特許第6513881号(P6513881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニーの特許一覧

特許6513881バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム
<>
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000002
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000003
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000004
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000005
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000006
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000007
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000008
  • 特許6513881-バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513881
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】バッテリテスト結果を予測するためのバッテリテストシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20190425BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190425BHJP
   G01R 31/36 20190101ALI20190425BHJP
【FI】
   H02J7/00 Q
   H01M10/48 P
   G01R31/36 A
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-513371(P2018-513371)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公表番号】特表2018-530982(P2018-530982A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】US2016018462
(87)【国際公開番号】WO2017065821
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】14/884,585
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】アリエフ,ティムール・エル
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジーホーン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,ディエゴ・エイチ・ディー
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−539473(JP,A)
【文献】 特開2013−217897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含むバッテリテストコンピュータであって、前記バッテリテスト管理システムが、予測モジュール、有効性確認モジュールおよび訓練モジュールを含み、前記バッテリテストコンピュータが、前記1つまたは複数の命令セットを実行するように構成された処理回路を含む、バッテリテストコンピュータと、
前記処理回路に通信可能に結合され、かつユーザに出力を提供するように構成されたユーザインタフェースと
を含む、バッテリテストシステムであって、
前記予測モジュールが、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して、前記バッテリにおいて実施される前記標準バッテリテストの結果を予測し、かつ前記ユーザインタフェースを介して、前記予測された結果および前記予測された結果と関連付けられた信頼度を出力するように構成され、
前記有効性確認モジュールが、前記バッテリにおいて実施される前記標準バッテリテストからの最終的なテスト結果を使用して、前記予測された結果の有効性を判断し、かつ前記ユーザインタフェースを介して前記有効性の表現を出力するように構成され、
前記訓練モジュールが、前記予測モジュールを更新するために、前記有効性確認モジュールによって生成された前記有効性を使用して訓練データを更新するように構成され、
前記予測モジュールが、複数のバッテリサンプルから得られた訓練データを使用して構築されたバッテリテストサポートベクタマシン(SVM)を含み、および前記バッテリテストSVMが、前記標準バッテリテスト中に得られたバッテリテストデータから生成された第1の特徴および第2の特徴に基づいて、テストを受けている前記バッテリを合格カテゴリまたは不合格カテゴリに分類するように構成されたバイナリ分類モデルである、
バッテリテストシステム。
【請求項2】
前記予測モジュールが、前記ユーザインタフェースを介して、前記標準バッテリテストの期間が終了する前の時点において前記バッテリの前記標準バッテリテストの前記予測された結果を出力するように構成される、請求項1に記載のバッテリテストシステム。
【請求項3】
前記予測モジュールが、前記ユーザインタフェースを介して、前記標準バッテリテストの期間が終了する前に起こる時間間隔で前記バッテリの前記標準バッテリテストの複数の予測された結果を出力するように構成される、請求項1に記載のバッテリテストシステム。
【請求項4】
前記バッテリテストコンピュータが、
前記予測モジュールを使用して、第1の時点において、前記標準バッテリテストの開始から前記第1の時点までに得られたテストデータを使用して、前記バッテリの前記標準バッテリテストの第1の予測された結果を生成することと、
前記第1の予測された結果が、信頼性閾値を上回る信頼度を有すると判断することに応答して、前記ユーザインタフェースを介して前記第1の予測された結果を出力することと
を行うように構成される、請求項1に記載のバッテリテストシステム。
【請求項5】
前記バッテリテストコンピュータが、
前記第1の予測された結果の前記信頼度が前記信頼性閾値より低いと判断することに応答して、前記予測モジュールを使用して、前記第1の時点後に起こる第2の時点において、前記標準バッテリテストの前記開始から前記第2の時点までに得られたテストデータを使用して、前記バッテリの前記標準バッテリテストの第2の予測された結果を生成することと、
前記第2の予測された結果が、前記信頼性閾値を上回る信頼度を有すると判断することに応答して、前記ユーザインタフェースを介して前記第2の予測された結果を出力することと
を行うように構成される、請求項4に記載のバッテリテストシステム。
【請求項6】
前記第1の時点が4週間であり、前記第2の時点が6週間であり、および前記標準バッテリテスト期間が18週間である、請求項5に記載のバッテリテストシステム。
【請求項7】
前記第1の特徴が放電容量の変化率であり、および前記第2の特徴が、前記標準バッテリテスト中に前記バッテリについて得られた効率の変化率である、請求項に記載のバッテリテストシステム。
【請求項8】
前記バッテリテストSVMが、過去のバッテリテスト結果が合格領域および不合格領域に分離されているデータ空間を構築し、前記不合格領域から前記合格領域を分離する超平面を計算し、かつ前記超平面に対するバッテリテストデータの場所を特定するために、テストを受けている前記バッテリについて得られた前記バッテリテストデータを前記データ空間にマッピングすることにより、前記バッテリを前記合格カテゴリまたは前記不合格カテゴリに分類するように構成される、請求項に記載のバッテリテストシステム。
【請求項9】
前記バッテリテストコンピュータが、少なくとも前記予測モジュールを使用して、線形回帰およびテストを受けている前記バッテリについて得られた前記マッピングされたバッテリテストデータから前記超平面までの距離を使用して、前記標準バッテリテストの終了時の前記バッテリの特性を予測し、かつ前記ユーザインタフェースを介して前記特性を出力するように構成される、請求項に記載のバッテリテストシステム。
【請求項10】
前記特性が前記バッテリの最終的な放電容量である、請求項に記載のバッテリテストシステム。
【請求項11】
前記ユーザインタフェースが、前記バッテリテスト管理システムからの出力の視覚表現を前記ユーザに出力するように構成されたディスプレイを含む、請求項1に記載のバッテリテストシステム。
【請求項12】
電圧検知回路、電流検知回路またはそれらの組合せを有し、かつ前記バッテリから充電容量および放電容量を示すフィードバックを得るように構成されたバッテリテスト装置を含む、請求項1に記載のバッテリテストシステム。
