【文献】
申鶴雲 ほか,カチオン化ポリ(γ-グルタミン酸)からなる両性電解質ナノ粒子の調製と機能,Polymer Preprints, Japan(第60回高分子討論会予稿集),2011年,Vol.60, No.2,p.4747-4748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレングリコールセグメントと、疎水性官能基及びカチオン性官能基を側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して具備するポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック型コポリマーであって、前記疎水性官能基が、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記カチオン性官能基が、アルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基である前記ブロック型コポリマー(A)、並びに
側鎖カルボキシ基に疎水性官能基及びカチオン性官能基を直接または結合基を介して有するポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体である二官能性ポリマーであって、前記疎水性官能基が、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記カチオン性官能基が、アルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基である前記二官能性ポリマー(B)
を含有する核酸送達用組成物。
前記ブロック型コポリマー(A)において、前記疎水性官能基が、側鎖カルボキシ基に結合基を介して結合した(C6〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基及び/または(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基であり、前記カチオン性官能基が、アルギニル(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニル(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニル(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニル(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記疎水性官能基と前記カチオン性官能基のそれぞれの含有モル当量の含有比率が、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜10である、請求項1に記載の核酸送達用組成物。
前記二官能性ポリマー(B)において、前記疎水性官能基が、側鎖カルボキシ基に結合基を介して結合した(C6〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基及び/または(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基であり、前記カチオン性官能基が、アルギニル(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニル(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニル(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニル(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であり、前記疎水性官能基と前記カチオン性官能基のそれぞれの含有モル当量の含有比率が、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜20である、請求項1に記載の核酸送達用組成物。
前記ブロック型コポリマー(A)のカチオン性官能基の含有モル当量(AN)と、前記二官能性ポリマー(B)のカチオン性官能基の含有モル当量(BN)において、前記二官能性ポリマー(B)のカチオン性官能基の含有モル当量(BN)が、前記核酸送達用組成物におけるカチオン性官能基総量(AN+BN)に対する百分率(B%)として、30〜80%である請求項1に記載の核酸送達用組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、標的組織及び標的細胞へ核酸分子を送達するための核酸送達用組成物であって、ポリエチレングリコールセグメントと、疎水性官能基及びカチオン性官能基を側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して具備するポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック型コポリマー(A)、並びにポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸であって側鎖カルボキシ基に疎水性官能基及びカチオン性官能基を直接または結合基を介して有する二官能性ポリマー(B)を含む組成物に関する。更に、核酸(C)を含む核酸含有組成物に関する。以下に、本発明の詳細について説明する。
【0020】
[ブロック型コポリマー(A)について]
本発明は、ポリエチレングリコールセグメントと、疎水性官能基及びカチオン性官能基を側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して具備するポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック型コポリマー(A)を用いる。
該ブロック型コポリマーは、ポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントが適当な結合基により連結したブロック型コポリマーを主鎖とする。または、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントが適当な結合基により連結したブロック型コポリマーを主鎖とする。この主鎖において、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸の側鎖カルボニル基に、疎水性官能基及びカチオン性官能基を直接または結合基を介して結合させたブロック型コポリマーである。
【0021】
ブロック型コポリマー(A)における、該ポリエチレングリコールセグメントは、ポリエチレンオキシ基;(CH
2CH
2O)単位の繰り返し構造体セグメントであり、好ましくは重合度が5〜12,000、より好ましくは重合度が20〜6,000のポリエチレングリコール鎖を含むセグメント構造である。ポリエチレングリコール相当の平均分子量として200〜500,000、好ましくは500〜100,000の構造部分であり、特に好ましくは平均分子量として1,000〜50,000である。なお、本発明で用いる分子量とは、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法(Gel Permeation Chromatography)により測定されるピークトップ分子量である。
該ポリエチレングリコールセグメントの末端基は、後述するポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントと結合するための連結基である。もう一方の末端基は、特に限定されるものではなく、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルコキシ基、置換基を有していてもよい(C2〜C12)のアルキニルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)アラルキルオキシ基等を挙げることができる。該アルコキシ基、アルキニルオキシ基、アラルキルオキシ基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。また、前記置換基を介して、標的指向性分子を具備することもできる。標的指向性分子としては、タンパク質やペプチドまたは葉酸等が挙げられる。
【0022】
ブロック型コポリマー(A)における、ポリエチレングリコールセグメントと、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントを連結する結合基としては、2つのポリマーセグメントを化学結合により連結する基であれば、特に限定されるものではなく、ポリエチレングリコール末端基とポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸の末端基と結合できる官能基を具備した結合基であれば良い。好ましくは、(C1〜6)アルキレン基である。ポリエチレングリコールセグメントとの結合様式は、ポリオキシエチレン基;(CH
2CH
2O)の末端酸素原子によるエーテル結合が好ましく、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントとの結合様式はアミド結合またはエステル結合であることが好ましい。
【0023】
ブロック型コポリマー(A)における、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントとは、アスパラギン酸またはグルタミン酸の重合体構造セグメントである。ポリアスパラギン酸の重合様式はペプチド結合であり、α結合体であってもβ結合体であっても良く、その混合物であってもよい。また、ポリグルタミン酸の重合様式もペプチド結合であり、α結合体であってもγ結合体であっても良く、その混合物であってもよい。
該ポリアスパラギン酸または該ポリグルタミン酸は、重合度が10〜200の重合体であることが好ましい。
【0024】
ブロック型コポリマー(A)における、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントは、側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して疎水性官能基及びカチオン性官能基を具備する。
前記疎水性官能基は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。
ブロック型コポリマー(A)の疎水性官能基としての、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロへキシルエチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基、イソヘキサデシル基、イソオクタデシル基、t−オクチル基、t−デシル基、t−ドデシル基、t−テトラデシル基、t−ヘキサデシル基、t−オクタデシル基等が挙げられる。
前記疎水性官能基における前記アルキル基としては、(C8〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基がより好ましい。
【0025】
前記疎水性官能基における、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基とは、いずれか1カ所に炭素―炭素二重結合を有する、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数(C4〜C20)アルケニル基である。例えば、1−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、1―オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−オクタデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、9−ヘキサデセニル基等が挙げられる。
前記疎水性官能基における前記アルケニル基としては、(C8〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基がより好ましい。
【0026】
前記疎水性官能基における、前記置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基とは、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。好ましくは4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
【0027】
前記疎水性官能基における(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基は、それぞれ適当な置換基を有していてもよい。
置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環アリール基、複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
【0028】
前記炭素環アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記複素環アリール基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、トリアゾリル基等が挙げられる。
前記アルキルチオ基としては(C1〜C8)のアルキルチオ基を示し、例えば、メチルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、ベンジルチオ基等が挙げられる。
前記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
前記アルキルスルフィニル基としては、(C1〜C8)のアルキルスルフィニル基を示し、例えば、メチルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、ピリジルスルフィニル基等が挙げられる。
前記アルキルスルホニル基としては、(C1〜C8)のアルキルスルホニル基を示し、例えば、メチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ベンジルスルホニル基等が挙げられる。
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ピリジルスルホニル基等が挙げられる。
前記スルファモイル基としては、例えば、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基等が挙げられる。
【0029】
前記アルコキシ基としては、(C1〜C8)のアルコキシ基を示し、例えばメトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等の1級アルコキシ基、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基等の2級アルコキシ基、若しくはt−ブトキシ基等の3級アルコキシ基を挙げることができる。
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
前記アシルオキシ基としては、(C1〜C8)のアシルオキシ基を示し、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニルオキシ基としては(C1〜C8)のアルコキシカルボニルオキシ基を示し、例えば、メトキシカルボニルオキシ基、トリフルオロメトキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
前記カルバモイルオキシ基としては、例えば、ジメチルカルバモイルオキシ基、フェニルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0030】
前記置換または無置換アミノ基としては、例えば、無置換アミノ基、非環状の脂肪族1級アミノ基または非環状の脂肪族2級アミノ基、若しくは環状の脂肪族2級アミノ基を示す。
前記非環状の脂肪族1級アミノ基としては、(C1〜C10)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が、N−モノ置換したアミノ基である。例えば、メチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基等が挙げられる。
前記非環状の脂肪族2級アミノ基としては、同一であっても異なっていても良く、(C1〜C10)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が、N,N−ジ置換したアミノ基である。例えばジメチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
前記環状の脂肪族2級アミノ基としては、モルホリノ基、ピペラジン−1−イル基、4−メチルピペラジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピロリジン−1−イル基等が挙げられる。
前記アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニルアミノ基としては、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
前記ウレイド基としては、例えば、トリメチルウレイド基、1−メチル−3−フェニル−ウレイド基等が挙げられる。
前記スルホニルアミノ基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等が挙げられる。
前記スルファモイルアミノ基としては、例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基等が挙げられる。
【0031】
前記アシル基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記カルバモイル基としては、例えば、ジメチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
前記シリル基としては、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0032】
ブロック型コポリマー(A)における前記疎水性官能基は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、直接または結合基を介して結合させる。該疎水性官能基を側鎖カルボキシ基に直接結合させる場合は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基が、側鎖カルボキシ基にケトン型構造で結合することになる。しかしながら、側鎖カルボキシ基に対して、適当な結合基を介して該疎水性官能基を結合させる態様が、前記ブロック型コポリマーの調製し易い点で好ましい態様である。
適当な結合基としては、酸素原子、−NH−基、硫黄原子及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基を用いることが好ましい。
前記結合基として酸素原子を用いる場合、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基は、エステル結合の様式にて前記ブロック型ポリマー(A)に官能基化される。また、前記結合基として−NH−基を用いる場合、前記疎水性官能基は、アミド結合の様式にて官能基化される。一方、前記結合基として硫黄原子を用いる場合、前記疎水性官能基は、チオエステル結合の様式にて官能基化される。
【0033】
前記結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。炭化水素系アミノ酸は、炭化水素基側鎖が疎水性官能基として機能する点で好ましい。また、酸性アミノ酸は、カルボン酸官能基を増やすことができ、多官能基化する場合に好適である。一方、塩基性アミノ酸を用いる場合、核酸保持に有利なカチオン性官能基を付与できる点で好ましく、また、酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与できる点で好ましい。疎水性官能基を具備させるための結合基としてアミノ酸を用いる場合は、目的とする機能に応じて適宜設定されるべきである。
なお、結合基としてアミノ酸を用いる場合は、該アミノ酸のN末アミノ基と前記側鎖カルボキシ基がアミド結合し、該アミノ酸のC末のカルボキシ基と、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基が、酸素原子を介してエステル結合様式、−NH−基を介してアミド結合様式、若しくは硫黄原子を介してチオエステル結合様式にて官能基化がなされることが好ましい。
【0034】
前記ブロック型ポリマー(A)は、前記疎水性官能基として、疎水性官能基を結合させているアミノ酸誘導体を用いることが好ましく、特に疎水性官能基を結合させたヒスチジン誘導体を用いることが好ましい。ヒスチジンは、その側鎖イミダソール環が酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与でき、細胞質への核酸の導入の向上に有利な効果を奏する事から好ましい。
前記疎水性官能基を結合させたヒスチジン誘導体の好ましい結合様式としては、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、ヒスチジンのN末アミノ基がアミド結合し、該ヒスチジンのC末カルボキシ基に、前記疎水性官能基をエステル結合またはアミド結合により結合させることが好ましい。
ヒスチジンを結合基として疎水性官能基を導入する態様としては一般式(3)で示される。
【化5】
ここで、一般式(3)におけるR
