【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、リサイクルされた炉頂ガスを加熱する熱風炉と、これらの熱風炉を加熱するのに有利な燃料ガスを生成するためのガス変換リアクタとを含むTGRBF設備内での鉄の生産に関する。
【0018】
本発明は、より具体的には、BFGを生成するTGRBFを含む高炉設備を操業する方法を提供し、これは、
a.生成されたBFGを脱炭酸して、CO
2富化リッチテールガスの流れと、CO
2の含有量が3%vol以下の脱炭酸BFGの流れとを得るステップと、
b.高炉により生成されなかった炭化水素含有ガス状燃料を変換して、合計(すなわち、C
CO+C
H2)で少なくとも70%vol、好ましくは少なくとも80%vol、より好ましくは少なくとも90%volのCOおよびH
2と、最大で7%vol、好ましくは最大で6%volの炭化水素とを含む変換ガスの流れを生成するステップと、
c.発熱量が2.8〜7.0MJ/Nm
3、好ましくは5.5〜6.0MJ/Nm
3であり、かつ(i)テールガスの流れの一部と、(ii)変換ガスの流れの少なくとも一部とを含む低発熱量のガス状燃料を生成し、および前記低発熱量のガス状燃料を、熱風炉を加熱するために使用するステップと、
d.熱風炉内で脱炭酸BFGの流れの少なくとも70%volを700℃〜1300℃、好ましくは850℃〜1000℃、より好ましくは880℃〜920℃の温度まで加熱して、加熱された脱炭酸BFGを生成するステップと、
e.加熱された脱炭酸BFGを高炉内に注入するステップと
を含む。
【0019】
このようなTGRBFプロセスにおいて、高炉の炉頂から出るBFGを脱炭酸する前に、好ましくはそこから粉塵が除去され、いわゆる「クリーン」BFGが残る。TGRBF除塵システムは、特に水とBFGとの直接接触を通じて微細粉塵粒子を除去するスクラバおよび/または同様に微細粉塵を除去する電気集塵装置を含んでいてもよい。
【0020】
BFG、または除塵後のクリーンBFGは、CO
2除去システムに入り、脱炭酸される。CO
2除去システムは、VPSA、PSA、CO
2をBFGから物理的に分離する吸着剤を用いるシステム、またはCO
2をBFGから除去するアミン等の化学的吸収剤を用いるシステムとすることができる。(クリーン)BFGの脱炭酸により、そこからCO
2の実質的に全部が除去され、「生成」ガス、すなわち、主としてCOおよびH
2からなり、CO
2およびN
2が少量である脱炭酸BFGが残る。
【0021】
TGRBFプロセスの限界内で、この生成ガスのうちの可能な限り多くが少なくとも700℃、好ましくは少なくとも900℃まで加熱されてから、それが高炉に、一般には炉床羽口において、または場合により炉床羽口と、スタックレベルのスタック羽口との両方で戻される。高炉に注入されるリサイクルされたCOおよびH
2は、還元ガスを生成するために通常使用されるコークスからの炭素に置き換わり、酸化鉄鉱石を還元して金属鉄にする。
【0022】
脱炭酸中にBFGから除去されるCO
2は一般に、ガス脱炭酸ユニットから出るテールガスの約80〜90%を占める(COおよびH
2は少量)。このテールガスは実質的に発熱量を有さす、したがって、不活性ガスとして使用できるか、または地中貯留のためにさらに処理できる。
【0023】
一般に、BF熱風炉は、主に可燃物としてCOおよびH
2を含む低発熱量ガスによって加熱されるように設計される。したがって、熱風炉を加熱するための低発熱量ガスの燃焼中に、大量の高温の燃焼ガスが生成される。熱風炉のバーナは通常、単純で堅牢な設計であり、セラミック煉瓦から製造され、低発熱量ガスを導入するための中央垂直ラインと周囲の水平空気穴とを有する。
【0024】
低発熱量ガスは一般にBFGであり、前記BFGはCOGで増熱され(5.5〜6.0MJ/Nm
3)、熱風炉内で十分なドーム温度を達成するのに十分な火炎温度が得られるようにしてもよい。
【0025】
COGが利用できない、または利用可能なCOGが別の用途に使用されるBF操業の場合、(COGの代わりに)NGで増熱されたBFGを使って、適当な発熱量が達成されてきた。しかしながら、「混合ガス」(BFG+NG)中に炭化水素が高い濃度で存在することにより、熱風炉のバーナおよび燃焼室において、ガス状炭化水素の燃焼特性により、激しく振動することがよくある。これらの振動は、熱風炉の設備に深刻な損傷を与えかねない。これらの振動は、少なくとも一部に、燃料中に存在する炭化水素の分解によると考えられている。BFG+COGの炭化水素の含有量は低いため、このような混合物の場合にこの問題はそれほど顕著ではない。
