(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6513931
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】化粧方法測定センサ
(51)【国際特許分類】
A45D 44/00 20060101AFI20190425BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20190425BHJP
A61B 5/0408 20060101ALI20190425BHJP
A61B 5/0478 20060101ALI20190425BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
A45D44/00 A
A61B5/00 M
A61B5/04 300M
A61B5/04 300N
G01N27/02 D
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-231965(P2014-231965)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-93369(P2016-93369A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】野村 美佳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 進吾
(72)【発明者】
【氏名】筧 康明
【審査官】
山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−198091(JP,A)
【文献】
特開2007−256021(JP,A)
【文献】
特開2010−201165(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0228106(US,A1)
【文献】
特開昭63−238853(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0265214(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
A61B 5/00
A61B 5/0408
A61B 5/0478
G01N 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極と、前記2つの電極を手又は指に保持する構造とを有するセンサであって、前記2つの電極を前記手又は指に保持する構造により前記2つの電極を前記手又は指から電気的に離間させ、かつ化粧時に前記2つの電極が同時に化粧料塗布面に接することで前記化粧料塗布面のコンダクタンスの変化を測定できるように配置されてなる化粧方法測定センサ。
【請求項2】
前記2つの電極を前記手又は指に保持する構造が、当該2つの電極を、絶縁体である担体の表面に設けたものである請求項1記載の化粧方法測定センサ。
【請求項3】
前記2つの電極を前記手又は指に保持する構造が、前記手の指に装着可能なリング形状である請求項1又は2記載の化粧方法測定センサ。
【請求項4】
前記2つの電極が、前記リング形状の周方向に延在する細幅電極である請求項3記載の化粧方法測定センサ。
【請求項5】
前記担体がシートであって、前記2つの電極を前記手又は指に保持する構造が前記シートの電極とは反対側の面に設けられた粘着剤である請求項2記載の化粧方法測定センサ。
【請求項6】
前記2つの電極が、細幅の導電体である請求項1〜5のいずれか1項記載の化粧方法測定センサ。
【請求項7】
前記化粧方法測定は、2つの電極間の化粧時のコンダクタンスの変化を測定することで、手若しくは指の動作又は手若しくは指と顔との接触状態を判別する、請求項1〜6のいずれか1項記載の化粧方法測定センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のセンサを用いた化粧方法の測定方法であって、前記2つの電極間に電圧を加え、化粧時のコンダクタンスの変化を測定する化粧方法の測定方法。
【請求項9】
請求項3又は4記載のセンサを用いた化粧方法の測定方法であって、化粧時のコンダクタンスの変化で、手の指の動作又は手の指と顔との接触状態を判別する化粧方法の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧方法を測定できるセンサ及び該センサを用いた化粧方法の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の状態、例えば皮膚角質層バリア機能を測定する手段としては、皮膚表面に電極を接触させ通電電気特性を測定し、皮膚層の電気的特性の差を基に演算して測定する装置(特許文献1)が知られている。しかし、この装置では、化粧動作等の違い等の操作については検出できない。
