【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年11月18日〜20日、東京ビッグサイトにおける「The 34th JAPANTEX2015」(主催:一般社団法人日本インテリアファブリックス協会、一般社団法人日本能率協会)に出品
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レール(102)の内壁に沿って移動可能なランナ(104)がパネル(106)を吊り下げ支持する移動間仕切り装置(1,1’)の防振装置(20,20’)であって、
天井に支持された固定部材(50)に取り付け可能な上方プレート(22,22’,24)と、
前記上方プレートの下方に配設され、その下面に前記レールを取り付け可能な下方プレート(26,26’)と、
前記上方プレートと前記下方プレートとの間に配設された弾性体(286)と、
を備えることを特徴とする防振装置。
前記上方プレートと前記下方プレートとの所定量以上の離間を防止するよう、前記上方プレートに対して前記下方プレートを支持する支持具(28)を更に備えることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
前記上方プレートに当接する前記ボルトの頭部(282a)の当接面(282b)と、前記下方プレートに当接する前記ナットの当接面(284b)のうち、少なくとも一方の当接面が曲面であることを特徴とする請求項3または請求項4記載の防振装置。
前記上方プレートに当接する前記ボルトの頭部の当接面と、前記下方プレートに当接する前記ナットの当接面(284b)のうち、少なくとも一方の当接面に緩衝材(282c,284c)が設けられていることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の防振装置。
前記上方プレートは、前記固定部材における上面の一部に当接することにより、該固定部材に対して係止可能な係止部(226)を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
以下、本発明に係る実施の形態1について
図1〜
図13を参照しつつ説明する。なお、実施の形態1および後述する実施の形態2を含め、本明細書及び図面において実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
(装置構成)
先ず、本実施の形態に係る移動間仕切り装置の構成について説明する。
図1に示されるように、本実施の形態に係る移動間仕切り装置1は、移動間仕切り10と、防振装置20と、を備えて構成される。以下、移動間仕切り装置1の各構成について詳細に説明する。
【0013】
(移動間仕切り10)
移動間仕切り10は、防振装置20の下部プレート26にボルトとナットとからなる締結具32を介して固定され、その下端部において天井パネル120の縁部が載置されるレール102と、レール102の内壁に沿って移動可能なランナ104と、ランナ104に吊下げ支持されるパネル106と、を備えて構成される。レール102は、ランナ104が走行可能な走行経路を形成するものであり、このレール102の配置によって、パネル106の配設位置、すなわち、パネル106によって間仕切られる空間の大きさや形状が決定する。
【0014】
(防振装置20)
防振装置20は、図示しない天井壁や上層階のスラブに埋設されたホールアンカに対して吊り筋40を介して溶接により固定されている断面C字状のリップ溝型鋼である下地部材50に、ボルトとナットからなる締結具34を介して取り付けられており、移動間仕切り10を水平移動及び揺動自在に支持してランナ104の移動時およびレール102内壁との衝突時の振動の上層階への伝達を軽減する所謂間接材である。具体的には、防振装置20は、下地部材50に着脱自在に取り付け可能な取付部材22と、その上面が下地部材50に当接する上部プレート24と、上部プレート24の下方に配設された下部プレート26と、上部プレート24に対して下部プレート26を離間した位置で支持する係止具28と、を備えて構成される。
【0015】
(取付部材22)
取付部材22は、
図2および
