(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1.折畳式車両の概要]
以下、本発明に係る折畳式車両について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の折畳式車両は、フレームを折り畳むことが可能な電動三輪車である。尚、以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれていることがあり、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。また、ブレーキ関係や電気配線関係等は、省略されて描かれている。
【0021】
図1及び
図2に表すように、本実施形態の折畳式車両1は、フロントフレーム3、ベースフレーム5、サドルフレーム7、及び一対のリアフレーム9を備えている。フロントフレーム3の上端部には、ハンドル11がハンドルステム13を介して水平に取り付けられている。フロントフレーム3の下端部には、前輪15がフロントフォーク17を介して回動可能に支持されている。フロントフレーム3の後端部には、ベースフレーム5が第1回動軸19を介して回動可能に支持されている。
【0022】
ベースフレーム5の後端部には、サドルフレーム7及び一対のリアフレーム9が第2回動軸21を介して回動可能に支持されている。これにより、サドルフレーム7は、第2回動軸21を介して、ベースフレーム5及び一対のリアフレーム9に対して回動可能に支持されている。さらに、一対のリアフレーム9は、第2回動軸21を介して、ベースフレーム5及びサドルフレーム7に対して回動可能に支持されている。
【0023】
一対のリアフレーム9は、連結アーム23によって一体化されている。
【0024】
尚、サドルフレーム7の上端部には、サドル25(
図2参照)が取り付けられている。一対のリアフレーム9の後端部には、後輪27(
図2参照)がそれぞれ回動可能に支持されている。
【0025】
サドルフレーム7の上端部には、サドル25(
図2参照)の下側近傍に操作レバー29が設けられている。サドルフレーム7の下端部には、操作レバー29により固定・解除される第1ロック機構31が設けられている。尚、第1ロック機構31については、後述する。
【0026】
サドルフレーム7の下端部には、前方向に対する左右の両側において、原動側カム33がそれぞれ形成されている。ベースフレーム5の後端部には、前方向に対する左右の両側において、従動側カム35が回動可能に支持されている。原動側カム33と従動側カム35によって、カム機構37が構成されている。尚、カム機構37については、後述する。
【0027】
フロントフレーム3の後端部には、前方向に対する左右の両側において、第2ロック機構39がそれぞれ形成されている。第2ロック機構39は、リンク機構41によって、従動側カム35に連結される。リンク機構41は、第2ロック機構39を固定・解除する。尚、第2ロック機構39及びリンク機構41については、後述する。
【0028】
本実施形態の折畳式車両1は、
図2に表すように、サドル25をハンドル11に向けて
図2視上反時計回り(矢印A1の左回り)に回動させると共に、後輪27を前輪15に向けて
図2視上左方向(矢印A2の左方向)に路面S上を移動させることにより、展開状態から折畳状態に切り替えられる。
【0029】
尚、フロントフレーム3の後端部と一対のリアフレーム9の前端部は、第1リンク部43によって連結されている。第1リンク部43は、展開状態から折畳状態に切り替えられる際に、フロントフレーム3の後端部と一対のリアフレーム9の前端部の相対的位置関係によって動作する。
【0030】
[2.展開状態と折畳状態の切り替え時の動作]
本実施形態の折畳式車両1では、展開状態から折畳状態に切り替えられる際に、
図3乃至
図5に表すように、操作レバー29、第1ロック機構31、カム機構37、第2ロック機構39、及びリンク機構41等が動作する。
【0031】
図3に表すように、操作レバー29は、屈曲状のリンク部を形成しており、第1軸支部45を介して、サドルフレーム7の上端部に回動可能に支持されている。一方、サドルフレーム7の下端部には、第2軸支部47を介して、第1屈曲状リンク部49が回動可能に支持されている。操作レバー29と第1屈曲状リンク部49は、第1ジョイント部51及び第2ジョイント部53を介して、第2リンク部55の両端にそれぞれ連結されている。
【0032】
従って、操作レバー29を
図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第2リンク部55がサドルフレーム7の下方向(矢印B2の左下方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が
図3視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動する。
【0033】
図4に表すように、第1屈曲状リンク部49の下端部には、第3ジョイント部57を介して、第3リンク部59の後端部が連結されている。第3リンク部59の前端部には、第1ローラー61が設けられている。第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63に嵌め込まれている。屈曲状ガイド溝63は、サドルフレーム7の下端部に設けられている。第3リンク部59、第1ローラー61、及び屈曲状ガイド溝63によって、第1ロック機構31が構成されている。
【0034】
屈曲状ガイド溝63の両端部には、ノッチ部が形成されている。屈曲状ガイド溝63の一端部(
図4視で下方側)に形成されたノッチ部は、展開状態時に第1ローラー61が位置する。屈曲状ガイド溝63の他端部(
図4視で上方側)に形成されたノッチ部は、折畳状態時に第1ローラー61が位置する。
【0035】
そして、第1屈曲状リンク部49が
図3視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動すると、第3リンク部59が
図4視上右上方向(矢印Cの右上方向)に移動し、第1ローラー61が屈曲状ガイド溝63の中央部に移動する。
【0036】
従って、展開状態時に操作レバー29を
図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の一端部(
図4視で下方側のノッチ部)から中央部に移動する。これにより、第1ロック機構31は解除される。
【0037】
ちなみに、折畳状態時に操作レバー29を