【0026】
したがって、炭化水素をほとんどまたは全く含まない低発熱量のガスを使用することによってのみ、BF熱風炉を確実に加熱することができる。
【0027】
例えばTGRBFの場合など、熱風炉の加熱に利用可能なBFGが不十分であるときに熱風炉が使用される場合、熱風炉を加熱するには、BFGの代わりに、炭化水素をほとんどまたは全く含まない別の低発熱量燃料を使用しなければならない。
【0028】
TGRBFの場合、例えば、CO
2富化テールガス(発熱量が〜1.0MJ/kg)を天然ガスまたはCOGと混合して、熱風炉のために発熱量が5.5〜6.0MJ/Nm
3の低発熱量ガスを生成することを考慮できる。しかしながら、その場合、テールガスの増熱に必要な天然ガスまたはCOGの量が多く、この混合物が従来の熱風炉の燃焼室で燃焼されるときに重大な振動の問題を生じるため、この選択肢は保持できない。
【0029】
この例を、5.9MJ/Nm
3の発熱量を必要とする熱風炉を備える高炉設備に関して、以下の表1〜4に示す。
【0030】
表1は、従来の(TGRBF以外の)高炉により生成されたBFGの一般的な組成および発熱量、COGの一般的組成および発熱量、ならびに上述の発熱量に対応するBFGとCOGとの混合物(混合ガス)の組成を示している。
【0031】
表1の最後の段は、TGRBFの場合に前記熱風炉がリサイクルされた脱炭酸BFGの流れを900℃まで加熱できるのに十分なエネルギーを提供するために必要な混合ガスの体積、ならびに前記混合ガスに含まれるBFGおよびCOGのそれに対応する体積を示している。
【0032】
発熱量が5.9MJ/Nm
3であり、BFGとCOGとからなる混合ガスの場合、この混合ガスには体積で5.5%の炭化水素が含まれるであろう。
【0033】
【表1】
【0034】
表2は、BFGが(COGの代わりに)NGで増熱され、それ以外の要素がすべて等しいときの状況を示している。その場合、混合ガスの炭化水素濃度は40%増加する。これに加えて、混合ガスの水素濃度は75%減少する。このような混合ガスは、その燃焼中に生成される振動により、熱風炉の加熱に適していない。
【0035】
【表2】
【0036】
TGRBF高炉においては、熱風炉内で使用するためのBFGが不十分であるため、熱風炉を使用するのであれば、代わりの低発熱量燃料を発見するか、作り出さなければならないであろう。
【0037】
表3および4は、低カロリガスがテールガス、およびそれぞれCOGと天然ガスとを使って生成され、それ以外の要素は表1に関して説明したものと同じ仮説のケースを示している。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
再び、表1に示されているBOFとCOGとからなる混合ガスと比較して、混合ガス中の炭化水素レベルがかなり高く、H
2レベルがかなり低いことがわかり、それによって再び、これらの混合ガスが熱風炉の加熱に不適当となる。
【0041】
それゆえ、本発明は明確に、TGRBFの場合のように、十分なBFGが利用できない場合に高炉の熱風炉を加熱する際の使用に適した補助的な低発熱量ガス状燃料を作るための、大いに必要とされる方法を提供する。
【0042】
本発明は、TGRBFのリサイクルされた脱炭酸BFGを加熱するために、従来のBFから知られている既存の(タイプの)熱風炉を引き続き使用する方法を提供する。これは、リサイクルされた脱炭酸BFGを加熱するための、全く新しいシステムを設計することによって達成される。
【0043】
本発明の1つの実施形態によれば、炭化水素含有ガス状燃料は天然ガスおよび/またはコークス炉ガスを含む。一般に、炭化水素含有ガス状燃料は、天然ガスもしくはコークス炉ガス、またはその混合物からなる。
【0044】
炭化水素含有ガス状燃料を変換する1つの方法は、その部分燃焼である。炭化水素含有燃料の別の変換方法は、燃料改質プロセスの利用である。これらの方法はまた、組み合わせても使用できる。
【0045】
そのため、当技術分野では改質プロセスを使ってBFGを改善することが知られている。
【0046】