図3に示されるように、1つの角部が切り欠かれた略四角形状の底壁222と、当該角部を形成する互いに直交した底壁222の2辺から立設した2つの側壁224,224とが一体となって構成されたアングル部材である。本実施の形態においては各側壁224,224に、その対角線沿いに締結具34のボルトが挿通可能な挿通孔224a,224aが2つ連設されており、側壁224と下地部材50の側壁とが当接し、この挿通孔224aに締結具34が挿入されて締結されることにより下地部材50に対して取付部材22を固定することができる。この挿通孔224aの個数や設けられる位置はこれに限定されるものではなく、移動間仕切り10および防振装置20の荷重に応じて適宜設定すればよい。また、底壁222には係止具28のボルト282が挿通可能な図示しない挿通孔が形成されている。この挿通孔に係止具28のボルト282が挿通されて後述するナット284が締結されることにより、取付部材22に対して上部プレート24を係止している。なお、取付部材22と上部プレート24とは、相対移動しないようにそれらの当接面を溶接または接着剤等により固着することが好ましい。
【0016】
(上部プレート24、下部プレート26)
上部プレート24は、その一部の上面(ここでは略中央の面)が下地部材50の下面と当接して上記のとおり係止具28により取付部材22に係止された矩形平板状の鋼板であり、その四隅に係止具28のボルト282が挿通可能な図示しない挿通孔が形成されている。下部プレート26は、この上部プレート24の下方に所定の間隔(例えば30mm)離間して配設された、矩形の上方が開口した箱状の鋼板(
図4参照)であり、その底壁の四隅における上部プレート24の挿通孔に対向する箇所に図示しない挿通孔が形成されている。以後、これら上部プレート24および下部プレート26を区別しない場合は、各プレートと称して説明を行う。これらの各プレートに形成された挿通孔は、ボルト282の径より大きい径であることが好ましい。また、下部プレート26には、締結具32のボルトが螺合可能な図示しない螺合孔が複数設けられており、移動間仕切り10のレール102上面が下部プレート26の下面に当接した状態でこれに締結具32のボルトを螺合することにより、下部プレート26に移動間仕切り10を固定可能としている。
【0017】
図4に示されるように、これら上部プレート24と下部プレート26との間に画成される空間における、少なくとも下地部材50の下方に位置する箇所には、吸音性を有するグラスウール等の吸音材25が配設されている。この吸音材25によりレール102内のランナ104の走行により生じる振動音等の騒音の上層階への伝達を軽減している。なお、本実施の形態において下部プレート26は、上部プレート24より一回り大きく形成されているが、上部プレート24と同形状またはより小さい形状としてもよい。
【0018】
(係止具28)
係止具28は、
図2に示されるように防振装置20の四隅に配設されて上部プレート24に対して下部プレート26を係止すると共に、上部プレート24と下部プレート26との所定量以上の離間を防止する所謂規制部材である。係止具28は、
図1、
図3、
図4に示されるように、取付部材22、上部プレート24および下部プレート26の各挿通孔に挿通可能な、外周に図示しないネジ山が形成されたボルト282と、当該ボルトに螺合可能なナット284と、上部プレート24と下部プレート26との間に配設された中空円筒状のコイルスプリング286とを備えて構成される。
【0019】
具体的には、係止具28は、上部プレート24の上面からボルト282を各挿通孔に挿通し、下部プレート26の上部プレート24と対向する面の反対面(ここでは下面)側からボルト282にナット284を締結して配設されている。これにより、係止具28は、上部プレート24と下部プレート26との所定量以上の離間を防止する、即ち下部プレート26の下方移動を不能にすると共に、下部プレート26を、上部プレート24との間隔の範囲内での上方移動、下部プレート26の挿通孔とボルト282との間隔の範囲内での水平方向移動、および傾動可能に係止することができる。なお、この係止具28によれば、離間する間隔を調節する際には、ナット284をボルト282に沿って進退するよう回転させるのみでよいため、吸音材25の増量や、防音材の増設等の作業を簡便な手法で実施することができる。
【0020】
更に、ボルト282の頭部282aおよびナット284は、取付部材22および各プレートに形成された挿通孔より径が大きく、取付部材22および下部プレート26と当接する当接面282b、284bが球面(曲面)形状をなしている。これにより取付部材22および下部プレート26の挿通孔における頭部282aおよびナット284と対向する周縁と、当接面282b、284bとが線接触して当該周縁に対して頭部282aおよびナット284を摺動可能としている。したがって、係止具28自体が各プレートに対して揺動自在となっており、より広範囲での下部プレート26の上方移動、水平方向移動、および揺動といった変位を実現している。
【0021】
