特許第6513735号(P6513735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前島 博の特許一覧

<>
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000002
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000003
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000004
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000005
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000006
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000007
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000008
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000009
  • 特許6513735-排水浄化処理装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513735
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】排水浄化処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/10 20060101AFI20190425BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20190425BHJP
   B01D 1/14 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
   C02F1/10
   C02F1/28 F
   B01D1/14 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-99076(P2017-99076)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-192434(P2018-192434A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】508012622
【氏名又は名称】前島 博
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】前島 博
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−326248(JP,A)
【文献】 特開2009−165916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/04−18
B01D 1/00
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖空間を構成する筐体と、
この筐体内に設けられる処理区画室と、
この処理区画室内に配置される吸液性を具えた処理メディアと、
この処理メディアの至近位置を移動し、処理する原水を処理メディア上に散布するとともに、原水を気化させるために温熱風を供給する処理ユニットとを具えて本体装置を構成し、
前記処理メディアに散布された原水を加温気化させることにより、処理メディアに原水中の汚染物質を残留、保持させるとともに、
原水中の清浄水を含む清浄な状態の回収気体を筐体外部に排出するようにしたことを特徴とする排水浄化処理装置。
【請求項2】
前記処理区画室は、適宜の長さを有する空間とし、
この処理区画室の長手方向に沿って前記処理メディアが設けられ、
更に前記処理ユニットは、処理メディアの設置方向に沿って処理区画室内を移動するものであり、
且つ処理ユニットは処理メディアに対向する位置に処理ヘッドを具え、
この処理ヘッドは、処理メディアに原水を散布する原水ノズルと、
処理メディアに温熱風を吹き出す温熱風ノズルとを具えていることを特徴とする請求項1記載の排水浄化処理装置。
【請求項3】
前記処理ユニットにおける処理ヘッドは、移動方向において、その中央に原水ノズルを設け、その両側に温熱風ノズルを配した構造であることを特徴とする請求項2記載の排水浄化処理装置。
【請求項4】
前記処理メディアの至近部には、乾燥風を吹き出す乾燥風ノズルが配置されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の排水浄化処理装置。
【請求項5】