米国特許第3,884,677号明細書は、炭化水素、好ましくは油を使って、BFG中のCO
2を炭化水素と反応させて、生成ガス中に高炉に戻されるCO
2がほとんど残らないようにすることによって高炉ガスを「再生」することを教示している。CO
2除去プロセスは、従来のプロセスを通じて遂行され、リサイクルガスのCO
2含有量を低化させるための(V)PSAまたは化学的吸収剤を使用しない。このプロセスの最大の欠点は、反応の実行に高炉ガスの約1/2が燃料として必要であることである。その結果、リサイクルのための残りのBFGはより少なく、したがって、置き換え可能なコークスの量が限定される。しかしながら、BFGの約1/2が「再生」されるが、処理しなければならないガスの総量はかなり多く、すなわち800〜1000Nm
3 BFG/thm程度である。これによって、膨大な量のガスを処理できるリアクタを建造するために相当な資本投入が必要となる。
【0047】
米国特許出願公開第2011/0209576 A1号明細書は、固体炭化水素の使用を教示しており、これはまず、フラッシュ脱蔵されて合成ガスが作られ、それが回収された炉頂ガスを改質プロセスにより処理するために使用される。この発明の目的は、BFG中のCO
2をCOに変換する代わりに、フラッシュ脱蔵ユニット内で作られた合成ガスで改質することによって、(V)PSAまたは化学的吸収ユニット等のCO
2除去システムを不要にすることである。この発明は、米国特許出願公開第2011/0209576 A1号明細書に、必要な資本投資額は(V)PSAに必要な額より小さいとの記載はあるものの、大量のBFGを変換する必要があり、実質的な投資を要するという点で、米国特許第3,884,677号明細書と同じ問題を有する。
【0048】
本発明に関連して、炭化水素含有燃料を改質するための1つの考えられる方法は、蒸気改質である。炭化水素含有燃料の好ましい改質方法では、改質剤としてCO
2を使用する。これは当技術分野で、乾式改質として知られる。本発明によれば、乾式改質(CO
2を使用)は、COG、NG、または高炉により生成されない他のあらゆる炭化水素燃料等の炭化水素含有ガス状燃料を改質するために既知の方法で使用できる。その場合、改質プロセスは好ましくは、CO
2を豊富に含む(一般に80〜90%vol)テールガスを使って炭化水素含有燃料を処理し、COおよびH
2を豊富に含むガスを生成し、これは、前記ガスをテールガスで希釈して熱風炉燃焼と適合する程度まで発熱量を下げた後に容易に熱風炉内で燃焼できる。本発明によれば、好ましくはテールガスの状態の蒸気とCO
2との両方を、変換ガスの流れを生成するための改質剤として使用することも可能である。
【0049】
低発熱量のガス状燃料は、変換ガスの流れの全部または少なくとも一部とテールガスの流れの一部との混合物からなっていてもよく、テールガスで変換ガスが希釈され、それによって発熱量が熱風炉の安全な動作に必要なレベルまで下がる。
【0050】
好ましい実施形態によれば、熱風炉の上流で、変換ガスの流れの少なくとも一部が脱炭酸BFGと混合されて、強化された脱炭酸BFGの流れが得られる。脱炭酸BFGを強化することによって、生成ガスの水素含有量が増大して高炉プロセスが改善され、水素は高炉の安定化に役立つことが知られているため、スムーズな還元プロセスが提供される。
【0051】
この場合、低発熱量ガス状燃料は、強化された脱炭酸BFGの流れの第一の部分を含むか、それからなっていてもよい。部分燃焼リアクタ内での炭化水素含有ガス状燃料の部分燃焼を使って変換ガスの流れを生成する場合、強化された脱炭酸BFGの流れの第二の部分が、部分燃焼リアクタを加熱するために使用されてもよく、この場合、前記第二の部分は好ましくは空気と燃焼する。燃料改質プロセスが改質装置内で行われて、変換ガスの流れが生成される場合、強化された脱炭酸BFGの流れの第三の部分は、例えば前記第三の部分を空気と燃焼させることによって、改質装置を加熱するために使用されてもよい。これに関して、強化された脱炭酸BFGの流れの第一、第二および第三の部分への言及は、単に前記部分の異なる用途を区別するためのものにすぎない。「第二の部分」への言及は、必ずしもプロセス内で「第一の部分」も使用されることを必要とするとはかぎらず、また、「第三の部分」への言及も、必ずしも「第一の部分」および/または「第二の部分」も使用されることを必要とするとはかぎらない。しかしながら、本発明によれば、前記「第一の部分」、「第二の部分」および「第三の部分」を如何様に組み合わせて使用することも完全に可能である。