コイルスプリング286は、ボルト282の周囲に巻回された状態で上部プレート24および下部プレート26間に配設されており、これらプレートをそれぞれ内側(各プレートが対向する側)から互いに離間する方向へ付勢している。当該付勢により、コイルスプリング286自体の位置ずれを防止している他、下部プレート26の変位を含む移動間仕切り10の振動を吸収できると共に、変位した下部プレート26を下方へ押し戻すことができる。なお、必ずしもコイルスプリング286をボルト282周囲に巻回して配設する必要はなく、吸音材25中や、その周り等に配設してもよい。しかしながら、コイルスプリング286をボルト282周囲に巻回して配設することで、コイルスプリング286自体の水平方向への移動や脱落防止することができ、係止具28の取付時に同時にコイルスプリング286を取り付けることができるため、その施工も容易となる。なお、コイルスプリング286に限定するものではなく、板バネやゴム材等、コイルスプリングと同様の効果を奏する弾性体を代わりに用いてもよい。
【0022】
これらボルト282と、ナット284と、コイルスプリング286とにより、係止具28は、
図5(a)に示されるように移動間仕切り10に外力が加わっていない安定状態から、
図5(b)に示されるように外力が加わり、下部プレート26が傾いた状態にあっても、頭部282aおよびナット284の当接面282b、284b、特に頭部282aの当接面282bが球面形状であるため、係止具28自体が傾きに応じて傾動することができる。更に、下部プレート26の傾きに応じてコイルスプリング286が圧縮してその応力を吸収すると共に、その復元力により下部プレート26を押し戻すことができる。この下部プレート26を押し戻す際には、当接面282b、284bが球面形状であるため、取付部材22および下部プレート26の挿通孔周縁が球面を滑動する効果も加わり、下部プレート26を元の位置である安定状態に戻すことができる。
【0023】
なお、ボルト282およびナット284の各当接面282b、284bは、取付部材22および下部プレート26の各挿通孔の周縁と線接触するため、接触部分に負荷が加わっている。そのため、係止具28が傾動した場合には、当接面282b、284bは挿通孔の周縁に対して摺動することとなる。また、移動間仕切り10の移動により下部プレート26が上方へ押された場合、コイルスプリング286の復元力により下方へ押し戻されて下部プレート26とナット284とが衝突することとなる。このような場合、本実施の形態に係る取付部材22および下部プレート26は金属部材であるため、これらの接触や衝突により金属音が発生する可能性がある。そのため、
図6(a)に示されるように、ボルト282の頭部282aおよびナット284と当接する挿通孔の周縁、つまり取付部材22の底壁222と下部プレート26とにおける当接面282b、284bと当接する各挿通孔の周縁をテーパ状に加工することが好ましい。また、当接面282b、284bの球面形状に対応してテーパ加工の面を湾曲させて面接触するようにしてもよい。このように加工することで、当接面282b、284bに加わる負荷を分散させて上記接触により生じる金属音を低減させることができる。
【0024】
また、
図6(b)に示されるように、当接面282b、284bに緩衝材282c、284cを設けて、頭部282aおよびナット284の当接面282b、284bと取付部材22および下部プレート26の各挿通孔の周縁との接触自体を防止するようにしてもよい。これにより上記金属音の発生を防止することができる。なお、緩衝材282c、284cは、当接面282b、284bのみならず、挿通孔の周縁に設けてもよく、挿通孔の内壁面やボルト282に設けるようにしてもよい。また、上記テーパ加工と緩衝材282c、284cとを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0025】
次に、
図7〜
図10を用いて、本実施の形態に係る移動間仕切り装置1の機能についてより具体的に説明する。なお、説明上、
図7および
図8における下部プレート26は、その断面が示されている。上述した構成の防振装置20を備えた移動間仕切り装置1によれば、例えば
図7に示されるように、移動間仕切り10が横方向(ランナ104の移動方向に対して水平方向に直交する方向:ここでは図面視右方向)に揺動した場合、下部プレート26は上述したとおり上方へ移動可能に係止されているために、当該揺動に応じて図示右側の下部プレート26の端部が上方に変位することができる。このとき、その応力は、コイルスプリング286に加わり、これに応じてコイルスプリング286が圧縮されることで減衰され、下部プレート26の揺動が吸収されることとなる。これにより、当該揺動が上部プレート24に伝達することはなく、これに起因する振動が上層階に伝達することを軽減することができる。
【0026】
また、
