特許第6514096号(P6514096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514096
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】折畳式車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 15/00 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   B62K15/00
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-240211(P2015-240211)
(22)【出願日】2015年12月9日
(65)【公開番号】特開2017-105303(P2017-105303A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】加納 光寿
【審査官】 杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−291488(JP,A)
【文献】 特開2013−43469(JP,A)
【文献】 特開2006−327237(JP,A)
【文献】 特開2012−166706(JP,A)
【文献】 特開平7−196062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行のための展開状態と収納搬送のための折畳状態との切り替えが可能な折畳式車両であって、
前記切り替え時に解除が行われる第1ロック機構と、
前記第1ロック機構の解除により回動可能となるカム機構と、
前記カム機構の回動方向に従って往復動するリンク機構と、
前記リンク機構の往復動方向に従って解除又は固定される第2ロック機構と、
上端部にサドルが取り付けられると共に下端部に前記第1ロック機構が設けられるサドルフレームと、
前記サドルフレームの上端部に設けられ、前記第1ロック機構の解除操作を行うための操作部とを備えることを特徴とする折畳式車両。
【請求項2】
上端部にハンドルが取り付けられると共に下端部に前輪が取り付けられるフロントフレームと、
前端部が前記フロントフレームに軸支され、前記フロントフレームに対して回動可能とされると共に、後端部が前記サドルフレームに軸支され、前記サドルフレームに対して回動可能とされるベースフレームと、
後端部に後輪が取り付けられており、前端部が前記ベースフレームに軸支され、前記ベースフレームに対して回動可能とされるリアフレームとを備え、
前記カム機構を原動側カムと従動側カムで構成し、
前記カム機構の前記原動側カムが前記サドルフレームの下端部に設けられ、
前記カム機構の前記従動側カムが前記ベースフレームの後端部に設けられると共に前記リンク機構の一端部に連結され、
前記第2ロック機構は、前記リンク機構の他端部に連結されると共に前記フロントフレームに設けられることを特徴とする請求項に記載の折畳式車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行のための展開状態と収納搬送のための折畳状態との切り替えが可能な折畳式車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、展開状態と折畳状態との切り替えが可能な車両に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載された、折り畳み自転車におけるロック装置では、フロントフレームの後端とメインフレームの前端とに各カム軸をフロントフレーム及びメインフレームとセンタフレームとを結合している各ヒンジピンと平行な軸線回りに回転可能に軸承している。この各カム軸にはそれぞれ各カムが固設されている。
【0003】
自転車を折り畳むために各ヒンジピン部のロックを解除するには、トグル機構のトグルレバーとトグルリンクのデットポイントを超えた伸張状態からデットポイントが逆側に超えた反転状態に引き動かす。このとき、各カム軸を回転し、各カムは前方ロッドを後退方向に、また、後方ロッドは前進方向に移動可能な状態とし、前方フックはスプリングで、後方フックはスプリングでそれぞれ上方に回転し、ヘッドフレームとフロントフレームとの間と、メインフレームとリヤフォークとの間の各ロックを解除する。
【0004】