【0003】
一方、指に装着して、指の作動を検出する動作検出センサにより、化粧時の指の動作を検出する手段が報告されている(特許文献2)。しかし、このセンサは指の動作を検出するだけであり、化粧料がどのように皮膚に適用されたか等については全く検出できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−310567号公報
【特許文献2】特開2013−3782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顔、手、腕等を化粧するには、化粧料を手全体や指にとり、顔等に塗布したり、塗り込んだりするのが一般的である。特にスキンケアでは、メイクアップと相違し、化粧料がどの程度皮膚の目的部位に適用できたのか、どの程度の時間適用するのが有効であるのか、あるいはどの程度の時間皮膚に作用したのか等は化粧をしている本人にとっては判別し難い。
従って、手や指の動作だけでなく、化粧料の適用量、適用時間等の化粧効果を、化粧している本人が判別できる手段が望まれており、本発明は化粧をする本人が化粧方法を適確に把握できるセンサ及び化粧方法の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、手や指に装着し、通常の化粧動作をする際の、化粧動作を把握することのできるセンサを開発すべく研究した結果、全く意外にも、2つの電極と、当該電極を体表に保持する構造とを備え、化粧時に当該2つの電極が化粧料塗布面に同時に接するように配置されたセンサを用い、2つの電極間に電圧を加え、化粧時のコンダクタンスの変化を測定すれば、化粧時の動作、化粧料の適用量等の変化とコンダクタンスの経時変化との間に一定の相関関係が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、2つの電極と、前記2つの電極を体表に保持する構造とを有するセンサであって、前記2つの電極を体表に保持する構造により前記2つの電極を体表から実質的に離間させ、かつ化粧時に前記2つの電極が同時に化粧料塗布面に接するように配置されてなる化粧方法測定センサを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、センサを用いた化粧方法の測定方法であって、前記2つの電極間に電圧を加え、化粧時のコンダクタンスの変化を測定する化粧方法の測定方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
2つの電極が同時に化粧料塗布面に接するため、電極間に存在する化粧料の量や乾燥状態などが2つの電極間のコンダクタンスに直に反映するので、化粧動作による化粧料の変化をより確実に検出することができる。また、好ましい態様によればセンサを体表に保持するための部材として、手指にはめることが可能なリング状に絶縁体が構成され、リング状絶縁体の外表面にリングの周方向に延在して2つの細幅電極が設けられているので、向きを気にすることなく簡単に装着でき、確実にセンシングができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】細幅電極の本発明センサの例を示す。上段は素材例、中段がセンサ例であり、下段は中段のセンサ例の横断面図である。
【
図4】化粧水、乳液及びクリームを用いて化粧したときのコンダクタンスの変化を示す。
【
図5】化粧水Aおよび化粧水B使用時のコンダクタンスの変化の積分値と化粧水使用量の関係を示す。
【
図6】化粧動作とコンダクタンスの変化の概念図を示す。
【
図7】リング状センサの指への装着状態の例を示す。
【
図8】リング状センサの指への装着状態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧方法測定センサは、2つの電極と、前記2つの電極を体表に保持する構造とを有し、前記2つの電極を体表に保持する構造により前記2つの電極を体表から実質的に離間させ、かつ化粧時に前記2つの電極が同時に化粧料塗布面に接するように配置されてなることを特徴とする。本発明の化粧方法測定センサは、上記構造を有することによって、化粧時に電極間に存在する化粧料によって、電極間に電位差(抵抗値)が生じる。
【0012】
前記2つの電極は、センサが、手や指に装着して使用されることを考慮すれば、細幅の導電体からなる電極であるのが好ましい(
図1)。また、その形状は、手に装着できる細幅電極であってもよいし、指に装着可能なリング形状の周方向に延在する細幅電極であってもよい(
図2、
図3)。それぞれの電極の形状は、円柱状でも角柱状でもよい。
【0013】