図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の他端部(
図4視で上方側のノッチ部)から中央部に移動する。これにより、第1ロック機構31は解除される。
【0038】
第1ロック機構31が解除されると、サドルフレーム7を
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させることができる。サドルフレーム7が
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動すると、原動側カム33が第2回動軸21を中心にして
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動する。
【0039】
原動側カム33には、従動側カム35に対向する側面に切欠部65が設けられ、切欠部65の下方に第1円弧状ガイド溝67が設けられている。第1円弧状ガイド溝67には、第2ローラー69が嵌め込まれている。第2ローラー69は、第1リンク部43の後端部に設けられている。
【0040】
原動側カム33が
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動すると、切欠部65の上方段差部が従動側カム35に突き当たり、従動側カム35が
図3及び
図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動する。
【0041】
従動側カム35には、第4リンク部71の後端部が第4ジョイント部73を介して回動可能に支持されている。従って、従動側カム35が
図3及び
図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動すると、第4リンク部71が
図3及び
図4視上前方向(矢印G1の左方向)に移動する。
【0042】
図5に表すように、第4リンク部71の前端部には、第2屈曲状リンク部75の下端部が第5ジョイント部77を介して回動可能に支持されている。第2屈曲状リンク部75は、ベースフレーム5に第3軸支部79を介して回動可能に支持されている。第4リンク部71及び第2屈曲状リンク部75によって、リンク機構41が構成されている。
【0043】
従って、第4リンク部71が
図3乃至
図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第2屈曲状リンク部75が
図3及び
図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動する。
【0044】
第2屈曲状リンク部75の上端部には、第5リンク部81の後端部が第6ジョイント部83を介して回動可能に支持されている。第5リンク部81の上端部には、第3ローラー85が設けられている。第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87に嵌め込まれている。第2円弧状ガイド溝87は、フロントフレーム3の下端部に設けられている。第5リンク部81、第3ローラー85、及び第2円弧状ガイド溝87によって、第2ロック機構39が構成されている。
【0045】
第2円弧状ガイド溝87の両端部には、ノッチ部87A,87Bが形成されている。第2円弧状ガイド溝87の下端部に形成されたノッチ部87Aは、展開状態時に第3ローラー85が位置する。第2円弧状ガイド溝87の上端部に形成されたノッチ部87Bは、折畳状態時に第3ローラー85が位置する。
【0046】
そして、第2屈曲状リンク部75が
図3及び
図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動すると、第5リンク部81が
図3及び
図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動し、第3ローラー85が第2円弧状ガイド溝87の
図3及び
図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動する。
【0047】
従って、展開状態時に第4リンク部71が
図3乃至
図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Aから抜け出る。これにより、第2ロック機構39は解除される。
【0048】
ちなみに、折畳状態時に第4リンク部71が
図3乃至
図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Bから抜け出る。これにより、第2ロック機構39は解除される。
【0049】
尚、フロントフレーム3の下端部には、第2円弧状ガイド溝87の下方に第3円弧状ガイド溝89が設けられている。第3円弧状ガイド溝89には、第4ローラー91が嵌め込まれている。第4ローラー91は、第1リンク部43の前端部に設けられている。
【0050】
つまり、本実施形態の折畳式車両1において、展開状態から折畳状態に切り替える際は、操作レバー29を
図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させる。すると、第2リンク部55がサドルフレーム7の下方向(矢印B2の左下方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が
図3及び
図4視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動し、第3リンク部59が
図3及び
図4視上右上方向(矢印Cの右上方向)に移動する。これにより、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の一端部(
図4視で下方側のノッチ部)から中央部に移動するので、第1ロック機構31は解除される。
【0051】
第1ロック機構31が解除されると、サドルフレーム7を
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させることができる。そこで、サドルフレーム7を
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させると、原動側カム33が
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動し、従動側カム35が
図3及び
図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動し、第4リンク部71が
図3及び
図4視上前方向(矢印G1の左方向)に移動する。