12は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアラルキル基からなる群から選択される1種であり、X
3aは酸素原子、−NH−基及び硫黄原子から選択される1種である。前記R
12の該アルキル基、該アルケニル基及び該アラルキル基は、前述の疎水性官能基と同義である。
【0035】
前記ブロック型ポリマー(A)は、前記疎水性官能基が複数当量で結合していることが好ましい。結合基当量数は、該疎水性官能基の疎水性により適宜設定してよいが、該ブロック型ポリマー1分子当り2当量以上で100当量以下である。2当量以上で50当量以下の結合当量であることが好ましい。
前記疎水性官能基が複数当量で結合している場合、該疎水性官能基は同一種類であっても、複数種類が混在していてもよい。
【0036】
ブロック型コポリマー(A)は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、直接または結合基を介してアルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基を具備する。
該アルギニン誘導体結合基及び該リジン誘導体結合基としては、側鎖のグアニジル基またはアミノ基がカチオン性を示すものであれば良く、アルギニン構造単位またはリジン構造単位が含まれていれば良い。前記ブロック型コポリマー(A)におけるカチオン性官能基は、該アルギニン誘導体結合基または該リジン誘導体結合基のいずれか一方を用いても良く、これらの混合物であってもよい。好ましくは、その何れか一方の単一分子構造で用いられる態様であって、より好ましくはアルギニン誘導体結合基を用いることが特に好ましい。
該アルギニン誘導体または該リジン誘導体の好ましい結合様式としては、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、アルギニン誘導体またはリジン誘導体を、直接または結合基を介して結合させる態様を挙げることができる。
【0037】
前記アルギニン誘導体結合基としては、一般式(4)または(5)で表される結合基であることが好ましい。
【化6】
一般式(4)において、R
13は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示し、L
1は任意の結合基を示す。
また、一般式(5)において、R
14は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示し、L
2は任意の結合基を示す。
【0038】
一般式(4)におけるR
13の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0039】
一般式(5)におけるR
14の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
R
14の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
一般式(4)及び(5)におけるL
1及びL
2は、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記アルギニン誘導体結合基を連結する結合基である。L
1及びL
2の結合基としては、その両末端が、カルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではない。
該L
1としては、例えば、―NH―(CH
2)
α―CO−、―NH―(CH
2)
α―NHCO−、―NH―(CH
2)
α―OCO−、―O―(CH
2)
α―CO−、―O―(CH
2)
α―NHCO−、―O―(CH
2)
α―OCO−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−等が挙げられる。ここで、αは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、L
1は「結合」であってよい。該「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基と、アルギニン誘導体のN末アミノ基が直接結合していることを意味する。
また、該L
2としては、例えば、―NH―(CH
2)
α―NH−、―NH―(CH
2)
α―O−、―O―(CH
2)
α―NH−、―O―(CH
2)
α―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、αは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。
【0041】
前記カチオン性官能基がアルギニン誘導体結合基の場合、好ましくは、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0042】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基である場合、一般式(6)または(7)で表される結合残基であることが好ましい。
【化7】
一般式(6)において、R
15は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミド基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミド基を示し、L
3は任意の結合基を示す。
また、一般式(7)において、R
16は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示し、L
4は任意の結合基を示す。
【0043】
一般式(6)におけるR
15の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
15の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
15の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
15の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
一般式(7)におけるR
16の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
R
16の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0045】
一般式(6)及び(7)におけるL
3及びL
4は、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記アルギニン誘導体結合基を連結する結合基である。L
3及びL
4の結合基としては、その両末端が、カルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではない。
該L
3としては、例えば、―NH―(CH
2)
α―CO−、―NH―(CH
2)
α―NHCO−、―NH―(CH
2)
α―OCO−、―O―(CH
2)
α―CO−、―O―(CH
2)
α―NHCO−、―O―(CH
2)
α―OCO−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−等が挙げられる。ここで、αは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、L
3は「結合」であってよい。該「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基と、アルギニン誘導体のN末アミノ基が直接結合していることを意味する。
また、該L
4としては、例えば、―NH―(CH
2)
α―NH−、―NH―(CH
2)
α―O−、―O―(CH
2)
α―NH−、―O―(CH
2)
α―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、αは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。
【0046】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基の場合、好ましくは、リジン(C1〜C8)アルキルエステル基、リジン(C7〜C10)アラルキルエステル基、リジン(C1〜C8)アルキルアミド基及びリジン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0047】
前記ブロック型ポリマー(A)は、前記カチオン性官能基が複数当量で結合していることが好ましい。結合基当量数は、該疎水性官能基の疎水性により適宜設定してよいが、該ブロック型ポリマー1分子当り2当量以上で150当量以下である。5当量以上で100当量以下の結合当量であることが好ましい。
【0048】
本発明のブロック型コポリマー(A)において、前記疎水性官能基は核酸送達用キャリアとして、そのキャリア構造の安定化に寄与する。また、前記カチオン性官能基は、核酸分子との静電的相互作用による核酸保持のための機能性官能基である。本発明は、核酸分子の安定的な保持と送達を目的とするものであり、該ブロック型コポリマー(A)は、疎水性官能基とカチオン性官能基の2つの機能性官能基を具備することを特徴とする。
該ブロック型コポリマー(A)における、疎水性官能基とカチオン性官能基のそれぞれの結合量は、特に限定されるものではなく、キャリア構造の安定性と核酸分子の保持力を考慮して、適宜、設定することができる。すなわち、核酸送達キャリア構造の安定化を向上させるためには、ブロック型コポリマー(A)の該疎水性官能基の結合量を増やすことが好ましい。また、核酸分子の保持力を向上させるためには、カチオン性官能基の結合量を増やすことが好ましい。
核酸分子の安定的な保持と送達を達成するためには、該疎水性官能基とカチオン性官能基の結合量のバランスを考慮することが重要である。ブロック型コポリマー(A)において、疎水性官能基よりも、カチオン性官能基の方を多く付与することが好ましい。該ブロック型コポリマー(A)における疎水性官能基とカチオン性官能基の含有モル当量比率は、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜20であることが好ましく、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜10であることがより好ましい。
【0049】
本発明において、前記ブロック型コポリマー(A)は、一般式(1)
【化8】
[式中、R
1は水素原子または置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルキル基を示し、R
2は置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルキレン結合基を示し、R
3aはメチレン基またはエチレン基を示し、R
4aは水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアシル基及び置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R
5aは置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基を示し、R
6aはアルギニン誘導体結合基またはリジン誘導体結合基を示し、R
7aは水酸基及び/または−N(R
8a)CONH(R
9a)であり、ここで、R
8a及びR
9aは同一でも異なっていてもよく、(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基を示し、X
1a及びX
2aは結合または結合基を示し、a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれ独立して0〜200の整数を示し、(a+b)及び(c+d)は1〜200の整数を示し、(a+b+c+d+e+f+g)は10〜200の整数を示し、R
5a、R
6a及びR
7aが結合している各構成ユニット並びに側鎖カルボニル基の分子内環化型構成ユニットは、それぞれ独立してランダムに配列した構造であり、tは5〜11,500の整数である。]で示されるブロック型コポリマーであることが好ましい。
【0050】
一般式(1)のR
1における(C1〜C6)のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C6)のアルキル基が挙げられる。好ましくは直鎖または分岐鎖の(C1〜C4)のアルキル基である。
直鎖状、分岐鎖状または環状の(C1〜C6)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。
該(C1〜C6)のアルキル基において有していてもよい置換基とは、特に限定されるものではないが、例えば、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環アリール基、複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。なお、各置換基についての詳細な説明は、前述のブロック型ポリマー(A)における置換基と同義である。
【0051】
一般式(1)のR
2における置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルキレン結合基としては、特に限定されるものではなく、置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルキレン結合基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0052】
一般式(1)のR
4aにおける置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアシル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオ二ル基、ピバロイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基である。
R
4aにおける置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基である。
なお、該R
4aにおける有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0053】
一般式(1)のR
5aは疎水性官能基である。該疎水性官能基は、本発明に係るブロック型コポリマー(A)及び後述する二官能性ポリマー(B)において疎水性相互作用を惹起し、会合体を形成するための機能性官能基である。
該R
5aとしては、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。
該R
5aとしての疎水性官能基は、一般式(1)に係るポリマー分子中で単一種類であっても良く、また2種類以上の疎水性官能基の混合物であってもよい。
R
5aにおける(C4〜C20)のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の(C4〜C20)のアルキル基が挙げられる。例えば、n−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基、イソヘキサデシル基、イソオクタデシル基、t−オクチル基、t−デシル基、t−ドデシル基、t−テトラデシル基、t−ヘキサデシル基、t−オクタデシル基等が挙げられる
R
5aにおける(C4〜C20)のアルケニル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の(C4〜C20)のアルケニル基が挙げられる。例えば、1−ブテニル基、シクロヘキセニル基、1―オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−オクタデセニル基、cis−9−オクタデセ二ル基、9−ヘキサデセ二ル基等が挙げられる。
R
5aにおける(C7〜C20)のアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C20)のアラルキル基が挙げられる。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
なお、該R
5における有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0054】
一般式(1)におけるX
1aは結合基である。すなわち、ポリマー主鎖の側鎖カルボキシ基と、前記R
5aで示される疎水性官能基を結合するための連結基である。X
1aは、結合、酸素原子、−NH−基、硫黄原子及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基である。ここで結合とは、結合基を介さないで直接、側鎖カルボキシ基に結合した結合様式を示す。該X
1aとしては、酸素原子、−NH−基及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基であることが好ましい。
前記結合基として酸素原子を用いる場合、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基は、エステル結合の様式にて当該ブロック型コポリマー(A)に官能基化される。前記結合基として−NH−基を用いる場合、前記疎水性官能基はアミド結合の様式にて官能基化される。
前記X
1aに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。炭化水素系アミノ酸は、炭化水素基側鎖が疎水性官能基として機能する点で好ましい。また、酸性アミノ酸は、カルボン酸官能基を増やすことができ、多官能基化する場合に好適である。一方、塩基性アミノ酸を用いる場合、核酸保持に有利なカチオン性官能基を付与できる点で好ましく、また、酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与できる点で好ましい。前記X
1aに係る結合基としてアミノ酸を用いる場合は、目的とする機能に応じて適宜設定されるべきである。
なお、結合基としてアミノ酸を用いる場合は、該アミノ酸のN末アミノ基と前記側鎖カルボキシ基とがアミド結合し、該C末のカルボキシ基と、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基が、酸素原子を介してエステル結合様式、−NH−基を介してアミド結合様式または硫黄原子を介してチオエステル結合様式にて官能基化がなされる。
【0055】
一般式(1)のX
1aにおける疎水性官能基の結合基としては、アミノ酸誘導体を用いることが特に好ましく、ヒスチジンを用いることが、殊更好ましい。ヒスチジンは、側鎖イミダゾール環が酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与することができ、細胞質への核酸の導入の向上に有利な効果を奏する事から好ましい。
好ましい結合様式としては、ポリマー主鎖の側鎖カルボキシ基に、ヒスチジンのN末アミノ基をアミド結合させ、該ヒスチジンのC末カルボキシ基に、前記R
5aに係る疎水性官能基をエステル結合またはアミド結合により結合させることが好ましい。すなわち前記X
1aとして、ヒスチジニルオキシ基及び/またはヒスチジニルアミド基であることが好ましい。
前記X
1aとしてヒスチジンを結合基に用い、疎水性官能基であるR
5aを導入する態様としては、一般式(8)で示される置換基が好ましい。
【化9】
ここで、一般式(8)におけるR
5aは、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び前記置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。X
3aは酸素原子、−NH−基及び硫黄原子から選択される1種以上の基である。
【0056】
一般式(1)において、疎水性官能基及び結合基であるR
5a及びX
1aは、ヒスチジン誘導体を介して置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基を結合させる態様が好ましい。以下に、X
1aとしてヒスチジン誘導体を介した好ましい疎水性官能基;R
5aの置換基の態様を説明する。
X
1aとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5aとして置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−n−オクチルエステル基、ヒスチジニルイソクチルエステル基、ヒスチジニルイソデシルエステル基、ヒスチヒスチジニル−n−デシルエステル基、ヒスチジニル−n−ドデシルエステル基、ヒスチジニル−n−テトラデシルエステル基、ヒスチジニル−n−ヘキサデシルエステル基、ヒスチジニル−n−オクタデシルエステル基、ヒスチジニルイソドデシルエステル基、ヒスチジニルイソテトラデシルエステル基、ヒスチジニルイソヘキサデシルエステル基、ヒスチジニルイソオクタデシルエステル基、ヒスチジニル−t−オクチルエステル基、ヒスチジニル−t−デシルエステル基、ヒスチジニル−t−ドデシルエステル基、ヒスチジニル−t−テトラデシルエステル基、ヒスチジニル−t−ヘキサデシルエステル基、ヒスチジニル−t−オクタデシルエステル基等が挙げられる。
また、該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−n−オクチルアミド基、ヒスチジニル−n−デシルアミド基、ヒスチジニル−n−ドデシルアミド基、ヒスチジニル−n−テトラデシルアミド基、ヒスチジニル−n−ヘキサデシルアミド基、ヒスチジニル−n−オクタデシルアミド基、ヒスチジニルイソオクチルアミド基、ヒスチジニルイソデシルアミド基、ヒスチジニルイソドデシルアミド基、ヒスチジニルイソテトラデシルアミド基、ヒスチジニルイソヘキサデシルアミド基、ヒスチジニルイソオクタデシルアミド基、ヒスチジニル−t−オクチルアミド基、ヒスチジニル−t−デシルアミド基、ヒスチジニル−t−ドデシルアミド基、ヒスチジニル−t−テトラデシルアミド基、ヒスチジニル−t−ヘキサデシルアミド基、ヒスチジニル−t−オクタデシルアミド基等が挙げられる。
