(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514056
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】配管類保護カバー
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20190425BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20190425BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20190425BHJP
【FI】
H02G3/04 037
F16L57/00 A
H02G3/30
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-137537(P2015-137537)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-22845(P2017-22845A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】593053380
【氏名又は名称】ジャパン スチールス インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】與那原 一郎
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第08001643(US,B1)
【文献】
登録実用新案第3135940(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16L 57/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行面に配置される帯状の底板、当該底板の一方の側辺に沿って伸びる第1の側板、および前記底板の他方の側辺に沿って伸びる第2の側板を備え、配管類を収容する収容室を区画する基部と、
前記第1の側板の上端から前記走行面に向けて下向きに傾斜して前記基部に設けられる第1の傾斜板と、
前記第2の側板の上端から前記走行面に向けて下向きに傾斜して前記基部に設けられる第2の傾斜板と、
前記第1の傾斜板と前記第2の傾斜板の間に配置されて前記収容室を閉じる位置と、前記収容室を開放する位置との間を回動自在の開閉板と、
前記傾斜板と前記基部との間に設けられたリブに基端部が回動自在に設けられたアームと、を有し、
前記アームの先端部に前記開閉板を取り付け、前記開閉板を前記アームによりリブに回動自在に支持する、配管類保護カバー。
【請求項2】
請求項1記載の配管類保護カバーにおいて、前記開閉板が閉じられたときに前記開閉板の一方側部を支持する第1の支持板を前記第1の側板に設け、前記開閉板の他方側部を支持する第2の支持板を前記第2の側板に設けた、配管類保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外の床面等に仮設される電線ケーブル等の配管類を保護するために使用される配管類保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の建設工事現場においては、建築物の床面や建築物周囲の路面等の走行面に電線ケーブルなどの電線管や液体等の流体を案内するホース等の流体案内管が仮設される。建設工事現場の走行面には、建設資材運搬用の台車が走行したり、作業者が建設資材を手に持って歩行したりする。このため、走行面に仮設される電線ケーブル等の配管類を保護し、台車や作業者が走行面を安全に走行できるように、配管類は保護カバーにより覆うようにして走行面に仮設される。
【0003】
仮設用の保護カバーには、特許文献1に記載されるように、両側縁部に粘着層が設けられた長尺のテープを用いて床面に仮設される電線類を覆うようにしたものがある。さらに、特許文献1の
図6には、電線類を収納する下カバー体と、下カバー体に嵌め込まれる上カバー体とを有し、内部に断面四角形の収納部を形成するようにした保護カバーが記載されており、下カバー体は粘着テープにより走行面に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、走行面に仮設される電線類を長尺テープにより覆って走行面に固定する場合には、作業者が電線類を踏みつけても電線類は直接踏みつけられることなく、テープにより保護することができる。しかしながら、建設資材を運搬する台車が電線類を乗り上げると、長尺テープにより電線類を覆っただけでは、電線類の損傷が避けられない。
【0006】
一方、上下のカバー体により断面四角形の収納部を形成し、収納部内に電線類を収納するようにした保護カバーは、粘着テープを用いて走行面に貼り付けなければならず、保護カバーの敷設作業が面倒である。また、横断面が四角形の保護カバーを走行面に敷設すると、作業者が保護カバーにつまずいたり、台車を円滑に保護カバーに乗り上げさせたりすることができず、作業者は走行面を円滑に走行することができない。