前記筐体には、気化した回収気体を排出するための移送風が供給されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の排水浄化処理装置。
【請求項6】
前記本体装置の至近部には回収気体導出装置が設けられ、この回収気体導出装置により筐体外部に排出された回収気体から浄化処理水を分離させるとともに、回収気体を乾燥処理気体とすることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の排水浄化処理装置。
【請求項7】
前記乾燥処理気体は、筐体内に戻されることを特徴とする請求項6記載の排水浄化処理装置。
【請求項8】
前記処理区画室は、処理区画ケージ内に複数室設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の排水浄化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場排水をはじめとしてあらゆる排水を高度に浄化する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境浄化や環境維持の社会的要請が更に強まるにつれ、例えば工場排水等における汚濁物質の処理基準も極めて厳しいものとなっている。このような要請に応える手法としては、汚濁物質の性状に応じて、化学的中和処理、生化学的な処理、物理的なフィルター処理などが行われている。そして、これらの対応でも浄化基準の要請に応えられない場合には、結局のところ希釈処理をしているのが現状である。
このような手法では、一定量の排水ボリューム当たりの汚濁物質含有パーセンテージは、見かけ上減ったとしてもその絶対量は減っていない。
【0003】
ところで、このような浄化処理の限界を考慮して、処理すべき原水を多孔質の例えばスポンジ状の材料片(吸着メディア)に吸着させ、この吸着メディアを温風加熱させることによって、吸着させた水分のみを蒸散させる一方、汚濁物質は、吸着メディアに残留確保し、前記蒸散した浄化空気から改めて水分を凝集させる、いわば気化浄化式の手法が試みられている(例えば特許文献1参照)。
この手法は、高度に排水を浄化できる点で有望であるものの、現実には蒸散処理にあたっての効率が十分ではなく、商用機としての設置は躊躇われて、結局のところ実機は市場には提供されていない。
【0004】
このようなことから本出願人は、商用利用に充分応え得る性能を具えた気化浄化式の排水浄化処理技術を開発し、既に特許出願に及んでおり、その技術は評価されて登録に至っている(特許文献2参照)。
ところで前記特許は、汚染された原水の高度な浄化が可能となっているが、一方で、複数機設置すれば見かけ上、原水処理を連続して行うことができるが、個々の排水浄化処理装置ではあくまでバッチ処理が行われる。
しかしながら汚染された原水の処理にあたり、連続処理による効率化の要求は強く在り、装置単体であっても原水の連続処理を可能とする装置の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−200151号公報
【特許文献2】特許第5042868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような要請に応えるためになされたものであって、連続的に原水を供給しながら、逐次原水の浄化が図られるような、新規な排水浄化処理装置を開発すること技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の排水浄化処理装置は、閉鎖空間を構成する筐体と、この筐体内に設けられる処理区画室と、この処理区画室内に配置される吸液性を具えた処理メディアと、この処理メディアの至近位置を移動し、処理する原水を処理メディア上に散布するとともに、原水を気化させるために温熱風を供給する処理ユニットとを具えて本体装置を構成し、前記処理メディアに散布された原水を加温気化させることにより、処理メディアに原水中の汚染物質を残留、保持させるとともに、原水中の清浄水を含む清浄な状態の回収気体を筐体外部に排出するようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の排水浄化処理装置は、前記要件に加え、前記処理区画室は、適宜の長さを有する空間とし、この処理区画室の長手方向に沿って前記処理メディアが設けられ、更に前記処理ユニットは、処理メディアの設置方向に沿って処理区画室内を移動するものであり、且つ処理ユニットは処理メディアに対向する位置に処理ヘッドを具え、この処理ヘッドは、処理メディアに原水を散布する原水ノズルと、処理メディアに温熱風を吹き出す温熱風ノズルとを具えていることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の排水浄化処理装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記処理ユニットにおける処理