【0057】
X
1aとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5aとして置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−1−オクテニルエステル基、ヒスチジニル−1−デセニルエステル基、ヒスチジニル−1−ドデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−テトラデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−ヘキサデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−オクタデセニルエステル基、ヒスチジニル−cis−9−オクタデセニルエステル基、ヒスチジニル−9−ヘキサデセニルエステル基等が挙げられる。
また、該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−1−オクテニルアミド基、ヒスチジニル−1−デセニルアミド基、ヒスチジニル−1−ドデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−テトラデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−ヘキサデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−オクタデセニルアミド基、ヒスチジニル−cis−9−オクタデセニルアミド基、ヒスチジニル−9−ヘキサデセニルアミド基等が挙げられる。
【0058】
X
1aとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5aとして置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−4−フェニルブチルエステル基、ヒスチジニル−3−フェニルブチルエステル基、ヒスチジニル−5−フェニルペンチルエステル基、ヒスチジニル−6−フェニルへキシルエステル基、ヒスチジニル−8−フェニルオクチルエステル基等が挙げられる。
該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−4−フェニルブチルアミド基、ヒスチジニル−3−フェニルブチルアミド基、ヒスチジニル−5−フェニルペンチルアミド基、ヒスチジニル−6−フェニルへキシルアミド基、ヒスチジニル−8−フェニルオクチルアミド基等が挙げられる。
【0059】
一般式(1)におけるR
6aはカチオン性官能基であり、アニオン性に荷電する核酸分子と静電的相互作用により複合体を形成するための機能性官能基である。一般式(1)において、R
6aはアルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基である。R
6aにおけるカチオン性官能基は、一般式(1)に係るポリマー分子中で単一種類であっても、アルギニン誘導体結合基及びリジン誘導体結合基の混合物であってもよい。
【0060】
一般式(1)のR
6aがアルギニン誘導体結合基である場合、一般式(9)または(10)で表されるアルギニン誘導体結合基であることが好ましい。
【化10】
一般式(9)において、R
13は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミド基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミド基を示す。
また、一般式(10)において、R
14は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示す。
【0061】
一般式(9)におけるR
13の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
13の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
なお、該R
13における有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0062】
一般式(10)におけるR
14の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
R
14の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
14の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
なお、該R
14における有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0063】
前記カチオン性官能基がアルギニン誘導体結合基の場合、好ましくは、一般式(9)で示されるアルギニン誘導体結合基であって、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0064】
一般式(1)におけるR
6aがリジン誘導体結合基である場合、一般式(11)または(12)で表されるリジン誘導体結合基であることが好ましい。
【化11】
一般式(11)において、R
15は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミド基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示す。
また、一般式(12)において、R
16は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示す。
【0065】
一般式(11)におけるR
15の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
15の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
15の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
15の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
なお、該R
15における有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0066】
一般式(12)におけるR
16の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
R
16の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
16の(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
なお、該R
16における有していてもよい置換基とは、前記R
1と同義である。
【0067】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基の場合、好ましくは、一般式(11)で示されるリジン誘導体結合基であって、リジン(C1〜C8)アルキルエステル基、リジン(C7〜C10)アラルキルエステル基、リジン(C1〜C8)アルキルアミド基及びリジン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0068】
一般式(1)におけるX
2aは、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記R
6aに係る前記アルギニン誘導体結合基または前記リジン誘導体結合基を連結する結合基である。
該X
2aに係る結合基としては、両末端がカルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではないが、例えば、―NH―(CH
2)
α’’―CO−、―NH―(CH
2)
α’’―NHCO−、―NH―(CH
2)
α’’―OCO−、―O―(CH
2)
α’’―CO−、―O―(CH
2)
α’’―NHCO−、―O―(CH
2)
α’’―OCO−、―O―(CH
2)
α’’―NH−、―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−、―NH―(CH
2)
α’’―NH−、―NH―(CH
2)
α’’―O―、―O―(CH
2)
α’’―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、α’’は1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、該X
2aは「結合」であってよい。「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基とアルギニン誘導体結合基またはリジン誘導体結合基が直接結合していることを意味する。
【0069】
一般式(1)におけるR
6aは、アルギニン誘導体結合基であることが好ましい。すなわち、一般式(1)におけるカチオン性官能基であるR
6aは、好ましくは、前記一般式(9)で示されるアルギニン誘導体結合基であって、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。その際、一般式(1)におけるX
2aは、結合であることが好ましい。
【0070】
一般式(1)において、R
7aは水酸基及び/または−N(R
8a)CONH(R
9a)である。
該−N(R
8a)CONH(R
9a)において、R
8a及びR
9aは同一でも異なっていてもよく、(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基、若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基である。
該(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはイソプロピル基、シクロへキシル基が挙げられる。
該三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、6−ジメチルアミノヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、エチル基、3−ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。
【0071】
前記R
7aは水酸基及び/または−N(R
8a)CONH(R
9a)であるが、水酸基のみである場合、水酸基及び−N(R
8a)CONH(R
9a)が共存する場合、若しくは−N(R
8a)CONH(R
9a)のみである場合の態様を取り得る。水酸基と−N(R
8a)CONH(R
9a)の存在比率は任意に設定されてよい。
【0072】
一般式(1)のR
7aは、水酸基であってよい。すなわち、一般式(1)の側鎖カルボキシ基に、前記R
5a、前記R
6a及び−N(R
8a)CONH(R
9a)の何れもが結合していないカルボキシ基が存在して良い。一般式(1)において、R
7aが水酸基である場合、側鎖カルボン酸の遊離酸型で示されている。しかしながら、側鎖カルボン酸のアルカリ金属塩型、アルカリ土類金属塩型、アンモニウム塩型の形態も取り得て、これらの塩態様も含まれるものである。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
また、本核酸送達用組成物が非経口投与にて供せられる場合、医薬品として許容される溶解液にて溶液調製されるが、R
7aが水酸基である場合の側鎖カルボン酸は、その溶液のpH及び緩衝溶液の塩の有無に依存した側鎖カルボン酸塩の態様を取り得てよい。
【0073】
一般式(1)は、ポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック型コポリマー構造体である。そのポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントとしては、側鎖カルボキシ基にR
5a、R
6a及びR
7aが結合したユニット及び側鎖カルボン酸が分子内環化構造をとるユニットが存在する。これらの各アスパラギン酸ユニットまたはグルタミン酸ユニットは、それぞれ独立して、ランダムな配列にて存在したセグメント構造である。すなわち、該カルボキシ基にR
5a、R
6a及びR
7aが結合したユニット並びに側鎖カルボン酸が分子内環化構造をとるユニットが、それぞれ任意の順番で配列した態様であってもよい。例えば、それぞれの構成単位が、局在化して偏局した配列の態様であっても良く、それぞれの構成単位に規則性がないランダム配列で構成されたポリマー構造であってもよく、つまり、その側鎖修飾体の配列順序において、特に規則性のない配列である。
【0074】
一般式(1)において、各アスパラギン酸ユニットまたはグルタミン酸ユニットの含量を示すa、b、c、d、e、f及びgは、それぞれ独立して0〜200の整数である。該ブロック型コポリマー(A)の、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)は、10〜200の整数である。好ましくは、重合数が15〜100である。
【0075】
疎水性官能基であるR
5aが結合したユニットは必須の構成ユニットであり、総ユニット数である(a+b)は、1〜200の整数である。好ましくは(a+b)が3〜100の整数である。より好ましくは、(a+b)は3〜60の整数である。
ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)に対する、疎水性官能基であるR
5aの含有総ユニット数である(a+b)の存在比率は、2〜50%であることが好ましい。より好ましくは、(a+b)の全体ユニットに対する存在比率が5〜45%である。
【0076】
また、カチオン性官能基であるR
6aが結合したユニットは必須の構成ユニットであり、総ユニット数である(c+d)は1〜200の整数である。好ましくは(c+d)が10〜150の整数である。より好ましくは、(c+d)は20〜100の整数である。
ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)に対する、カチオン性官能基であるR
6aの含有総ユニット数である(c+d)の存在比率は、50〜90%であることが好ましい。より好ましくは、(c+d)の全体ユニットに対する存在比率は50〜80%である。
R
7aが結合したユニット及び側鎖カルボキシ基が分子内環化構造をとるユニットは、任意に存在して良く、その存在含量数を示すe、f及びgは、0〜200の整数である。
側鎖カルボキシ基に、疎水性官能基であるR
5a及びカチオン性官能基であるR
6aが結合していないユニット総数である(e+f+g)は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(a+b+c+d+e+f+g)に対して、0〜40%である。好ましくは、(e+f+g)の存在比率は2〜30%である。
【0077】
一般式(1)において、ポリエチレングリコールセグメントの重合数であるtは5〜11,500の整数である。すなわちポリエチレングリコールセグメントの分子量としては、200〜500,000である。好ましくは、tは12〜2,500の整数であり、分子量としては500〜100,000である。より好ましくは、tは30〜1200の整数であり、分子量としては1300〜50,000である。
【0078】
次に、本発明のブロック型コポリマー(A)の製造方法について説明する。
本発明のブロック型コポリマー(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、ポリエチレングリコールセグメントと、側鎖カルボキシ基に疎水性官能基及びカチオン性官能基を導入したポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントを、適当な結合様式により結合させる方法で製造することができる。また、ポリエチレングリコールセグメントに対し、ポリアスパラギン酸誘導体またはポリグルタミン酸誘導体を構築できる重合性モノマー体を、逐次重合反応させてブロック型コポリマーを調製する方法であってもよい。若しくは、ポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸が結合したABブロック型コポリマーをあらかじめ調製し、これに適当な疎水性官能基及びカチオン性官能基を導入して調製する方法であってもよい。
【0079】
ブロック型コポリマー(A)の製造方法として、好ましくは、ポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸が結合したABブロック型コポリマーをあらかじめ調製し、これに適当な疎水性官能基及びカチオン性官能基をアミド結合様式及び/またはエステル結合様式により、適当な縮合条件で反応させることで、製造することができる。縮合条件は、通常の有機合成反応で用いることができる方法を、適宜使用することができる。
【0080】
ポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントが連結したABブロック型コポリマーを用い、これに、疎水性官能基及びカチオン性官能基を導入して該ブロック型コポリマー(A)を得る製造方法の一態様を説明する。
始めに、一方の末端がアミノ基であるポリエチレングリコール誘導体(例えば、メトキシポリエチレングリコール−1−プロピルアミン)に、β−ベンジルエステル等の適当な側鎖カルボキシ基保護したN−カルボニルアスパラギン酸無水物を順次反応させて、逐次重合によりポリエチレングリコールセグメントとポリアスパラギン酸セグメントが連結したABブロック型コポリマー骨格を構築する。
その後、適当な脱保護反応を施し、複数のカルボン酸側鎖を備えるポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸共重合体を合成する。脱保護反応としては、ポリアスパラギン酸側鎖がβ−ベンジルエステルである場合、アルカリ条件下での加水分解や、加水素分解反応により脱保護基反応をすることができる。
このポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸共重合体に対し、アミノ基及び/または水酸基を有する疎水性官能基含有化合物を、カルボジイミド脱水縮合剤等の縮合反応条件にて反応させればよい。また、同様にアミノ基及び/または水酸基を有するカチオン性官能基含有化合物を、カルボジイミド脱水縮合剤等の縮合反応条件にて反応させればよい。該疎水性官能基含有化合物と、該カチオン性官能基含有化合物の反応順は、任意の順序であって良く、同時に反応させてもよい。なお、上述したカルボジイミド脱水縮合剤を用いる製造方法は、ブロック型コポリマー(A)において、一般式(1)のR
7aに係る−N(R
8a)CONH(R
9a)基を同時に導入することができることから、有利な製造方法である。
該カルボジイミド脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)等を用いることができる。該脱水縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)や、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等の反応補助剤を用いてもよい。
【0081】
前記ブロック型コポリマー(A)の、疎水性官能基及びカチオン性官能基のそれぞれの導入量は、脱水縮合反応において、疎水性基含有化合物及びカチオン性官能基含有化合物の仕込み量を、適宜増減させることで調整することができる。
なお、カルボジイミド縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いた場合、前記−N(R
8a)CONH(R
9a)の、R
8a及びR
9aはシクロへキシル基となる。また、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いて縮合反応を行った場合、R
8a及びR
9aはイソプロピル基となる。一方、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、−N(R
8a)CONH(R
9a)のR
8a及びR
9aは、エチル基と3−ジメチルアミノプロピル基の混合置換体となる。
前記反応終了後に、任意の精製工程を経由して本発明のブロック型コポリマー(A)を製造することができる。
前記ブロック型コポリマー(A)として、ポリグルタミン酸セグメントである場合の合成方法は、前述の合成例におけるN−カルボニルアスパラギン酸無水物に代えて、N−カルボニルグルタミン酸無水物を用いることで、ポリグルタミン酸を含む該共重合体が得られる。これに対し、上述と同様の操作により該疎水性官能基含有化合物及び該カチオン性官能基含有化合物を導入させれば、ポリグルタミン酸を備えるブロック型コポリマー(A)を合成することができる。
【0082】
[二官能性ポリマー(B)について]
本発明は、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸であって、側鎖カルボキシ基に疎水性官能基及びカチオン性官能基を直接または結合基を介して有する二官能性ポリマー(B)を用いる。
該二官能性ポリマー(B)における、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントとは、アスパラギン酸またはグルタミン酸の重合体構造セグメントである。ポリアスパラギン酸の重合様式はペプチド結合であり、α結合体であってもβ結合体であっても良く、その混合物であってもよい。また、ポリグルタミン酸の重合様式もペプチド結合であり、α結合体であってもγ結合体であっても良く、その混合物であってもよい。
ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸は、重合度が10〜200の重合体であることが好ましい。
【0083】
二官能性ポリマー(B)におけるポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントは、側鎖カルボキシ基に直接または結合基を介して疎水性官能基を具備する。
前記疎水性官能基は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。
二官能性ポリマー(B)の疎水性官能基としての、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基としては、例えば、n−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロへキシルエチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基、イソヘキサデシル基、イソオクタデシル基、t−オクチル基、t−デシル基、t−ドデシル基、t−テトラデシル基、t−ヘキサデシル基、t−オクタデシル基等が挙げられる。
前記疎水性官能基における前記アルキル基としては、(C6〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が、より好ましい。
【0084】
前記疎水性官能基における、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基とは、いずれか1カ所に炭素―炭素二重結合を有する、直鎖状、分岐鎖状または環状の(C4〜C20)アルケニル基である。例えば、1−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、1―オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−オクタデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、9−ヘキサデセニル基等が挙げられる。
前記疎水性官能基における前記アルケニル基としては、(C8〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基が、より好ましい。
【0085】
前記疎水性官能基における、前記置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基とは、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。好ましくは4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
【0086】
前記疎水性官能基における(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基は、それぞれ適当な置換基を有していてもよい。
置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環アリール基、複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換または無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でもよい。
置換基についての詳細な説明は、前述のブロック型ポリマー(A)における有していてもよい置換基と同義である。
【0087】
二官能性ポリマー(B)における前記疎水性官能基は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、直接または結合基を介して結合させる。該疎水性官能基を側鎖カルボキシ基に直接結合させる場合は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基が側鎖カルボキシ基にケトン型構造で結合することになる。しかしながら、側鎖カルボキシ基に対し、適当な結合基を介して、該疎水性官能基を結合させる態様が、前記二官能性ポリマーの調製し易さから好ましい。
適当な結合基としては、酸素原子、−NH−基、硫黄原子及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基を用いることが好ましい。
前記結合基として酸素原子を用いる場合、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基は、エステル結合の様式にて前記二官能性ポリマー(B)に官能基化される。また、前記結合基として−NH−基を用いる場合、前記疎水性官能基は、アミド結合の様式にて官能基化される。一方、前記結合基として硫黄原子を用いる場合、前記疎水性官能基は、チオエステル結合の様式にて官能基化される。
【0088】
前記結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。炭化水素系アミノ酸は、炭化水素基側鎖が疎水性官能基として機能する点で好ましい。また、酸性アミノ酸は、カルボン酸官能基を増やすことができ、多官能基化する場合に好適である。一方、塩基性アミノ酸を用いる場合、核酸保持に有利なカチオン性官能基を付与できる点で好ましく、また、酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与できる点で好ましい。疎水性官能基を具備させるための結合基としてアミノ酸を用いる場合は、目的とする機能に応じて適宜設定されるべきである。
なお、結合基としてアミノ酸を用いる場合は、該アミノ酸のN末アミノ基と前記側鎖カルボキシ基がアミド結合し、該C末カルボキシ基と、前記疎水性官能基である(C4〜C20)のアルキル基、(C4〜C20)のアルケニル基または(C7〜C20)のアラルキル基が、酸素原子を介してエステル結合様式、−NH−基を介してアミド結合様式または硫黄原子を介してチオエステル結合様式にて官能基化がなされることが好ましい。
【0089】
前記二官能性ポリマー(B)は、疎水性官能基を結合させるために、アミノ酸誘導体を結合基として用いることが好ましい。特に、結合基としてヒスチジン誘導体を用いることが好ましい。ヒスチジン誘導体は、側鎖イミダソール環が酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与することができ、細胞質への核酸の導入の向上に有利な効果を奏する事から好ましい。
好ましい結合様式としては、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、ヒスチジン誘導体のN末アミノ基をアミド結合させ、該ヒスチジン誘導体のC末カルボキシ基に、前記疎水性官能基をエステル結合またはアミド結合により結合させることが好ましい。
ヒスチジン誘導体を結合基として疎水性官能基を導入する態様としては一般式(13)で示される。
【化12】
ここで、一般式(13)におけるR
17は、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基であり、X
3bは酸素原子、−NH−基及び硫黄原子から選択される1種以上の基である。前記R
17の該アルキル基、該アルケニル基及び該アラルキル基は、前述の疎水性官能基と同義である。
なお、前記有していてもよい置換基とは、前述の二官能性ポリマー(B)における置換基と同義である。
【0090】
前記二官能性ポリマー(B)は、前記疎水性官能基が複数当量で結合していることが好ましい。結合基当量数は、該疎水性官能基の疎水性により適宜設定してよいが、該ブロック型ポリマー1分子当り2当量以上で100当量以下である。2当量以上で50当量以下の結合当量であることが好ましい。
前記疎水性官能基が複数当量で結合している場合、該疎水性官能基は同一種類であっても、複数種類が混在していてもよい。
【0091】
二官能性ポリマー(B)は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、直接または結合基を介してアルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基を具備する。該アルギニン誘導体結合基及び該リジン誘導体結合基としては、側鎖グアニジル基またはアミノ基がカチオン性を示すものであれば良く、アルギニン構造単位またはリジン構造単位が含まれていれば良い。
前記二官能性ポリマー(B)におけるカチオン性官能基は、該アルギニン誘導体結合基または該リジン誘導体結合基のいずれか一方を用いても良く、これらの混合物であってもよい。好ましくは、その何れか一方の単一分子構造で用いられる態様であり、特にアルギニン誘導体結合基を用いることが好ましい。
該アルギニン誘導体または該リジン誘導体の好ましい結合様式としては、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基に、アルギニン誘導体またはリジン誘導体を、直接または結合基を介して結合させる態様を挙げることができる。
【0092】
前記アルギニン誘導体結合基としては、一般式(14)または(15)で表される結合残基であることが好ましい。
【化13】
一般式(14)において、R
18は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミド基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示し、L
5は任意の結合基を示す。
また、一般式(15)において、R
19は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示し、L
6は任意の結合基を示す。
【0093】
一般式(14)におけるR
18の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0094】
一般式(15)におけるR
19の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。
一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
【0095】
R
19の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
19の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
19の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
19の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0096】
一般式(14)及び(15)におけるL
5及びL
6は、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記アルギニン誘導体結合基を連結する結合基である。L
5及びL
6の結合基としては、その両末端が、カルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではない。
該L
5としては、例えば、―NH―(CH
2)
β―CO−、―NH―(CH
2)
β―NHCO−、―NH―(CH
2)
β―OCO−、―O―(CH
2)
β―CO−、―O―(CH
2)
β―NHCO−、―O―(CH
2)
β―OCO−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−等が挙げられる。ここで、βは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、L
5は「結合」であってよい。該「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基と、アルギニン誘導体のN末アミノ基が直接結合していることを意味する。
また、該L
6としては、例えば、―NH―(CH
2)
β―NH−、―NH―(CH
2)
β―O−、―O―(CH
2)
β―NH−、―O―(CH
2)
β―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、βは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。
【0097】
前記カチオン性官能基がアルギニン誘導体結合基である場合、好ましくは、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0098】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基である場合、一般式(16)または(17)で表される結合残基であることが好ましい。
【化14】
一般式(16)において、R
20は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミド基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示し、L
7は任意の結合基を示す。
また、一般式(17)において、R
21は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示し、L
8は任意の結合基を示す。
【0099】
一般式(16)におけるR
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0100】
一般式(17)におけるR
21の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。
一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
【0101】
R
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0102】
一般式(16)及び(17)におけるL
7及びL
8は、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記リジン誘導体結合基を連結する結合基である。L
7及びL
8の結合基としては、その両末端が、カルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではない。
該L
7としては、例えば、―NH―(CH
2)
β―CO−、―NH―(CH
2)
β―NHCO−、―NH―(CH
2)
β―OCO−、―O―(CH
2)
β―CO−、―O―(CH
2)
β―NHCO−、―O―(CH
2)
β―OCO−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−等が挙げられる。ここで、βは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、L
7は「結合」であってよい。該「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基と、アルギニン誘導体のN末アミノ基が直接結合していることを意味する。
また、該L
8としては、例えば、―NH―(CH
2)
β―NH−、―NH―(CH
2)
β―O−、―O―(CH
2)
β―NH−、―O―(CH
2)
β―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、βは1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。
【0103】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基の場合、好ましくは、リジン(C1〜C8)アルキルエステル基、リジン(C7〜C10)アラルキルエステル基、リジン(C1〜C8)アルキルアミド基及びリジン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0104】
前記二官能性ポリマー(B)は、前記カチオン性官能基が複数当量で結合していることが好ましい。結合基当量数は、該疎水性官能基の疎水性により適宜設定してよいが、該ブロック型ポリマー1分子当り2当量以上で150当量以下である。5当量以上で100当量以下の結合当量であることが好ましい。
【0105】
本発明の二官能性ポリマー(B)において、前記疎水性官能基は核酸送達用キャリアとして、そのキャリア構造の安定化に寄与する。また、前記カチオン性官能基は、核酸分子との静電的相互作用による核酸保持のための機能性官能基である。本発明は、核酸分子の安定的な保持と送達を目的とするものであり、該二官能性ポリマー(B)は、疎水性官能基とカチオン性官能基の2つの機能性官能基を具備することを特徴とする。
該二官能性ポリマー(B)における、疎水性官能基とカチオン性官能基の、それぞれの結合量は、特に限定されるものではなく、キャリア構造の安定性と核酸分子の保持力を考慮して、適宜、設定することができる。すなわち、核酸送達キャリア構造の安定化を向上させるためには、二官能性ポリマー(B)の該疎水性官能基の結合量を増やすことが好ましい。また、核酸分子の保持力を向上させるためには、カチオン性官能基の結合量を増やすことが好ましい。
核酸分子の安定的な保持と送達を達成するためには、該疎水性官能基とカチオン性官能基の結合量のバランスを考慮することが重要である。二官能性ポリマー(B)において、疎水性官能基よりも、カチオン性官能基の方を多く付与することが好ましい。該二官能性ポリマー(B)における疎水性官能基とカチオン性官能基の含有モル当量比率は、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜25であることが好ましく、疎水性官能基:カチオン性官能基=1:1〜20であることがより好ましい。
【0106】
本発明において、前記二官能性ポリマー(B)は、一般式(2)
【化15】
[式中、R
3bはメチレン基またはエチレン基を示し、R
4bは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)のアシル基及び置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、R
5bは置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基を示し、R
6bはアルギニン誘導体結合基またはリジン誘導体結合基を示し、R
7bは水酸基及び/または−N(R
8b)CONH(R
9b)であり、ここで、R
8b及びR
9bは同一でも異なっていてもよく、(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基を示し、R
10は水素原子または置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を示し、X
1b及びX
2bは結合または結合基を示し、m、n、o、p、q、r及びsは、それぞれ独立に0〜200の整数を示し、(m+n)及び(o+p)は1〜200の整数を示し、(m+n+o+p+q+r+s)は10〜200の整数を示し、R
5b、R
6b、R
7bが結合している各構造ユニット並びに側鎖カルボニル基の分子内環化型構成ユニットは、それぞれ独立してランダムに配列した構造である。]である事が好ましい。
【0107】
一般式(2)のR
4bにおける(C1〜C6)アシル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオ二ル基、ピバロイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基である。
R
4bにおける置換基を有していてもよい(C1〜C6)のアルコキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基である。
なお、該R
4bにおける有していてもよい置換基とは、後述するR
10と同義である。
【0108】
一般式(2)のR
5bは疎水性官能基である。該疎水性官能基は、本発明に係る前記ブロック型コポリマー(A)及び当該二官能性ポリマー(B)において、疎水性相互作用を惹起し、会合体を形成するための機能性官能基である。
該R
5bとしては置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。該R
5bとしての疎水性官能基は、一般式(2)に係るポリマー分子中で単一種類であっても良く、また2種類以上の疎水性官能基の混合物であってもよい。
【0109】
R
5bにおける置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の(C4〜C20)のアルキル基が挙げられる。例えば、n−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基、イソヘキサデシル基、イソオクタデシル基、t−オクチル基、t−デシル基、t−ドデシル基、t−テトラデシル基、t−ヘキサデシル基、t−オクタデシル基等が挙げられる。
R
5bにおける置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐鎖状または環状の(C4〜C20)のアルケニル基が挙げられる。例えば、1−ブテニル基、シクロヘキセニル基、1―オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−オクタデセニル基、cis−9−オクタデセニル基、9−ヘキサデセニル基等が挙げられる。
R
5bにおける置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐鎖状の(C7〜C20)のアラルキル基が挙げられる。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