【請求項13】
前記バッテリテストコンピュータが、前記バッテリテスト装置からバッテリテストデータを受信するように構成された通信システムを含む、請求項12に記載のバッテリテストシステム。
【請求項14】
1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記バッテリテスト管理システムが、予測モジュール、有効性確認モジュールおよび訓練モジュールを含み、前記予測モジュール、前記有効性確認モジュールおよび前記訓練モジュールが、プロセッサによって実行されると、
バッテリにおいて実施される標準バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して、前記バッテリにおいて実施される前記標準バッテリテストの結果の予測を生成し、かつユーザインタフェースを介して、前記結果の前記予測および前記結果の前記予測と関連付けられた信頼度を出力することと、
前記バッテリにおいて実施される前記標準バッテリテストからの最終的なテスト結果を使用して前記結果の前記予測の有効性を判断し、かつ前記ユーザインタフェースを介して前記有効性の表現を出力することと、
前記予測モジュールを更新するために、前記判断された有効性に基づいて訓練データを更新することと
を行うように構成され、
前記予測モジュールが、複数のバッテリサンプルから得られた訓練データを使用して構築されたバッテリテストサポートベクタマシン(SVM)を含み、および前記バッテリテストSVMが、前記標準バッテリテスト中に得られたバッテリテストデータから生成された第1の特徴および第2の特徴に基づいて、テストを受けている前記バッテリを合格カテゴリまたは不合格カテゴリに分類するように構成されたバイナリ分類モデルである、
有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記予測モジュールが、前記標準バッテリテストの期間が終了する前の時点において前記バッテリの前記標準バッテリテストの前記結果の前記予測を生成するように構成される、請求項14に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記予測モジュールが、前記標準バッテリテストの期間が終了する前に起こる時間間隔で前記バッテリの前記標準バッテリテストの前記結果の複数の予測を生成するように構成される、請求項14に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記バッテリテスト管理システムが、
前記予測モジュールを使用して、第1の時点において、前記標準バッテリテストの開始から前記第1の時点までに得られたテストデータを使用して、前記バッテリの前記標準バッテリテストの前記結果の第1の予測を生成することと、
前記結果の前記第1の予測が、信頼性閾値を上回る信頼度を有すると判断することに応答して、前記ユーザインタフェースを介して前記結果の前記第1の予測を出力することと
を行うように構成される、請求項14に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記バッテリテスト管理システムが、
前記第1の予測の前記信頼度が信頼性閾値より低いと判断することに応答して、前記予測モジュールを使用して、前記第1の時点後に起こる第2の時点において、前記標準バッテリテストの前記開始から前記第2の時点までに得られたテストデータを使用して、前記バッテリの前記標準バッテリテストの前記結果の第2の予測を生成することと、
前記第2の予測が、前記信頼性閾値を上回る信頼度を有すると判断することに応答して、前記ユーザインタフェースを介して前記結果の前記第2の予測を出力することと
を行うように構成される、請求項17に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記バッテリテストSVMが、過去のバッテリテスト結果が合格領域および不合格領域に分離されているデータ空間を構築し、前記不合格領域から前記合格領域を分離する超平面を計算し、かつ前記超平面に対するバッテリテストデータの場所を特定するために、テストを受けている前記バッテリについて得られた前記バッテリテストデータを前記データ空間にマッピングすることにより、前記バッテリを前記合格カテゴリまたは前記不合格カテゴリに分類するように構成される、請求項14に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記バッテリテスト管理システムが、少なくとも前記予測モジュールを使用して、線形回帰およびテストを受けている前記バッテリについて得られた前記マッピングされたバッテリテストデータから前記超平面までの距離を使用して、前記標準バッテリテストの終了時の前記バッテリの特性を予測し、かつ前記ユーザインタフェースを介して前記特性を出力するように構成される、請求項19に記載の有形の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
バッテリテスト結果を予測する方法であって、
テストを受けているバッテリについてバッテリテスト結果を予測するためにバッテリテストコンピュータを使用することであって、前記バッテリテストコンピュータが、1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含み、前記バッテリテスト管理システムが、バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して前記バッテリテスト結果を予測するように構成された予測モジュール、前記バッテリにおいて実施される前記標準バッテリテストからの最終的なテスト結果を使用して、前記予測の有効性確認を行うように構成された有効性確認モジュール、および前記有効性確認モジュールによって生成された結果に基づいて前記予測モジュールを再訓練するように構成された訓練モジュールを含み、前記バッテリテストコンピュータが、前記1つまたは複数の命令セットを実行するように構成された処理回路を含む、使用することと、
ユーザインタフェースを介して、前記結果の前記予測および前記予測と関連付けられた信頼度を出力することと
を含
前記予測モジュールが、複数のバッテリサンプルから得られた訓練データを使用して構築されたバッテリテストサポートベクタマシン(SVM)を含み、および前記バッテリテストSVMが、前記標準バッテリテスト中に得られたバッテリテストデータから生成された第1の特徴および第2の特徴に基づいて、テストを受けている前記バッテリを合格カテゴリまたは不合格カテゴリに分類するように構成されたバイナリ分類モデルである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、バッテリの分野に関する。より具体的には、本開示は、バッテリテストのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この項目は、以下で説明される本開示の様々な態様に関連し得る当技術分野の様々な態様を読者に紹介することを意図する。この論考は、本開示の様々な態様をより理解し易くするために背景情報を読者に提供する際に役立つと思われる。それに従って、これらの記載は、先行技術を容認するものとしてではなく、これを踏まえて読まれるべきであることを理解すべきである。
【0003】
バッテリ(1つまたは複数の個々の電気化学電池を有するバッテリを含む)は、現在、家庭、電子機器および多様な車両におけるエネルギー貯蔵を含む、多様な用途で使用される。実際に、バッテリは、車両産業の偏在しており、様々な車両駆動過程に給電するためのエネルギーの捕捉および貯蔵を含む各種の理由で車両に使用される。例えば、バッテリは、内燃エンジンを始動させるため、車両の空調ユニットおよび様々な電子機器に給電するためなどに使用することができる。
【0004】
車両で使用されるバッテリの最も一般的なタイプは、鉛酸蓄電池およびリチウムイオン電池を含む。歴史上、鉛酸蓄電池が車両で使用される最も一般的なタイプであり、サイズ、形状および電力定格(例えば、充電および放電容量、電圧)に関する規格を含む多くの異なる規格の対象となる。これらの規格は、例えば、消費者の信頼を高めかつ様々な規制上の要件への準拠を保証するためのものである。一例として、鉛酸蓄電池は、始動、点灯および点火(SLI)の自動車用途のために使用することができ、特定の期間中にそのような用途をサポートするそれらの能力に関連する様々な規格の対象となり得る。それに従って、特定の用途についてバッテリを評価するため、様々な標準テスト(標準条件下で実行され、標準結果を有するテスト)が確立されている。
【0005】
理解されているように、特定の用途または一連の用途のために生産されたバッテリが、そのような用途と関連付けられた標準テストに合格することが望ましい。従って、製造業者は、品質を保証するために異なる製造ラインから得られたサンプルの定期的なテストを実行することができる。加えて、製造業者は、新しい設計がそれらの使用目的に適切かどうかを特定するために、プロトタイプのバッテリサンプルを様々な標準テストの対象とすることができる。