ヘッドは、移動方向において、その中央に原水ノズルを設け、その両側に温熱風ノズルを配した構造であることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の排水浄化処理装置は、前記要件に加え、前記処理メディアの至近部には、乾燥風を吹き出す乾燥風ノズルが配置されていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項5記載の排水浄化処理装置は、前記要件に加え、前記筐体には、気化した回収気体を排出するための移送風が供給されていることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項6記載の排水浄化処理装置は、前記要件に加え、前記本体装置の至近部には回収気体導出装置が設けられ、筐体外部に排出された回収気体から浄化処理水を分離させるとともに、回収気体を乾燥処理気体とすることを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項7記載の排水浄化処理装置は、前記請求項6記載の要件に加え、前記乾燥処理気体は、筐体内に戻されることを特徴として成るものである。
【0014】
更にまた請求項8記載の排水浄化処理装置は、前記要件に加え、前記処理区画室は、処理区画ケージ内に複数室設けられていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1記載の発明によれば、処理メディアに対し、逐次連続的に汚染された原水を供給しながら、これに対して集中的に温熱風を供給して水分の蒸散を促すことができ、処理すべき原水の連続供給を可能とする装置が得られ、結果的に高効率の原水処理が達成できる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、一定範囲に長手方向に配設された処理メディアに対し、その長手方向に沿って順次、処理ユニットが移動し、処理ユニットの移動に伴って処理メディア上に原水が連続的に供給されるとともに、その原水をただちに温熱風ノズルにより加熱して気化・蒸散させるものであり、合理的な設計態様を具えた排水浄化処理装置を得ることができる。
【0017】
また請求項3記載の発明によれば、処理ヘッドは、その移動方向において中央に原水ノズルを配置し、その両側に温熱風ノズルを配置しているものであり、この結果、原水ノズルに先行する温熱風ノズルからの温熱風により、予め処理メディアが高温に加熱され、その後に供給される原水の蒸散を促し易く前処理しており、更にそれを後続の温熱風ノズルにより完全に蒸散するまで加熱する。結果的に処理ヘッドが通過した時点で既に原水の蒸散が図られるものであり、効率的な排水浄化処理が達成できる。
【0018】
更にまた請求項4記載の発明によれば、処理メディアの至近部には、乾燥風ノズルが配置されていることから、処理メディアの乾燥がより効果的に達成される。
【0019】
更にまた請求項5記載の発明によれば、処理区画室を具えた筐体内には、原水から気化した回収気体を排出するための移送風が供給されるため、回収気体に一定の流れが生じて、円滑に外部に排出される。
【0020】
更にまた請求項6記載の発明によれば、本体装置の至近部には回収気体導出装置が設けられ、筐体外部に排出された回収気体から浄化処理水を分離させるとともに、回収気体を乾燥処理気体とすることにより、回収気体の再利用の道を開くとともに、浄化処理水の再利用の道を開くことができる。
【0021】
更にまた請求項7記載の発明によれば、乾燥処理気体は筐体内に戻されるものであり、処理メディアの乾燥に寄与する気体として有効に再利用することができる。
【0022】
更にまた請求項8記載の発明によれば、処理区画室は、処理区画ケージ内に複数室設けられているため、筐体内のスペースをより有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の排水浄化処理装置を示す一部破断斜視図である。
図2】同上側面図である。
図3】本発明における処理ユニットの基本構造と、装置全体の基本構造とを併せ示す骨格的側面図である。
図4】同上正面図である。
図5】本発明における原水と温熱風との分配供給構造を示す正面図である。
図6】本発明における処理ユニットの駆動手法の一部を示す正面図である。
図7】本発明における一部の処理区画室と、その内部に配置する処理ユニットの形態を示す骨格的正面図である。
図8】同上態様の更に他の実施形態を示す骨格的正面図である。
図9】本発明の装置における全ての処理区画室の利用態様を示す骨格的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態は、以下述べる実施例を適切な形態の一例とするとともに、この技術的思想内において改良される種々の形態をも含むものである。
以下本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0025】
