチルケトン(MEK、188.6kg)、および水(37.3kg)を反応器に装填し、この混合物を約2時間加熱還流(約74℃)した。反応器温度を50〜55℃に低下させ、反応器の内容物を濾過した。上記のこれらの連続ステップは、類似した量の出発材料(13.3kg)、L−リンゴ酸塩(4.96kg)、MEK(198.6kg)、および水(37.2kg)から出発し、さらに2回繰り返した。合わせた濾液を、MEK(1133.2kg)(およその残量711L、KF≦0.5% w/w)を使用して、大気圧で、約74℃で、共沸で乾燥させた。反応器の内容物の温度を20から25℃に低下させ、約4時間保持し、その結果として固体沈殿物を得、これを濾過し、MEK(448kg)で洗浄し、真空下で、50℃で乾燥させて、表題化合物(45.5kg)を得た。
【0225】
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド、(L)リンゴ酸塩の代替調製
シクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド(47.9kg)、L−リンゴ酸(17.2)、658.2kgのメチルエチルケトン、および129.1kgの水(37.3kg)を反応器に装填し、この混合物を50〜55℃で約1〜3時間加熱し、次いで、55〜60℃でさらに4〜5時間加熱した。この混合物は、1μmのカートレッジを通して濾過することによって清澄化された。反応器の温度を20〜25℃に調整し、150〜200mmHgの真空で55℃の最高ジャケット温度で558〜731Lの体積範囲に真空蒸留した。
【0226】
真空蒸留は、それぞれ、380kgおよび380.2kgのメチルエチルケトンを装填してさらに2回行った。3回目の蒸留の後、バッチの体積は、159.9kgのメチルエチルケトンを装填することによって18v/wのシクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミドに調整して全体積で880Lが得られた。さらなる真空蒸留を245.7のメチルエチルケトンの調整により実行した。反応混合物は、20〜25℃で少なくとも24時間穏やかに振とうした。生成物を濾過し、415.1kgのメチルエチルケトンで3分割して洗浄した。生成物を、45℃のジャケット温度設定で、真空下で乾燥させた。
【0227】
代替手順において、129.9kgの水に溶解した17.7kgのL−リンゴ酸の溶液をメチルエチルケトン(673.3kg)中のシクロプロパン−1,1−ジカルボン酸[4−(6,7−ジメトキシ−キノリン−4−イルオキシ)−フェニル]−アミド(4−フルオロ−フェニル)−アミド(48.7kg)に添加するように添加の順序を変更した。
【0228】
本発明は、以下の特定の実施形態を含む。
【0229】
実施形態1。肺腺癌を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、式I:
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、式中、
R
1がハロであり、
R
2がハロであり、
R
3が(C
1−C
6)アルキルであり、
R
4が(C
1−C
6)アルキルであり、
Qが、CHまたはNである、方法。
【0230】
実施形態2。肺腺癌が、非小細胞肺癌である、実施形態1に記載の方法。
【0231】
実施形態3。肺腺癌が、KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌である、実施形態1に記載の方法。
【0232】
実施形態4。二重のMETおよびVEGFの調節因子が、式Ia
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
R
1がハロであり、
R
2がハロであり、
Qが、CHまたはNである、実施形態1〜3に記載の方法。
【0233】
実施形態5。式Iの化合物が、化合物1:
またはその薬学的に許容される塩である、実施形態1〜4に記載の方法。
【0234】
実施形態6。N−(4−{[6,7−ビス(メチルオキシ)キノリン−4−イル]オキシ}フェニル)−N′−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドである、実施形態5に記載の方法。
【0235】
実施形態7。式(I)、式I(a)、および化合物Iの化合物が、(L)−リンゴ酸塩または(D)−リンゴ酸塩である、実施形態1〜6に記載の方法。
【0236】
実施形態8。式(I)の化合物が、(L)リンゴ酸塩および/または(D)リンゴ酸塩の結晶性N−1型またはN−2型である、実施形態1〜7に記載の方法。
【0237】
実施形態9。式I、I(a)、もしくは化合物1の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む、薬学的組成物として投与される、実施形態1〜8に記載の方法。
【0238】
実施形態10。式Iの化合物が、別の形態の治療の後で投与される、実施形態1〜9に記載の方法。
【0239】
実施形態11。式Iの化合物が、シスプラチンおよび/またはゲムシタビン治療後に投与される、実施形態1〜9に記載の方法。