【0006】
標準テスト(特に自動車産業におけるもの)は、特定のバッテリについて最終的な結果が得られるまで数週間、数カ月間も続く場合がある。これは、少なくとも部分的に、特定の時間中、自動車用バッテリが有用であり続けることが望ましいためである(例えば、長い寿命を有するために)。従って、これらの決定と関連付けられた標準テストは、特定のバッテリを既定の時間長にわたって持続させることについて適切性の正確な測定を提供するのに長い期間を必要とし得る。いくつかのテストは、例えば、高応力下で指定期間後に既定の量の充電および放電を行うバッテリの能力が残っているかどうかを測定することができる。そのようなテストは、テストの「合格」または「不合格」をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残念ながら、結果を得るのに要する時間の長さは、特定の製造設計またはプロセスが注意を要する事前の警告の欠如を招く。従って、現在、バッテリテストと関連付けられた時間を低減することが望ましいことが認識されている。また、現在、バッテリ設計および製造に関する迅速なフィードバックを提供するためにテスト結果を予測することが望ましいことも認識されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示される特定の実施形態の概要を以下に記載する。これらの態様は単にこれらの特定の実施形態の簡単な概要を読者に提供するために提示され、これらの態様は、本開示の範囲を限定することを意図しないことを理解すべきである。実際に、本開示は、以下に記載されない場合もある各種の態様を包含し得る。
【0009】
本開示の一態様は、1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を有するバッテリテストコンピュータを含むバッテリテストシステムに関する。バッテリテスト管理システムは、予測モジュール、有効性確認モジュールおよび訓練モジュールを含む。また、バッテリテストコンピュータは、1つまたは複数の命令セットを実行するように構成された処理回路も含む。また、システムは、処理回路に通信可能に結合され、かつユーザに出力を提供するように構成されたユーザインタフェースも含む。予測モジュールは、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストの結果を予測し、かつユーザインタフェースを介して、予測された結果および予測された結果と関連付けられた信頼度を出力するように構成される。有効性確認モジュールは、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストからの最終的なテスト結果を使用して、予測された結果の有効性を判断し、かつユーザインタフェースを介して有効性の表現を出力するように構成される。訓練モジュールは、予測モジュールを更新するために、有効性確認モジュールによって生成された有効性を使用して訓練データを更新するように構成される。
【0010】
本開示の別の態様は、1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体であって、バッテリテスト管理システムが、予測モジュール、有効性確認モジュールおよび訓練モジュールを含み、予測モジュール、有効性確認モジュールおよび訓練モジュールが、プロセッサによって実行されると、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストの結果の予測を生成し、かつユーザインタフェースを介して、結果の予測および結果の予測と関連付けられた信頼度を出力することと、バッテリにおいて実施される標準バッテリテストからの最終的なテスト結果を使用して結果の予測の有効性を判断し、かつユーザインタフェースを介して有効性の表現を出力することと、予測モジュールを更新するために、判断された有効性に基づいて訓練データを更新することとを行うように構成される、有形の非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0011】
本開示のさらなる態様は、テストを受けているバッテリについてバッテリテスト結果を予測するためにバッテリテストコンピュータを使用することを含む、バッテリテスト結果を予測する方法に関する。バッテリテストコンピュータは、1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含む。バッテリテスト管理システムは、バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用してバッテリテスト結果を予測するように構成された予測モジュール、予測の有効性確認を行うように構成された有効性確認モジュール、および有効性確認モジュールによって生成された結果に基づいて予測モジュールを再訓練するように構成された訓練モジュールを含む。また、バッテリテストコンピュータは、また、1つまたは複数の命令セットを実行するように構成された処理回路を含み、かつユーザインタフェースを介して、結果の予測および予測と関連付けられた信頼度を出力する。
【0012】
本開示の様々な態様は、以下の詳細な説明を読み、図面を参照することでより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の態様による、部分的なテストデータを使用して、構築モデルに基づいてバッテリテストの結果を予測する方法の実施形態を示すプロセスフロー図である。
図2】本開示の態様による、バッテリテスト結果を予測するための命令を格納するコンピュータ可読媒体を備えるバッテリテストコンピュータを有するバッテリテストシステムの実施形態を示す図である。
図3】本開示の態様による、構築モデルを使用してバッテリテスト結果を予測するためのプロセスの実施形態を示すプロセスフロー図である。
図4】本開示の態様による、予測モデルを訓練および再訓練するための方法の実施形態を示すプロセスフロー図である。
図5】本開示の態様による、過去のバッテリテストデータから得られたデータ要素が、計算された超平面によって分離された2つのクラスに分離される、サポートベクタマシン(SVM)によって構築されたプロットの例示的な表現である。
図6】本開示の実施形態による、図2のバッテリテストコンピュータによって生成された例示的な出力であり、テスト結果、テスト予測および予測の正確度を描写する真理値表を含む。
図7】本開示の実施形態による、図2のバッテリテストコンピュータによって生成された例示的な出力であり、テスト結果、テスト予測および予測の正確度を描写する真理値表を含む。
図8】本開示の態様による、線形回帰によって得られるような図5の超平面からのデータポイントの距離の関数としての最終的な放電容量のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本技法の1つまたは複数の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供する目的で、本明細書では、実際の実装形態のすべての特徴を説明するとは限らない。そのような実際の実装形態の開発において、いかなるエンジニアリングまたは設計プロジェクトでも同様であるが、実装形態ごとに異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約への準拠などの開発者の特定の目標を達成するために、多くの実装形態特有の決定を行わなければならないことを理解すべきである。さらに、そのような開発努力は複雑であり、多大な時間を要するものであり得るが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって、設計、製作および製造を行うルーチンになるであろうことを理解すべきである。
【0015】
上記に記載されるように、特定の標準バッテリテストは、単一のバッテリについて完了するのに数週間、数カ月間も要する場合がある。例えば、特定のタイプの標準バッテリテストは、長期間(例えば、数年間)にわたり、動力車両で使用されるバッテリの平均寿命中に経験するであろう通常の動作条件をシミュレーションするように機能し得る。標準バッテリテストは、例えば、特定の期間にわたって特定のバッテリを動作応力の対象とすることができる。この時間が経過した後で特定のバッテリが特定のレベルの性能を維持しない場合、バッテリは、テストに不合格になったと見なすことができる。他方では、期間が完了した後でバッテリが特定のレベルの性能を維持する場合、バッテリは、テストに合格したと見なすことができる。
【0016】