まず排水浄化処理装置Aは、本体装置1を主要部材とする。この本体装置1は閉鎖空間を構成する筐体2と、この筐体2内に設けられる処理区画室3と、処理区画室3内に配置される処理メディア35と、この処理メディア35の至近位置を移動し、処理する原水W0を処理メディア35上に散布するとともに、原水W0を気化させるための温熱風Hを供給する処理ユニット5とを具える。
更に本体装置1には、回収気体V0を回収するための回収気体導出装置6や、温熱風Hの供給源となるヒーターユニット7を周辺に具え、更に適宜の位置に原水W0を貯留しておく原水タンク8を具える。
【0026】
まず本体装置1は、適宜のベースフレーム11に対し、前記筐体2やその他の機材を支持しており、まず筐体2は、横長直方体状の外殻板20を外周部に具える。そして外殻板20の一方の側面(妻面)には、一定の偏平なスペースである駆動スペースを形成する駆動ケース21を設けるとともに、この駆動ケース21寄りの筐体2内に送風チャンバ22を設ける。一方、筐体2内の大部分のスペースを処理室23とする。
なお送風チャンバ22と処理室23とは、仕切板24によって周辺部が仕切られ、処理区画室3に至る中央部は連通状態に開口している。更に送風チャンバ22に連通して送風機ファン25が筐体2の妻面部の外殻板20に対し設けられている。
更にこの処理室23内には、処理ユニット5に対し、原水W0を供給するための原水ストレージタンク26と、温熱風Hを供給するための温熱風タンク27とが設けられている。また前記駆動ケース21内には、後述する処理ユニット5の駆動を図るためのスプロケット28、チェン29及び処理ユニット駆動モータM1が設けられる。
【0027】
このような筐体2における処理室23には、処理区画室3が一例として複数室形成される。具体的には、処理区画ケージ30は、多数の横桟部材31と環状枠部材32とを組み合わせた籠状形態を採るものであり、その長手方向すなわち水平方向に延びるような多数の処理区画室3が形成されている。因みにこの処理区画室3は、中心ゾーンZ1に4室、中間ゾーンZ2に8室、外周ゾーンZ3に12室形成されている。しかしながら処理区画室3は、各々が厳密に閉鎖されているわけではなく、互いに連通状態を保っており、実質的にはそこに配置される処理メディア35その他の機材等により分割されているものである。
【0028】
ここで一つの処理区画室3の構成について説明する。なおこの説明にあたっては、実際には例えば中心ゾーンZ1における処理区画室3は銀杏切り型の断面であり、中間ゾーンZ2及び外周ゾーンZ3は、いわゆる扇形の断面形状を有するものであるが、これらについてはこの断面形状から離れてシンボリックな表現として以下説明する。
ずなわち図2、3、4に示すように、処理区画室3にはガイドレール33が設けられ、このガイドレール33に沿って処理ユニット5が移動できるように構成されている。このガイドレール33の横には、処理ユニット5の駆動用のスクリューシャフト34が配置され、一方、この処理ユニット5に対向するように、処理メディア35が処理区画室3内に設けられる。この処理メディア35は、一例として木質系のスポンジ状の多孔質パルプを適用することが好ましく、その形状は一例として一定の厚さを有する帯状素材であり、このものが処理区画室3の長手方向に沿って敷設されたような形態を採る。
具体的には、例えば横桟部材31を支持部材としてサポートネット35aを設け、その上に処理メディア35を配置し、例えば保持クリップ35b等によりこれを設置した状態とする。
更に処理メディア35の至近位置である一例として下方には、乾燥風ノズル36を設ける。
【0029】
このような処理区画室3に対し、その内部で処理ユニット5が移動するものであり、以下、処理ユニット5について説明する。
処理ユニット5は、前記ガイドレール33に対して支持される移動枠50を骨格部材とするものであり、具体的にはスライドブロック51がガイドレール33を掴むようなかたちで摺動する。
そしてこのスライドブロック51の一部から突出するようにメネジブロック51aが設けられ、このメネジブロック51aと前記ガイドレール33に沿って設けられているスクリューシャフト34とが噛み合い、スクリューシャフト34の回転により処理ユニット5の移動が図られるように構成されている。
なおスクリューシャフト34は、その一端が前記駆動ケース21内に至り、ここに取り付けられたスプロケット28が処理ユニット駆動モータM1の回転を受け、回転する。
【0030】
そしてこの移動枠50は、スライドブロック51から延長する延長杆52を具えるものであり、その自由端側に処理ヘッド53を具える。
この処理ヘッド53は、原水ノズル54と温熱風ノズル55とを具える。具体的には、原水ノズル54は、前記帯状の処理メディア35の幅寸法程度の寸法を有する管状部材に対し、その下面に多数の小孔を形成し、原水W0をスプレー状に処理メディア35に供給できるようにしたものである。