前記2つの電極の材料は、導電体であればよく、例えば銅、鉄、金、白金、カーボン、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。
【0014】
前記2つの電極を体表に保持する構造としては、当該2つの電極を絶縁体である担体の表面に設けることで達成されるのが好ましい。絶縁体である担体としては、例えば樹脂担体、紙担体、布担体等が挙げられる。当該担体は、手や指に装着しやすさ、電極の保持性から、シート状であるのが好ましい。さらに、担体は、防水処理が施されているのがより好ましい。また、シートの電極とは反対側の面には、粘着剤が設けられているのが好ましい。
【0015】
前記2つの電極を体表に保持する構造としては、絶縁体によるリング状の構造体、例えば合成樹脂製の指輪とすることもできる。このとき、周方向に離れた2か所に前記2つの電極を配してもよいが、周方向に延在させた細幅の電極を2本、リングの幅方向すなわち、周方向とは直交する方向において離して配したほうが、化粧時に2つの電極を同時に化粧料塗布面に接するようにすることが容易となるため、好ましい。
【0016】
前記2つの電極が体表から実質的に離間し、かつ化粧時に前記2つの電極が同時に化粧料塗布面に接するように配置されていることにより、化粧時に電極を介して得られるコンダクタンスが体表を介するものでなく、化粧料塗布面に存在して前記2つの電極に付着している化粧料を介するものであることとなる。
【0017】
2つの電極を体表から実質的に離間させるとは、2つの電極の露出部分と電極を保持する体表との間が直接接触していないことを意味し、空隙が存在する必要はなく、樹脂、紙、布などにより電極と体表とが電気的に離間していればよい。従って、前述のように、絶縁体である担体の表面に電極が設けられていればよい。
【0018】
前記2つの電極は、接触さえしていなければよく、化粧時に当該2つの電極が同時に化粧料塗布面に接することができる程度の離間距離で配置されていればよい。すなわち、前記2つの電極は、互いに接触せずに、同時に化粧料塗布面に接するように配置されていればよい。
【0019】
前記2つの電極の離間距離は、細幅電極の場合、化粧動作の操作性、化粧料付着性等の点から、0.1mm以上であるのが好ましく、0.1mm〜30mmであるのがより好ましい。なお、それぞれの電極の幅は特に限定されないが、0.1mm〜3mmが好ましい。また、それぞれの電極の長さも特に限定されないが、10mm〜100mmが好ましい。
【0020】
本発明において化粧料は、極性媒体を含む化粧料であれば特に限定されないが、媒体として水を含む化粧料、特にスキンケア化粧料が好ましく、化粧水、乳液、クリーム、ゲル等の形態の化粧料がより好ましい。
【0021】
本発明のセンサを用い、前記2つの電極間に電圧を加え、化粧時のコンダクタンスの変化を測定すれば、化粧方法が測定できる。
すなわち、例えば化粧水、乳液又はクリームを掌や手指に保持した電極間やその周辺にとり、これらを用いて化粧を行ったときのコンダクタンスの変化は、
図4のように波形、面積、継続時間等が相違する。継続時間の閾値を設定すれば、各化粧料毎に好ましい使用時間が判明する。また、面積を時系列変化の積分値によって使用量が定量できる(
図5)。さらに、スキンケア中の動作によって波形が変化するため波形解析により、スキンケア中の動作をリアルタイムに意識化できる。また、スキンケア中の動作によって波形が異なってくるため、スキンケア時の動作をスキンケア後に評価できる。例えば化粧料を顔に塗布する際には高周波成分が多く、手指で顔をおさえるとコンダクタンスは安定し、手指を顔から離すと急激に低下することが示されるなど、コンダクタンスの変化で動作や接触状態が判別できる(
図6) 。
【0022】
本発明のセンサにおいては、電極間の距離を調整することによってスキンケア時の製剤の残留を最適にモニターすることができる。また、リアルタイム又はスキンケア後に、スキンケアにおける無自覚な自分の動作を意識化できるユーザーが使用量やアイテムの使用時間を測るための動作がいらないため煩雑さがない。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0024】
実施例1
市販されている外径0.9mm、心線0.45mmの鉄製ワイヤー(
図1上段)2本を接着剤で密着させシート状にし、上部の樹脂製被覆材を削り、鉄製心線を表出することで、
図1中下段のような細幅電極を形成した。これを
図7のようなリング状にして手指装着用センサを作製した。これを
図9の回路図のように設置した。
このリング状センサを用いて、化粧水、乳液及びクリームを用いて肌を化粧した時のコンダクタンスの変化を示したのが
図4である。
化粧水を用いて化粧した時のコンダクタンスの変化の積分値を
図5に示す。
【0025】
実施例2
市販のシール基板(サンハヤト株式会社製ICB−066)を用いて、シート状の細幅電極を形成し、指に装着した例を
図8に示す。