これにより、下記特許文献1に記載のロック装置では、1箇所のトグル機構を操作するワンタッチにより多数個所のロック及びロック解除が得られ、使い勝手が向上すると共に、折り畳み、展開が短時間で迅速に行うことができる利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−291488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにして行われる折り畳みと展開との切り替え構造では、トグル機構が折り畳み自転車の低位置にあることから、トグル機構の操作を、中腰など、身体への負担が大きい姿勢で行わなければならない。従って、使い勝手をより向上させる新たな構造の技術開発が絶えず望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、展開状態と折畳状態との切り替えを行う新たな構造であって、2つのロック機構を有し、ロック機構の一方に対する解除後に動作可能となるリンク機構に連動させながらロック機構の他方が解除・固定される構造により、使い勝手をより向上させることが可能な折畳式車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
この課題を解決するためになされた請求項に係る発明は、走行のための展開状態と収納搬送のための折畳状態との切り替えが可能な折畳式車両であって、切り替え時に解除が行われる第1ロック機構と、第1ロック機構の解除により回動可能となるカム機構と、カム機構の回動方向に従って往復動するリンク機構と、リンク機構の往復動方向に従って解除又は固定される第2ロック機構と、上端部にサドルが取り付けられると共に下端部に第1ロック機構が設けられるサドルフレームと、サドルフレームの上端部に設けられ、第1ロック機構の解除操作を行うための操作部とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項に記載の折畳式車両であって、上端部にハンドルが取り付けられると共に下端部に前輪が取り付けられるフロントフレームと、前端部がフロントフレームに軸支され、フロントフレームに対して回動可能とされると共に、後端部がサドルフレームに軸支され、サドルフレームに対して回動可能とされるベースフレームと、後端部に後輪が取り付けられており、前端部がベースフレームに軸支され、ベースフレームに対して回動可能とされるリアフレームとを備え、カム機構を原動側カムと従動側カムで構成し、カム機構の原動側カムがサドルフレームの下端部に設けられ、カム機構の従動側カムがベースフレームの後端部に設けられると共にリンク機構の一端部に連結され、第2ロック機構は、リンク機構の他端部に連結されると共にフロントフレームに設けられることを特徴とする。
【0011】
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の折畳式車両では、展開状態と折畳状態との切り替えが可能な新たな構造を、第1ロック機構、カム機構、リンク機構、及び第2ロック機構で構成している。その構成では、第1ロック機構の解除が切り替え時に行われると、カム機構が回動可能となり、その回動方向に従ってリンク機構が往復動し、その往復動方向に従って第2ロック機構が解除又は固定される。
【0013】
従って、請求項1に係る発明の折畳式車両で構成される、展開状態と折畳状態との切り替えを行う新たな構造は、第1ロック機構と第2ロック機構を有しており、第1ロック機構に対する解除後にカム機構を介して動作可能となるリンク機構に連動させながら第2ロック機構が解除・固定される構造である。
【0014】
また、このような構造では、例えば、切り替え時に第1ロック機構の解除を行わせるための入力動作が、展開状態や折畳状態において高い位置で実行されるようにすれば、使い勝手をより向上させることが可能である。
【0015】
請求項に係る発明の折畳式車両では、上端部にサドルが取り付けられると共に下端部に第1ロック機構が設けられるサドルフレームと、サドルフレームの上端部に設けられ、第1ロック機構の解除操作を行うための操作部とを備える。これにより、操作部がサドル付近に設けられるので、第1ロック機構の解除操作を楽な姿勢で行うことができる。
【0016】
さらに、請求項に係る発明の折畳式車両では、操作部と第1ロック機構がサドルフレームの両端にあって離れており、操作部の操作が第1ロック機構の作動域とは隔たる位置で行われるので、操作部の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0017】
請求項に係る発明の折畳式車両では、カム機構を原動側カムと従動側カムで構成し、カム機構の原動側カムがサドルフレームの下端部に設けられ、カム機構の従動側カムがベースフレームの後端部に設けられると共にリンク機構の一端部に連結され、第2ロック機構は、リンク機構の他端部に連結されると共にフロントフレームに設けられる。これにより、操作部の操作が、カム機構、リンク機構、及び第2ロック機構の各作動域とは隔たる位置で行われるので、操作部の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の折畳式車両の基本的構成を表した斜視図である。
図2】同折畳式車両の展開状態と折畳状態を表した側面図である。