【0110】
一般式(2)におけるX
1bは結合基である。すなわち、ポリマー主鎖の側鎖カルボキシ基と前記R
5bで示される疎水性官能基を結合するための連結基である。X
1bは、結合、酸素原子、−NH−基、硫黄原子及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基である。ここで結合とは、結合基を介さないで直接、側鎖カルボキシ基に結合した結合様式を示す。該X
1bとしては、酸素原子、−NH−基及びアミノ酸誘導体からなる群から選択される1種以上の結合基であることが好ましい。
前記X
1bに係る結合基として酸素原子を用いる場合、前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基は、エステル結合の様式にて当該二官能性ポリマー(B)に官能基化される。一方、前記結合基として−NH−基を用いる場合、前記疎水性官能基はアミド結合の様式にて官能基化される。
【0111】
前記X
1bに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。炭化水素系アミノ酸は、炭化水素基側鎖が疎水性官能基として機能する点で好ましい。また、酸性アミノ酸は、カルボン酸官能基を増やすことができ、多官能基化する場合に好適である。一方、塩基性アミノ酸を用いる場合、核酸保持に有利なカチオン性官能基を付与できる点で好ましく、また、酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与できる点で好ましい。前記X
1bとしてアミノ酸を用いる場合は、目的とする機能に応じて適宜設定されるべきである。
なお、結合基としてアミノ酸を用いる場合は、該アミノ酸のN末アミノ基が、前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、該アミノ酸のC末カルボキシ基と前記疎水性官能基である置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)のアルケニル基または置換基を有していてもよい(C7〜C20)のアラルキル基が、酸素原子を介してエステル結合様式、−NH−基を介してアミド結合様式または硫黄原子を介してチオエステル結合様式にて官能基化がなされることが好ましい。
【0112】
一般式(2)におけるX
1bとしては、アミノ酸誘導体を用いることが特に好ましく、ヒスチジン誘導体を用いることが殊更好ましい。該ヒスチジン誘導体は、側鎖イミダゾール環が酸性環境下において塩形成することによるpH応答性を付与することができ、細胞質への核酸の導入の向上に有利な効果を奏する事から好ましい。
好ましい結合様式としては、ポリマー主鎖の側鎖カルボキシ基に、該ヒスチジン誘導体のN末アミノ基がアミド結合して、該ヒスチジン誘導体のC末カルボキシ基に、前記R
5bに係る疎水性官能基を、エステル結合またはアミド結合により結合させることが好ましい。すなわち、該X
1bとしては、ヒスチジニルオキシ基及び/またはヒスチジニルアミド基が好ましい。
該X
1bとしてヒスチジン誘導体を用い、R
5bに係る疎水性官能基を導入する態様としては一般式(18)で示される置換基が好ましい。
【化16】
ここで、一般式(18)におけるR
5bは、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、前記置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び前記置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基からなる群から選択される1種以上の基である。X
3bは、酸素原子、−NH−基及び硫黄原子から選択される1種以上の基である。
【0113】
一般式(2)において、疎水性官能基及び結合基であるR
5b及びX
1bは、ヒスチジン誘導体を介して置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基及び置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基を結合させる態様が好ましい。以下に、疎水性官能基であるR
5b結合基;X
1bとしてヒスチジン誘導体を介した好ましい置換基の態様を説明する。
X
1bとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5bとして置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−n−オクチルエステル基、ヒスチジニルイソオクチルエステル基、ヒスチジニルイソデシルエステル基、ヒスチヒスチジニル−n−デシルエステル基、ヒスチジニル−n−ドデシルエステル基、ヒスチジニル−n−テトラデシルエステル基、ヒスチジニル−n−ヘキサデシルエステル基、ヒスチジニル−n−オクタデシルエステル基、ヒスチジニルイソドデシルエステル基、ヒスチジニルイソテトラデシルエステル基、ヒスチジニルイソヘキサデシルエステル基、ヒスチジニルイソオクタデシルエステル基、ヒスチジニル−t−オクチルエステル基、ヒスチジニル−t−デシルエステル基、ヒスチジニル−t−ドデシルエステル基、ヒスチジニル−t−テトラデシルエステル基、ヒスチジニル−t−ヘキサデシルエステル基、ヒスチジニル−t−オクタデシルエステル基等が挙げられる。
また、該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−n−オクチルアミド基、ヒスチジニル−n−デシルアミド基、ヒスチジニル−n−ドデシルアミド基、ヒスチジニル−n−テトラデシルアミド基、ヒスチジニル−n−ヘキサデシルアミド基、ヒスチジニル−n−オクタデシルアミド基、ヒスチジニルイソオクチルアミド基、ヒスチジニルイソデシルアミド基、ヒスチジニルイソドデシルアミド基、ヒスチジニルイソテトラデシルアミド基、ヒスチジニルイソヘキサデシルアミド基、ヒスチジニルイソオクタデシルアミド基、ヒスチジニル−t−オクチルアミド基、ヒスチジニル−t−デシルアミド基、ヒスチジニル−t−ドデシルアミド基、ヒスチジニル−t−テトラデシルアミド基、ヒスチジニル−t−ヘキサデシルアミド基、ヒスチジニル−t−オクタデシルアミド基等が挙げられる。
【0114】
X
1bとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5bとして置換基を有していてもよい(C4〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルケニル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−1−オクテニルエステル基、ヒスチジニル−1−デセニルエステル基、ヒスチジニル−1−ドデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−テトラデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−ヘキサデセニルエステル基、ヒスチジニル−1−オクタデセニルエステル基、ヒスチジニル−cis−9−オクタデセニルエステル基、ヒスチジニル−9−ヘキサデセニルエステル基等が挙げられる。
また、該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−1−オクテニルアミド基、ヒスチジニル−1−デセニルアミド基、ヒスチジニル−1−ドデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−テトラデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−ヘキサデセニルアミド基、ヒスチジニル−1−オクタデセニルアミド基、ヒスチジニル−cis−9−オクタデセニルアミド基、ヒスチジニル−9−ヘキサデセニルアミド基等が挙げられる。
【0115】
X
1bとしてヒスチジン誘導体を介し、R
5bとして置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキル基である態様としては、エステル結合型、アミド結合型またはチオエステル結合型を挙げることができる。エステル結合型またはアミド結合型が好ましい。
該エステル結合型としては、例えば、ヒスチジニル−4−フェニルブチルエステル基、ヒスチジニル−3−フェニルブチルエステル基、ヒスチジニル−5−フェニルペンチルエステル基、ヒスチジニル−6−フェニルへキシルエステル基、ヒスチジニル−8−フェニルオクチルエステル基等が挙げられる。
該アミド結合型としては、例えば、ヒスチジニル−4−フェニルブチルアミド基、ヒスチジニル−3−フェニルブチルアミド基、ヒスチジニル−5−フェニルペンチルアミド基、ヒスチジニル−6−フェニルへキシルアミド基、ヒスチジニル−8−フェニルオクチルアミド基等が挙げられる。
【0116】
一般式(2)におけるR
6bはカチオン性官能基であり、アニオン性に荷電する核酸分子と静電的相互作用により複合体を形成するための機能性官能基である。一般式(2)において、R
6bはアルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基である。R
6bにおけるカチオン性官能基は、一般式(2)に係るポリマー分子中で単一種類であってもよく、該アルギニン誘導体結合基及び該リジン誘導体結合基の混合物であってもよい。
【0117】
一般式(2)のR
6bがアルギニン誘導体結合基である場合、一般式(19)または(20)で表されるアルギニン誘導体結合基であることが好ましい。
【化17】
一般式(19)において、R
18は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示す。
また、一般式(20)において、R
19は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示す。
【0118】
一般式(19)におけるR
18の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
18の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0119】
一般式(20)におけるR
19の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。
一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
【0120】
R
19の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
19の(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
19の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
19の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0121】
前記カチオン性官能基がアルギニン誘導体結合基の場合、好ましくは、一般式(19)で示されるアルギニン誘導体結合基であって、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0122】
一般式(2)におけるR
6bがリジン誘導体結合基である場合、一般式(21)または(22)で表されるリジン誘導体結合基であることが好ましい。
【化18】
一般式(21)において、R
20は水酸基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基、置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基を示す。
また、一般式(22)において、R
21は、水素原子、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基、若しくは置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基を示す。
【0123】
一般式(21)におけるR
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、i−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−へキシルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基等が挙げられる。
R
20の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
【0124】
一般式(22)におけるR
21の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアシル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基を挙げることができる。
一方、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基、若しくは置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基等を挙げることができる。
また、アミノ基のアシル保護基を用いることができ、例えば、Boc基、Fmoc基、Cbz基等を挙げることができる。
【0125】
R
21の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、i−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、i−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−へキシルカルボニル基、シクロへキシルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ドデシルカルボニル基、オクタデシルカルボニル基等が挙げられる。
R
21の置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルオキシカルボニル基とは、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、i−プロピルオキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−へキシルオキシカルボニル基、シクロへキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
R
21の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルカルボニル基としては、例えば、ベンジルカルボニル基、2−フェニルエチルカルボニル基等が挙げられる。
R
21の置換基を有していてもよい(C7〜C20)の直鎖状または分岐鎖状のアラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0126】
前記カチオン性官能基がリジン誘導体結合基の場合、好ましくは、一般式(21)で示されるリジン誘導体結合基であって、リジン(C1〜C8)アルキルエステル基、リジン(C7〜C10)アラルキルエステル基、リジン(C1〜C8)アルキルアミド基及びリジン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0127】
一般式(2)におけるX
2bは、前記ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基と、前記アルギニン誘導体結合基及び/または前記リジン誘導体結合基を連結する結合基である。
該X
2bで示される結合基としては、その両末端が、カルボキシ基及びアミノ基と結合する官能基を有する結合基であれば特に限定されるものではないが、例えば、―NH―(CH
2)
β’’―CO−、―NH―(CH
2)
β’’―NHCO−、―NH―(CH
2)
β’’―OCO−、―O―(CH
2)
β’’―CO−、―O―(CH
2)
β’’―NHCO−、―O―(CH
2)
β’’―OCO−、―O―(CH
2)
β’’―NH−、―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NHCO−、―NH―(CH
2)
β’’―NH−、―NH―(CH
2)
β’’―O―、―O―(CH
2)
β’’―O−または―NH―(CH
2)
2―SS−(CH
2)
2―NH−等が挙げられる。ここで、β’’は1〜12の整数であり、好ましくは4〜12の整数であり、特に好ましくは6〜12の整数である。なお、該X
2b「結合」であってよい。該「結合」とは、特にリンカー相当基を介せず、ブロック型ポリマーの側鎖カルボキシ基と、該アルギニン誘導体結合基及び/またはリジン誘導体結合基がアミド結合により直接結合していることを意味する。
【0128】
一般式(2)におけるR
6bは、アルギニン誘導体結合基であることが好ましい。すなわち、一般式(2)におけるカチオン性官能基であるR
6bは、好ましくは、前記一般式(19)で示されるアルギニン誘導体結合基であって、アルギニン(C1〜C8)アルキルエステル基、アルギニン(C7〜C10)アラルキルエステル基、アルギニン(C1〜C8)アルキルアミド基及びアルギニン(C7〜C10)アラルキルアミド基からなる群から選択される1種以上の基であることが好ましい。その際、一般式(2)におけるX
2bは、結合であることが好ましい。
【0129】
一般式(2)において、R
7bは水酸基及び/または−N(R
8b)CONH(R
9b)である。該−N(R
8b)CONH(R
9b)において、R
8b及びR
9bは同一でも異なっていてもよく、(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基、若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基である。
該(C3〜C8)の分岐鎖状または環状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはイソプロピル基、シクロへキシル基が挙げられる。
該三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C6)の直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、6−ジメチルアミノヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、エチル基、3−ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。
【0130】
前記R
7bは水酸基及び/または−N(R
8b)CONH(R
9b)であるが、水酸基のみである場合、水酸基及び−N(R
8b)CONH(R
9b)が共存する場合、若しくは−N(R
8b)CONH(R
9b)のみである場合の態様を取り得る。水酸基と−N(R
8b)CONH(R
9b)の存在比率は任意に設定されてよい。
【0131】
一般式(2)のR
7bは、水酸基であってよい。すなわち、一般式(2)の側鎖カルボキシ基に、前記R
5b、前記R
6b及び−N(R
8b)CONH(R
9b)の何れもが結合していないカルボキシ基が存在して良い。一般式(2)において、R
7bが水酸基である場合、側鎖カルボン酸の遊離酸型で示されている。しかしながら、側鎖カルボン酸のアルカリ金属塩型、アルカリ土類金属塩型、アンモニウム塩型の形態も取り得て良く、これらの塩態様も含まれるものである。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
また、本核酸送達用組成物が非経口投与にて供せられる場合、医薬品として許容される溶解液にて溶液調製されるが、R
7bが水酸基である場合の側鎖カルボン酸は、その溶液のpH及び緩衝溶液の塩の有無に依存した側鎖カルボン酸塩の態様を取り得てよい。
【0132】
一般式(2)のR
10は、置換基を有していてもよい(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基、イソヘキサデシル基、イソオクタデシル基、t−オクチル基、t−デシル基、t−ドデシル基、t−テトラデシル基、t−ヘキサデシル基、t−オクタデシル基等が挙げられる。
【0133】
一般式(2)は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基修飾体である。そのポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントとしては、側鎖カルボキシ基にR
5b、R
6b及びR
7bが結合したユニット及び側鎖カルボン酸が分子内環化構造をとるユニットが存在する。これらの各ユニットは、それぞれ独立して、ランダムな配列にて存在したセグメント構造である。すなわち、該カルボキシ基にR
5b、R
6b及びR
7bが結合したユニット並びに側鎖カルボン酸が分子内環化構造をとるユニットが、それぞれ任意の順番で配列した態様であってもよい。例えば、それぞれの構成単位が、局在化して偏局した配列の態様であっても良く、また、それぞれの構成単位に規則性がないランダム配列で構成されたポリマー構造であってもよく、つまり、その側鎖修飾体の配列順序において、特に規則性のない配列である。
【0134】
一般式(2)において、各アスパラギン酸ユニットまたはグルタミン酸ユニットの含量を示すm、n、o、p、q、r及びsはそれぞれ独立して0〜200の整数である。該二官能性ポリマー(B)のポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(m+n+o+p+q+r+s)は、10〜200の整数である。好ましくは、重合数が15〜100である。