図8に示されるように、移動間仕切り10が横方向に平行移動した場合、下部プレート26は、上述したとおり水平方向へ移動可能に係止されており、また、係止具28のボルト282の頭部282aおよびナット284の各当接面282b、284bが球面形状であるために、当該平行移動に応じて係止具28が傾動すると共に横方向へ変位することができる。このとき、その応力は、コイルスプリング286に加わり、これに応じてコイルスプリング286が横方向へ変位されるために減衰され、下部プレート26の横方向への変位が吸収されることとなる。これにより、当該平行移動が上部プレート24に伝達することはなく、これに起因する振動が上層階に伝達することを軽減することができる。なお、
図7および
図8に示されるように下部プレート26が変位した後は、上述したとおり頭部282aおよびナット284の当接面282b、284bの球面形状とコイルスプリング286の復元力とにより、揺り戻しの機能が働き下部プレート26を元の安定状態の位置に戻すことができる。
【0027】
また、防振装置20は、取付部材22が2つの側壁224,224を有しているため、
図9に示されるように、下地部材50に沿って配置されるレール102がF字状に連結されている場合であっても、各直線部分102aや、継ぎ目部分102b、L字部分102c、T字部分102d等の連結構造に関わらず、下地部材50の側壁に側壁224を当接させることができ、容易に取り付けることができる。これは、
図10に示されるように、下地部材50に沿って配置されるレール102が十字状に連結され、十字部分102eが形成されている部分であっても同様である。また、防振装置20の配置間隔は適宜であるが、パネル106の長手方向の長さより短い間隔で設けることが好ましい。
【0028】
以上に説明したように本実施の形態によれば、移動間仕切り10のランナ104がレール102の内壁に衝突することにより生じる振動を含む、移動間仕切り10の変位の上層階への伝達を軽減することができる。また、防振装置20は、取付部材22、上部プレート24、下部プレート26、および係止具28から構成されユニット化している。そのため、防振装置20は、下地部材50と移動間仕切り10のレール102との間に適切な数配設するのみでよく、その施工が容易であり、下地部材50および移動間仕切り10の連結構造に即して取り付けることができる。また、防振装置20は、取付部材22、上部プレート24、下部プレート26、および係止具28から構成されるため、安価で耐久性が高い。更に、地震などにより躯体の揺れが生じた場合に、下地部材50を介して伝達される移動間仕切り10、特にレール102やランナ104への負荷を軽減できる。
【0029】
なお、本実施の形態においては、ボルト282の頭部282aおよびナット284の双方の当接面282b、284bを球面形状としているが、頭部282aの当接面282bのみを球面形状としてもよい。また、係止具28を用いずに上部プレート24および下部プレート26にコイルスプリングを固定させるのみでもよい。このような場合は、当該コイルスプリングのみに移動間仕切り10の荷重が加わるため、コイルスプリングの復元力の劣化といった弊害が生じるが、防振や施工の容易性向上の効果を実現できる。
【0030】
(応用例)
本実施の形態に係る移動間仕切り装置1に対し、本発明者らの発明によるローラ緩衝材および支軸緩衝材をレール102内に設けることにより、防振および防音の効果をより向上させることができる。
図11には、これらのローラ緩衝材および支軸緩衝材を設けた移動間仕切り装置1’が示されており、具体的には、レール102の内壁におけるランナ104のローラ104aの周面に対向する箇所に凹部が設けられており、この凹部に、ローラ104aが当接した際に、当接による衝撃およびその衝撃音を緩衝する弾性体であるローラ緩衝材62が嵌合されている。一方、レール102のリブにおけるランナ104の支軸104bの周面に対向する箇所に凹部が設けられており、この凹部に、支軸104bが当接した際に、当接による衝撃およびその衝撃音を緩衝する弾性体である支軸緩衝材64が嵌合されている。
【0031】
このような構成の移動間仕切り装置1’によれば、レール102に対するランナ104のローラ104aおよび支軸104bの当接による衝撃や衝撃音がローラ緩衝材62および支軸緩衝材64により緩和できると共に、防振装置20によりその振動および騒音が更に軽減できるため、上層階への振動および騒音の伝達をより確実に軽減することができる。
【0032】
(実施例)
本実施の形態に係る移動間仕切り装置1の防振(耐震)の有効性を図るため、移動間仕切り装置1と、防振装置20を設けずに下地部材50に直接移動間仕切り10を固設した比較対象の移動間仕切り装置とを比較して振動試験を実施した。試験条件として、