自動車用バッテリなどのバッテリの標準テストは、品質管理のためまたは特定のバッテリ設計プロセスにおける高度なフィードバックのため、グループ外の特定のバッテリにおいて実行することができる。例えば、バッテリ開発の設計段階中、特定のグループ(例えば、特定の設計)を表すバッテリサンプルは、現実世界において設計が実現可能であるかどうかを判断するために、1つまたは複数の標準バッテリテストの対象とすることができる。従って、テストは、特定のエンジニアリングおよび設計の検討のための重要なフィードバックならびに製造プロセスが期待通りに運用しているかどうか(例えば、品質管理のため)に関するフィードバックを提供することができる。残念ながら、これらのテストが実行される間、各テストの最終的な結果は不明であり、これは、エンジニアリングおよび製造プロセスのためのフィードバックが遅延され得ることを意味する。加えて、自動車用バッテリなどの特定のバッテリは、これらのテストに従ってバッテリ設計が認定されなければならない規制機関によって記載される厳格な準拠規則の対象であり得るため、そのような多大な時間を要する遅延は、通常、回避不可能である。
【0017】
本開示の特定の態様によれば、現在、テストが完了する前に特定の標準バッテリテストの結果を予測することが望ましいことがあり得ることが認識されている。例えば、現在、最終的に市場に導入されるバッテリ設計がそのような標準テストに合格しなければならないとしても、バッテリ設計および/またはバッテリ製造プロセスにおいて調整を行えるように、そのようなテストの予測された結果が高度なフィードバックを提供する際に有用であり得ることが認識されている。本開示の一態様では、開示される実施形態は、部分的なテストデータに基づいて、AK3.4標準バッテリ寿命テストなどのバッテリ寿命テスト結果(数週間続く)の早期予測を可能にすることができる。そのようなテストは、典型的には、自動車用途のために使用される鉛酸蓄電池(例えば、グラスマット吸収式(AGM)バッテリ)において実行されるが、本開示は、リチウムイオン電池、ウルトラキャパシタなど、様々な標準テスト方法の対象となる他のエネルギー貯蔵デバイス(例えば、二次電池)にも適用可能であることを意図する。
【0018】
現在、早期予測の正確な結果は、エンジニアリング設計、概念検証における利点を可能にし、かつ早期予測に基づいてテストを完了する必要がない場合の人件費の節約および/またはテストバッテリの数の増加に役立ち得ることが認識されている。本開示は、数ある中でも特に、製造および/または設計プロセスにおけるこの予測および調整が遂行できる方法の例示的な実施形態を提供する。しかし、予測の開示される実施形態は、他の用途を有し得、他の技術的問題を解決することができる。
【0019】
説明に役立つように、図1は、本開示の態様による、バッテリテストの結果を予測するための方法10の実施形態を示すフローチャートである。示されるように、方法10は、バッテリテストを開始すること(ブロック12)を含む。ブロック12で表される行為に従ってバッテリテストを開始することは、例えば、テストされるバッテリをテスト装置に接続することを含み得、その例について図2に関して以下でさらに詳細に説明する。テスト装置は、テスト装置を使用してバッテリのテストを開始するためにユーザが操作することができるユーザインタフェースを含み得る。一例として、テスト装置は、テストを開始するためにユーザが入れることができる1つまたは複数のスイッチを含み得る。別の例として、テスト装置は、テストを開始するためにユーザが相互作用することができるコンピュータインタフェースおよび関連ソフトウェアを含み得る。
【0020】
また、示される方法10は、テスト中にテストデータを収集すること(ブロック14)も含む。上記で記述されるように、テストは、特定の期間中(何週間もなど)に行うことができる。いくつかの状況では、テストは、テスト期間の開始時に収集されたデータをテスト期間の終了時に収集されたデータと比較することを伴い得る。それに従って、テスト全体を通じて収集されたデータは、典型的には、破棄することも、任意の目的のために使用しないこともできる。しかし、本実施形態によれば、テスト全体を通じて様々な時点においてなど、テスト中に収集されたデータは、テストの結果を予測する目的で、本明細書で説明されるバッテリテスト管理システムへの入力として使用することができる。
【0021】
従って、本実施形態によれば、示される方法10は、テストを完了する前にテストの結果を予測するために、収集されたデータをバッテリテストシステムの予測モジュールに提供すること(ブロック16)を含み得る。例えば、ブロック16で表される行為は、バッテリテストコンピュータにおいて、ローカルまたはリモートのテスト場所からテストデータを受信することを含み得る。ローカルテスト場所は、例えば、無線ネットワークまたは物理的な配線を介してバッテリテストコンピュータに通信可能に結合されたテスト機器を含み得る。加えてまたは代替として、リモートのテスト場所は、無線ネットワーク、インターネットまたは他の任意の同様の接続を介してバッテリテストシステムに通信可能に結合することができる。
【0022】
特定の実施形態では、バッテリテストシステムは、ユーザに予測を出力することができる(例えば、ユーザインタフェースを介して)(ブロック18)。例えば、バッテリテストシステムは、予測に関連するユーザ知覚可能表示の出力が可能なオーディオおよび/または視覚システムを含み得る。例として、バッテリテストシステムは、テストの予測された結果ならびに/またはテスト中の特定の時間およびテストの終了時におけるバッテリ特性の予測値を視覚提示するために、バッテリテストコンピュータの処理回路から命令を受信するディスプレイを含み得る。以下でさらに詳細に説明されるように、予測は、統計相互関係に基づく予測における信頼性など、予測に関連する他の尺度と組み合わせて提供することもできる。一例として、予測された結果は、バッテリがテストに合格するかまたは不合格になるかであり得る。別の例として、予測された結果は、テスト期間の終了時にバッテリが有する予測放電容量など、特定のパラメータの値であり得る。
【0023】
特定の実施形態では、ブロック18で表される行為からの予測出力は、エンジニアリングおよび/またはバッテリ製造問題の早期診断および補正に関する設計観点から有用なフィードバックであり得る。それに従って、方法10は、予測が行われたバッテリのタイプと関連付けられたエンジニアリング設計および/または製造プロセスを修正すること(ブロック19)を含み得る。これにより、例えば、品質管理のための早期フィードバックを提供することにより、バッテリエンジニアリングプロセスの全体的な動作を改善することができ、また、製造設備の動作を改善することもできる。例えば、特定のテストまたはテストの態様に不合格になると予測されたバッテリは、それぞれ特定のバッテリ識別子を有し得、次いで、その可能な改善のために、特定のバッテリ識別子をたどって特定のバッテリ設計または特定の製造設備を特定することができる。
【0024】
専用のコンピュータおよび他のハードウェアコンポーネントを使用して、図1の方法10などの本実施形態を実装することができる方法の例は、図2に関してさらに理解することができ、図2は、本実施形態によるバッテリテストシステム20の実施形態を概略的に描写する。示される実施形態では、バッテリテストシステム20は、バッテリテストコンピュータ22を含み、バッテリテストコンピュータ22は、1つまたは複数の命令セット(例えば、プロセッサ実行可能命令)として実装されるバッテリテスト管理システム26を格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体24(例えば、メモリ回路)を含む。また、バッテリテストコンピュータ22は、数ある機能の中でも特に、特定のルーチンを実行してバッテリテスト結果を予測するために、バッテリテスト管理システム26と関連付けられた命令を実行するように構成された1つまたは複数のプロセッサ28も含む。
【0025】
より具体的には、1つまたは複数のプロセッサ28は、1つもしくは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、1つもしくは複数の汎用プロセッサ、またはそれらの任意の組合せを含み得る。加えて、メモリ回路24は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性メモリおよび/もしくは読み取り専用メモリ(ROM)などの不揮発性メモリ、光学式ドライブ、ハードディスクドライブ、またはソリッドステートドライブを含み得る。以下でさらに詳細に説明されるいくつかの実施形態では、バッテリテストコンピュータは、車両制御ユニット(VCU)、バッテリ制御モジュールまたは車両内で使用される他の特徴の一部分を含み得る。
【0026】