一方、温熱風ノズル55は、スリット状のノズルであって、原水ノズル54を中央に配し、その移動方向前後に二基設けられている。
そして前記原水ノズル54は、原水供給配管56に接続され、この原水供給配管56は前記原水ストレージタンク26に接続されている。
なお原水供給配管56は、処理ユニット5が長手方向に移動することを許容するため、伸縮自在のコイル部56aを具える。
また原水供給配管56と原水ストレージタンク26との接続は、原水ストレージタンク26に多数設けられた原水ニップル26aの一つに対し接続されている。
また温熱風供給配管57は、同様にその途中にコイル部57aを有し、その端部が温熱風タンク27に多数設けられた温熱風ニップル27aの一つに対し接続されている。
【0031】
以上述べた構成が本体装置1としての基本構成であり、更にこのものに対し、回収気体導出装置6が設けられる。このものは実質的には回収気体V0を導くダクト状のものでありその導出路60から回収気体V0が導出ダクト61に導かれる。
この導出ダクト61は一例として、回収気体V0がジグザグ状に流れるような案内部材61aを具えるものであり、導出ダクト61の始発側近くには、回収気体V0を冷却する冷却コイル62を具える。
そして導出ダクト61の下方には、この回収気体V0が冷却されて凝縮したときの水分の排出口となるドレン口63を具えるとともに、気体に関しては再導入管64を具える。この再導入管64は一例として前記乾燥風ノズル36に接続され、処理区画室3内に乾燥処理気体Vを導入する。
【0032】
更に本体装置1の至近位置には、ヒーターユニット7を設けるものであり、ヒートポンプや電熱器その他適宜の手法で温熱風Hを生起するものである。この温熱風Hを送り出すための送風管71が前記筐体2内の温熱風タンク27に対し接続される
【0033】
また原水タンク8は適宜工場排水等を一定量貯留するに十分な容積を有するタンクであり、送水管81から原水ポンプPにより、前記原水ストレージタンク26内に原水W0を移送する。
【0034】
本発明の排水浄化処理装置Aの構成は、一例として以上述べたような構成を採るものであり、以下この作動状態について説明する。
(1)準備状態
準備状態としては、まず原水タンク8に汚染された状態の原水W0が貯留されており、且つこの原水W0は、原水ポンプPにより前記本体装置1における筐体2内の原水ストレージタンク26内に一定量貯留されている。
またヒーターユニット7は、このものが起動され、送風管71から温熱風Hが温熱風タンク27に一定圧で吹き込まれる。
一方、筐体2内の状態で見ると、前記処理区画室3にあっては、例えば処理ユニット5を最も温熱風タンク27あるいは原水ストレージタンク26側に寄せた状態とし、この状態を始発状態とする。
【0035】
(2)処理ユニットの移動
このような状態で処理ユニット5は、移動枠50が前記スクリューシャフト34の回転駆動を受けて送風チャンバ22側に向かって処理区画室3内を移動してゆく。
なお処理ユニット5は、処理区画室3が、中心ゾーンZ1、中間ゾーンZ2、外周ゾーンZ3において例えば計24室あるときには、これらが同時に動いても良いし、それぞれが別の動きをしてももちろん差し支えない。ただし、駆動ケース21内のスプロケット28、チェン29等の駆動系統を考慮すると、少なくとも各ゾーンにおいては、共通の動きをする方が制御上確実である。
なお原水供給配管56、温熱風供給配管57は、その途中あるいはその前後において、準備段階において温熱風Hあるいは原水W0が漏れないように適宜のバルブ等を具えるものであり、これらのバルブ操作自体は、適宜の電磁弁等により遠隔操作が可能な構成を採る。
【0036】
(3)原水処理
このような状況の下に、処理ユニット5が移動を開始すると、処理ユニット5における処理ヘッド53における原水ノズル54からスプレー状に原水W0が処理メディア35上に吹き付けられ、これを湿潤状態とする。
もちろんこの吹き付ける原水W0の量は、処理ユニット5の移動に伴い、逐次、蒸散されるような量に設定しておくものであり、この量は温熱風ノズル55からの温熱風Hの温度、量等も勘案して設定される。
またこのような移動に伴い、まず原水ノズル54に先行する温熱風ノズル55により、処理メディア35のいわば予熱が図られる。一方、後続の温熱風ノズル55により、前記原水ノズル54からの原水W0の水分を蒸発させる。
そして原水W0中の汚染物質自体は、処理メディア35に吸着した状態で保持される。
【0037】
このような作用を進めながら、処理ユニット5が終端点に至り、原水ノズル54からの原水W0の供給を停止する。一方、温熱風ノズル55からの温熱風Hの供給については連続的に作用させておいてもよい。
そしていわば帰路にあたる処理ユニット5の戻り移動に対しては、この時点で同様の原水W0の吐出を行ってもよいが、原水ノズル54の作用は停止して、いわゆる空戻り状態としてもよい。
