特許第6513863号(P6513863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6513863
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ライニング構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20190425BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20190425BHJP
【FI】
   E04F13/12 101B
   !B23K9/00 501B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-137473(P2018-137473)
(22)【出願日】2018年7月23日
【審査請求日】2018年7月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593204292
【氏名又は名称】株式会社昭和
(73)【特許権者】
【識別番号】516303129
【氏名又は名称】高安 輝樹
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高安 輝樹
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3709485(JP,B1)
【文献】 米国特許第2649172(US,A)
【文献】 米国特許第6463708(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08−13/18
E04H 5/00−5/12
E04H 7/00−7/32
B65D 90/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1ライニング板及び第2ライニング板を備え、前記第1ライニング板と前記第2ライニング板とを被ライニング面上に縦横の方向にそれぞれ交互に配置して構成されるライニング構造であって、
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、一対の第1側辺部及び一対の第2側辺部を有する平面視矩形状の板本体と、前記板本体の各第1側辺部にそれぞれ段部を介して設けられる一対の受け片と、を備え、
前記第1ライニング板の各受け片は、前記第1ライニング板の板本体の第1側辺部の全長よりも大きい長さを有していて、長さ方向の両端部が前記第1ライニング板の板本体の各第2側辺部からそれぞれ突き出た突出部をなしており、
前記第2ライニング板の各受け片は、前記第2ライニング板の板本体の第1側辺部の全長よりも小さい長さを有していて、長さ方向の両端部の外側にそれぞれ空間部を有しており、
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、縦横の一方向において、前記第2ライニング板の第2側辺部が、隣接する前記第1ライニング板の受け片に重ねられるとともに前記第1ライニング板の第1側辺部に突き合わされるように並べられており、縦横の他方向において、前記第1ライニング板の第2側辺部が、隣接する前記第2ライニング板の受け片に重ねられるとともに前記第2ライニング板の第1側辺部に突き合わされるように並べられており、かつ、
前記第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部の突出部が、前記一方向に隣接する前記第2ライニング板の前記第1側辺部より突き出て前記空間部に位置するとともに、斜め方向に隣接する前記第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部の突出部の内側に位置して、突出部同士が互いに係合するように並べられている、ライニング構造。
【請求項2】
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、金属材料又は合金材料からなる、請求項に記載のライニング構造。
【請求項3】
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、チタン、チタン合金又はステンレスからなる、請求項に記載のライニング構造。
【請求項4】
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、非金属材料又は金属材料と非金属材料との複合材料からなる、請求項に記載のライニング構造。
【請求項5】