図3】同折畳式車両の第1回動軸及び第2回動軸の周囲を表した側面図である。
図4】同折畳式車両の第1回動軸の周囲を表した側面図である。
図5】同折畳式車両の第2回動軸の周囲を表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1.折畳式車両の概要]
以下、本発明に係る折畳式車両について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の折畳式車両は、フレームを折り畳むことが可能な電動三輪車である。尚、以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれていることがあり、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。また、ブレーキ関係や電気配線関係等は、省略されて描かれている。
【0021】
図1及び図2に表すように、本実施形態の折畳式車両1は、フロントフレーム3、ベースフレーム5、サドルフレーム7、及び一対のリアフレーム9を備えている。フロントフレーム3の上端部には、ハンドル11がハンドルステム13を介して水平に取り付けられている。フロントフレーム3の下端部には、前輪15がフロントフォーク17を介して回動可能に支持されている。フロントフレーム3の後端部には、ベースフレーム5が第1回動軸19を介して回動可能に支持されている。
【0022】
ベースフレーム5の後端部には、サドルフレーム7及び一対のリアフレーム9が第2回動軸21を介して回動可能に支持されている。これにより、サドルフレーム7は、第2回動軸21を介して、ベースフレーム5及び一対のリアフレーム9に対して回動可能に支持されている。さらに、一対のリアフレーム9は、第2回動軸21を介して、ベースフレーム5及びサドルフレーム7に対して回動可能に支持されている。
【0023】
一対のリアフレーム9は、連結アーム23によって一体化されている。
【0024】
尚、サドルフレーム7の上端部には、サドル25(図2参照)が取り付けられている。一対のリアフレーム9の後端部には、後輪27(図2参照)がそれぞれ回動可能に支持されている。
【0025】
サドルフレーム7の上端部には、サドル25(図2参照)の下側近傍に操作レバー29が設けられている。サドルフレーム7の下端部には、操作レバー29により固定・解除される第1ロック機構31が設けられている。尚、第1ロック機構31については、後述する。
【0026】
サドルフレーム7の下端部には、前方向に対する左右の両側において、原動側カム33がそれぞれ形成されている。ベースフレーム5の後端部には、前方向に対する左右の両側において、従動側カム35が回動可能に支持されている。原動側カム33と従動側カム35によって、カム機構37が構成されている。尚、カム機構37については、後述する。
【0027】
フロントフレーム3の後端部には、前方向に対する左右の両側において、第2ロック機構39がそれぞれ形成されている。第2ロック機構39は、リンク機構41によって、従動側カム35に連結される。リンク機構41は、第2ロック機構39を固定・解除する。尚、第2ロック機構39及びリンク機構41については、後述する。
【0028】
本実施形態の折畳式車両1は、図2に表すように、サドル25をハンドル11に向けて図2視上反時計回り(矢印A1の左回り)に回動させると共に、後輪27を前輪15に向けて図2視上左方向(矢印A2の左方向)に路面S上を移動させることにより、展開状態から折畳状態に切り替えられる。
【0029】
尚、フロントフレーム3の後端部と一対のリアフレーム9の前端部は、第1リンク部43によって連結されている。第1リンク部43は、展開状態から折畳状態に切り替えられる際に、フロントフレーム3の後端部と一対のリアフレーム9の前端部の相対的位置関係によって動作する。
【0030】
[2.展開状態と折畳状態の切り替え時の動作]
本実施形態の折畳式車両1では、展開状態から折畳状態に切り替えられる際に、図3乃至図5に表すように、操作レバー29、第1ロック機構31、カム機構37、第2ロック機構39、及びリンク機構41等が動作する。
【0031】
図3に表すように、操作レバー29は、屈曲状のリンク部を形成しており、第1軸支部45を介して、サドルフレーム7の上端部に回動可能に支持されている。一方、サドルフレーム7の下端部には、第2軸支部47を介して、第1屈曲状リンク部49が回動可能に支持されている。操作レバー29と第1屈曲状リンク部49は、第1ジョイント部51及び第2ジョイント部53を介して、第2リンク部55の両端にそれぞれ連結されている。
【0032】
従って、操作レバー29を図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第2リンク部55がサドルフレーム7の下方向(矢印B2の左下方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が図3視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動する。