【0135】
疎水性官能基であるR
5bが結合した総ユニット数である(m+n)は必須の構成ユニットであり、該(m+n)は1〜200の整数である。好ましくは(m+n)が3〜100の整数である。より好ましくは、(m+n)は3〜60の整数である。
ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(m+n+o+p+q+r+s)に対する、疎水性官能基であるR
5bの含有総ユニット数である(m+n)の存在比率は、5〜45%であることが好ましい。より好ましくは、(m+n)の全体ユニットに対する存在比率は、5〜40%である。
【0136】
また、カチオン性官能基であるR
6bが結合した総ユニット数である(o+p)は、必須のユニットであり、(o+p)は1〜200の整数である。好ましくは(o+p)が10〜150の整数である。より好ましくは、(o+p)は20〜100の整数である。
ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(m+n+o+p+q+r+s)に対する、カチオン性官能基であるR
6bの含有総ユニット数である(o+p)の存在比率は、50〜90%であることが好ましい。より好ましくは、(o+p)の全体ユニットに対する存在比率は50〜80%である。
R
7bが結合したユニット及び側鎖カルボキシ基が分子内環化構造をとるユニットは、任意に存在して良く、その存在含量数を示すq、r及びsは、0〜200の整数である。
側鎖カルボキシ基に、疎水性官能基であるR
5b及びカチオン性官能基であるR
6bが結合していないユニット総数である(q+r+s)は、ポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントの総重合数である(m+n+o+p+q+r+s)に対して、0〜40%である。好ましくは(q+r+s)の存在比率は、2〜30%である。
【0137】
次に本発明の二官能性ポリマー(B)の製造方法を開示する。
二官能性ポリマー(B)は、側鎖カルボキシ基に疎水性官能基及びカチオン性官能基を有するポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸であり、その製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。例えば、側鎖カルボキシ基に前記官能基が導入された重合性アスパラギン酸モノマーまたは重合性グルタミン酸モノマーを、重合反応させることにより製造することができる。また、重合性アスパラギン酸モノマーまたは重合性グルタミン酸モノマーを、重合反応させて、ポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸を構築し、その後、側鎖カルボキシ基に、疎水性官能基及びカチオン性官能基を導入することで製造してもよい。
好ましくは、あらかじめポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸を構築し、その後、側鎖カルボキシ基に、適当な縮合反応条件により疎水性官能基及びカチオン性官能基をアミド結合様式及び/またはエステル結合様式にて反応させて、該二官能性ポリマー(B)を製造する方法を挙げることができる。縮合条件は、通常の有機合成反応で用いることができる方法を適宜使用することができる。
【0138】
ポリマー主鎖がポリアスパラギン酸である二官能性ポリマー(B)の合成方法の一態様を開示する。
適当な1級アミン化合物または1級アルコール化合物に、N−カルボニルアスパラギン酸無水物を順次反応させ、片末端に1級アミン結合残基または1級アルコール結合残基を有するポリアスパラギン酸誘導体を合成する。この場合、N−カルボニルアスパラギン酸無水物において、アスパラギン酸の側鎖カルボキシ基は、ベンジルエステル等の適当なカルボン酸保護基修飾体を用いることが好ましい。得られたポリアスパラギン酸誘導体は、更に任意に、もう一方の末端基(N末端)をアシル化してもよい。このポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基の保護基を、適当な条件により脱保護基反応を行うことにより、二官能性ポリマー(B)の主鎖ポリマーとなるポリアスパラギン酸を得ることができる。脱保護反応としては、ポリアスパラギン酸側鎖がβ−ベンジルエステルの場合、アルカリ条件下での加水分解や、加水素分解反応により脱保護基反応をすることができる。
次に、このポリアスパラギン酸に対し、アミノ基及び/または水酸基を有する該カチオン性官能基含有化合物並びに該疎水性官能基含有化合物を、カルボジイミド脱水縮合剤等の縮合反応条件にて反応させればよい。この製造方法によれば、ポリアスパラギン酸に、一般式(2)のR
7bに係る−N(R
8b)CONH(R
9b)基を同時に導入することができることから、有利な製造方法である。
該カルボジイミド脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)等を用いることができる。該脱水縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等の反応補助剤を用いてもよい。
【0139】
本発明において、カチオン性官能基と疎水性官能基の導入量は、脱水縮合反応において、各官能基含有化合物の仕込み量を適宜増減させることで調整することができる。
なお、カルボジイミド縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いた場合、前記−N(R
8b)CONH(R
9b)の、R
8b及びR
9bはシクロへキシル基となる。ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いて縮合反応を行った場合、R
8b及びR
9bはイソプロピル基となる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、該−N(R
8b)CONH(R
9b)のR
8b及びR
9bは、エチル基と3−ジメチルアミノプロピル基の混合置換体となる。
前記反応終了後に任意の精製工程を経由して、本発明の二官能性ポリマー(B)を製造することができる。
主鎖ポリマーがポリグルタミン酸である二感応性ポリマー(B)の合成方法は、前述の合成例におけるN−カルボニルアスパラギン酸無水物に代えて、N−カルボニルグルタミン酸無水物を用いてポリグルタミン酸を含む該共重合体を得て、その後、該カチオン性官能基含有化合物並びに該疎水性官能基含有化合物を導入させれば、主鎖ポリマーがポリグルタミン酸の二官能性ポリマー(B)を合成することができる。
【0140】
[核酸送達用組成物について]
本発明は、ブロック型コポリマー(A)と、二官能性ポリマー(B)を混合して用いることを特徴とする核酸輸送用組成物に関する。
前記(A)及び(B)の両者の混合比率は特に限定されず、任意に設定され得るものである。両者の混合比率を規定するに当たり、前記ブロック型コポリマー(A)のカチオン性官能基の含有モル当量(AN)と、前記二官能性ポリマー(B)のカチオン性官能基の含有モル当量(BN)の比率を指標とすることが好ましい。
【0141】
本発明に当たり、前記ブロック型コポリマー(A)と前記二官能性ポリマー(B)は、前記二官能性ポリマー(B)のカチオン性官能基の含有モル当量(BN)が、カチオン性官能基総量(AN+BN)に対する百分率(B%)として、30〜80%であることが好ましい。より好ましくは、40〜80%である。B(%)を前記範囲内に設定することで、核酸分解酵素に対する安定性と細胞内導入効果が両立される優れた核酸送達用組成物を得ることが可能となる。
本発明において、B(%)を前記範囲内に収めることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、B(%)を前記範囲内に収めることで、調製される粒子が十分な量のポリエチレングリコールにより被覆され、核酸分解酵素に対する核酸安定性を高める。一方で、形成された粒子表面に、カチオン性官能基や疎水性官能基が配向して、該粒子表面電荷(ゼータ電位により示される)がプラスに荷電し、細胞に認識されやすくなることで細胞内導入効果が高められるものと推測される。このような理由から、本発明の核酸送達用組成物は核酸分解酵素に対する核酸安定性と、核酸の細胞内導入効果を両立できたものと予測される。
【0142】
なお、本発明において、前記ブロック型コポリマー(A)及び前記二官能性ポリマー(B)の各ポリマー構造の組み合せは、特に限定されることなく用いて良い。しかしながら、該(A)のポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントと、該(B)のポリアスパラギン酸構造またはポリグルタミン酸構造が、類似の化学構造である該(A)及び該(B)の組み合わせて用いることが好ましい。すなわち、該(A)がポリアスパラギン酸セグメントを含有するブロック型コポリマー(A)を用いた場合、該(B)としてポリアスパラギン酸誘導体である二官能性ポリマー(B)であることが好ましい。逆に該(A)がポリグルタミン酸セグメントを含有するブロック型コポリマー(A)を用いた場合、該(B)はポリグルタミン酸誘導体である二官能性ポリマー(B)であることが好ましい。
【0143】
また、該(A)の疎水性官能基及びカチオン性官能基と、該(B)の疎水性官能基及びカチオン性官能基も類似構造の官能基を、用いることが好ましい。すなわち、該(A)が疎水性官能基として、炭素数(C4〜20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基を用い、カチオン性官能基として、アルギニン誘導体結合基を用いた場合、該(B)も炭素数(C4〜20)の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基及びアルギニン誘導体を具備する二官能性ポリマー(B)とすることが好ましい。すなわち、該(A)及び該(B)における疎水性官能基及びカチオン性官能基は、各官能基の同じ群同士の組み合せで用いることが好ましい。
【0144】
該(A)のポリアスパラギン酸セグメントまたはポリグルタミン酸セグメントと、該(B)のポリアスパラギン酸構造またはポリグルタミン酸構造が、類似の化学構造が類似である組み合わせとすることで、該(A)と該(B)の相同性が高くなるため、核酸輸送用組成物として複合体形成が有利となるため好ましい。
【0145】
本発明の核酸送達用組成物は、ブロック型コポリマー(A)及び二官能性ポリマー(B)の他、薬学的に許容される添加剤を加えてもよい。例えば、医薬製剤の様々な製剤型に調製するため、通常使用されている薬学的に許容される担体を添加して用いてもよい。担体としては、例えば、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料等を使用することができる。
【0146】
使用する製剤型としては、注射剤、点滴剤としての使用が望まれ、塩化ナトリウムや緩衝用塩、ブドウ糖、乳糖、マンニトール等の糖類。水溶性セルロース類、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、水、グリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等の水溶性有機溶媒等を添加することができる。
【0147】
本発明は、前記ブロック型コポリマー(A)及び前記二官能性ポリマー(B)を含む核酸送達用組成物として使用するものである。すなわち、該核酸送達用組成物を含み、任意の添付文書を一体に包装したキットとして用いてもよい。
該核酸送達用組成物を含むキットは、該ブロック型コポリマー(A)及び該二官能性ポリマー(B)を任意の混合比率で併せて一体に充填した態様であって良く、若しくはそれぞれを別に充填しており、使用時に混合して用いる態様であって良い。その際、該ブロック型コポリマー(A)及び該二官能性ポリマー(B)は、任意の添加剤や溶剤と共に充填されていて良い。
【0148】
[核酸(C)を含有させた核酸含有組成物について]
本発明は、前記ブロック型コポリマー(A)と前記二官能性ポリマー(B)を混合し、核酸(C)を含有させた核酸含有組成物として用いることができる。該核酸含有組成物は、核酸分子を標的組織に送達し、細胞内に導入することができる。すなわち本発明は、生理活性機能性を有する核酸を、生体内の様々な核酸分解因子を回避して標的組織まで送達し、該核酸を標的細胞に導入し、細胞質へ放出させることにより、該核酸分子を機能発揮させるための核酸送達キャリアを包含するとともに、該核酸分子を含有する核酸医薬組成物を含む。
【0149】
本発明において、用いられる核酸(C)は特に制限されず、DNA、RNA、天然または非天然の核酸誘導体(例えばペプチド核酸等)、改変核酸、修飾核酸等が挙げられるが、何れであってもよい。また、該核酸(C)としては、一本鎖状態の核酸であっても、二本鎖形成状態の核酸であってもよい。但し、該核酸(C)としては、生体内に送達され、生体、組織、細胞等に対して何らかの生理活性作用を及ぼし得る機能性核酸であることが好ましい。
機能性核酸としては、プラスミドDNA、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、デコイ核酸、リボザイム、DNA酵素、各種抑制遺伝子(癌抑制遺伝子等)、機能性の改変核酸、修飾核酸等が挙げられる。
該修飾核酸としては、例えば、核酸のリン酸部分がホスホロチオエート、メチルホスホナート、ホスフェートトリエステル、ホスホロアミデート等に改変された核酸や、高分子ミセル安定化等の用途に向けて、コレステロールやビタミンE等の疎水性官能基が結合された核酸等を挙げることができる。
【0150】
用いる核酸(C)の種類は、その核酸の薬理活性を発揮させて、薬効を得るための目的や用途に応じて、適宜選択することができる。
例えば、プラスミドDNAとしては、標的組織の細胞において所望の機能を発揮し得るものであれば良い。斯かるプラスミドDNAは種々のものが知られており、核酸送達用組成物の用途に応じて所望のプラスミドDNAを選択することが可能である。
また、RNAとしては、RNA干渉(RNAi)を利用して目的の遺伝子発現を抑制し得るものであれば良い。RNA干渉の目的遺伝子としては、癌(腫瘍)遺伝子、抗アポトーシス遺伝子、細胞周期関連遺伝子、増殖シグナル遺伝子等が好ましく挙げられる。またRNAの塩基長については限定されないが、siRNA、miRNA、アンチセンスRNAを用いることが好ましい。
本発明において、該核酸(C)は、特にRNA干渉(RNAi)を利用した標的遺伝子の発現抑制作用を有するRNAを用いることが好ましく、特に好ましくは、塩基長が10〜30塩基の短鎖RNAであるsiRNAを用いることを挙げることができる。
【0151】
本発明において、ブロック型コポリマー(A)と二官能性ポリマー(B)を含有する核酸送達用組成物に、核酸(C)を添加して核酸含有組成物を調製する場合、これらの構成成分の相互作用による複合体を形成させて用いることが好ましい。すなわち、アニオン性荷電体である核酸(C)と、カチオン性荷電体であるブロック型コポリマー(A)及び二官能性ポリマー(B)が、静電相互作用により会合し、更に疎水性官能基を共に有するブロック型コポリマー(A)と二官能性ポリマー(B)が疎水性相互作用により会合することにより、これらの構成成分が相互作用による複合体を形成することを指向する。
該核酸含有組成物としては、前記複合体が形成される条件であれば特に制限なく使用できるが、該核酸送達用組成物と核酸(C)は適当な混合比率で用いることが好ましい。前記混合比率としては、ブロック型コポリマー(A)と二官能性ポリマー(B)を含有する核酸送達用組成物の総カチオン数(N値)と、核酸(C)の総アニオン数(P値)の比で規定されるN/P比にて表すことが好ましい。
【0152】
本発明の核酸含有組成物において、このN/P比は特に限定されるものではないが、N/P比が1〜100の範囲で用いることが好ましい。より好ましくはN/P比は1〜50、特に好ましくは1〜30の範囲である。N/P比を前記範囲内に収めることで、核酸分解酵素に対する安定性と、細胞内導入率の向上効果の両立が達成され、優れた核酸送達用組成物を得ることが可能となる。
本発明において、N/P比を前記範囲内に収めることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、N/P比を前記範囲内に収めることで、調製される複合体を十分な量のポリエチレングリコールセグメントが被覆し、核酸分解酵素に対する核酸安定性を高める。一方で、形成された複合体表面にカチオン性官能基や疎水性官能基が配向して、該粒子表面電荷(ゼータ電位で計測される)がプラスに荷電し、細胞に認識されやすくなることで細胞内導入効果が高められるものと推測される。このような理由から、本発明の核酸送達用組成物は核酸分解酵素に対する核酸安定性と、核酸の細胞内導入効果を両立できたものと予測される。
【0153】
前記核酸含有組成物の調製方法としては、特に限定されるものではなく、ブロック型コポリマー(A)、二官能性ポリマー(B)及び核酸(C)を、適当な溶剤を用いて混合することで調製することができる。この際、更に、任意の添加剤を添加してもよい。例えば、ブロック型コポリマー(A)の溶液と二官能性ポリマー(B)の溶液を混合して得られた組成物溶液に、更に核酸(C)を加えて混合すればよい。調製された核酸含有組成物溶液は、更に希釈、撹拌、超音波照射、透析、濃縮等の操作を適宜付加してもよい。
前記調製方法において、用いる溶媒は特に限定されるものではなく、水、エタノールやDMSOを含む有機溶媒、更には有機溶媒と水の含水溶媒であってもよい。水としては、通常、水や生理食塩水、グルコース水溶液、PBSやHEPES等の緩衝液等を用いることができる。
【0154】
また、各成分の溶液及びそれら混合液のpHは、粒子形成能を阻害しない範囲で適宜調整することが可能である。好ましくはpH5〜9、より好ましくはpH6.5〜8.0である。pHの調整は、溶媒として緩衝液を使用することで、容易に行うことができる。各成分の溶液及びそれら混合液の緩衝液の塩濃度は、粒子形成能を阻害しない範囲で適宜調整することが可能であるが、好ましくは1mM〜300mM、より好ましくは5mM〜150mMである。
【0155】
前記調製方法において、各成分の溶液調製時及びそれら混合時における温度は、ポリマーの溶解度を勘案して設定することが好ましい。具体的には、通常、0℃以上であり、好ましくは60℃以下である。
前記調製方法において、混合液を静置して平衡化する時間を設けてもよい。平衡化の具体的な条件としては、0℃〜60℃で、50時間以内の静置が好ましい。B%が高い場合には、静置時間に伴い粒子径が増大する傾向にあるので、平衡化しない場合があってもよい。
【0156】
本発明の核酸含有組成物は、各種疾患の原因となる細胞または組織を標的として、所望の核酸を送達し、細胞内へ導入する治療(遺伝子治療)に用いることができる。すなわち、当該核酸含有組成物は、核酸医薬として用いることができる。
本核酸含有組成物による治療対象となる疾患としては特に限定されるものではないが、癌(例えば肺癌、腎臓癌、脳腫瘍、肝癌、乳癌、大腸癌、神経芽細胞腫及び膀胱癌等)、循環器疾患、運動器疾患及び中枢系疾患等が挙げられる。
本発明の核酸含有組成物には、薬剤製造において一般に使用されるその他の成分を含んでもよい。その他の例としては、賦形剤、増量剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤などが挙げられる。斯かるその他の成分は1成分を単独で使用しても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合してもよい。これらその他の成分の種類や使用量等の詳細は、医薬組成物の目的、用途、使用方法等に応じて、当業者であれば適宜決定することが可能である。
本発明において、核酸含有組成物の形態も任意であるが、通常は静脈内注射剤(点滴を含む)が採用され、例えば単位投与量アンプルまたは多投与量容器の状態等で提供される。
【0157】
本発明において、核酸含有組成物の使用方法としては、インビトロまたはインビボにおいて標的細胞または組織と接触させることにより、標的細胞または組織に核酸を送達する。インビトロにおいて好ましい接触方法としては、培養前の培地に予め添加するリバーストランスフェクション法、培養中の培地に後から添加するフォワードトランスフェクション法が挙げられる。またインビボにおいて好ましい接触方法としては、局所投与や血中投与等が挙げられる。これらの使用方法により、標的細胞へ、核酸分子を導入することができ、該核酸分子の生理活性機能を効率的に発揮させることができる。
【実施例】
【0158】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
核酸分子として、siCON(ランダム配列(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);北海道システムサイエンス社製)、FAM−siLuc(ルシフェラーゼコードの蛍光標識体(分子量約13K)、siRNA濃度100μMのHEPES溶液(pH7);北海道システムサイエンス社製)を用いた。
また本発明品及び比較例において、水溶液中で構成する会合体の平均粒子径及びゼータ電位の測定は、動的光散乱法(ゼータサイザーナノ−ZS、Malvern社製)にて測定した。
実施化合物中の、特にポリマー組成は以下のアミノ酸分析法より定量した。
方法:NexeraオートサンプラSIL―30ACによる自動プレカラム誘導体化アミノ酸分析(島津製作所)
機種:島津HPLC(Nexera)システム
オートサンプラ:SIL―30AC
検出条件:分光蛍光検出器RF−20A
XS
Ex.:350 nm、Em.:450 nm
カラム:YMC Triart C18 1.9mm
(3.0mm I.D.×75mm L.)