【0052】
さらに、第2屈曲状リンク部75が
図3及び
図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動し、第5リンク部81が
図3及び
図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動する。これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Aから抜け出るので、第2ロック機構39は解除される。
【0053】
第2ロック機構39が解除された後、サドル25をハンドル11に向けて
図2視上反時計回り(矢印A1の左回り)に回動させる共に、後輪27を前輪15に向けて
図2視上左方向(矢印A2の左方向)に路面S上を移動させる。すると、リアフレーム9が
図3視上時計回り(矢印Iの右回り)に回動すると共にベースフレーム5が
図3及び
図5視上反時計回り(矢印Jの左回り)に回動するので、第2ローラー69が第1円弧状ガイド溝67の上端部に向かって移動する共に、第4ローラー91が第3円弧状ガイド溝89の下端部に向かって移動する。
【0054】
これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87に沿ってノッチ部87B側に向かって移動する。
【0055】
同時に、第2ローラー69が第1円弧状ガイド溝67の上端部に向かって移動して、原動側カム33が
図3及び
図4視上時計回り(矢印Eの右回り)に回動するので、切欠部65の下方段差部が従動側カム35に突き当たり、従動側カム35が
図3及び
図4視上反時計回り(矢印Fの左回り)に回動する。
【0056】
さらに、第4リンク部71が
図3及び
図4視上後方向(矢印G1の右方向)に移動するので、第2屈曲状リンク部75が
図3及び
図5視上反時計回り(矢印G2の左回り)に回動し、第5リンク部81が
図3及び
図5視上左下方向(矢印Hの左下方向)に移動する。これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Bに位置するので、第2ロック機構39が固定される。
【0057】
その後、操作レバー29を
図3視上時計回り(矢印B1の右回り)に回動させる。すると、第2リンク部55がサドルフレーム7の上方向(矢印B2の右上方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が
図3及び
図4視上時計回り(矢印B3の右回り)に回動し、第3リンク部59が
図3及び
図4視上左下方向(矢印Cの左下方向)に移動する。このとき、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の中央部から他端部(
図4視で上方側のノッチ部)に移動するので、第1ロック機構31が固定される。
【0058】
このようにして、本実施形態の折畳式車両1は、展開状態から折畳状態に移行し、折畳状態が固定される。
【0059】
一方、本実施形態の折畳式車両1において、折畳状態から展開状態に切り替える際は、操作レバー29を
図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させた後で、サドル25をハンドル11から遠ざけて
図2視上時計回り(矢印A1の右回り)に回動させると共に、後輪27を前輪15から遠ざけて
図2視上右方向(矢印A2の右方向)に路面S上を移動させる。このとき、上述した動作とは反対の動作が行われる。
【0060】
[3.まとめ]
すなわち、本実施形態の折畳式車両1では、展開状態と折畳状態との切り替えが可能な新たな構造を、第1ロック機構31、カム機構37、リンク機構41、及び第2ロック機構39で構成している。その構成では、第1ロック機構31の解除が切り替え時に行われると、カム機構37が回動可能となり、その回動方向に従ってリンク機構41が前後方向の往復動し、その前後方向に従って第2ロック機構39が解除又は固定される。
【0061】
従って、本実施形態の折畳式車両1で構成される、展開状態と折畳状態との切り替えを行う新たな構造は、第1ロック機構31と第2ロック機構39を有しており、第1ロック機構31に対する解除後にカム機構37を介して動作可能となるリンク機構41に連動させながら第2ロック機構39が解除・固定される構造である。
【0062】
また、このような構造では、例えば、切り替え時に第1ロック機構31の解除を行わせるための入力動作が、展開状態や折畳状態において高い位置にある操作レバー29で実行されており、使い勝手をより向上させることが可能である。
【0063】
また、本実施形態の折畳式車両1では、上端部にサドル25が取り付けられると共に下端部に第1ロック機構31が設けられるサドルフレーム7と、サドルフレーム7の上端部に設けられ、第1ロック機構31の解除操作を行うための操作レバー29とを備える。これにより、操作レバー29がサドル25付近に設けられているので、第1ロック機構31の解除操作を楽な姿勢で行うことができる。
【0064】
さらに、本実施形態の折畳式車両1では、操作レバー29と第1ロック機構31がサドルフレーム7の両端にあって離れており、操作レバー29の操作が第1ロック機構31の作動域とは隔たる位置で行われるので、操作レバー29の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0065】
また、本実施形態の折畳式車両1では、カム機構37を原動側カム33と従動側カム35で構成し、カム機構37の原動側カム33がサドルフレーム7の下端部に設けられ、カム機構37の従動側カム35がベースフレーム5の後端部に設けられると共にリンク機構41の一端部に連結され、第2ロック機構39は、リンク機構41の他端部に連結されると共にフロントフレーム3に設けられる。これにより、操作レバー29の操作が、カム機構37、リンク機構41、及び第2ロック機構39の各作動域とは隔たる位置で行われるので、操作レバー29の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0066】
ちなみに、本実施形態において、操作レバー29は「操作部」の一例である。
【0067】
[4.その他]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態の折畳式車両1では、折畳状態が保持されているとき又はハンドル11がロックされているときにグリップを出現させてもよい。出現したグリップは、折畳状態の収納搬送するときに便利な部品として役立つ。