【0240】
実施形態12。式Iの化合物が、ドエクタクセル(doectaxel)治療後に投与される、実施形態1〜9に記載の方法。
【0241】
実施形態13。式Iの化合物が、白金(シスプラチンもしくはカルボプラチン)および/またはパクリタキセル、および/またはゲムシタビン、および/またはドセタキセル、および/またはビノレルビン、および/またはイリノテカン、およびおよび/またはペメトレキセド治療後に投与される、実施形態1〜9に記載の方法。
【0242】
実施形態14。化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌である肺腺癌の治療を、そのような治療を必要とする患者において行うための方法。
【0243】
実施形態15。哺乳動物における異常細胞の成長の進行を阻害する、または逆転させるための方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記異常細胞の成長がKIF5B−RETによって媒介される癌である、方法。
【0244】
実施形態16。癌が、肺腺癌である、実施形態15に記載の方法。17。肺腺癌が、非小細胞肺癌である、実施形態15に記載の方法。
【0245】
実施形態18。肺腺癌が、KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌である、実施形態15に記載の方法。
【0246】
実施形態19。化合物1またはその薬学的に許容される塩が、化合物1またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物として投与される、実施形態18に記載の方法。
【0247】
実施形態20。化合物1またはその薬学的に許容される塩が、化合物1またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物として投与され、薬学的組成物が3ヶ月超の間、毎日投与される、実施形態18に記載の方法。
【0248】
実施形態21。化合物1またはその薬学的に許容される塩が、化合物1またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物として投与され、薬学的組成物が5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、65、70、75、80、85、90、または95mg/日の投薬量で投与される、実施形態18に記載の方法。
【0249】
実施形態22。KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌の検出が、FISH、CISH、またはSISHアッセイを用いて行われる、実施形態18に記載の方法。
【0250】
実施形態23。KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌の検出が、任意の形態のゲノムPCR、直接配列決定、PCR配列決定、RT−PCR、または同様のアッセイを用いて行われる、実施形態18に記載の方法。
【0251】
実施形態24。患者を診断および治療する方法であって、前記患者がNSCLC腫瘍を有しており、その腫瘍が、KIF5B−RET融合陽性のNSCLCとして特定され、治療が、化合物1を含む式Iの化合物のうちのいずれか、またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの薬学的に許容される担体の投与を含む、方法。
【0252】
実施形態25。KIF5B−RET融合陽性の非小細胞肺癌である肺腺癌の治療を、そのような治療を必要とする患者において行うための方法であって、前記患者に、有効量の化合物1:
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0253】
実施形態26。有効量の式I、Ia、および1の化合物が、腫瘍の大きさの減少、転移の減少、完全寛解、部分寛解、安定した疾患、全奏功率の増加、病理学的完全奏功からなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす、実施形態1〜25に記載の方法。
【0254】
生物学的実施例
化合物1は、インビトロでRETの強力な阻害剤である
化合物1は、270ヒトキナーゼのタンパク質キナーゼパネルに対してプロファイルしたときに、MET(IC
50=1.3nmol/L)およびVEGFR2(IC
50=0.035nmol/L)のATP競合的阻害剤であることを既に示している。Yakes,Mol Cancer Ther.2011 Dec;10(12):2298−308を参照のこと。化合物1はまた、5.2nmol/Lの生物学的IC
50値を有するRETの強力な阻害剤である。遺伝性および散発性甲状腺髄様癌と関連することが知られている、RETを活性化するキナーゼドメイン突然変異体M918TおよびY791Fもまた、それぞれ、27および1173nmol/LのIC
50値を有する化合物1によって阻害された。さらに、化合物1は、RET阻害剤に対して耐性を示すことが知られているRET突然変異体V804L(IC
