特許第6514098号(P6514098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6514098
(24)【登録日】2019年4月19日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/06 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   H02K15/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-245306(P2015-245306)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-112728(P2017-112728A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 優
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】紫藤 啓一朗
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4715776(JP,B2)
【文献】 特開2012−257410(JP,A)
【文献】 特開2012−257409(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/016136(WO,A1)
【文献】 特開平11−155264(JP,A)
【文献】 特開2011−166945(JP,A)
【文献】 特開2009−106113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のステータコアの内周面から前記ステータコアの径方向内方へ突出する複数のティースに、略矩形状に巻回された平角線から成る複数のコイルをロボットハンドにより順次装着していくステータの製造方法であって、
前記ロボットハンドに取り付けた治具により、前記複数のコイルのうち最後に装着するコイルである最終コイルの前記ステータコアの円周方向に突出した端部を前記ステータコアの径方向外方へ予め弾性変形させた状態で、前記最終コイルを前記ティースに装着するステップと、
前記最終コイルを前記ティースに装着した後に、前記治具を前記最終コイルから離すことで、前記最終コイルの前記端部を弾性復帰させるステップと、
を含む、
ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、円環状のステータコアの内周面に形成された複数のティースの夫々に、略矩形状に巻回された絶縁被覆付きの平角線から成るコイルを装着する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−230293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円環状のステータコアの内周面からステータコアの径方向内方へ突出する複数のティースに、略矩形状に巻回された平角線から成る複数のコイルをロボットハンドにより順次装着していくと、複数のコイルのうち最後に装着するコイルである最終コイルの端部が他のコイルと干渉してしまう問題がある。
【0005】
本発明の目的は、最終コイルをティースに装着するに際し、最終コイルの端部が他のコイルと干渉してしまうのを回避する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の観点によれば、円環状のステータコアの内周面から前記ステータコアの径方向内方へ突出する複数のティースに、略矩形状に巻回された平角線から成る複数のコイルをロボットハンドにより順次装着していくステータの製造方法であって、前記ロボットハンドに取り付けた治具により、前記複数のコイルのうち最後に装着するコイルである最終コイルの前記ステータコアの円周方向に突出した端部を前記ステータコアの径方向外方へ予め弾性変形させた状態で、前記最終コイルを前記ティースに装着するステップと、前記最終コイルを前記ティースに装着した後に、前記治具を前記最終コイルから離すことで、前記最終コイルの前記端部を弾性復帰させるステップと、を含む、ステータの製造方法が提供される。以上の方法によれば、最終コイルをティースに装着するに際し、最終コイルの端部が他のコイルと干渉してしまうのを回避することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最終コイルをティースに装着するに際し、最終コイルの端部が他のコイルと干渉してしまうのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ステータの平面図である。
図2】コイルを保持しているロボットハンドの斜視図である。
図3】ステータの平面図であって、装着時の問題点を説明するための図である。
図4】ステータの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本願発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1には、三相誘導モーター用のステータ1の平面図を示している。図1に示すように、ステータ1は、円環状のステータコア2と、複数のコイル3と、によって構成されている。
【0011】
円環状のステータコア2は、積層された複数の電磁鋼板によって構成されている。円環状のステータコア2は、円環状のステータコア本体4と、ステータコア本体4の内周面4aからステータコア2の径方向内方へ突出する複数のティース5と、を有する。
【0012】
各コイル3は、絶縁被覆付きの平角線Zを略矩形状に巻回することで形成されている。絶縁被覆は、例えばエナメルである。導線は、例えば銅又は銅合金である。各コイル3は、各ティース5に集中的に巻回されている。即ち、本実施形態のステータ1は、集中巻きステータである。
【0013】
以下、説明の便宜上、図1で示す3つのコイル3を時計回りに、第1コイル3A、第2コイル3B、第3コイル3Cと称する。同様に、第1コイル3Aが装着されるティース5を第1ティース5A、第2コイル3Bが装着されるティース5を第2ティース5B、第3コイル3Cが装着されるティース5を第3ティース5Cと称する。