【0033】
図4に表すように、第1屈曲状リンク部49の下端部には、第3ジョイント部57を介して、第3リンク部59の後端部が連結されている。第3リンク部59の前端部には、第1ローラー61が設けられている。第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63に嵌め込まれている。屈曲状ガイド溝63は、サドルフレーム7の下端部に設けられている。第3リンク部59、第1ローラー61、及び屈曲状ガイド溝63によって、第1ロック機構31が構成されている。
【0034】
屈曲状ガイド溝63の両端部には、ノッチ部が形成されている。屈曲状ガイド溝63の一端部(図4視で下方側)に形成されたノッチ部は、展開状態時に第1ローラー61が位置する。屈曲状ガイド溝63の他端部(図4視で上方側)に形成されたノッチ部は、折畳状態時に第1ローラー61が位置する。
【0035】
そして、第1屈曲状リンク部49が図3視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動すると、第3リンク部59が図4視上右上方向(矢印Cの右上方向)に移動し、第1ローラー61が屈曲状ガイド溝63の中央部に移動する。
【0036】
従って、展開状態時に操作レバー29を図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の一端部(図4視で下方側のノッチ部)から中央部に移動する。これにより、第1ロック機構31は解除される。
【0037】
ちなみに、折畳状態時に操作レバー29を図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させると、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の他端部(図4視で上方側のノッチ部)から中央部に移動する。これにより、第1ロック機構31は解除される。
【0038】
第1ロック機構31が解除されると、サドルフレーム7を図3及び図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させることができる。サドルフレーム7が図3及び図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動すると、原動側カム33が第2回動軸21を中心にして図3及び図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動する。
【0039】
原動側カム33には、従動側カム35に対向する側面に切欠部65が設けられ、切欠部65の下方に第1円弧状ガイド溝67が設けられている。第1円弧状ガイド溝67には、第2ローラー69が嵌め込まれている。第2ローラー69は、第1リンク部43の後端部に設けられている。
【0040】
原動側カム33が図3及び図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動すると、切欠部65の上方段差部が従動側カム35に突き当たり、従動側カム35が図3及び図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動する。
【0041】
従動側カム35には、第4リンク部71の後端部が第4ジョイント部73を介して回動可能に支持されている。従って、従動側カム35が図3及び図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動すると、第4リンク部71が図3及び図4視上前方向(矢印G1の左方向)に移動する。
【0042】
図5に表すように、第4リンク部71の前端部には、第2屈曲状リンク部75の下端部が第5ジョイント部77を介して回動可能に支持されている。第2屈曲状リンク部75は、ベースフレーム5に第3軸支部79を介して回動可能に支持されている。第4リンク部71及び第2屈曲状リンク部75によって、リンク機構41が構成されている。
【0043】
従って、第4リンク部71が図3乃至図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第2屈曲状リンク部75が図3及び図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動する。
【0044】
第2屈曲状リンク部75の上端部には、第5リンク部81の後端部が第6ジョイント部83を介して回動可能に支持されている。第5リンク部81の上端部には、第3ローラー85が設けられている。第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87に嵌め込まれている。第2円弧状ガイド溝87は、フロントフレーム3の下端部に設けられている。第5リンク部81、第3ローラー85、及び第2円弧状ガイド溝87によって、第2ロック機構39が構成されている。