図12に示されるように配設した下地部材50に沿ってレール102をF字状に連結した状態とし、これに振動を計測可能な計測器である振動計A〜Dを配置した。具体的には、振動計Aを下地部材50の下面に直接配置し、振動計Bを下地部材50の上方に配設されて下地部材50を支持する2次下地部材の側面に配置した。また、振動計Cを下地部材50を支持するスラブのデッキプレート凸面に配置し、振動計Dを上層階を構成する吊材であるL型アングルの下面に配置した。したがって、少なくとも最も上層階に近い振動計Dの測定結果から導き出される振動の軽減効果が高ければ、移動間仕切り装置1に有効性があるといえる。なお、移動間仕切り装置1としては、
図12に示されるように要所に防振装置20を配設し、比較対象の移動間仕切り装置としては、これら防振装置20を配設せずに下地部材50にレール102を固設した。
【0033】
上記の条件下において、ランナ104と共にパネル106を移動させ、各振動計による加速度計測を5回実施した。この計測結果を
図13に示す。
図13に示される「なし」は防振装置20を備えていない比較対象の移動間仕切り装置での計測結果を示し、「あり」は移動間仕切り装置1の計測結果を示している。これに示されるとおり、振動計A〜Dの測定結果から一様に防振装置20を配設したものに、振動の軽減効果があることがわかる。特に、振動計Dの軽減効果は顕著に現れている。以上のことから、防振装置20を備えることにより移動間仕切り装置1は、極めて高い防振および耐震性能を有していることがわかる。
【0034】
<実施の形態2>
以下、本発明に係る実施の形態2について
図14〜
図21を参照しつつ説明する。本実施の形態に係る移動間仕切り装置は、実施の形態1で説明した移動間仕切り装置1と比較して、防振装置20に代わり、構造が異なる防振装置20’を有するものである。
【0035】
(防振装置20’)
図14および
図15に示されるように、本実施の形態に係る移動間仕切り装置が有する防振装置20’は、図示しない下地部材に着脱自在に取り付け可能な取付部材22’と、取付部材22’の下方に配設された下部プレート26’と、取付部材22’に対して下部プレート26’を離間した位置で支持する係止具28と、を備えて構成される。したがって、上述した実施の形態1における移動間仕切り装置1の防振装置20と比較して、防振装置20’は取付部材22に代わり取付部材22’を、下部プレート26に代わり下部プレート26’をそれぞれ備えている。
【0036】
(取付部材22’)
取付部材22’は、実施の形態1で説明した取付部材22と上部プレート24を一体化したものであり、係止具28のボルト282が挿通可能な図示しない挿通孔が形成された上部プレートとなる矩形の底壁222と、底壁222の1つの辺部から略直角に立設する側壁226aと、側壁226aの上端から対向する取付部材22’の方向へと底壁222に平行に延在する上壁226bとが一体となって構成された所謂クランク状のアングル部材である。上壁226bの末端には、下方に突出する突出片226cが形成されており、これら側壁226a、上壁226b、突出片226cにより、下地部材に係止可能な係止部226が形成されている。具体的には、係止部226は、その側壁226aおよび上壁226bが下地部材と当接することにより下地部材の上部に形成された溝縁に突出片226cが引っ掛かる状態とすることができ、下地部材の一部を覆う形でこれに係止することができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、取付部材22’が1つの係止具28に対応して1つ配設されており、底壁222の裏面に直接係止具28のコイルスプリング286が当接するようにされている。これにより取付部材22’は、係止具28を軸に揺動可能であると共に、揺動した場合であっても、コイルスプリング286の復元力により揺り戻しの機能が働き、元の安定状態の位置(例えば
図14の位置)に戻ることができる。したがって、防振装置20’は防振装置20と同等の防振機能を有することができる。更に、取付部材22’の底壁222は、係止具28のいずれの要素にも移動不能に固着されていないため、
図16に示されるように取付部材22’自体が下部プレート26’に対して相対回転可能となっており、係止部226の向きを可変とすることができる。
【0038】
なお、係止部226の側壁226aには、締結具34のボルトが挿通可能な挿通孔226dが4つ設けられており、側壁226aと下地部材の側壁とが当接し、この挿通孔226dに締結具34が挿入されて締結されることにより、下地部材に対して取付部材22’を移動不能に固定することができる。この挿通孔226dの個数や設けられる位置はこれに限定されるものではなく、図示しない移動間仕切りや、防振装置20’の荷重に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