前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、プラスチック、FRP又はセラミックスからなる、請求項に記載のライニング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、鋼構造物、木造構造物等の表面と環境とを遮断するライニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のライニング構造として、特許文献1に記載のライニング構造が提案されている。特許文献1に記載のライニング構造は、図11に示すように、第1ライニング板100及び第2ライニング板200の2種類のライニング板を縦横の方向に交互に複数配置してなる。第1ライニング板100及び第2ライニング板200はともに、図12及び図13に示すように、平面視矩形状の板本体101,201の一対の側辺部に段部を介して形成される受け片102,202と、板本体101,201の他の一対の側辺部に形成される覆い片203,203とを備えている。第1ライニング板100及び第2ライニング板200は、図11に示すように、第1ライニング板100の受け片102上に第2ライニング板200の覆い片203が重ねられるとともに、第1ライニング板100の板本体101に第2ライニング板200の覆い片203が突き合わされることで、縦横の一方向(図11では横方向)に並べられ、第2ライニング板200の受け片202上に第1ライニング板100の覆い片103が重ねられるとともに、第2ライニング板200の板本体201に第1ライニング板100の覆い片103が突き合わされることで、縦横の他方向(図11では縦方向)に並べられている。
【0003】
特許文献1に記載のライニング構造では、縦方向に列をなす第1及び第2のライニング板100,200は、受け片102,202同士が接触することで、横方向に位置ずれしないように互いに規制しあった状態で並べられている。よって、縦方向に列をなす第1及び第2のライニング板100,200は、横方向への位置ずれにより、横方向に隣接するライニング板との間で突き合わせ部分が不用意に開くことが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3709485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のライニング構造は、縦方向に列をなす第1及び第2のライニング板100,200同士は、受け片102,202により横方向への位置ずれが防止されているが、横方向に隣接する列同士においては、第1及び第2のライニング板100,200は、受け片102,202により横方向への位置ずれが防止されていない構造である。そのため、複数のライニング板を組み合わせる際に、外力の作用により横方向に隣接する列の間で位置ずれが生じて列同士が互いに離れるおそれがあり、ライニング構造の施工時の作業性に改善の余地がある。
【0006】
また、複数のライニング板を組み合わせた後、隣接するライニング板の継ぎ目を溶接等で接合する際に、縦方向に延びる継ぎ目が一直線ではないため、継ぎ目の接合作業が効率よく行うことができず、この点においても、ライニング構造の施工時の作業性に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、施工時の作業性を向上させたライニング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。本発明のライニング構造は、複数の第1ライニング板及び第2ライニング板を備え、前記第1ライニング板と前記第2ライニング板とを被ライニング面上に縦横の方向にそれぞれ交互に配置して構成されるライニング構造であって、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、一対の第1側辺部及び一対の第2側辺部を有する平面視矩形状の板本体と、前記板本体の各第1側辺部にそれぞれ段部を介して設けられる一対の受け片と、を備え、前記第1ライニング板の各受け片は、前記板本体の第1側辺部の全長と同じ又は全長よりも大きい長さを有しており、前記第2ライニング板の各受け片は、前記板本体の第1側辺部の全長よりも小さい長さを有していて、長さ方向の両端部の外側にそれぞれ空間部を有しており、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、縦横の一方向において、前記第2ライニング板の第2側辺部が、隣接する前記第1ライニング板の受け片に重ねられるとともに前記第1ライニング板の第1側辺部に突き合わされるように並べられており、縦横の他方向において、前記第1ライニング板の第2側辺部が、隣接する前記第2ライニング板の受け片に重ねられるとともに前記第2ライニング板の第1側辺部に突き合わされるように並べられており、かつ、前記第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部が、斜め方向に隣接する前記第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部の内側に位置し、かつ、前記一方向に隣接する前記第2ライニング板の空間部に位置するように並べられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のライニング構造においては、前記第1ライニング板の受け片は、長さ方向の両端部が前記板本体の各第2側辺部からそれぞれ突き出ていることが好ましい。
【0010】
また、本発明のライニング構造においては、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、金属材料又は合金材料からなることが好ましい。
【0011】
また、本発明のライニング構造においては、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、チタン、チタン合金又はステンレスからなることが好ましい。