このような動作を繰り返し、前記処理メディア35に対し原水W0中の汚染物質を残留させて、清浄な回収気体V0を蒸散させる。
【0038】
なおここで前記駆動ケース21におけるスクリューシャフト34の駆動等について簡単に説明すると、一例として中心ゾーンZ1にある処理ユニット5については、例えばそれぞれ四本のスクリューシャフト34が配設されており、その端部におけるスプロケット28を捲回するとともに更に途中で処理ユニット駆動モータM1の駆動スプロケットに捲回した状態となる。このような状態で、処理ユニット駆動モータM1を駆動することにより、全てのスクリューシャフト34を回転駆動し、処理ユニット5の移動を図るようにしている。
【0039】
(4)回収気体の後処理
このようにして処理区画室3乃至は筐体2内に蒸散した回収気体V0は、筐体2の外部に配置された送風機ファン25の緩やかな送風により、回収気体導出装置6における導出路60側に向かって移動する。回収気体導出装置6において回収気体V0は、ジグザグ状の導出路60を通りながら、まず冷却コイル62に触れて冷却され、ここで露滴となって回収される。
なお回収気体導出装置6で回収気体V0の一部が液化することは、回収気体V0の体積が著しく減少することを意味し、これによっても処理区画室3または筐体2内における回収気体V0の流れが確保され、前記送風機ファン25の出力が極端になくても十分な回収気体V0の導出効果が得られる。
このようにして回収気体導出装置6内では、回収気体V0から液体成分である浄化処理水Wが分離・除去できるものであり、浄化処理水Wとしてはほぼ完全な浄化処理状態を得た極めて清浄な水分として回収される。
【0040】
一方、水分を排除した回収気体V0は、乾燥処理気体Vとなって再導入管64から処理区画室3内における乾燥風ノズル36に至り、ここから処理区画室3内に乾燥した温熱風Hとして再投入される。
なお当然ながら、このような温熱風Hが処理区画室3内に供給されることにより、処理メディア35に吹き付けられた原水W0の蒸散をより効果的に成されるような作用をしている。
【0041】
(5)処理メディアの交換
このような処理を継続した後、適宜のインターバルで、処理メディア35が原水W0中の汚染物質の吸着の限界に達するが、この場合には処理メディア35の交換を行う。処理メディア35は先に述べたように紙質ベースのものが好ましく、この場合には、焼却処理等が比較的容易に行い得る。
【0042】
〔他の装置態様〕
本発明の基本的構成並びに作用原理は以上述べた通りであるが、実際に装置設計をするにあたっては、種々の効率的な設計態様が採り得る。
すなわち、個々の処理区画室3を満遍なく原水W0の処理に寄与する様、処理メディア35をできるだけ密に配置することが好ましい。具体的には中心ゾーンZ1における処理区画室3について見れば図7、8に示す様に、延長杆52を更に分岐させた分岐杆52aを設け、それぞれに処理ヘッド53を設けるようにすることが好ましい。
同様に全体として見ても図9に示すように、処理区画室3の空間内を余すことなく利用するような処理メディア35と処理ユニット5及び処理ヘッド53の設定が成されるものである。
なお駆動系統その他の部材についての装置的な安定を図る意味からは、各処理区画室3においては、一つの処理ユニット5が移動するような形態を採ることが好ましい。
もちろん一つの処理区画室3に対して、複数の処理ユニット5が移動するような形態を採ることももとより可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 本体装置
11 ベースフレーム
2 筐体
20 外殻板
21 駆動ケース
22 送風チャンバ
23 処理室
24 仕切板
25 送風機ファン
26 原水ストレージタンク
26a 原水ニップル
27 温熱風タンク
27a 温熱風ニップル
28 スプロケット
29 チェン
3 処理区画室
30 処理区画ケージ
31 横桟部材
32 環状枠部材
33 ガイドレール
34 スクリューシャフト
35 処理メディア
35a サポートネット
35b 保持クリップ
36 乾燥風ノズル
5 処理ユニット
50 移動枠
51 スライドブロック
51a メネジブロック
52 延長杆
52a 分岐杆
53 処理ヘッド
54 原水ノズル
55 温熱風ノズル
56 原水供給配管
56a コイル部
57 温熱風供給配管
57a コイル部
6 回収気体導出装置
60 導出路
61 導出ダクト
61a 案内部材
62 冷却コイル
63 ドレン口
64 再導入管
7 ヒーターユニット
71 送風管
8 原水タンク
81 送水管
A 排水浄化処理装置
H 温熱風
M1 処理ユニット駆動モータ
P 原水ポンプ
V 乾燥処理気体
V0 回収気体
W 浄化処理水
W0 原水
Z1 中心ゾーン(4室)
Z2 中間ゾーン(8室)
Z3 外周ゾーン(12室)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9