50>5000nmol/L)に対して活性ではなかった。細胞アッセイにおいて、化合物1は、TT細胞においてRETの自己リン酸化を阻害し、カルシトニンを発現するヒト甲状腺髄様癌細胞株は、RETの活性化するC634W突然変異体を内部に有し、85nmol/LのIC
50値を有した。10%の血清中で72時間(3日間)成長させたTT細胞の成長における化合物1の効果もまた、調査された。化合物1の処置により、増殖の用量依存性阻害をもたらし、94nmol/LのIC
50値を有した。
【0255】
生物学的実施例
化合物1は、インビボでRETのリガンド非依存的なリン酸化反応を阻害する
TTの腫瘍を担持する動物に、化合物1の漸増する単一用量または水ビヒクルを投与し、腫瘍を、投与から4時間後に回収した。リン酸化反応のレベルおよび全RETおよびは、ウエスタンブロット分析によってプールした溶解物において決定された。別個の試験において、TTの腫瘍を担持するマウスに、カボザンチニブ(100mg/kg)または水ビヒクルの単一経口用量を投与し、腫瘍溶解物中のリン酸化反応のレベルおよび全RET、AKT、およびERKを、投与後の指示された時点で決定した。RETのリン酸化反応の阻害の持続時間対カボザンチニブの血漿濃度の濃度定量。代表的なウエスタンブロット画像を示す。
【0256】
化合物1の漸増する単一経口用量の投与により、
図1Aに示されるように、TT異種移植片腫瘍における低下したRETタンパク質レベルの不在下でRETのリン酸化反応の用量依存性阻害をもたらした。この結果は、siRNAによるRETおよびRETノックダウンに対して感受性を示す薬理学的阻害剤への複数の甲状腺髄様癌細胞株の感受性を示すデータと一致する。用量応答の関係に基づいて、この異種移植片腫瘍においてRETのリン酸化反応の50%の阻害(IC
50)をもたらすと予測された血漿濃度は、約7μmol/Lである。その後の試験において、
図1Bに示されるように、100mg/kgの単一経口用量により、TT異種移植片腫瘍において投与から4〜24時間後にRETのリン酸化反応の阻害をもたらした。
図1Cに示されるように、RETのリン酸化反応が処置から48時間後までに基礎レベルに戻ったため、この効果は、可逆であった。加えて、化合物1は、投与から4〜24時間後に、AKTおよびERKのリン酸化反応レベルを低下させ、これは、RAS/RAF/MAPK経路のRET媒介性活性化の阻害と一致する。化合物1の血漿濃度は、それぞれ、RET(15μmol/L)、AKTおよびERK(42μmol/L)の最大かつ持続した阻害と関連した。
【0257】
生物学的実施例
化合物1は、TTの腫瘍の成長を阻害する
TT異種移植片腫瘍の成長を阻害する化合物1の能力を、指数関数的腫瘍の成長に対応する期間にわたりnu/nuマウスにおいて評価した。TT腫瘍を担持するNu/nuマウスに、水ビヒクル(□)、または3mg/kg(▽)、10mg/kg(○)、30mg/kg(◆)、または60mg/kg(◇)でカボザンチニブを21日間、1日1回経口投与した。腫瘍の重量を週に2回判定した。データ点は、それぞれの処置群に対する平均腫瘍重量(ミリグラム単位)および標準誤差を表す。循環カルシトニンレベルは、最終の指示された用量後に回収された全血からの血清調製物において決定した(
*は、ビヒクルで処置された対照動物からの血清試料と比較したときの循環カルシトニンの有意なP<0.05の低下を示す)。
【0258】
図2Aに示されるように、化合物1は、血清のカルシトニンの低下と相関するTT異種移植片の腫瘍の成長を阻害し、用量依存性阻害が、10および30mg/kgの用量に対して達成された。さらに、安定した疾患が、3,000〜45,000nmol/Lのピーク循環血漿濃度を伴った30および60mg/kgの用量で観察された。化合物1の亜慢性投与は、投薬期間を通して収集された安定した体重によって判定されるように、良好な耐容性を示した。TT異種移植片腫瘍は腫瘍サイズと相関する豊富な量のヒトカルシトニンを分泌することが知られていることから、循環カルシトニンの血漿濃度を、投薬期間の終了時に決定した。
図2Bに示されるように、ビヒクルで処置した対照動物からの血漿は高レベルの循環カルシトニンを示し、循環カルシトニンは、30および60mg/kgの両方の用量で、ビヒクル対照動物と比較したときに著しく低下した(75%、P<0.005)。さらに、循環血漿カルシトニンのこの低下は、上記のTT腫瘍の成長の阻害と相関した。腫瘍の免疫組織化学分析は、低下したレベルの総タンパク質がない場合は、
図2Cに示されるように、リン酸化したRETおよびMETのレベルの有意かつ用量依存的な減少を示した。さらに、化合物1での処置はまた、生存腫瘍組織中のKi67およびCD31の用量依存的抑制をもたらし、表1に要約されるように、細胞増殖および血管分布のマーカーにおける負の影響を示す。
【0259】
事例研究