また、バッテリテストコンピュータ22は、ユーザインタフェースシステム30も含み得、ユーザインタフェースシステム30は、ユーザがバッテリテストコンピュータ22への入力を提供できるようにするため、およびバッテリテストコンピュータ22がユーザに出力を提供できるようにするため、メモリ24およびプロセッサ28に通信可能に結合された1つまたは複数のデバイスを含み得る。1つまたは複数のユーザ入力デバイス32を含み得るユーザインタフェースシステム30は、これらに限定されないが、キーボード34、マウス36、トラックボール、タッチスクリーン、キーパッド、マイクロフォンなどを含み得る。ユーザ入力デバイス32は、バッテリテスト管理システム26の1つまたは複数の態様(例えば、バッテリテストの開始、テスト結果予測の開始、有効性確認の開始、訓練の開始、結果の見直し、予測、有効性確認および/または訓練パラメータの修正)を概ね制御するために、ユーザがデータ(例えば、バッテリテストデータ)を手動で入力できるようにする。また、ユーザインタフェースシステム30は、バッテリテストコンピュータ22の動作に関連するユーザ知覚可能表示を提供するように、より具体的にはバッテリテスト結果の予測に関連する出力をユーザに提供するように構成されたユーザ出力デバイス38も含み得る。示されるように、ユーザ出力デバイス38は、ユーザに情報(例えば、バッテリテスト予測、バッテリテストデータ)を視覚提示するように構成されたディスプレイ40を含み得る。加えてまたは代替として、ユーザ出力デバイス38は、これらの態様に関連するユーザ可聴出力を提供するように構成された1つまたは複数の音響デバイス(例えば、スピーカ)を含む。
【0027】
また、バッテリテストコンピュータ22は、テストのためのバッテリに物理的に結合するように構成されたバッテリテスト装置44などの他のデバイスとの通信を可能にする通信システム42も含み得る。例えば、バッテリテスト装置44は、電圧センサ、電流センサ、負荷回路または負荷コネクタ、他のデバイスおよび/またはユーザにテストデータを提供できるようにするように構成されたインタフェース特徴などを含み得る。
【0028】
通信システム42を介してバッテリテストコンピュータ22に通信可能に結合することができる他のデバイスは、ユーザのポータブル電子デバイス、車両制御システム、車両診断システムおよびバッテリテストコンピュータ22から遠隔に設置されたシステム(例えば、バッテリテストシステム)を含み得る。そのような通信を可能にするため、通信システム42は、各種のハードウェアデバイスを含み得、いくつかの実施形態では、プロセッサ28が通信システム42で受信された入力を処理できるようにするためにメモリ回路24上に格納された関連コード(例えば、ドライバ)を含み得る。通信システム42の例示的なハードウェアデバイスは、無線送受信機器(例えば、トランシーバ)、汎用ポート(例えば、ネットワーク接続用コネクタのためのポート)、専用のポート(例えば、バッテリテスト機器のためのポート)などを含み得る。示される実施形態では、例えば、バッテリテスト装置44は、通信システム42を介してバッテリテストコンピュータ22にバッテリテストデータを提供することができる。次いで、プロセッサ28は、以下でさらに詳細に説明されるように、バッテリテスト管理システム26への入力としてバッテリテストデータを使用することができる。
【0029】
示されるように、バッテリテスト管理システム26は、特定の命令セットを含み得、特定の命令セットは、1つまたは複数のプロセッサ28によって実行されると、予測の有効性確認を行うためならびに予測を実行するバッテリテスト管理システムの一部分を更新および/または再訓練するため、バッテリテスト中に得られたバッテリテストデータに少なくとも基づいてバッテリテスト結果を予測するように構成される。本実施形態によれば、バッテリテスト管理システム26は、予測モジュール46、有効性確認モジュール48および訓練モジュール50を含み得、それらはすべてメモリ回路24上に格納された命令セットとして実装することができる。一般的な意味では、予測モジュール46は、テストが完了する前に得られたバッテリテストデータを使用して、バッテリテストの予測された結果を生成するように構成され、有効性確認モジュール48は、予測モジュール46によって生成された予測された結果の有効性を判断するように構成され、訓練モジュール50は、予測モジュール46を更新するために、有効性確認モジュール48によって生成された結果を使用して訓練データを更新するように構成される。
【0030】
予測モジュール46、有効性確認モジュール48および訓練モジュール50は、バッテリテスト管理システム26の個々の部分として示されかつ説明されているが、予測モジュール46、有効性確認モジュール48および訓練モジュール50は、バッテリテスト管理システム26の機能的な表現を提供するためにこの方法で示されかつ説明される。すなわち、予測モジュール46、有効性確認モジュール48および訓練モジュール50は、機能的に個々のコンポーネントとして説明されているが、実際の実装形態では、これらの機能と関連付けられた命令のいくつかまたはすべては、バッテリテスト管理システム26の他の部分によって実行される他の機能と強固に統合することができる。それに従って、バッテリテスト管理システム26およびその特徴は、構造的−機能的観点から提示され、本明細書で説明される機能は、1つまたは複数のプロセッサ28によって実行されると説明される機能を実行する、メモリ回路24上に物理的に格納された1つまたは複数の命令を示すことを意図する。
【0031】
本開示は、バッテリテスト管理システム26の様々な実装形態を包含することを意図する。一般に、バッテリテスト管理システム26は、C++、Matlabなどの適切な任意のプログラミングプラットフォームによって生成されたプロセッサ実行可能命令の群であり得る。バッテリテスト管理システム26は、いくつかの実施形態では、予測バッテリパラメータを自動的に生成する、有効性確認、再訓練および/または更新を自動的に行うなど、テスト結果の予測と関連付けられたいくつかまたはすべてのルーチンを自動的に実行するように構築することができる。特定の一実施形態では、バッテリテスト管理システム26の少なくとも一部分は、特定のタイプのバッテリテストデータを使用して訓練されている特別に構成されたバッテリテストサポートベクタマシン(SVM)として実装することができる。バッテリテスト管理システム26を動作および構築できる方法に関するさらなる詳細は以下で提供される。
【0032】
本明細書で説明されるように、バッテリテスト管理システム26の予測モジュール46は、多くのバッテリサンプルにおいて実行されたバッテリテストから得られた過去のバッテリテストデータから構築された1つまたは複数の統計モデルを含み得る。過去のバッテリテストデータは、各バッテリサンプルのテスト期間全体にわたるデータであり得る。例えば、標準バッテリテストが既定の週数にわたって続く場合、過去のバッテリテストデータは、各バッテリサンプルの既定の週数全体にわたるデータを含むことになる。例として、統計モデルの1つまたは複数は、不完全なデータセット(例えば、全テスト期間より短い期間からのデータ)に基づいて、バッテリがテストに合格するかまたは不合格になるかを予測する予測分類モデル(例えば、予測線形分類)であり得る。統計モデルの1つまたは複数は、加えてまたは代替として、テストを受けているバッテリがテスト期間の終了時に有する特性を予測することができる。一例として、統計モデルは、テストの終了前に、バッテリがテスト期間の終了時に有する放電容量値を予測することができる。一実施形態では、統計モデルの1つまたは複数は、以下でさらに詳細に説明されるように線形回帰を使用することができる。
【0033】
バッテリテスト管理システム26が提供することができる様々な出力の例は、ディスプレイ40に示されている。示されるように、バッテリ識別子54と関連付けられた合格または不合格予測52を含む複数の予測された結果が提供され、各バッテリ識別子54は、特定の1つのバッテリと関連付けられる。この点において、例えば、バッテリ間の比較を可能にするために、それらの予測がユーザによるアクセスのためにバッテリテスト管理システム26によって出力されるように、メモリ回路24は、過去の予測を格納することができ、複数の予測を格納することができる。示されるように、格納データは、表にして格納し、ユーザへの提示に備えることができる。また、各バッテリ識別子54に関する予測放電容量56も提供されるが、上記で記述されるように他の予測値を提供することもできる。
【0034】
予測バッテリ特性およびテスト結果を出力することに加えて、バッテリ管理システム26は、予測の信頼性の表示58を出力することもできる。図2では、表示58は、特定のバッテリがテストに合格する確率および特定のバッテリがテストに不合格になる確率として示されている。しかし、いくつかの実施形態では、表示58は、これらの1つのみを含む場合がある。
【0035】
バッテリテスト管理システム26は、1つまたは複数のプロセッサ28によって実行されると、予測モジュール46、有効性確認モジュール48および/または訓練モジュール50と関連付けられた様々なタスクを自動的に実行するように構成することができる。例えば、バッテリテスト管理システム26は、上記で記述されるように各モジュールの一般的な機能を自動的に実行することも、特定のユーザ入力(例えば、さらなるテストデータからの学習を続行するか否か)に基づいてこれらの機能のすべてまたは一部分を実行しないこともできる。
【0036】