【0045】
第2円弧状ガイド溝87の両端部には、ノッチ部87A,87Bが形成されている。第2円弧状ガイド溝87の下端部に形成されたノッチ部87Aは、展開状態時に第3ローラー85が位置する。第2円弧状ガイド溝87の上端部に形成されたノッチ部87Bは、折畳状態時に第3ローラー85が位置する。
【0046】
そして、第2屈曲状リンク部75が図3及び図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動すると、第5リンク部81が図3及び図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動し、第3ローラー85が第2円弧状ガイド溝87の図3及び図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動する。
【0047】
従って、展開状態時に第4リンク部71が図3乃至図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Aから抜け出る。これにより、第2ロック機構39は解除される。
【0048】
ちなみに、折畳状態時に第4リンク部71が図3乃至図5視上前方向(矢印G1の左方向)に移動すると、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Bから抜け出る。これにより、第2ロック機構39は解除される。
【0049】
尚、フロントフレーム3の下端部には、第2円弧状ガイド溝87の下方に第3円弧状ガイド溝89が設けられている。第3円弧状ガイド溝89には、第4ローラー91が嵌め込まれている。第4ローラー91は、第1リンク部43の前端部に設けられている。
【0050】
つまり、本実施形態の折畳式車両1において、展開状態から折畳状態に切り替える際は、操作レバー29を図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させる。すると、第2リンク部55がサドルフレーム7の下方向(矢印B2の左下方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が図3及び図4視上反時計回り(矢印B3の左回り)に回動し、第3リンク部59が図3及び図4視上右上方向(矢印Cの右上方向)に移動する。これにより、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の一端部(図4視で下方側のノッチ部)から中央部に移動するので、第1ロック機構31は解除される。
【0051】
第1ロック機構31が解除されると、サドルフレーム7を図3及び図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させることができる。そこで、サドルフレーム7を図3及び図4視上反時計回り(矢印Dの左回り)に回動させると、原動側カム33が図3及び図4視上反時計回り(矢印Eの左回り)に回動し、従動側カム35が図3及び図4視上時計回り(矢印Fの右回り)に回動し、第4リンク部71が図3及び図4視上前方向(矢印G1の左方向)に移動する。
【0052】
さらに、第2屈曲状リンク部75が図3及び図5視上時計回り(矢印G2の右回り)に回動し、第5リンク部81が図3及び図5視上右上方向(矢印Hの右上方向)に移動する。これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Aから抜け出るので、第2ロック機構39は解除される。
【0053】
第2ロック機構39が解除された後、サドル25をハンドル11に向けて図2視上反時計回り(矢印A1の左回り)に回動させる共に、後輪27を前輪15に向けて図2視上左方向(矢印A2の左方向)に路面S上を移動させる。すると、リアフレーム9が図3視上時計回り(矢印Iの右回り)に回動すると共にベースフレーム5が図3及び図5視上反時計回り(矢印Jの左回り)に回動するので、第2ローラー69が第1円弧状ガイド溝67の上端部に向かって移動する共に、第4ローラー91が第3円弧状ガイド溝89の下端部に向かって移動する。
【0054】
これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87に沿ってノッチ部87B側に向かって移動する。
【0055】
同時に、第2ローラー69が第1円弧状ガイド溝67の上端部に向かって移動して、原動側カム33が図3及び図4視上時計回り(矢印Eの右回り)に回動するので、切欠部65の下方段差部が従動側カム35に突き当たり、従動側カム35が図3及び図4視上反時計回り(矢印Fの左回り)に回動する。
【0056】