以前喫煙者であった51歳の日本人女性は、右胸膜滲出の評価について2009年4月に検査した。胸部のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、右中間葉の腫瘤および右胸膜滲出を示した。胸膜滲出の細胞学的検査は、腺癌を示し、EGFRは、高分解能融解分析を使用して野生型であると判定された。全身精密検査では、遠隔転移の証拠を示さなかった。また、CTスキャン上では首および甲状腺のいずれにも腫瘍はなかった。この患者は、肺腺癌のIIIB期(cT4N0M0,6th edition of the International System for Staging Lung cancer)を有すると診断された。この患者は、4サイクルのシスプラチンおよびゲムシタビンにより治療され、原発腫瘍が部分応答を示した。しかしながら、原発腫瘍の再成長が療法の終了から8カ月後に報告された。その後、この患者は、第二次治療として13サイクルのドセタキセル、および第三次治療として2サイクルの治験用薬物(抗HER2[ヒト上皮成長因子受容体2型]抗体)を受容した。2011年5月、化合物1の単剤療法の第一相試験に参加することに同意し、1日1回、40mgの開始用量でカボザンチニブを受容した。Yamamoto,N.,Nokihara,H.,Wakui,H.,Yamada,Y.,Frye,J.,DeCillis,A.,and Tamura,T.A phase 1 multiple ascending dose study of cabozantinib(XL184)monotherapy in Japanese patients with advanced solid tumors.Molecular Cancer Therapeutics.2011 10 suppl 1(abstr C26)およびNokihara,H.,Yamamoto,N.,Nakamichi,S.,Wakui,H.,Yamada,Y.,Frye,J.,Decillis,A.,and Tamura,T.in Annals of Oncology,Vol.23,Supplement 9,published September 17,2012.
【0260】
9週目の胸部CTスキャンは、原発肺腫瘍の部分応答(40.1%の腫瘍の減少)を示し(
図3)、その後、17週目で確認した。10サイクル(ヶ月)のカボザンチニブ療法中、血清リパーゼがグレード3であるため、薬物中断を行い、腹部超音波検査における膵炎または異常所見の臨床症状もなかった。患者は、進行性疾患のため、2012年2月、カボザンチニブ単剤療法を終了した。
【0261】
KIF5B−RET融合の検出
この患者においては、KIF5B−RET融合の存在を、処理前および処理後の試料を使用して回顧的に評価した。ゲノムDNAを、治療前の試料として胸膜滲出細胞から抽出し、ゲノムDNAおよび全RNAを、治療後の試料として進行時に胸膜滲出細胞から抽出した。QIAamp DNAミニキット(Qiagen,Valencia,CA,USA)を使用して、ゲノムDNAを単離した。TRIzol(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)は、製造業者の取扱説明書に従って全RNAの抽出のために使用し、モデル2100バイオアナライザー(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して、質の検定を行った。この試料は、6.0超のRNA Integrity Numberを示した。
【0262】
全RNA(500ng)を、Superscript III Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用して、cDNAに逆転写した。cDNA(10ngの全RNAに対応する)または10ngのゲノムDNAをKAPA Taq DNAポリメラーゼ(KAPA Biosystems,Woburn,MA,USA)を使用してポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅に供した。反応を、以下の条件下で、サーマルサイクラー内で行った:95℃で15秒間、60℃で15秒間、および72℃で1分間(逆転写酵素(RT)−PCRについては)または3分間(ゲノムPCRについては)を40サイクル、72℃で10分間最終伸長反応。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をコードする遺伝子を増幅して、cDNA合成の効率を評価した。PCR産物を、BigDye TerminatorキットおよびABI 3130xl DNA Sequencer(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を使用して、両方向に直接配列決定した。この試験は、国立癌センター(National Cancer Center,Tokyo,Japan)の施設内治験審査委員会によって承認された。本試験で使用したPCRプライマーを表2に示す。
【0263】
KIF5B(イントロン15)およびRET(イントロン11)遺伝子の融合が、
図4Aに示されるように、処理前および処理後の両方の試料中のゲノムDNAに検出された。