【0007】
本発明の目的は、走行面に容易に敷設することができ、仮設される電線ケーブル等の配管類を確実に保護することができる配管類保護カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配管類保護カバーは、走行面に配置される帯状の底板、当該底板の一方の側辺に沿って伸びる第1の側板、および前記底板の他方の側辺に沿って伸びる第2の側板を備え、配管類を収容する収容室を区画する基部と、前記第1の側板の上端から前記走行面に向けて下向きに傾斜して前記基部に設けられる第1の傾斜板と、前記第2の側板の上端から前記走行面に向けて下向きに傾斜して前記基部に設けられる第2の傾斜板と、前記第1の傾斜板と前記第2の傾斜板の間に配置されて前記収容室を閉じる位置と、前記収容室を開放する位置との間を回動自在の開閉板と、
前記傾斜板と前記基部との間に設けられたリブに基端部が回動自在に設けられたアームと、を有し、前記アームの先端部に前記開閉板を取り付け、前記開閉板を前記アームによりリブに回動自在に支持する。
【発明の効果】
【0009】
建築物の工事現場において、電線ケーブル等の配管類が仮設される走行面に配管類保護カバーを配置し、開閉板を開放位置に回動させると、基部の収容室に電線ケーブル等を容易に敷設することができる。電線ケーブル等は開閉板により覆われるので、開閉板の上に作業者や台車が乗り上げても、これらの外力が電線ケーブル等に加わることなく、電線ケーブル等を確実に保護することができる。基部の両側には傾斜板が設けられているので、作業者は傾斜板を介して基部に乗り上げることができる。これにより、作業者が台車を操作して基部を横切るときには、傾斜板を介して容易に横切らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施の形態である配管類保護カバーを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した配管類保護カバーの開閉板を開いた状態を示す斜視図である。
【
図5】配管類保護カバーを台車が横切る状態を示す側面図である。
【
図6】他の実施の形態である配管類保護カバーを示す横断面図である。
【
図7】
図6に示した配管類保護カバーの開閉板を開いた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。配管類保護カバー10は、建築物の建設工事現場における建築物の床面や建築物周囲の路面等の走行面Sに配置されて使用される。配管類保護カバー10は基部11を有し、基部11は走行面に配置される帯状の底板12と、底板12の一方の側辺に沿って伸びて底板12に一体となった第1の側板13と、底板12の他方の側辺に沿って伸びて底板12に一体となった第2の側板14とを備えている。基部11は、底板12と両方の側板13,14により上面が開口された断面U字形状となっており、内部には収容室15が区画される。底板12,側板13、14はそれぞれ鋼板により形成されている。
【0012】
基部11には、第1と第2の2つの傾斜板16,17が設けられる。第1の傾斜板16は、その基端部が第1の側板13に接続されており、側板13の上端から走行面Sに向けて下向きに傾斜している。第2の傾斜板17は、その基端部が第2の側板14に接続されており、側板14の上端から走行面Sに向けて下向きに傾斜している。それぞれの傾斜板16,17は、鋼板により形成されており、傾斜方向の寸法はほぼ同一となっている。底板12が走行面Sに接触するように配管類保護カバー10を走行面Sの上に配置すると、それぞれの傾斜板16,17の先端が走行面Sに接触する。このように、配管類保護カバー10を走行面Sの上に配置すると、それぞれの傾斜板16,17の先端は、底板12の底面に延長上に位置する。
【0013】
配管類保護カバー10は開閉板21を有する。開閉板21は、
図1および
図3に示されるように、両方の傾斜板16,17の間に配置されて収容室15を閉じる閉塞位置と、
図2および
図4に示されるように、収容室15を開放する開放位置との間を回動自在となっている。開閉板21を開放位置に回動させると、
図4において矢印で示すように、収容室15内に配管類Pとしての電線ケーブルを収容したり、収容された電線ケーブルを収容室15から取り出したりすることができる。
【0014】
一方、開閉板21を閉塞位置に設定すると、
図1および
図3に示されるように、収容室15内に収容された電線ケーブルは開閉板21により覆われる。これにより、配管類保護カバー10の上を作業者が歩行したり、
図5に示されるように、台車Vが走行したりしても、配管類Pとしての電線ケーブルには外力が加わらず、確実に電線ケーブルを保護することができる。しかも、基部11の両側には傾斜板16,17が設けられているので、基部11は傾斜板16,17と開閉板21とにより覆われるので、なだらかに傾斜した傾斜板16,17により、作業者や台車Vは横断面形状が四角形の基部11を容易に横切ることができる。傾斜板16,17と開閉板21の表面には、配管類保護カバー10の上を歩行する作業者が滑らないようにするために、多数の突起部が設けられている。