図3は、バッテリテスト管理システム26と関連付けられた命令の実行中にバッテリテストコンピュータ22によって実行される方法60の実施形態を描写する。より具体的には、方法60は、特定のバッテリにおけるバッテリテスト(例えば、標準バッテリテスト)の実行と併せて、特定のバッテリについてバッテリテストの結果を予測するためにバッテリテストコンピュータ22によって実行される自動化されたルーチンを表すものと見なすことができる。特定の実施形態によれば、方法60は、バッテリテストを妨害することなく実行される。
【0037】
図3のプロセスフローで描写されるように、バッテリテスト管理システム26は、バッテリテストコンピュータ22から命令を受信して(例えば、ユーザ入力を介して)、バッテリテスト予測プロセスを開始することができる(ブロック62)。例として、ブロック62で表される行為による開始は、バッテリにおいて実行されるバッテリテストの開始と実質的に同時に実行することができる。一例として、ユーザは、バッテリテスト規格に従ってバッテリのテストを開始することができ、バッテリテスト管理システム26は、テストが進むにつれて、バッテリテストデータのデータ収集および格納を自動的に開始することができる。
【0038】
示されるように、テスト手順の開始後の第1の時点において、予測入力として開始時から第1の時点までに収集されたバッテリテストデータを使用して、予測モジュール46(例えば、統計モデル)と関連付けられた命令を実行することができる(ブロック64)。具体的な例として、第1の時点は、テストの開始から4週間後であり得る(従って、ブロック64によるモデル実行は、バッテリサンプルから収集された4週間分のテストデータを使用することができる)。しかし、第1の時点は、一般には、全テスト期間が終了する前のいかなるときでもよい。理解できるように、第1の時点は、正確な予測を可能にするために十分なデータが収集された時間であるが、予測を実行するための値を低減できるようにそれほど遅くはない時間であり得る。
【0039】
予測モジュール46は、予測テスト結果または予測バッテリ特性(例えば、最終的な放電容量)ならびに予測と関連付けられた信頼因子を出力することができる。出力は、ユーザに提供しても、バッテリテスト管理システム26およびバッテリテストコンピュータ22のハードウェアを介してさらに処理するための単なる出力であってもよい。
【0040】
方法60を完了すべきかまたは続行すべきかを判断するため、バッテリテストコンピュータ22は、ブロック64で表される行為に従って生成された予測された結果と関連付けられた信頼因子が既定の閾値を上回るかどうかに関する第1の判断を実行することができる(問い合わせ66)。信頼因子が閾値を上回る状況では、方法60は、ユーザに生成予測を出力すること(ブロック68)に進む。例えば、ブロック68で表される行為に従って出力することは、ユーザ出力デバイス38の1つまたは複数を介して、予測テスト結果、予測バッテリ特性、関連付けられた信頼因子などを出力することを含み得る。
【0041】
ブロック68で表される行為に従ってユーザ知覚可能結果が出力され次第、方法60は、予測プロセスの終了(ブロック70)に進む。ブロック70で表される行為は、既定の閾値を上回る信頼因子を有する予測が出力され次第、予測プロセスを自動的に終了することを含み得、または予測プロセスを続行すること(例えば、予測の信頼性をさらに増大させるために別の時間長にわたって予測を続行すること)をユーザが希望するか、もしくはプロセスを終了することをユーザが希望するかに関するバッテリテストコンピュータ22への入力を提供するようにユーザに促すことを含み得る。実際に、このタイプのプロンプトは、バッテリテスト管理システム26が予測された結果、予測特性、信頼因子などを生成した時点のいずれか1つの時点においてまたはそれらの時点の組合せでユーザに提供することができる。
【0042】
さらに、特定の実施形態では、ブロック70で表される行為は、バッテリサンプルにおいて実施されている実際のテストを終了するかどうかに関する入力についてのプロンプトをユーザに提供することを含み得る。例えば、バッテリがバッテリテストに不合格になることが予測された結果である実施形態では、バッテリテストコンピュータ22は、ユーザに通知を提供し、この通知に続いて、テストを続行するかまたはテストを完了するかに関するプロンプトを提供することができる。テストを終了すべきであるという入力をユーザが提供する実施形態では、バッテリテストコンピュータ22は、テスト手順を終了するために、通信システム42を介してバッテリテスト装置44と通信することができる。他の実施形態では、ユーザに提供されるプロンプトは、予測プロセスを終了するかどうかに関する入力についてのものであり得る。そのような実施形態では、予測プロセスを終了することをユーザが希望する場合、バッテリテストコンピュータ22は、単にデータ収集を中止することも、テストデータの収集を続行することもできるが、必ずしもこのデータを予測入力として使用し続ける必要はない。しかし、バッテリテストコンピュータ22は、追加の訓練および有効性確認データとしてこのデータを使用することができる。
【0043】
問い合わせ66に戻ると、信頼因子が既定の信頼度閾値を超えない状況では、方法60は、第2の時点において、統計予測モデルを実行すること(ブロック72)(例えば、統計予測モデルを含む予測モジュール48を実行すること)に進むことができ、第2の時点は、第1の時点後であるが、全テスト期間が終了する前である。方法60の特定の実施形態では、第2の時点は、第1の時点の倍率であり得る。非限定的な例として、第2の時点は、第1の時点の1.25〜3倍であり得る。具体的な例として、第1の時点は、テストの開始から4週間後であり得(従って、ブロック64によるモデル実行は、バッテリサンプルから収集された4週間分のテストデータを使用することができる)、第2の時点は、6週間であり得る(この例における第2の時点は、第1の時点の1.5倍である)。
【0044】
ブロック64で表される行為と同様に、ブロック72で表される行為は、更新された予測と関連付けられたテスト結果(予測出力)、バッテリ特性および第2の信頼度の予測の生成も含み得る。これらの予測が第1の時点において生成された予測と実質的に同じタイプの情報を提供する限り、第2の時点において生成された予測は、第1の更新された予測出力と見なすことができ、予測モジュール46によって生成することができる上記で記述されるいずれか1つの出力のタイプまたはそれらの出力のタイプの組合せを含み得る。
【0045】
第1の更新された予測出力が生成され次第、方法60は、問い合わせ74に進み、問い合わせ74では、バッテリテストコンピュータ22は、第1の更新された予測と関連付けられた信頼因子が既定の閾値を上回るかどうかを判断する。この閾値は、問い合わせ66で使用されたものと同じレベルであっても、予測が正確度を高めたはずであるためにそれより高くてもよい(例えば、より高い信頼性を必要とする)。問い合わせ74で表される行為の結果は、問い合わせ66に関して上記に記載されるものと実質的に同じでもよく、信頼性が十分に高い(閾値より高い)場合、方法60は、ブロック68および70で表される行為に従って、ユーザに予測を出力することおよび終了することに進む。他方では、信頼因子が閾値を上回らない場合、方法60は、さらなる分析を進める。
【0046】
具体的には、方法60は、第1および第2の時点後であるが、全テスト期間が終了する前である第3の時点(例えば、最終的な時点)において統計モデルを実行すること(ブロック76)に進む。第3の時点(この例では、最終的な時点)は、第1の時点の何倍でもよく、第2の時点との適切ないかなる関係も有することができる。最終的な時点として説明されているが、これは、テストの最終的な時点ではなく(すなわち、全テスト期間ではない)、予測の最終的な時点を示すことを意図する。
【0047】
一例として、全テスト期間は10週間より長い期間(例えば、16または18週間)であり、第3の時点は9週間であり、第2の時点は6週間であり、第1の時点は4週間であり得る。第3の時点では、バッテリテスト管理システム26は、ブロック72に関して上記に記載されるような同様の方法で、第2の更新された予測出力を生成する。しかし、示されるような第2の更新された予測出力は、ブロック68で表される行為に従って提供することができる。
【0048】
示されるように、第3の時点後、さらなる問い合わせは実行されず、プロセスは、ブロック70で表される行為に関して上記に記載されるように終了することができる。方法60によって使用される時点および関連予測の数は、示されるように3回に限定されない。むしろ、適切ないかなる数の時点および関連予測も利用することができる。いくつかの実施形態では、時点は、全テスト手順の開始と終了との間の指定された、いかなる頻度および間隔でも起こり得る。
【0049】