【0052】
それゆえ、本発明によれば、高炉ガスから得られる、例えば(V)PSAにより生成され、CO
2を85〜95%vol含むテールガスを使って炭化水素含有ガス状燃料、例えばコークス炉ガスおよび/または天然ガスを改質して、リサイクルされた脱炭酸BFGをそれが高炉に注入される前に強化することが可能となる。本発明のこの実施形態では、高発熱量ガス(炭化水素をほとんどまたは実質的に全く含まない)を提供するのに十分な余分の脱炭酸BFGが提供され、これはその後、残りのテールガスと混合して、熱風炉を加熱するための低発熱量燃料を作ることができる。それと同時に、リサイクルされた脱炭酸BFG中の水素の割合が高められ、それによってコークスの消費量をさらに削減し、それゆえ、全体としてのCO
2排出量も削減できる。
【0053】
有利には、脱炭酸BFGの流れの100%vol未満がリサイクルされ、高炉内に注入される。好ましくは、脱炭酸BFGの流れの80〜90%volが熱風炉内で加熱されて、高炉へと注入される。
【0054】
TGRBFの成功は、可能な限り多くの脱炭酸BFGをリサイクルする能力に依存する。しかしながら、BFGのリサイクルにより、高炉プロセスにおいて窒素蓄積等の新たな問題が生じる可能性がある。窒素には高炉内で多くの用途があり、例えば、(i)微粉炭を羽口まで運ぶため、(ii)器具のパージ、(iii)ロックホッパに供給される材料の加圧等に使用され、表1〜4に示されているように、従来のBFの場合のように空気または酸素富化空気の代わりに酸素で操業されるTGRBFの場合でも、BFGには幾分かの窒素が含まれる。BFG中の窒素のほとんどは、炉頂から出て、ガスクリーニングシステム(存在する場合)を通り、CO
2除去システムを通り、それが脱炭酸BFGと共に高炉に戻る。それゆえ、脱炭酸BFGのリサイクルにより、TGRBFのガス循環路内の窒素蓄積物は還元ガスを希釈し、その結果、生産性が損なわれるか、または生産性を保つために高炉の燃料率を増大させることが必要になる可能性がある。脱炭酸BFGの一部のパージ、すなわち、脱炭酸BFGの前記部分を高炉に戻さないことによって、BFG内のこのような窒素の蓄積を防止することが可能である。
【0055】
本発明の、および特に変換ガスの流れの全部または少なくとも一部が脱炭酸BFGと混合されて脱炭酸BFGが強化される実施形態の特定の利点は、本発明のプロセスにより、脱炭酸BFGを高炉にリサイクルすることと熱風炉を加熱することとの両方のために、十分な炉頂ガスおよびしたがって脱炭酸BFGも提供されることである。
【0056】
加熱された脱炭酸BFGは、炉床羽口を介して、および任意選択によりシャフト羽口も介して、高炉内に注入されてよい。
【0057】
前述のように、VPSA、PSA、または化学的吸収ユニットがBFGの脱炭酸に使用されてもよい。
【0058】
熱風炉を加熱するために、低発熱量ガス状燃料は、いずれの適当な燃焼酸化剤で燃焼されてもよく、これは一般には空気である。
【0059】
本発明は、利用可能なCO
2除去技術の使用を活用する。比較的少量のガス、すなわち炭化水素含有ガス状燃料が変換されて、COおよびH
2を豊富に含むガスが生成され、これは他のテールガスで希釈された後に熱風炉内で直接使用でき、および/またはCO
2除去ユニットからの脱炭酸BFGと混合して、リサイクルガスをH
2富化し、それによって高炉内での還元をより容易にするために使用できる。
【0060】
COおよびH
2富化ガスがCO
2除去ユニットからの脱炭酸BFGと混ざると、より高発熱量の富化された脱炭酸BFGが生成され、その一部を、残りのテールガスの一部で希釈した後に熱風炉を加熱するために使用できる。高炉に注入される残りのリサイクルされた脱炭酸BFGは、その脱炭酸BFGの全部を単にリサイクルするTGRBFと少なくとも同じコークス比低減を実現するのに十分である。その目的は、熱風炉を加熱するために十分なCO+H
2富化ガスを提供し、それと同時に、すべての生成ガスを実質的にリサイクルすることによって予想される当初の大幅なコークス比の低減を維持することである。
【0061】
本発明とその利点とは、
図1および2に関して説明されている以下の例を読めば、よりよく理解されるであろう。