【0015】
配管類保護カバー10が走行面Sに配置された状態のもとで、側板13と傾斜板16と走行面Sとにより区画されるスペースには三角形のリブ22が設けられ、側板14と傾斜板17と走行面Sとにより区画されるスペースには三角形のリブ23が設けられている。リブ22は側板13の外面と傾斜板16の下面とに溶接され、リブ23は側板14の外面と傾斜板17の下面とに溶接されている。それぞれのリブ22,23は、基部11の両端部に設けられている。ただし、それぞれのリブ22,23を基部11の両端部に加えて、中間位置にも設けるようにしても良い。
【0016】
図2における基部11の右端部に設けられたリブ22には、アーム24の基端部が回動自在に設けられ、アーム24の先端部は開閉板21に取り付けられている。破線で示されるように
図2における左端部に設けられたリブ22には、同様のアーム24の基端部が回動自在に設けられ、アーム24の先端部は開閉板21に取り付けられている。アーム24は、
図4において角度θの範囲において回動自在となっており、開閉板21は両方のアーム24によりリブ22に回動自在に支持される。
【0017】
図2に示されるように、第1の側板13の内面には4つの第1の支持板26が第2の側板14に向けて突出しており、第2の側板14の内面には4つの第2の支持板27が第1の側板13に向けて突出している。開閉板21が閉じられたときに、それぞれの支持板26は開閉板21の一方側部を支持し、それぞれの支持板27は開閉板21の他方側部を支持する。このように、閉じられた状態の開閉板21は両側部が支持板26,27により支持されるので、開閉板21の上を作業者や台車Vが走行しても、開閉板21が変形することが防止される。両方の支持板26,27の間には隙間28が設けられており、収容室15内に電線ケーブルを挿入したり、挿入された電線ケーブルを収容室15内から取り出したりするときには、隙間28に電線ケーブルを通過させることができる。それぞれの支持板26,27の数は、4つに限られることなく、任意の数とすることができる。
【0018】
配管類保護カバー10は走行面Sに配置することにより自重により走行面Sの上をずれることがないので、粘着テープなどにより配管類保護カバー10を走行面Sに固定することが不要となる。これにより、走行面に配管類保護カバー10を容易に敷設することができる。電線ケーブルは開閉板21により覆われた状態で収容室15内に収容されるので、開閉板21の上に作業者や台車が乗り上げても、これらの外力により電線ケーブルが損傷することなく、電線ケーブルを確実に保護することができる。さらに、基部11の両側には傾斜板16,17が設けられているので、作業者は傾斜板16,17を介して基部11を乗り上げることができる。これにより、作業者が台車を操作して基部11を横切るときには、傾斜板16,17を介して容易に横切らせることができる。
【0019】
図6および
図7は他の実施の形態である配管類保護カバーを示す横断面図であり、
図6は開閉板が閉じた状態を示し、
図7は開閉板が開いた状態を示す。
【0020】
上述した配管類保護カバー10が1つの開閉板21を備えているのに対し、
図6および
図7に示す配管類保護カバー10aは、2つの開閉板21a,21bを備えており、他の構造は上述した配管類保護カバー10とほぼ同様である。第1の開閉板21aはアーム24aによりリブ22に回動自在に装着され、第2の開閉板21bはアーム24bによりリブ23に回動自在に装着されている。それぞれの開閉板21a,21bの先端部には、ストッパ31a,31bが設けられており、
図6に示されるように、それぞれの開閉板21a,21bを閉塞位置に回動させると、ストッパ31a,31bが底板12に突き当てられる。この形態の配管類保護カバー10aにおいては、それぞれの側板13,14には、上述した支持板26,27を設けることなく、開閉板21a,21bを閉じた状態にストッパ31a,31bにより保持することができる。このように、開閉板を2枚とした形態においても、開閉板を1枚とした形態と同様の効果を得ることができる。
【0021】
1つの開閉板21を備えた配管類保護カバー10においても、開閉板21の先端部や中間部に同様のストッパを設けるようにしても良い。
【0022】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上述した配管類保護カバー10,10aは、電線ケーブルを保護するために使用されているが、流体を案内するホース等の保護にもこの配管類保護カバーを適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10,10a 配管類保護カバー
11 基部
12 底板
13,14 側板
15 収容室
16,17 傾斜板
21,21a,21b 開閉板
22,23 リブ
24,24a,24b アーム
26,27 支持板
28 隙間
31a,31b ストッパ
P 配管類
S 走行面