図4は、KIF5B−RETゲノムPCRならびに処理前および処理後の腫瘍試料からのSangerシーケンシングを示す。RT−PCR産物のSanger配列決定は、KIF5B−RET RT−PCRおよび治療後の腫瘍試料からのSanger配列決定を示す
図4Bに示されるように、腫瘍細胞において、最も一般的な種類のKIF5B−RET融合転写産物である、変異体1の転写産物(KIF5Bエクソン15;RETエクソン12)の発現を確認した。BR0020(KIF5B−RET変異体1融合陽性)およびBR2001(KIF5B−RET融合陰性)を、陽性および陰性対照として使用した。GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)の転写産物を増幅して、cDNAの量および質を評価した。T,Ichikawa H,Totoki Y,Yasuda K,Hiramoto M,Nammo T,Sakamoto H,Tsuta K,Furuta K,Shimada Y,Iwakawa R,Ogiwara H,Oike T,Enari M,Schetter AJ,Okayama H,Haugen A,Skaug V,Chiku S,Yamanaka I,Arai Y,Watanabe S,Sekine I,Ogawa S,Harris CC,Tsuda H,Yoshida T,Yokota J,Shibata T.KIF5B−RET fusions in lung adenocarcinoma.Nat Med.2012 Feb 12;18(3):375−7.Takeuchi K,Soda M,Togashi Y,Suzuki R,Sakata S,Hatano S,Asaka R,Hamanaka W,Ninomiya H,Uehara H,Lim Choi Y,Satoh Y,Okumura S,Nakagawa K,Mano H,Ishikawa Y.RET,ROS1 and ALK fusions in lung cancer.Nat Med.2012 Feb 12;18(3):378−81.Lipson D,Capelletti M,Yelensky R,Otto G,Parker A,Jarosz M,Curran JA,Balasubramanian S,Bloom T,Brennan KW,Donahue A,Downing SR,Frampton GM,Garcia L,Juhn F,Mitchell KC,White E,White J,Zwirko Z,Peretz T,Nechushtan H,Soussan−Gutman L,Kim J,Sasaki H,Kim HR,Park SI,Ercan D,Sheehan CE,Ross JS,Cronin MT,Janne PA,Stephens PJ.Identification of new ALK and RET gene fusions from colorectal and lung cancer biopsies.Nat Med.2012 Feb 12;18(3):382−4.処理前の胸膜滲出試料由来の細胞学的材料を、break−apartRETプローブセット(Chromosome Science Labo Inc,Sapporo,Japan)を使用して、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析に供し、RET転座でのbreak−apartFISHを示す
図4Cに示されるように、RET遺伝子の隣接した5′セントロメア(Spectrum Greenで標識したRP11−379D20)および3′テロメア(Spectrum Redで標識したRP11−875A4)の配列でハイブリダイズする。腫瘍細胞は、融合シグナル(元の倍率、100×)に加えて、分離(5′緑色および3′橙色)シグナルを示す。5′および3′プローブによって画定された分離シグナルは、シグナルサイズが腫瘍細胞中で観察された1倍超の距離で観察された。したがって、腫瘍は、RET遺伝子の再配置を有すると判断され、これは上記のPCRの結果と一致した。
【0264】
これは、RET TKIがKIF5B−RET融合陽性のNSCLCに罹患している患者において著しい抗腫瘍活性を示した、最初の報告された症例である。これまでに、インビトロ研究では、KIF5B−RETにより媒介された成長およびシグナル伝達の特性が、バンデタニブ、スニチニブ、またはソラフェニブ等のTKIによる処理後に低下したことを示している。しかしながら、KIF5B−RET融合陽性のNSCLCに罹患している患者がこれらの薬物に応答したという報告はなかった。報告では、KIF5B−RET融合を内部に有する進行性NSCLCに罹患している患者が治療上のRET阻害に対して非常に敏感であり得ることを示唆している。
【0265】