また、
図17に示されるように、取付部材22’の底壁222に形成された挿通孔の縁部、具体的には係止具28のボルト282およびその頭部282aと当接する部分は、下方に立ち下がってコイルスプリング286の径内に位置するよう、バーリング加工を施すことが好ましい。また、係止具28のボルト282およびその頭部282aと直接当接する面をテーパ状または曲面とすることがより好ましい。このような加工が施されることにより、ボルト282の追従性を高めることができると共に、コイルスプリング286の位置ずれ等を含む暴れを防止することができる。
【0040】
このバーリング加工については、下部プレート26’における、取付部材22’の底壁222の挿通孔に対向する図示しない挿通孔にも施すことが好ましい。なお、下部プレート26’は、当該挿通孔にバーリング加工が施されている以外、実施の形態1にて説明した下部プレート26と同様の構成であるため、その詳細は省略する。
【0041】
防振装置20’を下地部材に取り付ける手法を
図18および
図19を用いて説明する。先ず、防振装置20’を下地部材50に近接させた後、
図18に示されるように下地部材50を挟んで左右に位置する2つの取付部材22’のいずれか一方を互いが離間する方向に揺動させ、その係止部226を下地部材50における溝縁の一方側に引っ掛ける。次いで、他方の取付部材22’を同様に揺動させて当該溝縁の他方側に引っ掛けることにより、簡便に防振装置20’を下地部材50に対して係止させることができる。この時、係止部226の各々は、下地部材50の側壁面と上壁面とに夫々当接すると共に、各上壁の縁に突出片226cが夫々引っ掛かり、下地部材50に対して強固に係止するため、防振装置20’が簡単に脱落することはない。下地部材50に対し防振装置20’を係止した後、
図19に示されるように、取付部材22’の各挿通孔226dに締結具34を挿入して締結することにより、下地部材50に対し取付部材22’を介して防振装置20’を移動不能に固定することができる。
【0042】
以上に説明した本実施の形態によれば、取付部材22’に係止部226を設けたことにより、防振機能を有すると共に下地部材50に対して防振装置20’を簡便に係止させることができる。これにより、締結具34による下地部材50と取付部材22’との締結を容易に行うことができるため、防振装置20’を取り付ける際の施工性を格段に向上させることができる。
【0043】
また、取付部材22’は上述したように下部プレート26’に対して相対回転可能に設けられている。そのため、
図20に示されるように直線状の下地部材50に対して係止部226が係止可能であることはもとより、
図21に示されるような下地部材50がT字状に組まれた場合であっても、取付部材22’を回転させて係止部226の向きを変えることにより適宜にその結合部分に係止部226を係止させることができる。この係止部226の方向転換は、結合部分の一方の下地部材50に吊り筋40(
図18,
図19参照)が設けられている等、構造物により係止部226の係止が阻害される場合に特に効果があり、吊り筋40に干渉しない他方の下地部材50に係止部226が向くよう取付部材22’を回転させるのみでよいため、極めて高い汎用性を実現している。これは、結合部分がT字以外の形状、例えば十字等であったとしても同様であることは言うまでもない。
【0044】
なお、本実施の形態においては、取付部材22’はクランク状に形成されているがこれに限定されるものではない。取付部材22’の側壁226aを底壁222の逆側の辺に設けて上壁226bをより増長させ略コの字状に形成し、係止部226が下地部材50の側面に当接せずに上面にのみ当接するようにしてもよい。この場合、挿通孔226dは上壁226bに形成する等すればよい。また、取付部材22’には突出片226cが設けられているが、これを廃して取付部材22’の上壁226bと下地部材50の上面との当接のみで係止部226が係止するようにしてもよい。この場合は、一時的な係止となるが、上壁226bに挿通孔226dを設ければ締結具34により締結することは可能である。
【0045】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【0046】
なお、特許請求の範囲に記載の移動間仕切り装置は、例えば前述の実施の形態における移動間仕切り装置1,1’に対応し、防振装置は例えば防振装置20,20’に対応する。上方プレートは、例えば取付部材22および上部プレート24、または取付部材22’に対応し、下方プレートは例えば下部プレート26,26’に対応する。弾性体は例えばコイルスプリング286に対応し、支持具は、例えば係止具28に対応する。固定部材は、例えば下地部材50に対応し、係止部は例えば係止部226に対応する。