【0012】
また、本発明のライニング構造においては、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、非金属材料又は金属材料と非金属材料との複合材料からなることが好ましい。
【0013】
また、本発明のライニング構造においては、前記第1ライニング板及び前記第2ライニング板は、プラスチック、FRP又はセラミックスからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のライニング構造では、2種類のライニング板が千鳥状に配置されており、一方のライニング板の受け片上に他方のライニング板の板本体が重ねられるとともに、一方のライニングの板本体と他方のライニング板の板本体とが突き合わされるように並べられている。さらに、第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部が、斜め方向に隣接する第1ライニング板の受け片の長さ方向の端部の内側に位置し、かつ、一方向に隣接する第ライニング板の空間部に位置するように並べられている。
【0015】
よって、本発明のライニング構造によれば、他方向に列をなす第1及び第2のライニング板は、第1ライニング板の一対の受け片の間に、第2ライニング板の受け片と該第2ライニング板と一方向に隣接する第1ライニング板の一方側の受け片の端部が挟まれていて、これらが接触することで、一方向に位置ずれしないように互いに規制しあった状態で並べられている。よって、他方向に列をなす第1及び第2のライニング板は、一方向への位置ずれにより、一方向に隣接するライニング板との間で突き合わせ部分が不用意に開くことが防止されている。
【0016】
加えて、一方向に隣接する列同士において、第1及び第2のライニング板は、斜め方向に隣接する第1ライニング板の受け片の端部同士が互いに係合していることで、一方向への位置ずれが防止されている。よって、複数のライニング板を組み合わせる際に、一方向に隣接する列同士が互いに離れる向きに外力が作用しても、一方向に隣接する列の間で位置ずれが生じるおそれがなく、一方向に隣接する列同士の間でもライニング板の突き合わせ部分が不用意に開くことが防止されている。よって、ライニング構造の施工時の作業が容易となり、作業性を向上させることができる。
【0017】
さらに、本発明のライニング構造によれば、複数のライニング板を組み合わせた後、隣接するライニング板の継ぎ目を溶接等で接合する際に、一方向及び他方向に延びる継ぎ目がともに一直線となり、継ぎ目が格子状をなす。そのため、継ぎ目の接合作業が効率よく行うことが可能となり、この点においても、ライニング構造の施工時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の第1ライニング板を示す平面図である。
図2図1の(a)A−A断面図、(b)B−B断面図である。
図3図1の一部を拡大して示す斜視図である。
図4】本実施形態の第2ライニング板を示す平面図である。
図5図4の(a)C−C断面図、(b)D−D断面図である。
図6図41の一部を拡大して示す斜視図である。
図7】本実施形態のライニング構造の一部を示す平面図である。
図8】本実施形態のライニング構造の一部を示す底面図である。
図9図7のE−E断面図である。
図10図7のF−F断面図である。
図11】従来例のライニング構造の一部を示す平面図である。
図12】従来例の第1ライニング板を示す平面図である。
図13】従来例の第1ライニング板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のライニング構造の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ライニング構造は、コンクリート構造物、鋼構造物、木造構造物等の表面(被ライニング面)と環境とを遮断して該構造物を保護する目的で使用されるものである。
【0020】
図1図3は本実施形態の第1ライニング板1を示し、図4図6は本実施形態の第2ライニング板2を示し、図7図10は本実施形態のライニング構造10を示す。ライニング構造10は、第1ライニング板1及び第2ライニング板2の2種類のライニング板を用いて構成され、複数の第1ライニング板1及び第2ライニング板2を、被ライニング面上に縦横の方向にそれぞれ交互に配置することで構成されている。なお、以下の説明では、図1図4図7及び図8の横方向Xを一方向、縦方向Yを他方向としている。
【0021】
第1ライニング板1は、平面視矩形状の板本体3と、一対の受け片4とを備える。板本体3は所定の厚みを有する板状を呈しており、一対の対向する第1側辺部30と、他の一対の対向する第2側辺部31とを有している。板本体3において、第1側辺部30は、受け片4が突き出る部位であり、第2側辺部31は、隣接して並べられる第2ライニング板2の板本体6の第1側辺部60に突き合わされる部位である。また、板本体3の第2側辺部31から所定の幅を有する領域は、隣接して並べられる第2ライニング板2の受け片7上に重ね合わされる覆い領域である。板本体3の厚みは、特に限定されるものではないが、0.01mm以上が好ましく、0.1mm以上5.0mm以下がより好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がさらに好ましい。