【0014】
第1コイル3Aは例えばW相であり、第2コイル3Bは例えばV相であり、第3コイル3Cは例えばU相である。
【0015】
各コイル3は、図2に示すロボットハンド6により各ティース5に順次、装着される。ロボットハンド6は、略矩形状に巻回された状態のコイル3を保持するコイル保持部7を有している。
【0016】
ロボットハンド6は、図1に示す各コイル3を時計回りに順次、各ティース5に装着する。具体的には、ロボットハンド6は、最初に第3ティース5Cに第3コイル3Cを装着し、次に、第3ティース5Cから見て時計回りに配置されたティース5にコイル3を装着し、・・・、第1ティース5Aに第1コイル3Aを装着し、最後に、第2ティース5Bに第2コイル3Bを装着する。第2コイル3Bは、複数のコイル3のうち最後にティース5に取り付けられる最終コイルである。
【0017】
次に、図1を参照して、ステータ1の中性点Mについて説明する。
【0018】
図1の平面図に示すように、本実施形態のステータ1において、複数のコイル3はスター結線により相互に接続されている。即ち、中性点Mでは、V相である第2コイル3Bの端部8Bと、U相である第3コイル3Cの端部8Cと、W相であるコイル3の端部8Dと、が一列に並んでいる。端部8Bと端部8C、端部8Cと端部8Dは、実質的に面接触している。端部8B及び端部8C、端部8Dは、後工程において溶接により電気的に相互に連結される。
【0019】
ここで、端部8B及び端部8C、端部8Dが並べられている線を端部整列線9と定義する。端部整列線9は、端部8Dから端部8C、端部8Bに向かうにつれて、第2ティース5Bの根本10に近付くように延びている。換言すれば、第2ティース5Bの長手方向11と、端部整列線9と、が成す角度θは、90度未満である。長手方向11と端部整列線9は鋭角に交わっている。詳しく言えば、長手方向11と端部整列線9との交点Pと、長手方向11の交点Pよりもステータコア2の径方向内方の任意の点Qと、中性点Mと、が成す∠MPQは、90度未満である。中性点Mは、第3コイル3C上に位置している。即ち、端部8Bは、第2コイル3Bからステータコア2の円周方向に突出している。
【0020】
また、第2コイル3Bを構成する平角線Zは、ステータコア2の径方向における最も内方において、ステータコア2の径方向内方に向かって凸となるように屈曲する第1屈曲部12と、ステータコア2の径方向外方に向かって凸となるように屈曲する第2屈曲部13と、を有する。第2コイル3Bを構成する平角線Zは、第2屈曲部13と端部8Bの間において、端部整列線9に沿って延びている。端部8Bは、ステータコア2の軸方向に沿って延びている。端部8C及び端部8Dも同様に、ステータコア2の軸方向に沿って延びている。
【0021】
以上の構成で、各コイル3を各ティース5に装着していき、最後に第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着しようとすると、図3に示すように、第2コイル3Bの端部8Bが第3コイル3Cの端部8Cと物理的に干渉してしまう。そこで、本実施形態では、図2に示すように、ロボットハンド6のコイル保持部7に取り付けた治具14により、第2コイル3Bの端部8Bをステータコア2の径方向外方へ予め弾性変形させた状態で、第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着する(図4のS100参照)。治具14は、第1屈曲部12及び第2屈曲部13を有する平角線Zに対してステータコア2の径方向で面接触するように、ステータコア2の径方向外方へ向かって凸形状となっている。第2コイル3Bの端部8Bをステータコア2の径方向外方へ弾性変形させると、端部8Bは、第3コイル3Cの端部8Cから離れる方向に弾性変位するので、上述した物理的な干渉を回避することができる。
【0022】
そして、第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着した後に、ロボットハンド6のコイル保持部7の治具14を第2コイル3Bから離すことで、第2コイル3Bの端部8Bは弾性復帰し(図4のS110参照)、もって、図1に示すように、端部8Bは、端部8C及び端部8Dと共に一列に並んで端部整列線9を構成すると共に、端部8Cに対して実質的に面接触することになる。
【0023】
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0024】
円環状のステータコア2の内周面4aからステータコア2の径方向内方へ突出する複数のティース5に、略矩形状に巻回された平角線Zから成る複数のコイル3をロボットハンド6により順次装着していくステータ1の製造方法は、(1)ロボットハンド6に取り付けた治具14により、複数のコイル3のうち最後に装着するコイル3である第2コイル3B(最終コイル)のステータコア2の円周方向に突出した端部8Bをステータコア2の径方向外方へ予め弾性変形させた状態で、第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着するステップ(S100)と、(2)第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着した後に、治具14を第2コイル3Bから離すことで、第2コイル3Bの端部8Bを弾性復帰させるステップ(S110)と、を含む。以上の方法によれば、第2コイル3Bを第2ティース5Bに装着するに際し、第2コイル3Bの端部8Bが他のコイル3と干渉してしまうのを回避することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ステータ
2 ステータコア
3 コイル
3A 第1コイル
3B 第2コイル
3C 第3コイル
4 ステータコア本体
4a 内周面
5 ティース
5A 第1ティース
5B 第2ティース
5C 第3ティース
6 ロボットハンド
7 コイル保持部
8B 端部
8C 端部
8D 端部
9 端部整列線
10 根本
11 長手方向
12 第1屈曲部
13 第2屈曲部
14 治具
M 中性点
P 交点
Q 点
Z 平角線
θ 角度
図1
図2
図3
図4