移動相A:20mmol/L リン酸カリウム緩衝液(pH6.9)
移動相B:アセトニトリル/メタノール/水=45/40/15(vol/vol/vol)
グラディエント:移動相B濃度(時間)11%(0分) 13%(3.0分) 31%(5.0分) 37%(7.5分) 70%(10.0分) 100%(10.01分) 100%(13.0分) 11%(13.01分) stop(15.0分)
流量:0.8 mL/min
【0159】
[合成例1] t−ブトキシカルボニルヒスチジン n−オクチルアミド(Boc−His−Octy)の合成
t−ブトキシカルボニルヒスチジン(Boc−His−OH) 983mgをDMSO 34mLに溶解し、室温にてn−オクチルアミン 450mg、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt) 539mg、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC) 905mgを加え、室温にて一夜撹拌した。反応終了後、氷浴中で反応物にクロロホルム 100mLを加えて、重曹水 100mLで洗浄し、次いで蒸留水 100mLで洗浄し、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去後、減圧下にて溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製し、Boc−His−Octylを得た。
1H−NMR(400MHz、CD
3OD、TMS)ppm:0.92(3H、t)、1.30〜1.50(21H、m)、2.80(1H、dd)、3.00(1H、dd)、3.15(2H、m)、4.20(1H、t)、6.86(1H、s)、7.60(1H、s)
【0160】
[合成例2] ヒスチジン n−オクチルアミド・2塩酸塩(H−His−Octyl・2HCl)の合成
氷浴中、合成例1で得たBoc−His−Octyl 0.80gを、4N−HCl/ジオキサン 20mLに加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、減圧下にてHCl/ジオキサンを留去し、減圧乾燥を行うことでH−His−Octyl・2HClを得た。
1H−NMR(400MHz、D
2O、TMS)ppm:0.75(3H、t)、0.99〜1.30(12H、m)、2.95〜3.27(4H、m)、4.08(1H、t)、7.31(1H、s)、8.58(1H、s)
【0161】
[合成例3] t−ブトキシカルボニルヒスチジン n−オクタデシルアミド(Boc−His−Stearyl)の合成
Boc−His−OH 1.57gをDMF 60mLに溶解し、室温にてステアリルアミン 1.35g、HOBt 935mg、WSC 1.37gを加え、室温にて一夜撹拌した。反応終了後、氷浴中で反応物にクロロホルム 180mLを加えて、重曹水 240mLで洗浄し、次いで蒸留水 240mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去後、減圧下にて溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製し、Boc−His−Stearylを得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3、TMS)ppm:0.88(3H、t)、1.23〜1.45(41H、m)、2.95(1H、dd)、3.17(3H、m)、4.37(1H、s)、6.84(1H、s)、7.55(1H、s)
【0162】
[合成例4] ヒスチジン n−オクタデシルアミド・2塩酸塩(H−His−Stearyl・2HCl)の合成
氷浴中、合成例3で得たBoc−His−Stearyl 1.93gを4N−HCl/ジオキサン 40mLに加え、室温で1時間撹拌した。反応終了後、減圧下にてHCl/ジオキサンを留去し、減圧乾燥を行うことでH−His−Stearyl・2HClを得た。
1H−NMR(400MHz、CD
3OD、TMS)ppm:0.89(3H、t)、1.23〜1.50(31H、m)、3.17〜3.30(4H、m)、4.23(1H、t)、7.50(1H、s)、8.93(1H、s)
【0163】
[合成例5] 分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと重合数が43のポリアスパラギン酸セグメントが連結したブロック共重合体;PEG
12K−Asp
43−Ac(ブロック型コポリマー(A)の前駆体)の合成
特開平6−206815号公報に記載の方法に準じて、ブロック型コポリマー(A)の前駆体であるPEG
12K−Asp
43−Acの合成を行った。
分子量12,000の片末端がメトキシ基でもう片末端がアミノ基であるメトキシペグアミン(MEPA、(株)日油製)にβ−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物(BLA−NCA、(株)日油製)を45当量反応させた後、無水酢酸を反応させ、分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと、重合数が43のポリアスパラギン酸ベンジルエステルセグメントが連結したブロック型共重合体を得た。これを、アルカリ加水分解することで、ブロック型コポリマー(A)の前駆体であるPEG
12K−Asp
43−Ac(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと、重合数が43のポリアスパラギン酸セグメントが連結したブロック共重合体)を合成した。
【0164】
[合成例6] ブロック型コポリマー(A−1)(一般式(1)において、R
1=メチル基、R
2=トリメチレン基、R
3a=メチレン基、R
4a=アセチル基、R
5a=n−オクチル基、R
6a=アルギニルメチルエステル基、X
1a=ヒスチジニル基、X
2a=結合、a+b+c+d+e+f+g=43、t=273)の合成
合成例5で得たPEG
12K−Asp
43−Ac 196mgをDMF 5mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。その後、25℃にて、アルギニンメチルエステル(H−Arg−OMe、国産化学製) 79mg、及び合成例2で得たH−His−Octyl・2HCl 69mgを加え、これにジイソプロピルエチルアミン 340μLを加えた。その後、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム 塩化物(DMT−MM) 304mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、50mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、1L)を外液とし、分子量カット14,000の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥して目的化合物であるブロック型コポリマー(A−1)を得た。
アミノ酸分析法により該ブロック型コポリマー(A−1)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が25.8個(59.6%)、His−Octyl官能基9.9個(22.9%)であった。
【0165】
[合成例7] ブロック型コポリマー(A−2)(一般式(1)において、R
1=メチル基、R
2=トリメチレン基、R
3a=メチレン基、R
4a=アセチル基、R
5a=オクタデシル基、R
6a=アルギニルメチルエステル基、X
1a=ヒスチジニル基、X
2a=結合、a+b+c+d+e+f+g=43、t=273)の合成
合成例5で得たPEG
12K−Asp
43−Ac 196mgをDMF 5mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。その後、25℃にてH−Arg−OMe(国産化学製) 105mg及び合成例4で得たH−His−Stearyl・2HCl 50mgを加え、これにジイソプロピルエチルアミン 340μLを加えた。その後、DMT−MM 304mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、50mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、1L)を外液とし、分子量カット14,000の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥してブロック型コポリマー(A−2)を得た。
アミノ酸分析法により該ブロック型コポリマー(A−1)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が32.1個(74.4%)、His−Stearyl官能基が3.5個(8.1%)であった。
【0166】
[合成例8] ブロック型コポリマー(A−3)(一般式(1)において、R
1=メチル基、R
2=トリメチレン基、R
3a=メチレン基、R
4a=アセチル基、R
5a=オクタデシル基、R
6a=アルギニルメチルエステル基、X
1a=ヒスチジニル基、X
2a=結合、a+b+c+d+e+f+g=43、t=273)の合成
合成例5で得たPEG
12K−Asp
43−Ac 196mgをDMF5mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。その後、25℃にてH−Arg−OMe(国産化学製) 80mg及び合成例4で得たH−His−Stearyl・2HCl 98mgを加え、更にジイソプロピルエチルアミン 340μLを加えった。その後、DMT−MM 304mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、50mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、1L)を外液とし、分子量カット14,000の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥してブロック型コポリマー(A−3)を得た。
アミノ酸分析法により該ブロック型コポリマー(A−3)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が28.0個(64.9%)、His−Stearyl官能基が5.5個(12.8%)であった。
【0167】
合成例6〜8で合成したブロック型コポリマー(A)の導入官能基の組成を表1にまとめた。
【0168】
【表1】
【0169】
[合成例9] n−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸−アセチル(ポリアスパラギン酸の重合数33)の合成
n−ブチルアミン 50.3mgのDMSO36mL溶液に、β−ベンジル−L−アスパルテート−N−カルボン酸無水物(BLA−NCA、(株)日油製)6.0g(n−ブチルアミンに対して35当量)を添加し、30℃で一晩反応させた。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、750mL)の混合溶媒に滴下析出後、上澄みを除去した。ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、750mL)で希釈し、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、200mL)で洗浄して減圧乾燥することでn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステルを得た。
得られたn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル 4.3gを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)50mLに溶解し、無水酢酸 2.15mLを添加し、50℃で4.5時間反応させた。
反応終了後、反応液を室温冷却してジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、1250mL)の混合溶媒に滴下析出後、上澄みを除去した。ジイソプロピルエーテル/エタノール(90/10(v/v)、1125mL)で希釈して沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/10(v/v)、125mL)で洗浄して減圧乾燥することでn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル−アセチルを得た。
得られたn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル−アセチル 4.0gをアセトニトリル40mLに溶解し、0.2N−NaOH水溶液 100mL加えて撹拌した。24時間後、0.2N−NaOHを25mL加え、3時間撹拌し、濃縮した。濃縮液をカチオン交換樹脂(ムロマック(H
+))カラムに通して、その溶出液を凍結乾燥してn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸−アセチル(ポリアスパラギン酸の重合数33)を得た。
【0170】
[合成例10] 二官能性ポリマー(B−1)(一般式(2)において、R
10=n−ブチル基、R
3b=メチレン基、R
4b=アセチル基、R
5b=n−オクチル基、R
6b=アルギニルメチルエステル基、X
1b=ヒスチジニル基、X
2b=結合、m+n+o+p+q+r+s=33)の合成
合成例9で得たn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸(アスパラギン酸の重合数33) 119mgをDMF10mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。25℃にてH−Arg−OMe(国産化学製) 157mg及び合成例2で得たH−His−Octyl・HCl 135mgを加え、これにジイソプロピルエチルアミン 640μLを加えた。その後、DMT−MM 588mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、2L)を外液とし、分子量カット3,500の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥して二官能性ポリマー(B−1)を得た。
アミノ酸分析法により該二官能性ポリマー(B−1)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が18.9個(58.2%)、His−Octyl官能基が6.3個(19.2%)であった。
【0171】
[合成例11] 二官能性ポリマー(B−2)(一般式(2)において、R
10=n−ブチル基、R
3b=メチレン基、R
4b=アセチル基、R
5b=オクタデシル基、R
6b=アルギニルメチルエステル基、X
1b=ヒスチジニル基、X
2b=結合、m+n+o+p+q+r+s=33)の合成
合成例9で得たn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸(アスパラギン酸の重合数33) 119mgをDMF10mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。25℃にてH−Arg−OMe(国産化学製) 209mg及び合成例4で得たH−His−Stearyl・HCl 99mgを加え、これにジイソプロピルエチルアミン 640μLを加えた。その後、DMT−MM 588mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、2L)を外液とし、分子量カット3,500の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥して二官能性ポリマー(B−2)を得た。
アミノ酸分析法により該二官能性ポリマー(B−2)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が25.2個(77.5%)、His−Stearyl官能基が1.8個(5.5%)であった。
【0172】
[合成例12] 二官能性ポリマー(B−3)(一般式(2)において、R
10=n−ブチル基、R
3b=メチレン基、R
4b=アセチル基、R
5b=オクタデシル基、R
6b=アルギニルメチルエステル基、X
1b=ヒスチジニル基、X
2b=結合、m+n+o+p+q+r+s=33)の合成
合成例9で得たn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸(アスパラギン酸の重合数33) 119mgをDMF10mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。25℃にてH−Arg−OMe(国産化学製) 152mg及び合成例4で得たH−His−Stearyl・HCl 191mgを加え、これにジイソプロピルエチルアミン 640μLを加えた。その後、DMT−MM 588mgを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ジイソプロピルエーテル/エタノール(80/20(v/v)、100mL)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、6mL)に溶解後、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、2L)を外液とし、分子量カット3,500の透析膜を使用して透析を行った。透析終了後、アセトニトリルを減圧留去し、凍結乾燥して二官能性ポリマー(B−3)を得た。
アミノ酸分析法により該二官能性ポリマー(B−3)中に含まれる各官能基導入量を定量したところ、Arg−OMe官能基が20.5個(63.0%)、His−Stearyl官能基が3.8個(11.8%)であった。
【0173】
合成例10〜12で合成した二官能性ポリマー(B)の導入官能基の組成を表2にまとめた。
【0174】
【表2】
【0175】
[合成例13] N−(2−アミノエチル)−N,N’−ビス(t−ブトキシカルボニル)エチレンジアミンの合成
文献Journal of Inorganic Chemistry 104 (2010) 815−819.に記載の方法に準じて1N,3N−(Boc)
2−DETを合成した。
すなわち、ジエチレントリアミンに対して1当量のトリフルオロ酢酸エチルを反応させ、続いて2当量のBoc無水物(Boc
2O)と反応させ、最後に炭酸カリウムで処理することで脱トリフルオロアセチル化を行い、 N−(2−アミノエチル)−N,N’−ビス(t−ブトキシカルボニル)エチレンジアミンを得た。
1H−NMR(400MHz、D
2O、TMS)ppm:1.45(18H、m)、2.80(2H、m)、3.30(6H、m)
【0176】
[合成例14] 比較ブロック型コポリマー(a−1)(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと重合数が43のポリアスパラギン酸セグメントからなるブロック共重合体であって、側鎖カルボキシ基にジエチレントリアミノ基を導入した化合物)の合成
合成例5で得たメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(アスパラギン酸の重合数43) 394mgをDMF14mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。合成例13で得た N−(2−アミノエチル)−N,N’−ビス(t−ブトキシカルボニル)エチレンジアミン 453mg、HOBt 137mg及びジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI) 155μLを加え、25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をヘプタン/酢酸エチル(80/20(v/v)、140mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ヘプタン/酢酸エチル(80/20(v/v)、140mL)で洗浄し、固形物を得た。
得られた固形物 220mgをトリフルオロ酢酸 8mLに溶解し、室温で1時間撹拌した。
反応終了後、反応溶液を濃縮し、濃縮液を外液を蒸留水を用いて透析を行い、凍結乾燥することで比較ブロック型コポリマー(a−1)を得た。
1H−NMR分析により、ポリアスパラギン酸側鎖へのジエチレントリアミノ基(DET)導入率は約100%であった。
【0177】
[合成例15] 比較ブロック型コポリマー(a−2)(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと重合数が104のポリアスパラギン酸セグメントからなるブロック共重合体であって、側鎖カルボキシ基にジエチレントリアミノ基を導入した化合物)の合成
前記合成例5において、β−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物(BLA−NCA、(株)日油製)を140当量で反応させる以外は、同様の操作を行うことにより、PEG
12K−Asp
104−Ac(分子量12,000のメトキシポリエチレングリコールセグメントと重合数が104のポリアスパラギン酸セグメントが連結したブロック共重合体)を合成した。
得られたPEG
12K−Asp
104−Ac 351mgをDMF20mLに溶解し、35℃にて15分撹拌した。これに合成例13で得た N−(2−アミノエチル)−N,N’−ビス(t−ブトキシカルボニル)エチレンジアミン 674mg、HOBt 205mg及びDIPCI 233μLを加え、さらに25℃にて一夜撹拌した。
反応終了後、反応液をヘプタン/酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(24/7/69(v/v/v)、300mL)の混合溶媒に滴下析出後、沈析物を濾取し、ヘプタン/酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(24/7/69(v/v/v)、300mL)で洗浄し、固形物を得た。
得られた固形物 362mgをトリフルオロ酢酸 14mLに溶解し、室温で1時間撹拌した。
反応終了後、反応溶液を濃縮し、濃縮液を外液を蒸留水を用いて透析を行い、凍結乾燥することで比較ブロック型コポリマー(a−2)を得た。
1H−NMR分析により、ポリアスパラギン酸側鎖へのジエチレントリアミノ基(DET)導入率は約100%であった。
【0178】
[合成例16] 比較二官能性ポリマー(b−1)(重合数が45のポリアスパラギン酸であって、側鎖カルボキシ基にジエチレントリアミノ基を導入した化合物)の合成
前記合成例9に記載の、n−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル−アセチルを得るまでの操作において、β−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボキシ無水物(BLA−NCA、(株)日油製)を45当量で反応させる以外は、同様の操作を行うことにより、n−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル−アセチル(重合数が45のポリアスパラギン酸誘導体)を得た。
得られたn−ブチルアミン−ポリアスパラギン酸ベンジルエステル−アセチル 800mgをDMF40mLに溶解し、ジエチレントリアミン 12.5gを加えて40℃で1時間半撹拌した。
反応終了後、10%酢酸水溶液に滴下して中和し、外液を0.01M−HCl水溶液で透析した。さらに外液を蒸留水として透析を行い、反応溶液を凍結乾燥することで比較二官能性ポリマー(b−1)を得た。
1H−NMRより構造を決定したところ、ポリアスパラギン酸のアスパラギン酸重合数は45.5であった。また、ポリアスパラギン酸側鎖へのジエチレントリアミノ基(DET)導入率は100%であった。
【0179】
[実施例1] ブロック型コポリマー(A−1)と二官能性ポリマー(B−1)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=5)の調製
ブロック型コポリマー(A−1) 7.41mg、二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 4mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例1の組成物溶液を調製した。
得られた実施例1の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ30nmであった。
【0180】
[実施例2] ブロック型コポリマー(A−1)と二官能性ポリマー(B−1)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=10)の調製
ブロック型コポリマー(A−1) 7.41mg、二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 2mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例2の組成物溶液を調製した。
得られた実施例2の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ31nmであった。
【0181】
[実施例3] ブロック型コポリマー(A−1)と二官能性ポリマー(B−1)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−1) 7.41mg、二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例3の組成物溶液を調製した。
得られた実施例3の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ65nmであった。
【0182】
[実施例4] ブロック型ポリマー(A−2)と二官能性ポリマー(B−2)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=5)の調製
ブロック型コポリマー(A−2) 5.83mg、二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 4mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例4の組成物溶液を調製した。
得られた実施例4の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ92nmであった。
【0183】
[実施例5] ブロック型コポリマー(A−2)と二官能性ポリマー(B−2)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=10)の調製
ブロック型コポリマー(A−2) 5.83mg、二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 2mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例5の組成物溶液を調製した。
得られた実施例5の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ46nmであった。
【0184】
[実施例6] ブロック型コポリマー(A−2)と二官能性ポリマー(B−2)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−2) 5.83mg、二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例6の組成物溶液を調製した。