【0022】
受け片4は、板本体3と同じ厚みを有する板状を呈している。受け片4は、断面視L字型の段部5を介して板本体3の第1側辺部30から外側に突き出ており、受け片4と板本体3との間には、板本体3の厚み分の段差が生じている。これにより、板本体3の下方には、受け片4との段違いにより生じる空間S1が形成され、この空間S1に隣接する第2ライニング板2の受け片7が導入される。受け片4は、板本体3の第1側辺部30の全長と同じ又は全長よりも大きい長さを有している。本実施形態では、受け片4は、板本体3の第1側辺部30の全長よりも大きい長さを有しており、長さ方向の両端部が板本体3の各第2側辺部31からそれぞれ突き出た突出部40をなしている。
【0023】
第2ライニング板2は、平面視矩形状の板本体6と、一対の受け片7とを備える。板本体6は第1ライニング板1の板本体3と同じ厚みを有する板状を呈しており、一対の対向する第1側辺部60と、他の一対の対向する第2側辺部61とを有している。板本体6において、第1側辺部60は受け片7が突き出る部位であり、第2側辺部61は隣接して並べられる第1ライニング板1の板本体3の第1側辺部30に突き合わされる部位である。また、板本体6の第2側辺部61から所定の幅を有する領域は、隣接して並べられる第1ライニング板1の受け片4上に重ね合わされる覆い領域である。
【0024】
受け片7は、板本体6と同じ厚みを有する板状を呈している。受け片7は、断面視L字型の段部8を介して板本体6の第1側辺部60から外側に突き出ており、受け片7と板本体6との間には、板本体6の厚み分の段差が生じている。これにより、板本体6の下方には、受け片7との段違いにより生じる空間S2が形成され、この空間S2に隣接する第1ライニング板1の受け片4が導入される。受け片7は、板本体6の第1側辺部60の全長よりも小さい長さを有しており、長さ方向の両端部の外側にそれぞれ受け片7の存在しない空間部9を有している。この空間部9は、板本体6の覆い領域の両側方に位置し、板本体6の下方の上記空間S2とつながっており、板本体6の覆い領域の下方に第1ライニング板1の受け片4が導入された際に、受け片4の両端部の突出部40が空間部9に位置する。つまり、受け片7は、板状体6の第1側辺部60において、覆い領域を除いた領域の全長又はほぼ全長にわたって設けられている。
【0025】
第1ライニング板1の板本体3の一方向(図示例では横方向X)の長さL10は、第2ライニング板2の板本体6の一方向(図示例では横方向X)の長さL20と同じ又はほぼ同じとなるように設定されている。
【0026】
また、第1ライニング板1の板本体3の他方向(図示例では縦方向Y)の長さL11は、第2ライニング板2の板本体6の他方向(図示例では縦方向Y)の長さL21と同じ又はほぼ同じとなるように設定されている。つまり、第1ライニング板1及び第2ライニング板2を組み合わせた際に、第1ライニング板1の第1側辺部31(一対の受け片4の間)においては、第2ライニング板2の受け片7と、他の2つの第1ライニング板1のそれぞれ一方の受け片4とが隙間なく又は多少の隙間を有して並べられている。
【0027】
また、第2ライニング板2の板本体6の長さL20は、第2ライニング板2の受け片7の長さL22と第1ライニング板1の2つの受け片4の幅L13との和と同じ又はほぼ同じとなるように設定されている。
【0028】
また、第1ライニング板1の受け片4の長さL12は、第2ライニング板2の他方向(図示例では縦方向Y)の長さ(つまりは板本体6の長さL21と2つの受け片7の幅L23との和)と同じ又はほぼ同じとなるように設定されている。
【0029】
第1ライニング板1及び第2ライニング板2は、例えば金属材料、合金材料、非金属材料又は非金属材料と金属材料との複合材料で形成することができる。この中でも、金属材料や合金材料により第1ライニング板1及び第2ライニング板2を形成すると、第1及び第2のライニング板1,2の突き合わせ部分の接合を溶接によって行うことができるので、好ましい。
【0030】
金属材料や合金材料は、ライニングの目的に応じて所望の特性(例えば、耐食性、耐摩耗性、耐熱性等)を有する材料が用いられる。例えば、耐食性を有する金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ニッケル、アルミニウム等を用いることができ、耐食性を有する合金材料としては、上述した金属を主成分とする合金の他、ステンレス等を用いることができる。また、メッキ、PVD、CVD等の表面処理により耐食性材料を表面に成膜して耐食性を施した金属材料等を用いてもよいが、耐食性やコストとの観点から、チタン、チタンを主成分とするチタン合金、又はステンレスを用いることが好ましい。
【0031】
非金属材料としては、例えば、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性高分子材料や、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性高分子材料のプラスチック、あるいは、不飽和ポリエステル樹脂とガラス繊維等との複合材料であるFRP等を用いることができる。これらの材料を用いることで、材料の軽量化によりライニング構造10の施工が容易になるだけではなく、耐食性を付与することができる。また、弾性を有するプラスチックを用いれば、ライニング板が可撓性を有し、ライニング構造10にフレキシビリティーを付与することができるので、ライニング構造10が施工されるコンクリート構造物、鋼構造物、木造構造物への密着性を高めることが可能である。