NSCLC患者の約2%がKIF5B−RET融合を内部に有することを特定した。KIF5B−RET融合陽性のNSCLCは、すべての肺癌の小さなサブセットのみを成すが、肺癌は、一般的な疾患であり、肺癌患者の数は毎年増加しており、そのため、このサブセットは、世界中の相当数の患者を意味する。したがって、筆者は、KIF5B−RET融合陽性のNSCLCを特定するための系統的スクリーニング方法の開発を推奨する。NSCLCにおけるEML4−ALK再配置の発見は、2007年に公開され、この疾患に対してクリゾチニブが米国食品医薬品局により2011年に承認され、2012年に日本で承認された。Soda M,Choi YL,Enomoto M,Takada S,Yamashita Y,Ishikawa S,Fujiwara S,Watanabe H,Kurashina K,Hatanaka H,Bando M,Ohno S,Ishikawa Y,Aburatani H,Niki T,Sohara Y,Sugiyama Y,Mano H.Identification of the transforming EML4−ALK fusion gene in non−small−cell lung cancer.Nature.2007 Aug 2;448(7153):561−6.このKIF5B−RET陽性の患者は、化合物1に対して著しい臨床応答を有し、この所見は、KIF5B−RET融合がNSCLCにおいてドライバー癌遺伝子であり、有望な治療標的であることを示唆している。
【0266】
化合物1は、腫瘍病理生理において関与するとされているキナーゼのRETに対するTKの強力な阻害剤である。例えば、Yakesは、化合物1が5.2±4.3nMol/LのIC
50でRETの強力な阻害を示すことを開示する。Yakes FM,Chen J,Tan J,Yamaguchi K,Shi Y,Yu P,Qian F,Chu F,Bentzien F,Cancilla B,Orf J,You A,Laird AD,Engst S,Lee L,Lesch J,Chou YC,Joly AH.Cabozantinib(XL184),a novel MET and VEGFR2 inhibitor,simultaneously suppresses metastasis,angiogenesis,and tumor growth.Mol Cancer Ther.2011 Dec;10(12):2298−308.RETの活性化突然変異体は、甲状腺髄様癌(MTC)の腫瘍形成に重要な役割を果たす。Sennino B,Naylor RM,Tabruyn SP,You WK,Aftab DT
,McDonald DM.Reduction of tumor invasiveness and metastasis and prolongation of survival of RIP−Tag2 mice after inhibition of VEGFR plus c−Met by XL184.Mol Cancer Ther.2009 8 suppl 1(abstr A13).カボザンチニブの第一相の用量漸増研究では、MTCに罹患している37人の患者のうちの25人(68%)が、6ヶ月以上の間、部分応答または安定した疾患を確認した。Kurzrock R,Sherman SI,Ball DW,Forastiere AA,Cohen RB,Mehra R,Pfister DG,Cohen EE,Janisch L,Nauling F,Hong DS,Ng CS,Ye L,Gagel RF,Frye J,Muller T,Ratain MJ,Salgia R.Activity of XL184(Cabozantinib),an oral tyrosine kinase inhibitor,in patients with medullary thyroid cancer.J Clin Oncol.2011 Jul 1;29(19):2660−6.この試験では、腫瘍退縮が周知のRET突然変異体を有する患者および有しない患者において観察され、このことは、一部の応答がMETおよび/もしくはVEGFR2等のRET以外の標的の阻害によって、またはRET経路におけるまだ知られていない異常によって生じたことを示唆した。
【0267】
要約すれば、KIF5B−RET融合を有する我々が試験したNSCLC患者は、カボザンチニブへの臨床応答を有し、カボザンチニブがKIF5B−RET融合を内部に有する進行性NSCLCに罹患している患者において活性であり得ることを示す。KIF5B−RET融合陽性のNSCLCに対するRET−TKIの緊急の臨床評価が必要とされる。
【0268】
他の実施形態
前述の開示は、明瞭さと理解のために、例証と実施例を用いて、ある程度詳細に記載さた。本発明は、様々な特定かつ好ましい実施形態および技術を参照して記載された。しかしながら、本発明の精神および範囲内でありながら、多くの変更および修正が行われ得ることが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲内で、変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、上記の説明は、限定的ではなく例示的であることを意図すると理解されるべきである。
【0269】
したがって、本発明の範囲は、上記の記述を参照して決定されるべきではなく、むしろ、以下の添付の請求項の範囲の参照、およびそのような請求項の範囲が権利を与えられる同等物の範囲全体によって決定されるべきである。