本開示の特定の態様によれば、テスト完了前に高い信頼性を用いてテスト結果を予測することにより、テスト期間を実質的に低減することが有益であり得る。従って、本開示の特定の実施形態は、数ある中でも特に、予測のために使用される統計モデルを構築し、実際のデータを使用して統計モデルを訓練し、必要に応じて統計モデルを再訓練することによって生成される予測の正確度を向上するように機能し得る。上記で記述されるように、予測モジュール46は、いくつかの実施形態では、上記で説明されるように統計モデルとして機能するルーチンを含み得、ルーチンは、特定タイプの出力(例えば、予測テスト結果)を生成するために特定のパラメータを使用して訓練される専用のバッテリテストサポートベクタマシン(SVM)を使用して完全にまたは部分的に実装することができる。
【0050】
図4は、本開示の態様による、統計モデルを構築、訓練および更新するための方法80の例示的な実施形態を描写する。特定の実施形態では、方法80は、任意の適切なプログラミングプラットフォームにおいてプログラムされた自動化されたアルゴリズムであり、メモリ回路24上に格納されたプロセッサ実行可能命令として実装することができる。それに従って、方法80は、バッテリテストコンピュータ26上で実行される1つまたは複数のプロセスまたはアプリケーションであり得る。
【0051】
示される方法80は、統計モデルが予測で基づき得る予測入力として機能する特徴(例えば、バッテリ特性)のサブセットと共に、1つまたは複数の統計モデル(例えば、バッテリテストSVM)を生成するための訓練データ82の使用および特徴選択プロセス(ブロック84)を含む。上記に記載されるような訓練データ82は、バッテリサンプルセットの過去のテスト実行から得られた完全なバッテリテストデータセット(特定のバッテリテストの全期間からのデータおよびテスト結果)を含み得る。
【0052】
ブロック84で表される示される特徴選択プロセスは、バッテリの異なる分類(例えば、バッテリテストに合格するもの対不合格になるもの)間の分離を強化する特徴(例えば、特定のバッテリ特性)の組合せを得るように構成された自動化されたアルゴリズム(例えば、特徴識別アルゴリズム)を実行することを含み得る。加えて、ブロック84に従って得られた特徴は、安定している統計モデルを生成するために使用することができ、これは、そうでなければモデルの予測正確度のかなりの低減を引き起こす異常特性を有するバッテリサンプルについてモデルが安定していることを意味する。
【0053】
そのような特徴を見出すための1つまたは複数のアルゴリズムは、バッテリの放電容量およびバッテリの充電容量などの特定の原バッテリテストデータを使用し、モデルの構築において使用される複数の異なるバッテリからのバッテリテストデータを使用できるようにするためにこれらの値を正規化することができる。また、特徴識別アルゴリズムは、正規化充電および放電容量の平均化、これらの値の標準偏差の計算など、特定の処理ステップの実行も含み得る。自動化されたアルゴリズムは、いくつかの実施形態では、正規化容量曲線から異なる特徴を構築することができる。アルゴリズムは、1週間当たりの正規化放電容量、1週間当たりの正規化充電容量を使用して、1週間当たりの効率(放電容量を充電容量で除したもの)を決定することができ、次いでこれらの1週間の値を使用して機能曲線および変化率曲線を生成することができる。異なる時間窓(例えば、異なる週範囲)に対し、アルゴリズムは、様々な変化率、正規化容量値などの平均および標準偏差を計算することができる。例示的な特徴は、特定の期間間(例えば、18週間続くテストの6週間と7週間との間)の充電容量の変化率、特定の期間間(例えば、3週間と5週間との間)の平均効率、および特定の期間間(例えば、6週間と9週間との間)の放電容量の標準偏差を含み得る。
【0054】
例えば、バッテリテストSVMは、バッテリテストSVMを訓練した後、予測入力として、標準バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用して現在のバッテリテストの結果を予測するように構成することができる。一実施形態では、SVMを訓練することは、数千のデータポイントを管理可能な数のサポートベクタ(SV)に凝縮することを含む。訓練後、特別に構成されたバッテリテストSVMは、全テスト期間の完了前に収集されたテストデータを使用してバッテリテストの結果を予測することができる。加えて、すべてのテスト結果は、実施される各バッテリテストにおいて正確度が向上するように予測モデルに供給される。それに従って、本明細書に記載されるモデルは、正確度を向上して、正確なテスト結果の早期予測を可能にすることにより、バッテリテストコンピュータ22の動作を継続的に改善することができる。
【0055】
モデルが構築および使用される方法の例の説明に役立つように、図4および5は、以下で互いに組み合わせて説明する。図5を簡単に参照すると、特定の実施形態では、図4のブロック84で表される特徴選択プロセスは、空間(例えば、二次元プロット88)にマッピングされた第1の特徴および第2の特徴の使用を含み得、各ポイント90は、第1の特徴の値および第2の特徴の値に対応する座標を有する。バッテリのクラス間の所望の分離をもたらす特徴が見出された際、ブロック84の特徴選択プロセスは完了したと見なすことができる。以下に記載されるように、多次元プロットをもたらす3つ以上の特徴を利用することができる。
【0056】
図5のプロット88に示されるように、異なるカテゴリは、異なる形状によって表され、三角形は、テストに合格した)バッテリ(第1の分類)であり、円形は、テストに不合格になったバッテリ(第2の分類)である。第1および第2の特徴は、バッテリ分類間の最適な分離が可能になるように選択され、図4のブロック84で表される特徴選択プロセスは、バッテリテストSVMを利用して、図5で描写されるプロット88と同様のプロットを生成することができる。示されるように、テストに合格したバッテリは、一般に、プロットの第1の領域92に位置し、テストに不合格になったバッテリは、一般に、第1の領域92とは別のプロット88の第2の領域94に位置する。バッテリテストSVMは、超平面96を計算することができ、超平面96は、例えば、第1の領域92と第2の領域94との間の境界に比較的近いサンプル98を使用して、テストに不合格になったバッテリからテストに合格したバッテリを分離する。
【0057】
一般に図5に示されるように、バッテリテストSVMは、合格クラスと不合格クラスとの間のマージン99を最大化することを試みることによって超平面96を計算することができる。超平面96が構築され次第、バッテリテストSVMは、訓練されたと見なすことができ、従って分類モデルとなる(例えば、線形分離を利用する線形またはバイナリ分類モデルとして示される)。しかし、別の実施形態では、データは、選択される特徴の数に応じていかなる有限次元空間にもマッピングすることができ、そのような実施形態では、バッテリテストSVMによって計算される超平面96は、多次元(例えば、三次元またはそれ以上)であり得る。本実施形態によれば、バッテリテストSVMの分類エラーは、さらなる週のデータが予測に使用されるにつれて減少する。しかし、この場合もやはり、予測の有用性とその正確度との間のバランスが存在し得る。本明細書で説明される実施形態は、特別に選択された特徴を使用して異なる時間で実行した際に、特定のタイプのテスト(例えば、標準AK3.4テスト)についてそのようなバランスを達成することができる。
【0058】
図4に示されるように、訓練されたバッテリテストSVM 86(例えば、ここでは、バッテリテスト統計分類モデル)は、入力データ100(テストデータ100として示される、テストを受けているバッテリからの実際のテストデータ)を受信し、選択された特徴によって定義される空間(例えば、プロット88などの二次元または多次元空間)においてマッピングすることができる。テストデータ100は、充電および放電容量情報ならびに特定のバッテリサンプルのサイズ(例えば、DIN規格によるH5、H6)を含み得る。
【0059】
図5では、データポイント(例えば、ポイント101)は、超平面96の合格側として定義されるもの(例えば、第1の領域92内)に収まる場合には合格ステータス、または超平面96の不合格側として定義されるもの(例えば、第2の領域94内)に収まる場合には不合格ステータスを有すると予測される。データポイントが超平面96からより遠く離れる(すなわち、超平面96までの距離102が大きい)ほど、より大きい信頼性で予測が行われる。さらに、データポイントが超平面96に近い(例えば、マージン99の内側)場合、予測は、比較的低い信頼因子を有する。例えば、それぞれ正方形によって囲まれたデータポイント98の合格/不合格ステータスは、比較的低い信頼性で予測されることになる。それに従って、各予測は、超平面96からのその距離に見合う信頼因子を有し得る。
【0060】
再び図4に戻ると、方法80は、予測モデル(例えば、特別に構成されたSVM 86)の有効性確認(ブロック104)を含み得る。例えば、バッテリテストコンピュータ22は、有効性確認モジュール48を使用して、予測が正確であったかどうかを判断することにより、予測モジュール46によって行われた予測を比較することができる。これにより、有効性確認結果106が生成され、有効性確認結果106は、各テストが完了した後に行われる各予測について生成することも、複数の予測が行われた時点で複数の最終的なテスト結果が得られた後に生成することもできる。