【0032】
また、非金属材料として、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素又はこれらの混合物等を焼結等することで形成されるファインセラミックスや、粘土、けい石、長石等を焼結等することで形成されるレンガ、陶磁器、ガラス等のセラミックスを用いると、耐熱性や耐摩耗性等を付与することができる。また金属材料とプラスチックス等の非金属材料との複合材料を用いることにより、互いの特性が活かしあうことで安価な材料でも高い保護効果を付与することが可能である。
【0033】
第1ライニング板1及び第2ライニング板2は、例えば公知の成形方法により成形された一枚の平坦な板材を、板本体3,6と受け片4,7との境界部分において公知の加工方法により折り曲げ部5,8の加工を行うことで形成される。
【0034】
ライニング構造10は、上述した構成の第1ライニング板1及び第2ライニング板2を横方向X及び縦方向Yに交互に複数配置することで組み立てられる。図7図10は、ライニング構造10を、コンクリート構造物の水処理槽の内壁面(被ライニング面)上に施工した状態を示している。なお、第1及び第2のライニング板1,2の受け片4,7は、図示しないアンカーや接着剤、又はこれらの併用によって被ライニング面に固定することができる。
【0035】
縦横の方向にそれぞれ並べられる第1ライニング板1及び第2ライニング板2は、その一方向(図示例では横方向X)においては、第2ライニング板2の第2側辺部61が、隣接する第1ライニング板1の受け片4に重ねられるとともに第1ライニング板1の第1側辺部30に突き合わされるように並べられている。また、他方向(図示例では縦方向Y)においては、第1ライニング板1の第2側辺部31が、隣接する第2ライニング板2の受け片7に重ねられるとともに第2ライニング板2の第1側辺部60に突き合わされるように並べられている。
【0036】
このとき、第1ライニング板1の受け片4の長さ方向の端部(突出部40)は、該第1ライニング板1と一方向(図示例では横方向X)に隣接する第2ライニング板2の第1側辺部60より突き出て該第2ライニング板2の受け片7の外側の空間部9に位置するとともに、該第1ライニング板1と斜め方向に隣接する第1ライニング板1の第2側辺部31の裏面側(下方の空間S1)において受け片4の長さ方向の端部(突出部40)の内側に位置している。
【0037】
これにより、複数の第1及び第2のライニング板1,2が縦横に並べられた状態では、斜め方向に隣接する第1ライニング板1の受け片4の突出部40同士が互いに係合している。
【0038】
また、第1ライニング板1の第2側辺部31の下方の空間S1において、他方向(図示例では縦方向Y)に隣接する第2ライニング板2の受け片7が一対の受け片4の間に導入されるとともに、各受け片4と受け片7との間に、該第1ライニング板1と斜め方向に隣接する第1ライニング板1の一方側の受け片4の端部(突出部40)がそれぞれ割り込むように導入されている。
【0039】
縦横に複数並べられた第1及び第2のライニング板1,2は、板本体3,6の突き合わせ部分が例えばTIG溶接等の溶接や接着剤、又はこれらの併用によって接合される。これにより、突き合わせ部分の密着性が向上し、水等の侵入を防止することができる。このとき、裏面側に存在する受け片4,7によって溶接や接着を確実に施すことが可能であるため、水密性等の密着性に対する信頼性を向上でき、施工精度も向上できる。また、突き合わせ部分の接合を溶接により行う場合、裏面側に存在する受け片4,7を突き合わせ部分の当板(裏板)として利用することができるので、コンクリート構造物への熱影響によるコンクリートの溶解やコンクリートの揮発成分による溶接の品質低下を防止することができる。
【0040】
なお、突き合わせ部分の接合を接着剤により行う場合、接着剤としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、変性シリコン系接着剤、天然ゴム系接着剤、合成ゴム系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリマーセメント等から任意に選択して用いることができる。
【0041】
また、縦横に複数並べられた第1及び第2のライニング板1,2の板本体3,6と被ライニング面との間の空間は、例えば板本体3,6の裏面に接着剤を塗布する等して接着剤等によって埋められる。これにより、第1及び第2のライニング板1,2の板本体3,6の剛性が増し、ライニング構造10の強度を向上することができる。
【0042】
以上のとおり、本実施形態のライニング構造10では、図7及び図8に示すように、2種類のライニング板1,2が千鳥状に配置されており、一方のライニング板1(2)の受け片4(7)上に他方のライニング板2(1)の板本体6(3)が重ねられるとともに、一方のライニング板1(2)の板本体3(6)と他方のライニング板2(1)の板本体6(3)とが突き合わされるように並べられている。さらに、第1ライニング板1の受け片4の長さ方向の端部である突出部40が、斜め方向に隣接する第1ライニング板1の受け片4の長さ方向の端部である突出部40の内側に位置し、かつ、一方向(図示例では横方向X)に隣接する第2ライニング板2の空間部9に位置するように並べられている。