得られた実施例6の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ56nmであった。
【0185】
[実施例7] ブロック型コポリマー(A−3)と二官能性ポリマー(B−3)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=5)の調製
ブロック型コポリマー(A−3) 6.83mg、二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 4mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例7の組成物溶液を調製した。
得られた実施例7の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ25nmであった。
【0186】
[実施例8] ブロック型コポリマー(A−3)と二官能性ポリマー(B−3)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=10)の調製
ブロック型コポリマー(A−3) 6.83mg、二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 2mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例8の組成物溶液を調製した。
得られた実施例8の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ28nmであった。
【0187】
[実施例9] ブロック型コポリマー(A−3)と二官能性ポリマー(B−3)及びsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−3) 6.83mg、グラフト型コポリマー(B−3) 3.79mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、各溶液を100μLずつ混合して超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例9の組成物溶液を調製した。
得られた実施例9の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ25nmであった。
【0188】
[比較例1] 二官能性ポリマー(B−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=5)の調製
二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、10mM−HEPES 4mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例1の組成物溶液を調製した。
得られた比較例1の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ117nmであった。
【0189】
[比較例2] 二官能性ポリマー(B−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=10)の調製
二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、10mM−HEPES 2mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例2の組成物溶液を調製した。
得られた比較例2の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ55nmであった。
【0190】
[比較例3] 二官能性ポリマー(B−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=20)の調製
二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例3の組成物溶液を調製した。
得られた比較例3の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ56nmであった。
【0191】
[比較例4] 二官能性ポリマー(B−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=5)の調製
二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、10mM−HEPES 4mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例4の組成物溶液を調製した。
得られた比較例4の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ116nmであった。
【0192】
[比較例5] 二官能性ポリマー(B−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=10)の調製
二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、10mM−HEPES 2mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例5の組成物溶液を調製した。
得られた比較例5の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ44nmであった。
【0193】
[比較例6] 二官能性ポリマー(B−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=20)の調製
二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例6の組成物溶液を調製した。
得られた比較例6の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ13nmであった。
【0194】
[比較例7] 二官能性ポリマー(B−3)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=5)の調製
二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、10mM−HEPES 4mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例7の組成物溶液を調製した。
得られた比較例7の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ58nmであった。
【0195】
[比較例8] 二官能性ポリマー(B−3)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=10)の調製
二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、10mM−HEPES 2mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例8の組成物溶液を調製した。
得られた比較例8の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ75nmであった。
【0196】
[比較例9] 二官能性ポリマー(B−3)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=100、N/P=20)の調製
二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例9の組成物溶液を調製した。
得られた比較例9の組成物の平均粒子径を、動的光散乱法で測定したところ186nmであった。
【0197】
[比較例10]比較ブロック型コポリマー(a−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=1)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 20mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例10の組成物とした。
【0198】
[比較例11]比較ブロック型コポリマー(a−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=2)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 10mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例11の組成物とした。
【0199】
[比較例12]比較ブロック型コポリマー(a−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=5)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 4mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例12の組成物とした。
【0200】
[比較例13]比較ブロック型コポリマー(a−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=10)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 2mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例13の組成物とした。
【0201】
[比較例14]比較ブロック型コポリマー(a−1)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=20)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例14の組成物とした。
【0202】
[比較例15]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=1)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−1) 4.76mgを、10mM−HEPES 20mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例15の組成物とした。
【0203】
[比較例16]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=2)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.76mgを、10mM−HEPES 10mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例16の組成物とした。
【0204】
[比較例17]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=5)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.76mgを、10mM−HEPES 4mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例17の組成物とした。
【0205】
[比較例18]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=10)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.76mgを、10mM−HEPES 2mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例18の組成物とした。
【0206】
[比較例19]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(siCON)からなる組成物(B(%)=0、N/P=20)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.76mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを10μM−siCON/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例19の組成物とした。
【0207】
[試験例1]20%FBS中におけるsiRNAの安定性評価
本発明の核酸送達用組成物を用いた核酸含有組成物が、生体内に存在する核酸分解酵素による核酸分解に対する耐性を有することを検証するため、siRNA含有組成物のウシ胎児血清(FBS)に対する安定性を調べた。
実施例1〜9及び比較例1〜19に係るsiRNA含有組成物に、ウシ胎児血清(終濃度20%FBS Tissue Culture Biologicals社)を、siRNAの最終濃度が1μMとなるように添加して、これを、37℃で3時間インキュベートした。
その後、試料溶液に、終濃度0.04%になるようにラウリル硫酸ナトリウム(SDS、ナカライテスク)を加え、siRNA分解反応を停止させると共に、各試料組成物から、siRNAを解離させた。得られた試験試料を、15%ポリアクリルアミドゲル(Tris-ホウ酸-EDTA(TBE))を用いて、100ボルト、60分の条件で電気泳動を行い、SYBR GREEN 2(ライフテクノロジーズジャパン社)で染色することで、供試試料中に含まれるsiRNAを検出した。ゲル中のsiRNAのバンドを、モレキュラー・イメージャーFX(BioRad社)で解析した。なお、siRNAのコントロール試料として、siCON(北海道システムサイエンス社製)を用いた。得られた結果を、
図1〜
図3及び表3に示した。
【0208】
【表3】
【0209】
試験例1の結果から、本発明に係る実施例1〜9のsiRNA含有組成物は、N/Pが5である実施例1及び4において、若干のsiRNAの分解が認められるものの、いずれのN/P比でも、siRNAの安定性が確認された。これに対し、比較例1〜9のブロック型コポリマー(A)を含まず、二官能性ポリマー(B)成分のみで調製されたB(%)=100なるsiRNA含有組成物は、ポリマー成分含量が少ないN/P=5においてsiRNAが分解する傾向が示された。これらの結果から、本発明の組成物は、核酸分解酵素に対して、核酸分解に対する耐性が付与され、含有する核酸を安定化できることが示された。一方、比較ブロック型コポリマーを使用した比較例10〜19は、核酸分解酵素に対する核酸分解耐性は有することが示された。
【0210】
[実施例10]ブロック型コポリマー(A−1)と二官能性ポリマー(B−1)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=75、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−1)を7.41mg、二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、(A−1)溶液 100μLと、(B−1)溶液 300μLを混合し、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例10の組成物とした。
実施例10の組成物の、ゼータ電位を測定したところ、6mVであった。
【0211】
[実施例11]ブロック型コポリマー(A−1)と二官能性ポリマー(B−1)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−1)を7.41mg、二官能性ポリマー(B−1) 4.03mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES1mLに溶解し、それぞれ100μLずつ混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例11の組成物とした。
実施例11の組成物の、ゼータ電位を測定したところ10mVであった。
【0212】
[実施例12]ブロック型コポリマー(A−2)と二官能性ポリマー(B−2)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=75、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−2)を5.83mg、二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、(A−2)溶液 100μLと(B−2)溶液 300μLを混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例12の組成物とした。
実施例12の組成物の、ゼータ電位を測定したところ8mVであった。
【0213】
[実施例13]ブロック型コポリマー(A−2)と二官能性ポリマー(B−2)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−2)を5.83mg、二官能性ポリマー(B−2) 3.11mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、それぞれ100μLずつ混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例13の組成物とした。
実施例13の組成物の、ゼータ電位を測定したところ13mVであった。
【0214】
[実施例14]ブロック型コポリマー(A−3)と二官能性ポリマー(B−3)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=75、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−3)を6.83mg、二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、(A−3)溶液 100μLと、(B−3)溶液 300μLを混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例14の組成物とした。
実施例14の組成物の、ゼータ電位を測定したところ7mVであった。
【0215】
[実施例15]ブロック型コポリマー(A−3)と二官能性ポリマー(B−3)及びsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=50、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−3)を6.83mg、二官能性ポリマー(B−3) 3.79mgを、それぞれ別々に10mM−HEPES 1mLに溶解し、それぞれ100μLずつ混合して、超音波を約10秒照射した。この混合溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、実施例15の組成物とした。
実施例15の組成物の、ゼータ電位を測定したところ9mVであった。
【0216】
[比較例20]ブロック型コポリマー(A−1)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=0、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−1) 7.41mgを、10mM−HEPES1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−FAM−si−Luc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例20の組成物とした。
比較例20の組成物の、ゼータ電位を測定したところ4mVであった。
【0217】
[比較例21]ブロック型コポリマー(A−2)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=0、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−2) 5.83mgを、10mM−HEPES1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例21の組成物とした。
比較例21の組成物の、ゼータ電位を測定したところ5mVであった。
【0218】
[比較例22]ブロック型コポリマー(A−3)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=0、N/P=20)の調製
ブロック型コポリマー(A−3) 6.83mgを、10mM−HEPES 1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 150μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 150μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例22の組成物とした。
比較例22の組成物の、ゼータ電位を測定したところ4mVであった。
【0219】
[比較例23]比較二官能性ポリマー(b−1)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=100、N/P=4)の調製
比較二官能性ポリマー(b−1) 5.52mgを、10mM−HEPES1mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 58.7μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 21.3μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例23の組成物とした。
【0220】
[比較例24]比較ブロック型コポリマー(a−2)と比較二官能性ポリマー(b−1)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=75、N/P=4)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.69mgを、10mM−HEPES 2.5mLに、比較二官能性ポリマー(b−1) 5.52mgを、10mM−HEPES 5mLに、それぞれ別々に溶解し、超音波を約10秒照射した。(a−2)溶液と(b−1)溶液を体積比1:3で混合し、混合溶液 58.7μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 21.3μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例24の組成物とした。
【0221】
[比較例25]比較ブロック型コポリマー(a−2)と比較二官能性ポリマー(b−1)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=50、N/P=4)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.69mgを、10mM−HEPES 2.5mLに、比較二官能性ポリマー(b−1) 5.52mgを、10mM−HEPES 5mLに、それぞれ別々に溶解し、超音波を約10秒照射した。(a−2)溶液と(b−1)溶液を体積比1:1で混合し、混合溶液 58.7μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 21.3μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例25の組成物とした。
【0222】
[比較例26]比較ブロック型コポリマー(a−2)と比較二官能性ポリマー(b−1)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=25、N/P=4)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.69mgを、10mM−HEPES 2.5mLに、比較二官能性ポリマー(b−1) 5.52mgを、10mM−HEPES 5mLにそれぞれ別々に溶解し、超音波を約10秒照射した。(a−2)溶液と(b−1)溶液を体積比3:1で混合し、混合溶液 58.7μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 21.3μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例26の組成物とした。
【0223】
[比較例27]比較ブロック型コポリマー(a−2)とsiRNA(FAM−siLuc)からなる組成物(B(%)=0、N/P=4)の調製
比較ブロック型コポリマー(a−2) 4.69mgを、10mM−HEPES 2.5mLに溶解し、超音波を約10秒照射した。この溶液 58.7μLを、10μM−FAM−siLuc/10mM−HEPES溶液 21.3μLに加え、超音波を約10秒照射した。その後、0.2μmのフィルターを通すことで、比較例27の組成物とした。
【0224】
[試験例2]ヒト膠芽種細胞U87MGにおける細胞取り込みの評価
本発明の核酸送達用組成物を用いた核酸含有組成物が、核酸分子を細胞内に取り込まれることができることを検証するため、蛍光標識siRNA(FAM−siLuc)を含む核酸含有組成物を用いて、細胞内取り込み試験を行った。
10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したEagle‘s Medium Essential Medium培地(Corning社)を用いて、ヒト膠芽種細胞U87MG(ATCC)を、37℃、5%CO
2インキュベーター下で継代培養維持した。
ヒト膠芽種細胞U87MGを、100,000細胞/ガラスボトムディッシュ(1mL)になるように播種して、37℃のCO
2インキュベーターで4日間培養を行った。
これに、実施例10〜15及び比較例20〜27の蛍光標識siRNA(FAM−siLuc)を含む核酸含有組成物を、siRNA濃度100nMで培地に添加し、U87MG細胞に接触させた。各組成物添加後、3.5時間後及び19時間後に、共焦点顕微鏡(Leica社)を用いて試験細胞の画像を採取した。
試験細胞の画像は、市販の画像処理ソフト(Media Cybernetics社、Image−Pro Plus)を用いて、1細胞当たりのFAM蛍光量をpixcel数としてカウントし、各供試試料における画像から10細胞の平均pixcel数を求め表4に示した。
【0225】
【表4】
【0226】
試験例2の結果から、ブロック型コポリマー(A)と二官能性ポリマー(B)を用いる本発明の核酸含有組成物は、U87MG細胞において蛍光標識物であるFAM由来の蛍光が観察され、siRNAを細胞内に取り込ませることができた。一方、二官能性ポリマー(B)を含まず、ブロック型コポリマー(A)のみを用いた比較例20〜22は、実施例に比較して細胞内取り込み量が少ない結果であった。したがって、ブロック型コポリマー(A)と二官能性ポリマー(B)の2種類のポリマーを用いる本発明の核酸送達用組成物は、細胞取り込みを優位に向上させることが示された。
また、引用文献2記載の化合物を使用している比較例23〜比較例27は、核酸分解酵素に対する分解耐性を有するものであるが、細胞内取り込み性能は全く確認することができなかった。
【0227】
試験例1及び2の結果から、本発明によれば、核酸分解酵素への安定性を示すと同時に、細胞への効率的な取り込みを達成する組成物が提供される。かかる組成物は、例えば、治療用の医薬組成物として使用でき、その産業上の価値は極めて大きく、疾病の原因分子を直接的に抑制して、治療効果を得るための核酸医薬治療剤を提供することができる。