【0061】
特定の実施形態では、バッテリテストコンピュータ22は、ユーザに有効性確認結果106を出力することができる。例えば、バッテリテストコンピュータ22は、有効性確認結果106をディスプレイ40上に表示することができる。有効性確認結果106は、特定の実施形態では、真理値表、複数の予測に関する正確度パーセンテージなどを含み得る。
【0062】
特定の実施形態では、方法80は、モデルの建築において使用される訓練データを更新すること(ブロック110)を伴う。例えば、バッテリテストコンピュータ22は、訓練モジュール50を使用して、バッテリテストのより最近の実行から収集されたデータを利用して、バッテリテストSVMによって生成された超平面96を更新することができる。超平面96が更新された時点で、統計モデルは再訓練されたと見なすことができる。
【0063】
本開示の様々な態様をさらに示すため、本明細書では、標準AK3.4テストを受けている鉛酸AGM蓄電池のバッテリテスト予測に関連して例示的な実装形態が説明される。そのような実施形態では、AK3.4テストは、合計で18週間にわたって実施される(すなわち、テスト期間は18週間である)。AK3.4テストは、その寿命中に高サイクル条件下でエネルギーを伝達するAGM鉛酸蓄電池の能力を決定するうえで役立つ耐久テストである。これらの18週間中、特定のバッテリサンプルは、完全なおよび部分的な充電−放電サイクルの対象となる。各週に放電および充電容量が測定される。バッテリサンプルは、C20容量によって正規化される)放電容量が18週間にわたって閾値を超える場合にテストに合格する。閾値は、所望の耐久に応じて調整することができる。以下で説明される例の場合、閾値は、テストの開始時においてバッテリのC20容量の60%および70%に設定されている。
【0064】
本開示の実施形態によれば、予測モジュール46は、3つの異なる時点(図3に記載される方法60に従って、第1の時点は4週間、第2の時点は6週間、第3の時点は9週間)において予測出力を提供する。実際に、AK3.4テストの場合、適切な閾値、バッテリテストSVMモデルの特徴などを使用して本明細書で説明される方法が実装される際、早ければ4週間で正確な予測を提供できることが分かっている。本開示の一態様によれば、バッテリテストSVM訓練への入力として使用される第1および第2の特徴は、予測バイナリ分類のための合格および不合格バッテリ間の最適な分離を提供することができる放電およびリターン充電効率の変化率であり得る。しかし、上記に記載されるように他の特徴を使用することができる。
【0065】
バッテリテストコンピュータ22の実施形態において実装されたバッテリテスト管理システム26の実施形態からの実際の結果は、図6および7で提供する。具体的には、図6は、バッテリテストコンピュータ22によって生成された出力120(例えば、有効性確認モジュール48からの出力)を描写する。この例における予測モデル(予測モジュール46の一部)は、H6規格寸法を有するAGM鉛酸蓄電池の42の訓練サンプルを使用し、バッテリテストSVMの特徴として放電容量および充電効率の変化率を使用して構築された。10のテストバッテリ(すなわち、予測が提供されたバッテリ)が使用された。使用された閾値は、各バッテリのオリジナルのC20容量の60%および70%であり、記述される予測は、バッテリについて得られた9週間のテストデータで提供された。
【0066】
示されるように、出力120は、訓練データおよびテストデータの時間(週単位)の関数としての正規化放電容量のプロット122を含む。また、出力120は、真理値表124も含み、真理値表124は、予測の正確度を示す。示されるように、より高い閾値(70%)を使用する際、正確度は、閾値がより低い(60%)ときほど高くない。しかし、これは、必ずしも閾値のみが原因とは限らず、70%の閾値に近い正規化放電容量を有する誤って予測されたサンプルが原因でもある。そのような実施形態では、予測モジュール46は、モデルの予測の正確度を強化するためにそのサンプルについて得られたテストデータを使用して更新することができる。本実施形態によれば、不合格になると予測されたバッテリは、エンジニアリングおよび/またはバッテリ製造問題の早期診断および補正に関する設計観点から有用なフィードバックを提供することができる。この場合もやはり、これにより、例えば、品質管理のための早期フィードバックを提供することによってバッテリエンジニアリングプロセスの全体的な動作を改善することができ、また、製造設備の動作を改善することもできる。
【0067】
図7は、バッテリテストコンピュータ22によって生成された出力130を描写し、予測モデル(予測モジュール46の一部)は、H7規格寸法を有するAGM鉛酸蓄電池の42の訓練サンプルを使用し、バッテリテストSVMの特徴として放電容量および充電効率の変化率を使用して構築された。10のテストバッテリ(すなわち、予測が提供されたバッテリ)が使用された。使用された閾値は、各バッテリのオリジナルのC20容量の60%および70%であり、記述される予測は、バッテリについて得られた9週間のテストデータで提供された。
【0068】
出力130は、訓練データおよびテストデータの時間(週単位)の関数としての正規化放電容量のプロット132を含む。また、出力120は、真理値表134も含み、真理値表134は、予測の正確度を示す。示されるように、正確な予測は、60%および70%閾値の両方を使用して出力された。これは、放電容量の変化率が比較的低いテストバッテリのプロットを参照して理解することができる。
【0069】
上記に記載されるように、本開示のさらなる態様では、予測モジュール46によって出力される予測は、予測バッテリ特性も含み得る。図6および7に記載される例を再び参照すると、予測モジュール46は、予測された最終的な放電容量(例えば、標準テストの終了時の放電容量)を出力する(例えば、ユーザに)こともできる。図8は、最終的なバッテリ放電容量の例示的な出力140を示す。
【0070】
図8の出力140は、超平面96までの距離の関数としての最終的な放電容量のプロット142を含む(図5を参照)。より具体的には、図5に示されるプロット88上のバッテリサンプルの場所から超平面96までの例示的な距離102は、図8に示されるように、将来の放電容量を予測するために線形回帰と組み合わせて使用することができる。
【0071】
本明細書で開示される実施形態は、適切ないかなる組合せでも使用することができ、本開示は、本明細書で開示される実施形態のいずれかのいかなる組合せも包含することを意図する。例として、開示される実施形態の1つまたは複数は、いかなる組合せでも、テストが終了する前にバッテリテスト結果を予測することによってバッテリテストおよび製造を改善する技術的効果を提供するために使用することができる。例えば、バッテリテストコンピュータは、そうでなければテストが完了するであろうかなり前に、バッテリにおいて実施されているバッテリテストの結果(例えば、合格/不合格)を予測することができる。バッテリテストコンピュータは、1つまたは複数の命令セットとして実装されるバッテリテスト管理システムを格納する有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。バッテリテスト管理システムは、バッテリテストが完了されるのに必要なすべてより少ないデータを使用してバッテリテスト結果を予測するように構成された予測モジュール、予測の有効性確認を行うように構成された有効性確認モジュール、および有効性確認モジュールによって生成された結果に基づいて予測モジュールを再訓練するように構成された訓練モジュールを含む。従って、別の技術的効果は、バッテリテストコンピュータが新しいバッテリテストデータから学習することによって一層正確な予測を提供することであり得る。さらに、本明細書に記載される実施形態は、早期予測に基づいてバッテリ設計および製造プロセスを更新または洗練するために使用することができる。それに従って、本実施形態のさらなる別の技術的効果は、バッテリ生産と関連付けられたエンジニアリングおよび製造プロセスの改善を含み得る。本明細書における技術的効果および技術的問題は、例示的なものであり、限定するものではない。本明細書で説明される実施形態は、他の技術的効果を有し得、他の技術的問題を解決できることに留意すべきである。例えば、バッテリテストSVMは、バッテリ水消費量テストなどの他のバッテリテストについて他の予測出力を生成するために構築して使用することができる。
【0072】
上記で説明される具体的な実施形態は、例示として示されており、これらの実施形態は、様々な変更形態および代替形態の対象となり得ることを理解すべきである。請求項は開示される特定の形態に限定されることを意図せず、むしろ、本開示の趣旨および範囲内にあるすべての変更形態、均等物および代替形態を包含することを意図することをさらに理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8