【0043】
よって、本実施形態のライニング構造10によれば、図8に示すように、他方向(図示例では縦方向Y)に列をなす第1及び第2のライニング板1,2は、第1ライニング板1の一対の受け片4の間に、第2ライニング板2の受け片7と該第2ライニング板2と横方向に隣接する第1ライニング板1の一方側の受け片4の端部(突出部40)が挟まれていて、これらが接触することで、一方向(図示例では横方向X)に位置ずれしないように互いに規制しあった状態で並べられている。よって、他方向(図示例では縦方向Y)に列をなす第1及び第2のライニング板1,2は、一方向(図示例では横方向X)への位置ずれにより、一方向(図示例では横方向X)に隣接するライニング板1,2との間で突き合わせ部分が不用意に開くことが防止されている。
【0044】
加えて、一方向(図示例では横方向X)に隣接する列同士において、第1及び第2のライニング板1,2は、斜め方向に隣接する第1ライニング板1の受け片4の端部(突出部40)同士が互いに係合していることで、横方向Xへの位置ずれが防止されている。よって、複数のライニング板1,2を組み合わせる際に、一方向(図示例では横方向X)に隣接する列同士が互いに離れる向きに外力が作用しても、一方向(図示例では横方向X)に隣接する列の間で位置ずれが生じるおそれがなく、一方向(図示例では横方向X)に隣接する列同士の間でもライニング板1,2の突き合わせ部分が不用意に開くことが防止されている。よって、ライニング構造の施工時の作業が容易となり、作業性を向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のライニング構造10によれば、図7に示すように、複数のライニング板1,2を組み合わせた後、隣接するライニング板1,2の継ぎ目を溶接等で接合する際に、一方向(図示例では横方向X)及び他方向(図示例では縦方向Y)に延びる継ぎ目がともに一直線となり、継ぎ目が格子状をなす。そのため、継ぎ目の接合作業が効率よく行うことが可能となり、この点においても、ライニング構造の施工時の作業性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のライニング構造10によれば、第1ライニング板1の受け片4の端部(突出部40)が、斜め方向に隣接する第1ライニング板1の第2側辺部31の裏面側に位置するので、例えば地震力等の外力によりライニング板1,2が被ライニング面から浮き上がって剥がれようとしたときに、突出部40が第1ライニング板1の板本体3の裏面に当たってライニング板1,2の浮き上がりを阻止するので、ライニング板1,2の接合部が弛むことを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態のライニング構造10によれば、連続するライニング板1,2の表面を凹凸のない平滑な表面(面一)に仕上げることが可能である。よって、液体に接する構造物にライニング構造10を施工した場合に、流路抵抗を少なくすることができる。また、ライニング板1,2の受け片4,7を被ライニング面に接着剤で固定しても、接着剤が受け片4,7や板本体3,6で覆われて液体に暴露されることがないので、処理液への有害物質の溶解を防止でき、安価で耐久性の乏しい接着剤を用いても問題を発生させない。そのうえ、ライニング板1,2の受け片4,7を被ライニング面にアンカーボルトで固定したああイにおいても、アンカーボルトもまた暴露されることがないので、有害物質の溶出を防止でき、安価で耐久性の乏しいアンカーボルトを用いても問題を発生させない。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 第1ライニング板
2 第2ライニング板
3 板本体
4 受け片
5 段部
6 板本体
7 受け片
8 段部
9 空間部
10 ライニング構造
30 第1側辺部
31 第2側辺部
40 突出部
60 第1側辺部
61 第2側辺部
【要約】
【課題】施工時の作業性を向上させたライニング構造を提供する。
【解決手段】ライニング構造10を構成する第1ライニング板1及び第2ライニング板2は、縦横の一方向(横方向X)において、第2ライニング板2の第2側辺部61が、隣接する第1ライニング板1の受け片4に重ねられるとともに第1ライニング板1の第1側辺部30に突き合わされるように並べられており、縦横の他方向(縦方向Y)において、第1ライニング板1の第2側辺部31が、隣接する第2ライニング板2の受け片7に重ねられるとともに第2ライニング板2の第1側辺部60に突き合わされるように並べられており、かつ、第1ライニング板1の受け片4の長さ方向の端部40が、斜め方向に隣接する第1ライニング板1の受け片4の長さ方向の端部40の内側に位置し、かつ、一方向(横方向X)に隣接する第2ライニング板2の空間部9に位置するように並べられている。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13