さらに、第4リンク部71が図3及び図4視上後方向(矢印G1の右方向)に移動するので、第2屈曲状リンク部75が図3及び図5視上反時計回り(矢印G2の左回り)に回動し、第5リンク部81が図3及び図5視上左下方向(矢印Hの左下方向)に移動する。これにより、第3ローラー85は、第2円弧状ガイド溝87のノッチ部87Bに位置するので、第2ロック機構39が固定される。
【0057】
その後、操作レバー29を図3視上時計回り(矢印B1の右回り)に回動させる。すると、第2リンク部55がサドルフレーム7の上方向(矢印B2の右上方向)に移動し、第1屈曲状リンク部49が図3及び図4視上時計回り(矢印B3の右回り)に回動し、第3リンク部59が図3及び図4視上左下方向(矢印Cの左下方向)に移動する。このとき、第1ローラー61は、屈曲状ガイド溝63の中央部から他端部(図4視で上方側のノッチ部)に移動するので、第1ロック機構31が固定される。
【0058】
このようにして、本実施形態の折畳式車両1は、展開状態から折畳状態に移行し、折畳状態が固定される。
【0059】
一方、本実施形態の折畳式車両1において、折畳状態から展開状態に切り替える際は、操作レバー29を図3視上反時計回り(矢印B1の左回り)に回動させた後で、サドル25をハンドル11から遠ざけて図2視上時計回り(矢印A1の右回り)に回動させると共に、後輪27を前輪15から遠ざけて図2視上右方向(矢印A2の右方向)に路面S上を移動させる。このとき、上述した動作とは反対の動作が行われる。
【0060】
[3.まとめ]
すなわち、本実施形態の折畳式車両1では、展開状態と折畳状態との切り替えが可能な新たな構造を、第1ロック機構31、カム機構37、リンク機構41、及び第2ロック機構39で構成している。その構成では、第1ロック機構31の解除が切り替え時に行われると、カム機構37が回動可能となり、その回動方向に従ってリンク機構41が前後方向の往復動し、その前後方向に従って第2ロック機構39が解除又は固定される。
【0061】
従って、本実施形態の折畳式車両1で構成される、展開状態と折畳状態との切り替えを行う新たな構造は、第1ロック機構31と第2ロック機構39を有しており、第1ロック機構31に対する解除後にカム機構37を介して動作可能となるリンク機構41に連動させながら第2ロック機構39が解除・固定される構造である。
【0062】
また、このような構造では、例えば、切り替え時に第1ロック機構31の解除を行わせるための入力動作が、展開状態や折畳状態において高い位置にある操作レバー29で実行されており、使い勝手をより向上させることが可能である。
【0063】
また、本実施形態の折畳式車両1では、上端部にサドル25が取り付けられると共に下端部に第1ロック機構31が設けられるサドルフレーム7と、サドルフレーム7の上端部に設けられ、第1ロック機構31の解除操作を行うための操作レバー29とを備える。これにより、操作レバー29がサドル25付近に設けられているので、第1ロック機構31の解除操作を楽な姿勢で行うことができる。
【0064】
さらに、本実施形態の折畳式車両1では、操作レバー29と第1ロック機構31がサドルフレーム7の両端にあって離れており、操作レバー29の操作が第1ロック機構31の作動域とは隔たる位置で行われるので、操作レバー29の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0065】
また、本実施形態の折畳式車両1では、カム機構37を原動側カム33と従動側カム35で構成し、カム機構37の原動側カム33がサドルフレーム7の下端部に設けられ、カム機構37の従動側カム35がベースフレーム5の後端部に設けられると共にリンク機構41の一端部に連結され、第2ロック機構39は、リンク機構41の他端部に連結されると共にフロントフレーム3に設けられる。これにより、操作レバー29の操作が、カム機構37、リンク機構41、及び第2ロック機構39の各作動域とは隔たる位置で行われるので、操作レバー29の操作時における安全性の向上を図ることが可能である。
【0066】
ちなみに、本実施形態において、操作レバー29は「操作部」の一例である。
【0067】
[4.その他]
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態の折畳式車両1では、折畳状態が保持されているとき又はハンドル11がロックされているときにグリップを出現させてもよい。出現したグリップは、折畳状態の収納搬送するときに便利な部品として役立つ。
【符号の説明】
【0068】
1 折畳式車両
3 フロントフレーム
5 ベースフレーム
7 サドルフレーム
9 リアフレーム
11 ハンドル
25 サドル
27 後輪
29 操作レバー
31 第1ロック機構
33 原動側カム
35 従動側カム
37 カム機構
39 第2ロック機構
41 リンク機構
図1
図2
図3
図4
図5